JPH1030672A - 液封入式防振装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 本体金具と上側取付金具とを結合する防振基
体の大変位を抑制するストッパ機能と、軸直角方向の静
バネ定数の確保とをともに達成する液封入式防振装置に
おいて、軽量化とコストの低減を図る。 【解決手段】 上側取付金具１４が、取付用ボルト３２
を有する上側金具３４と、中央部が下方に凹設されてそ
の外周面に防振基体１６が固着された下側金具３６と
を、全周でかしめ締結することにより、中空状に構成さ
れてなり、前記かしめ締結により上側取付金具１４の外
周部に形成された環状のストッパ部２８が、振動に伴な
う防振基体１６の大変位時に、本体金具１２と一体的に
形成された当接部４２に当接して、防振基体１６の一定
以上の変位を抑制する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、主として自動車エ
ンジン等の振動発生体を防振的に支承するのに使用され
る液封入式防振装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】自動車エンジン等の振動発生体を、その
振動を車体へ伝達させないように支承するマウント等の
液体封入式の防振装置には、例えば、図３に示すよう
に、振動発生体側と支持側とに締結される上側取付金具
１０１と本体金具１０２とを、ゴム弾性体よりなる防振
基体１０３を介して結合し、本体金具１０２の内部に防
振基体１０３と対向するダイヤフラム１０４を配して、
その内部を液封入室１０５として形成し、この液封入室
１０５を仕切部材１０６により２つの液室１０５ａ，１
０５ｂに仕切り、両室をオリフィス１０７を介して連通
させて、オリフィス１０７による両液室１０５ａ，１０
５ｂの液流動効果や防振基体１０３の防振効果により振
動減衰機能と振動絶縁機能を果すように構成した液封入
式防振マウントがある。

【０００３】この防振装置１００において、上側取付金
具１０１は、図に示すように、切削加工等に形成された
中実タイプであり、その上部に取付用ボルト１０８が固
設されている。そして、エンジン等の振動発生体の振動
によって生じる防振基体１０３の上方及び軸直角方向へ
の大変位を抑制するストッパ機能と軸直角方向の静バネ
定数の確保とを同時に発揮するために、上側取付金具１
０１は、その全周にわたって外方に突出するストッパ部
１０９を有する略コマ形状をなし、防振基体１０３に埋
設されている。

【０００４】この上側取付金具１０１では、ストッパ部
１０９が、防振基体１０３の上方や軸直角方向（例え
ば、前後方向や左右方向）への大変位時に、本体金具１
０２と一体的に設けられた当接部１１０に当接すること
により、防振基体１０３の一定以上の変位を防止する、
即ち、防振基体１０３の上方及び軸直角方向への大変位
を抑制するストッパ機能を発揮している。また、上側取
付金具１０１が防振基体１０３中に深く延在することに
より、軸直角方向における静バネ定数を確保している。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記構
成の上側取付金具１０１であると、防振基体１０３との
加硫成形工程前の脱脂工程においてショットブラストを
行なう際に、上側取付金具１０１に固設された取付用ボ
ルト１０８のネジ部をブラスト粒によるキズ付きから防
止するために、ゴムキャップ等の保護部材を取付けなけ
ればならず、製造コスト増に繋がるという問題がある。
また、中実タイプの上側取付金具１０１は、重いという
だけでなく、製造上も切削加工等を要してコストが増加
する傾向にあるという問題がある。

【０００６】そこで、本発明は、かかる問題点に鑑み
て、軽量かつ安価な液封入式防振装置を提供することを
目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明の液封入式防振装
置は、筒状胴部を有する本体金具と上側取付金具とをゴ
ム弾性体からなる防振基体を介して結合し、本体金具の
内部に防振基体と対向するダイヤフラムを配してこれら
が室壁の一部をなす液封入室を形成してなる液封入式防
振装置において、前記上側取付金具が、取付用ボルトが
固設された上側金具と、中央部が下方に凹設され当該凹
設部の外周面に防振基体が固着された下側金具とを、両
金具の周縁部で全周にかしめ締結することにより、中空
状に構成されてなり、前記かしめ締結により上側取付金
具の外周部に形成された環状のストッパ部が、振動に伴
なう防振基体の大変位時に、本体金具と一体的に形成さ
れた当接部に当接して、防振基体の一定以上の変位を抑
制することを特徴とする。

【０００８】上記構成においては、上側取付金具の全周
に設けられたストッパ部が、防振基体の大変位を抑制す
るストッパ機能を果す。また、下側金具の中央部が下方
に凹設されていることから、上側取付金具が防振基体中
に深く延在しており、これにより、軸直角方向における
静バネ定数が確保されている。そして、上側取付金具
が、取付用ボルトの固設された上側金具と、防振基体の
固着された下側金具との２つの部材により構成されてい
るので、脱脂及び加硫成形工程は下側金具についてのみ
行なえばよく、よって上述したような取付用ボルトのネ
ジ部を保護する保護部材が不要であり、また、２つの部
材の接合後に加硫を行なう場合に比べてかかる脱脂及び
加硫を簡単に不具合なく行なうことができる。また、上
側取付金具が、上側及び下側金具をかしめ締結すること
により中空状に形成されているため、上述した中実タイ
プに比べて、軽量であり、また絞りプレス加工等の簡単
な加工方法で製造することができるので製造コストが低
い。

【０００９】上記においては、本体金具と一体的に形成
された前記当接部に弾性体を配することが好ましい。こ
れにより、ストッパ部と当接部との当接時における衝撃
を緩和することができる。

【００１０】また、上記においては、上側取付金具に、
その内部空間に通じる通気孔を２個以上設けることが好
ましい。これにより上側取付金具の内部空間への空気の
流通が可能となり、よってエンジン等の発熱体からの熱
が上側取付金具を通って防振基体に伝達されるのを低減
することができる。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下、本発明の１実施形態を図面
を参照して説明する。

【００１２】図１は、１実施形態に係る液封入式防振装
置１０の縦断面図である。

【００１３】この防振装置１０は、筒状胴部を有する有
底の本体金具１２と上側取付金具１４とをゴム弾性体か
らなる防振基体１６を介して弾力的に結合してなり、上
側取付金具１４の下部が防振基体１６内に埋設されてい
る。そして、本体金具１２の内部に防振基体１６と対向
するダイヤフラム１８が配され、その上側にこれらが室
壁の一部をなす液封入室２０が形成されるとともに、下
側に空気室２２が形成され、この液封入室２０を、仕切
部材２４で、オリフィス２６により連通する上下２室２
０ａ，２０ｂに仕切構成している。この防振装置１０
は、主として上側取付金具１４が自動車エンジン等の振
動発生体側に締結され、また本体金具１２が車体のシヤ
ーシー等の支持側に締結されて使用される。

【００１４】図に示すように、上側取付金具１４は、そ
の軸方向中央部に全周にわたって外方に突出する環状の
ストッパ部２８を有する略コマ形状をなし、内部に空間
３０を有する中空状に形成されている。この上側取付金
具１４は、取付用ボルト３２が溶接又は圧入により固設
された上側金具３４と、防振基体１６が加硫成形手段に
より固着された下側金具３６とよりなり、これら両金具
３４，３６の対向する周縁部同士の全周におけるかしめ
締結により接合されている。そして、このかしめ締結に
より上記ストッパ部２８が形成されている。

【００１５】上側金具３４は、金属板の絞りプレス加工
により中央部が上方に突出する略伏椀状に形成されてお
り、この突出部３４ａに取付用ボルト３２が上方に向っ
て突設されている。そして、周縁部３４ｂが外方に延び
るフランジ状に形成されている。この上側金具３４に
は、上側取付金具１４内の空間３０への空気の流通を可
能にするべく、当該空間３０に通じる通気孔３８が２個
以上設けられている。また、後述する上側ストッパ部材
４６との位置決めのための案内爪４０が上方に突出形成
されている。

【００１６】下側金具３６は、金属板の絞りプレス加工
により中央部が下方に凹設された略椀状に形成されてお
り、この凹設部３６ａの外周面に防振基体１６が固着さ
れている。そして、図２に示すように、外方に延びるフ
ランジ状の周縁部３６ｂの外周端が上方に延設されてい
る。下側金具３６は、上側金具３４とのかしめ締結前
に、脱脂工程と、防振基体１６との加硫成形工程とが施
される。そして、その後、予め取付用ボルト３２が固設
された上側金具３４の周縁部３４ｂを下側金具３６の周
縁部３６ｂによりかしめて、これにより両金具３４，３
６が全周でかしめ締結されている。なお、防振基体１６
は、凹設部３６ａの外周面のみならず、図１に示すよう
に、凹設部３６ａの下面及び周縁部３６ｂの下面に延在
していてもよい。即ち、周縁部３６ｂの上方延設された
部分を除く他の部分が、防振基体１６内に埋設された状
態に構成してもよい。

【００１７】本体金具１２は、椀状をなし、その上側開
口縁が拡開されてフランジが形成され、底部には取付用
ボルト４０，４０が下方に突設されている。

【００１８】この本体金具１２には、振動に伴なう防振
基体１６の上方及び軸直角方向への大変位時に、上側取
付金具１４のストッパ部２８が当接する当接金具４２が
一体的に設けられている。すなわち、当接金具４２は、
ストッパ部２８の全周を取囲む筒状胴部４２ａを有する
とともに、この筒状胴部４２ａの上端部が内側に折曲延
成されてストッパ部２８の上方に延在する内フランジ４
２ｂを有し、この筒状胴部４２ａの下側開口縁が本体金
具１２の上側開口縁にかしめ手段により結合されてい
る。

【００１９】防振基体１６は、略傘形状をなし、その下
端部に、本体金具１２の上側開口縁上に配されるリング
状の補助金具４４が、加硫成形手段により取着されてい
る。

【００２０】ダイヤフラム１８は、本体金具１２の内周
面に配された円形ゴム膜よりなり、下側の空気室２２に
膨出可能に構成されている。このダイヤフラム１８は、
ゴムにより被覆された筒状金具１８ａに一体的に形成さ
れ、この筒状金具１８ａが本体金具１２の内周面に嵌着
されている。

【００２１】仕切部材２４は、金属板のプレス加工によ
り形成された扁平な有底筒状部材であり、ダイヤフラム
１８の筒状金具１８ａの内周面に嵌着されている。この
仕切部材２４の外周面にはオリフィス２６形成用の凹部
が形成されている。

【００２２】これら防振基体１６、仕切部材２４及びダ
イヤフラム１８は、それぞれその周縁部が、本体金具１
２と当接金具４２とのかしめ部でともにかしめ締結され
ており、これにより、図１に示すように、防振基体１６
と本体金具１２とに対してダイヤフラム１８及び仕切部
材２４がシール状態に固着されて、液封入室２０及び空
気室２２が密封されるとともに、本体金具１２と当接金
具４２により防振基体１６、液封入室２０及び空気室２
２を収納するケース体が構成されている。上側取付金具
１４は、その下部が当該ケース体内に配され、当接金具
４２の内フランジ４２ｂの内側から上方に突出してい
る。

【００２３】４６は、上側取付金具１４の上面、即ち上
側金具３４の突出部３４ａの上面にネジ締結等の手段に
より固着された上側ストッパ部材であり、中央に取付用
ボルト３２が貫通する孔を有する略円形の金属板の外周
端部に、外周部が軸方向下方に向ってスカート状に延成
したゴムカバー４８を付設してなる。そして、振動に伴
なう防振基体１６の下方への大変位時に、当接金具４２
の内フランジ４２ｂの上面に当接する。

【００２４】５０は、当接金具４２の上部、即ち筒状胴
部４２ａの上部内周面と内フランジ４２ｂに加硫成形手
段により取着されたゴム弾性体であり、防振基体１６の
上方及び軸直角方向への大変位時にストッパ部２８と当
接するとともに、防振基体１６の下方への大変位時に上
側ストッパ部材４６と当接するように配されている。こ
のゴム弾性体５０は、当接金具４２とストッパ部２８若
しくは上側ストッパ部材４６との当接時における衝撃を
緩衝するために配されている。

【００２５】上記構成の液封入式防振装置１０は、その
使用状態においては、エンジン等の振動に伴う防振基体
１６の変形及び２つの液室２０ａ，２０ｂの容積変化に
より、内部の液体がオリフィス２６を通じて流動し、低
周波振動は防振基体１６とオリフィス２６の流動抵抗及
び液体の粘性により吸収されて減衰し、また高周波振動
は防振基体１６及び液体自体の共振作用により吸収され
て振動を低減する。

【００２６】そして、防振基体１６の上方又は軸直角方
向（例えば前後方向や左右方向）への大変位時には、上
側取付金具１４のストッパ部２８が当接金具４２の内フ
ランジ４２ｂ又は筒状胴部４２ａの上部に当接してそれ
以上の変位が規制される。また、下方への大変位時に
は、当接金具４２の内フランジ４２ｂが上側ストッパー
部材４６に当接してそれ以上の変位を規制する。

【００２７】この液封入式防振装置１０であると、上側
取付金具１４のかしめ締結により全周にわたって設けら
れたストッパ部２８によって、防振基体１６の上方及び
軸直角方向への大変位を抑制することができる。また、
下側金具３６に凹設部３６ａを設けこれを防振基体１６
内に深く埋設させているため、軸直角方向における静バ
ネ定数が高い。

【００２８】そして、上側取付金具１４が、金属板をプ
レス加工してなる２つの金具３４，３６をかしめ締結に
より接合して、中空状に構成されているので、従来の中
実タイプに比べて軽量であり、また製造コストが低い。

【００２９】また、上側取付金具１４が、取付用ボルト
３２の固設された上側金具３４と、防振基体１６の固着
された下側金具３６との２つの部材により構成されてい
るため、防振基体１６を加硫接着させるのは下側金具３
６のみでよく、よって、プレス加工後の脱脂工程は下側
金具３６についてのみ行なえばよいので、上記従来のよ
うな取付用ボルト３２のネジ部を保護する保護部材は不
要であり、製造コストが低い。

【００３０】また、このように防振基体１６に固着させ
る上側取付金具１４を２つの金具から構成する場合、こ
れら２つの金具を溶接により接合した後に、この接合部
も含めて防振基体１６を加硫接着させるという構成も考
えられるが、その場合、２つの金具の接合部では脱脂工
程における脱脂が確実になされないことがあることか
ら、加硫前に防振基体１６との接着性を向上させるため
にこれら金具に塗布する接着剤がかかる接合部で確実に
塗布されなかったり、あるいは、両金具間での気密溶接
不良が発生したときなどに、その後の加硫成形工程が良
好になされないという問題がある。上記防振装置１０の
ように一方の金具３６に防振基体１６を加硫接着した後
に他方の金具３４とかしめ締結することにより、このよ
うな不具合を解決することができる。

【００３１】また、この防振装置１０であると、上側取
付金具１４を上下２つの金具３４，３６により構成して
いるので、上側金具３４の絞り高さや取付ボルト３２の
突設角度等を変更するのみで、振動発生体側や支持側へ
の様々な形態での取付が可能となる。つまり、下側金具
３６については、取付形態により別形状のもの製造する
必要がない。

【００３２】また、上側金具３４と下側金具３６の板厚
を上げるのみで、容易に上側取付金具１４の強度アップ
を図ることができる。

【００３３】さらに、上側取付金具１４に２個以上の通
気孔３８，３８を設けて、上側取付金具１４内の空間３
０への空気の流通を可能にしているので、エンジン等の
発熱体からの熱が上側取付金具１４を通って防振基体１
６に伝達されるのを低減することができる。

【００３４】なお、上側取付金具１４内の空間３０は、
気密である必要はなく、よって上側金具３４と下側金具
３６とのかしめ締結部には特別なシール用のゴムは不要
である。

【００３５】

【発明の効果】本発明の液封入式防振装置であると、防
振基体の大変位を抑制するストッパ機能と、軸直角方向
における静バネ定数の確保とを同時に達成するものにお
いて、軽量化と、簡単かつ低コストな製造とが可能とな
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の１実施形態の液封入式防振装置１０の
縦断面図である。

【図２】液封入式防振装置１０の上側取付金具１４の組
立て前の断面図である。

【図３】従来の液封入式防振装置１００の縦断面図であ
る。

【符号の説明】

１０ 液封入式防振装置 １２ 本体金具 １４ 下側取付金具 １６ 防振基体 １８ ダイヤフラム ２０ 液封入室 ２８ ストッパ部 ３０ 空間 ３２ 取付用ボルト ３４ 上側金具 ３４ａ 上側金具の突出部 ３４ｂ 上側金具の周縁部 ３６ 下側金具 ３６ａ 下側金具の凹設部 ３６ｂ 下側金具の周縁部 ４２ 当接金具 ５０ ゴム弾性体

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 筒状胴部を有する本体金具と上側取付金
   具とをゴム弾性体からなる防振基体を介して結合し、本
   体金具の内部に防振基体と対向するダイヤフラムを配し
   てこれらが室壁の一部をなす液封入室を形成してなる液
   封入式防振装置において、 前記上側取付金具が、取付用ボルトが固設された上側金
   具と、中央部が下方に凹設され当該凹設部の外周面に防
   振基体が固着された下側金具とを、両金具の周縁部で全
   周にかしめ締結することにより、中空状に構成されてな
   り、 前記かしめ締結により上側取付金具の外周部に形成され
   た環状のストッパ部が、振動に伴なう防振基体の大変位
   時に、本体金具と一体的に形成された当接部に当接し
   て、防振基体の一定以上の変位を抑制することを特徴と
   する液封入式防振装置。
2. 【請求項２】 前記本体金具と一体的に形成された前記
   当接部に弾性体を配したことを特徴とする請求項１記載
   の液封入式防振装置。
3. 【請求項３】 前記上側取付金具に、その内部空間に通
   じる通気孔を２個以上設けたことを特徴とする請求項１
   記載の液封入式防振装置。