JPH10293331A - 二次非線形光学特性を有するイタコネート共重合体 - Google Patents

二次非線形光学特性を有するイタコネート共重合体

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JPH10293331A JP9315037A JP31503797A JPH10293331A JP H10293331 A JPH10293331 A JP H10293331A JP 9315037 A JP9315037 A JP 9315037A JP 31503797 A JP31503797 A JP 31503797A JP H10293331 A JPH10293331 A JP H10293331A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い非線形光学常数および熱的安定性を備え
た新たな非線形光学特性高分子材料ならびに非線形光学
材料を提供する。 【解決手段】 2個の側鎖に二次非線形光学活性を示す
基を有する置換イタコネート単位と、該単位と共重合体
を形成しうる単位からなるイタコネート共重合体;なら
びに該共重合体により製造される非線形光学材料。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、大容量光通信用の
超高速電気光学モジュレーターおよび半導体レーザーの
2倍周波数変換装置などに利用することができる、高性
能の二次非線形光学特性を有するイタコネート共重合体
に関し、またそれを用いる非線形光学材料に関する。
【0002】
【従来の技術】非線形光学材料は、既存の半導体微細技
術の限界を越えて、超高速、高密度で大容量の情報通
信、情報貯蔵および演算を可能にする光電子技術(広義
では光技術)における核心的な材料である。したがっ
て、半導体、強誘電性の無機結晶および有機化合物など
を対象として、非線形光学材料の開発が集中的に行われ
てきた。このような研究の結果、Chemical Reviews, 9
巻,1号,1〜278頁 (1994) に記載されているとお
り、共役π−電子を有する有機化合物が、無機系材料に
比べてはるかに優れた非線形光学特性を有するという事
実が、理論的にも実験的にも立証されており、これに対
する研究が盛んに行われてきた。
【0003】特に、米国特許第4,694,066号明
細書、同第4,775,574号明細書、同第4,76
2,912号明細書などに記載されている側鎖形の二次
非線形光学特性を有する有機高分子材料は、優れた加工
性、光学透明性および相溶性を示し、非線形光学結晶で
あるLiNbO3 を上回る高い非線形光学常数により、
共導波路型の超高速電気光学モジュレーター、および2
倍周波数変換による短波長光源の製造に最も理想的な材
料として評価されている。これらの材料は、Journal of
Polymer Science, 53巻,649〜663頁 (1994)
などに記載されているとおり、光通信の分野において、
数十GHz 帯域の超高速変調素子の試験製作に使用されて
いる。
【0004】このような二次非線形光学材料は、高分子
の側鎖に分子超分極率の高い基を結合させて製造でき
る。このようにして得られる高分子物質の薄膜は、スピ
ンコーティング法、ディップコーティング法など、通常
のコーティング技術によって製造できる。製造された二
次非線形光学高分子材料の薄膜は、適切な温度で電場分
極化することにより、上記の基の双極子モーメントが一
方に配向された非対称構造を形成する。このような非対
称配向構造は、二次非線形光学素子の特性と重要な関連
性がある。すなわち、素子の特性は、非対称構造の双極
子の配向度と一次的に比例して増加するため、優れた性
能の素子の製作には、最大の配向度が与えられる電場分
極化とともに、素子の製作または使用条件における配向
緩和を抑制することが、非常に重要である。一般に、分
子内の非対称構造は、コロナ放電、または薄膜の両面に
塗布されている電極を用いたコンタクト分極化により、
容易に形成できるが、素子の製作または使用条件におい
て、エネルギー的に安定した状態の対称構造への自然発
生的な熱的配向緩和を抑制させることには、特別な方法
が要求される。またこのような分子内の非対称構造は、
光通信の波長帯域である1.3〜1.5μm 領域におけ
る高い非線形光学効果の発現とともに、その重要性が特
に認識されている。
【0005】非常に高い二次非線形光学常数を有するこ
とは、光素子を駆動する際に加えられる電圧の減少をも
たらすので、その重要性がさらに増している。
【0006】自然発生的な熱的配向緩和を抑制する方法
には、大別すると(1)分極処理の際に、熱または光に
より化合物の架橋構造を形成する方法と、(2)ガラス
転移温度が高い側鎖形の二次非線形光学高分子を用いる
方法がある。
【0007】化合物の架橋構造の形成を利用するひとつ
の方法は、Applied Physics Letter, 56巻,26号,
2610〜2613頁 (1990) に記載されているとお
り、非線形光学特性を示す基を有するエポキシ系の熱硬
化性材料を使用するものである。この方法は、電場分極
化と熱硬化反応を適切に調節することにより、高度に架
橋された非対称の配向構造を形成させるものであって、
実際に非線形光学常数d33が42pm/Vで非常に高く、ま
た架橋構造による熱的配向緩和の抑制性能も優れてい
る。
【0008】しかし、このような硬化性の架橋高分子
は、高度の架橋構造の形成により密度の分布が一定せ
ず、また出発原料として低分子量の物質を使用している
ため、均質な薄膜の製造が困難であるという問題があっ
た。このような問題により、分極化された硬化薄膜が光
散乱を誘発し、かつd33値そのものが、今だに無機物質
のd33値に達しておらず、実際の光素子の製作には利用
されていない。
【0009】一方、第二の方法である側鎖形の二次非線
形光学高分子を使用する方法は、高分子量の物質を使用
するため、スピンコーティング法などの方法により、光
学的に均一な薄膜を容易に製造することができ、製造さ
れた薄膜をガラス転移温度近くで分極化し、これを冷却
固定させることにより、高い非線形光学常数を有しなが
らも光散乱損失のない、優れた光学的特性を有する薄膜
を製造することができる。そのため、集積化光素子の製
作において、理想的な材料として評価されている。
【0010】しかしながら、このような側鎖形高分子
は、素子の製作または使用環境において熱的配向緩和が
起こるのが最大の短所である。これに対する解決策とし
ては、ガラス転移温度が高い側鎖形の非線形光学高分子
の使用が提示されているが、この場合は、ガラス転移温
度が高くなるにつれて電場分極化が困難になり、また、
高温では非線形光学特性を示す基の分解を生じるという
別の問題点がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
のような二つの方法の問題を総合的に解決して、高い非
線形光学常数および熱的安定性を備えた、非線形光学特
性を有する新規な高分子化合物および非線形光学材料を
提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的を達成するために鋭意研究を行った結果、イタコン酸
の2個のカルボキシル基に、二次非線形光学特性を示す
基を導入した繰返し単位を有するイタコネート共重合体
が、上記の目的に適合することを見出して、本発明を完
成するに至った。
【0013】すなわち、本発明は、式(I):
【化3】 (式中、ITCN−NLO単位は、一般式(II):
【化4】 (式中、Xは単結合、炭素数1〜12のアルキレン基ま
たは炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基を表し;
Yはエーテル結合、エステル結合、アミド結合、カルバ
メート結合、炭素数1〜5のアルキイミノ結合およびス
ルホン結合からなる群より選ばれる2価の結合を表し;
NLOは非置換であるか、電子供与基および/または電
子吸引基で置換された共役芳香性基である二次非線形光
学活性基を表す)で示される置換イタコネート単位を表
し;MO単位は、該ITCN−NLO単位と共重合体を
形成しうる単位を表し;mおよびnは、m+nが5〜1
0,000、m/(m+n)が0.05〜0.95であ
る数を表す)で示される側鎖形の二次非線形イタコネー
ト共重合体に関する。
【0014】また、本発明は、このような側鎖形の二次
非線形光学高分子を用いる非線形光学材料に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明のイタコネート共重合体
は、二次非線形光学特性を示す基を側鎖に有する側鎖形
の二次非線形光学高分子化合物であり、このような側鎖
を有するイタコン酸誘導体と、それと共重合しうる他の
単量体との共重合反応によって得られる、式(I)で示
される共重合体である。なお、本明細書において、式
(I)をはじめとする共重合体の化学式は、繰返し単位
の種類と数を示すものであって、必ずしもブロック共重
合体を意味しない。
【0016】式(I)において、ITCN−NLOは、
一般式(II)に示されるような、イタコン酸のカルボキ
シル基にXおよびYを介してNLOが結合した置換イタ
コネート単位である。Xは単結合であるか、換言すれば
該カルボキシル基にYが直接結合することを意味する
か;メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラエチレ
ン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレ
ン、デカメチレン、ドデカメチレンのような炭素数1〜
12、好ましくは炭素数1〜6のアルキレン基;および
フェニレン、ナフチレン、ビフェニレンのような炭素数
6〜12の2価の芳香族炭化水素基を表す。Yはエーテ
ル結合、エステル結合、アミド結合、カルバメート結
合、炭素数1〜5のアルキルイミノ結合またはスルホン
結合からなる群より選ばれる2価の結合団を表す。アル
キルイミノ結合としては、メチルイミノ結合(−NCH
3 −)、エチルイミノ結合、プロピルイミノ結合、ブチ
ルイミノ結合およびペンチルイミノ結合が挙げられる。
【0017】NLOは、二次非線形光学特性を有する共
役芳香環系の原子団(基)であれば特に限定されない。
該NLOとしては、フェニル、スチリルフェニル、フェ
ニルアゾフェニル、ビフェニリルのような共役芳香性基
をはじめ;メトキシ、エトキシのようなアルコキシ基;
メチルチオのようなアルキルチオ基;メチルアミノ、エ
チルアミノ、プロピルアミノ、ヘキシルアミノなどの炭
素数1〜6のアルキルアミノ基;およびN−ピペラジニ
ル、ピペリジノ、1−ピロリジニルのような脂環式アミ
ノ基などの電子供与基;および/またはニトロ基;ニト
リル基;ジシアノメチル、トリシアノエチレニルのよう
なニトリル置換炭化水素基;およびメチルスルホニル、
ニトロフェニルスルホニルのような置換スルホニル基;
および炭素数1〜3のペルフルオロアルキル基などの電
子吸引基で置換された共役芳香性基が例示される。この
ような二次非線形光学特性を有するイタコネートとして
は、ビス〔2−〔N−メチル−N−〔4−(4−ニトロ
スチリル)フェニル〕アミノ〕エチル〕イタコネート、
ビス〔6−〔4−(4−ニトロスチリル)フェニルオキ
シ〕ヘキシル〕イタコネートなどが特に好ましい。
【0018】本発明の共重合体の単量体として使用され
る二次非線形活性イタコネートは、米国特許第4,80
8,332号明細書などに開示されている既存のアクリ
ル系エステルと類似しており、得られる高分子化合物の
繰返し単位当り2個の非線形活性端を有することで相違
している。このような二次非線形活性イタコネートを単
量体として用いることにより、生成する共重合体は、通
常のアクリル系エステルの重合体と同等またはそれ以上
の優れた溶解性およびフィルム形成性を有する。
【0019】式(I)において、MOは、上述の非線形
活性基を有するイタコネートと共重合しうる単量体から
得られる繰返し単位であり、該単量体としては、メタク
リル酸メチル、メタクリル酸グリシジルのようなメタク
リル酸エステル;および4−ヒドロキシフェニルマレイ
ミドが好ましく、1種を用いても、2種以上を併用して
もよい。
【0020】mおよびnは、m+nが5〜10,00
0、好ましくは15〜1,000であり、m/(m+
n)が0.05〜0.95となる範囲で選択される。
【0021】本発明のイタコネート共重合体の製造に用
いられる非線形活性基を含むイタコネートは、たとえ
ば、イタコン酸を、分子中に該二次非線形活性基を含む
アルコールと共通溶媒中で反応させて合成できる。この
ようなアルコールとしては、4−(N−ヒドロキシエチ
ル−N−メチルアミノ)−4′−ニトロスチルベン、4
−(6−ヒドロキシヘキシル)−4′−ニトロスチルベ
ンなどが例示される。溶媒としてはテトラヒドロフラン
のようなエーテル類;およびトルエンのような炭化水素
類が例示される。
【0022】本発明のイタコネート共重合体は、側鎖の
末端に上記の非線形活性基を含むイタコネートと、それ
と共重合可能な任意の重合性単量体とを、一般的な重合
工程により共重合させて製造することができる。本発明
の高分子材料は、この2種類の単量体を所定の比率で共
通溶媒に溶解した後、開始剤を添加して、通常の重合方
法により容易に製造することができる。溶媒としてはN
−メチルピロリドンなどが例示され、開始剤としてはア
ゾビスイソブチロニトリルなどが例示される。
【0023】本発明のイタコネート共重合体の好ましい
例としては、一般式:
【化5】 (式中、X、Y、NLO、mおよびnは前述のとおり)
で示される、メタクリル酸メチルと非線形活性基を含む
イタコネートとの共重合体が挙げられる。
【0024】特に、本発明の共重合体を、非線形活性基
を含むイタコネートと共重合させる単量体として、4−
ヒドロキシフェニルマレイミドおよび/またはメタクリ
ル酸グリシジルを用いる場合、得られた共重合体の分子
鎖内または分子鎖間で、架橋結合を形成することが可能
である点で好ましい。このことにより、ガラス転移温度
近くの高温で電場分極処理を行った後、それより約20
℃ないし30℃の高い温度で、メタクリ酸グリシジルの
エポキシ基相互のホモ架橋反応 (HomogeneousCrosslink
ing) 、または4−ヒドロキシフェニルマレイミドのヒ
ドロキシ基と付加された二官能性または多官能性のイソ
シアネートとのヘテロ架橋 (Heterogeneous Crosslinki
ng) を、徐々に進行させることができる。また、熱的な
架橋反応を行うのみならず、ヒドロキシフェニルマレイ
ミドの側鎖のヒドロキシ基に、カルコンまたはシンナモ
イル基含有化合物を反応させたマレイミドを含む共重合
体を用い、特定波長の光による光架橋を行わせることが
できる。さらに、メタクリル酸−4−ニトロフェニルを
共重合させることにより、光架橋促進剤成分を含む三元
共重合体を合成することもできる。本発明者らは、この
ような共重合が可能であり、熱または光架橋が可能な単
量体を使用して、特に高い二次非線形光学常数を有し、
優れた二次非線形光学特性を有する、置換イタコネート
単位を有する新規な共重合体を合成することに成功し
た。
【0025】このように、本発明の共重合体は、電場分
極処理の際、二次非線形特性を有する既存の高分子より
比較的低いガラス転移温度により、90ないし110℃
程度で分極現象が完了する。また、本発明のイタコネー
ト共重合体は、素子機能の熱安定性を与える方法として
最近脚光を浴びている熱架橋を、約140〜150℃程
度で進めることができるため、メタクリル酸グリシジル
とメタクリル酸メチルとの共重合体の場合に見られるよ
うな、ガラス転移温度と架橋温度とが近接するために媒
質内の双極子分極が最適化される以前に架橋反応が進行
してしまい、分極効果が弱くなるという短所を完全に克
服することができる。
【0026】メタクリル酸グリシジルによりホモ架橋さ
れるか、またはヒドロキシフェニルマレイミドとイソシ
アネートによりヘテロ架橋された本発明の高分子薄膜の
場合、図1に示すように、二次非線形光学常数および電
気光学常数が、100℃以上の温度でも非常に優れた持
続性を示す。したがって、本発明のイタコネート共重合
体は、前述の硬化性高分子と側鎖形高分子が有する問題
点を同時に解決することが可能な、すなわち、加工性と
熱安定性を兼備した優れた特性を有する高分子材料であ
る。また、1個の繰返しイタコネート単位に2個の二次
非線形活性基(発色団)を導入することができる点は、
本発明の高分子材料の、素子としての応用面で、特異な
ものとして評価できる。
【0027】本発明のイタコネート共重合体材料のさら
に重要な特徴として、これらの材料と、ある種の非晶質
の高分子を形成することができる単量体との、ラジカル
重合またはイオン重合を容易に行うことができ、二元お
よび三元共重合体を形成することも可能である。合成さ
れた共重合体のガラス転移温度は、約90〜110℃程
度であって、電場下で分極処理が完結された後、イソシ
アネートによる架橋反応またはエポキシ基による架橋反
応を、130〜150℃程度で行うことができる。架橋
温度にまで加熱する以前は非常に流動的な直鎖状の高分
子であって、しかも架橋反応によって形成される側鎖が
長いほど、その分子の分極度が高くなることが確認され
た。架橋剤の添加のみならず、エポキシ基とアミノ基と
による熱架橋は、非線形特性を持続させるのに大きな影
響を及ぼす。さらに、熱架橋以外にも、本発明者らが1
995年に試みたように、共重合体がメタクリル酸ニト
ロフェニル単量体から得られる単位と、ヒドロキシフェ
ニルマレイミドのヒドロキシ基に塩化シンナモイルを反
応させて得られる4−シンナモイルオキシフェニルマレ
イミド単量体から得られる単位とを含む場合、紫外線波
長領域における光架橋反応により、二重結合が開裂して
シクロブタン形の架橋構造を形成し、熱安定性に寄与す
る。したがって、本発明のイタコネート共重合体の応用
性は極めて大きい。
【0028】特に、本発明の高分子の特徴は、高い二次
非線形光学常数を示すことである。二次非線形光学常数
33は、二次非線形活性基の密度に単純に比例する。イ
タコネートは、前述のように、二次非線形活性基を有す
るアルコールを直接エステル化反応またはミズノフ反応
させることにより、イタコン酸に存在する2個のカルボ
キシル基をともに置換して、2個の二次非線形活性基を
導入することができるので、共重合体中の二次非線形活
性基の密度を上げることができる。
【0029】反応条件によっては、1個の酸基のみが二
次非線形活性基で置換される場合が生ずるが、反応条件
を適切に選択することによってこれを回避するか、また
はこのようにして生成された一置換体を除去することは
可能である。このように、2個の二次非線形活性基を1
個の繰返し単位に導入することにより、低いガラス転移
温度で電場分極による非対称構造が効率的に形成され、
側鎖形の双極子配向性が異なるメタクリル酸メチル系高
分子の場合より高い二次非線形光学常数が得られるとい
う効果を示す。さらに、前述のような架橋構造を形成で
きる共単量体と共重合させて、双極子配合の分極処理と
架橋形成を順次的に調節することにより、高い非線形光
学常数と熱安定性を同時に達成することができる。
【0030】本発明の二次非線形光学特性を有するイタ
コネート共重合体より、任意の形状の非線形光学材料を
製造できる。
【0031】
【発明の効果】本発明によって、非線形光学活性基を側
鎖に有するイタコネート単量体を共重合させることによ
り、側鎖形の二次非線形光学特性を有する高分子化合物
を製造することができる。本発明のイタコネート共重合
体およびそれを用いる非線形光学材料は、前述のよう
に、1個のイタコネート単位に2個の非線形活性基を有
し、高い二次非線形光学常数を有する。該共重合体を架
橋させることにより、上記の二次非線形光学特性と、そ
の高い熱安定性を有する高分子化合物が得られる。
【0032】すなわち、本発明のイタコネート共重合体
は、共重合単位を選択することにより、高温における熱
架橋または特定波長における光架橋を行うことができ
る。このことと、イタコネート単位の採用で非線形活性
基(発色団)の密度を増すことにより、優れた耐熱性と
ともに、優れた非線形光学効果が発現する。特に、本発
明の主な成果として注目される高い二次非線形光学常数
は、素子において非常に重要な要素であり、電気光学変
調素子などに用いると、低い駆動電圧により光を制御で
きる。このような性能により、本発明のイタコネート共
重合体を用いる光素子は、次世代の光素子として有用で
ある。
【0033】
【実施例】以下、分子中に2個の二次非線形活性基を有
するイタコネートを他の単量体と共重合体させた、本発
明の側鎖形の非線形光学特性高分子の合成およびその特
性を、実施例、比較例および評価例によって具体的に説
明する。本発明は、これらの実施例によって限定される
ものではない。
【0034】実施例1 本実施例は、メタクリル酸メチル単位と、4−(N−ヒ
ドロキシエチル−N−メチルアミノ)−4′−ニトロス
チルベンで変性されたイタコネート単位とを共重合体の
成分として有する、側鎖形の非線形光学特性高分子の合
成例である。
【0035】単量体1の合成 イタコン酸785mg(6.03mmol)をテトラヒドロフ
ラン10mlに溶解した後、0℃でジイソプロピルアゾジ
カルボキシレート(DIAD)2.14g(10.6mm
ol)を添加した。ついで4−(N−ヒドロキシエチル−
N−メチルアミノ)−4′−ニトロスチルベン3.00
g(10.1mmol)とトリフェニルホスフィン2.78
g(10.6mmol)をテトラヒドロフラン20mlに溶解
した溶液を、30分かけて添加した後、2時間還流し、
常温に冷却すると、橙色の結晶が生じた。これを減圧で
濾過して、固体を得た。この固体をアセトニトリルで再
結晶し、真空乾燥して、59.6%(2.08g)の収
率で目的物を得た。
【0036】得られた目的物の融点、 1H−NMRのδ
値および元素分析の結果は、次のとおりであり、式(II
I)に示す反応により、ビス〔2−〔N−メチル−N−
〔4−(4−ニトロスチリル)フェニル〕アミノ〕エチ
ル〕イタコネート(以下、単量体1という)が得られた
ことを確認した。 融点:155.5℃(DSCによる);1 H−NMR(200MHz,DMSO−d6):δ 8.18 (d,
4H), 7.79 (d, 4H), 7.51 (d, 4H), 7.40 (d, 2H), 7.
10 (d, 2H), 6.72 (m, 4H), 6.12 (s, 1H), 5.72 (s, 1
H), 4.20 (t, 4H), 3.61 (t, 4H), 3.22 (s, 2H), 2.98
(d, 6H) ; 元素分析:C393848 (690.75);理論値(%):
C, 67.8;H, 5.54;N, 8.11;実測値(%):C, 6
7.5;H, 5.61;N, 8.09.
【0037】
【化6】
【0038】共重合体1の合成 メタクリル酸メチル(MMA)0.21g(2.11mm
ol)と単量体1の1.46g(2.11mmol)とを、N
−メチルピロリドン(以下、NMPという)100mlに
溶解して重合管に入れ、ついで重合開始剤としてアゾビ
スイソブチロニトリルを5モル%濃度に溶解して加え
た。冷却、解凍、真空処理の繰返しにより重合管を完全
に脱気した後、管を密閉して、65℃の温度で撹拌しな
がら重合反応を48時間行った。得られた重合体溶液を
メタノールに注いで重合体を沈殿させ、濾過して重合体
を得た。この重合体をテトラヒドロフランに溶解し、メ
タノールで再沈殿して精製した後、60℃の真空オーブ
ンで72時間乾燥して、目的物を得た。同様の実験を、
メタクリル酸メチルと単量体1のモル比を1:2として
行った。重合に用いた溶液と、それぞれ得られた重合体
を、UV−VIS分光光度法により、染料の吸収強度で
定量した。その結果は表1に示すとおりであり、式(I
V)に示す共重合体1−Aおよび1−Bが得られたこと
を確認した。
【0039】
【表1】
【0040】
【化7】
【0041】実施例2 本実施例は、メタクリ酸メチル単位と、4−(6−ヒド
ロキシヘキシル)−4′−ニトロスチルベンで変性され
たイタコネート単位とを共重合体の成分として有する、
側鎖形の非線形光学特性高分子の合成例である。
【0042】単量体2の合成 イタコン酸2.25g(17.3mmol)と4−(6−ヒ
ドロキシヘキシル)−4′−ニトロスチルベン10.3
g(31.5mmol)とをトルエン80mlに溶解した後、
濃硫酸1滴と触媒量のp−トルエンスルホン酸(p−T
sOH)を加えた。ディーン−シュタルク装置を利用し
て、反応中に生成した水を除去しながら48時間撹拌
し、常温に冷却した。反応物を濃縮した後、酢酸エチル
溶液で抽出し、炭酸水素ナトリウム飽和溶液と塩水で洗
浄し、ついで濃縮して固体を得た。クロロホルムで再結
晶して、81.7%(10.0g)の収率で目的物を得
た。
【0043】得られた目的物の融点、 1H−NMRのδ
値および元素分析の結果は、次のとおりであり、式
(V)に示す反応により、ビス〔6−〔4−(4−ニト
ロスチリル)フェニルオキシ〕ヘキシル〕イタコネート
(以下、単量体2という)が得られたことを確認した。 融点:143.6℃(DSCによる);1 H−NMR(200MHz,DMSO−d6):δ 8.15 (d,
4H), 7.74 (d, 4H), 7.53 (d, 4H), 7.40 (d, 2H), 7.
20 (d, 2H), 6.90 (d, 4H), 6.19 (s, 1H), 5.81 (s, 1
H), 3.89-4.09 (m, 8H), 3.34 (s, 2H), 1.35-1.67 (m,
16H); 元素分析:C4548210 (776.33) ;理論値
(%):C, 69.5;H, 6.23;N, 3.61;実測値
(%):C, 68.9;H, 6.80;N, 3.58.
【0044】
【化8】
【0045】共重合体2の合成 メタクリル酸メチル0.50g(4.99mmol)と単量
体2の3.88g(4.99mmol)とを、NMP25ml
に溶解して重合管に入れ、ついで重合開始剤としてアゾ
ビスイソブチロニトリルを5モル%濃度に溶解して加え
た。冷却、解凍、真空処理の繰返しにより重合管を完全
に脱気した後、管を密閉して、65℃の温度で撹拌しな
がら重合反応を48時間行った。得られた重合体溶液を
メタノールに注いで重合体を沈殿させ、減圧濾過して重
合体を得た。この重合体をテトラヒドロフランに溶解
し、メタノールで再沈殿を繰り返して精製した後、60
℃の真空オーブンで72時間乾燥して、目的物を得た。
同様の実験を、メタクリル酸メチルと単量体2のモル比
を1:2として行った。それぞれ得られた重合体を、染
料をDMFに溶解した溶液を基準溶液とし、UV−VI
S分光光度法により、吸収強度で定量した。その結果は
表2に示すとおりであり、式(VI)に示す共重合体2−
Aおよび2−Bが得られたことを確認した。
【0046】
【表2】
【0047】
【化9】
【0048】実施例3 本実施例は、4−ヒドロキシフェニルマレイミド単位
と、4−メチルアミノ−4′−ニトロスチルベンで変性
されたイタコネート単位とを共重合体の成分として有す
る、側鎖形の非線形光学特性高分子の合成例である。
【0049】共重合体3の合成 4−ヒドロキシフェニルマレイミド(HPMI)0.4
1g(2.17mmol)と単量体1の1.50g(2.1
7mmol)とを、NMP10mlに溶解して重合管に入れ、
ついで重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを
5モル%濃度に溶解して加えた。冷却、解凍、真空処理
の繰返しにより重合管を完全に脱気した後、管を密閉し
て、65℃の温度で撹拌しながら重合反応を48時間行
った。得られた重合体溶液をメタノールに注いで重合体
を沈殿させ、濾過して重合体を得た。この重合体をテト
ラヒドロフランに溶解し、メタノールで再沈殿を繰り返
して精製した後、50℃の真空オーブンで72時間乾燥
して、目的物を得た。同様の実験を、4−ヒドロキシフ
ェニルマレイミドと単量体1のモル比を1:2として行
った。それぞれ得られた重合体を、核磁気共鳴法により
定量した。その結果は表3に示すとおりであり、式(VI
I)に示す共重合体3−Aおよび3−Bが得られたことを
確認した。
【0050】
【表3】
【0051】
【化10】
【0052】実施例4 本実施例は、メタクリル酸グリシジル単位と、4−メチ
ルアミノ−4′−ニトロスチルベンで変性されたイタコ
ネート単位とを共重合体の成分として有する、側鎖形の
非線形光学特性高分子の合成例である。
【0053】共重合体4の合成 メタクリル酸グリシジル(GMA)0.20g(1.4
5mmol)と単量体1の1.00g(1.45mmol)と
を、NMP5mlに溶解して重合管に入れ、ついで重合開
始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを5モル%濃度
に溶解して加えた。冷却、解凍、真空処理の繰返しによ
り重合管を完全に脱気した後、管を密閉して、65℃の
温度で撹拌しながら重合反応を48時間行った。得られ
た重合体溶液をメタノールに注いで重合体を沈殿させ、
濾過して重合体を得た。この重合体をテトラヒドロフラ
ンに溶解し、メタノールで再沈殿して精製した後、60
℃の真空オーブンで72時間乾燥して、目的物を得た。
同様の実験を、メタクリル酸グリシジルと単量体1のモ
ル比を1:2として行った。それぞれ得られた重合体
を、UV−VIS分光光度法により、染料の吸収強度で
定量した。その結果は表4に示すとおりであり、式(VI
II)に示す共重合体4−Aおよび4−Bが得られたこと
を確認した。
【0054】
【表4】
【0055】
【化11】
【0056】比較例1 本発明の、側鎖に非線形光学特性を示す基を有するイタ
コネート単位を繰返し単位として有する非線形光学高分
子の特性を、既存の側鎖形の非線形光学高分子の特性と
比較するために、米国特許第4,694,066号明細
書に開示されている、メタクリル酸メチル単位と、同様
に側鎖に非線形光学特性を示す基を有するメタクリレー
ト単位との共重合体である、側鎖形の非線形光学特性共
重合体高分子を合成した。
【0057】共重合体5の合成 メタクリル酸メチル2.76g(27.3mmol)と4−
〔(メタクリロイルエチル)メチルアミノ〕−4′−ニ
トロスチルベン10.0g(27.3mmol)とを、クロ
ロベンゼン25mlに溶解して、100mlの2口フラスコ
に入れ、ついでアゾビスイソブチロニトリル0.45g
(2.73mmol)を添加した後、30分間アルゴンガス
を通してアルゴン雰囲気に置換した。75℃の温度で撹
拌しながら重合反応を18時間行った。得られた重合体
溶液を冷メタノールに注いで重合体を沈殿させ、この沈
殿物をメタノールで数回洗浄した後、70℃の真空オー
ブンで72時間乾燥して、式(IX)に示す共重合体5を
得た。
【0058】
【化12】
【0059】評価例 同様に4−メチルアミノ−4′−ニトロスチルベンによ
って誘導された非線形光学活性基を側鎖に有し、同様に
メタクリル酸メチルと共重合を行った、本発明の置換イ
タコネート系共重合体である、実施例1で得られた共重
合体1−Aと、比較のための置換メタクリレート系共重
合体である、比較例1で得られた共重合体5との二次非
線形光学特性を相互に比較した。
【0060】すなわち、透明マイクロスライドガラス
に、共重合体1−Aと共重合体5をそれぞれテトラヒド
ロフランとシクロヘキサノンの混合溶液に溶解した溶液
を、それぞれスピンコーティングして乾燥させた後、測
定用試料として使用した。薄膜の厚さはテンコ表面分析
器(解像度5Å)で測定した。製造された薄膜の二次非
線形特性を発現させるために、電場分極処理を行った。
該処理は、タングステンワイヤに接地したアルミニウム
平板構造に設計されたコロナ分極処理法を用いた。試料
をコロナ放電ユニットに載せて、下部に位置するアルミ
ニウム平板の温度を、示差熱分析装置により測定したガ
ラス転移温度から約10℃低い温度まで上昇させ、つい
で高圧電源装置からタングステンワイヤに5〜6kVのD
C電圧を加えた。この条件に約15分間維持した後、3
0分間冷却して、下部平板の温度を常温にした。この
際、加えたDC電圧を続いて維持し、完全に常温に冷却
した後に電場を除去した。
【0061】試料の二次非線形光学常数の測定は、2倍
周波数変換法を用いて、Nd:YAGパルスレーザーを
光源とする波長1,064nmの光を使用した。基準とな
る2倍周波数信号は、Y軸で切断された水晶を使用して
発生させ、公知のメーカーフリンジ法により、非線形常
数を計算した。
【0062】本発明の共重合体1と比較例1の共重合体
5の非線形光学常数d33の初期値は、それぞれ90pm/V
および45pm/Vであって、1個のイタコネート単量体に
2個の非線形光学基が含まれている本発明のイタコネー
ト共重合体が、比較例1のメタクリレート系共重合体の
約2倍の、高い二次非線形効果を示した。
【0063】スピンコートして乾燥した後、150℃の
温度に15分加熱して共重合体を架橋させたほかは上記
と同様にして、実施例3および4で得られた本発明の共
重合体3−Aおよび4−Aについて、同様の実験を行っ
た。その結果を、上記の共重合体1−Aおよび5の測定
結果とともに、表5に示す。また、各試料を100℃に
加熱して、加熱時間4時間までの非線形光学常数d33
の変化を測定した。その結果を図1に示す。図1におい
て、(d33)0は非線形光学常数の初期値を、(d33)t
100℃に加熱して所定時間(分)経過後の非線形光学
常数を示す。
【0064】
【表5】
【0065】図1に示されるように、本発明による新規
のイタコネート共重合体は、すべて高い二次非線形光学
常数を示し、そのうえ、該常数の高温における安定性
は、加熱による架橋を行った本発明の共重合体3−Aお
よび4−Aの方が、比較例1の共重合体5よりはるかに
優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の側鎖形の二次非線形光学特性イタコネ
ート共重合体の二次非線形光学常数(d33)の高温安定
性と、側鎖形の二次非線形光学特性メタクリレート共重
合体の二次非線形光学常数の高温安定性とを比較したグ
ラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C08F 222/24 C08F 222/24 222/36 222/36 222/40 222/40 C09K 3/00 C09K 3/00 U 9/02 9/02 Z

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式(I): 【化1】 (式中、ITCN−NLO単位は、一般式(II): 【化2】 (式中、Xは単結合、炭素数1〜12のアルキレン基ま
    たは炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基を表し;
    Yはエーテル結合、エステル結合、アミド結合、カルバ
    メート結合、炭素数1〜5のアルキルイミノ結合および
    スルホン結合からなる群より選ばれる2価の結合を表
    し;NLOは非置換であるか、電子供与基および/また
    は電子吸引基で置換された共役芳香性基である二次非線
    形光学活性基を表す)で示される置換イタコネート単位
    を表し;MO単位は、該ITCN−NLO単位と共重合
    体を形成しうる単位を表し;mおよびnは、m+nが5
    〜10,000、m/(m+n)が0.05〜0.95
    である数を表す)で示される側鎖形の二次非線形イタコ
    ネート共重合体。
  2. 【請求項2】 単位式(I)において、m+nが15〜
    1,000である、請求項1記載のイタコネート共重合
    体。
  3. 【請求項3】 電場分極化後に鎖間の熱架橋または光架
    橋が可能である、請求項1記載のイタコネート共重合
    体。
  4. 【請求項4】 前記MOが、メタクリル酸メチル単位、
    4−ヒドロキシフェニルマレイミド単位またはメタクリ
    ル酸グリシジル単位である、請求項1記載のイタコネー
    ト共重合体。
  5. 【請求項5】 請求項1記載のイタコネート共重合体に
    より製造される非線形光学材料。
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