JPH10296422A - 過共晶Al−Si系合金ダイカスト部材の製造方法および過共晶Al−Si系合金ダイカスト部材 - Google Patents

過共晶Al−Si系合金ダイカスト部材の製造方法および過共晶Al−Si系合金ダイカスト部材

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JPH10296422A
JPH10296422A JP10634597A JP10634597A JPH10296422A JP H10296422 A JPH10296422 A JP H10296422A JP 10634597 A JP10634597 A JP 10634597A JP 10634597 A JP10634597 A JP 10634597A JP H10296422 A JPH10296422 A JP H10296422A
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藤 晴 康 甲
Takaaki Igari
狩 隆 彰 猪
Hidetoshi Shiga
賀 英 俊 志
Hiroshi Tago
胡 博 司 多
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ダイカスト法による高い生産性を維持しつ
つ、過共晶Al−Si系合金部材のもつ特徴である優れ
た耐摩耗性を十分に発揮することができる平均粒径およ
び分布密度の初晶Si粒を有する組織の過共晶Al−S
i系合金ダイカスト部材を製造する。 【解決手段】 手許炉1内に収容した過共晶Al−Si
系合金からなる溶湯Mをダイカスト鋳造機4によりダイ
カスト鋳造するに際し、ダイカスト鋳造機4の射出スリ
ーブ4a内での[(共晶凝固温度(Te)+初晶晶出温
度(Tc))/2+15]℃から[(共晶凝固温度(T
e)+初晶晶出温度(Tc))/2]℃までの間の平均
冷却速度を毎秒2±1℃にコントロールすると共に、射
出スリーブ4a内でのスリーブ壁部と中心部とにおける
溶湯温度の差を5℃以内にコントロールすることによ
り、耐摩耗性の確保に必要な大きさの初晶Si粒を晶出
させた組織を有する過共晶Al−Si系合金ダイカスト
部材を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、過共晶Al−Si
系合金部材のもつ特徴である優れた耐摩耗性を十分に発
揮させることができるようにした過共晶Al−Si系合
金ダイカスト部材の製造方法および過共晶Al−Si系
合金ダイカスト部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】過共晶Al−Si系合金部材のもつ特徴
である優れた耐摩耗性を確保するためには、初晶Siの
平均粒径や分布密度をある程度以上にする必要がある。
しかし、冷却速度が速く生産性の良いダイカストによっ
て過共晶Al−Si系合金部材を製造した場合、冷却速
度が速いがゆえに組織が微細になり、従って、初晶Si
の平均粒径も小さく、耐摩耗性に対するその特徴を十分
に発揮させることができない場合があった。
【0003】そこで、従来技術において、生産性に跳ね
返ることなく組織を粗くするには、溶湯温度を低下せざ
るをえなかった。つまり、従来の過共晶Al−Si系合
金ダイカスト部材の製造方法においては、溶湯冷却速度
が射出後金型内より遅い射出スリーブ内で初晶Siを晶
出させ、ある程度成長させた後金型内に射出できるよう
に射出スリーブに給湯する手許炉の温度を下げるように
していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この方
法では、手許炉内において比較的低温で長時間溶湯を保
持するため、初晶Siの晶出核が凝集粗大化し易く、ま
た、スリーブ内でも保持時間が長くなるため壁部と中心
部とにおける溶湯温度の差が大きくなり易い。従って、
得られる部材の初晶Siの平均粒径や分布密度に著しく
大きなばらつきが生じ、安定して優れた材料特性を得る
ことができない場合があった。
【0005】
【発明の目的】本発明は、このような従来の課題にかん
がみてなされたものであって、ダイカスト鋳造による高
い生産性を維持しつつ、過共晶Al−Si系合金部材の
もつ特徴である優れた耐摩耗性を十分に発揮することが
できる平均粒径および分布密度の初晶Si粒を有する組
織のダイカスト部材を安定して生産することができるよ
うにし、特に、初晶Siの晶出温度が低い共晶組成に近
い過共晶Al−Si系合金部材の製造にとって有効であ
る過共晶Al−Si系合金ダイカスト部材の製造方法お
よび過共晶Al−Si系合金ダイカスト部材を提供する
ことを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明による過共晶Al−Si系合金ダイカスト部
材の製造方法では、手許炉溶湯保持時には、初晶晶出核
が生成凝集しない高温に保持し、初晶晶出温度付近まで
は、急冷することにより、核の微細生成を狙うととも
に、その時点では、射出スリーブへの給湯による攪拌効
果を狙うため固相を晶出させず、スリーブ給湯後徐冷す
ることにより、初晶Siの晶出成長を可能にし、かつ、
射出スリーブ内での温度分布を小さく抑え、射出時にお
ける溶湯固相率不均一を小さくし、射出タイミングのコ
ントロールをしやすくするようにしている。
【0007】すなわち、本発明に係わる過共晶Al−S
i系合金ダイカスト部材の製造方法は、請求項1に記載
しているように、過共晶Al−Si系合金からなる溶湯
をダイカスト鋳造するに際し、射出スリーブ内での
[(共晶凝固温度(Te)+初晶晶出温度(Tc))/
2+15]℃から[(共晶凝固温度(Te)+初晶晶出
温度(Tc))/2]℃までの間の平均冷却速度を毎秒
2±1℃にコントロールすると共に、射出スリーブ内で
のスリーブ壁部と中心部とにおける溶湯温度の差を5℃
以内にコントロールすることにより、耐摩耗性の確保に
必要な大きさ、とくに初晶Si平均粒径が4μm〜20
μmの大きさの初晶Si粒を晶出させるようにしたこと
を特徴としている。
【0008】そして、本発明に係わる過共晶Al−Si
系合金ダイカスト部材の製造方法の実施態様において
は、請求項2に記載しているように、射出時の射出スリ
ーブ内での溶湯温度が[(共晶凝固温度(Te)+初晶
晶出温度(Tc))/2+10]℃から[(共晶凝固温
度(Te)+初晶晶出温度(Tc))/2]℃までの間
となるように射出タイミングをコントロールするように
なすことができる。
【0009】同じく、本発明に係わる過共晶Al−Si
系合金ダイカスト部材の製造方法の実施態様において
は、請求項3に記載しているように、過共晶Al−Si
系合金に初晶Si粒の晶出核として合金中ではAlPと
して作用するPを添加した合金を用い、溶解時の出湯温
度を初晶晶出核分解温度(Tnb)以上とし、かつ、手
許炉における溶湯の保持温度を初晶晶出核生成温度(T
ns)以上として、耐摩耗性の確保に必要な分布密度の
初晶Si粒を晶出させるようになすことができる。
【0010】同じく、本発明に係わる過共晶Al−Si
系合金ダイカスト部材の製造方法の実施態様において
は、請求項4に記載しているように、過共晶Al−Si
系合金からなる溶湯をダイカスト鋳造設備の手許炉から
射出スリーブに移送する過程で溶湯を冷却体に接触させ
て初晶晶出温度(Tc)付近での冷却速度をコントロー
ルし、かつ、射出スリーブ内での冷却速度、溶湯の温度
分布をコントロールして、耐摩耗性および強度の確保で
きる平均粒径、分布密度の初晶Siを均一に晶出させる
ようになすことができる。
【0011】同じく、本発明に係わる過共晶Al−Si
系合金ダイカスト部材の製造方法の実施態様において
は、請求項5に記載しているように、冷却体上での[初
晶晶出温度(Tc)+60]℃から[初晶晶出温度(T
c)+10]℃までの間の冷却速度を毎秒10±4℃に
コントロールするようになすことができる。
【0012】本発明に係わる過共晶Al−Si系合金ダ
イカスト部材は、請求項6に記載しているように、請求
項1ないし5のいずれかに記載の製造方法により製造さ
れた過共晶Al−Si系合金ダイカスト部材であって、
初晶Si平均粒径が4μm〜20μmであるものとした
ことを特徴としている。
【0013】そして、本発明に係わる過共晶Al−Si
系合金ダイカスト部材の実施態様においては、請求項7
に記載しているように、請求項1ないし5のいずれかに
記載の製造方法により製造された過共晶Al−Si系合
金ダイカスト部材であって、過共晶Al−Si系合金
は、重量%で、Si:14.5〜16.5%を含むもの
とすることができる。
【0014】同じく、本発明に係わる過共晶Al−Si
系合金ダイカスト部材の実施態様においては、請求項8
に記載しているように、請求項1ないし5のいずれかに
記載の製造方法により製造された過共晶Al−Si系合
金ダイカスト部材であって、過共晶Al−Si系合金
は、その組成が、重量%で、Cu:3.0〜4.0%、
Si:14.5〜16.5%、Mg:0.55〜0.9
0%、Fe:0.70〜1.20%、Mn:0.40〜
0.60%、Cr:0.05〜0.30%、Ti:0.
05〜0.15%、P:0.003〜0.050%を含
み、残部Alおよび不可避的不純物からなるものとする
ことができる。
【0015】そのほか、本発明に係わる過共晶Al−S
i系合金ダイカスト部材の実施態様においては、過共晶
Al−Si系合金の組成が、重量%で、Cu:4.0〜
5.0%、Si:16.0〜18.0%、Mg:0.4
5〜0.65%、Zn:1.5%以下、Fe:1.3%
以下、Mn:0.5%以下、Ni:0.3%以下、S
n:0.3%以下、残部Alおよび不可避的不純物から
なるものとすることができる。
【0016】
【発明の効果】本発明による過共晶Al−Si系合金ダ
イカスト部材の製造方法では、過共晶Al−Si系合金
からなる溶湯をダイカスト鋳造するに際し、射出スリー
ブ内での[(共晶凝固温度(Te)+初晶晶出温度(T
c))/2+15]℃から[(共晶凝固温度(Te)+
初晶晶出温度(Tc))/2]℃までの間の平均冷却速
度を毎秒2±1℃にコントロールすると共に、射出スリ
ーブ内でのスリーブ壁部と中心部とにおける溶湯温度の
差を5℃以内にコントロールすることにより、初晶Si
平均粒径が4μm〜20μmの初晶Si粒を晶出させる
ようにしたから、複雑な設備を使用することなくダイカ
スト鋳造による高い生産性を維持しつつ、過共晶Al−
Si系合金部材のもつ特徴である優れた耐摩耗性を十分
に発揮できる平均粒径および分布密度の初晶Si粒を有
する組織の過共晶Al−Si系合金ダイカスト部材を安
定して製造することが可能であるという著大なる効果が
もたらされる。
【0017】そして、請求項2に記載しているように、
射出時の射出スリーブ内での溶湯温度が[(共晶凝固温
度(Te)+初晶晶出温度(Tc))/2+10]℃か
ら[(共晶凝固温度(Te)+初晶晶出温度(Tc))
/2]℃までの間となるように射出タイミングをコント
ロールすることによって、耐摩耗性および強度の確保で
きる大きさの初晶Siをより均一に好適に晶出させるこ
とが可能であって、強度および耐摩耗性に優れた過共晶
Al−Si系合金ダイカスト部材を製造することが可能
であるという著大なる効果がもたらされる。
【0018】さらにまた、請求項3に記載しているよう
に、過共晶Al−Si系合金に初晶Si粒の晶出核とし
て合金中ではAlPとして作用するPを添加した合金を
用い、溶解時の出湯温度を初晶晶出核分解温度(Tn
b)以上とし、かつ、手許炉における溶湯の保持温度を
初晶晶出核生成温度(Tns)以上として、耐摩耗性の
確保に必要な分布密度の初晶Si粒を晶出させるように
なすことによって、手許炉溶湯保持時には初晶晶出核が
生成しない高温に保持されることとなり、初晶晶出温度
付近までは急冷することによって、核の微細生成が得ら
れることとなって、耐摩耗性の確保に必要な分布濃度の
初晶Si粒を晶出させることが可能となり、とくに、初
晶Si粒分布密度を高めるために晶出核となるP(Al
P)を添加し、かつ、加工性を高めるためJIS AD
C14よりもSi組成が低く初晶晶出温度と共晶凝固温
度との間での温度差の小さい合金系において有効である
という著大なる効果がもたらされる。
【0019】さらにまた、請求項4に記載しているよう
に、過共晶Al−Si系合金からなる溶湯をダイカスト
鋳造設備の手許炉から射出スリーブに移送する過程で溶
湯を冷却体に接触させて初晶晶出温度(Tc)付近での
冷却速度をコントロールし、かつ、射出スリーブ内での
冷却速度、溶湯の温度分布をコントロールして、耐摩耗
性および強度の確保できる平均粒径、分布密度の初晶S
iを均一に晶出させるようになすことによって、強度お
よび耐摩耗性に優れた過共晶Al−Si系合金ダイカス
ト部材を製造することが可能であるという著大なる効果
がもたらされる。
【0020】さらにまた、請求項5に記載しているよう
に、冷却体上での[初晶晶出温度(Tc)+60]℃か
ら[初晶晶出温度(Tc)+10]℃までの間の冷却速
度を毎秒10±4℃にコントロールするようになすこと
によって、耐摩耗性および強度の確保に必要な平均粒
径、分布密度の初晶Si粒を均一に晶出させることが可
能であるという著大なる効果がもたらされる。
【0021】する組織の過共晶Al−Si系合金ダイカ
スト部材を安定して製造することが可能であるという著
大なる効果がもたらされる。
【0022】本発明による過共晶Al−Si系合金ダイ
カスト部材は、請求項1ないし5のいずれかに記載の製
造方法により製造された過共晶Al−Si系合金ダイカ
スト部材であって、初晶Si平均粒径が4μm〜20μ
mであるものとしたから、耐摩耗性の向上に寄与する初
晶Siが分布している耐摩耗性に優れた過共晶Al−S
i系合金ダイカスト部材を提供することが可能であると
いう著大なる効果がもたらされる。
【0023】また、本発明による過共晶Al−Si系合
金ダイカスト部材は、請求項7に記載しているように、
請求項1ないし5のいずれかに記載の製造方法により製
造された過共晶Al−Si系合金ダイカスト部材であっ
て、過共晶Al−Si系合金は、重量%で、Si:1
4.5〜16.5%を含むものとすることによって、加
工性が良くそしてまた耐摩耗性に優れた過共晶Al−S
i系合金ダイカスト部材を提供することが可能であると
いう著大なる効果がもたらされる。
【0024】そして、請求項8に記載しているように、
請求項1ないし5のいずれかに記載の製造方法により製
造された過共晶Al−Si系合金ダイカスト部材であっ
て、過共晶Al−Si系合金は、その組成が、重量%
で、Cu:3.0〜4.0%、Si:14.5〜16.
5%、Mg:0.55〜0.90%、Fe:0.70〜
1.20%、Mn:0.40〜0.60%、Cr:0.
05〜0.30%、Ti:0.05〜0.15%、P:
0.003〜0.050%を含み、残部Alおよび不可
避的不純物からなるものとすることによって、JIS
ADC14材に比べてSi含有量が少ないことから、耐
摩耗性のほか加工性にも優れた過共晶Al−Si系合金
ダイカスト部材を提供することが可能であるという著大
なる効果がもたらされる。
【0025】
【発明の実施の形態】次に、本発明に係わる過共晶Al
−Si系合金ダイカスト部材の製造方法について、図1
に示した一連のダイカスト鋳造設備の模式図に基づいて
説明する。
【0026】図1において、符号1は溶湯保持のための
手許炉、2はレードル、3は冷却体、4はダイカスト鋳
造機である。
【0027】このうち、手許炉1は、過共晶Al−Si
系合金からなる溶湯Mを所定の温度、好ましくは、初晶
晶出核分解温度(Tnb)の直上の温度で収容保持して
おくための炉である。
【0028】また、レードル2は、手許炉1より溶湯M
を1ショットに必要な所定の量だけくみ出し、冷却体3
を介してダイカスト鋳造機4の射出スリーブ4aに注い
で給湯するためのものである。
【0029】冷却体3は、レードル2により注がれた溶
湯を流動接触させることにより、溶湯温度を射出スリー
ブ4aに流れ込む時点で初晶晶出温度(Tc)の直上の
所定の温度、好ましくは、[初晶晶出温度(Tc)+1
0]℃から[共晶凝固温度(Te)+20]℃まで急冷
し、好ましくは、[初晶晶出温度(Tc)+60]℃か
ら[初晶晶出温度(Tc)+10]℃までの間の冷却速
度を毎秒10±4℃にコントロールするためのものであ
る。
【0030】そして、この冷却体3は、たとえば、金属
板に塗型材のような耐溶損性のあるコーティングを施し
た表面が平滑な樋状のものとすることが可能であって、
これをレードル給湯位置の下方に配置し、レードル2よ
り注がれた溶湯Mを流下することができるよう傾斜させ
ておき、その表面を傾斜流路とし、流下した溶湯が射出
スリーブ4aの受湯孔4bに注がれるように設置する。
なお、図中の符号3aは、この冷却体3の傾斜流路面を
所定の温度にコントロールするための冷却用冷媒通路で
あり、この冷却用冷媒通路3aによって、冷却体3の傾
斜流路面の温度は、注がれた溶湯が初晶晶出温度(T
c)の直上の所定の温度にならずに流下したり、流下中
に初晶を晶出して射出スリーブ4a内での固相率が上昇
しすぎることにより射出に必要な流動性を失うことがな
いように、手許炉1内の溶湯温度やくみ出し量などに応
じて制御される。
【0031】ダイカスト鋳造機4の射出スリーブ4a
は、冷却体3より流下する溶湯を所定量だけ受湯孔4b
より受け、溶湯が射出時点での所定の温度、好ましく
は、[(共晶凝固温度(Te)+初晶晶出温度(T
c))/2+10]℃から[(共晶凝固温度(Te)+
初晶晶出温度(Tc))/2]℃までの温度になるまで
所定の冷却速度、好ましくは、[(共晶凝固温度(T
e)+初晶晶出温度(Tc))/2+15]℃から
[(共晶凝固温度(Te)+初晶晶出温度(Tc))/
2]℃までの間を平均冷却速度で毎秒2±1℃で徐冷
し、射出スリーブ4a内でのスリーブ壁部と中心部とに
おける溶湯温度の差を5℃以内にコントロールしつつ保
持するものである。
【0032】なお、図中の符号4cは、スリーブ表面の
温度をコントロールするための加熱用熱媒体流路であ
り、この加熱用熱媒体流路4cによって、射出スリーブ
4aの温度は、射出スリーブ4a内の溶湯冷却速度が速
くなり過ぎて溶湯が所定の温度以下になって流動性が損
なわれたり、反対に、溶湯冷却速度が遅くなり過ぎて初
晶Siの成長が十分行われなかったりしないように、溶
湯量および冷却体3からの流下速度等に応じてコントロ
ールされる。この場合、射出スリーブ4aの材質,溶湯
量,流下速度などによっては、この加熱用熱媒体流路4
cが不要な場合もありうる。
【0033】
【実施例】以下、本発明の実施例について比較例と共に
説明するが、本発明は下記の実施例にのみ限定されない
ものである。そして、ここでは表1に示す成分組成を有
する合金I,IIを使用した。
【0034】
【表1】
【0035】なお、合金Iおよび合金IIにおける初晶
晶出核分解温度(Tnb)と初晶晶出核生成温度(Tn
s)については、図2に示すごとき熱分析(DTA)試
験の測定結果を用いて測定した。
【0036】実施例1 この実施例1では、過共晶Al−Si系ダイカスト合金
として、JIS ADC14相当材である表1に示す成
分組成を有する合金Iを用い、表2および表3に示す条
件でダイカスト鋳造を行った。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】実施例2 この実施例2では、請求項8の成分系である表1に示す
成分組成を有する合金IIを用い、表4および表5に示
す条件でダイカスト鋳造を行った。
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】比較例1 この比較例1では、実施例2において、手許炉(1)に
おける溶湯の保持温度を690℃と低くし、また、冷却
体(3)を用いずにダイカスト鋳造を行った場合を示
す。
【0043】比較例2 この比較例2では、実施例2において、手許炉(1)に
おける溶湯の保持温度を765℃と高くし、また、冷却
体(3)を用いずに通常のサイクルで射出した場合を示
す。
【0044】評価結果 実施例1,2および比較例1,2のダイカスト部材にお
いて、それぞれの組織を光学顕微鏡で200倍の写真に
撮り、画像解析によって、初晶Si平均粒径、初晶Si
粒分布密度およびその部位によるばらつきを評価した。
その結果を表6に示す。
【0045】なお、耐摩耗性の評価に際しては、面圧8
0kgf/cmのピンオンディスク摩耗試験機によっ
て摩耗量の測定を行った。
【0046】
【表6】
【0047】この表6より明らかであるように、比較例
1では極端に大きな初晶Siが晶出しており、また、初
晶Siの分布密度も低いものとなっている。他方、比較
例2では初晶Siが極端に小さく、耐摩耗性の向上に寄
与する5μm以上の粒径の初晶Siがほとんど無いもの
となっていた。
【0048】したがって、本発明による過共晶Al−S
i系合金ダイカスト部材を用いることによって、耐摩耗
性を十分に発揮できる平均粒径および分布密度の初晶S
i粒を有する組織の部材を安定して提供しうることがわ
かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わる過共晶Al−Si系合金ダイ
カスト部材の製造方法の一実施形態を示すダイカスト鋳
造設備の模式図である。
【図2】 本発明に係わる過共晶Al−Si系合金ダイ
カスト部材の製造方法の熱分析(DTA)曲線の模式図
である。
【符号の説明】
1 手許炉 2 レードル 3 冷却体 4 ダイカスト鋳造機 4a ダイカスト鋳造機の射出スリーブ 4b ダイカスト鋳造機の受湯孔 M 過共晶Al−Si系合金の溶湯
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 猪 狩 隆 彰 静岡県庵原郡蒲原町蒲原1丁目34番1号 日本軽金属株式会社グループ技術センター 内 (72)発明者 志 賀 英 俊 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産 自動車株式会社内 (72)発明者 多 胡 博 司 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産 自動車株式会社内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 過共晶Al−Si系合金からなる溶湯を
    ダイカスト鋳造するに際し、射出スリーブ内での[(共
    晶凝固温度(Te)+初晶晶出温度(Tc))/2+1
    5]℃から[(共晶凝固温度(Te)+初晶晶出温度
    (Tc))/2]℃までの間の平均冷却速度を毎秒2±
    1℃にコントロールすると共に、射出スリーブ内でのス
    リーブ壁部と中心部とにおける溶湯温度の差を5℃以内
    にコントロールすることにより、初晶Si平均粒径が4
    μm〜20μmの初晶Si粒を晶出させることを特徴と
    する過共晶Al−Si系合金ダイカスト部材の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 射出時の射出スリーブ内での溶湯温度が
    [(共晶凝固温度(Te)+初晶晶出温度(Tc))/
    2+10]℃から[(共晶凝固温度(Te)+初晶晶出
    温度(Tc))/2]℃までの間となるように射出タイ
    ミングをコントロールすることを特徴とする請求項1に
    記載の過共晶Al−Si系合金ダイカスト部材の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 過共晶Al−Si系合金に初晶Si粒の
    晶出核として合金中ではAlPとして作用するPを添加
    した合金を用い、溶解時の出湯温度を初晶晶出核分解温
    度(Tnb)以上とし、かつ、手許炉における溶湯の保
    持温度を初晶晶出核生成温度(Tns)以上として、耐
    摩耗性の確保に必要な分布密度の初晶Si粒を晶出させ
    ることを特徴とする請求項1または2に記載の過共晶A
    l−Si系合金ダイカスト部材の製造方法。
  4. 【請求項4】 過共晶Al−Si系合金からなる溶湯を
    ダイカスト鋳造設備の手許炉から射出スリーブに移送す
    る過程で溶湯を冷却体に接触させて初晶晶出温度(T
    c)付近での冷却速度をコントロールし、かつ、射出ス
    リーブ内での冷却速度、溶湯の温度分布をコントロール
    して、耐摩耗性および強度の確保できる平均粒径、分布
    密度の初晶Siを均一に晶出させることを特徴とする請
    求項1ないし3のいずれかに記載の過共晶Al−Si系
    合金ダイカスト部材の製造方法。
  5. 【請求項5】 冷却体上での[初晶晶出温度(Tc)+
    60]℃から[初晶晶出温度(Tc)+10]℃までの
    間の冷却速度を毎秒10±4℃にコントロールすること
    を特徴とする請求項4に記載の過共晶Al−Si系合金
    ダイカスト部材の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし5のいずれかに記載の製
    造方法により製造された過共晶Al−Si系合金ダイカ
    スト部材であって、初晶Si平均粒径が4μm〜20μ
    mであることを特徴とする過共晶Al−Si系合金ダイ
    カスト部材。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし5のいずれかに記載の製
    造方法により製造された過共晶Al−Si系合金ダイカ
    スト部材であって、過共晶Al−Si系合金は、重量%
    で、Si:14.5〜16.5%を含むことを特徴とす
    る過共晶Al−Si系合金ダイカスト部材。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし5のいずれかに記載の製
    造方法により製造された過共晶Al−Si系合金ダイカ
    スト部材であって、過共晶Al−Si系合金は、その組
    成が、重量%で、Cu:3.0〜4.0%、Si:1
    4.5〜16.5%、Mg:0.55〜0.90%、F
    e:0.70〜1.20%、Mn:0.40〜0.60
    %、Cr:0.05〜0.30%、Ti:0.05〜
    0.15%、P:0.003〜0.050%を含み、残
    部Alおよび不可避的不純物からなることを特徴とする
    過共晶Al−Si系合金ダイカスト部材。
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