JPH10298650A - 磁束密度が高く鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

磁束密度が高く鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法

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JPH10298650A
JPH10298650A JP9102936A JP10293697A JPH10298650A JP H10298650 A JPH10298650 A JP H10298650A JP 9102936 A JP9102936 A JP 9102936A JP 10293697 A JP10293697 A JP 10293697A JP H10298650 A JPH10298650 A JP H10298650A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 磁束密度が高い無方向性電磁鋼板の製造方法
を提供する。 【解決手段】 重量%で、0.10% <Si≦7.00% 、0.10%
≦Mn≦1.50% を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物
からなるスラブを用い、熱間圧延し熱延板とし、そのま
ま製品として使用するか、あるいは一回もしくは中間焼
鈍をはさむ二回以上の冷間圧延を施し次いで仕上焼鈍を
施し、絶縁皮膜を施すか、あるいは施さずに最終製品と
する無方向性電磁鋼板の製造方法において、仕上熱間圧
延時に使用する潤滑油が下記の式(1)を満たすと共
に、前記潤滑油をロール冷却水中に式(2)を満たすよ
うに混合して仕上熱間圧延の潤滑に供することを特徴と
する高磁束密度かつ低鉄損の無方向性電磁鋼板の製造方
法。 80≦ρ≦800 ・・・式(1) 0.5≦v≦10.0・・・式(2) 但し、ρ:潤滑油の動粘性係数(cSt:センチストー
クス) v:ロール冷却水中の潤滑油の体積分率(%)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気機器の鉄心材
料として用いられる、磁束密度が高い無方向性電磁鋼板
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、電気機器、特に無方向性電磁鋼板
がその鉄心材料として使用される回転機および中、小型
変圧器等の分野においては、世界的な電力、エネルギー
節減、さらにはフロンガス規制等の地球環境保全の動き
の中で、高効率化の動きが急速に広まりつつある。この
ため使用時のエネルギーロスである鉄損を少しでも低く
して高効率化を図るため、需要家の低鉄損電磁鋼板への
要求は増してきている。一方で、回転機では鉄心を小型
化して同一出力を得るためには動作磁束密度を高める必
要があり、このためには高磁束密度の無方向性電磁鋼板
が求められている。このように回転機の小型化はそれ自
身が架装される移動体である自動車、電車等の軽量化に
つながるため、それら自身が消費するエネルギーの節約
にもつながるという利点がある。このため昨今では需要
家から低鉄損かつ磁束密度の高い無方向性電磁鋼板が強
く求められるようになっている。また、世界的な大競争
時代に突入している現代にあって、無方向性電磁鋼板へ
の需要家のコストダウンの要求は厳しく、先述の電気機
器の高効率化のすう勢と相まって、価格が同一であれは
磁気特性が少しでも優れた無方向性電磁鋼板が需要家に
選択されるのが実情である。
【0003】ところで、無方向性電磁鋼板においては、
従来、低鉄損化の手段として一般に、電気抵抗増大によ
る渦電流損低減の観点からSiあるいはAl等の含有量
を高める方法がとられてきた。しかし、この方法では反
面、磁束密度の低下は避け得ないという問題点があっ
た。このような問題点の克服のために、熱延板結晶粒径
を粗大化することで主として磁束密度を改善させる方法
が行われてきた。
【0004】従来、Si含有量が高い無方向性電磁鋼板
においては、仕上熱延後の結晶組織の成長が不十分であ
り、高磁束密度低鉄損の材料を提供するためには、仕上
熱延終了後、何らかの方法で熱延板焼鈍を施し、結晶組
織の粗大化を図ることが必須とされてきた。しかしなが
ら熱延板焼鈍を施すことによって、多少の製品の磁気特
性改善が可能となったとしても、前記の高磁束密度低鉄
損材に対する需要家の要求に応えるには不十分であっ
た。
【0005】このような問題点に鑑み、高Si系無方向
性電磁鋼板の磁気特性を改善する手段として、特開昭5
9−74224号公報にはSi含有量が2.5%〜4.
0%である鋼において、一回冷延法において不純物であ
るS≦15ppm、O≦20ppm、N≦25ppmに
制限する規定に加えて熱延板焼鈍条件を規定しかつ冷間
圧延率を65%以上に規定する技術が、特開昭59−7
4225号公報には二回冷延法においてS≦15pp
m、O≦20ppm、N≦25ppmの規定に加えて中
間焼鈍条件を規定しかつ二回目の冷間圧延率を70%以
上に規定する技術がそれぞれ開示されている。しかしな
がらこれらの方法のように、鋼の高純化を中心とする技
術では、鉄損が改善されても磁束密度の向上が十分でな
いという高Si系無方向性電磁鋼板特有の問題の解決に
至らなかった。
【0006】また、特開昭54−76422号公報に
は、無方向性電磁鋼板の冷延前結晶組織を安価に粗大化
し磁束密度を高める技術として、仕上熱延後の熱延板を
700℃から1000℃の高温で巻取り、これをコイル
の保有熱で焼鈍する自己焼鈍法が、また、特公昭62−
61644号公報には、熱延終了温度を1000℃以上
の高温として無注水時間を設定し、いわゆるランアウト
テーブル上で巻取前に熱延組織を再結晶・粒成長を図る
方法が開示されている。しかしながらこの技術によっ
て、熱延組織の結晶粒成長をはかっても、やはり磁束密
度の向上が十分でないという高Si系無方向性電磁鋼板
特有の問題は解決に至らなかった。
【0007】また、再結晶および粒成長の進行の緩慢な
高Si系成分のハイグレード無方向性電磁鋼板の磁気特
性を制御熱延により改善する技術として、特開昭59−
74222号公報には、仕上熱延最終スタンドの圧下率
を20%以上として、熱延板の巻取温度を700℃以上
とする技術が開示されている。この先願においては、最
終スタンド圧下率を高めて巻取温度を上昇させることに
より熱延終了後の熱延組織の再結晶および粒成長を促進
し、結果として磁気特性を改善することを狙っている。
しかしながら鋼板中のSi含有量が高い場合、その後の
粒成長が不十分であり、やはり磁束密度の向上が十分で
ないという高Si系無方向性電磁鋼板特有の問題は解決
に至らなかった。
【0008】一方で、特開昭56−38420号広報に
は、変態を有するローグレード無方向性電磁鋼板の磁気
特性改善を目的として、αγ2相域の中間温度以下かつ
750℃以上の温度で仕上げ熱延を終了する制御熱延技
術が公開されている。しかしながら、熱延終了温度を高
めるだけでは需要家の要求する高磁束密度無方向性電磁
鋼板を供給するに至らないのが現状であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、従来
技術では、Si含有量の低いローグレード、およびSi
含有量の高いハイグレード無方向性電磁鋼板の何れもに
おいて磁束密度が十分に高くかつ鉄損が低い無方向性電
磁鋼板を製造できるには至らず、無方向性電磁鋼板に対
する前記の需要家の要請に応えることは出来なかった。
本発明は、磁束密度が十分に高く、鉄損が低い無方向性
電磁鋼板を製造する方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、以下の通りで
ある。 (1)重量%で、 0.10%<Si≦7.00% 0.10%≦Mn≦1.50% を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるス
ラブを用い、熱間圧延し熱延板とし、そのまま製品とし
て使用するか、あるいは一回もしくは中間焼鈍をはさむ
二回以上の冷間圧延を施し次いで仕上焼鈍を施し、絶縁
皮膜を施すか、あるいは施さずに最終製品とする無方向
性電磁鋼板の製造方法において、仕上熱間圧延時に使用
する潤滑油が下記の式(1)を満たすと共に、前記潤滑
油をロール冷却水中に式(2)を満たすように混合して
仕上熱間圧延の潤滑に供することを特徴とする磁束密度
が高く鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法。 80≦ρ≦800 ・・・式(1) 0.5≦v≦10.0・・・式(2) 但し、ρ:潤滑油の動粘度(cSt:センチストーク
ス) v:ロール冷却水中に混合された潤滑油の体積分率
(%)
【0011】(2)仕上熱間圧延時に使用する潤滑油が
下記の式(3)を満たすことを特徴とする前記(1)記
載の磁束密度が高く鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造
方法。 200≦ρ≦800 ・・・式(3) 但し、ρ:潤滑油の動粘度(cSt:センチストーク
ス)
【0012】(3)予めロール冷却水と潤滑油とからエ
マルジョン状混合物を成し、前記エマルジョン状混合物
をノズルから噴霧して仕上熱間圧延の潤滑に供すること
を特徴とする(1)又は(2)記載の磁束密度が高く鉄
損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法。
【0013】(4)ロール冷却水と潤滑油とをそれぞれ
別系統で冷却ノズルまで搬送し、前記ロール冷却水と潤
滑油とを同一若しくは個別のノズルから噴霧してエマル
ジョン状混合物として仕上げ熱間圧延時の潤滑に供する
ことを特徴とする前記(1)又は(2)記載の磁束密度
が高く鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法。
【0014】(5)重量%で、更に0.10%≦Al≦
1.00%を含有することを特徴とする前記(1)、
(2)、(3)又は(4)記載の磁束密度が高く鉄損の
低い無方向性電磁鋼板の製造方法。
【0015】(6)仕上熱延終了後、冷間圧延前に、8
50℃以上1150℃以下の温度で20秒以上5分未満
の連続焼鈍で熱延板焼鈍を行うか、あるいは750℃以
上850℃以下の温度で5分以上30時間未満の箱焼鈍
で熱延板焼鈍を行うことを特徴とする前記(1)、
(2)、(3)、(4)又は(5)記載の磁束密度が高
く鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法。
【0016】(7)仕上熱延終了後、750℃以上10
00℃以下の温度でコイルを巻き取り、5分以上5時間
以下コイル自身の保有熱で自己焼鈍することを特徴とす
る前記(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)記載
の磁束密度が高く鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造
法。
【0017】(8)仕上げ熱延終了温度T(℃)が下記
の式(5)を満たすとともに、仕上げ熱延終了後に式
(5)で規定される時間t(min )の間注水を行わず、
その後コイルを巻き取ることを特徴とする前記(1)、
(2)、(3)、(4)又は(5)記載の磁束密度が高
く鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造法。 950≦T≦1150 ・・・式(4) 9.6−8×10-3T≦t≦15.6−8×10-3T・・・式(5)
【0018】(9)スラブを粗圧延して得られたシート
バーの先端部を先行するシートバーの後端部と接合して
複数のシートバーを一体とし、この一体とした複数のシ
ートバーを連続的に仕上げ熱延に供することを特徴とす
る前記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、
(6)、(7)又は(8)記載の磁束密度が高く鉄損の
低い無方向性電磁鋼板の製造方法。
【0019】(10)仕上げ焼鈍を施した後、さらに2
〜20%のスキンパス圧延工程を施すことを特徴とする
前記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、
(6)、(7)、(8)又は(9)記載の磁束密度が高
く鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明は、従来技術で行われてき
た制御熱延に見られるような、熱延終了温度、パススケ
ジュール管理の観点のみならず、従来、圧延反力を軽減
し仕上熱延機のワークロールの寿命を延長することを目
的として使用されてきた潤滑油の特性に注目し、これを
適切に制御することで、無方向性電磁鋼板製品の磁束密
度を高めるものである。
【0021】そして、本発明のように仕上熱延の潤滑油
の特性を制御する場合、粗圧延後のシートバーを仕上熱
延前に先行するシートバーに接合し、当該シートバーを
連続して仕上熱延に供することで、より高動粘度の潤滑
油を用いた場合においても仕上熱延を安定して行うこと
ができる。
【0022】以下に、本発明を詳細に説明する。まず、
成分について説明すると、Siは鋼板の固有抵抗を増大
させ渦流損を低減させ、鉄損値を改善するために添加さ
れる。Si含有量が0.10%以下であると固有抵抗が
十分に得られないので0.10%を超えるる量を添加す
る必要がある。一方、Si含有量が7.00%を超える
と圧延時の耳割れが著しく増加し、圧延が困難になると
ともにコスト増ともなるので7.00%以下とする必要
がある。
【0023】Alも、Siと同様に、鋼板の固有抵抗を
増大させ渦電流損を低減させる効果を有するので必要に
応じて添加する。Alの添加によって鉄損値を改善する
場合には、Alを0.10%以上添加する。一方、Al
含有量が1.00%を超えると、磁束密度が低下し、コ
スト高ともなるので1.00%以下とする。なお、鋼中
のAl含有量が0.10%未満であっても本発明の効果
はなんら損なわれるものではないが、この場合にはAl
添加による鉄損値向上効果は期待できない。
【0024】Mnは、Al、Siと同様に鋼板の固有抵
抗を増大させ渦電流損を低減させる効果を有する。この
目的のため、Mn含有量は0.10%以上とする。一
方、Mn含有量が1.50%を超えると熱延時の変形抵
抗が増加し熱延が困難となるとともに、熱延後の結晶組
織が微細化しやすくなり、磁気特性が悪化するので、M
n含有量は1.50%以下とする必要がある。また、M
n添加量は仕上げ熱延前の高温のシートバー接合部の強
度確保の点からもきわめて重要である。低融点の硫化物
が結晶粒界に存在することにより、シートバー接合部の
熱間脆化を防止するためである。このため、MnとSと
の重量濃度の比であるMn/Sの値を20以上とするこ
とが好ましい。これにより、低融点の硫化物は粗大化
し、シートバー接合部の破断を防止することが可能とな
る。
【0025】また、製品の機械的特性の向上、磁気的特
性、耐錆性の向上あるいはその他の目的のために、P、
B、Ni、Cr、Sb、Sn、Cuの1種または2種以
上を鋼中に含有させても本発明の効果は損なわれない。
【0026】Cの含有量については特に限定しないが、
使用中の磁気時効を防止して良好な鉄損を維持し続ける
ためにはC含有量が0.0050%以下、さらに好まし
くは0.0020%以下であることが好ましい。逆に、
使用中の磁気時効による鉄損の増大が問題にならない用
途では、この値を超えても構わない。さらに、打ち抜き
時の硬度を確保し、需要家での打ち抜き性を良好にする
ために100〜300ppmの範囲にC含有量を調整し
ても良い。
【0027】S、Nの含有量についても特に限定しない
が、これらの元素は熱間圧延工程におけるスラブ加熱中
に一部再固溶し、熱間圧延中にMnS等の硫化物、Al
N等の窒化物を形成する。これらが存在することにより
熱延組織の粒成長を妨げ鉄損が悪化するのでSは0.0
050%、より好ましくは0.0020%以下、Nは
0.0050%以下、より好ましくは0.0020%以
下にするとよい。特にS含有量はシートバー接合部の強
度確保のために、MnとSとの重量濃度の比であるMn
/Sの値を20以上とすることが好ましいことは先に述
べたとおりである。
【0028】次に本発明のプロセス条件について説明す
る。前記成分からなる鋼スラブは、転炉で溶製され連続
鋳造あるいは造塊−分塊圧延により製造される。鋼スラ
ブは公知の方法にて加熱される。このスラブに粗圧延を
施してシートバーとし、続いて仕上熱延に供して熱延板
とする。
【0029】本発明は、この仕上熱間圧延の際に使用す
る潤滑油の動粘度が下記の式(1)もしくは式(3)を
満たすと共に、前記潤滑油をロール冷却水中に式(2)
を満たすように混合して仕上熱間圧延の潤滑に供するこ
とを特徴とする。 80≦ρ≦800 ・・・式(1) 0.5≦v≦10.0・・・式(2) 200≦ρ≦800 ・・・式(3) 但し、ρ:潤滑油の動粘度(cSt:センチストーク
ス) v:ロール冷却水中に混合された潤滑油の体積分率
(%)
【0030】この際、潤滑油の動粘度は温度上昇に対し
て指数関数的に減少するため、潤滑油そのものの温度の
みならずロール冷却水の温度をも適切に制御する必要が
ある。本発明ではロール冷却水と混合され、実際に潤滑
に供される時点での潤滑油の動粘度が式(1)もしくは
式(3)の値を満たすことが重要である。また、vは実
際に仕上熱間圧延の潤滑に供されるロール冷却水と潤滑
油との混合液における潤滑油の体積分率をいう。
【0031】ここで、本発明で用いる潤滑油について説
明する。仕上熱間圧延で使用される潤滑油は、通常、主
要な成分として基油、極圧添加剤、付着向上剤、油性剤
等の成分から構成される。基油としては通常精製鉱油が
用いられる。
【0032】油性剤は、非極性炭化水素基と極性基から
なり、炭化水素基は潤滑油の主要成分である基油分子と
の親和性を担っている。一方、油性剤の極性基は、被圧
延材である金属や水分子との親和性を有するため、油性
剤は金属や水に吸着して金属表面に吸着膜を形成する。
この吸着膜によって低荷重の場合に鋼板とワークロール
との間の摩擦及び摩耗を抑制する。油性剤としては、オ
レイン酸などの長鎖脂肪酸に代表される各種油脂、各種
合成油等が使用される。
【0033】極圧添加剤は荷重が増大した際に作用す
る。荷重が増大すると一部の金属が吸着膜を突き破って
ロールと直接接触し、摩擦熱による発熱でロール温度が
上昇して吸着膜のさらなる破壊を進行させ、焼き付きや
スカッフィングを生じる状態となる。極圧添加剤はこの
ような潤滑状態での金属表面の摩耗を防止して潤滑を可
能とすることを目的として添加するものであり、りん酸
エステル系高分子、金属ジチオホスフェート塩、有機硫
黄化合物、有機ハロゲン化合物等が使用される。
【0034】付着向上剤は、潤滑油のワークロール表
面、熱延鋼片表面への付着性向上を目的として添加する
ものであり、通常、炭化水素系ポリマー等が使用され
る。
【0035】また最近では、潤滑油の粘度を上げロール
寿命を向上させるために、極圧添加剤の粘度を高め、油
性剤を省略した成分系からなる潤滑油も使用されてい
る。
【0036】以上に成分系を説明した潤滑油の例とし
て、キュードール5149、キュードール0B068、
キュードール4B313(いずれも共同油脂(株)商品
名)が挙げられる。
【0037】但し、本発明では仕上熱延時に使用される
潤滑油の動粘度とそのロール冷却水中の濃度とを適切に
制御することによって、無方向性電磁鋼板の製品の磁束
密度を向上させているものである。したがって、本発明
を実施する際に用いられる潤滑油は上述した成分系によ
り構成されるものに限られるものではない。
【0038】本発明のごとき動粘度の高い潤滑油を使用
して仕上げ熱延を行う際、単一のスラブを一本のシート
バーに粗圧延し、これを一本毎に圧延する場合には、個
々のシートバーの噛み込み不良が生じやすくなる。この
問題を解決するには、シートバー噛み混み時の速度を落
としてやる方法があるが、生産性を著しく損なう。発明
者らはこの課題の解決のために鋭意検討を行った結果、
スラブを粗圧延して得られたシートバーの先端部を先行
するシートバーの後端部と接合して複数のシートバーを
一体とし、この一体とした複数のシートバーを連続的に
仕上げ熱延に供することが特に有効であることも見いだ
した。すなわち、連続熱延により噛み込み不良を防止
し、仕上熱延を安定して行うことが可能になった。
【0039】先行シートバーと後行シートバーを接合す
る方法としては、先行シートバーの後端部と後行シート
バーの先端とを突き合わせ、突合せ部を溶接する方法
や、突合せ部に押圧力を加えて圧接する方法や、突合せ
部を溶接した後に圧接する方法等がある。また、突合せ
部に押圧力を加えつつ溶接するようにしてもよい。な
お、突合せ部を溶接する方法としては、例えばレーザ溶
接法、誘導加熱による方法等があげられる。
【0040】仕上熱延で連続的に製造される熱延板は、
巻取の際にピンチロールをコイラの前に複数設置しその
間で高速剪断を行い、順番にコイルを巻き取ってゆくこ
とで、仕上げ熱延中の熱延板に負荷される張力の変動を
最小限に抑制し、良好な形状で巻き取ることができる。
【0041】得られた熱延板は、特に低コストを重視す
る需要家に対しては冷間圧延を省略してそのままで製品
とするか、あるいは酸洗を行って製品としても良いし、
さらに酸洗後そのまま、あるいは軽圧下を行って表面性
状を改善した後、絶縁皮膜を塗布するか、あるいは塗布
せず製品としてもよい。このような、いわゆるホットフ
ァイナル工程で無方向性電磁鋼板を製造する場合、成分
系がαγ変態点を有するときには、仕上熱延終了温度を
800℃以上((3×Ar1 +2×Ar3 )/5)℃以
下とし、600℃以上850℃以下の温度域で熱延板の
巻き取りを行うことが好ましい。
【0042】αγ変態点を有する成分系のホットファイ
ナル無方向性電磁鋼板の場合、仕上熱延の終了温度が8
00℃未満であると本発明が意図する高磁束密度が得ら
れないので、仕上熱延の終了温度は800℃以上が好ま
しい。一方、仕上熱延の終了温度が((3×Ar1 +2
×Ar3 )/5)℃を超えると熱延終了後に鋼板内に存
在するγ相が、冷却の際に微細なα相へ変態し、熱延板
の結晶組織が微細化して大幅に磁気特性が悪化するの
で、仕上熱延終了温度は((3×Ar1 +2×Ar3
/5)℃以下であることが好ましい。また、巻取温度に
ついては、600℃未満であると本発明が意図する高磁
束密度一方向性電磁鋼板が得られないので600℃以上
であることが好ましい。一方、巻取温度が850℃を超
えると、巻き取った熱延板の表面の酸化層が増大し、酸
洗コストが増すので、850℃以下の温度域にて巻き取
ることが好ましい。
【0043】一方、αγ変態点を有しない成分系のホッ
トファイナル無方向性電磁鋼板の場合、仕上熱延の終了
温度が800℃未満であると、本発明が意図する高磁束
密度が得られないので仕上熱延の終了温度は800℃以
上であることが好ましい。一方、仕上熱延の終了温度が
1100℃を超えると鋼板の巻き取りが著しく困難にな
り、コイルの巻きずれや、形状不良が生じやすくなるの
で、仕上熱延終了温度は1100℃以下であることが好
ましい。また、巻取温度については、600℃未満であ
ると本発明が意図する高磁束密度一方向性電磁鋼板が得
られないので600℃以上であることが好ましい。一
方、巻取温度が850℃を超えると、巻き取った熱延板
の表面の酸化層が増大し、酸洗コストが増すので、85
0℃以下の温度域にて巻き取ることが好ましい。
【0044】また、本発明の仕上熱延により得られた熱
延板は、一回もしくは中間焼鈍をはさむ二回以上の冷間
圧延を施し次いで仕上焼鈍を施すか、またはさらなる磁
気特性の改善を図ることを目的に、最初の冷間圧延前に
連続焼鈍もしくは箱焼鈍により熱延板焼鈍を施すか、あ
るいは高温でコイルを巻取りその保有熱で自己焼鈍を行
うか、高温で仕上げ熱延を終了し一定以上の無注水時間
を設定し、その後冷却し巻き取り、冷間圧延に供するな
どの方法によって製品としてもよい。
【0045】以上の工程により得られた熱延板は、1回
の冷間圧延工程を施し次いで仕上げ焼鈍を施すか、その
後さらにスキンパス圧延工程を施して製品としてもよ
い。スキンパス圧延率は2%未満ではその効果が得られ
ず、20%超では磁気特性が悪化するため2%から20
%とする。また、仕上焼鈍は連続焼鈍により施すが、そ
の際に特開昭61−231120号公報に開示されてい
るごとく、前段で950℃〜1100℃の温度範囲で5
秒〜1分間の短時間焼鈍し、後段で800℃〜950℃
で10秒〜2分間保定するなどの方法により仕上げ焼鈍
を行ってもよい。
【0046】冷間圧延後の鋼板には、絶縁皮膜を施す
か、あるいは施さずに最終製品とする。
【0047】以下に、本発明が規定する各プロセスの規
定理由について説明する。まず、熱延板焼鈍を省略する
場合の本発明のプロセス条件について説明する。仕上熱
間圧延時に、潤滑油の動粘度とロール冷却水中の潤滑油
の濃度が成品磁束密度に与える影響を調査するため下記
の様な実験を行った。表1に示す成分の鋼を溶製しスラ
ブとし、粗熱延を行ってシートバーとした後、仕上げ熱
延を実施した。
【0048】
【表1】
【0049】仕上熱間圧延時に、実際にロールに噴霧さ
れる際の潤滑油の動粘度、およびロール冷却水中に占め
る体積分率を変更して試験を行い、製品磁束密度との関
係を詳細に調査した。αγ変態点を有する成分系の鋼A
のAr3 点は904℃であり、Ar1 点は870℃であ
る。このため、鋼Aの熱延仕上げ温度は(Ar3 +Ar
1 )/2以下かつ700℃以上である860℃とした。
一方、αγ変態点を有しない成分系の鋼Bは熱延終了温
度を880℃とした。鋼A,Bともに2.5mm厚の熱延
板に仕上げた後、水冷して550℃で巻き取った。
【0050】次いで、これらの熱延板を酸洗、冷延して
0.50mm厚とし、脱脂した後、鋼Aは750℃、30
秒焼鈍しエプスタイン試料を切断して磁気特性を測定し
た。また、鋼Bは酸洗、冷延し0.50mm厚とし、脱脂
した後、950℃、30秒焼鈍し、エプスタイン試料を
切断して磁気特性を測定した。
【0051】鋼Aの実験結果による仕上熱延時の潤滑油
の動粘度とロール冷却水中の潤滑油の濃度と成品磁束密
度との関係を図1に、同じく鋼Bの実験結果を図2に示
す。図1、図2によれば潤滑油のロール冷却水に対する
体積分率が0.5%以上10%であり、かつ潤滑油の動
粘度を80cSt以上とすることで、鋼A、鋼Bとも成
品磁束密度が上昇することが分かる。さらに、潤滑油の
動粘度を200cSt以上とすれば、鋼A、鋼Bとも成
品磁束密度がさらに上昇することが分かる。
【0052】図1、および図2にも示されるとおり、潤
滑油の動粘度が80cSt以下では製品の磁束密度向上
効果が不十分である。また、潤滑油の動粘度が800c
Stを超えると、その効果が飽和するとともに動粘度の
高い潤滑油を搬送する配管系で詰まりが生じやすくな
り、また冷えた潤滑油がスタンドやロールに付着してそ
の除去のために操業を頻繁に停止しなければならなくな
るので、潤滑油の動粘度は800cSt以下とする。
【0053】また、潤滑油のロール冷却水に対する体積
分率が0.5%未満では磁束密度改善効果が無く、10
%を超えるとその効果が飽和して不経済であるので、ロ
ール冷却水中の潤滑油濃度は体積分率で0.5%以上1
0%以下とする。
【0054】以上の実験から示されるように、仕上熱延
において、ワークロールに噴射される潤滑油の動粘度が
式(1)あるいは式(3)を満たし、かつロール冷却水
中の潤滑油濃度を式(2)の規定する範囲内とすること
によって、成品磁束密度が上昇することがわかる。
【0055】次に、冷間圧延前に熱延板焼鈍を施す場合
において、仕上熱間圧延時の潤滑油の動粘度およびロー
ル冷却水中の潤滑油の濃度の成品磁気特性に対する影響
を調査するため下記の様な実験を行った。表2に示す成
分の鋼を溶製し仕上げ熱延を実施した。仕上熱間圧延時
に、実際にロールに噴霧される際の潤滑油の動粘度、お
よびロール冷却水中に占める体積分率を変更して試験を
行い、製品磁束密度との関係を詳細に調査した。熱延板
は仕上熱延終了温度を900℃とし、2.5mm厚に仕上
げ水冷して550℃で巻き取った。
【0056】この熱延コイルを連続焼鈍炉で鋼Cを95
0℃で90秒の焼鈍を行った。これを酸洗、冷延し0.
35mm厚とし、脱脂した後、950℃30秒焼鈍しエプ
スタイン試料を切り出して磁気特性を測定した。
【0057】鋼Cの仕上熱間圧延時の潤滑油の動粘度お
よびロール冷却水中の潤滑油の濃度と成品磁束密度の関
係を図3に示す。図3によれば潤滑油のロール冷却水に
対する体積分率が0.5%以上10%でありかつ、潤滑
油の動粘度が80cSt以上において鋼Cの成品磁束密
度が上昇し、200cSt以上において一層、鋼Cの成
品磁束密度が上昇することがわかる。以上の実験から示
されるように、仕上熱延において、ワークロールに噴射
される潤滑油の動粘度が式(1)あるいは式(3)を満
たし、かつ式(2)で規定されるようにロール冷却水中
の潤滑油濃度は体積分率で0.5%以上10%以下を満
たしていれば、成品磁束密度が上昇することがわかる。
【0058】次に、連続焼鈍による熱延板焼鈍時間、熱
延板焼鈍温度が磁束密度に与える影響を調査するため、
以下の様な実験を行った。表2の成分の鋼Cを溶製しス
ラブとし、粗熱延を行ってシートバーとした後、仕上げ
熱延を実施した。
【0059】
【表2】
【0060】仕上熱延終了温度は900℃で一定として
2.0mm厚に仕上げ、熱延終了後急冷し、500℃で巻
取った。仕上熱延機のロール冷却水中に3%の潤滑油を
混入し、ノズルからワークロールへ噴射した。ロール冷
却水の温度は55℃に保ち、潤滑油の動粘度は280c
Stに保った。この熱延コイルを連続焼鈍炉で焼鈍温度
は950℃一定で焼鈍時間を変えて焼鈍を行った。ま
た、一方で連続焼鈍による熱延板焼鈍の時間を90秒と
して焼鈍温度を変化させた。これを酸洗、冷延し0.3
5mm厚とし、脱脂した後、900℃、30秒焼鈍しエプ
スタイン試料を切断して磁気特性を測定した。
【0061】連続焼鈍による熱延板焼鈍時間の製品磁束
密度に対する影響を図4に示した。図4に示されるとお
り、焼鈍時間が20秒未満では熱延板焼鈍による磁束密
度向上効果が得られず、焼鈍時間が5分以上では鋼板表
面に深いスケールが生成し酸洗不良が発生し、鋼板表層
に著しい肌荒れが生じた。このため、本発明では連続焼
鈍による熱延板焼鈍時間は20秒以上5分以下とする。
なお焼鈍の効果、および経済性からみた好ましい連続焼
鈍による熱延板焼鈍時間は30秒以上3分以下である。
【0062】連続焼鈍による熱延板焼鈍温度の製品磁束
密度に対する影響を図5に示した。図5に示されるとお
り、焼鈍温度が850℃未満では連続焼鈍での熱延板焼
鈍による磁束密度向上効果が得られず、また焼鈍温度が
1150℃を超えると深いスケールの生成により酸洗不
良が発生し、鋼板表層に著しい肌荒れが生じた。このた
め、本発明では連続焼鈍による熱延板焼鈍温度は850
℃以上1150℃以下とする。焼鈍の効果、および酸洗
性等の経済性からみた好ましい連続焼鈍による熱延板焼
鈍温度は850℃以上1000℃以下である。
【0063】本発明では熱延板焼鈍を箱焼鈍により行っ
ても良い。その際、熱延板焼鈍温度が750℃未満であ
ると製品磁気特性の改善に必要な焼鈍時間が著しく長く
なり、不経済である。また焼鈍温度が850℃を超える
と、炉の設備投資に多額の費用を要するとともに、焼鈍
時にコイルが焼き付く現象が発生する。以上の理由で箱
焼鈍による熱延板焼鈍を実施する場合は、焼鈍温度を7
50℃以上850℃以下とする。その際、箱焼鈍での熱
延板焼鈍時間が5分以下であると製品磁気特性の改善に
必要な焼鈍温度が著しく高くなり、炉そのものの設備投
資が過大となり不経済であるので焼鈍時間は5分以上と
する。また、熱延板焼鈍時間が30時間を超えると焼鈍
温度が過度に高い場合と同様に、コイルの焼き付きが生
じるので箱焼鈍での熱延板焼鈍時間は30時間以内とす
る。
【0064】次に、熱延コイルの保有熱により自己焼鈍
を行うプロセスにおいて、仕上熱間圧延時の潤滑油の動
粘度およびロール冷却水中の潤滑油の濃度の成品磁気特
性に対する影響を調査するため下記の様な実験を行っ
た。表3に示す成分の鋼を溶製しスラブとし、粗熱延を
行ってシートバーとした後、仕上げ熱延を実施した。仕
上熱延機のロール冷却水中に4%の潤滑油を混入し、ノ
ズルからワークロールへ噴射した。この際ロール冷却水
の温度を変化させることで、潤滑油の動粘度を変化させ
た。
【0065】
【表3】
【0066】熱延終了温度は1000℃とし、水冷して
860℃で巻取り、直ちに保熱カバーをかぶせてガス加
熱による補助加熱を施し、コイルの保有熱により850
℃1時間の自己焼鈍を施した。これを酸洗、冷延し0.
50mm厚とし、脱脂した後、鋼Dは900℃で、鋼Eは
980℃で45秒焼鈍しエプスタイン試料を切断して磁
気特性を測定した。
【0067】仕上熱延時の潤滑油の動粘度に対する製品
磁束密度の依存性を図6に示した。図6より、仕上熱延
時の潤滑油の動粘度が80cSt以上、特に200cS
t以上であると成品磁束密度が上昇することがわかる。
【0068】仕上熱延終了後、熱延板をコイルに巻き取
り、自己焼鈍を行うようにしてもよい。自己焼鈍を行う
際のコイルの巻取温度は、750℃未満では磁気特性の
改善が不十分であるので、750℃以上とする。一方1
000℃を超えるとコイルの巻きずれが発生しやすくな
り、鋼板表層の酸化も激しくなるため1000℃以下と
する。
【0069】自己焼鈍の時間は、5分未満では磁気特性
改善が不十分であるので、5分以上行う。また、5時間
を超えると鋼板の酸化が激しくなり酸洗不良が発生しや
すくなるので、5時間以下とする。焼鈍の効果、および
経済性からみた好ましい自己焼鈍時間は30分から12
0分である。また自己焼鈍中のコイルの酸化を防止する
ため、水素を含有する還元性雰囲気、あるいは窒素、ア
ルゴン等の不活性ガス雰囲気、あるいは減圧下で自己焼
鈍を行ってもよい。
【0070】次に、仕上熱延終了後一定時間の無注水を
設けるプロセスにおいて、仕上熱間圧延時の潤滑油の動
粘度およびロール冷却水中の潤滑油の濃度の成品磁気特
性に対する影響を調査するため下記の様な実験を行っ
た。表4に示す成分の鋼Fを溶製し仕上げ熱延を実施し
た。
【0071】
【表4】
【0072】仕上熱延終了温度は1050℃で一定とし
た。この時、仕上熱延機のロール冷却水中に1.5%の
潤滑油を混入し、ノズルからワークロールへ噴射した。
この際ロール冷却水の温度を変化させることで、潤滑油
の動粘度を変化させた。また、式(4)および式(5)
に基づき、無注水時間は4.0秒とし、その後冷却して
680℃で巻き取った。これを酸洗、冷延し0.50mm
厚とし、脱脂した後、900℃、30秒焼鈍しエプスタ
イン試料を切断して磁気特性を測定した。
【0073】仕上熱延時の潤滑油の動粘度に対する製品
磁束密度の依存性を図7に示した。図7より、仕上熱延
時の潤滑油の動粘度80cSt以上、特に200cSt
以上であると成品磁束密度が上昇することがわかる。
【0074】コイルの巻取温度については規定を設けて
いないが、高温で熱延を終了した鋼板表面に過度の酸化
層が生じ、酸洗性が悪化することを防止するため、75
0℃以下で巻き取ることが好ましい。
【0075】以下、熱延終了後の無注水設定時間tにつ
いて述べる。本発明では仕上熱間圧延時の潤滑油の動粘
度およびロール冷却水中の潤滑油の濃度の成品磁気特性
に対する影響を調査するとともに、仕上熱延において熱
延終了温度T(℃)、熱延終了後注水開始までの時間t
(秒)と磁気特性との関係を発明者等は詳細に検討を行
った結果、 950≦T≦1150 ・・・式(4) 9.6−8×10-3T≦t≦15.6−8×10-3T・・・式(5) にて定められる範囲内において、酸洗性、通板速度、磁
気特性を満足する良好な条件を定めることが可能となっ
た。
【0076】熱延終了温度T(℃)が式(4)で定めら
れる下限の950℃を下回った場合は、磁気特性の改善
が不十分である。また、熱延終了温度T(℃)を式
(4)で定められる上限である1150℃超にするため
には、通常の粗圧延、仕上圧延を有する熱延工程ではス
ラブの加熱温度を著しく高める必要があり、スラブ加熱
中に再固溶した析出物が熱延中に微細に析出し、磁気特
性を著しく悪化させる。以上の理由により、熱延終了温
度は式(4)で定められる950℃以上1150℃以下
とする。
【0077】また、熱延終了後注水開始までの時間が式
(5)で定めた時間を超えると、鋼板を冷却する時間が
不足し、高温でコイルを巻き取るか、冷却を十分に施す
ために圧延速度を低下させねばならず、生産性が悪化す
る。高温でのコイル巻取りは巻きずれの発生や酸洗性の
悪化等の弊害を招くので好ましくない。このため無注水
時間t(秒)は式(5)で定めたように、15.6−8
×10-3T以下とする。逆に、式(5)で定められる時
間よりも無注水時間が短くなると磁気特性の改善が不十
分である。このため、仕上熱延終了後の無注水時間t
(秒)は式(5)で定めたように、9.6−8×10-3
T以上とする。
【0078】
【実施例】次に、本発明の実施例について述べる。 [実施例1]熱延板焼鈍省略一回冷延工程法により製造
されるフルプロセス材における、仕上熱間圧延時の潤滑
油の動粘度および、ロール冷却水中の潤滑油の濃度の製
品磁気特性に対する影響を調査するため、下記の様な実
験を行った。ここで、フルプロセス材とは、一回又は中
間焼鈍をはさむ二回以上の冷延後、焼鈍を施し最終製品
とする工程で製造される製品を指していう。表5に示し
た成分を有する無方向性電磁鋼用スラブを通常の方法に
て加熱し、粗圧延機により厚み40mmのシートバーと
し、次いで仕上熱延機により2.5mm厚の熱延板とし
た。
【0079】
【表5】
【0080】鋼G、鋼Hはαγ変態を有するため、熱延
仕上温度は(Ar3 +Ar1 )/2以下で700℃以上
である860℃とし、水冷して650℃で巻き取った。
鋼Iの熱延仕上温度は890℃とし、水冷して650℃
で巻き取った。仕上熱延機のロール冷却水中に4%の潤
滑油を混入し、ノズルからワークロールへ噴射した。ロ
ール冷却水の温度および潤滑油の種類を変更すること
で、潤滑油の動粘度を変化させた。
【0081】本実施例では、高動粘度の潤滑油を使用し
て仕上熱延を行うため、個々のシートバーの噛み混み不
良が生じやすくなのを避け、安定して仕上熱延を行うた
め、粗圧延後のシートバーを先行するシートバーに溶接
し、仕上熱間圧延を連続して行った。
【0082】これらの鋼を酸洗後、鋼Gは750℃、鋼
Hは830℃、鋼Iは950℃でそれぞれ30秒焼鈍を
行い、エプスタイン試料を切り出して磁束密度を測定し
た。表6に本発明と比較例と磁気測定結果をあわせて示
す。表6に示されるように仕上熱延時の潤滑油の動粘度
が80cSt以上、特に200cSt以上であると製品
磁束密度が向上することがわかる。
【0083】
【表6】
【0084】[実施例2]熱延板焼鈍省略一回冷延工程
法により製造されるフルプロセス材における、仕上熱間
圧延時の潤滑油の濃度が製品磁気特性に与える影響を調
査するため、下記の様な実験を行った。表5の鋼Iに示
した成分を有する無方向性電磁鋼用スラブを通常の方法
にて加熱し、粗圧延機により厚み40mmのシートバーと
し、次いで仕上熱延機により2.5mm厚の熱延板とし
た。仕上熱延機のロール冷却水の温度を40℃、50
℃、70℃に調整し、異なる体積分率の潤滑油をロール
冷却水中に予めエマルジョン状態で混入し、潤滑油の濃
度が製品磁気特性に与える影響を調査した。このとき各
温度における潤滑油の動粘度はそれぞれ400cSt、
300cSt、130cStであった。潤滑油を含んだ
ロール冷却水は、ノズルからワークロールへ噴射した。
【0085】この鋼Iを酸洗後、950℃で30秒焼鈍
を行い、エプスタイン試料を切り出して磁束密度を測定
した。表7に本発明と比較例と磁気測定結果をあわせて
示す。表7に示されるように仕上熱延時の潤滑油の濃度
が0.5%以上であると製品磁束密度が向上することが
わかる。
【0086】
【表7】
【0087】[実施例3]熱延板焼鈍法によるフルプロ
セス材およびセミプロセス材における、仕上熱間圧延時
の潤滑油の動粘度およびロール冷却水中の潤滑油の濃度
の製品磁気特性に対する影響を調査するため、下記の様
な実験を行った。ここで、セミプロセス材とは、一回又
は中間焼鈍をはさむ二回以上の冷延後、焼鈍を施し、そ
の後スキンパスを施した状態で最終製品とする製造法で
の製品を指していう。表8に示した成分を有する無方向
性電磁鋼用スラブを通常の方法にて加熱し、粗圧延機に
より厚み40mmのシートバーとし、次いで仕上熱延機に
より2.0mm厚の熱延板とした。仕上熱延終了温度は9
00℃とし、熱延終了後直ちに水冷して550℃で熱延
板を巻き取った。
【0088】
【表8】
【0089】仕上熱延機のロール冷却水中に3.5%の
潤滑油を混入し、ノズルからワークロールへ噴射した。
ロール冷却水の温度および潤滑油の種類を変更すること
で、潤滑油の動粘度を変化させた。本実施例では、高動
粘度の潤滑油を使用して仕上熱延を行うため、個々のシ
ートバーの噛み混み不良が生じやすくなるのを避け、安
定して仕上熱延を行うため、粗圧延後のシートバーを先
行するシートバーに溶接し、仕上熱間圧延を連続して行
った。
【0090】得られた熱延板に熱延板焼鈍を連続焼鈍炉
で鋼Jは900℃、鋼Kは1000℃でそれぞれ2分間
施した。その後、鋼Jについてはフルプロセス及びセミ
プロセスでの特性を、鋼Kについてはフルプロセスでの
特性を調査した。
【0091】鋼J、鋼Kのフルプロセス工程として、熱
延板焼鈍後の熱延板に酸洗を施し、冷間圧延により0.
50mmに仕上た。これを連続焼鈍炉にて鋼Jは900℃
で、鋼Kは980℃でそれぞれ30秒間焼鈍した。その
後、エプスタイン試料を切り出し、磁気特性を測定し
た。
【0092】さらに、鋼Jのセミプロセス工程として、
熱延板焼鈍、酸洗までは同一条件とし、その後冷間圧延
の仕上板厚を0.55mmにし、これを連続焼鈍炉にて9
00℃で30秒間焼鈍した。その後、スキンパス圧延を
施し0.50mmに仕上、エプスタイン試料に切断し、そ
の後、通常は需要家において実施される750℃2時間
の歪取り焼鈍を施し、磁気特性を測定した。
【0093】表9に鋼J、鋼Kの本発明と比較例の成分
と磁気測定結果をあわせて示す。表9に示されるように
仕上熱延時の潤滑油の動粘度が80cSt以上、特に2
00cSt以上であると製品磁束密度が向上することが
わかる。
【0094】
【表9】
【0095】[実施例4]中間焼鈍を含む二回冷延法プ
ロセスによるセミプロセス材における仕上熱間圧延時の
潤滑油の動粘度、およびロール冷却水中の潤滑油の濃度
の製品磁気特性に対する影響を調査するため、下記の様
な実験を行った。表10に示した成分を有する無方向性
電磁鋼用スラブを通常の方法にて1200℃に加熱し、
粗圧延機により厚み30mmのシートバーとし、次いで仕
上熱延機により1.8mm厚の熱延板とした。熱延終了温
度は1000℃とし、圧延終了後冷却して650℃で巻
き取った。
【0096】
【表10】
【0097】仕上熱延機のロール冷却水中に5.0%の
潤滑油を混入し、ノズルからワークロールへ噴射した。
ロール冷却水の温度および潤滑油の種類を変更すること
で、潤滑油の動粘度を変化させた。その後、板温を30
0℃として0.85mm厚まで圧延し、さらにこれに98
0℃30秒の中間焼鈍を施し、その後200℃の温間圧
延により0.25mm厚として酸洗した。これを連続焼鈍
炉にて850℃で30秒保定し焼鈍し、8%のスキンパ
ス圧延により、0.23mm厚とした。その後、エプスタ
イン試料に切断し、800℃2時間の歪取り焼鈍後、磁
気特性を測定した。
【0098】表11に本発明と比較例の成分と磁気測定
結果をあわせて示す。表11に示されるように、仕上熱
延時の潤滑油の動粘度が80cSt以上、特に200c
St以上であると製品磁束密度が向上することがわか
る。
【0099】
【表11】
【0100】[実施例5]箱焼鈍による熱延板焼鈍・一
回冷延法により製造されるフルプロセス無方向性電磁鋼
板における、仕上熱間圧延時の潤滑油の動粘度およびロ
ール冷却水中の潤滑油の濃度の製品磁気特性に対する影
響を調査するため、下記の様な実験を行った。表12に
示した成分を有する無方向性電磁鋼用スラブを通常の方
法にて加熱し、粗圧延機により厚み40mmのシートバー
とし、次いで仕上熱延機により2.0mm厚の熱延板とし
た。仕上熱延終了温度は900℃とし、圧延終了後冷却
して650℃で巻き取った。
【0101】
【表12】
【0102】仕上熱延機のロール冷却水中に4.0%の
潤滑油を混入し、ノズルからワークロールへ噴射した。
ロール冷却水の温度および潤滑油の種類を変更すること
で、潤滑油の動粘度を変化させた。得られた熱延板に熱
延板焼鈍を箱焼鈍炉で800℃、5時間施した。その
後、酸洗を施し、冷間圧延により0.50mm厚に仕上
た。これを連続焼鈍炉にて鋼Mは900℃で30秒間、
鋼Nは980℃で30秒間焼鈍した。その後、エプスタ
イン試料を切り出し、磁気特性を測定した。
【0103】表13に本発明と比較例の成分と磁気測定
結果をあわせて示す。表13に示されるように、仕上熱
延時の潤滑油の動粘度が80cSt以上、特に200c
St以上であると製品磁束密度が向上することがわか
る。
【0104】
【表13】
【0105】[実施例6]自己焼鈍プロセス一回冷延工
程により製造されるフルプロセス無方向性電磁鋼板にお
ける仕上熱間圧延時の潤滑油の動粘度、およびロール冷
却水中の潤滑油の濃度の製品磁気特性に対する影響を調
査するため、下記の様な実験を行った。表14に示した
成分を有する無方向性電磁鋼用スラブを通常の方法にて
加熱し、粗圧延機により厚み50mmのシートバーとし、
次いで仕上熱延機により2.5mm厚の熱延板とした。
【0106】
【表14】
【0107】仕上熱延機のロール冷却水中に3.0%の
潤滑油を混入し、ノズルからワークロールへ噴射した。
ロール冷却水の温度および潤滑油の種類を変更すること
で、潤滑油の動粘度を変化させた。仕上熱延終了温度は
1000℃とし、圧延終了後冷却して875℃で巻き取
り、直ちにコイルを保熱炉に装入し850℃で1時間の
自己焼鈍を施した。その後、酸洗を施し、冷間圧延によ
り0.50mm厚に仕上た。これを連続焼鈍炉にて鋼Oは
950℃で30秒間、鋼Pは975℃で30秒間、鋼Q
は850℃で30秒間焼鈍した。その後、エプスタイン
試料を切り出し、磁気特性を測定した。
【0108】表15に本発明と比較例の成分と磁気測定
結果をあわせて示す。表15に示されるように、仕上熱
延時の潤滑油の動粘度が80cSt以上、特に200c
St以上であると製品磁束密度が向上することがわか
る。
【0109】
【表15】
【0110】[実施例7]仕上熱延後一定時間の無注水
時間を設け、一回冷延法により製造されるフルプロセス
無方向性電磁鋼板において、仕上熱間圧延時のロール冷
却水中に混入される潤滑油の動粘度の製品磁気特性に対
する影響を調査するため、下記の様な実験を行った。表
16に示した成分を有する無方向性電磁鋼用スラブを通
常の方法にて加熱し、粗圧延機により厚み50mmのシー
トバーとし、次いで仕上熱延機により2.5mm厚のシー
トバーとした。
【0111】
【表16】
【0112】仕上熱延機のロール冷却水中に3.2%の
潤滑油を混入し、ノズルからワークロールへ噴射した。
ロール冷却水の温度および潤滑油の種類を変更すること
で、潤滑油の動粘度を変化させた。仕上熱延終了温度は
1020℃とした。この場合、式(4)及び式(5)で
規定される無注水時間tは1.44秒以上7.44秒以
下であるので、無注水時間を4.5秒とし、640℃で
巻き取った。その後、酸洗を施し、冷間圧延により0.
50mm厚とした。これを連続焼鈍炉にて鋼Rは950℃
で、鋼Sは980℃でそれぞれ30秒間焼鈍した。その
後、エプスタイン試料を切り出し、磁気特性を測定し
た。
【0113】表17に本発明と比較例の成分と磁気測定
結果をあわせて示す。表17に示されるように、仕上熱
延時の潤滑油の動粘度が80cSt以上、特に200c
St以上であると製品磁束密度が向上することがわか
る。
【0114】
【表17】
【0115】[実施例8]仕上熱延後一定時間の無注水
時間を設け、一回冷延法により製造されるフルプロセス
無方向性電磁鋼板において、無注水時間が製品磁気特性
に与える影響を調査するために以下の実験を行った。表
18に示した成分を有する無方向性電磁鋼用スラブを通
常の方法にて加熱し、粗圧延機により厚み50mmのシー
トバーとし、次いで仕上熱延機により2.5mm厚の熱延
板とした。
【0116】
【表18】
【0117】熱延終了温度は1050℃とし、無注水時
間を変化させ、巻取温度は680℃で一定とした。この
場合、式(4)および式(5)で規定される無注水時間
は1.2秒以上7.2秒以下である。仕上熱延機のロー
ル冷却水中に3.2%の潤滑油を混入し、ノズルからワ
ークロールへ噴射した。潤滑油の動粘度は320cSt
とした。その後、酸洗を施し、冷間圧延により0.50
mm厚とした。これを連続焼鈍炉にて900℃で30秒間
焼鈍した。その後、エプスタイン試料を切り出し、磁気
特性を測定した。
【0118】表19に熱延条件と磁気測定結果をあわせ
て示す。表19に示されるように、無注水時間が1.2
秒以上であれば良好な磁気特性が得られていることがわ
かる。
【0119】以上のように、仕上熱延時の潤滑油の動粘
度よびロール冷却水中の濃度を適切に制御するととも
に、仕上熱延を高温で仕上た後、熱延終了後の無注水時
間を適切に制御することにより、磁束密度の値が高い無
方向性電磁鋼板を得ることが可能である。
【0120】
【表19】
【0121】[実施例9]仕上熱間圧延後、冷間圧延を
施すことなく最終製品とする無方向性電磁鋼板製造プロ
セスにおける、仕上熱間圧延時の潤滑油の動粘度および
ロール冷却水中の潤滑油の濃度の製品磁気特性に対する
影響を調査するため下記の様な実験を行った。表20に
示した成分を有する無方向性電磁鋼用スラブを通常の方
法にて加熱し、粗圧延機により厚み40mmのシートバー
とし、次いで仕上熱延機により0.8mm厚の熱延板とし
た。
【0122】
【表20】
【0123】鋼U、鋼Vはαγ変態を有するため、熱延
仕上温度は(Ar3 +Ar1 )/2以下で700℃以上
である860℃とし、水冷して750℃で巻き取った。
仕上熱延機のロール冷却水中に5%の潤滑油を混入し、
ノズルからワークロールへ噴射した。ロール冷却水の温
度を40℃から80℃まで変化させることで、潤滑油の
動粘度を変化させた。一方で、仕上熱延のロール冷却水
中の潤滑油濃度の製品磁束密度への影響を調べるため、
ロール冷却水に種々の濃度の潤滑油潤滑油をエマルジョ
ン状に混合して実験を行った。この際、ロール冷却水と
潤滑油との混合液の温度を50℃として、冷却水中の潤
滑油の動粘度を350cStとした。本実施例では、高
動粘度の潤滑油を使用して仕上熱延を行うため、個々の
シートバーの噛み混み不良が生じやすくなるのを避け、
安定して仕上熱延を行うため、粗圧延後のシートバーを
先行するシートバーに溶接し、仕上熱間圧延を連続して
行った。得られた熱延板からエプスタイン試料を切り出
し、磁束特性を測定した。
【0124】表21、表22に本発明と比較例と磁気特
性の測定結果をあわせて示す。表21より、仕上熱延時
の潤滑油の動粘度が80cSt以上、特に200cSt
以上であると製品磁束密度が向上することがわかる。ま
た表22より、ロール冷却水中の潤滑油濃度が0.5%
以上であると、製品磁束密度が向上することがわかる。
【0125】
【表21】
【0126】
【表22】
【0127】
【発明の効果】以上のように本願発明によれば、磁束密
度が高い無方向性電磁鋼板を製造することが可能であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】0.3%Si系成分の熱延板焼鈍省略一回冷延
法における仕上熱間圧延時の潤滑油の動粘度およびロー
ル冷却水中の潤滑油の濃度と製品磁束密度との関係を示
す図表である。
【図2】2%Si系成分の熱延板焼鈍省略一回冷延法に
おける仕上熱間圧延時の潤滑油の動粘度およびロール冷
却水中の潤滑油の濃度と製品磁束密度との関係を示す図
表である。
【図3】2%Si系成分の熱延板焼鈍一回冷延法におけ
る仕上熱間圧延時の潤滑油の動粘度およびロール冷却水
中の潤滑油の濃度と製品磁束密度との関係を示す図表で
ある。
【図4】2%Si系成分の連続焼鈍による熱延板焼鈍一
回冷延法における熱延板焼鈍時間と製品磁束密度との関
係を示す図表である。
【図5】2%Si系成分の連続焼鈍による熱延板焼鈍一
回冷延法における熱延板焼鈍温度と製品磁束密度との関
係を示す図表である。
【図6】2%Siおよび3%Si系成分の熱延後自己焼
鈍プロセス一回冷延法における仕上熱延時のロール冷却
水中の潤滑油の動粘度と磁束密度との関係を示す図表で
ある。
【図7】2.5%Si成分系の仕上熱延終了後、無注水
時間を設定するプロセスでの一回冷延法における仕上熱
延時のロール冷却水中の潤滑油の動粘度と製品磁束密度
との関係を示す図表である。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 0.10%<Si≦7.00% 0.10%≦Mn≦1.50%を含有し、残部がFeお
    よび不可避的不純物からなるスラブを用い、熱間圧延し
    熱延板とし、そのまま製品として使用するか、あるいは
    一回もしくは中間焼鈍をはさむ二回以上の冷間圧延を施
    し次いで仕上焼鈍を施し、絶縁皮膜を施すか、あるいは
    施さずに最終製品とする無方向性電磁鋼板の製造方法に
    おいて、仕上熱間圧延時に使用する潤滑油が下記の式
    (1)を満たすと共に、前記潤滑油をロール冷却水中に
    式(2)を満たすように混合して仕上熱間圧延の潤滑に
    供することを特徴とする磁束密度が高く鉄損の低い無方
    向性電磁鋼板の製造方法。 80≦ρ≦800 ・・・式(1) 0.5≦v≦10.0・・・式(2) 但し、ρ:潤滑油の動粘度(cSt:センチストーク
    ス) v:ロール冷却水中に混合された潤滑油の体積分率
    (%)
  2. 【請求項2】 仕上熱間圧延時に使用する潤滑油が下記
    の式(3)を満たすことを特徴とする請求項1記載の磁
    束密度が高く鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法。 200≦ρ≦800 ・・・式(3) 但し、ρ:潤滑油の動粘度(cSt:センチストーク
    ス)
  3. 【請求項3】 予めロール冷却水と潤滑油とからエマル
    ジョン状混合物を成し、前記エマルジョン状混合物をノ
    ズルから噴霧して仕上熱間圧延の潤滑に供することを特
    徴とする請求項1又は2記載の磁束密度が高く鉄損の低
    い無方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 ロール冷却水と潤滑油とをそれぞれ別系
    統で冷却ノズルまで搬送し、前記ロール冷却水と潤滑油
    とを同一若しくは個別のノズルから噴霧してエマルジョ
    ン状混合物として仕上げ熱間圧延時の潤滑に供すること
    を特徴とする請求項1又は2記載の磁束密度が高く鉄損
    の低い無方向性電磁鋼板の製造方法。
  5. 【請求項5】 重量%で、 0.10%<Si≦7.00% 0.10%≦Mn≦1.50% を含有し、さらに、 0.10%≦Al≦1.00% を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるス
    ラブを用いることを特徴とする請求項1、2、3又は4
    記載の磁束密度が高く鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製
    造方法。
  6. 【請求項6】 仕上熱延終了後、冷間圧延前に、850
    ℃以上1150℃以下の温度で20秒以上5分未満の連
    続焼鈍で熱延板焼鈍を行うか、あるいは750℃以上8
    50℃以下の温度で5分以上30時間未満の箱焼鈍で熱
    延板焼鈍を行うことを特徴とする請求項1、2、3、4
    又は5記載の磁束密度が高く鉄損の低い無方向性電磁鋼
    板の製造方法。
  7. 【請求項7】 仕上熱延終了後、750℃以上1000
    ℃以下の温度でコイルを巻き取り、5分以上5時間以下
    コイル自身の保有熱で自己焼鈍することを特徴とする請
    求項1、2、3、4又は5記載の磁束密度が高く鉄損の
    低い無方向性電磁鋼板の製造方法。
  8. 【請求項8】 仕上げ熱延終了温度T(℃)が下記の式
    (5)を満たすとともに、仕上げ熱延終了後に式(5)
    で規定される時間t(min )の間注水を行わず、その後
    コイルを巻き取ることを特徴とする請求項1、2、3、
    4又は5記載の磁束密度が高く鉄損の低い無方向性電磁
    鋼板の製造方法。 950≦T≦1150 ・・・式(4) 9.6−8×10-3T≦t≦15.6−8×10-3T・・・式(5)
  9. 【請求項9】 スラブを粗圧延して得られたシートバー
    の先端部を先行するシートバーの後端部と接合して複数
    のシートバーを一体とし、この一体とした複数のシート
    バーを連続的に仕上げ熱延に供することを特徴とする請
    求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の磁束密度
    が高く鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法。
  10. 【請求項10】 仕上げ焼鈍を施した後、さらに2〜2
    0%のスキンパス圧延工程を施すことを特徴とする請求
    項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の磁束密
    度が高く鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法。
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JP2002220643A (ja) * 2001-01-29 2002-08-09 Nippon Steel Corp 加工性の良好な低鉄損無方向性電磁鋼板及びその製造方法

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