JPH10324774A - セルロースアセテート溶液の調製方法およびセルロースアセテートフイルムの製造方法 - Google Patents

セルロースアセテート溶液の調製方法およびセルロースアセテートフイルムの製造方法

Info

Publication number
JPH10324774A
JPH10324774A JP15034197A JP15034197A JPH10324774A JP H10324774 A JPH10324774 A JP H10324774A JP 15034197 A JP15034197 A JP 15034197A JP 15034197 A JP15034197 A JP 15034197A JP H10324774 A JPH10324774 A JP H10324774A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cellulose acetate
cooling
solvent
boiling point
mixture
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP15034197A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3691637B2 (ja
Inventor
Isao Ikuhara
功 生原
Hidekazu Yamazaki
英数 山崎
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Photo Film Co Ltd filed Critical Fuji Photo Film Co Ltd
Priority to JP15034197A priority Critical patent/JP3691637B2/ja
Publication of JPH10324774A publication Critical patent/JPH10324774A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3691637B2 publication Critical patent/JP3691637B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Processes Of Treating Macromolecular Substances (AREA)
  • Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
  • Moulding By Coating Moulds (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 冷却溶解法により、迅速なゲル化が可能なセ
ルロースアセテート溶液を、比較的高めの冷却温度で調
製する。 【解決手段】 加温する工程前、工程中または工程後
に、沸点が30乃至170℃のアルコールまたは沸点が
30乃至170℃の炭化水素を混合物に添加する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セルロースアセテ
ート溶液の調製方法およびセルロースアセテートフイル
ムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】セルロースアセテートフイルムは、その
強靭性と難燃性から各種の写真材料や光学材料に用いら
れている。セルロースアセテートフイルムは、代表的な
写真感光材料の支持体である。また、セルロースアセテ
ートフイルムは、その光学的等方性から、近年市場の拡
大している液晶表示装置にも用いられている。液晶表示
装置における具体的な用途としては、偏光板の保護フイ
ルムおよびカラーフィルターが代表的である。写真材料
や光学材料として要求されるフイルムの品質を満足する
ためには、セルロースアセテートの平均酢化度が58.
0乃至62.5%であることが必要である。平均酢化度
が58%以上であるセルロースアセテートは、一般にト
リアセチルセルロース(TAC)に分類される。セルロ
ースアセテートフイルムは、一般にソルベントキャスト
法により製造する。ソルベントキャスト法では、セルロ
ースアセテートを溶媒中に溶解した溶液(ドープ)を支
持体上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成す
る。
【0003】ソルベントキャスト法については、多くの
文献に記載がある。例えば、特公平5−17844号公
報には、高濃度ドープを冷却ドラム上に流延することに
より、流延後、剥ぎ取りまでの時間を短縮することが提
案されている。最近では、セルロースアセテートと有機
溶媒の混合物を冷却し、さらに加温することによって、
有機溶媒中にセルロースアセテートを溶解してセルロー
スアセテート溶液を調製する方法が提案されている(欧
州特許出願0723986A1号および同072399
3A1号の各明細書記載)。この冷却工程と加温工程を
有する方法(以下、冷却溶解法と称する)によると、従
来の方法では溶解することができなかった、セルロース
アセテートと有機溶媒の組み合わせであっても、溶液を
調製することができる。冷却溶解法は、溶解性が低いト
リアセチルセルロース(平均酢化度が58%以上)から
フイルムを製造する場合に特に有効である。
【0004】冷却溶解法に使用する有機溶媒としては、
アセトン(欧州特許出願0723986A1号明細
書)、アセトンと炭素原子数が3乃至12のエーテル、
炭素原子数が4乃至12のケトン、炭素原子数が3乃至
12のエステルおよび炭素原子数が1乃至6のアルコー
ルから選ばれる有機溶媒との混合溶媒、あるいは炭素原
子数が3乃至12のエーテル、炭素原子数が4乃至12
のケトンおよび炭素原子数が3乃至12のエステルから
選ばれる有機溶媒(欧州特許出願0723993A1号
明細書)が提案されている。欧州特許出願072399
3A1号明細書には、エーテル、ケトンまたはエステル
に加えて、炭素原子数が1乃至6のアルコールを併用し
てもよい旨の記載がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】有機溶媒としてエーテ
ル、ケトンまたはエステルに加えて、アルコールを併用
すると、調製したセルロースアセテート溶液が迅速にゲ
ル化する。前述したように、ソルベントキャスト法によ
るセルロースアセテートフイルムの製造では、ドープ
(溶液)の流延後、剥ぎ取りまでの時間を短縮すること
が重要な課題になっている。アルコールのようなセルロ
ースアセテートの貧溶媒を他の有機溶媒と併用すると、
溶液が迅速にゲル化して、セルロースアセテートフイル
ムの製造に要する時間を著しく短縮することができる。
従って、セルロースアセテートフイルムの製造では、ア
ルコールのような貧溶媒を他の有機溶媒と併用する方法
が最も好ましいと考えられている。
【0006】本発明者が、アルコールのような貧溶媒を
他の有機溶媒と併用する方法について、さらに研究を進
めたところ、貧溶媒の使用によって冷却溶解法に問題が
生じていることが判明した。本発明者の研究によると、
貧溶媒の使用する場合は、冷却溶解法における冷却温度
を低めに設定するか、あるいは調製する溶液の濃度を低
くする必要がある。前述したように、冷却溶解法を使用
するとセルロースアセテートの有機溶媒への溶解性が著
しく向上する。しかし、貧溶媒を他の有機溶媒と併用す
ると、この冷却溶解法の効果が損なわれ、冷却温度を低
めに設定しないと、高濃度溶液を調製することが難しく
なる。冷却温度を低めに設定するためには、大型の強力
な冷却装置を使用する必要がある。また、低めの冷却温
度を維持するためには、多量のエネルギーを消費する必
要がある。一方、セルロースアセテートフイルムの製造
のためには、ある程度の高い濃度のセルロースアセテー
ト溶液をドープとして使用する必要がある。
【0007】本発明の目的は、迅速なゲル化が可能なセ
ルロースアセテート溶液を、比較的高めの冷却温度で調
製することである。また、本発明の目的は、比較的簡単
な装置を用いて短時間で、優れたセルロースアセテート
フイルムを製造することでもある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、下記
(1)〜(8)により達成された。 (1)58.0乃至62.5%の平均酢化度を有するセ
ルロースアセテートと、炭素原子数が3乃至12のエス
テル、炭素原子数が3乃至12のケトンおよび炭素原子
数が3乃至12のエーテルから選ばれる有機溶媒との混
合物を−100乃至−10℃に冷却する工程、および冷
却した混合物を0乃至150℃に加温して、有機溶媒中
にセルロースアセテートを溶解する工程からなるセルロ
ースアセテート溶液の調製方法であって、混合物を冷却
する工程が終了してから、加温する工程前、工程中また
は工程後に、沸点が30乃至170℃のアルコールまた
は沸点が30乃至170℃の炭化水素を混合物に添加す
ることを特徴とするセルロースアセテート溶液の調製方
法。
【0009】(2)エステル、ケトンおよびエーテルか
ら選ばれる有機溶媒50乃至95重量部に対して、沸点
が30乃至170℃のアルコールまたは沸点が30乃至
170℃の炭化水素を5乃至50重量部用いる(1)に
記載のセルロースアセテート溶液の調製方法。 (3)58.0乃至62.5%の平均酢化度を有するセ
ルロースアセテートと、炭素原子数が3乃至12のエス
テル、炭素原子数が3乃至12のケトンおよび炭素原子
数が3乃至12のエーテルから選ばれる有機溶媒に、さ
らに炭素原子数が1乃至5の直鎖状一価アルコールを加
えた混合物を冷却する(1)に記載のセルロースアセテ
ート溶液の調製方法。 (4)エステル、ケトンおよびエーテルから選ばれる有
機溶媒50乃至95重量部に対して、直鎖状一価アルコ
ールを1乃至30重量部、そして沸点が30乃至170
℃のアルコールまたは沸点が30乃至170℃の炭化水
素を1乃至30重量部用いる(3)に記載のセルロース
アセテート溶液の調製方法。
【0010】(5)混合物を冷却する工程が終了してか
ら、加温する工程前、工程中または工程後に、沸点が3
0乃至170℃のアルコールまたは沸点が30乃至17
0℃の炭化水素に加えて、炭素原子数が1乃至5の直鎖
状一価アルコールを混合物に添加する(1)に記載のセ
ルロースアセテート溶液の調製方法。 (6)エステル、ケトンおよびエーテルから選ばれる有
機溶媒50乃至95重量部に対して、沸点が30乃至1
70℃のアルコールまたは沸点が30乃至170℃の炭
化水素を1乃至30重量部、そして直鎖状一価アルコー
ルを1乃至30重量部用いる(5)に記載のセルロース
アセテート溶液の調製方法。 (7)加温する工程中または工程後に、沸点が30乃至
170℃のアルコールまたは沸点が30乃至170℃の
炭化水素を混合物に添加する(1)に記載のセルロース
アセテート溶液の調製方法。 (8)(1)乃至(7)に記載の方法により調製したセ
ルロースアセテート溶液を支持体上に流延する工程およ
び溶媒を蒸発させてフイルムを形成する工程からなるセ
ルロースアセテートフイルムの製造方法。
【0011】
【発明の効果】本発明者の研究により、貧溶媒(沸点が
30乃至170℃のアルコールまたは沸点が30乃至1
70℃の炭化水素)は、混合物を冷却する工程が終了し
てから混合物に添加しても、貧溶媒の効果(調製される
溶液の迅速なゲル化)が得られることが判明した。そし
て、混合物を冷却する工程が終了してから貧溶媒を混合
物に添加すると、冷却溶解法の効果(セルロースアセテ
ートの有機溶媒への溶解性の向上)が損なわれない。本
発明の方法では、貧溶媒を使用しているにもかかわら
ず、比較的高めの冷却温度による冷却溶解法で、高濃度
のセルロースアセテート溶液を調製することができる。
さらに貧溶媒を使用した効果によって、短時間で優れた
セルロースアセテートフイルムを製造することもでき
る。
【0012】
【発明の実施の形態】
[セルロースアセテート]本発明に用いるセルロースア
セテートは、平均酢化度(アセチル化度)が58.0か
ら62.5%である。酢化度とは、セルロース単位重量
当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:
D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)
におけるアセチル化度の測定および計算に従う。本発明
が定義するセルロースアセテートの酢化度の範囲は、前
述したように、写真用支持体や光学フイルムとして要求
される品質を満足するために必要とされる値である。
【0013】セルロースアセテートは、綿花リンターま
たは木材パルプから合成することができる。綿花リンタ
ーと木材パルプを混合して用いてもよい。一般に木材パ
ルプから合成する方が、コストが低く経済的である。た
だし、綿花リンターを混合することにより、剥ぎ取り時
の負荷を軽減できる。また、綿花リンターを混合する
と、短時間に製膜しても、フイルムの面状があまり悪化
しない。セルロースアセテートは、一般に、酢酸−無水
酢酸−硫酸でセルロースを酢化して合成する。工業的に
は、メチレンクロリドを溶媒とするメチクロ法あるいは
セルロースアセテートの非溶媒(例、ベンゼン、トルエ
ン)を添加して繊維状で酢化する繊維状酢化法が用いら
れる。セルロースアセテートの粘度平均重合度(DP)
は、250以上であることが好ましく、290以上であ
ることがさらに好ましい。
【0014】[有機溶媒(主溶媒、貧溶媒、補助溶
媒)]本発明では、セルロースアセテート溶液の調製に
有機溶媒を使用する。有機溶媒は、メチレンクロリドの
ようなハロゲン化炭化水素を実質的に含まないことが好
ましい。「実質的に含まない」とは、有機溶媒中のハロ
ゲン化炭化水素の割合が5重量%未満(好ましくは2重
量%未満)であることを意味する。なお、セルロースア
セテートフイルムを製造する場合は、製造したフイルム
からメチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素が全
く検出されないことが好ましい。本発明が使用する有機
溶媒は、冷却工程前にセルロースアセテートと混合する
溶媒(以下、主溶媒と称する)、冷却工程後に添加する
貧溶媒および任意に添加できる補助溶媒の三種類に分類
できる。
【0015】主溶媒は、炭素原子数が3乃至12のエー
テル、炭素原子数が3乃至12のケトンおよび炭素原子
数が3乃至12のエステルから選ばれる。エーテル、ケ
トンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。
エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、
−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ
以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができ
る。エーテル、ケトンおよびエステルは、アルコール性
水酸基のような他の官能基を有していてもよい。炭素原
子数が3乃至12のエーテルの例には、ジイソプロピル
エーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,
4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロ
フラン、アニソールおよびフェネトールが含まれる。炭
素原子数が3乃至12のケトンの例には、アセトン、メ
チルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケト
ン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが
含まれる。
【0016】炭素原子数が3乃至12のエステルの例に
は、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ペンチル、酢酸メ
チル、酢酸エチル、酢酸ペンチルおよび酢酸2−メトキ
シエチルが含まれる。二種類以上の官能基を有する有機
溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メ
トキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含ま
れる。二種類以上のエーテル、ケトンまたはエステルを
主溶媒として併用してもよい。エーテルよりも、ケトン
およびエステルの方が好ましい。ケトンよりもエステル
の方が好ましい。エステルの炭素原子数は、3乃至10
であることが好ましく、3乃至8であることがより好ま
しく、3乃至6であることがさらに好ましく、3乃至5
であることが最も好ましい。酢酸メチルが特に好ましく
用いられる。
【0017】貧溶媒は、沸点が30乃至170℃のアル
コールおよび沸点が30乃至170℃の炭化水素から選
ばれる。アルコールは一価であることが好ましい。アル
コールの炭化水素部分は、直鎖であっても、分岐を有し
ていても、環状であってもよい。炭化水素部分は、飽和
脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水
酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アル
コールの例には、メタノール(沸点:64.65℃)、
エタノール(78.325℃)、1−プロパノール(9
7.15℃)、2−プロパノール(82.4℃)、1−
ブタノール(117.9℃)、2−ブタノール(99.
5℃)、t−ブタノール(82.45℃)、1−ペンタ
ノール(137.5℃)、2−メチル−2−ブタノール
(101.9℃)およびシクロヘキサノール(161
℃)が含まれる。
【0018】炭化水素は、直鎖であっても、分岐を有し
ていても、環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪
族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化
水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。である
ことがさらに好ましい。炭化水素の例には、シクロヘキ
サン(沸点:80.7℃)、ヘキサン(69℃)、ベン
ゼン(80.1℃)、トルエン(110.6℃)および
キシレン(138.4〜144.4℃)が含まれる。貧
溶媒は、混合物を冷却する工程が終了してから、加温す
る工程前、工程中または工程後に、混合物に添加する。
加温する工程中または工程後に添加することが好まし
い。貧溶媒の添加後、混合物は良く混合することが好ま
しい。主溶媒と貧溶媒との比率は、主溶媒50乃至95
重量部に対して貧溶媒を5乃至50重量部用いることが
好ましく、主溶媒60乃至92重量部に対して貧溶媒を
8乃至40重量部用いることがより好ましく、主溶媒6
5乃至90重量部に対して貧溶媒を10乃至35重量部
用いることがさらに好ましく、主溶媒70乃至88重量
部に対して貧溶媒を12乃至30重量部用いることが最
も好ましい。
【0019】任意に添加できる補助溶媒としては、炭素
原子数が1乃至5の直鎖状一価アルコールを用いること
が好ましい。アルコールの水酸基は、炭化水素直鎖の末
端に結合してもよいし(第一級アルコール)、中間に結
合してもよい(第二級アルコール)。補助溶媒は、具体
的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、
2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、
1−ペンタノール、2−ペンタノールおよび3−ペンタ
ノールから選ばれる。直鎖状一価アルコールの炭素原子
数は、1乃至4であることが好ましく、1乃至3である
ことがさらに好ましく、1または2であることが最も好
ましい。エタノールが特に好ましく用いられる。補助溶
媒の定義は、前記貧溶媒のアルコールの定義と重複す
る。従って、貧溶媒として使用するアルコールと同じア
ルコールを、補助溶媒として使用してもよい。例えば、
貧溶媒としてエタノールを使用する場合、エタノールを
さらに補助溶媒としても使用することができる。また、
貧溶媒として使用するアルコールとは異なる種類のアル
コールを、補助溶媒として使用してもよい。例えば、貧
溶媒としてエタノールを使用する場合、貧溶媒の定義に
含まれる他のアルコールを補助溶媒として使用すること
ができる。補助溶媒の添加時期について、特に制限はな
い。補助溶媒を主溶媒と同時に使用してもよいし、補助
溶媒を貧溶媒と同時に使用してもよい。
【0020】補助溶媒を主溶媒および貧溶媒に加えて使
用する場合、三種類の溶媒の比率は、主溶媒50乃至9
5重量部に対して貧溶媒を1乃至30重量部および補助
溶媒を1乃至30重量部用いることが好ましく、主溶媒
60乃至92重量部に対して貧溶媒を2乃至27重量部
および補助溶媒を2乃至27重量部用いることがより好
ましく、主溶媒65乃至90重量部に対して貧溶媒を3
乃至24重量部および補助溶媒を3乃至24重量部用い
ることがさらに好ましく、主溶媒70乃至88重量部に
対して貧溶媒を4乃至22重量部および補助溶媒を4乃
至22重量部用いることが最も好ましい。さらに他の有
機溶媒を併用して、四種以上の混合溶媒としてもよい。
四種以上の混合溶媒を用いる場合の4番目以降の溶媒
も、前述した三種類の溶媒から選択することが好まし
い。前述した三種類の溶媒以外の溶媒して、ニトロメタ
ンを併用してもよい。
【0021】[溶液調製(冷却溶解法)]本発明では、
冷却溶解法により、以上のような混合溶媒中にセルロー
スアセテートを溶解して、溶液(ドープ)を調製する。
溶液の調製においては、最初に、室温で有機溶媒(主溶
媒)中にセルロースアセテートを攪拌しながら徐々に添
加する。この段階では、セルロースアセテートは、一般
に有機溶媒中で膨潤するが溶解しない。なお、室温でセ
ルロースアセテートを溶解できる溶媒であっても、冷却
溶解法によると迅速に均一な溶液が得られるとの効果が
ある。セルロースアセテートの量は、この混合物中に1
0乃至40重量%含まれるように調整する。セルロース
アセテートの量は、10乃至30重量%であることがさ
らに好ましい。有機溶媒中には、後述する任意の添加剤
を添加しておいてもよい。
【0022】次に、混合物を−100乃至−10℃(好
ましくは−80乃至−10℃、さらに好ましくは−50
乃至−20℃、最も好ましくは−50乃至−30℃)に
冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール
浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液
(−30乃至−20℃)中で実施できる。このように冷
却すると、セルロースアセテートと有機溶媒の混合物は
固化する。冷却速度は、4℃/分以上であることが好ま
しく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12
℃/分以上であることが最も好ましい。冷却速度は、速
いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限で
あり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして1
00℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、
冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を冷
却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間
で割った値である。
【0023】さらに、これを0乃至150℃に加温する
と、混合溶媒中にセルロースアセテートが溶解する。昇
温は、室温中に放置するだけでもよし、温浴中で加温し
てもよい。このようにして、均一な溶液が得られる。な
お、溶解が不充分である場合は、冷却、加温の操作を繰
り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視に
より溶液の外観を観察するだけで判断することができ
る。加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、
8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分
以上であることが最も好ましい。加温速度は、速いほど
好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、
1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃
/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を
開始する時の温度と最終的な加温温度との差を加温を開
始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割っ
た値である。この加温工程前、工程中または工程後に、
前述した貧溶媒を添加する。添加方法について特に制限
はないが、生産性を考慮すると、可能な限り迅速に添加
して混合することが好ましい。
【0024】以上のようにして、均一な溶液が得られ
る。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作
を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目
視により溶液の外観を観察するだけで判断することがで
きる。冷却溶解方法においては、冷却時の結露による水
分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望まし
い。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加
温時の減圧すると、溶解時間を短縮することができる。
加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用い
ることが望ましい。なお、セルロースアセテート(酢化
度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却溶解
法によりメチルアセテート中に溶解した20重量%の溶
液は、示差走査熱量測定(DSC)によると、33℃近
傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、こ
の温度以下では均一なゲル状態となる。従って、この溶
液は疑似相転移温度以上、好ましくはゲル相転移温度プ
ラス10℃程度の温度で保存する必要がある。ただし、
この疑似相転移温度は、セルロースアセテートの平均酢
化度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒に
より異なる。
【0025】[フイルムの製造]調製したセルロースエ
ステル溶液は、フイルムの製造に用いることができる。
具体的には、溶液をソルベントキャスト法におけるドー
プとして利用する。ドープは、支持体上に流延し、溶媒
を蒸発させてフイルムを形成する。流延前のドープは、
固形分量が18乃至35%となるように濃度を調整する
ことが好ましい。支持体表面は、鏡面状態に仕上げてお
くことが好ましい。支持体としては、ドラムまたはバン
ドが用いられる。ソルベントキャスト法における流延お
よび乾燥方法については、米国特許2336310号、
同2367603号、同2492078号、同2492
977号、同2492978号、同2607704号、
同2739069号、同2739070号、英国特許6
40731号、同736892号各明細書、特公昭45
−4554号、同49−5614号、特開昭60−17
6834号、同60−203430号、同62−115
035号各公報に記載がある。
【0026】ドープは、表面温度が10℃以下の支持体
上に流延することが好ましい。流延した後、2秒以上風
に当てて乾燥することが好ましい。得られたフイルムを
支持体から剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐
次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させる
こともできる。以上の方法は、特公平5−17844号
公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取
りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を
実施するためには、流延時の支持体表面温度においてド
ープがゲル化することが必要である。本発明に従い製造
したドープは、この条件を満足する。本発明に従い製造
するフイルムの厚さは、5乃至500μmであることが
好ましく、20乃至200μmであることがさらに好ま
しく、60乃至120μmであることが最も好ましい。
【0027】[その他の添加剤]セルロースアセテート
フイルムには、機械的物性を改良するため、または乾燥
速度を向上するために、可塑剤を添加することができ
る。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸
エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリ
フェニルフォスフェート(TPP)およびトリクレジル
ホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステ
ルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステル
が代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチル
フタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DE
P)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタ
レート、(DOP)およびジエチルヘキシルフタレート
(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、
クエン酸アセチルトリエチル(OACTE)およびクエ
ン酸アセチルトリブチル(OACTB)が含まれる。そ
の他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチ
ル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチ
ル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル
酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DO
P、DEHP)が好ましく用いられる。DEPが特に好
ましい。
【0028】さらに、一般に結晶核形成剤(核剤)とし
て知られている化合物を添加してもよい。結晶核形成剤
は、従来から、結晶性高分子(特にポリプロピレン)を
溶融成型する場合に、その光学的性質、機械的性質、熱
的性質や成型性の向上するための改質剤として使用され
ている。本発明では、そのような化合物を結晶核形成剤
として使用するのではなく、ドープのゲル化温度を高く
するために使用することができる。上記化合物は、その
両親媒性のある化学構造から、セルロースアセテートと
の相互作用を有する。一方、上記化合物の自己凝集作用
がアセチルセルロースよりも高いため、結果としてアセ
チルセルロースの凝集を促し、ゲル化温度が高くなると
考えられる。上記化合物は、ドープの粘度を下げる効果
がある。上記化合物は、有機溶媒とセルロースアセテー
トの水酸基との溶媒和を妨害するため、ポリマーの広が
りを抑えるためであると考えられる。
【0029】結晶核形成剤(核剤)として知られている
化合物の例には、リン酸2,2’−メチレンビス(4,
6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム(アデカスタ
ブNA−11、旭電化(株)製)、リン酸ビス(4−t
−ブチルフェニル)ナトリウム(アデカスタブNA−1
0、旭電化(株)製)、ビス(p−メチルベンジリデ
ン)ソルビドール(ゲルオールMD、新日本理化(株)
製)およびビス(p−エチルビンジリデン)ソルビトー
ル(NC−4、三井東圧化学(株)製)が含まれる。セ
ルロースアセテートフイルムには、劣化防止剤(例、過
酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕
獲剤)や紫外線防止剤を添加してもよい。劣化防止剤に
ついては、特開平5−1907073号公報に記載があ
る。紫外線防止剤については、特開平7−11056号
公報に記載がある。
【0030】[製造装置]本発明に好ましく用いられる
製造装置について、図面を引用しながら説明する。図1
は、本発明の方法の各工程および装置の組み合わせを示
すフローチャートである。膨潤工程において、セルロー
スアセテート(P)と主溶媒(S1)は、攪拌タンク
(1)に加える。攪拌タンク内でセルロースアセテート
と主溶媒とを混合し、セルロースアセテートを主溶媒に
より膨潤させる。膨潤した混合物は、送液ポンプ(2)
から、冷却装置(3)に送られる。送液ポンプ(2)と
しては、粘性のある液体の送液に適しているスネークポ
ンプを用いる。
【0031】冷却装置(3)は、筒状の容器、膨潤混合
物を攪拌しながら筒状の容器内を搬送するため容器内に
設けられている回転可能な螺旋状の搬送機構(3−
1)、および容器内の膨潤混合物を冷却するため容器の
周囲に設けられている冷却機構(3−2)からなる。螺
旋状の搬送機構(3−1)が回転することにより、膨潤
混合物を滞留することなく(例えば、容器の壁面に滞留
している膨潤混合物もかきとられて)、剪断、混合かつ
冷却しながら、送液する。図1に示す冷却機構(3−
2)はジャケット状に容器の周囲に装着されている。冷
却機構(3−2)の内部には、冷媒タンク(21)から
送られてくる冷媒(24)が流れている。冷媒として
は、例えば、メタノールと水の混合物が用いられる。冷
却に使用した冷媒は、冷媒タンク(21)に戻る。冷媒
は冷凍機(22)で冷却される。この冷却により発生す
る熱は、クーリングタワー(23)で処理する。図1に
示す冷却装置(3)は、さらに−105乃至−15℃に
冷却した主溶媒を容器内に補充する機構を有する。補充
用主溶媒(S2)は、冷却ストックタンク(19)で必
要な温度まで冷却され、送液ポンプ(20)により冷却
装置(3)の容器に送られる。このように冷却された補
充溶媒を添加することにより、膨潤混合物を極めて迅速
に冷却することができる。以上の冷却装置内で、膨潤混
合物は迅速かつ均一に冷却される。冷却された膨潤混合
物は、加温装置(4)に送られる。
【0032】加温装置(4)は、筒状の容器、容器内で
の物質の流れを二つに分割し、分割された物質の流れの
向きを容器内で回転させるため容器内に複数設けられて
いる仕切りエレメント(4−1)、および容器内の膨潤
混合物を加温するため容器の周囲に設けられている加温
機構(4−2)からなる。容器内の仕切りエレメントを
膨潤混合物が通過することにより、膨潤混合物が均一に
加温される。図1に示す加温機構(4−2)はジャケッ
ト状に容器の周囲に装着されている。加温機構(4−
2)の内部には、恒温槽(27)から送られてくる温水
が流れている。加温に使用された温水は、熱交換機(2
5)においてクーリングタワー(23)からの水との間
で熱交換される。これにより、装置全体のエネルギー効
率を高めることができる。熱交換された温水は、恒温槽
(27)に戻る。以上の加温装置内で、膨潤混合物は迅
速かつ均一に加温され、セルロースアセテートが溶媒中
に溶解する。得られた溶液は、送液ポンプ(5)によ
り、ヒーター(6)、フィルター(7)、圧力調整バル
ブ(8)を通過し、温度調整、濾過および圧力調整が行
なわれる。
【0033】溶液は、さらに濃縮タンク(9)で濃縮さ
れる。すなわち、ヒーター(6)および圧力調整バルブ
(8)により高温高圧状態となった溶液は、濃縮タンク
(9)内で急激に圧力を低下させることにより溶媒が蒸
発して、濃縮される。蒸発した溶媒は、液化装置(1
8)を経て、冷却ストックタンク(19)に送液され
る。液化した溶媒は、補充用主溶媒(S2)と共に、再
びポンプ(20)により冷却装置(3)の容器に送られ
る。濃縮された溶液は、送液ポンプ(10)により、温
度調整装置(11)を経て、ストックタンク(12)に
送られる。以上の装置で本発明の方法を実施するために
は、図1のA、BまたはCの個所で貧溶媒を添加するこ
とが好ましい。Aでは、冷却装置(3)と加温装置
(4)の接続部分において貧溶媒を補充する。Bでは、
加温装置(4)に設けた入口から貧溶媒を補充する。C
では、ストックタンク(12)に貧溶媒を補充する。B
またはCの個所で貧溶媒を補充することが好ましい。な
お、AまたはBの個所で貧溶媒を補充する場合は、濃縮
タンク(9)から回収した主溶媒と貧溶媒との混合溶媒
から、主溶媒を分離して再利用する。
【0034】図1に示す装置には、さらにソルベントキ
ャスト法によるセルロースアセテートフイルムの製造装
置が付属している。ストックタンク(12)内の溶液
は、送液ポンプ(10)によりフィルター(14)を経
て、スリット状のダイ(15)に送られる。溶液はダイ
(15)によりフイルム状に押し出され、バンド状の支
持体(16)上に流延され、乾燥後、はぎ取られ、フイ
ルム(17)が製造される。フイルム(17)は、さら
に乾燥して、巻き取られる。
【0035】
【実施例】
[実施例1] (処方1、調製方法a、冷却温度−70℃)室温におい
て、下記の組成の混合物をタンクに投入し、1時間攪拌
してセルロースアセテートを膨潤させた。膨潤混合物を
−70℃まで冷却し(冷却速度:2℃/秒)、さらに5
0℃まで加温して(加温速度:1℃/秒)、セルロース
アセテートを酢酸メチルに溶解した。さらに50℃で、
エタノール16.6重量部(補助溶媒として12.45
重量部+貧溶媒として4.15重量部)を添加してセル
ロースアセテート溶液を調製した。
【0036】 ──────────────────────────────────── 混合物組成(1a) ──────────────────────────────────── セルロースアセテート(平均酢化度:59.5%) 17重量部 酢酸メチル(主溶媒) 66.4重量部 トリフェニルホスフェート(可塑剤) 1.81重量部 ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 0.91重量部 ────────────────────────────────────
【0037】得られた溶液を観察したところ、セルロー
スアセテートが良く溶解しており、未溶解物は認められ
なかった。さらに、セルロースアセテート溶液を50℃
にて2週間放置したところ、未溶解物の析出は認められ
なかった。得られた溶液を、有効長が6mのバンド流延
機を用いてバンド状に流延し、乾燥後、フイルムをバン
ドから剥ぎ取ったところ、良好なセルロースアセテート
フイルムが得られた。
【0038】(処方1、調製方法b、冷却温度−70
℃)室温において、下記の組成の混合物をタンクに投入
し、1時間攪拌してセルロースアセテートを膨潤させ
た。膨潤混合物を−70℃まで冷却し(冷却速度:2℃
/秒)、さらに50℃まで加温して(加温速度:1℃/
秒)、セルロースアセテートを酢酸メチルに溶解した。
さらに50℃で、エタノール(貧溶媒)4.15重量部
を添加してセルロースアセテート溶液を調製した。
【0039】 ──────────────────────────────────── 混合物組成(1b) ──────────────────────────────────── セルロースアセテート(平均酢化度:59.5%) 17重量部 酢酸メチル(主溶媒) 66.4重量部 エタノール(補助溶媒) 12.4重量部 トリフェニルホスフェート(可塑剤) 1.81重量部 ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 0.91重量部 ────────────────────────────────────
【0040】得られた溶液を観察したところ、セルロー
スアセテートが良く溶解しており、未溶解物は認められ
なかった。さらに、セルロースアセテート溶液を50℃
にて2週間放置したところ、未溶解物の析出は認められ
なかった。
【0041】(処方1、調製方法x、冷却温度−70
℃)室温において、下記の組成の混合物をタンクに投入
し、1時間攪拌してセルロースアセテートを膨潤させ
た。膨潤混合物を−70℃まで冷却し(冷却速度:2℃
/秒)、さらに50℃まで加温して(加温速度:1℃/
秒)、セルロースアセテートを酢酸メチルに溶解してセ
ルロースアセテート溶液を調製した。
【0042】 ──────────────────────────────────── 混合物組成(1x) ──────────────────────────────────── セルロースアセテート(平均酢化度:59.5%) 17重量部 酢酸メチル(主溶媒) 66.4重量部 エタノール 16.6重量部 (補助溶媒として12.45重量部+貧溶媒として4.15重量部) トリフェニルホスフェート(可塑剤) 1.81重量部 ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 0.91重量部 ────────────────────────────────────
【0043】得られた溶液を観察したところ、セルロー
スアセテートが良く溶解しており、未溶解物は認められ
なかった。セルロースアセテート溶液を50℃にて2週
間放置したところ、未溶解物の析出が認められ、溶液に
濁りが生じた。
【0044】(処方、調製方法および冷却温度の変更)
処方(1〜6)、調製方法(a、b、x)および冷却温
度(−70℃、−50℃、−30℃)を変更して、様々
なセルロースアセテート溶液を調製した。処方2〜6
は、処方1の貧溶媒であるエタノールを、以下の貧溶媒
に変更しただけである。 処方2:1−プロパノール 処方3:イソプロパノール 処方4:1−ブタノール 処方5:t−ブタノール 処方6:シクロヘキサン
【0045】また、調製方法a、bおよびxは、以下の
方法である。 調製方法a:セルローストリアセテートを、可塑剤(ト
リフェニルホスフェートとビフェニルジフェニルホスフ
ェート)を溶解した主溶媒(酢酸メチル)中に攪拌しな
がら徐々に添加し、1時間膨潤後、前記のように冷却し
た後、50℃まで加温し、攪拌しながら貧溶媒と補助溶
媒(エタノール)とを添加する。 調製方法b:セルローストリアセテートを、可塑剤(ト
リフェニルホスフェートとビフェニルジフェニルホスフ
ェート)を溶解した主溶媒(酢酸メチル)と補助溶媒
(エタノール)との混合溶媒中に攪拌しながら徐々に添
加し、1時間膨潤後、前記のように冷却した後、50℃
まで加温し、攪拌しながら貧溶媒を添加する。 調製方法x:セルローストリアセテートを、可塑剤(ト
リフェニルホスフェートとビフェニルジフェニルホスフ
ェート)を溶解した主溶媒(酢酸メチル)、補助溶媒
(エタノール)と貧溶媒との混合溶媒中に攪拌しながら
徐々に添加し、1時間膨潤後、前記のように冷却した
後、50℃まで加温する。
【0046】得られた溶液を観察し、セルロースアセテ
ートの未溶解物が非常の多く認められるもの(評価:
D)、未溶解物が少し認められるもの(評価:C)およ
びセルロースアセテートが良く溶解しており、未溶解物
が認められないもの(評価:BまたはA)に分類した。
未溶解物が認められないセルロースアセテート溶液は、
さらに50℃にて2週間放置して、未溶解物の析出が認
められ、溶液に濁りが生じたもの(評価:B)と未溶解
物の析出が認められなかったもの(評価:A)に分類し
た。以上の評価結果を下記第1表に示す。
【0047】
【表1】 第1表 ──────────────────────────────────── 調製 冷却温度:−70℃ 冷却温度:−50℃ 冷却温度:−30℃ 処方\方法 x a b x a b x a b ──────────────────────────────────── 1 B A A C A A D B B 2 B A A C A A D B B 3 B A A C A A D B B 4 B A A C A A D B B 5 B A A C A A D B B 6 B A A C A A D B B ────────────────────────────────────
【0048】[実施例2]平均酢化度59.5%のセル
ロースアセテートに代えて、平均酢化度60.2%のセ
ルロースアセテートを使用した以外は、実施例1と同様
にして各種セルロースアセテート溶液を調製して評価し
た。評価結果を下記第2表に示す。
【0049】
【表2】 第2表 ──────────────────────────────────── 調製 冷却温度:−70℃ 冷却温度:−50℃ 冷却温度:−30℃ 処方\方法 x a b x a b x a b ──────────────────────────────────── 1 C B B D B B D B C 2 C B B D B B D B C 3 C B B D B B D B C 4 C B B D B B D B C 5 C B B D B B D B C 6 C B B D B B D B C ────────────────────────────────────
【0050】[実施例3]セルロースアセテートの使用
量を、17重量部から20重量部に変更した以外は、実
施例1と同様にして各種セルロースアセテート溶液を調
製して評価した。評価結果を下記第3表に示す。
【0051】
【表3】 第3表 ──────────────────────────────────── 調製 冷却温度:−70℃ 冷却温度:−50℃ 冷却温度:−30℃ 処方\方法 x a b x a b x a b ──────────────────────────────────── 1 B A A C A A D B B 2 B A A C A A D B B 3 B A A C A A D B B 4 B A A C A A D B B 5 B A A C A A D B B 6 B A A C A A D B B ────────────────────────────────────
【0052】[実施例4]セルロースアセテートの使用
量を、17重量部から20重量部に変更した以外は、実
施例2と同様にして各種セルロースアセテート溶液を調
製して評価した。評価結果を下記第4表に示す。
【0053】
【表4】 第4表 ──────────────────────────────────── 調製 冷却温度:−70℃ 冷却温度:−50℃ 冷却温度:−30℃ 処方\方法 x a b x a b x a b ──────────────────────────────────── 1 C B B D B B D B C 2 C B B D B B D B C 3 C B B D B B D B C 4 C B B D B B D B C 5 C B B D B B D B C 6 C B B D B B D B C ────────────────────────────────────
【0054】[実施例5]実施例1の処方4(貧溶媒:
1−ブタノール)、調製方法aまたはb、冷却温度−3
0℃に相当する方法で、図1に示す装置を用いてセルロ
ースアセテート溶液を調製した。調製方法aまたはbに
より得られた溶液を観察したところ、いずれもセルロー
スアセテートが良く溶解しており、未溶解物は認められ
なかった。さらに、セルロースアセテート溶液を50℃
にて2週間放置したところ、未溶解物の析出は認められ
なかった。調製方法aまたはbにより得られた溶液を、
図1に示す装置を用いてフイルムを製造したところ、い
ずれも良好なセルロースアセテートフイルムが得られ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】製造方法の各工程および装置の組み合わせを示
すフローチャートである。
【符号の説明】
S1 主溶媒 P セルロースアセテート S2 補充用主溶媒 A、B、C 貧溶媒の添加個所 1 攪拌タンク 2 送液ポンプ 3 冷却装置 3−1 螺旋状の搬送機構 3−2 ジャケット状の冷却機構 4 加温装置 4−1 仕切りエレメント 4−2 ジャケット状の加温機構 5 送液ポンプ 6 ヒーター 7 フィルター 8 圧力調整バルブ 9 濃縮タンク 10 送液ポンプ 11 温度調整装置 12 ストックタンク 13 送液ポンプ 14 フィルター 15 ダイ 16 ベルト状支持体 17 フイルム 18 液化装置 19 冷却ストックタンク 20 送液ポンプ 21 冷媒タンク 22 冷凍機 23 クーリングタワー 24 冷媒 25 熱交換機 27 恒温槽

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 58.0乃至62.5%の平均酢化度を
    有するセルロースアセテートと、炭素原子数が3乃至1
    2のエステル、炭素原子数が3乃至12のケトンおよび
    炭素原子数が3乃至12のエーテルから選ばれる有機溶
    媒との混合物を−100乃至−10℃に冷却する工程、
    および冷却した混合物を0乃至150℃に加温して、有
    機溶媒中にセルロースアセテートを溶解する工程からな
    るセルロースアセテート溶液の調製方法であって、混合
    物を冷却する工程が終了してから、加温する工程前、工
    程中または工程後に、沸点が30乃至170℃のアルコ
    ールまたは沸点が30乃至170℃の炭化水素を混合物
    に添加することを特徴とするセルロースアセテート溶液
    の調製方法。
  2. 【請求項2】 エステル、ケトンおよびエーテルから選
    ばれる有機溶媒50乃至95重量部に対して、沸点が3
    0乃至170℃のアルコールまたは沸点が30乃至17
    0℃の炭化水素を5乃至50重量部用いる請求項1に記
    載のセルロースアセテート溶液の調製方法。
  3. 【請求項3】 58.0乃至62.5%の平均酢化度を
    有するセルロースアセテートと、炭素原子数が3乃至1
    2のエステル、炭素原子数が3乃至12のケトンおよび
    炭素原子数が3乃至12のエーテルから選ばれる有機溶
    媒に、さらに炭素原子数が1乃至5の直鎖状一価アルコ
    ールを加えた混合物を冷却する請求項1に記載のセルロ
    ースアセテート溶液の調製方法。
  4. 【請求項4】 エステル、ケトンおよびエーテルから選
    ばれる有機溶媒50乃至95重量部に対して、直鎖状一
    価アルコールを1乃至30重量部、そして沸点が30乃
    至170℃のアルコールまたは沸点が30乃至170℃
    の炭化水素を1乃至30重量部用いる請求項3に記載の
    セルロースアセテート溶液の調製方法。
  5. 【請求項5】 混合物を冷却する工程が終了してから、
    加温する工程前、工程中または工程後に、沸点が30乃
    至170℃のアルコールまたは沸点が30乃至170℃
    の炭化水素に加えて、炭素原子数が1乃至5の直鎖状一
    価アルコールを混合物に添加する請求項1に記載のセル
    ロースアセテート溶液の調製方法。
  6. 【請求項6】 エステル、ケトンおよびエーテルから選
    ばれる有機溶媒50乃至95重量部に対して、沸点が3
    0乃至170℃のアルコールまたは沸点が30乃至17
    0℃の炭化水素を1乃至30重量部、そして直鎖状一価
    アルコールを1乃至30重量部用いる請求項5に記載の
    セルロースアセテート溶液の調製方法。
  7. 【請求項7】 加温する工程中または工程後に、沸点が
    30乃至170℃のアルコールまたは沸点が30乃至1
    70℃の炭化水素を混合物に添加する請求項1に記載の
    セルロースアセテート溶液の調製方法。
  8. 【請求項8】 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の
    方法により調製したセルロースアセテート溶液を支持体
    上に流延する工程および溶媒を蒸発させてフイルムを形
    成する工程からなるセルロースアセテートフイルムの製
    造方法。
JP15034197A 1997-05-22 1997-05-22 セルロースアセテート溶液の調製方法およびセルロースアセテートフイルムの製造方法 Expired - Lifetime JP3691637B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP15034197A JP3691637B2 (ja) 1997-05-22 1997-05-22 セルロースアセテート溶液の調製方法およびセルロースアセテートフイルムの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP15034197A JP3691637B2 (ja) 1997-05-22 1997-05-22 セルロースアセテート溶液の調製方法およびセルロースアセテートフイルムの製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH10324774A true JPH10324774A (ja) 1998-12-08
JP3691637B2 JP3691637B2 (ja) 2005-09-07

Family

ID=15494887

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP15034197A Expired - Lifetime JP3691637B2 (ja) 1997-05-22 1997-05-22 セルロースアセテート溶液の調製方法およびセルロースアセテートフイルムの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3691637B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002371142A (ja) * 2001-06-15 2002-12-26 Fuji Photo Film Co Ltd セルロースエステルフィルムの製造方法
JP2004359826A (ja) * 2003-06-04 2004-12-24 Fuji Photo Film Co Ltd セルロースアシレート系ドープ、セルロースアシレートフィルムおよびセルロースアシレートフイルムの製造方法
JP2005014584A (ja) * 2003-06-04 2005-01-20 Fuji Photo Film Co Ltd セルロースアシレート系ドープ、セルロースアシレートフィルム及びその製造方法
JP2006137802A (ja) * 2004-11-10 2006-06-01 Daicel Chem Ind Ltd セルロースエステル溶液及びその製造方法

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002371142A (ja) * 2001-06-15 2002-12-26 Fuji Photo Film Co Ltd セルロースエステルフィルムの製造方法
JP2004359826A (ja) * 2003-06-04 2004-12-24 Fuji Photo Film Co Ltd セルロースアシレート系ドープ、セルロースアシレートフィルムおよびセルロースアシレートフイルムの製造方法
JP2005014584A (ja) * 2003-06-04 2005-01-20 Fuji Photo Film Co Ltd セルロースアシレート系ドープ、セルロースアシレートフィルム及びその製造方法
JP4662703B2 (ja) * 2003-06-04 2011-03-30 富士フイルム株式会社 セルロースアシレート系ドープ及びセルロースアシレートフィルムの製造方法
JP2006137802A (ja) * 2004-11-10 2006-06-01 Daicel Chem Ind Ltd セルロースエステル溶液及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP3691637B2 (ja) 2005-09-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4081849B2 (ja) セルロースアシレート溶液の調製方法、セルロースアシレートフィルムの製造方法
JP2000095876A (ja) セルロースエステルフイルムの製造方法
JP3978883B2 (ja) セルロースエステルフィルムの製造方法およびセルロースエステルフィルム
KR20060044375A (ko) 필름을 제조하는 용액 캐스팅 방법
JP3619592B2 (ja) セルロースアセテート溶液およびその調製方法
JP4614116B2 (ja) セルロースアシレート溶液の調製方法
JP2002322201A (ja) セルロース混合酸エステル化合物およびそれを用いたフイルム
JPH11246704A (ja) セルロースの低級脂肪酸エステル用可塑剤、セルロースエステルフイルムおよびその製造方法
JP3712215B2 (ja) セルロースアセテート溶液、その調製方法およびセルロースアセテートフイルムの製造方法
JP3691637B2 (ja) セルロースアセテート溶液の調製方法およびセルロースアセテートフイルムの製造方法
JP4114233B2 (ja) セルロースアシレート溶液の調製方法、セルロースアシレートフィルムの製造方法及びセルロースアシレートフィルム
JP3619591B2 (ja) セルロースアセテートフイルムの製造方法
JP4362892B2 (ja) セルロースエステルフィルムの製造方法
JP3561376B2 (ja) セルロースエステル溶液の調製方法およびセルロースエステルフイルムの製造方法
JPH1171464A (ja) セルロース混合エステル溶液及びその調製法
JP3305955B2 (ja) セルロースアセテート溶液、その調製方法およびセルロースアセテートフイルムの製造方法
JP2002059441A (ja) セルロースアシレートフィルムの製造方法
JPH10330538A (ja) セルロースアセテート溶液、その調製方法およびセルロースアセテートフイルムの製造方法
JPH11302388A (ja) セルロースアシレート溶液の調製方法、セルロースアシレートフィルムの製造方法及びセルロースアシレートフィルム
JP2001059001A (ja) セルロースアセテートの冷却混合物
JP3582921B2 (ja) セルロースの低級脂肪酸エステル溶液の製造方法
JP2009120839A (ja) セルロースエステルフィルムの製造方法及びセルロースエステルフィルム
JPH11292988A (ja) セルロースアシレートフィルムの製造方法及びセルロースアシレートフィルム
JP2002003645A (ja) セルロースアセテート溶液およびセルロースアセテートフイルムの製造方法
JPH11322946A (ja) セルローストリアセテート溶液の調製方法、セルローストリアセテートフィルムの製造方法及びセルローストリアセテートフィルム

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20050315

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20050516

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20050614

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20050616

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080624

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080624

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090624

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090624

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100624

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100624

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110624

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110624

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120624

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120624

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130624

Year of fee payment: 8

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

EXPY Cancellation because of completion of term