JPH1028599A - 試料中に存在する微生物細胞に由来するatpを検出及び/または測定する方法、及びその試薬キット - Google Patents

試料中に存在する微生物細胞に由来するatpを検出及び/または測定する方法、及びその試薬キット

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JPH1028599A
JPH1028599A JP10286297A JP10286297A JPH1028599A JP H1028599 A JPH1028599 A JP H1028599A JP 10286297 A JP10286297 A JP 10286297A JP 10286297 A JP10286297 A JP 10286297A JP H1028599 A JPH1028599 A JP H1028599A
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Yukiko Higo
幸呼 肥後
Reiko Tanaka
玲子 田中
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Toyo Ink Mfg Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 微生物細胞及び非微生物細胞を含む試料か
ら、感度良く、短時間に、試料中に存在する微生物細胞
に由来するATPを選択的に検出及び/または測定する
方法を提供する。 【解決手段】 試料中に存在する微生物細胞に由来する
ATPを検出及び/または測定する方法であって、試料
を遠心分離して上澄み液を除去し微生物細胞ペレットを
形成する工程、微生物細胞ペレットにプロテアーゼフリ
ーの可溶性タンパク質とATP加水分解酵素を含む緩衝
液を加えてpH=6.0〜8.0の条件下でインキュベ
ートする工程、ATP抽出剤を添加し微生物細胞からA
TPを抽出する工程、及び微生物細胞から放出されたA
TPを生物発光法を用いて検出及び/または測定する工
程を含むことを特徴とする前記の測定方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、試料の微生物学的
品質検査に関し、より詳細には、試料に存在する微生物
細胞に由来するATPを選択的に検出及び/または測定
する方法に関する。また、試料に存在する微生物細胞に
由来するATPを検出及び/または測定するための試薬
キットに関する。
【0002】
【従来の技術】ルシフェラーゼを用いた生物発光法は、
微生物細胞ATPの迅速検出法として利用されている。
微生物細胞及び非微生物細胞混合物である試料中の微生
物細胞由来ATPを測定する方法として、非微生物細胞
を非イオン界面活性剤で溶解し、放出された非微生物細
胞由来ATPをアピラーゼのようなATP加水分解酵素
で分解後、沸騰−Tris緩衝液などでアピラーゼを不
活性化し、微生物の溶解剤を加え微生物細胞由来ATP
を生物発光法で定量する方法が採られている(米国特許
第3745090号)。この方法はわずか数十分で結果
が出るため、抜き取り検査などには最適であるが、沸騰
−Tris緩衝液によるアピラーゼの不活性化処理が感
度低下を引き起こし正確な測定値を得ることができなか
った。
【0003】非微生物細胞を含む試料中の微生物細胞由
来ATPを選択的に測定する方法として、以下の3つの
方法が開発されている(特公昭62−4120号)。い
ずれの方法でも、大量に存在する非微生物細胞由来AT
Pから微生物由来ATPのみを選択的に高感度に検出す
る方法に腐心している。第1の方法は、試料に非イオン
界面活性剤を作用させ、非微生物細胞由来ATPを抽出
してろ過器で分離し、ろ過器に濃縮された微生物細胞の
ATPを抽出し生物発光で測定する方法である。しか
し、この方法はろ過に時間を要し操作も煩雑であるため
適切な方法ではない。 第2の方法は、非イオン界面活
性剤を作用させ、非微生物細胞由来ATPを抽出したの
ち遠心分離操作で上澄液として除去し、微生物細胞を含
む沈殿より微生物細胞由来ATPを抽出し生物発光で測
定する方法である。この方法の欠点は、1回の遠心分離
操作で完全に非微生物細胞由来ATPを分離ができない
ことである。遠心分離操作を繰り返すことにより分離は
完全になるが、時間を要し、操作も煩雑で、遠心分離−
上澄み除去という洗浄回数が増すことによって微生物細
胞の収率は悪くなり、良好な方法とはいえない。第3の
方法は、試料に非イオン性界面活性剤などを作用させ、
非微生物細胞由来ATPを抽出した後にアピラーゼなど
のATP加水分解酵素でこれを分解し、分解完了後アピ
ラーゼをガラスビーズなどで不動態化し、その後、微生
物細胞由来ATPを抽出して生物発光で測定する方法で
ある。しかし、この方法では、試料に対して微生物細胞
の濃縮操作が施されていないことや、タンパク質、乳脂
肪などの試料の構成成分による測定阻害を受けることに
よって高感度の検出は期待できない。また、アピラーゼ
の除去あるいは失活が不完全であって、微生物細胞から
ATPを抽出した後もアピラーゼの阻害作用があり正確
な測定値が得られない。従って、以上の方法の測定値は
バラツキが大きく、実用的には106 CFU/ml(C
FU;C olony F ormingU nit )程度の検出感度しか期
待できない。
【0004】ATP生物発光法における検出感度向上の
有力な方法の一つとして、微生物細胞の濃縮による感度
の向上が期待できる、先の遠心分離操作を含む方法の改
良が挙げられる。特にミルク試料の場合は、微生物細胞
を測定の阻害となる他の成分から分離・濃縮するため、
キレート剤及び非イオン界面活性剤をミルクに添加して
遠心分離する方法が新たに提唱されている。この方法で
他のミルク成分による測定阻害は防止できるが、操作が
煩雑な上、非微生物細胞由来ATPの除去が不十分で殆
ど検出感度の向上は認められず、実用的な試験法として
感度不足は否定できない(ヨーロッパ特許公開公報第5
42790号)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】以上のような事実を鑑
み、本発明は、感度良く、短時間に、試料中に存在する
微生物細胞に由来するATPを選択的に検出及び/また
は測定する方法を提供することを目的とする。また、試
料中に存在する微生物細胞に由来するATPを選択的に
検出及び/または測定するための試薬キットを提供する
ことを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、試料中に存在
する微生物細胞に由来するATPを検出及び/または測
定する方法であって、試料を遠心分離して上澄み液を除
去し微生物細胞ペレットを形成する工程、微生物細胞ペ
レットにプロテアーゼフリーの可溶性タンパク質とAT
P加水分解酵素を含む緩衝液を加えてpH=6.0〜
8.0の条件下でインキュベートする工程、ATP抽出
剤を添加し微生物細胞からATPを抽出する工程、及び
微生物細胞から放出されたATPを生物発光法を用いて
検出及び/または測定する工程を含むことを特徴とする
前記の方法に関する。
【0007】更に本発明は、試料を遠心分離する前に非
イオン界面活性剤を添加して、試料中に存在する非微生
物細胞中のATPを細胞外へ出す工程をさらに含む上記
の測定方法に関する。
【0008】更に本発明は、非イオン界面活性剤を添加
して非微生物細胞中のATPを細胞外へ出す工程におい
て、キレート剤を添加する上記の測定方法に関する。
【0009】更に本発明は、微生物細胞ペレットにプロ
テアーゼフリーの可溶性タンパク質とATP加水分解酵
素を含む緩衝液を加えてpH=6.0〜8.0の条件下
でインキュベートする工程において、ATP加水分解酵
素活性化剤を添加する上記の測定方法に関する。
【0010】更に本発明は、微生物細胞ペレットにプロ
テアーゼフリーの可溶性タンパク質とATP加水分解酵
素を含む緩衝液を加えてpH=6.0〜8.0の条件下
でインキュベートする工程において、防腐剤を添加する
上記の測定方法に関する。
【0011】更に本発明は、微生物細胞ペレットにプロ
テアーゼフリーの可溶性タンパク質とATP加水分解酵
素を含む緩衝液を加えてpH=6.0〜8.0の条件下
でインキュベートする工程において、キレート剤を添加
する上記の測定方法に関する。
【0012】更に本発明は、微生物細胞ペレットにプロ
テアーゼフリーの可溶性タンパク質とATP加水分解酵
素を含む緩衝液を加えてpH=6.0〜8.0の条件下
でインキュベートする工程において、タンパク質SH基
保護剤を添加する上記の測定方法に関する。
【0013】更に本発明は、生物発光法がルシフェリン
及びルシフェラーゼを含む上記の測定方法に関する。
【0014】更に本発明は、pHを6.0〜8.0に調
整しうる緩衝液、プロテアーゼフリーの可溶性タンパク
質及びATP加水分解酵素を含む試薬、ATP抽出剤を
含む試薬、並びに生物発光試薬を含むことを特徴とす
る、微生物細胞に由来するATPを検出及び/または測
定するための試薬キットに関する。
【0015】更に本発明は、生物発光試薬がルシフェリ
ン及びルシフェラーゼを含む上記の試薬キットに関す
る。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明は、試料中に存在する微生
物細胞に由来するATPを検出及び/または測定する方
法であって、試料を遠心分離して上澄み液を除去し微生
物細胞ペレットを形成する工程、微生物細胞ペレットに
プロテアーゼフリーの可溶性タンパク質とATP加水分
解酵素を含む緩衝液を加えてpH=6.0〜8.0の条
件下でインキュベートする工程、ATP抽出剤を添加し
微生物細胞からATPを抽出する工程、及び微生物細胞
から放出されたATPを生物発光法を用いて検出及び/
または測定する工程を含むことを特徴とする前記の方法
に関する。試料が非微生物細胞を含む場合、試料を遠心
分離する前に非イオン界面活性剤を添加して非微生物細
胞中のATPを細胞外へ出す工程をさらに含んでもよ
い。非イオン界面活性剤を添加して非微生物細胞中のA
TPを細胞外へ出す工程においては、キレート剤、ポリ
スチレンラテックスなどを単独で、あるいは組み合わせ
て添加してもよい。また、微生物細胞ペレットにプロテ
アーゼフリーの可溶性タンパク質とATP加水分解酵素
を含む緩衝液を加えてpH=6.0〜8.0の条件下で
インキュベートする工程においては、ATP加水分解酵
素活性化剤、防腐剤、キレート剤、タンパク質SH基保
護剤などを単独で、あるいは組み合わせて添加してもよ
い。本発明の方法により、試料中に存在する微生物細胞
に由来するATPを簡便かつ短時間で選択的に検出及び
/または測定することができる。特に、本発明の方法に
より、ミルク試料中に存在する微生物細胞に由来するA
TPを、104 CFU/ml以下の検出感度で、しかも
小さい測定誤差で、検出及び/または測定することがで
きる。
【0017】また本発明は、pHを6.0〜8.0に調
整しうる緩衝液、プロテアーゼフリーの可溶性タンパク
質及びATP加水分解酵素を含む試薬、ATP抽出剤を
含む試薬、並びに生物発光試薬を含むことを特長とす
る、微生物細胞に由来するATPを検出及び/または測
定するための試薬キットを提供する。本発明の試薬キッ
トは、さらに非イオン界面活性剤を含む試薬を含んでも
よい。非イオン界面活性剤を含む試薬は、キレート剤、
ポリスチレンラテックス、及びそれらの組み合わせを含
んでもよい。pHを6.0〜8.0に調整しうる緩衝
液、プロテアーゼフリーの可溶性タンパク質及びATP
加水分解酵素を含む試薬は、ATP加水分解酵素活性化
剤、防腐剤、キレート剤、タンパク質SH基保護剤、及
びそれらの組み合わせを含んでもよい。生物発光試薬は
ルシフェリン及びルシフェラーゼを含んでもよい。
【0018】以下、本発明の方法を、微生物細胞及び非
微生物細胞混合物を含む試料の典型であるミルク試料に
適用した例について詳述する。ただし、これにより本発
明の方法を適用する対象の範囲がミルク試料に限定され
るものではない。分析に供試されるミルク試料をまず遠
心分離容器に入れ、キレート剤、及び非イオン界面活性
剤を添加する。キレート剤はミルク試料中のカルシウム
イオンを捕捉してカゼインの沈澱を抑制し、非イオン界
面活性剤は非微生物細胞からのATP抽出剤として働
く。混合物に蓋をし、反転あるいは旋回して混合する。
試料は、遠心分離機に入れ、最小限5分間、10,00
0×g(最小相対遠心力)で遠心分離すると、3つの層
に分離する。最上層は白色または帯黄白色のクリーム及
びミルクタンパク質である。その下層には中間層である
透明液領域があり、最下層には微生物細胞ペレットがた
まる。この際、微生物細胞ペレットの形成を明確化する
ために、キレート剤及び非イオン界面活性剤と共に、ミ
ルク試料にポリスチレンラテックス等を加えてもよい。
微生物細胞ペレット以外の他のミルク成分を吸引により
除去すると、微生物細胞ペレットのみが遠心分離容器の
底部に残る。微生物細胞ペレットの大きさはミルク試料
中の細胞数及びキレート剤と非イオン界面活性剤のタイ
プにも依存するが、微生物細胞ペレットは少量の細胞と
会合した他のミルク成分も含んでいる。
【0019】次に、遠心分離容器の底部に残る微生物細
胞ペレットに、ATP加水分解酵素含有溶液を加えて再
懸濁させる。再懸濁させた液は、バックグランドとなる
非微生物細胞由来または遊離のATPが加水分解される
までインキュベートさせる。ATP加水分解酵素含有液
には、pH=6.0〜8.0とする緩衝液、プロテアー
ゼフリーの可溶性タンパク質、ATP加水分解酵素活性
化剤を添加する。ATP加水分解酵素を加える工程は、
非微生物細胞由来ATP及び遊離ATPを分解するため
である。遠心分離操作で大部分の非微生物細胞由来のA
TPは除去されているが、ミルク試料は大量の体細胞を
含むため、遠心分離操作だけで非微生物細胞由来のAT
Pを完全に除去することはできない。そこで、ATP加
水分解酵素によりこれらのATPを加水分解する。ま
た、pH=6.0〜8.0に調整するのは、ATP加水
分解酵素を最適の活性とするためであり、プロテアーゼ
フリーの可溶性タンパク質の添加は、ATP加水分解酵
素を安定に作用させる働きがある。ATP加水分解酵素
活性化剤も、酵素を安定に作用させ測定値のバラツキを
抑えるために添加するとよい。
【0020】微生物細胞ペレットにATP加水分解酵素
を加える工程では、ATP加水分解酵素の活性及び反応
条件を以下のようにを制御すると好都合である。 a)ATP加水分解酵素の活性値をΔlogRLU/分
=1.0〜4.0とする。 b)ATP加水分解酵素の反応時間を10分間以上とす
る。 c)ATP加水分解酵素の反応温度を20〜40℃とす
る。 なお、本発明では、ATP加水分解酵素の活性値を、A
TP加水分解酵素によって基質であるATPを加水分解
する速度をもって表す。従って、酵素活性の測定は被検
液中のATP量の減少を経時的に測定することで実施さ
れ、被検液中のATP量は、ATPの鋭敏な定量法であ
るホタルルシフェラーゼを用いた生物発光反応から得ら
れる相対発光量(RLU;相対発光量、R elative L ig
htU nit)を指標として測定される。本発明では、非連
続的に被検液より一定量を採取してATP量を生物発光
反応で測定し、得られた値から1分間当たりの相対発光
量の対数値の減少量(ΔlogRLU/分)を計算し、
その値をもってATP加水分解酵素の活性値とする。
【0021】微生物細胞ペレットにATP加水分解酵素
を加える工程では、以下の試薬を加えることもできる。 a)防腐剤 b)キレート剤 c)タンパク質SH基保護剤
【0022】ATP加水分解酵素を作用させインキュベ
ートの終了した再懸濁液に、イオン界面活性剤からなる
微生物細胞ATP抽出剤を加え、微生物細胞からATP
を放出させ、直ちに発光試薬(例えば、ルシフェリン/
ルシフェラーゼを含む発光試薬)を加えて生物発光さ
せ、ATP量を検出装置(例えば、ルミノメーター)で
定量する。この時の測定温度は15℃〜25℃、ATP
抽出剤を接触させて発光試薬を添加するまでの時間は1
0秒以上60秒以内、発光試薬を添加してから発光量の
測定が終了するまでの時間は30秒以内とする。
【0023】本発明のミルク試料とは、生乳、生山羊
乳、生めん羊乳、牛乳、超高温殺菌乳、低温長時間殺菌
乳、殺菌山羊乳、特別牛乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工
乳、液状に戻した粉末ミルク、クリーム、スキムミル
ク、液化されたアイスクリームあるいはアイスミルクあ
るいは関連製品、豆乳、および試料中のミルクあるいは
懸濁液を包含するミルクの生材料あるいはコーヒー等と
の混合液、ミルクの培養液(増菌培養液)等の乳製品を
起源とする全ての液状溶液を含む。本明細書において、
「微生物」とは、単細胞の原核生物を意味し、バクテリ
アあるいは非真核細胞が挙げられる。なお、真核細胞
は、遺伝材料が核により囲まれている生物体である。
【0024】本明細書において、「非微生物細胞」とは
微生物ではない細胞であり、大部分は体細胞である。体
細胞とは、生物体を構成する全細胞のうち生殖細胞以外
の細胞であり、例えば体液由来の白血球、赤血球、血小
板等の細胞、あるいは乳房内部組織、筋肉組織、皮膚組
織等より剥離した細胞などを示す。ATP(アデノシン
−5’−三リン酸)は、アデニン、D−リボースおよび
3個のリン酸基からなるヌクレオチドであり、呼吸、発
酵および光合成におけるリン酸化反応によって生成さ
れ、生物エネルギー代謝において重要である。全ての生
細胞は、ATPを含有する。
【0025】本発明のキレート剤とは、カルシウムイオ
ン、マグネシウムイオン、鉄イオン、カドミウムイオ
ン、ベリリウムイオン、コバルトイオン、ニッケルイオ
ン、銅イオン、鉛イオンなどの二価金属イオン、および
他の金属イオンと結合する全ての分子あるいは巨大分子
であり、合成あるいは天然の有機化合物、上記イオンに
結合できるタンパク質、炭水化物、脂質、あるいは生物
起源分子の複製品または修飾製品などである。
【0026】遠心分離操作の前にミルク試料へキレート
剤を添加すると、キレート剤の作用は、ミルク試料中に
おけるカゼインミセルがサブミセルへ解離する(L. C.
Chaplin, J. Dairy Res., 51, 251-257 (1984))。もし
キレート剤無しのミルク試料を同様にして遠心分離にか
けると、ミルク試料の上澄液は透明化せず、ミセル状ミ
ルクタンパク質は遠心分離管の中で浮遊し、あるいは会
合して分子量の大きくなったカゼインミセルは沈降し
て、底部に巨大なペレットを形成し明瞭な微生物細胞ペ
レットを形成できない。キレート剤は、ミセル構造に寄
与する主成分であるカルシウムイオンと結合し(S. H.
C. Lia, Biochemistry, 11, 1818-1821 (1972))、カゼ
インミセルを解離する。従って、本発明ではカルシウム
イオンと結合するキレート剤が好ましい。
【0027】このキレート剤としては、エチレンジアミ
ン四酢酸(EDTA、商品名Versene)、ビス−
(O−アミノフェノキシ)−エタン−N,N,N’,
N’−四酢酸(BAPTA)、エチレングリコール−ビ
ス−(β−アミノエチルエーテル)N,N,N’,N’
−四酢酸(EGTA)、ニトリロ三酢酸(トリグリシ
ン、アンモニア三酢酸塩、トリロンA)、トランス−
1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸(CDTA)、
ジエチレントリアミノペンタ酢酸(DTPA)、N−
(2−アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)、クエン
酸塩、アルギニン、ハイポザンチン、4,5−ジヒドリ
キシベンゼン−1,3−ジスルホン酸、クラウンエーテ
ルタイプ化合物およびこれら分子の全ての誘導体および
前駆体を使用することができる。
【0028】本発明のキレート剤は、検出すべき細胞に
は作用しないことが非常に重要である。また、生物発光
法(例えば、ルシフェリン/ルシフェラーゼを利用した
もの)にも影響しないキレート剤が好ましい。本発明で
特に優れていると判断されたキレート剤は、ニトリロ三
酢酸、エチレンジアミン四酢酸、及びN−(2−アセト
アミド)イミノ二酢酸である。
【0029】本発明で使用する非イオン界面活性剤は、
水溶液中でイオンに解離する基を持たない界面活性剤で
あり、非微生物細胞由来のATPの抽出剤として作用す
るものである。ミルク試料から非微生物細胞を分離除去
し、微生物細胞のみを分離濃縮するために、特に、微生
物細胞に作用することなく非微生物細胞よりATPを抽
出する薬剤である。したがってタンパク質への変性作用
が温和でかつ膜可溶化能に優れ、尚かつ凝集するミルク
成分の乳化分散化に寄与し、微生物細胞の分離濃縮を更
に容易にするような薬剤が好ましい。
【0030】非イオン界面活性剤は大別して3つのグル
ープに分類され、1)高級アルコール、アルキルフェノ
ール、脂肪酸などにエチレングリコールを親水基として
結合させたもの、2)多価アルコールの部分エステル、
高級脂肪酸グリセロールエステルであるモノグリセリ
ド、ソルビトールの脂肪酸エステル、3)ポリプロピレ
ングリコールとポリエチレングリコールの付加重合物な
どが挙げられる。以上の非イオン界面活性剤の中で、ポ
リオキシエチレングリコールオクチルフェニルエーテル
類であるTriton X−100あるいはNonid
et P−40(NP−40)が好ましく、特にTri
ton X−100は好ましい。とりわけ、このような
非イオン界面活性剤をキレート剤と共にミルク試料に加
えることが特に好ましい。大部分の体細胞は遠心分離の
前の処理で溶解され、遠心分離後には非微生物細胞由来
のATPの影響は軽減される。非イオン界面活性剤の添
加量は、Triton X−100を使用した場合、ミ
ルク試料に対し0.1〜5%であり、好ましくは0.2
5〜2.5%である。また、キレート剤と非イオン界面
活性剤は、ミルク試料用の試薬キットを作製する場合、
両方の薬剤を溶解した溶液として提供することも可能で
ある。
【0031】本明細書において、「微生物細胞ペレッ
ト」とは、遠心分離後に、主として微生物細胞が沈降し
て遠心分離容器の底に分離されたものをいう。微生物細
胞ペレットの大きさは、ミルク試料中の細胞数やキレー
ト剤及び/または非イオン界面活性剤の種類に依存す
る。微生物細胞ペレットには少量の細胞と会合した他の
ミルク成分を含んでもよい。ミルク試料1.0mlより
得られる微生物細胞ペレットは10〜40μlであり、
外観は白色または灰色がかった白色である。ミルク試料
中の細胞数が少ない場合、遠心分離後に形成される微生
物細胞ペレットの大きさが小さく、吸引操作で誤って除
去される恐れがある。そこで、微生物細胞ペレットの形
成を明確化するために、キレート剤及び非イオン界面活
性剤と共に、ミルク試料にポリスチレンラテックス等を
加えても良い。また、ミルク試料用の試薬キットを作製
する場合、キレート剤と非イオン界面活性剤を含む溶液
にポリスチレンラテックス等を加えても良い。
【0032】本発明で使用するATP加水分解酵素と
は、ATPの末端リン酸基を切断し、ADPあるいはA
MPと無機リン酸を生じさせるATP加水分解酵素であ
る。例として、主にジャガイモより抽出・精製されるア
ピラーゼ、及びATPピロホスファターゼが挙げられる
が、市販品として入手が容易なアピラーゼを用いること
が好ましい。
【0033】ATP加水分解酵素は、ミルク試料中に存
在する非微生物細胞由来ATPを分解し、微生物細胞由
来ATPをより高感度に検出するための手段として使用
する。ミルク試料に対してキレート剤及び非イオン界面
活性剤含有溶液を添加し、遠心分離操作を加えることに
よって、ミルク試料から微生物細胞ペレットを分離濃縮
するが、体細胞などの非微生物細胞はもともと大量に存
在しており、遠心分離では非微生物細胞由来ATPは除
去しきれず大量に残存している。ATP加水分解酵素含
有溶液を添加することで、バックグランドとなる非微生
物細胞由来ATPを完全に除去することが可能である。
従って、ATP加水分解酵素を使用するに当たって、非
微生物細胞由来ATPを迅速に分解し得る活性を保有
し、かつ使用後に残存したATP加水分解酵素の、続い
て検出しようとする微生物細胞ATPの分解への影響が
最小となるようにすることが望ましい。
【0034】本発明の微生物細胞ペレットにATP加水
分解酵素を加える工程では、ATP加水分解酵素が最も
安定して作用するpH=6.0〜8.0、好ましくはp
H=6.5〜7.8となるようにpHを調整する。pH
の調整は、pHが中性領域を示す「蛋白質・酵素の基礎
実験法」(堀尾、山下編著:南江堂 (1981) )432〜
435頁記載の緩衝液が使用できる。この中でも、グッ
ドの緩衝液で総括される以下の緩衝液、すなわち、ME
S(2−モルホリノエタンスルホン酸)緩衝液、Tri
s(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)系緩衝
液、BES(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−
2−アミノエタンスルホン酸)緩衝液、MOPS(3−
モルホリノプロパンスルホン酸)緩衝液、HEPES
(N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N−2−エタ
ンスルホン酸)緩衝液、などを用いることが好ましい。
【0035】微生物細胞ペレットにATP加水分解酵素
を加える工程では、ATP加水分解酵素を活性化し安定
化する目的でプロテアーゼフリーの可溶性タンパク質を
添加する。添加する可溶性タンパク質は、パパイン、ト
リプシン、キモトリプシン等のタンパク質に認められる
タンパク質分解活性を示さないものであれば、動物由
来、植物由来、微生物由来のいずれのタンパク質を用い
ることも可能であるが、アルブミンで総称される以下の
可溶性タンパク質、すなわち、オボアルブミン、ラクト
アルブミン、血清アルブミン、ロイコシン、レグメリ
ン、リシンから選ばれる一種類以上のタンパク質を用い
ることが好ましい。プロテアーゼフリーの可溶性タンパ
ク質の添加量は、ミルク試料1mlに対し0.10〜5
mgが適当であり、好ましくは0.25〜2.5mgで
ある。さらに、微生物細胞ペレットにATP加水分解酵
素を加える工程では、ATP加水分解酵素活性化剤とし
てカルシウムイオン、マグネシウムイオンなどを加えて
もよい。その添加量は、ミルク試料1mlに対し、カル
シウムイオンは0.1〜50mM、好ましくは1〜20
mMであり、マグネシウムイオンはカルシウムイオンの
100分の1〜10分の1であるとよい。
【0036】上述のATP加水分解酵素を加える工程
で、ATP加水分解活性値はΔlogRLU/分=1.
0〜4.0が適当であり、好ましくはΔlogRLU/
分=2.0〜3.0であり、反応温度は20〜40℃が
適当であり、好ましくは25℃〜35℃であり、反応時
間は10分間以上が適当であり、好ましくは10分〜3
0分である。この条件下では、バックグランドとなる非
微生物細胞由来ATPの分解は充分に行なわれ、かつル
シフェリン/ルシフェラーゼを含む発光試薬による生物
発光の際には、微生物細胞由来ATPの加水分解は短時
間では進行しない。従って、ATP加水分解酵素の失活
処理操作が不要であることが本発明の特徴である。従来
から行われていた遠心分離操作の繰り返しも必要ない。
この方法によって、微生物細胞ペレット中の微生物細胞
数の定量操作を著しく簡略化できる。また、本条件下で
は測定バックグランドとなる非微生物細胞由来ATPの
分解は充分に進み、バックグランド値の低下および安定
化を図ることが可能となり、微生物細胞由来ATPの検
出感度を著しく向上させることができる。なお、ATP
加水分解酵素、プロテアーゼフリーの可溶性タンパク
質、ATP加水分解酵素活性化剤、pH調整用緩衝液を
混合し同一溶液として加えることも可能である。
【0037】微生物細胞ペレットにATP加水分解酵素
を加える工程では、防腐剤、キレート剤、タンパク質S
H基保護剤の添加も効果がある場合がある。防腐剤は測
定中に混入する微生物の影響を最小限にするために添加
するもので、ペニシリンG−Na塩、ペニシリンG−K
塩、アンピシリン、クロラムフェニコール、ストレプト
マイシン、カナマイシン、テトラサイクリン、オキシテ
トラサイクリンなどの抗生物質、アジ化ナトリウムなど
のアジ化物、クレゾールなどのフェノール化合物、乳
酸、クエン酸、安息香酸、プロピオン酸、デヒドロ酢
酸、オキシ安息香酸、ソルビン酸などの酸などが挙げら
れる。キレート剤は、非イオン界面活性剤を添加して非
微生物細胞中のATPを細胞外へ出す工程で用いるもの
とはその使用目的が異なり、主に重金属の捕捉剤として
使用するものであるが、前述のエチレンジアミン四酢酸
(EDTA、商品名Versene)、ビス−(O−ア
ミノフェノキシ)−エタン−N,N,N’,N’−四酢
酸(BAPTA)、エチレングリコール−ビス−(β−
アミノエチルエーテル)N,N,N’,N’−四酢酸
(EGTA)、ニトリロ三酢酸(トリグリシン、アンモ
ニア三酢酸塩、トリロンA)、トランス−1,2−ジア
ミノシクロヘキサン四酢酸(CDTA)、ジエチレント
リアミノペンタ酢酸(DTPA)、N−(2−アセトア
ミド)イミノ二酢酸(ADA)、クエン酸塩、アルギニ
ン、ハイポザンチン、4,5−ジヒドリキシベンゼン−
1,3−ジスルホン酸、クラウンエーテルタイプ化合物
およびこれら分子の全ての誘導体および前駆体などを使
用することができる。この中では、とりわけエチレンジ
アミン四酢酸が検出するべき細胞に作用せず、生物発光
法にも影響がなく好ましい。タンパク質SH基保護剤
は、ATP加水分解酵素を安定して作用させるために添
加するもので、グルタチオン、ジチオスレイトール(D
TT)、メルカプトエタノール、システイン、ジチオエ
リトリトールなどを使用できるが、ジチオスレイトール
が特に好ましい。
【0038】微生物細胞ペレットにATP加水分解酵素
を加える工程では、更に、ATP加水分解酵素活性を保
持するために、グルコース、フルクトース、アラビノー
ス、キシロース、サッカロース、トレハロース、ラクト
ース、マルトース、キシロビオースなどの糖類、マンニ
トール、キシリトール、ズルシトール、ソルビトール、
リビトール、グルシトールなどの糖アルコール、PEG
(ポリエチレングリコール)#400、PEG#600
などの水溶性高分子、グリシン、セリン、プロリン、グ
ルタミン酸、アラニンなどのアミノ酸、トリメチルアミ
ンなどのアミン類、グリセロールなどの多価アルコール
などを添加することもできる。
【0039】本発明で使用するATP抽出剤とは、ミル
ク試料から分離濃縮された微生物細胞に作用し、微生物
細胞体内に存在するATPを微生物細胞体外へ放出させ
る目的で使用される薬剤で、微生物細胞の構造を変化あ
るいは破壊させる微生物細胞の溶解剤であって、界面活
性剤、酸、アルカリ、酵素、塩、キレート剤、有機溶媒
などの天然産あるいは合成起源のいかなる細胞膜可溶化
剤をも含む。
【0040】本発明で使用するATP抽出剤としては、
ルシフェラーゼに対する変性作用が温和で、かつ膜可溶
化能に優れ、発光の検出に著しい変化を与えないものが
好ましい。ATP抽出剤として使用できるのは、セチル
トリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、臭化ド
デシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウ
ム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどの
第4級アンモニウム塩やクロルヘキシジングルコネート
などのカチオン性界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム
などのアニオン性界面活性剤、Triton X−10
0、Nonidet P−40(NP−40)などの非
イオン界面活性剤である。この中で、第4級アンモニウ
ム塩やクロルヘキシジングルコネートは、抽出が速やか
であり、ルシフェラーゼ反応への阻害が少なく好まし
い。
【0041】微生物から放出されたATPは生物発光法
を用いて測定される。本発明では、ルシフェラーゼによ
るATPの定量方法(M. A. DeLuca, Advances in Enzy
mology, 44, 37-68 (1976))を、ミルク試料中の微生物
細胞数の定量に利用することができる。このATP定量
法は、真核あるいは原核細胞数のいずれの定量化にも適
用できる。試料中に存在する微生物細胞数の定量は、測
定された試料中のATP量と微生物細胞に存在するAT
Pの平均量との関係を用いて算出される。
【0042】ATPの検出手段として使用するルシフェ
ラーゼは温度に対して不安定であるために、測定時の室
温がその発光量すなわち測定値に反映し、被検液中に存
在するATP量が同一であるにも関わらず測定値がばら
つく。すなわち、同一量のATPを測定した場合、20
℃付近で発光量は最大であり、その前後では発光量が減
少する結果が得られている。従って、検出感度が最大で
あり、測定結果のバラツキが小さくかつ信頼性を増すた
めには、ルシフェラーゼ反応温度および測定時の室温を
30℃以下、好ましくは15〜25℃とするとよい。
【0043】本発明では、ATP加水分解酵素を失活処
理しないため、ATP加水分解酵素添加後、微生物細胞
由来ATPは徐々に分解される。従って、ATP抽出剤
の添加からルシフェリン/ルシフェラーゼからなる発光
試薬の添加までに要する時間は10秒以上60秒以内が
適当であり、とりわけ10秒以内が好ましい。同様に発
光試薬添加から発光量測定までの時間も20秒以内が適
当であり、とりわけ10秒以内が好ましい。
【0044】本発明の方法においては、試料に非イオン
界面活性剤を十分に添加し、非微生物細胞由来のATP
を完全に抽出し、上澄み液として分離除去した後、AT
P加水分解酵素を添加することにより、微生物細胞ペレ
ットに混入した非微生物細胞由来のATPを完全に分解
することができる。特に、ミルク試料のような試料では
体細胞などの非微生物細胞の量が非常に多く、その分離
が大変重要である。従来の方法で検出感度が良好でなか
ったのは、遠心分離あるいはATP加水分解酵素などの
単一の操作で、非微生物細胞由来のATPを分離あるい
は分解しようとしたことに原因がある。本発明は、遠心
分離による非微生物細胞由来ATPの分離だけでなく、
ATP加水分解酵素が有効に作用する最適条件を見出し
たことにより、非微生物細胞由来ATPを分解し、微生
物細胞の選択的な高感度検出を可能にした。
【0045】ATP加水分解酵素を添加する工程におい
て、緩衝液を加えpH=6.0〜8.0とする他に、さ
らにプロテアーゼフリーの可溶性タンパク質を加えて、
ATP加水分解酵素の活性レベルを最適とする。ATP
加水分解酵素は非微生物細胞由来のATPを分解すると
きには良好に作用するが、イオン性界面活性剤で微生物
細胞由来のATPを抽出した後は、ATP加水分解酵素
の作用は緩慢であり、素早く生物発光法で測定すれば、
微生物細胞由来のATP量を選択的に検出することがで
きる。特に、ATP加水分解酵素の作用条件を厳しく制
限することで、細胞ペレット中に残存している非微生物
細胞由来のATPは分解するが、微生物細胞由来のAT
Pの分解は僅少に抑えることが可能である。更に、AT
P加水分解酵素による非微生物細胞由来のATPの分解
処理を行った後、微生物細胞からのATP抽出、及びル
シフェリン/ルシフェラーゼを含む発光試薬による処理
の短時間化が、微生物細胞由来のATPの選択的検出に
有効であった。以上の一連の操作を組み合わせることに
より、検出感度を向上させ、測定値のバラツキを抑え、
その信頼性を高めることができた。
【0046】以上、ミルク試料を例にとり、本発明の方
法を説明したが。本発明の方法は、これ以外にも、生
肉、生野菜、魚介類、加工食品、飲料(ビール、ジュー
ス等)、飲料水、産業用水(例えば、製紙業における白
水、印刷業における湿し水等)などの試料についても適
用できる。例えば、飲料、飲料水、産業用水などの試料
中に存在する微生物細胞由来のATPを検出及び/また
は測定する場合には、非イオン界面活性剤を添加して非
微生物細胞中のATPを細胞外へ出す工程を省略するこ
とができる。
【0047】更に、本発明は、pHを6.0〜8.0に
調整しうる緩衝液、プロテアーゼフリーの可溶性タンパ
ク質及びATP加水分解酵素を含む試薬、ATP抽出剤
を含む試薬、並びに生物発光試薬を含むことを特徴とす
る、微生物細胞に由来するATPを検出及び/または測
定するための試薬キットを包含する。この試薬キット
は、さらに非イオン界面活性剤を含む試薬を含んでもよ
い。pHを6.0〜8.0に調整しうる緩衝液、プロテ
アーゼフリーの可溶性タンパク質及びATP加水分解酵
素を含む試薬は。上記のような緩衝液、プロテアーゼフ
リーの可溶性タンパク質及びATP加水分解酵素を含む
が、この他に、ATP加水分解酵素活性化剤、防腐剤、
キレート剤、タンパク質SH基保護剤、糖、多価アルコ
ール、水溶性高分子、アミノ酸、アミン類、有機溶媒な
どを含んでもよい。また、この試薬は、凍結乾燥等によ
って一旦粉末化してもよい。その場合には、使用の直前
に、アジ化ナトリウムなどの防腐剤、キレート剤などを
含む緩衝液(例えば、HEPES緩衝液、MOPS緩衝
液などのグッドの緩衝液など)を加えて溶解させるとよ
い。ATP抽出剤を含む試薬は、上記のような非イオン
界面活性剤を含むが、この他に、トリクロロ酢酸などの
酸、アルカリ、リゾチームなどの酵素、キレート剤、有
機溶媒などを含んでもよい。生物発光試薬は、生物発光
によりATPを検出することができる試薬であればよ
く、例えば、生物発光反応の酵素(ルシフェラーゼな
ど)とその基質(ルシフェリンなど)などを含む。例と
して、ホタル、ヒカリコメツキ、ホタルモドキなどに由
来する酵素と基質が挙げられる。その他に、緩衝液、キ
レート剤、カルシウムやマグネシウムなどの2価のカチ
オン、タンパク質SH基保護剤、プロテアーゼフリーの
可溶性タンパク質、防腐剤、多価アルコール、水溶性高
分子、アミノ酸、アミン類、有機溶媒などを含んでもよ
い。使用の際。このキットの各試薬は、最初に混合して
から使用するか、あるいは、各試薬を各工程における使
用の直前に混合して使用してもよい。本発明の試薬キッ
トは、各々の試薬を充填したバイアル、チューブなどの
ような1つまたはそれ以上の容器がひとまとめにして納
めされるための区画化された収納部材に納めされる形態
であってもよい。各試薬は各容器に充填される前に、滅
菌されるとよい。更に、酵素を含む液体状の各試薬は、
保存性を高めるために、凍結乾燥等の手段によって脱水
して粉末状にして密栓してもよい。密栓した容器中は、
例えば、真空あるいは/または窒素ガス等で封入するな
どして、酸素が存在しない状態である方が望ましい。こ
のようにして凍結乾燥等の手段によって粉末化した場合
には、使用の直前に滅菌した水あるいは緩衝液などを加
えて溶解して水溶液としてから使用することが望まし
い。
【0048】
【実施例】以下、実施例によって本発明を説明するが、
本発明の範囲がこれらの実施例にのみ限定されるもので
はない。
【0049】(実施例1) 1)Neutrient Broth (NB)液体培地5mlにて30
℃で一晩振盪培養した以下の5種類の微生物を、滅菌水
で10倍毎に段階希釈した。 Serattia liquefaciens PB 1707 Pseudomonas aeruginosa ATCC 9027 Enterobacter spp. Bacillus subtilis ATCC 6633 Staphylococcus aureus ATCC 6538 2)1.5ml容の蓋付き遠心分離用チューブに、以下
に示すミルク試料1mlを加えた。 ミルク試料;市販の超高温殺菌牛乳 3)1)の希釈液の各濃度から10μlを採取し、2)
のミルク試料に接種して、室温に10分程度放置した。 4)以下に示すキレート剤および非イオン界面活性剤含
有水溶液500μlを添加し、遠心分離用チューブの蓋
をした。 キレート剤及び非イオン界面活性剤含水有溶液組成; ポリスチレンラテックス 0.01% Triton X−100 0.5% EDTA 0.15M
【0050】5)混和後、12,000×gで5分間の
遠心分離を行ない、微生物細胞ペレットと他のミルク成
分とを分離した。 6)分離した微生物細胞ペレットから、ペレット以外の
他のミルク成分をアスピレーターで吸引除去した。 7)遠心分離用チューブの底部に残存した微生物細胞ペ
レットに、以下に示すATP加水分解酵素含有水溶液1
00μlを加えて撹拌・懸濁させ、25℃で30分間イ
ンキュベートして、非微生物由来ATPを分解した。 ATP加水分解酵素含有水溶液組成; アピラーゼ(ジャガイモ由来、Sigma社製GradeVI) 酵素活性(ΔlogRLU)=2.0 オボアルブミン(ニワトリ卵由来、Sigma社製GradeVI) 1mg/ml CaCl2 2mM MgCl2 0.05mM ペニシリンG−Na塩(Sigma社製) 0.1% EDTA 0.1mM DTT 1mM MOPS/NaOH緩衝液(pH7.0) 25mM
【0051】8)反応後、懸濁液を測定用セルに移し換
え、ATP抽出剤100μlを加えて10秒間反応させ
て、微生物細胞からATPを放出させた。 ATP抽出剤組成; CTAB 0.0075% 9)微生物から放出されたATPを、ルシフェリン/ホ
タルルシフェラーゼを含有する発光試薬(東洋インキ製
造(株)製 商品名:菌士郎)100μlを添加し、添
加後10秒間の発光量の積算値を測定した。これを人工
汚染牛乳である試料Aの相対発光量(logRLU)と
した。 10)一方、陽性対照として1)の希釈液の各濃度か
ら、試料Aに加えたのと同量の10μl、すなわち試料
Aに含まれる菌数と等量の菌数をルミノメーター用測定
セルに採取してATP抽出剤100μlを加え、10秒
間溶菌後、発光試薬(東洋インキ製造(株)製 商品
名:菌士郎)100μlを加えて10秒間の発光量の積
算値を測定した。これを試料Bの相対発光量(logR
LU)とした。 11)試料Aおよび試料Bの菌数は等量である。従っ
て、1)の各濃度の希釈液100μlを標準寒天培地に
塗布後、30℃・48時間の培養で生育したコロニー数
を計数して、各希釈液の10μl当たりに含まれる菌数
を算出して、これを試料Aおよび試料Bの菌数(log
CFU)とした。
【0052】各微生物について求めた菌数(logCF
U)と相対発光量(logRLU)の関係を図1・図2
・図3・図4・図5に示した。試料A(□)及び試料B
(◇)でともに、菌数(logCFU)が3から8の範
囲で相対発光量との間に直線性があり、相対発光量(l
ogRLU)より菌数(logCFU)の定量が可能で
あった。また、人工汚染牛乳である試料Aと牛乳を含ま
ない試料Bの相対発光量(logRLU)と菌数(lo
gCFU)の間には良好な相関が認められ、微生物細胞
及び非微生物細胞混合物を含む典型的な試料である牛乳
から、微生物細胞からのATPのみが殆ど損なわれるこ
となく測定され、更に菌数(logCFU)で3から8
の範囲で、相対発光量の値から菌数(logCFU)が
定量できることが示された。
【0053】(実施例2)以下、実施例2〜7には、代
表的なミルク試料汚染微生物である Staphylococcus au
reus ATCC 6538を供試した結果を示した。実施例1の
7)に示されたATP加水分解酵素含有水溶液におい
て、プロテアーゼフリーの可溶性タンパク質として用い
たオボアルブミンの代わりに血清アルブミン(ウシ由
来、INTERGEN社製)を同濃度含む水溶液を用
い、試料Aを対象として、その他の操作は実施例1と全
く同様に行なって、菌数(logCFU)と相対発光量
(logRLU)との関係を求めた。結果を図6に示し
た。図6中、○は実施例2の結果を、□は実施例1の試
料Aの結果を示したものである。ウシ血清アルブミンを
用いた場合も、菌数(logCFU)が3から8の範囲
で相対発光量との間に直線性があり、また、実施例1の
試料Aとの間にも良好な相関が認められ、菌数(log
CFU)で3から8の間で、相対発光量の値から菌数
(logCFU)が定量できることが示された。
【0054】(実施例3)実施例1の7)に示されたA
TP加水分解酵素含有水溶液において、プロテアーゼフ
リーの可溶性タンパク質として用いたオボアルブミンの
代わりに血清アルブミン(ブタ由来、Sigma社製)
を同濃度含む水溶液を用い、試料Aを対象として、その
他の操作は実施例1と全く同様に行なって、菌数(lo
gCFU)と相対発光量(logRLU)との関係を求
めた。結果を図7に示した。図7中、○は実施例3の結
果を、□は実施例1の試料Aの結果を示したものであ
る。ブタ血清アルブミンを用いた場合も、菌数(log
CFU)が3から8の範囲で相対発光量との間に直線性
があり、また、実施例1の試料Aとの間にも良好な相関
が認められ、菌数(logCFU)で3から8の間で、
相対発光量の値から菌数(logCFU)が定量できる
ことが示された。
【0055】(実施例4)実施例1の7)に示されたA
TP加水分解酵素含有水溶液において、プロテアーゼフ
リーの可溶性タンパク質として用いたオボアルブミンの
代わりにラクトフェリン(ウシ乳由来、Sigma社
製)を同濃度含む水溶液を用い、試料Aを対象として、
その他の操作は実施例1と全く同様に行なって、菌数
(logCFU)と相対発光量(logRLU)との関
係を求めた。結果を図8にしたす。図8中、○は実施例
4の結果を、□は実施例1の試料Aの結果を示したもの
である。ラクトフェリンを用いた場合も、菌数(log
CFU)が3から8の範囲で相対発光量との間に直線性
があり、また、実施例1の試料Aとの間にも良好な相関
が認められ、菌数(logCFU)で3から8の間で、
相対発光量の値から菌数(logCFU)が定量できる
ことが示された。
【0056】(実施例5)実施例1の7)に示されたA
TP加水分解酵素含有水溶液において、防腐剤として添
加したペニシリンG−Na塩の代わりにアジ化ナトリウ
ム、またはクレゾールを同濃度含む水溶液を用い、試料
Aを対象として、その他の操作は実施例1と全く同様に
行なって、菌数(logCFU)と相対発光量(log
RLU)との関係を求めた。結果を図9に示した。図9
中、○はアジ化ナトリウムを用いた場合の結果を、△は
クレゾールを用いた場合の結果を、また、□は実施例1
の試料Aの結果を示したものである。防腐剤としてアジ
化ナトリウム、またはクレゾールを用いた場合も、菌数
(logCFU)が3から8の範囲で相対発光量との間
に直線性があり、また、実施例1の試料Aとの間にも良
好な相関が認められ、菌数(logCFU)で3から8
の間で、相対発光量の値から菌数(logCFU)が定
量できることが示された。
【0057】(実施例6)実施例1の7)に示されたA
TP加水分解酵素含有水溶液において、MOPS−Na
OH緩衝液(pH7.0)の代わりに同濃度のMES−
NaOH緩衝液(pH6.5)、またはHEPES−N
aOH緩衝液(pH7.0)、またはTris−塩酸緩
衝液(pH7.5)を用いた水溶液を用い、試料Aを対
象として、その他の操作は実施例1と全く同様に行なっ
て、菌数(logCFU)と相対発光量(logRL
U)との関係を求めた。結果を図10に示した。図10
中、○はMES−NaOH緩衝液を用いた場合の結果
を、△はHEPES−NaOH緩衝液を用いた場合の結
果を、▽はTris−塩酸緩衝液を用いた場合の結果
を、また、□は実施例1の試料Aの結果を示したもので
ある。緩衝液としてMES−NaOH緩衝液、またはH
EPES−NaOH緩衝液、またはTris−塩酸緩衝
液を用いた場合も、菌数(logCFU)が3から8の
範囲で相対発光量との間に直線性があり、また、実施例
1の試料Aとの間にも良好な相関が認められ、菌数(l
ogCFU)で3から8の間で、相対発光量の値から菌
数(logCFU)が定量できることが示された。
【0058】(実施例7)以下のようにして、試薬A、
試薬B、試薬C、生物発光試薬、ATP標準液と、それ
らの溶解液よりなる試薬キットを調製した。 試薬Aの調製:キレート剤として1.5M ADA溶液
(pH6.8)を、また、非イオン界面活性剤として1
0%Triton X−100溶液を調製した。なお、
ADA水溶液のpH調整には、10N NaOH溶液を
用いた。500ml容メスシリンダーに10%Trit
on X−100溶液15mlをとり、これに滅菌超純
水を加えて150mlとして溶解した。これに、1.5
M ADA溶液30mlを加え、十分に攪拌して溶解し
た後、全容を300mlとした。得られた溶液を0.2
μmのフィルターで濾過して滅菌した後、10%ポリス
チレンラテックス(積水化学工業(株)製Latexソ
ープフリータイプN−800(粒径0.78μm))3
00μlを無菌的に添加した。得られた溶液を、滅菌済
みの60ml容PETG製容器に50mlずつ分注後密
栓をして、試薬Aとした。 試薬Bの調製:25mM HEPES緩衝液(pH7.
0)に、血清アルブミン(ウシ由来、INTERGEN
E社製)、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びE
DTAを、それぞれ12mg/ml、24mM、0.6
mM、及び1.2mMとなるように溶解し、さらに、ア
ピラーゼ(ジャガイモ由来、Sigma社製Grade
VI)を、酵素活性(ΔlogRLU/分)が24とな
るように添加した。これを、0.45μmのフィルター
で濾過して滅菌した後、真空凍結乾燥用の褐色ガラス瓶
に1mlずつ分注し、−40℃で24時間凍結乾燥し、
真空状態でゴム栓をして密栓した。測定時には、これに
0.1%アジ化ナトリウムを含む25mM HEPES
緩衝液(pH7.0)12mlを加えて溶解させ、これ
を試薬Bとして用いた。 試薬Cの調製:500ml容フラスコに滅菌超純水19
7.25ml、クロルヘキシジンジグルコネート(20
%溶液、Aldrich社製)0.75ml、及び0.
75%CTAB溶液2mlを加え、良く攪拌して混合し
た。これを0.2μmのフィルターで濾過して滅菌した
後、滅菌済みの15ml容HDPE製遮光性容器に12
mlずつ分注後密栓をして、試薬Cとした。 生物発光試薬の調製:150mM Tris−酢酸緩衝
液(pH7.75)に、EDTA、酢酸マグネシウム、
DTT、血清アルブミン(ウシ由来、INTERGEN
社製)、及びD−ルシフェリンを、それぞれ、0.6m
M、300mM、3mM、9mg/ml、及び4.5m
Mとなるように溶解し、さらに精製したホタルルシフェ
ラーゼを添加した。この際、この溶液の一部を採取して
滅菌超純水で6倍に希釈したとき、10-12 mole
のATPに対して2×106 RLU程度の発光が得られ
るようにルシフェラーゼ量を調整した。これを、0.4
5μmのフィルターで濾過して滅菌した後、真空凍結乾
燥用の褐色ガラス瓶に2mlずつ分注し、−20℃で2
4時間凍結乾燥し、真空状態でゴム栓をして密栓した。
測定時には、これにATPフリーの滅菌超純水12ml
を加えて溶解させ、これを生物発光試薬とした。また、
測定に際しては、以下に示すATP標準液を用いて前述
の発光と同程度の発光が得られることを確認した。 ATP標準液の調製:10mM HEPES緩衝液(p
H7.75)に、ATPを2×109 Mとなるように溶
解して調製した。得られた試薬キットを用いて、試料A
を対象として、その他の操作は実施例1と全く同様に行
って、菌数(logCFU)と相対発光量(logRL
U)との関係を求めた。すなわち、実施例1における
「キレート剤及び非イオン界面活性剤含有水溶液」の代
わりに試薬Aを、「ATP加水分解酵素含有水溶液」の
代わりに試薬Bを、「ATP抽出剤」の代わりに試薬C
を、そして、「発光試薬(東洋インキ製造(株)製 商
品名:菌士郎)」の代わりに生物発光試薬を用いて測定
を行った。結果を図11に示した。図11中、○は実施
例7の結果を、□は実施例1の試料Aに結果を示した。
上記試薬キットを用いた場合も、菌数(logCFU)
が3から8の範囲で相対発光量との間に直線性があり、
また、実施例1の試料Aとの間にも良好な相関が認めら
れ、菌数(logCFU)が3から8の範囲で、相対発
光量から菌数(logCFU)が定量できることが示さ
れた。
【0059】(比較例1)以下、比較例1〜3には、代
表的なミルク試料汚染微生物である Staphylococcus au
reus ATCC 6538を供試した結果を示した。実施例1の
7)に示されたATP加水分解酵素含有水溶液よりアピ
ラーゼを除いた組成の水溶液を用い、試料Aを対象とし
て、その他の操作は実施例1と全く同様に行い、菌数
(logCFU)と相対発光量(logRLU)の関係
を求めた。結果を図12に示した。図12中、○は比較
例1の結果を、□は実施例1の試料Aの結果を示したも
のである。図12に示されたように、アピラーゼを用い
ない測定方法では、菌数(logCFU)が5以下では
相対発光量(logRLU)は低下せず、実施例1の試
料Aとの間にも良好な相関が認められないため、測定法
としては不適切であった。
【0060】(比較例2)実施例1の7)に示されたA
TP加水分解酵素含有水溶液より、プロテアーゼフリー
の可溶性タンパク質として用いたオボアルブミンを除い
た組成の水溶液を用い、試料Aを対象として、その他の
操作は実施例1と全く同様に行い、菌数(logCF
U)と相対発光量(logRLU)の関係を求めた。結
果を図13に示した。図13中、○は比較例2の結果
を、□は実施例1の試料Aの結果を示したものである。
図13に示されたように、オボアルブミンを用いない測
定方法では、菌数(logCFU)が5以下では相対発
光量(logRLU)は低下せず、実施例1の試料Aと
の間にも良好な相関が認められないため、測定法として
は不適切であった。
【0061】(比較例3)実施例1の7)に示されたA
TP加水分解酵素含有水溶液において、MOPS−Na
OH緩衝液(pH7.0)の代わりに同濃度のコハク酸
ナトリウム緩衝液(pH5.0)、またはGTA緩衝液
(pH9.0)(「蛋白質・酵素の基礎実験法」435
頁記載)を用い、試料Aを対象として、その他の操作は
実施例と全く同様に行い、菌数(logCFU)と相対
発光量(logRLU)の関係を求めた。結果を図14
に示した。図14中、○はコハク酸ナトリウム緩衝液を
用いた結果を、△はGTA緩衝液を用いた結果を、ま
た、□は実施例1の試料Aの結果を示したものである。
図14に示されたように、pH領域が酸性側あるいはア
ルカリ性側にある緩衝液を用いた測定方法では、菌数
(logCFU)が5以下では相対発光量(logRL
U)は低下せず、実施例1の試料Aとの間にも良好な相
関が認められないため、測定法としては不適切であっ
た。
【0062】
【発明の効果】本発明により、試料、特にミルク試料中
に存在する微生物細胞に由来するATPを選択的に検出
及び/または測定する方法の検出感度が大幅に改善され
た。非イオン界面活性剤によって非微生物細胞由来AT
Pを抽出し、ATP加水分解酵素で分解した後、ATP
抽出剤で微生物細胞からATPを抽出し、生物発光法で
検出するという一連の操作の中で、ATP加水分解酵素
の活性を最適化したことにより、微生物細胞由来のAT
Pを損なうことなく非微生物細胞由来のATPを分解で
きるようになり、非微生物細胞由来ATPによるノイズ
を最小にすることができた。遠心分離操作の併用によ
り、ミルク試料中の微生物の検出感度は10 2 〜103
CFU/mlとなった。遠心分離を伴う従来の方法で
は、非微生物細胞由来のATPを除くために遠心分離を
繰り返す必要があったが、本発明の方法では、1回の遠
心分離で良好な結果が得られるようになり、測定時間が
短縮できた。
【0063】
【図面の簡単な説明】
【図1】Serattia liquefacience PB 1707を添加した試
料における菌数(logCFU)と相対発光量(log
RLU)との関係を示す。
【図2】Pseudomonas aeruginosa ATCC 9027を添加した
試料における菌数(logCFU)と相対発光量(lo
gRLU)との関係を示す。
【図3】Enterobacter spp. を添加した試料における菌
数(logCFU)と相対発光量(logRLU)との
関係を示す。
【図4】Bacillus subtilis ATCC 6633 を添加した試料
における菌数(logCFU)と相対発光量(logR
LU)との関係を示す。
【図5】Staphylococcus aureus ATCC 6538 を添加した
試料における菌数(logCFU)と相対発光量(lo
gRLU)との関係を示す。
【図6】Staphylococcus aureus ATCC 6538 を添加した
試料における菌数(logCFU)と相対発光量(lo
gRLU)との関係を示す。
【図7】Staphylococcus aureus ATCC 6538 を添加した
試料における菌数(logCFU)と相対発光量(lo
gRLU)との関係を示す。
【図8】Staphylococcus aureus ATCC 6538 を添加した
試料における菌数(logCFU)と相対発光量(lo
gRLU)との関係を示す。
【図9】Staphylococcus aureus ATCC 6538 を添加した
試料における菌数(logCFU)と相対発光量(lo
gRLU)との関係を示す。
【図10】Staphylococcus aureus ATCC 6538 を添加し
た試料における菌数(logCFU)と相対発光量(l
ogRLU)との関係を示す。
【図11】Staphylococcus aureus ATCC 6538 を添加し
た試料における菌数(logCFU)と相対発光量(l
ogRLU)との関係を示す。
【図12】Staphylococcus aureus ATCC 6538 を添加し
た試料における菌数(logCFU)と相対発光量(l
ogRLU)との関係を示す。
【図13】Staphylococcus aureus ATCC 6538 を添加し
た試料における菌数(logCFU)と相対発光量(l
ogRLU)との関係を示す。
【図14】Staphylococcus aureus ATCC 6538 を添加し
た試料における菌数(logCFU)と相対発光量(l
ogRLU)との関係を示す。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 試料中に存在する微生物細胞に由来する
    ATPを検出及び/または測定する方法であって、試料
    を遠心分離して上澄み液を除去し微生物細胞ペレットを
    形成する工程、微生物細胞ペレットにプロテアーゼフリ
    ーの可溶性タンパク質とATP加水分解酵素を含む緩衝
    液を加えてpH=6.0〜8.0の条件下でインキュベ
    ートする工程、ATP抽出剤を添加し微生物細胞からA
    TPを抽出する工程、及び微生物細胞から放出されたA
    TPを生物発光法を用いて検出及び/または測定する工
    程を含むことを特徴とする前記の方法。
  2. 【請求項2】 試料を遠心分離する前に非イオン界面活
    性剤を添加して、試料中に存在する非微生物細胞中のA
    TPを細胞外へ出す工程をさらに含む請求項1記載の測
    定方法。
  3. 【請求項3】 非イオン界面活性剤を添加して非微生物
    細胞中のATPを細胞外へ出す工程において、キレート
    剤を添加する請求項2記載の測定方法
  4. 【請求項4】 微生物細胞ペレットにプロテアーゼフリ
    ーの可溶性タンパク質とATP加水分解酵素を含む緩衝
    液を加えてpH=6.0〜8.0の条件下でインキュベ
    ートする工程において、ATP加水分解酵素活性化剤を
    添加する請求項1〜3いずれか記載の測定方法。
  5. 【請求項5】 微生物細胞ペレットにプロテアーゼフリ
    ーの可溶性タンパク質とATP加水分解酵素を含む緩衝
    液を加えてpH=6.0〜8.0の条件下でインキュベ
    ートする工程において、防腐剤を添加する請求項1〜4
    いずれか記載の測定方法。
  6. 【請求項6】 微生物細胞ペレットにプロテアーゼフリ
    ーの可溶性タンパク質とATP加水分解酵素を含む緩衝
    液を加えてpH=6.0〜8.0の条件下でインキュベ
    ートする工程において、キレート剤を添加する請求項1
    〜5いずれか記載の測定方法。
  7. 【請求項7】 微生物細胞ペレットにプロテアーゼフリ
    ーの可溶性タンパク質とATP加水分解酵素を含む緩衝
    液を加えてpH=6.0〜8.0の条件下でインキュベ
    ートする工程において、タンパク質SH基保護剤を添加
    する請求項1〜6いずれか記載の測定方法。
  8. 【請求項8】 生物発光法がルシフェリン及びルシフェ
    ラーゼを含む請求項1〜7いずれか記載の測定方法。
  9. 【請求項9】 pHを6.0〜8.0に調整しうる緩衝
    液、プロテアーゼフリーの可溶性タンパク質及びATP
    加水分解酵素を含む試薬、ATP抽出剤を含む試薬、並
    びに生物発光試薬を含むことを特徴とする、微生物細胞
    に由来するATPを検出及び/または測定するための試
    薬キット。
  10. 【請求項10】 生物発光試薬がルシフェリン及びルシ
    フェラーゼを含む請求項9記載の試薬キット。
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