しかしながら、完全溶融鋳造法より得られる従来の銅合金鋳造品は、鋳造組織がデンドライト形状となっているため変形抵抗が大きく加工性が悪く、また特に複雑な形状の鋳造品を作製した場合に強度等の機械的性質の低下が著しく、さらに鋳造時に多くのばりが発生してしまい鋳造後のばり取りに多大な労力とコストを要している、という問題がある。
一方、従来のセミソリッド鋳造方法はアルミニウム合金またはマグネシウム合金といった低融点合金を対象としており、これらについては既に実用化されつつあるが、高融点合金である銅合金についてのセミソリッド鋳造技術は確立していない。これは、銅合金とアルミニウム合金またはマグネシウム合金とでは、融点が大きく異なるため溶湯温度の条件が異なり、かつ比熱容量も異なるため溶湯を固液共存状態のスラリー化するための冷却条件も異なり、従来アルミニウム合金またはマグネシウム合金に対して行われていたセミソリッド鋳造方法を単純に銅合金に適用することはできないからである。
そこで本発明は、銅合金に適用可能なセミソリッド鋳造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、加工性に優れ且つ複雑な形状に成形しても良好な機械的性質を保ち且つ成形時にばりを発生させない銅合金および当該銅合金を製造するセミソリッド鋳造方法並びに粒状結晶からなる銅合金を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するため、本願発明者等は種々実験及び検討を重ねた結果、銅合金の組成に基づく状態図より定まるα相が晶出する領域における液相線温度と固相線温度の値が、傾斜冷却板を用いたセミソリッド鋳造の成否および良否に大きな影響を与えることを知見し、これらの因子が一定の条件に当て嵌まる二元系銅合金の融液に対して傾斜冷却板を用いたセミソリッド鋳造方法を実施することにより、従来の二元系銅合金にはない金属組織を備え且つ有用な物性を備える新規な銅合金の製造に成功するに至った。尚、α相(α固溶体とも呼ばれる。)は、液相から初めて出る結晶すなわち初晶であって凝固時に銅の一次固溶体となる固相を指す。
請求項1記載の発明にかかるセミソリッド鋳造方法は、かかる知見に基づくものであり、液相から初めて出る結晶が銅の一次固溶体であるα相となり尚且つ圧力を1気圧一定とした場合における液相線温度と固相線温度との差が25℃以上となる条件で、Mg,Sn,P,Ti,Fe,Mn,As,Cd,In,Sb,Al,Ag,Be,Zn,Si,Ni,Pt,Rh,Pdの中から選択された1種の合金元素が銅に添加されてなる二元系合金融液を、傾斜させた冷却板上に流下させて該傾斜冷却板上でα相の粒子を生成かつ遊離させて固液共存状態のスラリーを得て、このスラリーを鋳型またはタンディッシュで固液共存領域内の温度域に保持して前記α相粒子を粒状化させ、該粒状化したα相の周囲の液相を急冷により凝固させて、α相が粒状化している金属組織を有する二元系銅合金の鋳造品を得ることを特徴とするものである。
また、本発明のセミソリッド鋳造方法において、二元系合金溶液の鋳造温度は、傾斜冷却板の直上で液相線温度+10〜50℃の範囲であり、傾斜冷却板の直下では液相線温度−5〜10℃の範囲であり、傾斜冷却板上を流下する間に冷却されてα初晶を生成するものであることが好ましい。
傾斜冷却板の入口における合金融液の温度、傾斜冷却板による合金融液に対する抜熱量およびこの抜熱量を実現するための冷却板上の温度、冷却板を傾ける角度、冷却板の長さは、α相の生成により固液共存状態となったスラリーの固相率が、傾斜冷却板の出口において目的値の範囲となるように設定される。傾斜冷却板の出口におけるスラリーの固相率は、1%〜45%の範囲とすることが好ましく、1%〜30%の範囲がより好ましく、1%〜10%の範囲が最も好ましい。つまり、傾斜冷却板上で生成するα相は微細である事が好ましい。これは、上記傾斜冷却板を用いたセミソリッド鋳造方法によって製造される銅合金について、α相が粒状化していることによる効果を良好に得るためには、α相の粒径は小さい方が好ましいからであり、上記鋳造より得られた銅合金のα相の粒径は、例えば粒径90μm程度以下、より望ましくは70μm程度以下、さらに50μm程度以下であればより望ましい。
ここで、液相線温度と固相線温度との差がある程度ないと、傾斜冷却板の出口におけるスラリーの固相率を上記目的値の範囲とすることが極めて困難となる。本願発明者が行った実験によると、例えば圧力を1気圧一定とした場合における液相線温度と固相線温度との差が少なくとも25℃以上ないと、傾斜冷却板上でα初晶を生成させてその後の等温保持で粒状化することができなかった。加えて、液相線温度と固相線温度との差が十分に大きくないと、傾斜冷却板上でα相が晶出して結晶の粒状化が達成されてもその後の過程でα相の粒が粗大化してしまった。さらに本願発明者が行った実験によれば、「液相線温度と固相線温度との差」が大きいほど、換言すれば合金元素の添加量が増えに従って傾斜冷却板を用いたセミソリッド鋳造方法によって製造される銅合金のα相の粒が微細となることが知見された。例えばCu−Sn合金の場合には圧力を1気圧一定とした場合における液相線温度と固相線温度との差が、30℃程度以上となる場合はα相の粒径は90μm程度以下となり、45℃程度以上となる場合はα相の粒径は70μm程度以下となった。また、全率固溶体であるCu−Ni合金の場合には、等温保持時間によっても異なるが、5秒程度の保持時間の場合には、28℃程度以上となる場合(1.5質量%Ni添加時)はα相の粒径は90μm程度以下となり、30℃程度以上となる場合(3質量%Ni添加時)はα相の粒径は67.9μm程度以下となり、45℃程度以上となる場合(9質量%Ni添加時)はα相の粒径は55μm程度以下となった。このことから、より微細な粒状晶の銅合金を得るという観点からは、液相線温度と固相線温度との差は好ましく28℃程度以上、より好ましくは30℃以上、さらに好ましくは45℃以上である。
そこで、本発明の銅合金は、液相から初めて出る結晶が銅の一次固溶体であるα相となり尚且つ圧力を1気圧一定とした場合における液相線温度と固相線温度との差が少なくとも25℃、好ましくは28℃、より好ましくは30℃以上、さらに好ましくは45℃以上となる条件で合金元素が添加されるものとしている。この条件で合金元素が添加されることによって、α相を粒状化できる共にその粒径を微細化例えば90μm程度以下とできる。尚、上記に示した液相線温度と固相線温度との差は、1気圧一定とした場合の値であり、気圧の値が変わればそれに応じて変化する。
ここで、α相を生成し且つ液相線温度と固相線温度との差が目的の値以上となる選択可能な合金元素およびその合金元素の添加量は、既に明らかになっている各種銅合金の状態図より求めることができる。銅合金における合金元素の主要なものとしては、例えばMg(マグネシウム),Sn(スズ),P(リン),Ti(チタン),Fe(鉄),Mn(マンガン),As(ヒ素),Cd(カドミウム),In(インジウム),Sb(アンチモン),Al(アルミニウム),Ag(銀),Be(ベリリウム),Zn(亜鉛),Si(ケイ素)などがあり、また全率固溶体を構成するものとしては例えばNi(ニッケル),Pt(白金),Rh(ロジウム),Pd(パラジウム)等が挙げられ、この中から選択された1種の元素を含む二元系銅合金の既知の状態図から、本発明における当該元素の添加量を決定することができる。
尚、「液相線温度と固相線温度との差」の値が大きいほど、傾斜冷却板を用いたセミソリッド鋳造方法によって製造される銅合金のα相の粒が微細となるため、当該値は大きいほど好ましいが、合金元素の種類によっては、合金元素の含有量が増加する結果、α相を粒状化させるべくスラリーを等温保持する段階において合金元素と銅が比重差により分離し易くなる場合がある。この場合、「α相を生成し且つ液相線温度と固相線温度との差が目的の値以上となる」条件の範囲で当該合金元素の添加量を調整するか、或いは鋳型またはタンディッシュにてα相を粒状化させるべくスラリーを保持する時間を短くして、合金元素と銅が比重差により分離する前に、粒状化したα相の周囲の液相を急冷により凝固させれば良い。
ここで、合金元素がスズである場合には、スズの含有量が1質量%以上で10質量%以下、より安全には8.0質量%以下とすることが好ましく、1.5質量%以上3.0質量%以下とすることがより好ましい。1.0質量%以上のスズと残部の銅よりなる銅合金は、液相から初めて出る結晶が銅の一次固溶体であるα相となり尚且つ圧力を1気圧一定とした場合における液相線温度と固相線温度との差が30℃以上となる。また、スズの含有量が10質量%を超えると、α相を粒状化させるスラリー保持段階でスズと銅が比重差により分離し易くなるが、10質量%以下特に8.0質量%までは微細な粒状結晶が得られることが確認できた。従って、スズ含有量を8.0質量%以下であれば、スズと銅の比重差による分離を防ぎ、特にα相を粒状化させるスラリー保持時間を厳密に規定することなく、比較的ラフに本発明に係る銅合金を製造できることとなる。
また、上述のCu−Sn合金において、Snの添加量を1.5質量%以上8.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以上3.0質量%以下としたα相が粒状化している金属組織を備えている。1.5質量%以上のスズと残部の銅よりなる銅合金は、液相から初めて出る結晶が銅の一次固溶体であるα相となり尚且つ圧力を1気圧一定とした場合における液相線温度と固相線温度との差が45℃以上となる。また、スズの含有量を3.0質量%以下とすることで、比重差によりスズと銅が分離してしまうことを確実に回避できる。尚、Cu−Sn合金には、スズ以外に混入不可避の不純物元素が含まれていても良い。
しかも、このセミソリッド鋳造法によって得られる二元系銅合金は、従来の銅合金ではα相がデンドライト形状となっているのに対し、本発明に係わる二元系銅合金ではα相が粒状、換言すれば略球状となっているので、変形抵抗が小さく塑性加工や切削加工等の加工性に優れ、且つ複雑な形状に成形する場合でも金属組織が大きく変わることが無いので機械的性質が低下してしまうことが無い。さらに本発明に係わる銅合金を再加熱して半溶融状態として型に注入し目的形状に形成する加工(チクソキャストやチクソフォーミングと呼ばれる。)を行う場合、略球状のα相が液相に囲まれた状態となって液相があたかも潤滑剤としての役割を果たして球状α相の自由かつ円滑な移動を許容することにより、半溶融合金が高い流動性を示して型内に良好に充填され、しかも半溶融状態であって完全な融液ではないためばりを発生させない。これにより、良質な銅合金成形品、例えばリードフレーム材やコネクタ材などの情報通信関連や電気電子機器関連等の部品を提供することが可能となる。
しかして、本発明のセミソリッド鋳造方法によれば、低融点合金に対してのみ従来行われていたセミソリッド鋳造方法を、高融点合金である二元系銅合金に対して行うことが可能となり、当該セミソリッド鋳造法で発揮される有用な効果を有する二元系銅合金を製造することが可能となる。即ち、本発明のセミソリッド鋳造法によれば、微細でかつ粒状結晶からなる二元系銅合金を容易に製造することができる。しかも、合金元素の添加量並びに等温保持時間を適宜変更することにより、より微細な平均結晶粒径として加工性の改善や機械的性質などの強化を図ることができるし、同じ合金組成範囲でも粒状結晶の微細化を可能にする。例えば、平均結晶粒径50μm程度の粒状晶の銅合金を容易に実現できる。しかも、本発明セミソリッド鋳造法によって得られる銅合金は、α相がデンドライト形状となっている従来の銅合金とは異なり、α相が粒状、換言すれば略球状となっているので、塑性加工や切削加工等の加工性に優れ、かつ複雑な形状に成形する場合でも機械的性質を低下させず、またチクソキャストやチクソフォーミング等によりばりを生じない良質な銅合金成形品を作製することができる。したがって、リードフレーム材やコネクタ材などの情報通信関連や電気電子機器関連等の部品の素材として広く使用されている銅−スズ系合金の金属組織をα相が微細に粒状化した組織とするので、良質な銅合金製品を提供することが可能となる。
以下、本発明の二元系銅合金およびこの二元系銅合金を製造するセミソリッド鋳造方法の実施の一形態を詳細に説明する。本発明の二元系銅合金は、1種の合金元素が銅に添加されてなり、α相が粒状化している金属組織を備えている。かかる二元系銅合金は、傾斜冷却板を用いたセミソリッド鋳造方法において鋳造温度、保持温度、傾斜冷却板の角度や長さ、合金元素の添加量などを最適化することによって製造することが可能である。即ち、液相線温度と固相線温度との差が少なくとも25℃以上となる範囲の合金元素の添加範囲で銅合金を選定し、その銅合金の溶湯(合金溶液)の傾斜冷却板の直上の鋳造温度を所定の温度範囲とし、傾斜冷却板の直下の鋳造温度を所定量のα初晶が生成される温度とし、更に溶湯保持温度を前記α初晶が溶解せずかつ粒状化する温度に収まるようにして一定時間保持するようにしている。即ち、傾斜させた冷却板上に流下させて該傾斜冷却板上でα相の粒子を生成かつ遊離させて固液共存状態のスラリーを得て、このスラリーを鋳型またはタンディッシュで固液共存領域内の温度域に保持してα相粒子を粒状化させ、該粒状化したα相の周囲の液相を急冷により凝固させて、α相が粒状化している金属組織を有する銅合金の鋳造品を得る。
図1に、上記セミソリッド鋳造を行う装置構成の一例を示す。このセミソリッド鋳造装置は、上記銅合金の鋳塊(インゴット)を製造するものであり、銅合金融液を得る溶解炉1と、銅合金融液をスラリー化する傾斜冷却板2と、固液共存領域内の温度域でスラリーを等温保持する保持手段としての鋳型3と、スラリーを急冷して凝固させる冷却水槽4とを有している。
溶解炉1は、銅および合金元素を完全に溶解可能であるものが選択され、例えば電気炉や高周波誘導炉などの既存の炉を利用して良い。尚、電気銅などの純銅および合金元素を目的の組成となるように秤量して溶解炉1に投入して銅合金融液を得る場合もあるし、既に製造された銅合金の地金を溶解炉1に投入して銅合金融液を得る場合もある。図1の符号8は溶解炉1で得られる銅合金融液を示す。
また、この溶解炉1には例えば坩堝5内に出入可能にプランジャ6が設けられると共に、坩堝5と傾斜冷却板2との間には連絡路7が設けられており、プランジャ6が坩堝5内に進入することにより、合金融液8が坩堝5から押し出されて連絡路7を通って傾斜冷却板2上に流れ出るように構成されている。尚、プランジャ6および連絡路7を使用して合金融液8を傾斜冷却板2に流下する構成には限られず、溶解炉1を単純に傾動させて合金融液8を傾斜冷却板2に流すようにしても良い。
傾斜冷却板2は例えば純銅製であり、傾斜冷却板2の下面側には、傾斜冷却板2を冷却する冷却手段としての冷却水路9が設けられている。傾斜冷却板2の下端側には、傾斜冷却板2から流れ落ちるスラリーを受けるべく鋳型3が配置されている。この鋳型3は図示しない加熱手段により加熱可能に構成され、傾斜冷却板2の直下で傾斜冷却板2の上から流れ落ちてくるスラリーを受けてそのときの温度を保持するいわば保持炉としても機能する。図1の符号10は傾斜冷却板2で得られるスラリーを示す。
また、傾斜冷却板2の入口における合金融液8の温度、傾斜冷却板2による合金融液8に対する抜熱量およびこれを実現するための冷却板2上の温度、冷却板2を傾ける角度、冷却板2の長さLは、α相の生成により固液共存状態となったスラリー10の固相率が、傾斜冷却板2の出口において目的値の範囲となるように設定される。傾斜冷却板2の出口におけるスラリー10の固相率は、1%〜45%の範囲とすることが好ましく、1%〜30%の範囲がより好ましく、1%〜10%の範囲が最も好ましい。傾斜冷却板2の入口における溶湯温度が低過ぎたり、傾斜冷却板2の長さLが長過ぎたり、傾斜冷却板2の傾きが緩やか過ぎると、例えば図2の符号11に示すように傾斜冷却板2上で合金融液8の一部が凝固して凝固シェルとして傾斜冷却板2に付着してしまい、上記固相率が得られない。また、傾斜冷却板2の入口における溶湯温度が高過ぎたり、傾斜冷却板2の長さLが短過ぎたり、傾斜冷却板2の傾きが過度に急斜であると、例えば図3に示すようにα相の粒子が殆ど又はまったく生成されず、上記固相率が得られない。特に、鋳造温度は、液相線温度+30℃を大きく下回り鋳造温度が低過ぎると傾斜冷却板の上で凝固シェルが生成し、30℃を超えて高すぎると傾斜冷却板上での初晶生成が少なくなり、結果として結晶粒が粗大化する。また、傾斜冷却板の角度が小さく流速が小さ過ぎると傾斜冷却板の上で凝固シェルが生成してしまい、初晶α遊離を妨げるのに対し、傾斜冷却板の角度があり過ぎると流速が速くなり、傾斜冷却板上で初晶αの生成および遊離が促進されると考えられる。さらに、傾斜冷却板の直下での溶湯の保持は、低い温度勾配例えば液相線温度以下の温度でかつ数℃/mを持つ鋳型で保持することが望ましい。具体的には、等温保持温度は、傾斜冷却板の直下の鋳造温度とほぼ同じであり、液相線温度−5〜10℃程度の範囲に収まるように設定されている。ほぼこの温度範囲であれば、デンドライト初晶が粒状化するが、それよりも温度が高くなると傾斜冷却板上でせっかく生成された結晶が溶解してしまい、デンドライト初晶を核とした粒状晶の生成ができずにその後の急冷でデンドライト組織となってしまう。尚、図中の矢印Aは傾斜冷却板2上を合金融液8が流れる方向を示し、図中の符号12は傾斜冷却板2上で生成するα相粒子を示す。
このため、傾斜冷却板2の入口における溶湯温度(鋳造温度)は、液相線近傍の温度、具体的には液相線温度+10℃〜+50℃である。ここで、前述の液相線近傍の温度は、合金元素によって好適な温度範囲が若干変動する。例えば、Snの場合には、液相線温度+50℃まで良好な結果は得られたが、Niの場合には液相線温度+45℃までが良好な結果が得られる温度であった。より好ましくは、Cu−Sn合金のような比較的融点の低い合金元素の場合には液相線温度+10℃であり、Niのような比較的融点の高い合金元素の場合には液相線温度+30℃程度とすることである。勿論、Cu−Sn合金の場合にも液相線温度+30℃の鋳造温度としても良い。傾斜冷却板2による銅合金融液8に対する抜熱量は例えば4500〜8000W/(m・K)(ワット毎メートル毎ケルビン)程度であることが好ましい。このことから、本実験装置においては、上述の固相率が得られる冷却状態を実現できる傾斜冷却板2の長さLは280mm〜300mm程度としている。傾斜冷却板2上を流下するスラリーの流速が適切となるように傾斜冷却板2の傾きは水平線に対して20°〜60°の角度とすることが好ましく、60°の角度とすることがより好ましい。傾斜冷却板2の表面温度は合金融液8の通過時に例えば600℃〜650℃程度とすることが好ましい。このために例えば本実施形態では、傾斜冷却板2の下面の冷却水路9に例えば温度20℃程度の冷却水を流通させる。尚、この冷却水は循環させず、例えば水道水等を一定水量で冷却水路9に随時供給する。また、傾斜冷却板の上述長さ、角度などの諸条件は、工業上実用的な製造装置に適用する場合などには、上述の固相率が得られる冷却状態を実現できるものに適宜変更されることは言うまでもない。
ここで、液相線温度と固相線温度との差がある程度ないと、傾斜冷却板2の出口におけるスラリーの固相率を上記目的値の範囲とすることが極めて困難となる。本願発明者が行った実験によると、例えば圧力を1気圧一定とした場合における液相線温度と固相線温度との差はその後の適切な等温保持が存在すると、少なくとも25℃以上でデンドライト初晶の生成と粒状化が達成される。しかし、より大きな温度差であることが粒状晶の微細化の上でより好ましく、28℃以上、好ましくは30℃以上である。例えば、Cu−Sn合金の場合、30℃以上の温度差がないと、傾斜冷却板2上でα相が晶出して結晶の粒状化が達成されてもその後の過程でα相の粒が粗大化してしまった。勿論、この値は添加する合金元素さらには等温保持時間の違いによって僅かな変動は存在する。例えば、Niの場合には、保持時間を短くすることにより、28℃でも結晶の粒状化と微細化とが両立した。傾斜冷却板2を用いたセミソリッド鋳造方法によって製造される銅合金について、α相が粒状化していることによる効果を良好に得るためには、α相の粒径は小さい方が好ましく、例えば90μm程度以下、より好ましくは70μm程度以下、さらに好ましくは50μm程度以下である。さらに本願発明者が行った実験によれば、「液相線温度と固相線温度との差」が大きいほど、傾斜冷却板を用いたセミソリッド鋳造方法によって製造される銅合金のα相の粒が微細となることが知見された。例えば圧力を1気圧一定とした場合における液相線温度と固相線温度との差が、30℃程度以上となる場合はα相の粒径は90μm程度以下となり、45℃程度以上となる場合はα相の粒径は70μm程度以下となった。このことは、Cu−Ni合金に代表される全率固溶体を構成する銅合金においても、合金元素の添加量を増やすことと一致し、同じ傾向があることが確認された。
そこで溶解炉1にて融液8となる銅合金の組成は、液相から初めて出る結晶が銅の一次固溶体であるα相となり、尚且つ圧力を1気圧一定とした場合における液相線温度と固相線温度との差が少なくとも25℃以上、好ましくは28℃以上、より好ましくは30℃以上、さらに好ましくは45℃以上となるものを選択する。
例えば1.0質量%以上のスズと残部の銅よりなる銅合金は、圧力を1気圧一定とした場合における液相線温度と固相線温度との差が30℃程度以上、より正確には32.9℃以上となり上記条件を満足する。また、1.5質量%以上のスズと残部の銅よりなる銅合金は、圧力を1気圧一定とした場合における液相線温度と固相線温度との差が45℃程度以上、より正確には47.3℃以上となり上記条件を満足する。銅−スズ系合金は、導電性に優れることから、情報通信関連や電気電子機器関連等の部品、例えばリードフレーム材やコネクタ材の素材として広く使用されている。また、Cu−Ni合金の場合には、1.5質量%Niの場合には上述の液相線温度と固相線温度との差は28℃以上の条件を満たし、3.0質量%Niの場合には30℃以上の条件を満たす。このことは、全率固溶体を構成するNi以外の合金元素においても同様である。
尚、「液相線温度と固相線温度との差」の値が大きいほど、傾斜冷却板2を用いたセミソリッド鋳造方法によって製造される銅合金のα相の粒が微細となるため、当該差の値は大きいほど好ましいが、合金元素の種類によっては、合金元素の含有量が増加する結果、α相を粒状化させるべくスラリーを保持する段階において合金元素と銅が比重差により分離し易くなる場合、またNiの場合にはガスの巻き込みが激しくなって鋳造し難いなどの不具合が生じたりする場合がある。そこで、「α相を生成し且つ液相線温度と固相線温度との差が目的の値以上となる」条件の範囲で本発明のセミソリッド鋳造方法を適用する合金組成を合金元素の添加量の範囲内で決めるようにしても良い。例えば合金元素がスズである場合には、スズの含有量が8.0質量%までは微細な粒状結晶が得られることが確認できたが、10質量%を超えて12〜13質量%に達すると、α相を粒状化させる鋳型3等での等温保持の段階で比重差によりスズと銅が分離し易くなり、15質量%で完全な分離を起こしてしまった。このため、スズの含有量は10質量%以下、より安全には8.0質量%以下とすることが好ましく、3.0質量%以下とすることがより好ましい。但し、銅と合金元素の比重差による分離の対策としては、上記のように「α相を生成し且つ液相線温度と固相線温度との差が目的の値以上となる」条件を満足する範囲で合金元素の添加量を減らすものに限らず、鋳型3またはタンディッシュにてα相を粒状化させるべくスラリーを保持する時間を短くして、合金元素と銅が比重差により分離する前に、粒状化したα相の周囲の液相を急冷により凝固させるようにしても良い。また、Niの場合には、20質量%を超えると、鋳造時のガスの巻き込みが激しくなり鋳造が難しくなるという製造上の問題が生ずるため、それを防ぐ前処理工程などを必要とするなどの問題を伴うが、15質量%以下ではそのような問題もなく微細な粒状結晶のCu−Ni合金を得ることができる。特に、12質量%以下では、微細な粒状結晶が確実に得られることが確認された。
上記条件で合金融液8を傾斜冷却板2上に流下させることで、その流下の過程で傾斜冷却板2が合金融液8から熱を抽出することにより合金融液8の温度が低下して、図4(A)に示すように傾斜冷却板2上に初晶α相の核が生成され、次に図4(B)に示すように結晶の根元がくびれたα相粒子に成長し、次に図4(C)に示すように合金融液8の流動や対流によりα相粒子が傾斜冷却板2の表面から遊離する(結晶遊離説)。これにより、図5に示すように、多数の微細なα相粒子が生成され、固液共存状態のスラリー10が得られる。
そして鋳型3により上記スラリー10が等温保持される。鋳型3は、温度勾配が低くなるように一定温度に加熱されることが好ましく、鋳型3でのスラリー10の保持温度は、傾斜冷却板2の出口におけるスラリー10の温度と同温程度に設定することが好ましく、具体的には1%〜10%の固相率範囲となる固液共存領域の温度域であることがより好ましい。また、鋳型3でのスラリー10の保持時間は、SnのようにCuとの比重差が大きな合金元素の場合には、長過ぎると銅と合金元素とが比重差で分離してしまうので、10秒〜60秒程度の短時間とすることが好ましく、15秒〜30秒程度とすることがより好ましい。上記条件でスラリー10を保持することにより、α相の粒状化が良好に行われる。他方、NiのようにCuとの比重差が小さな合金元素の場合には、分離の問題が少ないので等温保持時間を短くすることもできる。この場合には、結晶粒径の微細化の観点からはできるだけ短時間、好ましは5〜15秒、より好ましくは5秒程度とすることである。
上記のように鋳型3でスラリー10を保持した後、この鋳型3を冷却水槽4に移動させ、α相の周囲の液相を急冷により凝固させる。尚、冷却水槽4の水温はα相の周囲の液相を急冷凝固させるものであれば良く、例えば10℃〜25℃程度とすることが好ましい。以上により、α相が粒状化している金属組織を有する銅合金の鋳塊が得られる。
この銅合金ではα相が粒状、換言すれば略球状となっているので、変形抵抗が小さく塑性加工や切削加工等の加工性に優れ、且つ複雑な形状に成形しても金属組織が大きく変わることが無いので機械的性質が低下してしまうことが無い。さらに本発明に係わる銅合金を再加熱して半溶融状態として型に注入し目的形状に形成するチクソキャストやチクソフォーミングを行う場合、略球状のα相が液相に囲まれた状態となって液相があたかも潤滑剤としての役割を果たして球状α相の自由かつ円滑な移動を許容することにより、半溶融合金が高い流動性を示して型内に良好に充填され、しかも半溶融状態であって完全な融液ではないためばりを発生させない。これにより、良質な銅合金成形品、例えばリードフレーム材やコネクタ材などの情報通信関連や電気電子機器関連等の部品を提供することが可能となる。
(実施例1)
銅−スズ系合金の融液に対して図1に示す装置を用いて銅合金の鋳塊を重力鋳造で製造した。電気銅をベース材とし、0.5質量%,1.0質量%,1.5質量%,3.0質量%,6.0質量%,8.0質量%のスズを添加量して鋳塊を製造した。
溶解炉1には電気炉を用い、坩堝5には黒鉛るつぼ2番を用い、全体量500gとなるように電気銅(住友金属鉱山株式会社製)およびスズ(株式会社平野清衛門商店製)を秤量して、アルゴン雰囲気中で溶解した。溶湯温度は液相線温度+10℃とした。傾斜冷却板2は純銅製とし、傾斜冷却板2の長さLは280mmとし、傾斜角度は水平線に対して60°とした。傾斜冷却板2の下面の冷却水路9には、温度20℃程度の水道水を一定水量で随時供給して、傾斜冷却板2を水冷した。上記電気炉1で溶解した合金融液8を傾斜冷却板2上に流下させた。合金融液8が傾斜冷却板2上を通過するのは極めて短時間であるが、傾斜冷却板2が溶けたり反応することはなく且つ合金融液8の通過中に傾斜冷却板2が赤色化していないので、合金融液8の通過時の傾斜冷却板2の表面温度は600℃〜650℃程度と考えられる。ここで、傾斜冷却板の直下での溶湯の保持は、低い温度勾配例えば液相線温度以下の温度でかつ数℃/mを持つ鋳型で保持することが望ましく、本実験では、傾斜冷却板2から流下するスラリー10を1050℃に加熱した鋳型3に流し込んだ。鋳型3でのスラリー10の保持時間は15秒程度を基準とし、スズ添加量が1.5質量%,3.0質量%のものについては、上記保持時間が15秒,30秒,60秒の各場合の鋳塊を製造した。上記保持時間経過後、鋳型3を冷却水槽4で水冷して、銅合金の鋳塊を得た。
図7に、各スズの添加量に対応する鋳塊の鋳造組織を示す。尚、図7(a)がスズの添加量0.5質量%の場合を示し、図7(b)がスズの添加量1.0質量%の場合を示し、図7(c)がスズの添加量1.5質量%の場合を示し,図7(d)がスズの添加量3.0質量%の場合を示す。
図7に示す結果から、いずれのCu−Sn合金もその金属組織は粒状結晶であるが、Sn添加量によって平均結晶粒径が異なっていた。即ち、スズ添加量0.5質量%の場合ではα相の粒径が140μm程度と粗大であり、スズ添加量1.0質量%の場合ではα相の粒径が90μm程度と微細になり、スズ添加量1.5質量%の場合ではα相の粒径が70μm程度と更に微細化になり、スズ添加量3.0質量%の場合ではα相が更に微細化されている。従って、α相の粒径化および微細化の観点から、スズ添加量は1.0質量%以上であることが好ましく、また1.5質量%以上であることがより好ましい。
図8に銅−スズ系合金の圧力を1気圧一定とした場合における状態図を示す。図8中の符号20で示す線が液相線を、符号21で示す線が固相線を、αで示す領域がα相の領域を、Lで示す領域が液相の領域を、α+Lで示す領域が固液共存領域を示す。α相が粒状化している銅合金組織を得るためには、α相の生成と固液共存領域における固相率が重要である。そして、固液共存領域の大きさは、状態図より導かれる液相線と固相線との間の幅の大きさ即ち温度差に関係する。従って、「α相(液相から初めて出る結晶すなわち初晶であって凝固時に銅の一次固溶体となる固相)を生成すること」および「液相線温度と固相線温度との差」の条件により銅合金の合金元素の添加量を特定することで、当該特定される銅合金が「α相が粒状化した金属組織」と成り得るか否かを判断できる。そして、銅−スズ系合金における「α相が粒状化した金属組織」となるための「液相線温度と固相線温度との差」の条件は、他の銅合金すなわち合金元素がスズ以外である銅合金またはスズとスズ以外の合金元素を含む銅合金にも当て嵌まるものと考えられる。特に共晶型や全率可溶型の銅合金は、α相の初晶生成は銅−スズ系合金と一緒であるため、その可能性が極めて高い。
表1に、銅−スズ系合金におけるスズ添加量と、圧力を1気圧一定とした場合における液相線温度、固相線温度の関係を示す。尚、表1中のΔTが「液相線温度と固相線温度との差」を示す。
上記表1と、「スズ添加量は1.0質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましい」という上記実験結果から、液相線温度と固相線温度との差は30℃程度以上(より正確には32.9℃以上)であることが好ましく、45℃程度以上(より正確には47.3℃以上)であることが更に好ましい、との結論が導かれる。
ここで、平衡分配係数K<1で支配される凝固理論としては、凝固の進行とともに溶質が固相から液相に排出され、液相の溶質濃度は増大し、偏析し易いと一般に言われている。一方、合金融液8が接触する冷却端すなわち傾斜冷却板2上では、核生成した結晶について溶質の濃化が起こるために局部偏析を生じ、結晶の根元がくびれた粒状に成長し、さらに融液8の流動や対流による結晶の遊離と堆積の繰り返しにより粒状結晶が形成すると考えられる(結晶遊離説)。従って、銅合金の組成によって決まる平衡分配係数が小さいほど、α相が良好に微粒化すると考えられる。銅−スズ系合金の平衡分配係数は約0.2であり、充分に小さいため、α相が微細に粒状化した金属組織が得られたとも考えられる。合金元素として、Mg(マグネシウム),P(リン),Ti(チタン),Fe(鉄),Mn(マンガン),As(ヒ素),Cd(カドミウム),In(インジウム),Sb(アンチモン)のいずれかを含む銅合金の平衡分配係数は、銅−スズ系合金と同様に0.2以下となるため、これらの元素を含む銅合金融液について傾斜冷却板2を用いたセミソリッド鋳造方法を行うことによっても、銅−スズ系合金と同様に、α相が微細に粒状化した金属組織を備える銅合金が得られると考えられる。この点から、傾斜冷却板2を用いたセミソリッド鋳造方法に用いる銅合金系は平衡分配係数が0.2近傍もしくは0.2以下となるものが望ましいと考えられる。尚、全率固溶体を構成するNi(ニッケル),Pt(白金),Rh(ラジウム),Pd(パラジウム)を合金元素を添加する銅合金の場合にも、分配係数が0.2近傍もしくは0.2以下となることから望ましいと考えられる。
但し、平衡分配係数が0.2ほど小さくなくても、例えば0.5以下程度であっても、液相線温度と固相線温度との差がある程度大きければ、α相が微細に粒状化した金属組織を備える銅合金が得られる可能性は充分にある。例えば、Al(アルミニウム)を含む銅合金の平衡分配係数は約0.49であり、Ag(銀)を含む銅合金の平衡分配係数は約0.43であり、Be(ベリリウム)を含む銅合金の平衡分配係数は約0.32であり、Zn(亜鉛)を含む銅合金の平衡分配係数は約0.33であり、Si(ケイ素)を含む銅合金の平衡分配係数は約0.39であるが、これらを合金元素として含むアルミニウム合金またはマグネシウム合金について傾斜冷却板2を用いたセミソリッド鋳造方法を実験したところ、液相線温度と固相線温度との差が45℃以上、より好ましくは50℃以上のとき、スラリー中の固相が良好に粒状化していることが確認された。したがって、例えば平衡分配係数が0.2以上0.5以下となる銅合金系であっても、液相線温度と固相線温度との差が45℃以上、より好ましくは50℃以上あれば、当該銅合金の融液について傾斜冷却板2を用いたセミソリッド鋳造方法を行うことによっても、α相が微細に粒状化した金属組織を備える銅合金が得られると考えられる。
図9及び図10にCu−Sn合金の本発明のセミソリッド鋳造方法によって鋳塊を得る際の等温保持時間の影響について実験した結果を示す。図9は、スズ添加量が1.5質量%、鋳型3でのスラリー10の保持時間を15秒,30秒,60秒と変化させた場合の鋳塊の鋳造組織を示す。また、図10は、スズ添加量が3.0質量%、鋳型3でのスラリー10の保持時間を15秒,30秒,60秒と変化させた場合の鋳塊の鋳造組織を示す。尚、図9,図10において、(a)が保持時間15秒の場合を示し、(b)が保持時間30秒の場合を示し、(c)が保持時間60秒の場合を示す。図9および図10の結果から、本実施例の条件では、保持時間15秒くらいからα相の粒状化が始まり、保持時間30秒程度が最適であることが確認された。
また、図11にセミソリッド鋳造方法における傾斜冷却板の影響について実験した結果を示す。図11はスズ添加量1.5質量%の場合において、傾斜冷却板2を使用しなかったときの重力鋳造後の鋳造組織を示す。図11の金属組織はデンドライト形状となっている。したがって、α相が粒状化している銅合金組織を得るために、傾斜冷却板2を使用したセミソリッド鋳造が有効であることが確認された。
また、図12はスズ添加量3.0質量%の場合において、(a)は傾斜冷却板2の入口における溶湯を急冷凝固させた場合の金属組織を示し、(b)は傾斜冷却板2の出口におけるスラリー10を急冷凝固させた場合の金属組織を示す。(b)では(a)と異なり、白色の結晶粒が散在していることから、傾斜冷却板2上でα相の粒子が生成したことが確認できる。
さらに、上述の製造方法にて、Snの添加量を6質量%、8質量%に増加させて鋳塊を重力鋳造した。このときの鋳造温度は液相線温度+30℃、等温保持時間は15秒、傾斜冷却板2の長さ300mm、傾斜角度は水平線に対して60°とした。これによって得られた平均結晶粒経は、図13に示す結果から明らかなように、6質量%、8質量%のいずれも3質量%の場合と大差はなく、ほぼ55μm程度に微細化された。また、Snの添加量を更に増量した場合、10質量%前後でも分離せずに粒状結晶のCu−Sn合金を鋳造できたが、15質量%では完全に分離してしまった。
このことから、本発明のセミソリッド鋳造方法は、Cu−Sn合金においてはSnの添加量が15質量%未満であれば好適に成立するものと思われる。この場合に鋳造されるCu−Sn合金は、α相が粒状化している金属組織を有する銅合金であって、変形抵抗が小さく塑性加工や切削加工等の加工性に優れ、且つ複雑な形状に成形する場合でも金属組織が大きく変わることが無いので機械的性質が低下してしまうことが無いものである。さらに銅合金を再加熱して半溶融状態として型に注入し目的形状に形成する加工(チクソキャストやチクソフォーミングと呼ばれる。)を行う場合、略球状のα相が液相に囲まれた状態となって液相があたかも潤滑剤としての役割を果たして球状α相の自由かつ円滑な移動を許容することにより、半溶融合金が高い流動性を示して型内に良好に充填され、しかも半溶融状態であって完全な融液ではないためばりを発生させない。これにより、良質な銅合金成形品、例えばリードフレーム材やコネクタ材などの情報通信関連や電気電子機器関連等の部品を提供することが可能となるものである。特に、Snの添加量が1.5質量%〜8質量%のCu−Sn合金の場合には、平均結晶粒経が90μm未満の微細化粒状を成し、製品への加工がより容易なものとなる。
(実施例2)
図14に示す全率固溶型状態図のCu−Ni系合金を用いて、全率固溶体についてのセミソリッド鋳造の最適条件並びにそれにより微細な粒状組織が得られることを確認した。
1.実験装置並びに実験条件
実験は、微細な凝固組織を得るための適正鋳造条件を見いだすために、図1に示す実験装置を用い、表2に示すように実験条件を変えて行った。実験では、電気銅(住友金属鉱山株式会社製)をベース材とし、Ni(株式会社平野清衛門商店製)の添加量が1.5質量%,3質量%,6質量%,9質量%及び12質量%の5種類の組成の鋳塊を重力鋳造により製造した。ここで、傾斜冷却板2としては、長さ280mmの純銅製板が使用され、傾斜角度60°で設置し、傾斜冷却板2の下面の冷却水路9に温度20℃程度の水道水を一定水量で随時供給して、傾斜冷却板2を水冷した。
尚、表2に示す溶湯温度はるつぼ5内での温度を示し、傾斜冷却板2の直上で液相線温度+30℃あるいは液相線温度+50℃の所定の鋳造温度とするために、若干(+12℃〜+35℃)高めに設定されている。
2.鋳造方法
全体量500gとなるように電気銅およびNiを所定組成比に秤量して黒鉛るつぼ5に入れ、高周波電気炉1でアルゴン雰囲気下に溶解した。溶解後、溶湯を所定鋳造温度で傾斜冷却板2上に流下させ、加熱した鋳型3で受け、該鋳型3内で所定時間等温保持して粒状化した後に水槽4内に移して水冷により急冷した。その後、得られた鋳塊を耐水研磨紙(番手:240,400,600,800,1000)で研磨して、最終研磨でバフ布で仕上げを行い、腐食後に金属顕微鏡で組織観察した。尚、溶湯温度は、実験に用いる合金の冷却曲線(図15に示す)をそれぞれ求めて、そこから各合金の実際の液相線温度をそれぞれ求めて決定した。
3.実験
(a)傾斜冷却板の結晶粒状化に与える影響
傾斜冷却板の有効性を確認するため、Cu−3質量%Ni合金を液相線温度+30℃の鋳造温度(1122℃)で、傾斜冷却板2を使用せずに直に水槽4へ落下させて急冷した場合の鋳造組織と、傾斜冷却板2を使用して(長さ280mm、角度60°)15秒の等温保持後に急冷した場合の鋳造組織とをそれぞれ比較した。傾斜冷却板を使用した図16(A)では金属組織は成長して亀甲状となっており、種結晶(デンドライト初晶)が傾斜冷却板から生成し、その初晶が等温保持で粒状化したことが判る。他方、傾斜冷却板を使用しなかった図16(B)の場合には、デンドライト組織となっており、α相が粒状化している銅合金組織を得るために、傾斜冷却板2を使用した本発明のセミソリッド鋳造が有効であることが確認された。
尚、合金融液8が傾斜冷却板2上を通過するのは極めて短時間であり、傾斜冷却板2が溶けたり反応することはない。因みに、本実験においては、合金融液8の通過中に傾斜冷却板2が赤色化していないので、合金融液8の通過時の傾斜冷却板2の表面温度は600℃〜650℃程度と考えられる。
さらに、Ni添加量3.0質量%のCu−Ni合金の溶湯(液相線温度+30℃)を傾斜冷却板の直上(入口)及び直下(出口)で急冷凝固して鋳塊を得た。これら鋳塊の金属組織を図21に示す。図21(A)は傾斜冷却板2の入口で急冷凝固させた場合の金属組織を、図21(B)は傾斜冷却板2の出口におけるスラリー10を急冷凝固させた場合の金属組織をそれぞれ示す。図21(B)の金属組織はデンドライトの初晶が生成されていることが認められるが、図21(A)の金属組織ではデンドライトの初晶の生成が認められない。
さらに、図26にNi添加量1.5質量%,6質量%,9質量%,12質量%のそれぞれのCu−Ni合金の溶湯(液相線温度+30℃)を傾斜冷却板に流して直下(出口)で急冷凝固した場合の金属組織を示す。いずれの組織においても、デンドライトの初晶が生成された。
以上のことから、傾斜冷却板2上での冷却でデンドライト初晶(α初晶)が生成され、その後の等温保持でデンドライト初晶の粒状化が生じたことが確認できた。
(b)保持時間の違いが結晶粒状化に与える影響
1分程度保持すると、Cuと比重差が大きくない合金元素でもα晶が見つけられない程に再固溶が進んでしまう。このことから、保持時間は長すぎても良くないと考えられ、例えば30秒程度より短いことが好ましいと考えられる。
そこで、Cu−3質量%Ni合金並びにCu−6質量%Ni合金について、それぞれ保持時間0秒と30秒を与えた場合を比較し、等温保持が金属組織に与える影響について検討した。尚、製造条件としては、液相線温度+30℃の鋳造温度(1122℃,1137℃)で、長さ280mm、角度60°の傾斜冷却板2を使用して重力鋳造した。ここで、等温保持温度は、傾斜冷却板の直下での溶湯の保持は、低い温度勾配例えば液相線温度以下の温度でかつ数℃/mを持つ鋳型で保持することが望ましい。具体的には、等温保持温度は、傾斜冷却板の直下の鋳造温度とほぼ同じであり、液相線温度−5〜10℃程度の範囲に収まるように設定されている。
Cu−3質量%Ni合金の場合、図17の(A)に示すように、等温保持0秒でも、細かい粒状結晶が得られているように見えるが、よく観察すると細かいデンドライト組織であることがわかる。これが等温保持30秒では、明らかな粒状組織となっている。また、Cu−6質量%Ni合金の場合においても、図17の(B)に示すように、等温保持0秒では、細かい粒状結晶が得られているように見えるが、よく観察すると細かいデンドライト組織であることがわかる。これが等温保持30秒では、明らかな粒状組織となっている。このことから、傾斜冷却板2で生成された細かいデンドライト晶が等温保持によって粒状化する等温保持時間の違いが金属組織に与える影響が異なることが確認された。
そこで、Ni添加量ごとの保持時間の違いによる結晶組織に与える影響を更に調べた。
まず、図18に、Ni添加量が3質量%における保持時間の違いが金属組織に与える影響を示す。尚、このCu−Ni合金の製造条件は、鋳造温度が液相線温度+30℃(1122℃)、傾斜冷却板長さ280mm、冷却板傾斜角度60°である。鋳型3でのスラリー10の保持時間を5秒,15秒,30秒と変化させた各場合の鋳塊の鋳造組織を(A),(B),(C)にそれぞれ示す。いずれにおいても、α固溶体のCuがデンドライト初晶となって析出して、粒状結晶に成長しているが、保持時間が短いほど平均結晶粒径が微細となっている。保持時間5秒では67.9μm、15秒では81.1μm、30秒では86.7μmである。Cu−Sn合金のように、母材元素と添加元素との間に比重差がある場合には、保持時間が長過ぎたり短過ぎると、比重差で分離を起こしてしまうので15秒程度の保持時間が好適であるが、Niの場合には5秒程度の短い保持時間でも効果がある。
この傾向は、Niの添加量に変わらず同じである。図19に、同じ製造条件におけるNi添加量が6質量%における保持時間の違いが金属組織に与える影響を示すと、保持時間5秒,15秒,30秒における鋳塊の鋳造組織は(A),(B),(C)のようになった。いずれにおいても、α固溶体のCuがデンドライト初晶となって析出して、粒状結晶に成長しているが、保持時間が短いほど平均結晶粒径が微細となっている。
また、Ni添加量が9質量%における金属組織の保持時間毎の違いは、図20に示す通りである。保持時間5秒,15秒,30秒における鋳塊の鋳造組織は(A),(B),(C)のようになった。
更に、Ni添加量が1.5質量%における金属組織の保持時間毎の違いは、図24に示す通りである。保持時間5秒,15秒,30秒における鋳塊の鋳造組織は(A),(B),(C)のようになった。
更に、Ni添加量が12質量%における金属組織の保持時間毎の違いは、図25に示す通りである。保持時間5秒,15秒,30秒における鋳塊の鋳造組織は(A),(B),(C)のようになった。
これらNi添加量1.5質量%〜12質量%の間の各組成での保持時間と平均結晶粒径との関係をグラフに示すと図22の通りである。この結果から、等温保持時間が短いほど、またNi添加量が多いほど、平均結晶粒径が微細化することが確認された。
(c)鋳造温度の違いが結晶粒状化に与える影響
Cu−Ni合金を本発明のセミソリッド鋳造方法により重力鋳造する際の、鋳造温度の違いによる金属組織の変化を比較した。この実験における保持時間は15秒とした。その結果得られた鋳塊の金属組織を図27及び図28に示す。(A)はCu−1.5質量%Ni合金の鋳造温度を液相線温度+30℃とした場合、(B)はCu−6質量%Ni合金の鋳造温度を液相線温度+30℃とした場合、(C)はCu−9質量%Ni合金の鋳造温度を液相線温度+30℃とした場合、(D)はCu−12質量%Ni合金の鋳造温度を液相線温度+30℃とした場合の金属組織をそれぞれ示す。これに対し、図28(A)はCu−9質量%Ni合金の鋳造温度を液相線温度+50℃とした場合、(B)はCu−12質量%Ni合金の鋳造温度を液相線温度+50℃とした場合の金属組織をそれぞれ示す。(A)〜(D)の金属組織はいずれも粒状晶となっているが、図28の(A)及び(B)の金属組織はデンドライト晶となっている。このことから、鋳造温度を各合金組成毎の液相線温度+30℃とする場合には粒状晶になるが、+50℃とする場合には球状晶とはならずにデンドライト晶のままとなってしまうことが確認された。
鋳造温度は、液相線温度+30℃を大きく下回り鋳造温度が低過ぎると傾斜冷却板の上で凝固シェルが生成し、30℃を超えて高すぎると傾斜冷却板上での初晶生成が少なくなり、結果として結晶粒が粗大化する。
(d)液相線温度と固相線温度との温度差が結晶粒状化に与える影響
図14に銅−Ni系合金の圧力を1気圧一定とした場合における状態図を示す。α相が粒状化している銅合金組織を得るためには、α相の生成と固液共存領域における固相率が重要である。そして、固液共存領域の大きさは、状態図より導かれる液相線と固相線との間の幅の大きさに関係する。従って、「α相(液相から初めて出る結晶すなわち初晶であって凝固時に銅の一次固溶体となる固相)を生成すること」および「液相線温度と固相線温度との差」の条件により銅合金を特定することで、当該特定される銅合金が「α相が粒状化した金属組織」と成り得るか否かを判断できる。そして、銅−Ni系合金における「α相が粒状化した金属組織」となるための「液相線温度と固相線温度との差」の条件は、全率固溶体を構成する他の銅合金例えばCu−Pt,Cu−Rh,Cu−Pdにも当て嵌まるものと考えられる。
そして、以上の実験結果から、Cu−Ni合金の組織を本来のデンドライト組織から粒状晶とすると共に結晶を微細化するには、保持時間を短くすることにより、Ni添加量が1.5質量%でも達成されていることから、結晶の粒状化と微細化を両立させる液相線温度と固相線温度との差は28℃以上であることが確認された。そして、少なくとも液相線温度と固相線温度との温度差が25℃以上の合金組成範囲範囲であれば、Cu−Ni合金の組織を本来のデンドライト組織から粒状晶とすることが可能であることが推認される。さらには、全率固溶体を構成する銅合金の場合、等温保持時間をより短くすることが可能であり、そのことにより液相線温度と固相線温度との温度差がより狭い組成域例えば28℃、あるいは30℃程度以上で好ましい結果が得られた。もっとも、液相線温度と固相線温度との温度差がより広い組成域例えば45℃程度以上であることは、更に好ましい結果が得られることは、Ni添加量が12質量%以上でより微細な粒状晶が得られることから確認された。
ここで、銅−Ni系合金の平衡分配係数は約0.2であり、充分に小さいため、α相が微細に粒状化した金属組織が得られたとも考えられる。合金元素として、全率固溶体を構成するPt,Rh,Pdのいずれかを含む銅合金の平衡分配係数は、銅−Ni系合金と同様に0.2以下となるため、これらの元素を含む銅合金融液について傾斜冷却板2を用いたセミソリッド鋳造方法を行うことによっても、銅−Ni系合金と同様に、α相が微細に粒状化した金属組織を備える銅合金が得られると考えられる。この点から、傾斜冷却板2を用いたセミソリッド鋳造方法に用いる銅合金系は平衡分配係数が0.2近傍もしくは0.2以下となるものが望ましいと考えられる。
以上の実験の結果から、Cu−Ni合金の場合にも、Cu−Sn合金の場合と同様に、傾斜冷却板を用いて細かいデンドライト初晶を一定の割合で生成し、更に低い温度勾配(液相線以下の温度でかつ数℃/m)を持つ鋳型で保持することによって、セミソリッド鋳造での鋳造組織の粒状化が実現できることが確認された。
さらに、本発明のセミソリッド鋳造法は、液相線温度と固相線温度の差が30℃以上となる合金元素の添加範囲での実施が好適であるが、等温保持時間を短くすれば、28℃以上の合金元素の添加範囲、場合によっては少なくとも25℃を超える添加範囲であっても適用できることが判明した。したがって、本発明のセミソリッド鋳造法は、Niの添加量において、少なくとも1.5質量%、場合によっては1質量%程度から適用できるものであり、粒状晶を得ることができる。また、本実施例において、Niを12質量%添加したものにおいても、粒状晶組織と微細な粒径の合金が得られることが確認された。他方、Niの添加量が多いと、鋳造時のガスの巻き込みが多くなって鋳造が難しくなるなどの問題も生ずる虞がある。しかし、これら問題を解消するめたの前処理などを施せば、本発明のセミソリッド鋳造法は適用可能であり、少なくともCu−15質量%Ni程度までは何らの前処理などを必要とせずに適用できるものと推察される。
また、同じNi添加量でも等温保持時間が短いほど結晶粒径が細かくなる傾向が認められた。Ni添加量が増えるほど、平均結晶粒径が小さくなる傾向にあり、平均結晶粒径を微細化するという観点からはNi添加量が多いCu−Ni合金ほど本発明の製造方法は効果的であると言える。また、同じNi添加量の場合には、等温保持時間が短いほど、平均結晶粒径が微細化する傾向にあり、反面保持時間が長くなる程に結晶粒径が揃ってくる傾向がある。そこで、Cu−Ni合金のスラリーあるいは鋳塊をその後どのように使うかで、平均結晶粒径の微細化が望まれる場合と平均結晶粒径がそれほど小さくなくとも粒が揃っていることが望まれる場合とで、保持時間を使い分けることが好ましい。ところで、結晶粒の状態は後工程でスラリーあるいは鋳塊をどのように使うかで好適な条件は異なる。粒の大小よりも粒が揃っていることの方が好ましいこともあれば、粒がより小さいことが好ましい場合もある。そこで、セミソリッド鋳造に際しては、最適化される保持時間、Ni添加量などが適宜選定される。
さらに、Cu−Sn合金の場合と同様に、セミソリッド鋳造での鋳造組織の粒状化するためには、低い温度勾配(液相線以下の温度でかつ数℃/m)を持つ鋳型で保持すること、並びに傾斜冷却板を用いることにより粒状の初晶を持った鋳造組織が得られることが確認された。即ち、等温保持温度は、傾斜冷却板の直下の鋳造温度とほぼ同じであり、液相線温度−5〜10℃程度の範囲に収まるようにすることである。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば図1の実験装置では、傾斜冷却板2で得られたスラリー10を直接加熱鋳型3で保持した後に水槽4での水冷により鋳塊を製造したが、例えば図6に示すように、傾斜冷却板2で得られたスラリー10を、加熱可能に構成されるタンディッシュ13により固液共存領域内の温度域に保持すると共に、このタンディッシュ13と水平連続鋳造機14とを接続して、スラリー10の自重で又はスラリー10に加圧力を作用させてスラリー10を水平連続鋳造機14に送り込み、連続的に送り込まれるスラリー10を、水平連続鋳造機14の注水手段15により連続的に急冷凝固させながら引き抜き、柱状のビレットや板材などを製造するようにしても良い。さらに、タンディッシュ13と目的形状を得る図示しない鋳型とを接続して、スラリー10の自重で又はスラリー10に加圧力を作用させてスラリー10を当該鋳型に送り込み、その後当該鋳型を水冷などにより急冷して、ビレットなどの加工用材料ではなく、機器部品などの最終製品を得るようにしても良い。また、連続鋳造装置においては、タンディッシュが等温保持を行う加熱鋳型に相当し、このタンディシュの上に傾斜冷却板が配置されて、溶解炉から溶湯が直接注がれるか、あるいはとりべから注ぐようにされる。このとき、傾斜冷却板の直上での溶湯温度は液相線温度+10℃〜45℃、好ましくは25℃〜35℃、より好ましくは30℃程度に設定される。そして、タンディシュ内での溶湯は、液相線温度−5〜10℃程度の範囲の温度で保持される。タンディシュで所定時間等温保持されることによって傾斜冷却板の上を流れる間にα晶を生成させてスラリーとなった溶湯は、タンディシュで所定時間等温保持される間にデンドライトを種として粒状に結晶を成長させ、そして、タンディシュの下に配置された水冷鋳型で周囲から冷却固化されると共に二次冷却部でさらに冷却される。