JPH1030163A - 表面改質アルミニウム部材及びそれを用いた内燃機関用シリンダー - Google Patents

表面改質アルミニウム部材及びそれを用いた内燃機関用シリンダー

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JPH1030163A
JPH1030163A JP20772796A JP20772796A JPH1030163A JP H1030163 A JPH1030163 A JP H1030163A JP 20772796 A JP20772796 A JP 20772796A JP 20772796 A JP20772796 A JP 20772796A JP H1030163 A JPH1030163 A JP H1030163A
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Tatsuo Nishihara
達夫 西原
Minoru Umemoto
実 梅本
Kenji Miyai
研二 宮井
Shinji Yamamoto
真二 山本
Hiroyuki Toda
裕之 戸田
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Suzuki Motor Corp
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Suzuki Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高強度、高硬度で、耐摩耗性に優れる改質層
被覆アルミニウム部材を提供する。 【解決手段】 60〜98.5原子%のアルミニウムと
1.5〜40原子%の銀と0〜38.5原子%のその他
の合金成分を含む被覆層を、アルミニウムまたはアルミ
ニウム合金上に形成してなる表面改質アルミニウム部
材。被覆層は、必要に応じて2〜30原子%の銅または
2〜30原子%のケイ素を含有する。被覆は、例えば、
溶射法や表面溶融合金化法によって行われる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高い硬度を有し、
耐摩耗性、耐焼付性、耐スカッフィング性等に優れた表
面改質層(被覆層)で被覆したアルミニウムまたはアル
ミニウム合金製の鋳物または展伸材(以下、「表面改質
アルミニウム部材」ともいう。)に関する。本発明のア
ルミニウム部材は、例えば、その被覆層が、内燃機関の
シリンダーブロックのボア内面、タペットの外周部、シ
リンダーヘッドの弁間部やバルブシートの表面、ピスト
ンの表面となるように適用することができる。
【0002】
【従来の技術】アルミニウム系製品の表面厚膜硬化技術
としては、「表面溶融合金化法によるアルミニウム合金
の厚膜表面硬化技術」(「ジョイテック」、Vol.
8、1992年12月号、p20〜27、発行元:テッ
ク出版株式会社)に記載されているように、(1)プラ
ズマ法、線爆法、アーク法等の溶射法、(2)肉盛法、
(3)表面焼入法、(4)窒化法、(5)拡散浸透めっ
き法等が提案されている。
【0003】シリンダーボアやタペット(バルブリフタ
ー)等のアルミニウム合金製で摺動を行う部品の被覆方
法として、Fe系合金やMo、W、C、セラミックス等
を溶射する方法が挙げられる。例えば、特公昭57−3
4346号公報には、アルミシリンダーライナーに、中
間層としてAl−Si合金を溶射した後、Fe系合金を
溶射する技術が記載されている。特公昭54−3690
4号公報には、20〜40%のSiを含むアルミ合金を
プラズマ溶射することによって作製されるアルミシリン
ダーが記載されている。特開昭62−16894号公報
及び特開昭62−150014号公報には、アルミシリ
ンダーヘッドのバルブシート面に銅基合金をレーザクラ
ッディングする方法が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】アルミニウムまたはア
ルミニウム合金の表面の改質においては、耐剥離性等の
ような、表面被覆層と基材の密着性が問題となる。この
密着性は、施工後の剥離強度等の特性と、経年または使
用による劣化の二つの要因と関連する。上記公報等に記
載されているような異種金属または耐火物等を被覆する
ことによる表面改質は、アルミニウムと表面層の熱膨張
率や弾性率等の相違によって、次のような欠点を有す
る。すなわち、使用中の熱サイクルや負荷によって界面
に微小な亀裂が発生するなどして界面の劣化が生じ、そ
の結果、剥離強度の低下や不均一等を招く。また、被覆
層の物質は、大抵の場合にはアルミニウム合金よりも熱
伝導率が低く、局部的な温度の上昇やそれに起因する破
損等を招き易い。
【0005】また、内燃機関等で高硬度を必要とする部
材や部位では、多くの場合、ビッカース硬さで200〜
300HV程度の中程度の硬さ、すなわち、JIS A
C8AやAC9A等の実用アルミニウム合金の硬さを少
し上回る程度の硬さで十分であり、必ずしもセラミック
スや金属間化合物、高融点金属等の有するような高硬度
や高い耐熱性を必要としない場合が多い。逆に、異種金
属や硬質物質を用いて硬度を高める方法では、研削性や
旋削性の悪化や、摺動時の相手材への攻撃性(摩耗性
等)の増加等の好ましくない効果がもたらされる。
【0006】さらに、上述のAl−Si系合金を溶射す
る方法では、表面硬さが76〜146HVと、通常のア
ルミニウム合金鋳物の域を脱しておらず(「アルミニウ
ム合金の表面厚膜硬化技術」、財団法人金属系材料研究
開発センター編、日刊工業新聞社、1995年刊、第7
1頁)、表面硬化層としての特性は十分とはいえない。
【0007】また、溶射法による表面改質では、溶射材
を予め粉末や溶線、ロッドの形状にする必要がある。し
かし、Al−Si系の二元系では、Al−30重量%S
iで約820℃、Al−40重量%Siで約930℃と
いうように融点(液相線)が上昇し、かつSi量の上昇
と共に急激に延性が低下して引き抜き加工や伸線加工が
困難になるため、12重量%程度以上の高Si合金の粉
末や線、棒材が作製し難くなるという欠点がある。
【0008】上述の銅基合金をレーザクラッディングす
る方法では、クラッディングという名称の示す通り、母
材をほとんど溶融させないことが重要であり、母材への
入熱量が少ない熱源としてレーザビームまたは電子ビー
ムを用いることが必要である。しかし、この場合、設備
の投資額が大きくなってしまうという欠点がある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、請求項1に記載の表面改質アルミニウム部材は、6
0〜98.5原子%のアルミニウムと、1.5〜40原
子%の銀と、0〜38.5原子%のその他の合金成分と
を含む被覆層を、アルミニウムまたはアルミニウム合金
上に形成してなることを特徴とする。請求項2に記載の
表面改質アルミニウム部材は、請求項1に記載の部材で
あって、上記被覆層が2〜30原子%の銅を含むことを
特徴とする。請求項3に記載の表面改質アルミニウム部
材は、請求項1または請求項2に記載の部材であって、
上記被覆層が2〜30原子%のケイ素を含むことを特徴
とする。
【0010】請求項4に記載の表面改質アルミニウム部
材は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の部材であ
って、上記被覆層が溶射法によって形成されることを特
徴とする。請求項5に記載の表面改質アルミニウム部材
は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の部材であっ
て、上記被覆層が表面溶融合金化法によって形成される
ことを特徴とする。請求項6に記載の表面改質アルミニ
ウム部材は、請求項5に記載の部材であって、上記表面
溶融合金化法がプラズマ粉体肉盛法またはティグアーク
合金化肉盛法であることを特徴とする。請求項7に記載
の内燃機関用シリンダーは、シリンダーブロックが、請
求項1〜請求項6のいずれかに記載の表面改質アルミニ
ウム部材からなり、かつ、該シリンダーブロックのボア
内面が、上記被覆層からなることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明における被覆層中のアルミ
ニウムの含有量は、60〜98.5原子%、好ましくは
70〜90原子%である。含有量が60原子%未満であ
ると、熱膨張率等がアルミニウムと大きく異なるため、
好ましくない。
【0012】被覆層中の銀の含有量は、1.5〜40原
子%である。含有量が1.5原子%未満であると、硬さ
や耐摩耗性の上昇が小さい。40原子%を超えると、表
1に示すAl−Ag二元系の最大拡張固溶限を超えるた
めに、急速凝固条件下でもδ相の析出を生じて、表面層
の靭性が低下し、また、熱膨張率が母材アルミ合金と大
きく異なることによって、熱衝撃による亀裂の発生等の
問題を生じ、かつ熱伝導率も低下する。表1は、平衡状
態及び急冷状態でのアルミニウム基二元系の溶質原子固
溶限を示す(T.R.Anantharaman et
al.,Trans.Ind.Inst.Metal
s,30(1977),423、及びH.Jones,
Aluminum,54(1978),274)。
【0013】
【表1】
【0014】本発明で特に銀を溶質元素として選択する
理由としては、表1に示すように、アルミニウムの溶質
元素としては共晶型元素が包晶型元素よりも大きな固溶
限を有しており、その中でも銀は特に大きな固溶限を有
することが挙げられる。また、銀は、鋼に対して焼き付
きにくい金属であり、銀を添加することによって凝集摩
耗が抑制されると考えられる。
【0015】従来より、高温固溶相域からの急冷によっ
て平衡状態の固溶限以上の溶質元素を固溶させて、過飽
和固溶体とし、高強度材を得る方法は、アルミニウム合
金の熱処理法として知られている。表面溶融合金化法に
よる液相からの急冷は、上記表1に示すように、固溶限
のより大きな拡張と、均一な構成成分の分布を持つ理想
的な過飽和固溶体をもたらし、鋳造法等の従来の手法に
よるアルミニウム合金とは比べものにならない程の高強
度、高硬度、高耐摩耗性をもたらす。本発明で用いられ
る「その他の合金成分」としては、銅、ケイ素、鉄、マ
グネシウム、チタン、マンガン、ニッケル、コバルト、
亜鉛、スズ等が挙げられる。これらの合金成分の含有量
は、被覆層中、合計で0〜38.5原子%である。
【0016】上記「その他の合金成分」として銅を用い
る場合、銅の含有量は、被覆層中、好ましくは2〜30
原子%である。含有量が2原子%未満では、添加の効果
が小さく、30原子%を超えると、Al−Cu系で、θ
相(Al2 Cu)やη2 相のみが存在することになり、
α相(Al)がなくなるため、靭性が極端に低下して好
ましくない。上記「その他の合金成分」としてケイ素を
用いる場合、ケイ素の含有量は、被覆層中、好ましくは
2〜30原子%である。含有量が2原子%未満では、添
加の効果が小さく、30原子%を超えると、脆くなる。
【0017】本発明における被覆層は、好ましくは、5
〜20原子%の銀と5〜20原子%の銅と5〜20原子
%のケイ素と残部のアルミニウムを含むアルミニウム合
金粉末からなり、特に好ましくは、10〜15原子%の
銀と10〜15原子%の銅と10〜15原子%のケイ素
と残部のアルミニウムを含むアルミニウム合金からな
る。
【0018】本発明で、母材としてのアルミニウム合金
としては、例えば、JIS AC8A、ADC12等の
鋳造材や、A6061等の展伸材等を用いることができ
る。被覆材は、例えば、粒径10〜200μm程度の粉
末の形で、予め溶製法等で作製しておき、これを用いて
溶射法や表面溶融合金化法でアルミニウムまたはアルミ
ニウム合金からなる母材の表面に被覆層を形成させる。
ここで、溶製法とは、スプレーアトマイズ等の手法をい
う。被覆材は、アルミニウムを主成分とする粉末と、銀
を主成分とする粉末を、混合して用いてもよく、あるい
は別々に用いてもよい。
【0019】被覆材として、溶製法とその後の引き抜き
加工、押し出し加工、伸線加工等によって、線材、棒材
または筒材の形に成形したものを用いてもよい。被覆材
として、アルミニウムを主成分とする筒材の内部に、銀
を主成分とする粉末、粒子、棒材または線材を充填した
もの、あるいは、銀を主成分とする筒材の内部に、アル
ミニウムを主成分とする粉末、粒子、棒材または線材を
充填したものを用いてもよい。
【0020】本発明の表面改質層を形成させるための方
法として、溶射法、表面溶融合金化法等を挙げることが
できる。溶射法としては、例えば、ワイヤー及び粉末ガ
ス溶射、アーク溶射、プラズマ溶射、線爆溶射、減圧プ
ラズマ溶射、レーザー溶射、高周波プラズマ溶射、高速
ガス溶射を挙げることができる。表面溶融合金化法とし
ては、プラズマ粉体肉盛法、ティグアーク合金化肉盛法
等を挙げることができる。
【0021】プラズマ粉体肉盛法で用いる装置の断面図
を図1に示す。図1において、タングステン電極(陰
極)1、プラズマガス2、シールドガス4、母材(陽
極)7によって、プラズマアーク5が発生する。プラズ
マアーク5によって母材7の表面が溶融されて溶融池と
なり、溶融池に粉末(被覆層用材料)及びキャリヤーガ
ス3が添加されて、被覆層6が形成される。
【0022】ティグアーク合金化肉盛法の一例を図2に
示す。図2に示すように、粉末供給ノズル8を通じて母
材12上に供給される粉末9を、ティグ溶接トーチ11
によって基材12の表面が溶融されてできた溶融池10
に添加することによって、合金化層を得ることができ
る。
【0023】本発明の内燃機関用シリンダーにおいて、
特に溶射法によって施工する場合、シリンダーブロック
のボア内面の被覆層の厚さは、10〜300μm程度で
ある。厚さが10μm未満であると、耐摩耗性が不十分
であり、300μmを超えると、残留応力が大きくな
り、剥離し易くなる。但し、表面溶融合金化法による場
合は、この限りでなく、数mm程度の厚みまで可能であ
る。
【0024】
【実施例】実施例1 圧延により製造した工業用純アルミニウム板材(JIS
A1050合金、厚さ7mm、幅50mm)をアセト
ンにて脱脂し、アルミナ粒子でブラスティングを施し
た。銀の添加量は、0〜50重量%(0〜20.0原子
%)とした。用いた被覆材は、ガスアトマイズ法で製造
したアルミニウム合金粉末であり、予め、ふるいによっ
て粒子を53〜200μmに調整した。施工方法とし
て、プラズマ溶射法を用いた。溶射条件は、表2に示す
通りである。
【0025】
【表2】
【0026】ビッカース硬さ試験及び大越式摩耗試験に
よって表面層の性質を調べた。ビッカース硬さ試験は、
荷重10kg重、保持時間15秒で行なった。また、大
越式摩耗試験の条件を表3に示す。
【0027】
【表3】
【0028】図3は、銀の添加量と比摩耗量及びビッカ
ース硬さの関係を示す図である。図3に示すように、銀
の添加量の増加と共にビッカース硬さは単調に増加し、
比摩耗量は単調に減少する。特に、10重量%(被覆層
中の含有量に換算すると2.70原子%)の添加によ
り、比摩耗量は約半分に、20重量%(被覆層中の含有
量に換算すると5.89原子%)では約1/4に大きく
減少し、耐摩耗性が向上する。
【0029】図4は、Al−10Ag−10Cu−10
Si合金粉末(数字は、重量%を示す。原子%に換算す
ると、Al−2.9Ag−4.9Cu−11.1Siで
ある。)を被覆材として用いて施工した時のAC4Cの
母材13及び該母材上に被覆された被覆層14の断面の
光学顕微鏡によるミクロ組織写真(倍率:100倍)で
ある。同材料を溶製法で作製した場合と比べ、組織が非
常に均一で微細であり、また、母材と被覆層の密着性に
ついても良好なものが得られた。表面層のビッカース硬
さは、施工のままの状態で204〜278HVであり、
平均で250HVであった。この表面層は、AgやCu
等の溶質元素を過飽和に固溶した状態となっており、常
温〜300℃程度の適当な温度で適当な時間だけ時効処
理を施すことによって、さらに50〜150HVの硬さ
の上昇が可能である。
【0030】図5は、被覆層の断面の光学顕微鏡による
ミクロ組織写真(倍率:400倍)である。図5を観察
すると、各成分が細かく分散しているのがわかる。図5
中の黒い部分は、空隙である。
【0031】図6は、Al−Ag合金の被覆層に加え、
様々な組成比のAl−Ag−Si合金、Al−Ag−C
u合金、Al−Ag−Cu−Si合金について比摩耗量
とビッカース硬さを測定した結果を示す。図6中、元素
記号の前の数字は、重量%を示す。比較材として、AC
4C−T6材、A390−T6材、鋳鉄のバルク材のデ
ータを示した。CuまたはSiまたはその両方の添加に
より、図3よりもさらに耐摩耗性及び硬度が向上し、特
にAl−15Ag−15Cu合金及び各種Al−Ag−
Cu−Si合金では、200HV程度のビッカース硬さ
と、鋳鉄と同程度の耐摩耗性が得られた。
【0032】実施例2 実施例1と同じ前処理及び溶射条件で、内径用ガンを用
いて、Al−10Ag−10Cu−10Si合金(元素
記号の前の数字は、重量%を示す。)の粉末をA505
2製円筒(内径76mm、厚さ8mm、長さ103m
m)の内面に溶射した。この円筒を発電機(スズキ株式
会社製SV−4000)のシリンダーとして組み付け
た。この発電機の概要を表4に示す。
【0033】
【表4】
【0034】この発電機を無負荷で1時間のならし運転
の後、3800Wの定格負荷をかけた状態で3600r
pmの回転数で10時間運転し、上死点付近のボア内径
の変化を測定した。表5にその結果を示す。
【表5】 表5から、本実施例の被覆層が、内燃機関のシリンダー
用の表面硬化層として、十分な耐摩耗性と耐熱性を有す
ることがわかる。また、溶射層の局部的な剥離等の有害
な損傷も生じなかった。
【0035】実施例3 圧延により製造した工業用純アルミニウム板材(JIS
A1050合金、厚さ7mm、幅50mm)をアセト
ンにて脱脂した。被覆材は、ガスアトマイズ法で製造さ
れたアルミニウム合金粉末であり、予めふるいにより粒
度を53〜200μmに調製した。銀の添加量は、被覆
層中の含有量として0〜50重量%(0〜20.0原子
%)となるように調整した。施工方法としては、プラズ
マ粉体肉盛法を用いた。施工条件を表6に示す。
【0036】
【表6】
【0037】図7及び図8は、Al−30Ag−30C
u−20Si合金粉末(数字は、重量%を示す。)を用
いた場合の表面改質層(被覆層)の光学顕微鏡によるミ
クロ組織写真である。表6に示す施工条件で母材希釈率
は48%となり、被覆層の組成は、Al−15Ag−1
5Cu−10Si(数字は、重量%を示す。)である。
同組成材料を溶製法で作製した場合と比べ、組織が非常
に均一で微細である。この場合の表面層の硬さは、施工
のままの状態で182〜210HVであり、平均で19
6HVである。この表面層は、過飽和に銀や銅の溶質元
素を固溶した状態となっており、常温〜300℃程度の
適当な温度で適当な時間だけ時効処理を施すことで、さ
らに50〜150HVの硬さの上昇が可能である。
【0038】さらに、図9は、Al−Ag合金の表面改
質層に加え、様々な組成比のAl−Ag−Si合金、A
l−Ag−Cu合金、Al−Cu−Si合金、Al−A
g−Cu−Si合金の表面改質層の比摩耗量とビッカー
ス硬さの測定結果である。図9中、元素記号の前の数字
は、重量%を示す。図9には、比較材として、同様にA
C4C−T6材、A390−T6材、及び鋳鉄のバルク
材のデータを示した。CuまたはSi、またはその両方
の添加により、図3よりもさらに耐摩耗性及び硬さが向
上し、特にAl−15Ag−15Cu及びAl−Ag−
Cu−Si合金では、200HV程度の硬さと鋳鉄並の
耐摩耗性が得られた。
【0039】実施例4 圧延により製造した工業用純アルミニウム板材(JIS
A1050合金、厚さ7mm、幅50mm)に溝を切
削し、アセトンにて脱脂した。用いた合金化物質は、溶
製法と押し出し加工で製造されたアルミニウム合金棒で
あり、直径は6mmである。施工方法は、ティグアーク
合金化肉盛法で、合金棒を予め切削した溝に埋め込んで
合金化した。また、その施工条件は、表7に示す通りで
ある。実施例3と同様にして、表面層の性質を調べたと
ころ、ほぼ実施例3と同様の結果が得られた。
【0040】
【表7】
【0041】実施例5 実施例3と同じ前処理及び施工条件で、内径用トーチを
用いてAl−20Ag−20Cu−20Si合金(数字
は、重量%を示す。)の粉末をA5052製円筒(内径
76mm、厚さ8mm、長さ103mm)の内面に施工
した。施工後の表面改質層の組成は、Al−10Ag−
10Cu−10Si(数字は、重量%を示す。)であ
り、希釈率は48%であった。この円筒を、実施例2で
用いたものと同じ発電機(スズキ株式会社製SV−40
00)のシリンダーとして組み付けた。この発電機を無
負荷で1時間のならし運転の後、3800Wの定格負荷
をかけた状態で3600rpmの回転数で10時間運転
し、上死点付近のボア内径の変化を測定した。表8にそ
の結果を示す。実施例の表面改質層は、内燃機関のシリ
ンダー用の表面硬化層として、十分な耐摩耗性と耐熱性
を有することがわかった。また、表面層の局部的な剥離
等の有害な損傷も生じなかった。
【0042】
【表8】
【0043】
【発明の効果】本発明の被覆層のアルミニウム合金は、
液相からの急冷によって、組織が極めて微細となり、分
布も均一となり、高強度、高硬度、優れた耐摩耗性を有
する。被覆層がアルミニウム合金であるため、熱伝導率
が良く、また、融点が低いため、被覆時の入熱が少なく
て済む。アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる
母材と被覆層の合金の熱膨張率及び弾性率の差が小さい
ため、熱衝撃や繰り返し熱サイクルによって亀裂を生じ
ず、信頼性が高い。被覆層の合金の弾性率が母材の弾性
率と近いため、アルミニウム部材が変形しても亀裂を生
じない。本発明の内燃機関用シリンダーは、シリンダー
ボア内面に表面被覆層が形成されているため、メッキ層
や鋳鉄製のシリンダーライナーを設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】プラズマ粉体肉盛法で用いる装置の断面図であ
る。
【図2】ティグアーク合金化肉盛法の一例を示す図であ
る。
【図3】被覆層を形成した場合の銀の添加量と比摩耗量
及びビッカース硬さの関係を示す図である。
【図4】基材及び溶射法によって形成されたAl−10
Ag−10Cu−10Siの被覆層の断面の拡大図(倍
率:100倍)である。
【図5】溶射法によって形成されたAl−10Ag−1
0Cu−10Siの被覆層の断面の拡大図(倍率:40
0倍)である。
【図6】溶射法によって被覆層を形成した場合の種々の
金属の比摩耗量及びビッカース硬さを示す図である。
【図7】基材及びプラズマ粉体肉盛法によって形成され
たAl−15Ag−15Cu−10Siの被覆層の断面
の拡大図(倍率:100倍)である。
【図8】プラズマ粉体肉盛法によって形成されたAl−
15Ag−15Cu−10Siの被覆層の断面の拡大図
(倍率:400倍)である。
【図9】プラズマ粉体肉盛法によって被覆層を形成した
場合の種々の金属の比摩耗量及び硬さを示す図である。
【符号の説明】
1 タングステン電極(陰極) 2 プラズマガス 3 粉末及びキャリヤーガス 4 シールドガス 5 プラズマアーク 6 被覆層 7 母材(陽極) 8 粉末供給ノズル 9 粉末 10 溶融池 11 ティグ溶接トーチ 12 母材 13 母材 14 被覆層
【手続補正書】
【提出日】平成8年9月6日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【図面の簡単な説明】
【図1】プラズマ粉体肉盛法で用いる装置の断面図であ
る。
【図2】ティグアーク合金化肉盛法の一例を示す図であ
る。
【図3】被覆層を形成した場合の銀の添加量と比摩耗量
及びビッカース硬さの関係を示す図である。
【図4】基材及び溶射法によって形成されたAl−10
Ag−10Cu−10Siの被覆層の断面の顕微鏡写真
(倍率:100倍)である。
【図5】溶射法によって形成されたAl−10Ag−1
0Cu−10Siの被覆層の断面の顕微鏡写真(倍率:
400倍)である。
【図6】溶射法によって被覆層を形成した場合の種々の
金属の比摩耗量及びビッカース硬さを示す図である。
【図7】プラズマ粉体肉盛法によって形成されたAl−
15Ag−15Cu−10Siの被覆層の断面の顕微鏡
写真(倍率:100倍)である。
【図8】プラズマ粉体肉盛法によって形成されたAl−
15Ag−15Cu−10Siの被覆層の断面の顕微鏡
写真(倍率:400倍)である。
【図9】プラズマ粉体肉盛法によって被覆層を形成した
場合の種々の金属の比摩耗量及び硬さを示す図である。
【符号の説明】 1 タングステン電極(陰極) 2 プラズマガス 3 粉末及びキャリヤーガス 4 シールドガス 5 プラズマアーク 6 被覆層 7 母材(陽極) 8 粉末供給ノズル 9 粉末 10 溶融池 11 ティグ溶接トーチ 12 母材 13 母材 14 被覆層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 真二 静岡県浜松市高塚町300番地 スズキ株式 会社内 (72)発明者 戸田 裕之 静岡県浜松市高塚町300番地 スズキ株式 会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 60〜98.5原子%のアルミニウムと
    1.5〜40原子%の銀と0〜38.5原子%のその他
    の合金成分を含む被覆層を、アルミニウムまたはアルミ
    ニウム合金上に形成してなる表面改質アルミニウム部
    材。
  2. 【請求項2】 上記被覆層が2〜30原子%の銅を含む
    請求項1に記載の表面改質アルミニウム部材。
  3. 【請求項3】 上記被覆層が2〜30原子%のケイ素を
    含む請求項1または請求項2に記載の表面改質アルミニ
    ウム部材。
  4. 【請求項4】 上記被覆層が溶射法によって形成される
    請求項1〜請求項3のいずれかに記載の表面改質アルミ
    ニウム部材。
  5. 【請求項5】 上記被覆層が表面溶融合金化法によって
    形成される請求項1〜請求項3のいずれかに記載の表面
    改質アルミニウム部材。
  6. 【請求項6】 上記表面溶融合金化法がプラズマ粉体肉
    盛法またはティグアーク合金化肉盛法である請求項5に
    記載の表面改質アルミニウム部材。
  7. 【請求項7】 シリンダーブロックが、請求項1〜請求
    項6のいずれかに記載の表面改質アルミニウム部材から
    なり、かつ、該シリンダーブロックのボア内面が、上記
    被覆層からなる内燃機関用シリンダー。
JP20772796A 1996-07-18 1996-07-18 表面改質アルミニウム部材及びそれを用いた内燃機関用シリンダー Pending JPH1030163A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE10209401B4 (de) * 2001-03-05 2006-05-24 Suzuki Motor Corporation, Hamamatsu Verfahren zur Herstellung eines Zylinderblocks für einen Verbrennungsmotor
JP2007231420A (ja) * 2006-02-06 2007-09-13 Hamilton Sundstrand Corp 亀裂に対する向上した耐性を有する部品およびそのコーティング方法

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