JPH10292186A - 生分解性潤滑油 - Google Patents

生分解性潤滑油

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JPH10292186A
JPH10292186A JP5624698A JP5624698A JPH10292186A JP H10292186 A JPH10292186 A JP H10292186A JP 5624698 A JP5624698 A JP 5624698A JP 5624698 A JP5624698 A JP 5624698A JP H10292186 A JPH10292186 A JP H10292186A
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lubricating oil
alcohols
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Yasuyuki Kawahara
康行 川原
Mikio Saitou
未来生 齋藤
Makiko Shinojima
真希子 篠島
Koji Takahashi
孝司 高橋
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 安価で、生分解性に優れ、且つ流動性、潤滑
性及び酸化安定性も良好な潤滑油を提供する。 【構成】 芳香族ポリカルボン酸及びその無水物よりな
る群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を酸成分と
し、炭素数1〜18の脂肪族直鎖状飽和アルコール、炭
素数2〜18の脂肪族直鎖状不飽和アルコール、炭素数
3〜18の脂肪族分岐鎖状飽和アルコール及び炭素数3
〜10の脂環式飽和アルコールよりなる群から選ばれる
1種又は2種以上の一価アルコール及び炭素数2〜18
の多価アルコールの1種又は2種以上とをアルコール成
分としてエステル化して得られる芳香族ポリカルボン酸
系エステルの1種又は2種以上を含有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生分解性潤滑油に
関し、より詳しくは芳香族ポリカルボン酸系エステルの
1種若しくは2種以上を含有する生分解性潤滑油に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、地球環境問題への意識の高まりか
ら、潤滑油に対しても生分解性が要求されるようにな
り、天然油脂やその誘導体エステルが用いられている。
例えば、建設機械の油圧作動油基油には欧州を中心に菜
種油が広く用いられている。
【0003】ところが、この菜種油系作動油は、オレイ
ン酸、リノール酸、リノレン酸など、二重結合を持つ不
飽和脂肪酸を含むため酸化安定性が劣る傾向がある。こ
れに対し、従来の合成エステルは、優れた酸化安定性を
示す一方、生分解性が不良であったが、最近では良好な
生分解性を併せもった合成エステル系作動油の検討が進
められている。そのような合成エステルとして様々なポ
リオールエステルが挙げられるが、性能、コスト面でま
だ問題がある。例えば、トリメチロールプロパンのオレ
イン酸エステルは酸化安定性が低く、オレイン酸の代わ
りに酸化安定性の良好な飽和脂肪酸、例えばイソステア
リン酸を用いたエステルは高価であり、菜種油系に比べ
2倍以上のコストがかかる。又、ヤシ油から誘導した混
合脂肪酸メチルエステル及びパルミチン酸2−エチルヘ
キシルなどの脂肪酸モノエステルは低温流動性に劣る。
【0004】一方、フタル酸、一価アルコール及び二価
アルコールを併用した複合エステルは高粘度を有し、可
塑剤として有用であることが知られている。例えば、特
開昭61−76442号ではフタル酸を含む各種二塩基
酸、一価アルコール及び二価アルコールからなる複合エ
ステルの製造法についての記載があり、可塑剤としての
評価を同時に行っている。ところが、上記公開公報で
は、潤滑油としての性能評価は行っておらず、更に、生
分解性の点については全く言及されていない。
【0005】上記のごとく、潤滑油としての性能バラン
スが良好で、安価であり、且つ生分解性の良好なエステ
ルは従来知られていなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、安価で、生
分解性に優れ、且つ流動性、潤滑性及び酸化安定性も良
好な潤滑油を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を達成すべく鋭意検討の結果、特定の構造を有する芳香
族ポリカルボン酸系エステルが潤滑油として優れた性能
を有し、且つ生分解性が良好である点を新たに見いだ
し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】即ち、本発明に係る生分解性潤滑油は、一
般式(1)
【化2】 [nは2〜4の整数を表す]で表される芳香族ポリカル
ボン酸及びその無水物よりなる群から選ばれる1種又は
2種以上の化合物を酸成分とし、炭素数1〜18の脂肪
族直鎖状飽和アルコール、炭素数2〜18の脂肪族直鎖
状不飽和アルコール、炭素数3〜18の脂肪族分岐鎖状
飽和アルコール及び炭素数3〜10の脂環式飽和アルコ
ールよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の一価ア
ルコール及び炭素数2〜18の多価アルコールの1種又
は2種以上とをアルコール成分としてエステル化して得
られる芳香族ポリカルボン酸系エステル(以下「本エス
テル」という。)の1種又は2種以上を含有することを
特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】本エステルは、例えば、本発明に
係る酸成分とアルコール成分とを常法に従って、好まし
くは窒素などの不活化ガス雰囲気下、エステル化触媒の
存在下又は無触媒下で加熱攪拌しながらエステル化する
ことにより調製される化合物であるが、ここで適用され
るアルコール成分は、特定の構造を有する一価アルコー
ルと多価アルコールとを併用することにその特徴を有す
る。
【0010】本エステルを構成する酸成分としては、ベ
ンゼン環にカルボン酸残基が2〜4個結合した芳香族ポ
リカルボン酸又はその無水物であり、夫々単独で若しく
は2種以上を適宜混合して用いることが可能である。具
体的にはフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレ
フタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、トリ
メシン酸、ピロメリット酸及び無水ピロメリット酸など
が例示され、中でもフタル酸、無水フタル酸、イソフタ
ル酸及びテレフタル酸が好ましい。
【0011】本エステルを構成するアルコール成分の一
種である一価アルコールとしては、炭素数1〜18の脂
肪族直鎖状飽和アルコール、炭素数2〜18の脂肪族直
鎖状不飽和アルコール、炭素数3〜18の脂肪族分岐鎖
状飽和アルコール及び炭素数3〜10の脂環式飽和アル
コールよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の一価
アルコールが挙げられる。
【0012】脂肪族直鎖状飽和アルコールとしては、メ
タノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノ
ール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプ
タノール、n−オクタノール、n−ノナノール、n−デ
カノール、n−ウンデカノール、n−ドデカノール、n
−トリデカノール、n−テトラデカノール、n−ペンタ
デカノール、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノ
ール、9−オクタデセノールなどが例示され、中でもn
−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノー
ル、n−オクタノール、n−ノナノール、n−デカノー
ル、n−ウンデカノール、n−ドデカノール、n−トリ
デカノール、n−テトラデカノール、n−ペンタデカノ
ールなどが推奨される。
【0013】脂肪族直鎖状不飽和アルコールとしては、
オレイルアルコール、エライジルアルコール、リノレイ
ルアルコール、リノレニルアルコール、エレオステアリ
ルアルコール、2−デセン−1−オール、2−ウンデセ
ン−1−オール、2−テトラデセン−1−オール、2−
ペンタデセン−1−オール、2−ヘキサデセン−1−オ
ール、2−ヘプタデセン−1−オール、2−オクタデセ
ン−1−オール、10−ウンデセン−1−オール、11
−ドデセン−1−オール、12−トリデセン−1−オー
ル及び15−ヘキサデセン−1−オールなどが例示され
る。
【0014】脂肪族分岐鎖状飽和アルコールとしては、
イソプロパノール、イソブタノール、sec−ブタノー
ル、イソペンタノール、イソヘキサノール、2−メチル
ヘキサノール、1−メチルヘプタノール、2−メチルヘ
プタノール、2−エチルヘキサノール、3,5,5−ト
リメチルヘキサノール、2,6−ジメチル−4−ヘプタ
ノール、イソノナノール、イソデカノール、イソウンデ
カノール、イソトリデカノール、イソペンタデカノー
ル、イソオクタデカノールなどが例示され、中でも2−
メチルヘキサノール、1−メチルヘプタノール、2−メ
チルヘプタノール、2−エチルヘキサノール、イソノナ
ノール、イソデカノール、イソウンデカノール、イソト
リデカノール、イソペンタデカノール、イソオクタデカ
ノールなどが推奨される。
【0015】脂環式アルコールとしては、シクロヘキサ
ノール、メチルシクロヘキサノール、ジメチルシクロヘ
キサノールなどが例示される。
【0016】本エステルを構成するアルコール成分の他
の一種である多価アルコールとしては、炭素数2〜15
の二価アルコール、炭素数3〜12の三価アルコール及
び炭素数4〜15の四価アルコールなどが挙げられる。
【0017】二価アルコールとしては、エチレングリコ
ール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピ
レングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブ
タンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペン
タンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル
−1,5−ペンタンジオール、オクタンジオール、ネオ
ペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3
−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,
3−プロパンジオール、イソプレングリコール、ヘキシ
レングリコール、1,4−ベンゼンジメタノール、1,
4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAな
どが例示され、中でもエチレングリコール、1,2−プ
ロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、
1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、
1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペン
タンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコ
ール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオ
ール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジ
オール、イソプレングリコール、ヘキシレングリコール
などが推奨される。
【0018】三価アルコールとしては、グリセリン、
1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタ
ン、トリメチロールプロパン、トリメチロールオクタン
などが例示され、中でもグリセリン、トリメチロールプ
ロパンなどが推奨される。
【0019】四価以上の多価アルコールとしては、ジト
リメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン、
ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが
例示され、中でもペンタエリスリトールが推奨される。
【0020】エステル化反応を行うに際し、アルコール
成分は、例えば、酸成分1当量に対して1.0〜1.5
当量、好ましくは1.05〜1.2当量程度用いられ
る。
【0021】当該エステル化に用いられる全アルコール
成分に対する一価アルコールの比率としては、50当量
%以上且つ100重量%未満が推奨され、特に一価アル
コール/多価アルコール=95/5〜70/30(当量
%)のものが好ましい。多価アルコールの種類及びその
含有率によって低粘度から高粘度のものまで様々な粘度
を有するエステルを得ることが可能であるが、多価アル
コールの比率が50当量%を越えると高分子量のポリマ
ーが多量に生成し、低温流動性が低下する傾向がある。
【0022】更に、全アルコール成分中の炭素数10〜
18の脂肪族直鎖状飽和一価アルコールの含有率として
は、50当量%以下が推奨され、特に40当量%以下、
更に30当量%以下が好ましい。50当量%を越える
と、得られるエステルの低温流動性が低下する傾向があ
る。
【0023】エステル化触媒としては、ルイス酸類、ア
ルカリ金属類、スルホン酸類などが例示され、具体的
に、ルイス酸としては、アルミニウム誘導体、錫誘導
体、チタン誘導体などが例示され、アルカリ金属類とし
てはナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシドな
どが例示され、更に、スルホン酸類としてはパラトルエ
ンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸などが例示でき
る。その中でも炭素数3〜8の有機チタン化合物、炭素
数1〜4のナトリウムアルコキシド、パラトルエンスル
ホン酸が好ましい。その使用量は、例えば、原料である
酸成分及びアルコール成分の総重量に対して0.1〜
1.0重量%用いられる。
【0024】エステル化温度としては、150℃〜23
0℃が例示され、通常、3〜30時間で反応は完結す
る。
【0025】エステル化反応終了後、過剰の原料を減圧
下又は常圧下にて留去する。引き続き、慣用の精製方
法、例えば、液液抽出、減圧蒸留、活性炭処理などの吸
着精製などにより、エステルを精製することが可能であ
る。精製後のエステルの酸価は0.5mgKOH/g以下、
好ましくは0.1mgKOH/g以下、更に好ましくは0.
05mgKOH/g以下であることが望ましい。酸価が0.
5mgKOH/gより高いときは酸化安定性が低下し、金属
の腐食も増大する。
【0026】かくして得られる本エステルには、通常、
(1)酸成分と一価アルコールから得られる芳香族系フ
ルエステル及び(2)2個以上の酸成分が1個又は複数
個の多価アルコール成分と結合して得られるフルエステ
ル(以下「架橋エステル」という。)及び/又は(3)
2個以上の酸成分が1個又は複数個の多価アルコール成
分を介して得られるエステルであって、多価アルコール
由来の水酸基が残存するエステルが混在する。
【0027】架橋エステルとしては、酸成分と多価アル
コールに由来するエステル結合を含有してなる基が1つ
のものから2つ以上繰り返して連なったものまで、種々
の構造を有するオリゴマーが例示される。一例として、
芳香族ジカルボン酸と二価アルコールから得られるオリ
ゴマーの構造式を以下に示す。
【化3】 [式中、Aはベンゼン環を表し、Rは炭素数1〜18の
アルキル基を表し、Bは炭素数2〜18の二価アルコー
ルから2個の水酸基を除いてなる残基を表す。yは1以
上の整数である。]
【0028】本発明に係る生分解性潤滑油の成分である
芳香族ポリカルボン酸系エステルは、上記酸成分及びア
ルコール成分の代わりに当該酸成分の低級アルコールエ
ステル及び/又は当該アルコール成分の酢酸エステル、
プロピオン酸エステルなどを用いて、エステル交換反応
によりを得ることも可能である。
【0029】更に、本発明に係る酸成分と一価アルコー
ルとのエステルを調製後、相当量の多価アルコールを加
えてエステル交換することにより、目的とする芳香族ポ
リカルボン酸複合エステルを得ることも可能である。
【0030】本発明においては、本発明に係る生分解性
潤滑油以外にその性能を低下させない範囲で他の基油成
分の1種若しくは2種以上を混合することも可能であ
り、該併用できる基油成分としては、鉱物油、合成炭化
水素油、動植物油、本エステル以外のエステル(以下
「併用エステル」という)、ポリエーテル及び/又はシ
リコーン油などが例示される。又、これらに乳化剤を加
えてエマルションとして用いることもできる。
【0031】鉱物油としては、通常、パラフィン基系原
油、中間基系原油、ナフテン基系原油などから得られた
ものが例示される。
【0032】合成炭化水素油としては、ポリブテン、ポ
リプロピレンのほか、オレフィン共重合体、更には、炭
素数8〜14のα−オレフィンオリゴマー及びこれらの
水添化合物、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンな
どが例示される。
【0033】動植物油としては、牛脂、豚脂、パーム
油、ヤシ油、ナタネ油、ヒマシ油などが例示される。
【0034】併用エステルとしては、パルミチン酸、ス
テアリン酸、オレイン酸などの炭素数10〜22の脂肪
酸のモノエステル、アジピン酸、アゼライン酸、セバシ
ン酸などの炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸のジエ
ステル類、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ト
リメリット酸などの芳香族多価カルボン酸エステル、シ
クロヘキサンジカルボン酸エステルなどの脂環式カルボ
ン酸エステル及びトリメチロールプロパン、ペンタエリ
スリトールなどのポリオールのフルエステル若しくは部
分エステルなどが例示される。
【0035】ポリエーテルとしては、ポリエチレングリ
コール、ポリプロピレングリコール、オキシエチレン−
オキシプロピレン共重合体、ポリエーテルエステル、ポ
リフェニルエーテルなどが例示される。
【0036】シリコーン油としては、ジメチルポリシロ
キサン、変性ポリシロキサンなどが例示される。
【0037】潤滑油中における鉱物油、合成炭化水素
油、動植物油、併用エステル、ポリエーテル、シリコー
ン油の含有量としては、90重量%以下が推奨される
が、鉱物油、合成炭化水素、シリコーン油の場合、生分
解性を損なわないように20重量%以下とするのが望ま
しい。又、動植物油の場合、酸化安定性を損なわないよ
うに50重量%以下とするのが望ましい。
【0038】本発明に係る生分解性潤滑油は、基油の性
能を向上させるために油性剤、極圧剤、粘度指数向上
剤、酸化防止剤、防錆剤、乳化剤、金属不活性剤、金属
腐食防止剤、消泡剤などの公知の添加剤の1種又は2種
以上を適宜配合することも可能である。配合量は、所定
の効果を奏する限り特に限定されるものではない。
【0039】かくして得られる生分解性潤滑油は、切削
油、研削油、引抜油、プレス加工油などの金属加工油、
油圧作動油、船外機用エンジン油、2サイクルエンジン
油、チェーンソー用潤滑油、圧縮機油、ギア油、グリー
スをはじめ、林業、農業、建築業、採掘業及び輸送業の
機械用潤滑油のような、廃棄、漏洩などで環境汚染が問
題となっている用途に利用することが可能である。
【0040】
【実施例】以下、実施例を掲げて本発明を詳しく説明す
る。尚、各例における潤滑油の特性は、以下の方法によ
り評価した。
【0041】動粘度 ウベローデ粘度計を用いてJIS−K−2283に準拠
して測定する。
【0042】流動点 JIS−K−2269に準拠して測定する。低温流動性
の指標となる。
【0043】潤滑性 JPI−5S−32−90に準拠して、高速四球型摩耗
試験機(神鋼造機社製)を用いて、回転数1200rp
m、荷重30kg、時間30分の条件下で試験し、摩耗
痕径を測定した。形成された摩耗痕が小さいものほど潤
滑性が良好であると判断した。
【0044】酸化安定性試験 JIS−K−2514−3.1に準拠して行った。この
際、各エステルに対し、添加剤として、N−フェニル−
α−ナフチルアミン0.7重量%、p,p’−ジオクチ
ルジフェニルアミン0.7重量%、リン酸トリクレジル
2.0重量%及びベンゾトリアゾール0.1重量%を添
加し試料油を調製する。試験は165.5℃で72時間
行い、試験後の試料油の酸価、粘度変化を測定して試験
前との比較を行う。又、試料油を濾過し、濾紙に残った
残査をヘキサン(100mL)で洗浄し、不溶部をター
ル分(mg)とする。又、ラッカー棒に付着した不溶ター
ルの汚れを以下のように評価する。 ○:不溶タール分なし ×:不溶タール分あり 酸化安定性は、油の酸価上昇値が小さいもの、動粘度比
(40℃における、試験後の動粘度/試験前の動粘度)
の値が1に近いもの、不溶タール分及びラッカー棒の汚
れの少ないものが良好と判断した。
【0045】生分解性試験 修正MITI法に基づき、試料油、比較油30mgのそれ
ぞれに基礎培養液300mL及び固形分として30ppm
の活性汚泥(都市下水処理場からの汚水を人工下水にて
順化したもの)を添加し、25℃で28日間撹拌し、生
物学的酸素消費量(BOD)をクーロメーター(大倉電
気社製)で測定し、その理論消費量(総酸素消費量:T
OD)との比[(BOD/TOD)×100:%]を生
分解性とし、以下のように2段階に分けて評価する。 ○:生分解率が60%以上 ×:生分解率が60%未満 尚、活性汚泥の生分解能を確認するために、標準物質で
あるアニリンが7日目で40%以上、14日目で65%
以上の分解率を示すときのみ、有効な生分解性試験とし
た。
【0046】製造例1 攪拌機、温度計、冷却管付き水分分留器を備えた4ツ口
フラスコに無水フタル酸148.1g(1モル)、「ダ
イヤドール11」(商品名、三菱化学社製、n−ウンデ
カノールとイソウンデカノールとの混合物)303.2
g(1.76モル、全アルコール成分に対する当量%
(以下「Z」と略記する。)=80%。尚、n−ウンデ
カノールのZは37%である。)、1,4−ブタンジオ
ール19.8g(0.22モル、Z=20%)を仕込
み、テトライソプロピルチタネート触媒存在下、減圧下
にて200℃まで昇温した。生成した水を水分分留器に
とりながらエステル化反応を約9時間行った。反応後、
過剰のウンデカノール及び1,4−ブタンジオールを蒸
留で除去し、苛性ソーダで中和し、その後中性になるま
で水洗した。次いで活性炭処理を行い、濾過することに
より反応生成物423gを得た(収率93%)。この反
応生成物をGPCにより分析した結果、フタル酸ジウン
デシルの含有量は70重量%であった。更に、他の主た
る成分として一般式(2)においてR=C11、B=−
(CH24−、y=1〜3(y=1を主成分とする)の
混合物(オリゴマー)が認められた。反応生成物の酸価
は0.01mgKOH/gであり、動粘度は47.4mm2/s
(測定温度40℃)、6.88mm2/s(測定温度10
0℃)であり、粘度指数は99であった。
【0047】製造例2 アルコール成分として「ダイヤドール11」265.4
g(1.54モル、Z=70%。尚、n−ウンデカノー
ルのZは32%である。)及び1,4−ブタンジオール
29.7g(0.33モル、Z=30%)を用いた他は
実施例1と同様にしてエステル化し、反応生成物401
gを得た(収率94%)。この反応生成物をGPCによ
り分析した結果、フタル酸ジウンデシルの含有量は58
重量%であった。更に、他の主たる成分として一般式
(2)においてR=C11、B=−(CH24−、y=
1〜4(y=1を主成分とする)の混合物(オリゴマ
ー)が認められた。反応生成物の酸価は0.01mgKOH
/gであり、動粘度は66.6mm2/s(測定温度40
℃)、8.54mm2/s(測定温度100℃)であり、
粘度指数は98であった。
【0048】製造例3 アルコール成分として「ダイヤドール11」303.2
g(1.76モル、Z=80%。尚、n−ウンデカノー
ルのZは37%である。)及び1,6−ヘキサンジオー
ル26.0g(0.22モル、Z=20%)を用いた他
は実施例1と同様にしてエステル化し、反応生成物43
8gを得た(収率95%)。この反応生成物をGPCに
より分析した結果、フタル酸ジウンデシルの含有量は6
4重量%であった。更に、他の主たる成分として一般式
(2)においてR=C11、B=−(CH26、y=1
〜3(y=1を主成分とする)の混合物(オリゴマー)
が認められた。反応生成物の酸価は0.01mgKOH/g
であり、動粘度は52.2mm2/s(測定温度40
℃)、7.51mm2/s(測定温度100℃)であり、
粘度指数は106であった。
【0049】製造例4 アルコール成分としてイソへプタノール140.6g
(1.21モル)とn−デカノール87.1g(0.5
5モル)との混合一価アルコール(Z=80%。尚、n
−デカノールのZは25%である。)及び2−メチル−
2,4−ペンタンジオール26.0g(0.22モル、
Z=20%)を用いた他は実施例1と同様にしてエステ
ル化し、反応生成物367gを得た(収率96%)。こ
の反応生成物をGPCにより分析した結果、フタル酸ジ
ヘプチル、フタル酸ジ−n−デシル及びフタル酸イソヘ
プチル/n−デシル混基ジエステルの含有量の合計は6
8重量%であった。更に、他の主たる成分として一般式
(2)においてR=C7及び/又はC10、Bx=−C
(CH32CH2CH(CH3)−、y=1〜3(y=1
を主成分とする)の混合物(オリゴマー)が認められ
た。反応生成物の酸価は0.01mgKOH/gであり、動
粘度は19.9mm2/s(測定温度40℃)、3.96m
m2/s(測定温度100℃)であり、粘度指数は88で
あった。
【0050】製造例5 アルコール成分として3,5,5−トリメチルヘキサノ
ール253.8g(1.76モル、Z=80%)及び
1,4−ブタンジオール19.8g(0.22モル、Z
=20%)を用いた他は実施例1と同様にしてエステル
化し、反応生成物385gを得た(収率95%)。この
反応生成物をGPCにより分析した結果、フタル酸ジ
(3,5,5−トリメチルヘキシル)の含有量は66重
量%であった。更に、他の主たる成分として一般式
(2)において(R=C9、B=−(CH24−、y=
1〜3(y=1を主成分とする)の混合物(オリゴマ
ー)が認められた。反応生成物の酸価は0.01mgKOH
/gであり、動粘度は66.4mm2/s(測定温度40
℃)及び8.07mm2/s(測定温度100℃)であ
り、粘度指数は85であった。
【0051】製造例6 酸成分としてテレフタル酸166.1g(1.0モル)
を用い、アルコール成分としてn−オクタノール85.
9g(0.66モル)とイソデカノール104.5g
(0.66モル)との混合一価アルコール(Z=60
%)及び2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジ
オール70.5g(0.44モル、Z=40%)を用い
た他は実施例1と同様にしてエステル化し、反応生成物
367gを得た(収率96%)。この反応生成物をGP
Cにより分析した結果、テレフタル酸ジ−n−オクチ
ル、テレフタル酸ジイソデシル及びテレフタル酸n−オ
クチル/イソデシル混基ジエステルの含有量の合計は4
2重量%であった。更に、他の主たる成分として一般式
(2)においてR=C8及び/又はC10、Bx=−C
2C(C49)(C25)CH2−、y=1〜4(y=
1を主成分とする)の混合物(オリゴマー)が認められ
た。反応生成物の酸価は0.01mgKOH/gであり、動
粘度は224.4mm2/s(測定温度40℃)及び1
6.0mm2/s(測定温度100℃)であり、粘度指数
は64であった。
【0052】実施例1〜6 製造例1〜6で得られた反応生成物の生分解性、潤滑
性、流動性及び酸化安定性を評価した。得られた結果を
第1表に示す。
【0053】比較例1 トリメチロールプロパントリオレエート[酸価0.24
mgKOH/g、動粘度48.2mm2/s(測定温度40
℃)、9.80mm2/s(測定温度100℃)、粘度指
数192]の生分解性、潤滑性、流動性及び酸化安定性
を評価した。得られた結果を第1表に示す。
【0054】
【表1】
【0055】実施例1〜6から明らかなように、芳香族
ポリカルボン酸系エステルは生分解性が良好であり、潤
滑性、低温流動性及び酸化安定性がバランス良く優れて
いる。それに対し、比較例1のトリメチロールプロパン
のオレイン酸エステルは生分解性は良好であるが酸化安
定性が極端に劣る。
【0056】
【発明の効果】本発明に係る生分解性潤滑油は、生分解
性に優れ、流動性、潤滑性及び酸化安定性が良好であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 孝司 京都府京都市伏見区葭島矢倉町13番地 新 日本理化株式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(1) 【化1】 [nは2〜4の整数を表す]で表される芳香族ポリカル
    ボン酸及びその無水物よりなる群から選ばれる1種又は
    2種以上の化合物を酸成分とし、炭素数1〜18の脂肪
    族直鎖状飽和アルコール、炭素数2〜18の脂肪族直鎖
    状不飽和アルコール、炭素数3〜18の脂肪族分岐鎖状
    飽和アルコール及び炭素数3〜10の脂環式飽和アルコ
    ールよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の一価ア
    ルコール及び炭素数2〜18の多価アルコールの1種又
    は2種以上とをアルコール成分としてエステル化して得
    られる芳香族ポリカルボン酸系エステルの1種又は2種
    以上を含有することを特徴とする生分解性潤滑油。
  2. 【請求項2】 酸成分が、フタル酸、無水フタル酸、イ
    ソフタル酸及びテレフタル酸よりなる群から選ばれる1
    種若しくは2種以上の化合物である請求項1に記載の生
    分解性潤滑油。
  3. 【請求項3】 一価アルコールが、n−ペンタノール、
    n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノー
    ル、n−ノナノール、n−デカノール、n−ウンデカノ
    ール、n−ドデカノール、n−トリデカノール、n−テ
    トラデカノール、n−ペンタデカノール、2−メチルヘ
    キサノール、2−エチルヘキサノール、1−メチルヘプ
    タノール、2−メチルヘプタノール、イソノナノール、
    イソデカノール、イソウンデカノール、イソトリデカノ
    ール、イソペンタデカノール及びイソオクタデカノール
    よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物であ
    る請求項1又は請求項2に記載の生分解性潤滑油。
  4. 【請求項4】 多価アルコールが、エチレングリコー
    ル、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレ
    ングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタ
    ンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−
    1,5−ペンタンジオール、オクタンジオール、ネオペ
    ンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−
    プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3
    −プロパンジオール、イソプレングリコール、ヘキシレ
    ングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、ト
    リメチロールプロパン及びペンタエリスリトールよりな
    る群から選ばれる1種若しくは2種以上の化合物である
    請求項1〜3のいずれかの請求項に記載の生分解性潤滑
    油。
  5. 【請求項5】 全アルコール成分に対する一価アルコー
    ルの比率が、50当量%以上である請求項1〜4のいず
    れかの請求項に記載の生分解性潤滑油。
  6. 【請求項6】 全アルコール成分に対する炭素数10〜
    18の脂肪族直鎖状飽和一価アルコールの比率が、50
    当量%以下である請求項1〜5のいずれかの請求項に記
    載の生分解性潤滑油。
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CN111518526A (zh) * 2019-02-01 2020-08-11 中国石油天然气股份有限公司 钻井液及其制备方法

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