JPH10329322A - インクジェット記録ヘッドおよびその製造方法 - Google Patents

インクジェット記録ヘッドおよびその製造方法

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JPH10329322A
JPH10329322A JP14618897A JP14618897A JPH10329322A JP H10329322 A JPH10329322 A JP H10329322A JP 14618897 A JP14618897 A JP 14618897A JP 14618897 A JP14618897 A JP 14618897A JP H10329322 A JPH10329322 A JP H10329322A
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JP
Japan
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ink
recording head
jet recording
nozzle plate
fluorine
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Application number
JP14618897A
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English (en)
Inventor
Osamu Watanabe
修 渡辺
Hirobumi Kama
博文 釜
Koichi Kodera
宏一 小寺
Kenji Tomita
健二 富田
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Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Publication date
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 導電性インクを弾く撥水能力の持続性を十分
に有するインクジェット記録ヘッドを提供することを目
的とする。 【解決手段】 ノズルプレート3に噴射口2を形成し、
噴射口2から導電性インク1を噴射するインクジェット
記録ヘッドであって、ノズルプレート3は、ノズルプレ
ート基材3Aと、プラスチック基材の表面に形成された
フッ素含有の改質層10とを備えた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インクジェット記
録装置に用いるインクジェット記録ヘッドおよびその製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、プリンタには印字の高速化、カラ
ー化、低騒音化の要求が高まってきている。インクジェ
ットプリンタはノンインパクト記録方式であるため記録
時の静粛性が図られ、インク滴を飛翔させて用紙上に画
像を形成するため高速記録が可能であり、また、特別な
定着処理なしに普通紙に記録できるため利用分野が広範
囲である。さらに、3原色のインクを別々に飛翔させる
ことによりカラー化も容易である。このような機能的特
徴によって、家庭用、オフィス用のコンピュータの出力
用プリンタとして広く利用されるようになってきた。
【0003】インクジェット記録装置における印字方式
としては大別して、記録信号に応じてインクを飛翔させ
るオンデマンド方式と連続方式とがある。現在はオンデ
マンド方式が主流である。
【0004】オンデマンド方式は例えば米国特許第34
74120号に開示されている。このオンデマンド方式
は、記録ヘッドに付設されているピエゾ素子に電気的な
記録信号を印加してピエゾ素子の機械的振動に変え、こ
の機械的振動によってノズル孔からインク小滴を吐出さ
せて記録紙に付着させることで記録を行うものである。
すなわち、記録信号に対応したインク吐出を行う。連続
方式では吐出飛翔する小滴のうち画像の記録に要さなか
った小滴を回収することが必要であるが、オンデマンド
方式ではこのようなことが不要であるため、シンプルな
構造が可能である。ただし、このピエゾ素子を使用する
オンデマンド方式は、記録ヘッドの加工の困難性やピエ
ゾ振動素子の小型化の困難性のためマルチノズル化が難
しく、ピエゾ素子の機械振動という機械的エネルギーで
小滴の飛翔を行うので高速記録に向かないなどの欠点を
有する。
【0005】オンデマンド方式の他の例として、インク
を加熱してインク中にバブルを発生させ、その体積変化
でインクを飛翔させるバブルジェット方式がある。米国
特許第3179042号に開示されているオンデマンド
方式は熱エネルギーを利用するものである。この熱エネ
ルギーを利用するオンデマンド方式はピエゾ素子のよう
な機械的振動エネルギーを利用するものと比較してエネ
ルギー変換効率が高く、マルチノズル化が容易であると
いう特徴がある。
【0006】次に、熱エネルギーを利用するオンデマン
ド方式のインクジェット記録ヘッドとして、交流電流通
電による高周波加熱でインクを沸騰させてインクを吐出
するものについて説明する。
【0007】図14は、交流電流通電による高周波加熱
でインクを沸騰させてインクを吐出する従来のインクジ
ェット記録ヘッドを示す概略断面図である。図14にお
いて、1は導電性インク、2は導電性インク1の噴射口
である吐出口、3Aは吐出口2を複数有するノズルプレ
ート、4は基板、5a、5bは導電性インク1に接する
ように配置された一対の対向電極、6は絶縁部材、7は
導電性インク1で満たされたインク沸騰室、8は一対の
対向電極5a、5bに電圧を印加する駆動制御装置、9
は記録用紙、12はインク液滴である。
【0008】以上のように構成されたインクジェット記
録ヘッドについて、その動作を説明する。駆動制御装置
8をオンにすることにより、一対の対向電極5a、5b
間に高周波電圧が印加され、導電性インク1中に存在す
る電解質が振動運動を行い、ジュール熱の発生と共に導
電性インク1の沸騰に至る。この導電性インク1の沸騰
により気泡が発生し、その体積の急激な膨脹によりイン
ク液滴12を吐出口2から押し出す。インク液滴12は
記録用紙9に飛翔して1ドットの印字を形成する。基板
4上には複数のインク液滴を吐出することが可能となる
ように対向電極5a、5b、吐出口2、インク沸騰室7
が複数設けられ、駆動制御装置8により複数の吐出口か
ら選択的にインク液滴12が吐出され、記録用紙9に所
望の文字を形成できるようにしている。この後、駆動制
御装置8をオフにすることにより、一対の対向電極5
a、5b間の高周波電圧は除かれ、導電性インク1は急
激に冷却されて気泡は消滅し、初期の状態に戻る。
【0009】このようなインクジェット記録ヘッドにお
いて、インク液滴12が吐出するノズル周縁部に不均一
な導電性インク1の溜まり(インク溜まり)があると、
吐出するインク液滴12が正規の飛翔方向から離脱した
り、さらには上記インク溜まりによりインク液滴形成時
のメニスカス(表面張力によって凸状になること)の安
定性が低下して吐出異常になり、良好な記録が行えなく
なる。また、印字品質を向上させるために単位当りのイ
ンクノズル数を多くしてドット密度を高める場合、これ
に応じてインク液滴、インクノズル穴径は小さくなり、
インクノズル穴間距離は狭くなる。この場合、インクノ
ズル周縁部における不均一なインク溜まりの影響を受け
やすい。さらに、高速印字を実現するために高周波で駆
動する場合も同様に、インクノズル周縁部における不均
一なインク溜まりの影響を受けやすい。
【0010】そのため、導電性インクを弾く撥水性を有
するような表面処理をインクノズルの周縁部に施して上
述の問題を解決し、安定したインク液滴の吐出を得よう
とする提案が数多く報告されている。例えば、インク液
滴が吐出する部分であるノズルプレート3Aの表面を油
性や水性の導電性インク1の付着をなくすために撥水化
処理することが行われており、コーティング法、真空蒸
着法、プラズマ重合によりノズルプレート表面に撥水剤
を付着させ撥水化するプラズマ重合法といった方法が提
案されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来のインクジェット記録ヘッドでは、次のような問題点
を有していた。
【0012】撥水処理の方法としては一般的に、ノズル
プレート表面に撥水剤をコーティングすることが行われ
ている。このコーティング方法として、特開昭57−1
67765号公報記載の静電粉体塗装法、特開昭60−
183161号公報記載の真空蒸着法、ディッピング
法、スプレーコート法、スピンコート法等が提案されて
いるが、これらの方法は、いずれも撥水剤がノズル内に
入り込んで目詰まりを起こしたり、インク液滴の直進性
を損ねて印字品質に悪影響を与えるといった問題点を有
していた。
【0013】一方、ノズルに目詰まりを生じさせること
なく、そのインクノズル表面側に撥水処理を行う方法と
して、特開昭63−122560号公報に開示されたも
のや特開昭62−59047号公報に開示されたものが
ある。特開昭63−122560号公報に開示されたも
のは、ノズルを含むインク流路内に液体または個体を充
填してからコーティング処理をするものであり、特開昭
62−59047号公報に開示されたものは、ノズルよ
りエアを噴出させながらコーティング処理をするもので
ある。しかし、前者の方法では、インク流路内への液体
・個体の充填が容易でなく、また、インク流路内に充填
剤を満たしたままでノズル表面に付着した余分な充填剤
を除去することが困難であるといった問題点を有し、後
者の方法では、最も撥水性を要求されるノズル開口部の
周囲がエア流の影響を受けるため、十分なコーティング
を行うことができないという問題点を有していた。
【0014】さらに、特開昭59−176059号公報
には、プラズマ重合によりノズル表面に撥水剤を膜堆積
させて撥水化するという方法が開示されている。しか
し、そのような表面処理においては、単に導電性インク
を弾く撥水能力があるだけでなく、その能力の持続性も
十分になければ実用性がない。すなわち、インクジェッ
ト記録装置に備わったクリーニング動作、その際に生じ
た過剰インクの除去のためのゴム部材等によるワイピン
グ動作によっても、その撥水性が劣化することなく、安
定したインク吐出ができなければならない。従来のコー
ティング法、真空蒸着法、プラズマ重合法はノズル上へ
の膜堆積法であるため、インクジェット記録ヘッドのノ
ズル材料との密着性が不十分であると、記録用紙と擦れ
た際に膜が剥離してしまい耐久性の低いものしか得られ
ないという問題点を有していた。
【0015】このインクジェット記録ヘッドおよびその
製造方法では、導電性インクを弾く撥水能力が十分に持
続性があることが要求されている。
【0016】本発明は、導電性インクを弾く撥水能力の
持続性を十分に有するインクジェット記録ヘッドおよび
導電性インクを弾く撥水能力の持続性を十分に持たせる
ためのインクジェット記録ヘッドの製造方法を提供する
ことを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するため
に本発明のインクジェット記録ヘッドは、ノズルプレー
トに噴射口を形成し、噴射口からインクを噴射するイン
クジェット記録ヘッドであって、ノズルプレートは、プ
ラスチック基材と、プラスチック基材の表面に形成され
たフッ素含有の改質層とを備えた構成を備えている。
【0018】これにより、導電性インクを弾く撥水能力
の持続性を十分に有するインクジェット記録ヘッドが得
られる。
【0019】この課題を解決するための本発明のインク
ジェット記録ヘッドの製造方法は、プラスチック基材と
プラスチック基材の表面に形成されたフッ素含有の改質
層とから成るノズルプレートに噴射口を形成し、噴射口
からインクを噴射するインクジェット記録ヘッドの製造
方法であって、プラスチック基材の表面にフッ素含有の
プラズマを照射してプラスチック基材の上層部をフッ素
含有カーボン層に改質する構成を備えている。
【0020】これにより、導電性インクを弾く撥水能力
の持続性を十分に持たせるためのインクジェット記録ヘ
ッドの製造方法が得られる。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の発明
は、ノズルプレートに噴射口を形成し、噴射口からイン
クを噴射するインクジェット記録ヘッドであって、ノズ
ルプレートは、プラスチック基材と、プラスチック基材
の表面に形成されたフッ素含有の改質層とを備えること
としたものであり、ノズルプレート表面が撥水状態にな
るという作用を有する。
【0022】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載
の発明において、プラスチック基材は酸素を構成成分と
することとしたものであり、ノズルプレート表面が耐久
性の高い撥水性、撥インク性を呈するという作用を有す
る。
【0023】請求項3に記載の発明は、請求項1に記載
の発明において、プラスチック基材はポリイミドを主成
分とすることとしたものであり、ノズルプレート表面に
フッ素含有の改質層が容易に形成されるという作用を有
する。
【0024】請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3
のいずれか1に記載の発明において、改質層はフッ素と
炭素の原子数比F/Cが0.85以上で1.30以下で
あることとしたものであり、ノズルプレート表面が容易
にフッ化カーボン層に改質されるという作用を有する。
【0025】請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4
のいずれか1に記載の発明において、改質層は、表面の
X線光電子分光スペクトルにおいて、C1S信号の総面積
に対するCF2信号の面積の比が0.13以上で0.2
0以下であることとしたものであり、フッ化カーボン層
が耐久性の高い撥水性を有するという作用を有する。
【0026】請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5
のいずれか1に記載の発明において、改質層は、表面の
X線光電子分光スペクトルにおいて、C1S信号の総面積
に対するCF3信号の面積の比が0.10以上で0.1
7以下であることとしたものであり、フッ化カーボン層
が耐久性の高い撥水性を有するという作用を有する。
【0027】請求項7に記載の発明は、請求項1に記載
の発明において、導電性インクに接するように配置され
た一対の対向電極間に交流電圧を印加して導電性インク
を沸騰させ、導電性インクを小滴化して吐出、飛翔させ
る吐出エネルギー発生部を有することとしたものであ
り、フッ化カーボン層の撥水性が長寿命化されるという
作用を有する。
【0028】請求項8に記載の発明は、プラスチック基
材とプラスチック基材の表面に形成されたフッ素含有の
改質層とから成るノズルプレートに噴射口を形成し、噴
射口からインクを噴射するインクジェット記録ヘッドの
製造方法であって、プラスチック基材の表面にフッ素含
有のプラズマを照射してプラスチック基材の上層部をフ
ッ素含有カーボン層に改質することとしたものであり、
均一な撥水性を有する改質層が容易にノズルプレート表
面に形成されるという作用を有する。
【0029】請求項9に記載の発明は、請求項8に記載
の発明において、プラスチック基材は酸素を構成成分と
することとしたものであり、耐久性の高い撥水性、撥イ
ンク性を呈するノズルプレート表面が容易に形成される
という作用を有する。
【0030】請求項10に記載の発明は、請求項8に記
載の発明において、プラスチック基材はポリイミドを主
成分とすることとしたものであり、ノズルプレート表面
にフッ素含有の改質層が容易に形成されるという作用を
有する。
【0031】請求項11に記載の発明は、請求項8乃至
10のいずれか1に記載の発明において、プラスチック
基材に0V〜−40VのRFバイアス電圧を印加しなが
らプラスチック基材の表面にフッ素含有のプラズマを照
射してプラスチック基材の上層部をフッ素含有カーボン
層に改質することとしたものであり、フッ化カーボン層
が容易に耐久性の高い撥水状態に改質されるという作用
を有する。
【0032】請求項12に記載の発明は、請求項8乃至
10のいずれか1に記載の発明において、プラスチック
基材に−5V〜−35VのRFバイアス電圧を印加しな
がらプラスチック基材の表面にフッ素含有のプラズマを
照射してプラスチック基材の上層部をフッ素含有カーボ
ン層に改質することとしたものであり、フッ化カーボン
層が容易に更に耐久性の高い撥水状態に改質されるとい
う作用を有する。
【0033】以下、本発明の実施の形態について、図1
〜図13を用いて説明する。 (実施の形態1)図1は、本発明の実施の形態1による
インクジェット記録ヘッドを示す概略断面図である。図
1において、導電性インク1、吐出口2、基板4、一対
の対向電極5a、5b、絶縁部材6、インク沸騰室7、
駆動制御装置8、記録用紙9、インク液滴12は図14
と同様のものなので、同一符号を付し、説明は省略す
る。
【0034】3は噴射口としての吐出口2を複数有する
ノズルプレート、3Aはノズルプレート3のノズルプレ
ート基材、10はノズルプレート基材3Aの表面を改質
して形成された撥水層、11は気泡(バブル)である。
ノズルプレート3の撥水層10はフッ素含有のプラズマ
を照射して改質されたフッ素含有カーボン層(フッ化カ
ーボン層)である。
【0035】図2は、複数の吐出口が同一基板上に形成
されたインクジェット記録ヘッドの要部を示す要部斜視
図である。図2において、吐出口2、ノズルプレート
3、基板4、対向電極5a、5b、インク沸騰室7、イ
ンク液滴12は図1と同様のものなので、同一符号を付
し、説明は省略する。
【0036】以上のように構成されたインクジェット記
録ヘッドについて、その動作を説明する。
【0037】まず、吐出口2からインク液滴12を噴射
する動作について説明する。図1、図2に示すように、
導電性インク1の充満したインク沸騰室7内部におい
て、基板4に設けられた一対の対向電極5aおよび5b
に駆動制御装置8から10〜30Vの電圧が印加される
と、20〜50Ω・cmの抵抗率を有する導電性インク
1を介して、対向電極5aと5bとの間に電気力線が発
生する。この電気力線に沿って電流が流れ、I2×R
(Iは電気力線に沿って流れる電流の値、Rは導電性イ
ンク1の抵抗値)で表わせる電流のジュール損失によっ
て、電気力線の電流集中部における導電性インク1が自
己発熱し、電圧印加後10〜20μsしてついには沸騰
が始まり、バブル11が発生する。発生したバブル11
が膨脹することによって、インク沸騰室7内の導電性イ
ンク1の圧力が急激に高まり、この圧力を解放しようと
する力によって導電性インク1は吐出口2からインク液
滴12となって噴射され、記録用紙9に付着してドット
を形成する。実際には駆動制御装置8により複数の吐出
口2から選択的にインク液滴12が吐出され、記録用紙
9に所望の文字を形成することができるようにしてい
る。
【0038】図3は、本実施の形態によるインクジェッ
ト記録ヘッドを構成するノズルプレート3に使用したポ
リイミド基材を示す断面図である。図3において、3A
はノズルプレート基材としてのポリイミド基材、10は
撥水層である。ポリイミドは次の(化1)に示すように
酸素を含有する組成を有している。
【0039】
【化1】
【0040】このように酸素を含有し、炭素、水素、窒
素より構成されるプラスチックは、酸素を含有しないプ
ラスチック(例えばポリスチレン)に比べて水やインク
に馴染みやすい性質を有している。ポリイミドの場合、
水を滴下した際の水滴の接触角は約65度と低い値を示
し、親水性を示す。水性インク、油性インクを滴下した
場合、さらに馴染みやすい性質を有している。つまり、
酸素を構成成分とするプラスチックでは未処理の状態で
親水性能、親インク性能を示すものが多く、より効果的
に耐久性の高い撥水性能、撥インク性能をノズルプレー
ト3の表面に付与することができる。
【0041】本実施の形態では、ノズルプレート3の表
面にフッ素を含有する改質層(撥水層)10を生成し、
改質層10は、フッ素と炭素の原子数比F/Cを0.8
5以上で1.30以下の成分としている。
【0042】このような撥水性、撥インク性の表面を形
成する製造方法について説明する。図4は、本実施の形
態によるインクジェット記録ヘッドの製造方法を実施す
るための処理装置を示す構成図である。図4において、
3Aはノズルプレート基材、13は排気系、14は処理
チャンバ、15はプラズマ発生室、16はガス導入系、
17はマイクロ波電力発生器、18はソレノイドコイ
ル、19はプラズマ、20は基板用電極、21はRF電
源である。
【0043】図4において、排気系13を接続した処理
チャンバ14にはプラズマ発生室15が付帯している。
プラズマ発生室15にはガス導入系16からガスが供給
されるとともにマイクロ波電力発生器17から2.45
GHzのマイクロ波が供給される。また、プラズマ発生
室15の周囲に設置したソレノイドコイル18からの磁
場とマイクロ波との相互作用により電子サイクロトロン
共鳴(ECR)によるプラズマ19がプラズマ発生室1
5に発生する。処理チャンバ14にはポリイミドから成
るノズルプレート基材3Aが基板用電極20の上に設置
され、プラズマ発生室15からのプラズマ19がノズル
プレート基材3Aに照射される。なお、基板用電極20
にはRF電源21からRFバイアス電圧が供給されるよ
うになっている。
【0044】ノズルプレート基材3Aに改質層10を形
成するときは、上述したようにノズルプレート基材3A
にポリイミドを主成分とするものを用い、ガス導入系1
6からCF4ガスを導入する。CF4ガスの導入により、
処理チャンバ14の圧力を4×10-4Torrとした。マイ
クロ波電力発生器17から200Wのマイクロ波電力を
投入し、CF4のECRプラズマを発生させ、ノズルプ
レート基材3A上に照射する。
【0045】なお、ノズルプレート基材3AにはRF電
源21からRFバイアス電圧を供給している。図5はノ
ズルプレート基材3Aの電位を示すタイミング図であ
る。図5に示すように、RFバイアス電圧の印加により
ノズルプレート基材3Aには負の自己バイアス電圧が発
生する。この際の平均の電位とアース電位との間の自己
バイアス電圧VaをRFバイアス電圧と呼んでいる。こ
こではRFバイアス電圧を−20Vとして照射処理を行
い、ノズルプレート基材3Aの上層部数百オングストロ
ーム程度(正確には200オングストローム)の部分を
フッ素含有の改質層に改質してノズルプレートを形成し
た。
【0046】図6は、図4の処理装置でプラズマ処理し
たノズルプレート基材の撥水性能を水の接触角で評価し
た結果を示すグラフ図である。図6において、縦軸は接
触角(Contact Angle)を示し、横軸はプラズマ照射時
間(Discharge Time)を示す。改質前(プラズマ照射時
間が0分)のノズルプレート表面では接触角は上述した
ように約65度と低いが、上述のプラズマ処理を行うこ
とにより、速やかに接触角は上昇し、約103度で飽和
し、撥水性の高い表面に改質されている。図6ではRF
バイアス電圧を−20Vとしているが、さらに種々のR
Fバイアス電圧を印加してプラズマ照射を行い、接触角
の変化を観察した。その結果を図7に示す。
【0047】図7はRFバイアス電圧に対する接触角を
示すグラフ図である。図7では、縦軸は接触角(Contac
t Angle)を示し、横軸はRFバイアス電圧(RF Bias v
ol-tage)の絶対値を示す。図7に示すように、どのR
Fバイアス電圧でも改質前の65度に比べて高い接触角
が得られている。さらに詳しく見ると、RFバイアス電
圧0Vでやや接触角が低くなっているが、この電圧でも
ほとんど同程度の接触角が得られ、高い撥水性能が認め
られる。
【0048】次に、経時的に接触角がどのように変化す
るかについて述べる。図8は、経時的に接触角がどのよ
うに変化するかを示すグラフ図である。図8において、
縦軸は接触角(Contact Angle)を示し、横軸はRFバ
イアス電圧(RF Bias volta-ge)の絶対値を示し、●は
改質処理直後の値、○は温度25℃、湿度45%の通常
の環境下での1000時間後の経時的変化を示す。図8
では、RFバイアス電圧に関して接触角の経時特性に次
のような有意差が見られた。RFバイアス電圧が0V以
下で−40V以上の範囲では接触角の経時的低下がほと
んど認められず、耐久性の高い撥水性表面となってい
る。ところが、RFバイアス電圧が−40Vより低くな
ると(絶対値として40Vを越えると)、接触角は改質
直後に比べて低下が認められ、経時変化が観察される。
【0049】図9は、ポリイミドから成るノズルプレー
ト基材の改質表面をX線光電子分光(XPS)で観察
し、スペクトル分析した結果を示すグラフ図であり、縦
軸は強度を示し、横軸は結合エネルギー(単位はeV)
を示す。図9に示すように、C1S(カーボンCの1S軌
道)スペクトルにCF、CF2、CF3のピークが現れて
おり、改質層にC-F結合が形成されていることが確認さ
れた。
【0050】図10は、RFバイアス電圧をパラメータ
としてポリイミドから成るノズルプレート基材をプラズ
マ処理した改質面の最表面における組成をX線光電子分
光法(XPS)で分析した結果を示すグラフ図であり、
縦軸は組成としてフッ素原子数とカーボン原子数の比F
/C値を示し、横軸はRFバイアス電圧を示す。RFバ
イアス電圧を増加させるに従い、F/C値は減少する傾
向を示している。図7の接触角の経時特性でRFバイア
ス電圧を0V以下で−40V以上の範囲で印加すること
により経時変化のない撥水表面が得られているが、図1
0の組成では、RFバイアス電圧が0VでF/C値は
1.30を示しており、またRFバイアス電圧が−40
Vでは0.85を示している。すなわち、改質面の最表
面の組成としてF/C値が0.85以上で1.30以下
の範囲で耐久性に優れた撥水性表面が提供されることが
ここで判明した。
【0051】図11は、RFバイアス電圧をパラメータ
としてポリイミドから成るノズルプレート基材の改質面
のXPSスペクトルにおいて、C1S信号の総面積に対す
るCF2信号の面積の比(C1Sスペクトル面積比(C
2))を求めた結果を示すグラフ図であり、縦軸はC1
Sスペクトル面積比(CF2)、横軸はRFバイアス電圧
を示す。RFバイアス電圧の増加に従い、CF2信号の
面積比は減少しており、接触角の経時変化の少ないRF
バイアス電圧が0V以下で−40V以上の範囲で面積比
は0.13以上で0.20以下が得られている。
【0052】図12は、改質面のXPSスペクトルにお
いて、C1S信号の総面積に対するCF3信号の面積の比
(C1Sスペクトル面積比(CF3))を求めた結果を示
すグラフ図であり、縦軸はC1Sスペクトル面積比(CF
3)、横軸はRFバイアス電圧を示す。RFバイアス電
圧の増加に従い、CF2信号の面積比と同様、CF3信号
の面積比も減少しており、C1S信号の総面積に対するC
3信号の面積の比は、RFバイアス電圧が0V以下で
−40V以上の範囲に対応する0.10以上で0.17
以下の範囲にあることが望ましいことがこれにより判明
した。
【0053】図8に示すように、RFバイアス電圧を−
40Vよりも小さく(絶対値として40Vよりも大き
く)印加することにより接触角は改質当初に比べて低下
することが観察されているが、この現象はC1S信号の総
面積に対するCF2信号の面積の比の低下、あるいは、
CF3信号の面積の比の低下に基づくものであると考え
られる。すなわち、RFバイアス電圧によって高エネル
ギー化されたプラズマはC-Fの結合を促進し、CF2結合
やCF3結合を生成するが、−40Vよりもバイアスが
小さくなると逆にノズルプレート基材にダメージを与え
るようになり、C-F結合を阻害して経時的に特性を低下
させる結果になるものと考えられる。従って、ポリイミ
ド改質面におけるC1S信号の総面積に対するCF2信号
の面積の比は0.13以上で0.20以下の範囲にある
ことが耐久性のある撥水性表面、撥インク性表面を提供
する上で有効であることが分かる。
【0054】なお、図8の接触角の経時特性をRFバイ
アス電圧の関数として求めた結果を更に詳細に観察する
と、RFバイアス電圧が−40Vで1000時間後にお
ける接触角のわずかな低下が観察できる。また、RFバ
イアス電圧が0Vでは接触角の経時変化はほとんど見ら
れないが、改質当初の接触角が他のバイアス電圧に比べ
てやや低くなっており、撥水性能がわずかに劣ってい
る。これにより、ノズルプレート基材にRFバイアス電
圧を−5V以下で−30V以上の範囲にすることが更に
望ましいことが分かる。
【0055】インク液滴12(図1、図2参照)を所定
の紙面上に正確に着弾させるためにはノズルプレート3
からインク液滴12をまっすぐに吐出させなければなら
ない。通常ノズルプレート3から記録用紙9の紙面まで
の距離は1mmぐらいであるから、インク液滴12を記
録用紙9に20μm以内の誤差で打ち込むためには、約
1度の曲りしか許されないことになる。まっすぐに吐出
させるために極めて重要なのがノズルプレート3の表面
における導電性インク1の濡れ状態であり、ノズルプレ
ート3表面に不均一な濡れがあると吐出インク液滴12
が導電性インク1の表面張力によって引っ張られ、飛行
曲がりを生じてしまう。ノズルプレート3の表面を改質
せずに構成したインクジェット記録ヘッドでは飛行曲が
りが生じてしまい、高品質印字を実現することができな
かった。これに対し、RFバイアス電圧の印加範囲を上
述のように限定してフッ素含有プラズマを照射し、ノズ
ルプレート3の表面にフッ素と炭素の原子数比F/Cを
0.85以上でかつ1.30以下の成分の改質層を形成
したインクジェット記録ヘッドを作製してプリンタに搭
載することにより、長期間に渡ってノズルプレート3表
面における導電性インク1の濡れを防止し、実用上要求
される4億ショットの高品質印字を達成することができ
た。このように、本実施の形態によるインクジェット記
録ヘッドにより、耐久性が高く、高印字性能を有するイ
ンクジェットプリンタを提供することが可能となった。
【0056】次に、撥水性、膜密着性および耐摩耗性の
評価について述べる。撥水性および耐摩耗性の評価は、
本実施の形態で得られたフッ素含有プラズマで改質した
インクジェット記録ヘッドのノズルプレート表面と、撥
水剤を蒸着、コーティング等の手法で堆積させた従来の
ノズルプレート表面とについて次のイ、ロに示す方法で
行い、それらを比較した。
【0057】イ撥水性について 協和界面科学(株)製の接触角計(CA−S150)を
用いて純水による液滴法で測定した接触角をもって評価
した。
【0058】ロ耐摩耗性について (a)摩耗試験機を用い、摺動速度3000mm/分、
ゴム硬度40度および80度で摺動回数30000回後
の純水による接触角をもって評価した。
【0059】(b)撥水膜表面を布で1kgの荷重にて
500回摩耗試験後、傷、汚れ等の表面状態を観察し
た。
【0060】これらの結果を(表1)に示す。
【0061】
【表1】
【0062】(表1)において○は表面状態が無傷であ
ることを示し、×は表面に無数の傷が付くか又は撥水膜
が剥離することを示す。(表1)に示すように、本実施
の形態によるノズルプレートは、従来のものと比較し
て、十分な撥水性を示す103度の接触角となってお
り、耐摩耗試験後も若干の接触角低下(100度へ低
下)が見られるものの、実用レベルでは問題ない撥水効
果を維持している。
【0063】以上のように本実施の形態によれば、ノズ
ルプレート3が、ノズルプレート3Aと、ノズルプレー
ト3Aの表面に形成されたフッ素含有の改質層10とか
ら成ることとしたので、ノズルプレート3の表面を撥水
状態にすることができると共に、改質層であることから
高耐久性の撥水状態とすることができる。このとき、ノ
ズルプレート3Aに酸素を構成成分とするものを使用す
ることにより、ノズルプレート3の表面を耐久性の高い
撥水性、撥インク性のものとすることができる。また、
ノズルプレート3Aにポリイミドを主成分とするものを
使用することにより、ノズルプレート3の表面に高耐久
性の撥水性能、撥インク性能を付与することができる。
さらに、改質層10のフッ素と炭素の原子数比F/Cを
0.85以上で1.30以下としたことにより、ノズル
プレート3の表面に高耐久性の撥水性表面を容易に付与
することができる。さらに、改質層10を、表面のX線
光電子分光スペクトルにおいて、C1S信号の総面積に対
するCF2信号の面積の比が0.13以上で0.20以
下となるようにしたことにより、あるいは、C1S信号の
総面積に対するCF3信号の面積の比が0.10以上で
0.17以下となるようにしたことにより、ノズルプレ
ート3の表面に高耐久性の撥水性能、撥インク性能を付
与することができる。さらに、導電性インク1に接する
ように配置された一対の対向電極5a、5b間に交流電
圧を印加して導電性インク1を沸騰させ、導電性インク
1を小滴化して吐出、飛翔させる吐出エネルギー発生部
(駆動制御装置)8を有することにより、フッ化カーボ
ン層の撥水性を長寿命化することができる。さらに、ノ
ズルプレート3Aの表面にフッ素含有のプラズマを照射
してノズルプレート3Aの上層部をフッ素含有カーボン
層に改質することにより、均一な撥水性を有する改質層
10を容易にノズルプレート3の表面に形成することが
できる。
【0064】(実施の形態2)図13は、本発明の実施
の形態2によるインクジェット記録ヘッドの製造方法が
適用される処理装置を示す構成図である。図13におい
て、3Bはノズルプレート基材、22は排気系、23は
処理チャンバ、24は基板用電極、25はRF電源、2
6は対向電極である。排気系22を接続した処理チャン
バ23の中には基板用電極24が配置され、その上にノ
ズルプレート基材3Bが設置されている。基板用電極2
4にはRF電源25からRFバイアス電圧が供給され
る。
【0065】以上のように構成された処理装置における
インクジェット記録ヘッドのノズルプレートの製造方法
について説明する。
【0066】処理チャンバ23を排気系22で真空引き
した後、CF4ガスを導入して処理チャンバ23内を1
00mTorr程度の真空度にして基板用電極24にRFバ
イアス電圧を印加することにより、接地された対向電極
26との間でCF4プラズマを発生させる。基板用電極
24にはRFバイアス電圧に基づく負の自己バイアス電
圧が発生し、CF4プラズマがノズルプレート基材3B
に照射される。このようなRFバイアス電圧の印加によ
っても耐久性の高い撥水性表面を形成することができ
る。
【0067】なお、本実施の形態では、改質層を作製す
る反応ガスとしてCF4ガスを用いた場合について説明
したが、本発明はこれに限定されるものではなく、C2
6等の他のフッ化カーボンガスを用いても同様の効果
が得られる。また、CHF3のようなCとFとHが混在
したガスを用いても効果はやや落ちるが、撥水性能、撥
インク性能を付与することができる。
【0068】以上のように本実施の形態によれば、負の
自己バイアス電圧を印加しながらCF4プラズマをノズ
ルプレート基材3Bに照射することにより、ノズルプレ
ート基材3Bの表面に耐久性の高い撥水性表面を形成す
ることができる。
【0069】
【発明の効果】以上のように本発明のインクジェット記
録ヘッドによれば、ノズルプレートは、プラスチック基
材と、プラスチック基材の表面に形成されたフッ素含有
の改質層とを備えたことにより、ノズルプレート表面を
撥水状態にすることができると共に、改質層であること
から高耐久性の撥水状態とすることができるという有利
な効果が得られる。
【0070】また、プラスチック基材は酸素を構成成分
とすることにより、ノズルプレート表面を耐久性の高い
撥水性、撥インク性のものとすることができるという有
利な効果が得られる。
【0071】さらに、プラスチック基材はポリイミドを
主成分とすることにより、ノズルプレート表面に高耐久
性の撥水性能、撥インク性能を付与することができると
いう有利な効果が得られる。
【0072】さらに、改質層はフッ素と炭素の原子数比
F/Cが0.85以上で1.30以下であることによ
り、ノズルプレート表面に高耐久性の撥水性表面を容易
に付与することができるという有利な効果が得られる。
あるいはとしたものであり、ノズルプレート表面が容易
にフッ化カーボン層に改質されるという作用を有する。
【0073】さらに、改質層は、表面のX線光電子分光
スペクトルにおいて、C1S信号の総面積に対するCF2
信号の面積の比が0.13以上で0.20以下であるこ
とにより、あるいは、C1S信号の総面積に対するCF3
信号の面積の比が0.10以上で0.17以下であるこ
とにより、ノズルプレート表面に高耐久性の撥水性能、
撥インク性能を付与することができるという有利な効果
が得られる。
【0074】さらに、導電性インクに接するように配置
された一対の対向電極間に交流電圧を印加して導電性イ
ンクを沸騰させ、導電性インクを小滴化して吐出、飛翔
させる吐出エネルギー発生部を有することにより、フッ
化カーボン層の撥水性を長寿命化することができるとい
う有利な効果が得られる。
【0075】本発明のインクジェット記録ヘッドの製造
方法によれば、プラスチック基材とプラスチック基材の
表面に形成されたフッ素含有の改質層とから成るノズル
プレートに噴射口を形成し、噴射口からインクを噴射す
るインクジェット記録ヘッドの製造方法であって、プラ
スチック基材の表面にフッ素含有のプラズマを照射して
プラスチック基材の上層部をフッ素含有カーボン層に改
質することにより、均一な撥水性を有する改質層を容易
にノズルプレート表面に形成することができるという有
利な効果が得られる。
【0076】また、プラスチック基材は酸素を構成成分
とすることにより、耐久性の高い撥水性、撥インク性を
呈するノズルプレート表面を容易に形成することができ
るという有利な効果が得られる。
【0077】さらに、プラスチック基材はポリイミドを
主成分とすることにより、ノズルプレート表面にフッ素
含有の改質層を容易に形成することができるという有利
な効果が得られる。
【0078】さらに、プラスチック基材に0V〜−40
VのRFバイアス電圧を印加しながらプラスチック基材
の表面にフッ素含有のプラズマを照射してプラスチック
基材の上層部をフッ素含有カーボン層に改質することに
より、フッ化カーボン層を容易に耐久性の高い撥水状態
に改質することができるという有利な効果が得られる。
【0079】さらに、プラスチック基材に−5V〜−3
5VのRFバイアス電圧を印加しながらプラスチック基
材の表面にフッ素含有のプラズマを照射してプラスチッ
ク基材の上層部をフッ素含有カーボン層に改質すること
により、フッ化カーボン層を容易に更に耐久性の高い撥
水状態に改質することができるという有利な効果が得ら
れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1によるインクジェット記
録ヘッドを示す概略断面図
【図2】複数の吐出口が同一基板上に形成されたインク
ジェット記録ヘッドの要部を示す要部斜視図
【図3】本実施の形態によるインクジェット記録ヘッド
を構成するノズルプレート3に使用したポリイミド基材
を示す断面図
【図4】本発明の実施の形態1によるインクジェット記
録ヘッドの製造方法を実施するための処理装置を示す構
成図
【図5】ノズルプレート基材の電位を示すタイミング図
【図6】図4の処理装置でプラズマ処理したノズルプレ
ート基材の撥水性能を水の接触角で評価した結果を示す
グラフ
【図7】RFバイアス電圧に対する接触角を示すグラフ
【図8】経時的に接触角がどのように変化するかを示す
グラフ
【図9】ポリイミドから成るノズルプレート基材の改質
表面をX線光電子分光(XPS)で観察し、スペクトル
分析した結果を示すグラフ
【図10】RFバイアス電圧をパラメータとしてポリイ
ミドから成るノズルプレート基材をプラズマ処理した改
質面の最表面における組成をX線光電子分光で分析した
結果を示すグラフ
【図11】RFバイアス電圧をパラメータとしてポリイ
ミドから成るノズルプレート基材の改質面のXPSスペ
クトルにおいて、C1S信号の総面積に対するCF2信号
の面積の比(C1Sスペクトル面積比(CF2))を求め
た結果を示すグラフ
【図12】改質面のXPSスペクトルにおいて、C1S信
号の総面積に対するCF3信号の面積の比(C1Sスペク
トル面積比(CF3))を求めた結果を示すグラフ
【図13】本発明の実施の形態2によるインクジェット
記録ヘッドの製造方法が適用される処理装置を示す構成
【図14】交流電流通電による高周波加熱でインクを沸
騰させてインクを吐出する従来のインクジェット記録ヘ
ッドを示す概略断面図
【符号の説明】
1 導電性インク 2 吐出口(噴射口) 3 ノズルプレート 3A、3B ノズルプレート基材 4 基板 5a、5b、26 対向電極 6 絶縁部材 7 インク沸騰室 8 駆動制御装置(吐出エネルギー発生部) 9 記録用紙 10 撥水層(改質層) 11 バブル 12 インク液滴 13、22 排気系 14、23 処理チャンバ 15 プラズマ発生室 16 ガス導入系 17 マイクロ波電力発生器 18 ソレノイドコイル 19 プラズマ 20、24 基板用電極 21、25 RF電源
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 富田 健二 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ノズルプレートに噴射口を形成し、前記噴
    射口からインクを噴射するインクジェット記録ヘッドで
    あって、前記ノズルプレートは、プラスチック基材と、
    前記プラスチック基材の表面に形成されたフッ素含有の
    改質層とを備えたことを特徴とするインクジェット記録
    ヘッド。
  2. 【請求項2】前記プラスチック基材は酸素を構成成分と
    することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット
    記録ヘッド。
  3. 【請求項3】前記プラスチック基材はポリイミドを主成
    分とすることを特徴とする請求項1に記載のインクジェ
    ット記録ヘッド。
  4. 【請求項4】前記改質層はフッ素と炭素の原子数比F/
    Cが0.85以上で1.30以下であることを特徴とす
    る請求項1乃至3のいずれか1に記載のインクジェット
    記録ヘッド。
  5. 【請求項5】前記改質層は、表面のX線光電子分光スペ
    クトルにおいて、C1S信号の総面積に対するCF2信号
    の面積の比が0.13以上で0.20以下であることを
    特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載のインク
    ジェット記録ヘッド。
  6. 【請求項6】前記改質層は、表面のX線光電子分光スペ
    クトルにおいて、C1S信号の総面積に対するCF3信号
    の面積の比が0.10以上で0.17以下であることを
    特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載のインク
    ジェット記録ヘッド。
  7. 【請求項7】導電性インクに接するように配置された一
    対の対向電極間に交流電圧を印加して前記導電性インク
    を沸騰させ、前記導電性インクを小滴化して吐出、飛翔
    させる吐出エネルギー発生部を有することを特徴とする
    請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド。
  8. 【請求項8】プラスチック基材と前記プラスチック基材
    の表面に形成されたフッ素含有の改質層とから成るノズ
    ルプレートに噴射口を形成し、前記噴射口からインクを
    噴射するインクジェット記録ヘッドの製造方法であっ
    て、前記プラスチック基材の表面にフッ素含有のプラズ
    マを照射して前記プラスチック基材の上層部をフッ素含
    有カーボン層に改質することを特徴とするインクジェッ
    ト記録ヘッドの製造方法。
  9. 【請求項9】前記プラスチック基材は酸素を構成成分と
    することを特徴とする請求項8に記載のインクジェット
    記録ヘッドの製造方法。
  10. 【請求項10】前記プラスチック基材はポリイミドを主
    成分とすることを特徴とする請求項8に記載のインクジ
    ェット記録ヘッドの製造方法。
  11. 【請求項11】前記プラスチック基材に0V〜−40V
    のRFバイアス電圧を印加しながら前記プラスチック基
    材の表面にフッ素含有のプラズマを照射して前記プラス
    チック基材の上層部をフッ素含有カーボン層に改質する
    ことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1に記載
    のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
  12. 【請求項12】前記プラスチック基材に−5V〜−35
    VのRFバイアス電圧を印加しながら前記プラスチック
    基材の表面にフッ素含有のプラズマを照射して前記プラ
    スチック基材の上層部をフッ素含有カーボン層に改質す
    ることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1に記
    載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019051639A (ja) * 2017-09-14 2019-04-04 東芝テック株式会社 インクジェットヘッド及びインクジェットプリンタ
JP2019051636A (ja) * 2017-09-14 2019-04-04 東芝テック株式会社 インクジェットヘッド及びインクジェットプリンタ
JP2022071092A (ja) * 2017-09-14 2022-05-13 東芝テック株式会社 インクジェットヘッド及びインクジェットプリンタ

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JP2019051636A (ja) * 2017-09-14 2019-04-04 東芝テック株式会社 インクジェットヘッド及びインクジェットプリンタ
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