JP2000199045A - 溶射物および溶射方法 - Google Patents

溶射物および溶射方法

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JP2000199045A JP11236746A JP23674699A JP2000199045A JP 2000199045 A JP2000199045 A JP 2000199045A JP 11236746 A JP11236746 A JP 11236746A JP 23674699 A JP23674699 A JP 23674699A JP 2000199045 A JP2000199045 A JP 2000199045A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】基材と溶射膜との密着強度を高めるのに有利な
溶射物、および、その溶射物を製造するのに適した溶射
方法を提供する。 【解決手段】溶射物は、基材と、基材に積層された溶射
膜とで構成され、基材と溶射膜との界面には、基材成分
および溶射膜成分に基づいて形成された界面層が生成し
ており、その厚みが2〜1000nmである。鉄系の溶
射材料を溶射処理して基材の表出面に鉄系の溶射膜を積
層するにあたり、鉄系の溶射材料の平均溶射粒子温度を
2200K以上に設定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶射膜を基材に溶
射した溶射物、および、溶射膜を基材に溶射する溶射方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、基材に溶射膜を積層する技術
が知られている。溶射膜の密着強度を高めるため、溶射
処理に先だって、基材の表出面にブラスト処理する等の
方策が種々採用されている。しかしブラスト処理だけで
は、密着強度の向上は必ずしも充分ではない。
【0003】基材と溶射膜との境界に形成される界面層
について言及した従来技術として、特開平8−1311
8号公報には、基材と溶射膜との界面において比較的厚
めの溶融凝固層を積極的に生成し、溶射膜の密着強度を
高める技術が開示されている。
【0004】この公報技術によれば、アルミニウム系の
基材の表出面に、銅系の溶射粉末及び鉄系粉末を混合し
た混合粉末を溶射処理により溶射して溶射膜を積層す
る。そして溶射膜が積層された状態の基材を加熱炉に収
容し、加熱炉により530℃で2時間加熱保持する。こ
れにより基材の融点及び溶射膜自体の融点以下に溶射膜
及び基材を加熱保持する。この結果、基材と溶射膜との
境界である界面においては、基材成分と溶射膜成分とが
拡散して共晶組成近傍の組成が生じる。共晶組成近傍に
おいては融点が低下するため、530℃程度の加熱であ
っても、溶射膜と基材との界面において溶融液層が生成
する。その後、溶射膜を積層した基材を加熱炉から取り
出して冷却すると、溶融液層が凝固するため、界面層を
形成する溶融凝固層が基材と溶射膜との界面で生成す
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記した公報技術によ
れば、界面層を形成する溶融凝固層により基材と溶射膜
との界面における冶金的結合性が一層高まるため、溶射
膜の密着強度が高まる。上記した公報技術によれば、溶
射膜を積層した基材を加熱炉に保持するため、界面層を
形成する溶融凝固層の厚みは前述したように比較的厚め
であり、5μm〜500μm程度とされている。このよ
うな厚みでは、溶射膜の密着強度はある程度は改善され
ているものの、近年の産業界における使用条件の苛酷化
に対処する養成や一層の長寿命化を図る要請等を考慮す
ると、必ずしも満足できるものではない。すなわち産業
界では、使用条件の苛酷化や長寿命化の要請等に鑑み、
溶射膜の密着強度を更に増加させることが要請されてい
る。
【0006】請求項1に係る本発明は、この実情に鑑み
なされたものであり、上記した公報技術よりも厚みが極
めて薄い界面層を基材と溶射膜との間に生成することに
より、溶射膜の密着強度を一層向上させ得る溶射物を提
供することを課題とする。
【0007】更に請求項2、請求項3に係る本発明は、
この実情に鑑みなされたものであり、上記したように厚
みが極めて薄い界面層をもち溶射膜の密着強度を向上さ
せた溶射物を製造するのに適した溶射方法を提供するこ
とを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は溶射膜と基材
との密着強度の向上について鋭意開発をすすめている。
そして、数多くの試験から、基材成分および溶射膜成分
を主体とする界面層(合金化層)を、基材と溶射膜との
界面において積極的に生成させるものの、界面層の厚み
が1000nmよりも厚いと溶射膜の密着強度の増加効
果が低減し、また、界面層の厚みが2nmよりも薄いと
溶射膜の密着強度の増加効果が同様に低減することを知
見し、試験で確認し、本発明(請求項1)に係る溶射物
を完成した。
【0009】通常の溶射では、溶射膜は基材に機械的係
合力により接合しているものであり、上記溶射膜と基材
との間には上記界面層は生成されておらず、高い密着強
度が得られない。
【0010】更に本発明者は、アルミニウム系の基材と
鉄系の溶射材料との組み合わせにおいて、溶射膜の密着
強度を高め得る効果をもつ界面層をアルミニウム系の基
材と鉄系の溶射膜との界面に良好に生成するためには、
鉄系の溶射材料の平均溶射粒子温度を2200K以上に
設定すれば、アルミニウム系の基材に対する鉄系の溶射
膜の密着強度を向上させる効果が臨界的意義をもって得
られることを知見し、試験で確認し、本発明(請求項
2)に係る溶射方法を完成した。
【0011】上記した形態は基材がアルミニウム系、溶
射材料が鉄系である組み合わせのときに、溶射材料の平
均溶射粒子温度を2200K以上に設定すれば、殊に2
400K以上に設定すれば、鉄系の溶射膜の密着強度を
増加できる。しかし、アルミニウム系の基材と鉄系の溶
射材との組み合わせ以外の組み合わせの場合には、その
まま適用することができないことが多い。そこで本発明
者は、基材の材質及び溶射材料の材質等の溶射条件が種
々異なった組み合わせに変更された場合においても、溶
射膜の密着強度を増加できる臨界的意義が得られるよう
に、開発を進めた結果、ある一般的規則性を知見した。
【0012】即ち、基材に向けて飛翔中の平均溶射粒子
温度をTP(K)、溶射の際の基材の表面の初期温度を
S(K)、溶射粒子の熱伝導率をλP(W/m・K)、
基材の熱伝導率をλS(W/m・K)、溶射粒子の比重
をρP(kg/m3)、基材の比重をρS(kg/m3)、
溶射粒子の比熱をCP(KJ/(kg・K))、基材の
比熱をCS(KJ/(kg・K))とし、溶射粒子の熱
侵透係数をKP、基材の熱侵透係数をKSとしたとき、溶
射に関する溶射パラメータ温度TCを下記式により求
め、溶射パラメータ温度TCが基材の融点Tmに対して1
00K未満でかつ700K以下の領域においては溶射を
行わず、溶射パラメータ温度TCが基材の融点Tmに対し
て100K以上で700K以下の領域において溶射を行
うようにすれば、溶射材料が鉄系で基材の材質がアルミ
ニウム系である組み合わせのときには勿論のこと、溶射
材料が鉄系以外で基材の材質がアルミニウム系以外の組
み合わせに変更されたときであっても、溶射膜の密着強
度を飛躍的に高め得る界面層が基材と溶射膜との界面に
良好に生成でき、溶射膜の密着強度を臨界的に増加させ
ることができることを知見し、試験で確認し、本発明に
係る溶射方法を完成した。
【0013】すなわち、請求項1の本発明に係る溶射物
は、基材と、基材に積層された溶射膜とで構成され、基
材と溶射膜との界面には、基材成分および溶射膜成分に
基づいて形成された界面層が生成しており、その厚みが
2〜1000nmであることを特徴とするものである。
【0014】請求項2の本発明に係る溶射方法は、アル
ミニウム系の基材および鉄系の溶射材料を用意する工程
と、鉄系の溶射材料を溶射処理してアルミニウム系の基
材の表出面に鉄系の溶射膜を積層する溶射工程とを実施
する溶射方法において、鉄系の溶射材料の平均溶射粒子
温度を2200K以上に設定することを特徴とするもの
である。
【0015】また請求項3の本発明に係る溶射方法は、
基材(たとえばアルミニウム系、鉄系、銅系、マグネシ
ウム系、ニッケル系、チタン系など)および溶射材料
(たとえば鉄系、銅系、アルミニウム系、ニッケル系、
モリブデン系など)を用意する工程と、溶射材料を溶射
処理して基材の表出面に溶射膜を積層する溶射工程とを
実施する溶射方法において、基材に向けて飛翔中の平均
溶射粒子温度をTP(K)、溶射の際の基材の表面の初
期温度をTS(K)、溶射粒子の熱伝導率をλP(W/m
・K)、基材の熱伝導率をλS(W/m・K)、溶射粒
子の比重をρP(kg/m3)、基材の比重をρS(kg
/m3)、溶射粒子の比熱をCP(KJ/(kg・
K))、基材の比熱をCS(KJ/(kg・K))と
し、溶射粒子の熱侵透係数をKP、基材の熱侵透係数を
Sとしたとき、溶射パラメータ温度TCを下記式により
求め、溶射パラメータ温度TCが基材の融点Tm以上で基
材の沸点未満の領域において溶射を行うようにしたこと
を特徴とするものである。
【0016】 TC=(KP・TP+KS・TS)/(KP+KS) …(1) KP=(λP・CP・ρP1/2 …(2) KS=(λS・CS・ρS1/2 …(3) なお、溶射粒子の熱伝導率λP、溶射粒子の比重ρP、溶
射粒子の比熱CPは、溶射の際の平均溶射粒子温度にお
ける物性値を意味する。基材の熱伝導率λS、基材の比
重ρS、基材の比熱CSは、溶射の際の基材の初期温度に
おける物性値を意味する。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明に係る基材は、溶射膜が積
層される土台となるものである。代表的な基材の材質は
アルミニウム系、マグネシウム系、鉄系、銅系、ニッケ
ル系、チタン系がある。アルミニウム系は、高純度アル
ミニウムのほかに、Si、Cu、Mg,鉄,亜鉛の少なく
とも1種を含有するアルミニウム合金を含む。たとえ
ば、基材としては、アルミニウム−シリコン系、アルミ
ニウム−銅系、アルミニウム−亜鉛系等を採用できる。
基材は摺動部材、機能部材に適用できる。基材は鋳造
品、鍛造品、切削加工品などを問わない。溶射膜は溶射
処理により基材に積層されたものである。代表的な溶射
膜の材質は、鉄系、銅系、アルミニウム系、ニッケル
系、モリブデン系などがある。溶射膜自体の厚みは特に
限定されるものではないが、産業界で使用される用途を
考慮すると、例えば10μm〜10mm程度にできる。
【0018】本発明に係る溶射物では、基材と溶射膜と
の界面には、基材成分および溶射膜成分の拡散に基づい
て形成され溶射膜の密着強度を高め得る効果をもつ厚み
が2〜1000nmの界面層が形成されている。界面層
は、基材と溶射膜との界面において基材成分と溶射膜成
分とが拡散して混在して生成された拡散層の意味であ
る。界面層を構成する構成物質としては、基材成分と溶
射膜成分との金属間化合物、あるいは、固溶体が考えら
れる。基材がアルミニウム金属またはアルミニウム系合
金であり、溶射膜が鉄系合金である場合には、一般的に
は、界面層はFe−Al合金化層となる。
【0019】本発明に係る溶射物では、界面層の厚みは
2〜1000nmである。界面層の厚みは、界面層の平
均厚みの意味である。
【0020】界面層の厚みの判定にあたり、基材や溶射
膜と電子顕微鏡観察などにおいて界面層が明確に判別で
きるときには、その界面層の厚みを電子顕微鏡観察など
によりそのまま測定すればよい。また判別しにくい場合
には、界面層の厚み開始点、厚み終了点は、それぞれ相
手側の元素を5at%以上含有している点を基準として
採用できる。
【0021】本発明者が行った図4の試験結果に基づけ
ば、界面層の厚みが2nm未満であると、溶射膜の密着
強度を向上させる効果は認められない。界面層の厚みが
2nm付近から、溶射膜の密着強度は臨界的に急激に向
上する。しかし界面層の厚みが厚くなり1000nm
(1μm)を越えると、溶射膜の密着強度が大幅に低下
する。
【0022】要請される密着強度、基材や溶射膜の材質
等によっても相違するものの、溶射膜の密着強度の確保
を考慮すれば、一般的には、界面層の厚みの上限値は8
00nm、500nm、200nm、100nm、ある
いは、50nm、20nmのいずれかを採用でき、界面
層の厚みの下限値は3nm、5nm、あるいは、10n
m、20nmのいずれかを採用できる。従って界面層の
厚みは15〜1000nm、50〜500nm、また
は、500〜1000nmを採用することができる。但
しこれらに限定されるものではない。なお界面層は、こ
れの全域にわたり同じ程度の均厚となるようにすること
が好ましい。界面層の厚みがnmオーダーのように極薄
となると、界面層の面積率は低下する傾向となる。
【0023】溶射膜面積に占める界面層の面積率は、溶
射膜の密着強度を高めるためには高いほうが好ましい。
従って溶射膜と基材との界面全体にわたって界面層を生
成することが好ましい。平均溶射粒子温度などによって
も相違するものの、溶射膜の単位面積を100%とした
とき、溶射膜面積に占める界面層の面積率の上限値は1
00%、95%、90%にでき、下限値は50%、60
%、70%にできる。溶射膜面積に占める界面層の面積
率は55〜100%、70〜95%にすることができ
る。但しこれらに限定されるものではない。なお界面層
の面積率は、せん断破壊後の界面のEPMA分析に基づ
いて把握できる。
【0024】上記した溶射膜の密着強度を高め得る極薄
の厚み(2〜1000nm)をもつ界面層は、通常の溶
射では生成するものではない。
【0025】基材がアルミニウム合金、溶射材料が鉄系
である組み合わせの場合には、次の溶射方法を採用する
ことにより、上記した厚みをもつ界面層を実現すること
ができる。即ち、アルミニウム系の基材および鉄系の溶
射材料を用意する工程と、鉄系の溶射材料を溶射処理し
てアルミニウム系の基材の表出面に鉄系の溶射膜を積層
する溶射工程とを実施する。溶射工程では、鉄系の溶射
材料の平均溶射粒子温度を2200K以上に設定する。
【0026】本発明に係る溶射方法によれば、溶射材料
の平均溶射粒子温度を2200K以上に設定しているた
め、基材成分と溶射膜成分との合金化が良好に行われ、
上記した効果をもつ極薄の界面層の厚み(2〜1000
nm)を形成することができる。
【0027】請求項1の本発明に係る溶射物では、界面
層の厚みは2〜1000nmに規定されている。請求項
2,請求項3の本発明に係る溶射方法は、基材と溶射膜
との間に生成する界面層の厚みを極薄にするのに適する
ものであり、従って界面層の厚みは2〜1000nmの
範囲が好ましいものの、この範囲に限定されるものでは
なく、基材の材質、溶射材料などの種類の如何によって
は、1000nm以上の厚みをもつ界面層が生成される
形態であっても良い。
【0028】溶射処理の際には、溶射材料は、半溶融状
態または溶融状態の微細な粒子状となって基材に向けて
飛翔する。平均溶射粒子温度は、溶射の際のプラズマ火
炎などの火炎自体の温度ではなく、基材に衝突する手前
において、少なくとも一部が融液化した粒子として溶射
材料が飛翔している平均温度を意味する。
【0029】溶射粒子温度の上限値は溶射材料の材質に
よって異なるものの、3400K、3200k、300
0K、2900k、2800Kのいずれかにでき、溶射
を効果的に行うには溶射材料の沸点を越えないようにす
ることが好ましい。従って炭素鋼系等の鉄系(炭素鋼、
合金鋼を含む)の溶射材料の場合には、平均溶射粒子温
度は2100〜3000Kが好ましい。殊に、平均溶射
粒子温度は2400〜3000K、2600〜3000
Kが好ましい。なお、飛翔している溶射材料の平均溶射
粒子温度は、放射温度計を利用して測定できる。
【0030】溶射前の溶射材料の形態は粉末でも良い
し、線材でも良い。鉄系の溶射材料としては、炭素鋼系
の粉末、合金鋼系の粉末を採用できる。炭素鋼系の炭素
含有量は特に限定されないが、一般的には、0.001
〜4重量%の範囲内、0.01〜2重量%の範囲内を採
用できる。
【0031】請求項3の発明は、基材の材質がアルミニ
ウム系で、溶射材料の材質が鉄という組み合わせ以外の
組み合わせに変化したときであっても、対応することが
できるようにするものである。基材に向けて飛翔中の平
均溶射粒子温度TP(K)は、前述したように、炎自体
の温度ではなく、基材に向けて飛翔中の溶射粒子自体の
温度であり、前記したように放射温度計で測定すること
ができる。
【0032】溶射材料についての平均溶射粒子温度TP
(K)は、溶射材料の沸点未満にすることが好ましい。
溶射の際の基材の表面の初期温度TS(K)は、基材や
溶射材料の種類等に応じて異なるものの、例えば273
K〜773Kにすることができる。本明細書ではKは絶
対温度を意味する。
【0033】請求項3の発明の態様としては、次の
(A)〜(D)に示す組合わせの態様が例示される。
【0034】(A)の態様 この態様は、溶射材料の材質が鉄系(炭素鋼、合金鋼を
含む)であり、基材の材質がアルミニウム合金のときの
組み合わせである。この場合には、平均溶射粒子温度T
Pが2450Kと仮定すると、溶射粒子の熱伝導率λP
約40(W/m・K)とされ、溶射粒子の比重ρPは約
7000(kg/m3)とされ、溶射粒子の比熱CPは約
0.8(KJ/(kg・K))とされる。この物性値は
平均溶射粒子温度TPが2450Kのときの物性値(文
献値)である。
【0035】また基材の材質はアルミニウム合金である
ため、基材の熱伝導率λSは約240(W/m・K)と
され、基材の比重ρSは約2700(kg/m3)とさ
れ、基材の比熱CSは約1.1(KJ/(kg・K))
とされる。この物性値は基材の温度が400Kのときの
物性値(文献値)である。
【0036】(B)の態様 この態様は、溶射材料の材質が銅系で、基材の材質が鉄
系(炭素鋼、合金鋼を含む)の組み合わせである。この
場合には、平均溶射粒子温度TPが2000Kと仮定す
ると、溶射粒子の熱伝導率λPは約180(W/m・
K)とされ、溶射粒子の比重ρPは約7500(kg/
3)とされ、溶射粒子の比熱CPは約0.5(KJ/
(kg・K))とされる。上記物性値は2000Kのと
きの物性値(文献値)である。
【0037】また基材の材質が鉄系(炭素鋼、合金鋼を
含む)であるため、基材の熱伝導率λSは約65(W/
m・K)とされ、基材の比重ρSは約7800(kg/
3)とされ、基材の比熱CSは約0.5(KJ/(kg
・K))とされる。上記物性値は基材の温度が400K
のときの物性値(文献値)である。
【0038】(C)の態様 この態様は、溶射材料の材質がアルミニウム合金であ
り、基材の材質が鉄系(炭素鋼、合金鋼を含む)の組み
合わせである。この場合には、平均溶射粒子温度TP
1000Kと仮定すると、溶射粒子の熱伝導率λPは約
100(W/m・K)とされ、溶射粒子の比重ρPは約
2400(kg/m3)とされ、溶射粒子の比熱CPは約
1.1(KJ/(kg・K))とされる。上記物性値は
1000Kのときの物性値(文献値)である。
【0039】また基材の材質が鉄系(炭素鋼、合金鋼を
含む)であるため、基材の熱伝導率λSは60(W/m
・K)とされ、基材の比重ρSは約7800(kg/
3)とされ、基材の比熱CSは約0.5(KJ/(kg
・K))とされる。鉄系の基材に関する上記物性値は、
400Kのときの物性値(文献値)である。
【0040】(D)の態様 この態様は、溶射材料の材質がアルミニウム合金であ
り、基材の材質が銅系である組み合わせである。この場
合には、平均溶射粒子温度TPが1000Kと仮定する
と、溶射粒子の熱伝導率λPは約100(W/m・K)
とされ、溶射粒子の比重ρPは約2400(kg/m3
とされ、溶射粒子の比熱CPは約1.1(KJ/(kg
・K))とされる。上記物性値は1000Kのときの物
性値(文献値)である。
【0041】また基材の材質が銅系であるため、基材の
熱伝導率λSは約400(W/m・K)とされ、基材の
比重ρSは約8900(kg/m3)とされ、基材の比熱
Sは約0.4(KJ/(kg・K))とされる。上記
物性値は400Kのときの物性値(文献値)である。
【0042】溶射に関する溶射パラメータ温度TCを上
記式により求め、溶射パラメータ温度TCが基材の融点
mに対して100K以上で700K以下の領域となる
ように溶射を行う。700Kを越えると溶射材料の沸点
以上となることがある。ここで、溶射パラメータ温度T
Cとしては、基材及び溶射材料の材質、溶射条件等に応
じて、基材の融点Tmに対して200K以上、または3
00K以上、または400K以上、または500K以上
に設定することができる。従って、溶射パラメータ温度
Cは、基材の融点Tm以上で溶射材料(または基材)の
沸点未満の領域であることが好ましい。
【0043】求めた溶射パラメータ温度TCが基材の融
点Tmに対して100K未満である領域においては、溶
射を行わない。なお、溶射パラメータ温度TCが基材の
沸点を超える温度域であると、溶射膜の密着強度が低下
して望ましくない。なお基材の融点Tmとは、液相・固
相共存領域を区画する液相線及び固相線をもつ場合に
は、固相線を意味する。
【0044】
【実施例】以下、試験例に基づいて実施例1を説明す
る。
【0045】まず、鉄系の溶射材料およびアルミニウム
系の基材を用意する。溶射材料は炭素鋼系の粉末であ
り、45μmのメッシュ穴をパスした45μmアンダー
である。基材1のサイズは40mm×40mm×10m
mである。基材1の材質はAl−Si−Cu系(JIS
−AC8A,Tm=505℃、Siの目標含有量:12wt.
%)である。溶射前に、基材1の表出面に対してブラス
ト処理つまり粗面化処理が行われている。
【0046】本実施例では、プラズマ溶射用の溶射ガン
2を用い、界面層の厚みが0〜2000nmの領域とな
るように、プラズマ溶射処理を基材1の表出面(予熱:
125℃=398K)に行ない、これにより図2、図3
に示すようにアルミニウム系の基材1の表出面に、鉄系
の溶射膜3(目標平均厚み:0.3mm)を積層した試
験片を得た。
【0047】本実施例では、溶射処理における平均溶射
粒子温度の測定にあたり、2色法を採用し、溶射ガン2
から基材1に向けて飛翔している高温状態の粒子群から
の放射光を用い、放射光の2波長の放射強度比に基づい
て平均溶射粒子温度を算出した。
【0048】そして各試験片について、基材1と溶射膜
3との境界である界面で生成していた界面層の厚みを電
子顕微鏡(TEM)を利用して求めた。なお平均溶射粒
子温度を2200K以上に設定した本実施例に係る製造
方法によれば、前記した特開平8−13118号公報に
係る技術とは異なり、溶射後に基材を共晶温度付近に長
時間加熱せずとも、上記した密着強度改善効果をもつ界
面層が生成する。
【0049】本発明者は、界面層の厚みと溶射膜3との
せん断密着強度をせん断試験により測定した。せん断密
着強度試験の試験結果を図4に示す。図4に示すよう
に、界面層の厚みを横軸とすると共にせん断密着強度を
縦軸としたとき、界面層の厚みとせん断密着強度との関
係においては、厚み500〜1000nmを頂領域とす
る山型の特性が得られた。
【0050】即ち図4に示すように、界面層の厚みが0
nm(平均溶射粒子温度:1700K,界面層の面積
率:0%)のときには、せん断密着強度は約17MPa
であり低かった。しかし、界面層の厚みが2nm(平均
溶射粒子温度:2210K.界面層の面積率:60%)
のときには、せん断密着強度は約60MPaであった。
界面層の厚みが25nm(平均溶射粒子温度:2300
K,界面層の面積率:80%)のときには、せん断密着
強度は約80MPaであった。界面層の厚みが500n
m(平均溶射粒子温度:2550K,界面層の面積率:
90%のときには)、せん断密着強度は約100MPa
であった。界面層の厚みが1000nm(平均溶射粒子
温度:2730K,界面層の面積率:95%)のときに
は、せん断密着強度は約100MPaであった。しかし
界面層の厚みが厚くなりすぎたときには、つまり200
0nm(平均溶射粒子温度:2950K)のときには、
せん断密着強度は約30MPaと大幅に低下した。更に
界面層の厚みが2000nmをこえたときには、せん断
密着強度は同様に低下していた。
【0051】上記したせん断試験は次のようにして行っ
た。即ち、図5に示すように、試験治具200の保持孔
202に、基材1と溶射膜3とからなる試験片をセット
し、その状態で、溶射膜202を突出させた状態におい
てポンチ204を矢印A方向に移動させることにより溶
射膜202を基材200から剥離させ、そのときの荷重
に基づいてせん断密着強度を求めた。
【0052】次に、平均溶射粒子温度(K)を変化させ
て、溶射膜3のせん断密着強度と平均溶射粒子温度との
関係を求めた。平均溶射粒子温度は、プラズマ溶射用の
溶射ガン2に供給する電流量を調整することにより行っ
た。
【0053】試験結果を図6に示す。図6から理解でき
るように、平均溶射粒子温度が2000K未満,220
0K未満では、溶射膜のせん断密着強度は低い。しか
し、飛翔している溶射材料の平均溶射粒子温度が210
0K、2200Kを超えるあたりから、溶射膜のせん断
密着強度は急激に増加する。すなわち本発明者が行った
試験条件によれば、飛翔している溶射材料の平均溶射粒
子温度が2200K未満であれば、溶射膜のせん断密着
強度は20MPaに到達しなかった。しかし飛翔してい
る溶射材料の平均溶射粒子温度が2200K以上であれ
ば、殊に2400K以上であれば、溶射膜のせん断密着
強度は急激に高くなり、50MPa、60MPa、70
MPa、80MPaを超えた。つまり、密着強度向上効
果において平均溶射粒子温度2200Kが敷居値として
機能する。
【0054】即ち、図6に示すように、平均溶射粒子温
度が2200Kであれば、溶射膜のせん断密着強度は約
58MPaであった。平均溶射粒子温度が2400K以
上であれば、溶射膜のせん断密着強度は60MPaを超
えた。平均溶射粒子温度が2700Kであれば、溶射膜
のせん断密着強度は大きく増加して約70MPaであっ
た。平均溶射粒子温度か3000Kであれば、溶射膜の
せん断密着強度は更に大きく増加して80MPaを超え
た。
【0055】各試験片を用い、基材と溶射膜との境界付
近を電子顕微鏡(TEM)で調べたところ、平均溶射粒
子温度が2200K以上であれば、FeとAlとが拡散
して混在した厚みが2〜100nmのFe−Al合金化
層が界面層として生成されていた。平均溶射粒子温度が
2200K未満であれば、この界面層は生成されない
か、実質的に生成されない。
【0056】図7は上記した試験例において平均溶射粒
子温度が2200K以上、つまり3000Kのときにお
ける界面層を示す写真である。図8は比較例を示し、上
記した試験例において溶射粒子温度が2200K未満、
つまり1900Kのときにおける溶射膜と基材との界面
付近を示す写真である。なお図7、図8に係る写真にお
いて上側がFe、下側がAlである。
【0057】図7から理解できるように、この試験例で
は平均溶射粒子温度が2200K以上であるため、溶射
膜であるFeと基材であるAlとの境界において、厚み
が約50nm程度の界面層(白色の層)が生成している
のがはっきりと認められる。しかしながら比較例を示す
図8では、平均溶射粒子温度が2200K未満であるた
め、基材と溶射膜との界面において界面層が全く認めら
れない。この図7および図8の比較から理解できるよう
に、溶射の際における平均溶射粒子温度は、極薄の厚み
をもつ界面層の生成に大きな影響を与える。
【0058】上記した試験片について界面の組成分析を
行った。その結果を図9に示す。図9は、平均溶射粒子
温度を2200K未満とした場合(つまり図8に係る試
験片)のAl%とFe%の分析結果を示すとともに、平
均溶射粒子温度を2200K以上とした場合(つまり図
7に係る試験片)のAl%とFe%の分析結果を示す。
【0059】図9に示す試験結果から判断すれば、平均
溶射粒子温度が2200K以上のときには、界面付近の
約50nm〜60nm程度の距離範囲において、Alの
緩やかな濃度勾配が認められ,また、Feの緩やかな濃
度勾配も認められる。すなわち、Al,Feが互いに混
在するように拡散して生成された厚みが約50nm〜6
0nm程度の界面層、つまり、Fe−Al合金化層が生
成しているのがわかる。
【0060】これに対して図9の破線に示すように、平
均溶射粒子温度が2200K未満のときには、Alの濃
度、Feの濃度は共に境界において急激に変化してお
り、Alの濃度勾配,Feの濃度勾配がほとんど認めら
れず、従って、Al,Feの双方が拡散して生成された
界面層であるFe−Al合金化層が実質的に生成されて
いないことがわかる。
【0061】なお図9の破線に示す勾配は、距離におけ
るプロット点の関係上、ある勾配角が認められるが、実
際にはもっと急激であると推察される。
【0062】更に、他の試験片について界面層付近の濃
度変化を調べた。その結果を図10〜図13に示す。図
10はアルミニウム系の基材を125℃(=398K)
に予熱した状態において、鉄系の溶射粉末を溶射した場
合の境界付近の濃度変化を示す。図11はアルミニウム
系の基材を275℃(=548K)に予熱した状態にお
いて、鉄系の溶射粉末を溶射した場合の境界付近の濃度
変化を示す。図10および図11において×印はFe濃
度を示し、+印はAl濃度を示す。
【0063】図12は、図10に係る試験片において、
基材と溶射膜との界面付近を電子顕微鏡(TEM)で観
察した写真を示す。図13は、図11に係る試験片にお
いて、基材と溶射膜との界面付近を同様の電子顕微鏡で
観察した写真を示す。なお図12、図13に係る写真に
おいて上側がFe系溶射膜、下側がAl系基材である。
図12の写真によれば、基材と溶射膜との界面において
界面層(部位によって異なるものの、厚み:10〜15
nm程度)が生成しているのがはっきりと認められる。
また図13の写真によっても、基材と溶射膜との界面に
おいて界面層(部位によって異なるものの、厚み:10
〜15nm程度)が生成しているのがはっきりと認めら
れる。
【0064】この界面層について電子線回折した結果に
よれば、界面層においては結晶質と非結晶質とが混在し
ていると考えられる。結晶質は次の化合物が該当すると
推察される。Al5Fe2、Al86Fe14、Al82
18、Al75Fe25、Al3Fe等である (実施例2)本発明に係る実施例2を説明する。鉄合金
で構成されている溶射粉末の平均溶射粒子温度を220
0K以上(殊に2400K以上)とするには、一般的に
は、プラズマフレームないしガスフレームの温度を高め
ることにより行う。しかしながら他の溶射条件にもよる
が、溶射粉末の粒子をより小さいものにすることでも、
溶射粉末の平均溶射粒子温度を2200K以上とするこ
とを、より達成し易い場合がある。
【0065】そこで本実施例では、溶射処理により鉄系
の溶射膜を積層するに際して、アルミニウム系基材の表
出面に直接触れる粉末群を、細かい粒径の鉄系の溶射粉
末を用い、その後の粉末群を、それよりも大きい粒径を
もつ、つまり通常の粒径をもつ鉄系の溶射粉末を用いて
溶射する。なお、溶射粉末の組成、基材1の組成は実施
例1と同様にした。
【0066】すなわち本実施例によれば、溶射初期にお
いては、前者として10〜45μmの粒径の鉄系の溶射
粉末を用い、溶射中期移行においては、後者として46
〜65μmの粒径の鉄系の溶射粉末を用いる。前者の溶
射粉末を用いて溶射するときには、平均溶射粒子温度は
2200K以上(殊に2400K以上)となるように、
溶射条件(電流値、ガス流量等)を調整し、後者の溶射
粉末を用いて溶射するときには、平均溶射粒子温度は2
200K未満となるように溶射条件を調整する。なお、
溶射粉末の粒径は平均粒径を意味する。粒径はサイズは
上記に限定されるものではなく、適宜変更できるもので
ある。さらに比較例として、46〜65μmの粒径をも
つ鉄系の溶射粉末を用い、平均溶射粒子温度が2200
K未満となるように、同一種類の基材に溶射した。この
比較例では、電子顕微鏡で観察したところ、溶射膜と基
材との界面に生成する界面層は生成していなかった。こ
れに対して実施例2では界面層の厚みは20nm程度で
あった。溶射膜のせん断密着強度を調べたところ、比較
例に係る溶射膜のせん断密着強度は20MPaと少なか
った。しかし、実施例2に係る溶射膜のせん断密着強度
は3倍を越えており、75MPaとかなり高かった。平
均溶射粒子温度が2200K以上(殊に2400K以
上)であり、良好な界面層が生成されたものと推察され
る。
【0067】(実施例3)実施例3では、Al−Si−
Mg系のアルミニウム合金を基材1として用いると共
に、溶射粉末として、鉄系である炭素鋼系の溶射粉末
(45μアンダー)を溶射材料として用いた。アンダ−
とは45μの網目を通過した意味である。基材1及び溶
射材料は実施例1,2と異なる組成とした。
【0068】そしてブラスト処理により粗面化処理した
基材1を393K(120℃)に予熱した状態で、溶射
ガン2を用いプラズマ溶射を行ない、溶射膜3を被覆し
た。基材1と溶射ガン2の先端との距離は約100mm
とした。溶射条件も実施例2に対して若干変更した。
【0069】本実施例では、基材1に向けて飛翔中の平
均溶射粒子温度をTP(K)とし、溶射の際の基材1の
表面の初期温度をTS(K)、平均溶射粒子温度におけ
る溶射粒子の熱伝導率をλP(W/m・K)、基材の初
期温度における基材の熱伝導率をλS(W/m・K)、
平均溶射粒子温度における溶射粒子の比重をρP(kg
/m3)、基材の初期温度における基材1の比重をρ
S(kg/m3)、平均溶射粒子温度における溶射粒子の
比熱をCP(KJ/(kg・K))、基材の初期温度に
おける基材1の比熱をCS(KJ/(kg・K))とす
る。
【0070】また、溶射粒子の熱侵透係数をKPとし、
基材1の熱侵透係数をKSとする。
【0071】この場合、溶射粒子の熱侵透係数KPを下
記の式(2)に基づいて定める。基材1の熱侵透係数K
Sを下記の式(3)に基づいて定める。そして、溶射に
関する溶射パラメータ温度TCを下記の式(1)により
求める。
【0072】 TC=(KP・TP+KS・TS)/(KP+KS) …(1) KP=(λP・CP・ρP1/2 …(2) KS=(λS・CS・ρS1/2 …(3) ここで、基材1に向けて飛翔中の鉄粉末粒子の平均溶射
粒子温度TP(K)を変化させて、溶射の際のアルミニ
ウム合金製の基材1の表面の初期温度TSを393
(K)とする。従って鉄溶射粒子の熱伝導率λPを40
(W/m・K)とし、基材1の熱伝導率λSを237
(W/m・K)とし、溶射粒子の比重ρPを7000
(kg/m3)とし、基材1の比重ρSを2688(kg
/m3)とし、溶射粒子の比熱をCP0.795(KJ/
(kg・K))とし、基材1の比熱CSを1.1(KJ
/(kg・K))とする。
【0073】(2)に代入すれば、 KP=(λP・CP・ρP1/2 …(2) =(40×0.795×7000)1/2 =471.8 (3)に代入すれば、 KS=(λS・CS・ρS1/2 …(3) =(237×1.1×2688)1/2 =837.1 本発明者は、飛翔中の鉄粉末粒子の平均溶射粒子温度T
P(K)と基材の初期温度Ts(K)等とを適宜変更す
ることにより、式(1)に基づいて求めた溶射パラメー
タ温度TCを適宜変化させた。このように溶射パラメー
タ温度TCを適宜変化させた条件で溶射を行ない、製造
された溶射膜3のせん断密着強度を前述同様に測定し、
溶射パラメータ温度TCと溶射膜3のせん断密着強度と
の関係を調べた。試験結果を図14に示す。
【0074】図14の特性線Mから理解できるように、
溶射パラメータ温度TCが基材1の融点Tm(900K)
以下のときには、溶射膜3のせん断密着強度は低かっ
た。しかし溶射パラメータ温度TCが基材1の融点T
m(900K)を越えたあたりから、溶射膜3のせん断
密着強度を急激に増加させる特性が得られた。図14の
特性線Mから理解できるように最高域では、90Ma以
上,100Ma以上のせん断密着強度が得られた。
【0075】従って図14の特性線Mによれば、上記し
た溶射パラメータ温度TCが基材1の融点Tm(900
K)に対して100K以上で700K以下の領域におい
て、溶射を行うようにすれば、せん断密着強度の向上効
果が得られる。
【0076】換言すると、図14に示す特性線Mに基づ
けば、溶射パラメータ温度TCが1300K〜1600
Kのとき、密着強度60MPa以上が得られる。更に1
400〜1550Kのとき、1450〜1500Kのと
き、また1500〜1600Kのとき、溶射膜3のせん
断密着強度が一層増加することがわかる。
【0077】即ち、基材1の融点Tm(=900K)に対
して、溶射パラメータ温度TCが370K以上(130
0K−900K=400K)以上で、且つ、700K以
下(1600K−900K=700K)のときに、高い
せん断密着強度が得られることがわかる。特に、基材1
の融点Tm(=900K)に対して、溶射パラメータ温度
Cが500K以上(1400K−900K=500K)
以上で、且つ、650K以下(1550K−900K=
650K)のときに、溶射膜3のせん断密着強度が増加
することがわかる。更に、基材1の融点Tm(=900
K)に対して、溶射パラメータ温度TCが550K以上
(1450K−900K=550K)以上で、且つ、6
00K以下(1500K−900K=600K)のとき
に、溶射膜3のせん断密着強度が増加することがわか
る。
【0078】また上記したように溶射パラメータ温度T
Cを変化させた場合において、界面層の面積率と密着強
度との関係を図15に示した。図15に示すように、界
面層の面積率と溶射膜の密着強度とは、比例関係にある
ことがわかる。
【0079】なお、本実施例はアルミニウム系の基材に
炭素鋼系の溶射膜を被覆する場合であるが、基材として
鉄系を用いると共に溶射材料としてアルミニウム系を用
いた場合においても、また、基材として銅系を用いると
共に溶射材料としてアルミニウム系を用いた場合におい
ても、また、基材としてニッケル系を用いると共に溶射
材料としてモリブデン系を用いた場合においても、基本
的には同様の溶射膜の密着強度改善効果が得られるもの
である。
【0080】(適用例)図16は、内燃機関を構成する
アルミニウム系合金で形成したシリンダブロック50を
基材として用い、シリンダブロック50のシリンダボア
52の内周面に鉄系つまり炭素鋼系の溶射膜3を積層し
た場合を示す。
【0081】図17は、アルミニウム系合金で形成した
ピストン60を基材として用い、ピストン60のリング
溝62に鉄系つまり炭素鋼系の溶射膜3を積層し、その
後に、ピストンリングが嵌まる加工溝3fを切削加工で
形成した場合を示す。
【0082】上記した適用例においても、請求項2のよ
うに平均溶射粒子温度を2200K以上、殊に2400
K以上としており、基材としてのシリンダブロック50
及びピストン60と溶射膜3との界面には、上記した極
薄の界面層が生成している。界面層の厚みは請求項1の
範囲に納めた。
【0083】更に請求項3に示すように、基材であるシ
リンダブロック50やピストン60を構成する母材合金
の融点Tmに対して溶射パラメータ温度TCが100K以
上で700K以下の領域において溶射する。具体的には
融点Tmに対して溶射パラメータ温度TCが300K以上
(400K以上)で700K以下の領域において溶射す
る。これにより上記した極薄の界面層を生成させた。
【0084】基材としては上記したシリンダブロックや
ピストンに限らず、各種の産業で用いられる機器や部品
に適用でき、例えばバルブシート、ローラに適用でき
る。
【0085】(付記)上記した記載から次の技術的思想
も把握できる。 ・基材および溶射材料を用意する工程と、溶射材料を溶
射処理して基材の表出面に鉄系の溶射膜を積層する溶射
工程とを実施する溶射方法において、基材の表出面に直
接接触する溶射工程の初期においては、初期以降よりも
細かい粒径の溶射粉末を用い、初期以降においては、初
期に用いた溶射粉末よりも粒径が大きい溶射粉末を用い
る溶射方法。 ・アルミニウム系の基材および鉄系の溶射材料を用意す
る工程と、鉄系の溶射材料を溶射処理して基材の表出面
に鉄系の溶射膜を積層する溶射工程とを実施する溶射方
法において、アルミニウム系の基材の表出面に直接接触
する溶射工程の初期においては、初期以降よりも細かい
平均粒径の溶射粉末を用い、アルミニウム系の基材に向
けて飛翔中の鉄系の溶射材料の平均溶射粒子温度を22
00K以上(例えば2400K以上で3300K以下)
に設定するとともに、初期以降においては、初期に用い
る溶射粉末よりも平均粒径が大きい溶射粉末を用いる溶
射方法。 ・アルミニウム系の基材および鉄系の溶射材料を用意す
る工程と、鉄系の溶射材料を溶射処理してアルミニウム
系の基材の表出面に鉄系の溶射膜を積層する溶射工程と
を実施する溶射方法において、基材に向けて飛翔中の鉄
系の溶射材料の平均溶射粒子温度を2200K以上(例
えば2400K以上で3300K以下)に設定し、基材
と溶射膜との界面に、基材成分および溶射膜成分に基づ
いて形成された厚みが2〜1000nmの界面層を生成
することを特徴とする溶射方法。 ・基材および溶射材料を用意する工程と、溶射材料を溶
射処理して基材の表出面に溶射膜を積層する溶射工程と
を実施する溶射方法において、基材に向けて飛翔中の平
均溶射粒子温度をTP(K)、溶射の際の基材の表面の
初期温度をTS(K)、溶射粒子の熱伝導率をλP(W/
m・K)、基材の熱伝導率をλS(W/m・K)、溶射
粒子の比重をρP(kg/m3)、基材の比重をρS(k
g/m3)、溶射粒子の比熱をCP(KJ/(kg・
K))、基材の比熱をCS(KJ/(kg・K))と
し、溶射粒子の熱侵透係数をKP、基材の熱侵透係数を
Sとしたとき、溶射パラメータ温度TCを下記式(1)
〜(3)により求め、溶射パラメータ温度TCが基材の
融点Tmに対して100K以上で700K以下の領域に
おいて溶射を行ない、基材と溶射膜との界面に、基材成
分および溶射膜成分に基づいて形成された厚みが2〜1
000nmの界面層を生成することを特徴とする溶射方
法。 ・図14に示すように、密着強度測定結果を示すグラフ
の横軸を溶射パラメータ(K)とし、グラフの縦軸を溶
射膜の密着強度(MPa)としたとき、溶射膜の密着強
度の最高域が溶射パラメータ1400〜1650K,1
500〜1650Kで得られる山形の密着強度改善特性
が発現され、溶射パラメータ(K)がこの最高域の温度
域から降下するにつれて、また、溶射パラメータ(K)
がこの最高域の温度域から上昇するにつれて、溶射膜の
密着強度が低下する特性が得られることを特徴とする請
求項3に係る溶射方法。 ・溶射膜の密着強度は60MPa,70MPa,80MPa,
85MPa,90MPa,95MPa,100MPaのいずれ
か1つのレベルを越えることを特徴とする各請求項また
は付記に記載の溶射物及び溶射方法。
【0086】
【発明の効果】本発明に係る溶射物によれば、界面層の
厚みを極薄に設定しているため、図4から理解できるよ
うに、基材と溶射膜との密着強度を大きく増加させるこ
とができる。
【0087】請求項2に係る溶射方法によれば、アルミ
ニウム系の基材に向けて飛翔中の鉄系の溶射材料の平均
溶射粒子温度を2200K以上に設定することにしてい
るため、図6から理解できるように、溶射膜の密着強度
の増加における臨界的意義が得られ、基材と鉄系の溶射
膜との密着強度を増加させ得る溶射物を提供することが
できる。
【0088】請求項3に係る溶射方法によれば、溶射パ
ラメータ温度TCが基材の融点Tmに対して100K以上
で700K以下の領域において溶射を行うようにしてい
る。このため、基材がアルミニウムで溶射材料が鉄系の
組み合わせ以外の組み合わせのときであっても、図14
から理解できるように、溶射膜の密着強度の増加におけ
る臨界的意義が得られ、基材と溶射膜との密着強度を増
加させ得る溶射物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】基材に溶射する形態を示す模式図である。
【図2】基材に溶射膜を積層した試験片の正面図であ
る。
【図3】基材に溶射膜を積層した試験片の側面図であ
る。
【図4】界面層の厚みとせん断密着強度との関係を示す
グラフである。
【図5】試験治具によりせん断密着強度を測定する形態
を示す模式図である。
【図6】平均溶射粒子温度とせん断密着強度との関係を
示すグラフである。
【図7】平均溶射粒子温度を2200K以上とした場合
における試験片に係る基材と溶射膜との界面付近を示す
電子顕微鏡写真である。
【図8】平均溶射粒子温度を2200K未満とした場合
における試験片に係る基材と溶射膜との界面付近を示す
電子顕微鏡写真である。
【図9】界面層付近における濃度変化を示すグラフであ
る。
【図10】別の試験片に係る界面層付近におけるAl、
Feの濃度変化を示すグラフである。
【図11】更に別の試験片に係る界面層付近におけるA
l、Feの濃度変化を示すグラフである。
【図12】図10に示す試験片に係る界面付近を示す電
子顕微鏡写真である。
【図13】図11に示す試験片に係る界面付近を示す電
子顕微鏡写真である。
【図14】溶射パラメータ温度と溶射膜のせん断密着強
度との関係を示すグラフである。
【図15】界面層の面積率と溶射膜のせん断密着強度と
の関係を示すグラフである。
【図16】内燃機関のシリンダブロックのシリンダボア
に適用した適用例を示す概略断面図である。
【図17】内燃機関のピストンのリング溝に適用した適
用例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
図中、1は基材、3は溶射膜を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 福島 英沖 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 中西 和之 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 森 広行 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 児玉 幸多 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 森 和彦 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 丸本 幾郎 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 南 充 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 梶川 義明 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基材と、基材に積層された溶射膜とで構成
    され、 基材と溶射膜との界面には、基材成分および溶射膜成分
    に基づいて形成された界面層が生成しており、その厚み
    が2〜1000nmであることを特徴とする溶射物。
  2. 【請求項2】アルミニウム系の基材および鉄系の溶射材
    料を用意する工程と、鉄系の溶射材料を溶射処理してア
    ルミニウム系の基材の表出面に鉄系の溶射膜を積層する
    溶射工程とを実施する溶射方法において、 基材に向けて飛翔中の鉄系の溶射材料の平均溶射粒子温
    度を2200K以上に設定することを特徴とする溶射方
    法。
  3. 【請求項3】基材および溶射材料を用意する工程と、溶
    射材料を溶射処理して基材の表出面に溶射膜を積層する
    溶射工程とを実施する溶射方法において、 基材に向けて飛翔中の平均溶射粒子温度をTP(K)、
    溶射の際の基材の表面の初期温度をTS(K)、溶射粒
    子の熱伝導率をλP(W/m・K)、基材の熱伝導率を
    λS(W/m・K)、溶射粒子の比重をρP(kg/
    3)、基材の比重をρS(kg/m3)、溶射粒子の比
    熱をCP(KJ/(kg・K))、基材の比熱をCS(K
    J/(kg・K))とし、 溶射粒子の熱侵透係数をKP、基材の熱侵透係数をKS
    したとき、 溶射パラメータ温度TCを下記式(1)〜(3)により
    求め、 溶射パラメータ温度TCが基材の融点Tmに対して100
    K以上で700K以下の領域において溶射を行うように
    したことを特徴とする溶射方法。 TC=(KP・TP+KS・TS)/(KP+KS) …(1) KP=(λP・CP・ρP1/2 …(2) KS=(λS・CS・ρS1/2 …(3)
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