JP3380956B2 - 黄色ブドウ球菌の検出培地 - Google Patents

黄色ブドウ球菌の検出培地

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 黄色ブドウ球菌の検出培地
に関するもので、従来の識別条件である耐塩性およびマ
ンニットからの酸生成の有無に加え、黄色ブドウ球菌の
生理学的な特徴を利用して、コロニーを着色し当該菌の
レシトビテリン反応(卵黄反応)を容易に観察できる、
あるいは反対に、当該菌の以外のコロニーを着色し、当
該菌の検出を容易にする特異性の高い黄色ブドウ球菌の
選択培地の組成に関する。 【0002】 【従来の技術】 黄色ブドウ球菌は人や動物の化膿蒼に
由来する食中毒菌である。そのため、黄色ブドウ球菌検
査は、食品の微生物検査で高頻度で実施される項目であ
り、食肉検査協会の検査項目でもある。 【0003】従来の黄色ブドウ球菌の検出培地として、
卵黄加マンニット食塩寒天培地、スタフィロコッカス1
10寒天培地(チャップマン寒天培地)、ベアードパー
カー寒天培地、クラネップ寒天培地、コアグラーゼ−マ
ンニット寒天培地、テルライト−グリシン寒天培地、T
GSE寒天培地など多種類の培地が市販されている。 【0004】<従来培地の選択原理>以下にすでに市販
されている黄色ブドウ球菌検出培地7種の検出原理を述
べる。 【0005】マンニット食塩寒天培地は耐塩性とマンニ
ット分解性(マンニットからの酸生成)、および黄色色
素の生成を識別条件とした培地である(新 細菌培地学
講座下II(第二版) 近代出版 294、295ページ 1992
年)。この培地に卵黄溶液を含有させれば、卵黄反応が
観察可能となる。よってマンニット食塩寒天培地に卵黄
を含有させた卵黄加マンニット食塩寒天培地は、食品微
生物の公定検出法を記載した食品衛生検査指針 微生物
編(厚生省生活衛生局 監修 160〜163ページ(社)日
本食品衛生協会 1990年)に記載され、一般に用いられ
ている。 【0006】スタフィロコッカス110寒天培地(チャ
ップマン寒天培地)は、黄色ブドウ球菌の識別原理とし
て、耐塩性、マンニット分解性、ゼラチン液化能、黄色
色素生成能を利用した培地である(新 細菌培地学講座
下II(第二版) 380、381ページ)。 【0007】ベアードパーカー寒天培地は黄色ブドウ球
菌の識別原理として、卵黄反応、亜テルル酸塩還元性を
利用した培地である。この培地はピルビン酸ナトリウム
を含有する。ピルビン酸ナトリウムは、過酸化水素分解
作用とともに黄色ブドウ球菌の発育促進作用をもつ。よ
って、ベアードパーカー寒天培地は、加熱した食品や乾
燥食品のように菌の活性が低下した状態のサンプルから
でも黄色ブドウ球菌の検出が可能である(新 細菌培地
学講座 下II(第二版) 62、63ページ)。 【0008】クラネップ寒天培地の選択原理は、含有さ
れているチオシアン酸カリウムがグラム陰性菌の生育を
抑制し、アクチジオンが芽胞形成菌を生育を抑制し、塩
化リチウムと窒化ナトリウムが他の細菌の発育を阻止す
る。これらに加えて卵黄反応によって黄色ブドウ球菌を
識別する(微生物培地マニュアル メルク・ジャパン
(株) 114ページ 1995年)。 【0009】コアグラーゼマンニット寒天培地は、ブレ
インハートインフュージョンを含むのが特徴である。ブ
レインハートインフュージョンは、コアグラーゼの産生
を促進させる(新 細菌培地学講座 下II(第二版)
242、243ページ)。 【0010】テルライトグリシン寒天培地の選択原理
は、亜テルル酸塩と塩化リチウムによりブドウ球菌以外
の菌の生育を抑制し、亜テルル酸塩とグリシンにより黄
色ブドウ球菌以外のブドウ球菌を抑制する。黄色ブドウ
球菌は亜テルル酸塩を還元し、金属テルルとするので集
落は黒色となる(新 細菌培地学講座 下II(第二版)
414〜416ページ)。 【0011】TGSE寒天には亜テルル酸カリウム、塩
化リチウム、グリシン、卵黄および食塩が含まれている
のが特徴である(製品要覧I(第十六版) 日水製薬 1
02、103ページ 1996年)。亜テルル酸塩と塩化リチウ
ムによりブドウ球菌以外の菌の生育を抑制し、亜テルル
酸塩とグリシンにより黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌
を抑制する。黄色ブドウ球菌は亜テルル酸塩を還元し、
金属テルルとするので集落は黒色となる。さらに卵黄お
よび食塩が含まれるため、卵黄反応および耐塩性によっ
ても黄色ブドウ球菌が識別される。 【0012】 【発明が解決しようとする課題】従来の検出法には問題
が存在する。まず、マンニット食塩寒天培地およびスタ
フィロコッカス110寒天培地においては、黄色ブドウ
球菌の示す黄色色素の産生能力は黄色ブドウ球菌に属す
る株の中においても差がある(食品衛生検査指針微生物
編 165ページ)。よって、株によっては黄色色素の生
成が少なく、コロニーは白色に近い呈色を示す。この場
合に卵黄反応によってコロニーの周囲に生じる油膜(白
濁環)とのコントラストが悪くなる。そのため色素の生
成と卵黄反応を識別条件とする卵黄加マンニット食塩寒
天培地およびスタフィロコッカス110寒天培地におい
ては、黄色ブドウ球菌の識別が困難となる。 【0013】また、標準株をポジティブコントロールと
して試験株と同時にマンニット食塩培地に接種しても、
卵黄反応の有無による識別は必ずしも容易ではない。ま
してや、標準株を持たない多くの食品企業の検査室のス
タッフでは判定が困難なことが多い。さらにスタフィロ
コッカス110寒天培地は、選択性が強くないので他の
菌もかなり増殖し、黄色ブドウ球菌の判別が困難な場合
がある。スタフィロコッカス110寒天培地上での黄色
ブドウ球菌の色素産生は30℃で培養した場合に観察し
やすいが、培養時間を48時間程度に延長しないと、他
の黄色ブドウ球菌特有の性質が観察しにくい(新 細菌
培地学講座 下II(第二版) 301ページ) 【0014】プロテウス属に属する株はベアードパーカ
ー寒天培地上においてもしばしば生育し、しかも黄色ブ
ドウ球菌と同様の呈色を示すため判定を誤ることがあ
る。一方、ベアードパーカー寒天培地に含まれる亜テル
ル酸塩は選択力が強く、黄色ブドウ球菌に属する株の中
でも亜テルル酸塩耐性の弱い株は、生育が阻害される
(ジャーナル・オブ・アプライド・バクテリオロジー
(Journal of Applied Bacteriology)61巻 149ページ
1986年)。テルライトグリシン寒天培地は、ベアード
パーカー寒天培地と同様に亜テルル酸塩を含み、黄色ブ
ドウ球菌の株によっては、生育が抑制される可能性があ
る。よって、食品のような黄色ブドウ球菌の少ないサン
プルからの黄色ブドウ球菌の検出に用いるのはやや危険
で、食中毒の原因食のような大量のブドウ球菌を含む、
あるいは雑菌の多いサンプルからの黄色ブドウ球菌の検
出に適する(新 細菌培地学講座 下II(第二版) 41
4〜416ページ)。 【0015】TGSE寒天培地は、ベアードパーカー寒
天と同様に亜テルル酸塩(0.1g/l)、グリシン(5g/
l)、塩化リチウム(5g/l)を含有する。したがって、
ベアードパーカー寒天培地と同様の問題を抱えている。
すなわち、黄色ブドウ球菌の株によっては、生育が抑制
される可能性がある。しかも、ベアードパーカー寒天培
地には含まれていない食塩(6.5%)を含み(製品要覧I
(第十六版) 日水製薬 102、103ページ)、さらに黄
色ブドウ球菌の生育を抑制する可能性がある。 【0016】コアグラーゼマンニット寒天培地は、黄色
ブドウ球菌の重要な識別条件であるコアグラーゼ反応を
観察した場合に、コアグラーゼ陰性の株が誤って陽性と
判定されることが多い(アメリカン・ジャーナル・オブ
・クリニカル・パソロジー(American Journal of Clin
ical Pathology)48巻 153ページ 1978年)。黄色ブ
ドウ球菌はコアグラーゼ陽性であることから、黄色ブド
ウ球菌の数が実際より多く計数されてしまう(新 細菌
培地学講座 下II(第二版) 242、243ページ)。ま
た、血清を使用するので、検査コストが高くなる。 【0017】また、ベアードパーカー寒天培地、クラネ
ップ寒天培地、コアグラーゼマンニット寒天培地、およ
びテルライトグリシン寒天培地は価格が高く、食品の検
査などの頻度が多い検査にはよりコストの安い検出培地
が求められている。 【0018】黄色ブドウ球菌の確定試験は、ラテックス
試薬による凝集テストを用いる。抗体を用いるラテック
ス試薬はコストが高い。よって、より特異性の高い選択
培地で黄色ブドウ球菌を絞りこんでおくのが望ましい。 【0019】したがって、本発明の課題は、黄色ブドウ
球菌の識別が従来の培地よりも容易で、しかも安価な黄
色ブドウ球菌の検出培地を提供することにある。 【0020】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の培地では従来の卵黄加マンニット食塩寒天
培地に亜テルル酸塩を含有させる処方あるいはβ−ガラ
クトシダーゼの発色基質を含有させる処方の2通りの処
方で黄色ブドウ球菌の識別を容易にした。 【0021】本発明の2種類の培地いずれを用いても、
黄色ブドウ球菌のコロニーは発色基質で着色するために
卵黄反応の油膜とのコントラストをより明瞭にできる。
また、本発明で到達した2番目の方法は、ブドウ球菌
(Staphylococcus属)には属するが、黄色ブドウ球菌
(S.aureus)ではない株のコロニーを発色基質で着色
し、黄色ブドウ球菌の識別を容易にする方法である。さ
らに本発明の2種類の培地は、価格が安く、かつ多用さ
れている卵黄加マンニット食塩寒天培地に特定の試薬を
添加した培地であるので、低コストで生産が可能であ
る。 【0022】本発明の第1番目の処方は亜テルル酸塩卵
黄加マンニット食塩寒天培地と名付けた培地で、卵黄加
マンニット食塩寒天培地に亜テルル酸塩を加える処方で
ある。亜テルル酸塩は選択力が強いため、黄色ブドウ球
菌であっても亜テルル酸塩耐性の弱い株は、生育が阻害
される(ジャーナル・オブ・アプライド・バクテリオロ
ジー 61巻 149ページ)。卵黄加マンニット食塩寒天培
地に含有される食塩は7.5%と高濃度である。発明者の実
験によれば、卵黄加マンニット食塩寒天培地に亜テルル
酸カリウムをベアードパーカー寒天培地と同じ濃度(0.
1g/l)で含有させた培地を調製黄色ブドウ球菌を接種し
たところ、生育は著しく抑制された。生育が阻害された
ために卵黄反応が抑制され、黄色ブドウ球菌の識別が困
難となり実用性はなかった。よって、単に卵黄加マンニ
ット食塩寒天培地とベアードパーカー寒天培地の組成の
組み合わせでは、本発明の目的を達成することができな
いことがわかった。そこで、生育阻害が起きず、しかも
短時間(24時間前後)で金属テルルの黒色が卵黄反応の
白濁環とコントラストが良好に現れる濃度を鋭意検討し
た。その結果、亜テルル酸カリウム濃度が10〜50mg/lの
場合にコロニーがよく染色され、生育阻害も軽減される
ことが判明した。 【0023】本発明の第2番目の処方は、X−gal卵
黄加マンニット食塩寒天培地と名付けた培地で、卵黄加
マンニット食塩寒天培地にβ−ガラクトシダーゼの発色
基質であるX−galを含有させる処方である。黄色ブ
ドウ球菌の生理学的性質では、β−ガラクトシダーゼが
無い。ブドウ球菌には属するが、黄色ブドウ球菌ではな
い種、例えばスタフィロコッカス・サプロフィティカス
(S.saprophyticus)やスタフィロコッカス・キシロサ
ス(S.xylosus)の種に属する株は、β−ガラクトシダ
ーゼ活性を持つ。β−ガラクトシダーゼ活性を持つ株は
合成発色基質であるX−galを分解するため、X−g
alが存在するとコロニーが青く着色する。この性質を
利用すれば、X−galを含有させた培地上に生育した
青いコロニーは全て黄色ブドウ球菌ではないと判定でき
る。しかし、本発明者の実験によれば、卵黄加マンニッ
ト食塩寒天培地にX−galのみを含有させた処方で
は、24時間培養後のコロニーの色は薄かった。そこで発
色が明瞭になるように、β−ガラクトシダーゼの誘導物
質であるIPTGを含有させβ−ガラクトシダーゼの産
生を促進させた。IPTGを含有させた卵黄加マンニッ
ト食塩寒天培地で、発色基質(X−gal)濃度を検討
した結果、X−galの濃度を30〜60mg/lとした場合に
限って、37℃24時間培養後にコロニーが十分に青く着色
された。また、X−galとIPTGを共に添加したこ
とによる生育阻害は認められなかった。 【0024】以上の2通りの処方のいずれによっても、
黄色ブドウ球菌の生育、卵黄反応の出現、ならびにマン
ニットからの酸生成を損なうことなく、黄色ブドウ球菌
の検出が容易となり本発明に到達した。 【0025】本発明において、亜テルル酸塩は、カリウ
ム塩であるかその他の金属塩であるかを問わない。β−
ガラクトシダーゼの合成発色基質の発色団は、5−ブロ
モ−4−クロロ−3−インドリル基に限定されない。本
発明による培地は、卵黄反応、耐塩性、およびマンニッ
ト資化性の識別項目に加えて、亜テルル酸塩還元力、も
しくはβ−ガラクトシダーゼの作用による発色基質分解
によってコロニーを着色するものが該当する。 【0026】 【発明の実施の形態】本発明の第1の処方は、卵黄加マ
ンニット食塩寒天培地に亜テルル酸塩を加える処方であ
る。黄色ブドウ球菌のコロニーは、当該菌の持つ亜テル
ル酸塩還元力により培地中の亜テルル酸塩を金属テルル
に還元し、黒く着色する。黄色ブドウ球菌のコロニーが
黒く着色し、当該菌が培地中の卵黄に反応して生じる白
い油膜(卵黄反応)を明瞭に確認できる。よって、容易
に培地上のコロニーから当該菌を検出できる。 【0027】また、本発明の第2の処方は、卵黄加マン
ニット食塩培地にβ−ガラクトシダーゼ活性により分解
されるX−galなどの発足気質を加える処方である。
X−galを発色基質として用いた場合、β−ガラクト
シダーゼ活性を有する株は青く着色する。黄色ブドウ球
菌はβ−ガラクトシダーゼ活性を持たない。よって、青
いコロニーは黄色ブドウ球菌ではないと容易に判定でき
る。 【0028】 【実施例】以下に黄色ブドウ球菌の検出培地の概略を示
す。本実験の目的は、従来使用されている卵黄加マンニ
ット寒天培地の選択性を損なうことなく、黄色ブドウ球
菌のコロニーを着色することで卵黄反応により生じるコ
ロニー周囲の白色の皮膜を観察しやすくすることにあ
る。また、黄色ブドウ球菌がβ−ガラクトシダーゼ活性
を持たないことを利用して、合成基質(X−gal)に
よって黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌のコロニーを着
色し、黄色ブドウ球菌の識別を容易にすることにある。 【0029】培地の調製方法は、マンニット食塩寒天培
地(肉エキス1g、ポリペプトン10g、食塩75g、マンニッ
ト10g、寒天培地15g、フェノールレッド25mg、精製水10
00ml、pH7.4)を121℃で15分間滅菌後、卵黄溶液(50%
乳剤、メルク社)50mlとともに亜テルル酸カリウム溶
液、あるいはIPTG溶液とX−gal溶液(ジメチル
ホルムアミドに溶解した)を無菌的に別途添加した。 【0030】培地の調製にあたっては、卵黄の変性とX
−galの分解を防ぎ、X−gal溶液の溶媒であるジ
メチルホルムアミドを揮発させるために、滅菌後の培地
を50〜70℃に冷却してから、卵黄溶液(50%乳剤)50ml
とともに亜テルル酸カリウム溶液、あるいはIPTG溶
液とX−gal溶液を加えるのが望ましい。 【0031】以下実施例により本発明の内容を詳細に説
明する。ただし、本発明はこれらの例に限定されない。 【実施例1】卵黄加マンニット食塩寒天培地に亜テルル
酸カリウムを含有させた黄色ブドウ球菌検出培地 【0032】亜テルル酸カリウムを含有させた寒天培地
の有効性を実験によって示した。まず、亜テルル酸カリ
ウムの至適含有濃度を求める試験を行った。被検株は黄
色ブドウ球菌であるS.aureus IFO13276P(Pはアメリカ
食品医薬品局における基準株であるFDA209Pと同一の株
であることを示す)を用いた。 【0029】および 【0030】に記述した方法にしたがって、亜テルル酸
カリウムを含む寒天培地(以下、亜テルル酸塩卵黄加マ
ンニット食塩寒天培地と称する)を調製した。亜テルル
酸カリウムの濃度は0〜100mg/lまで変化させた。 【0033】被検株を液体培地(ポリペプトン0.5%、肉
エキス0.3%、食塩0.5%、pH7.0)に接種し、24時間培養
後、濁度(OD660)が0.1となるように滅菌した生理食塩
水(0.85%食塩水溶液)で希釈した。次に希釈液を、生
理食塩水で1万倍、および10万倍希釈した菌液を卵黄加
マンニット食塩寒天培地および亜テルル酸塩卵黄加マン
ニット食塩寒天培地に0.1ml塗抹し、37℃で24時間培養
した。培地の評価は、培地に出現したコロニー数および
大きさ、卵黄反応の明瞭さ(反応の出現程度とコントラ
ストの明瞭さ)、マンニットからの酸生成(コロニー周
囲の培地の黄変)、およびコロニーの着色度合い(黒
さ)について項目別に評価した。評価は3点法(最高2
点、最低0点)とし、培地上のコロニー数、培地上のコ
ロニーの大きさ、とし、数値が高い方を良好とした。卵
黄加マンニット食塩寒天培地と亜テルル酸塩卵黄加マン
ニット食塩寒天培地では、培地に出現したコロニーの数
は、亜テルル酸カリウム濃度によらず差がなかった。よ
って、他の4項目について、結果を表1および表2に示
した。 【0034】 【表1】枠01 【0035】 【表2】 枠02 【0036】亜テルル酸カリウム濃度と黄色ブドウ球菌
の出現状況の関係について、次の結果を得た。亜テルル
酸カリウム濃度を10mg/l以上とした場合にコロニーを黒
く着色できた。よって、コロニー周囲に見られる卵黄反
応を明瞭にする目標は達成できた。しかし、亜テルル酸
カリウムを40mg/l以上含有させるとマンニットからの酸
の生成、および50mg/l以上含有させると卵黄反応が抑制
された。よって、亜テルル酸カリウムの含有量としては
10〜35mg/lが適し、特にコロニーの発色が良好な25〜35
mg/lが最適であった。 【0037】次に亜テルル酸塩卵黄加マンニット食塩寒
天培地の黄色ブドウ球菌の選択性を調べた。実験に用い
た株は、黄色ブドウ球菌4株、黄色ブドウ球菌以外のブ
ドウ球菌11株、ミクロコッカス(Micrococcus)属菌
(しばしば黄色ブドウ球菌の検出培地上に出現すること
が知られている)、およびエンテロコッカス(Enteroco
ccus)属菌各1株、グラム陰性菌として大腸菌1株であ
る。すなわち、4株の黄色ブドウ球菌の生育と発色が14
株の非黄色ブドウ球菌の生育と発色を明瞭に識別できる
かを調べた。被検菌は液体培地(ポリペプトン0.5%、肉
エキス0.3%、食塩0.5%、pH7.0)で24時間培養後、菌液
を各10μlずつ培地上に接種した。培地の製法は 【0029】および 【0030】記載の方法で行った。なお、亜テルル酸カ
リウムの濃度は30mg/lとした。この試験に用いた亜テル
ル酸塩卵黄加マンニット食塩寒天培地の組成を表3に示
した。評価は、培地上のコロニーの色(黒さ)、卵黄反
応の有無とマンニットからの酸生成(コロニー周囲の培
地の黄変)について行った。結果を表4および表5に示
した。 【0038】 【表3】 枠03 【0039】 【表4】枠04 【0040】 【表5】 枠05 【0041】亜テルル酸塩卵黄加マンニット食塩寒天培
地における黄色ブドウ球菌の選択性について次の結果を
得た。亜テルル酸塩卵黄加マンニット食塩寒天培地で
は、卵黄反応が卵黄加マンニット食塩寒天培地に較べて
見やすくなった。具体的には、S. aureus IFO 14462は
この株のもともとの特徴の1つとして黄色色素の産生能
力が弱いので、卵黄加マンニット食塩寒天培地ではコロ
ニーが白色になり、卵黄反応の白濁環とのコントラスト
が不明瞭だった。一方、亜テルル酸塩卵黄加マンニット
食塩寒天培地では、コロニーが黒くなり、卵黄反応の確
認が容易であった。また、MicrococcusおよびEnterococ
cusの発育は卵黄加マンニット食塩寒天培地の場合と同
様に僅かであった。また、亜テルル酸塩卵黄加マンニッ
ト食塩寒天培地では、卵黄加マンニット食塩寒天培地の
場合と同様に大腸菌は全く生育しなかった。 【0042】以上より、卵黄加マンニット食塩寒天培地
の選択性を損なうことなく、さらに黄色ブドウ球菌の識
別が明瞭な新規培地(亜テルル酸塩卵黄加マンニット食
塩寒天培地)の発明に到った。 【0043】 【実施例2】卵黄加マンニット食塩寒天培地にX−ga
lを含有させた黄色ブドウ球菌検出培地 【0044】X−galの至適含有濃度を求める試験を
行った。被検菌株はβ−ガラクトシダーゼ活性を有する
ブドウ球菌であるS.saprophyticus JCM2427Tを用いた。 【0029】および 【0030】に記載した方法にしたがって培地を調製し
た。培地にはIPTGを25mg/l含有させた。X−gal
の含有量は0〜80mg/lまで変化させて試験を行った。以
下、X−galおよびIPTGを含有させた卵黄加マン
ニット食塩寒天培地をX−gal卵黄加マンニット食塩
寒天培地と呼ぶ。 【0045】X−galの濃度決定試験は、 【0033】と同様に行った。X−gal卵黄加マンニ
ット食塩寒天培地と卵黄加マンニット食塩寒天培地で
は、培地に出現したコロニーの数や大きさは、X−ga
l濃度によらず差がなかった。しかし、コロニーの色の
濃さとマンニットからの酸生成には差が認められた。こ
の2項目について、結果を表6に示した。 【0046】 【表6】 枠06 【0047】X−gal濃度と黄色ブドウ球菌の出現状
況の関係について、次の結果を得た。すなわち、X−g
al濃度が30mg/l以上でS.saprophyticus のコロニーは
青く発色し、β−ガラクトシダーゼ陽性ブドウ球菌(黄
色ブドウ球菌は陰性)のコロニーを着色するという目的
が達成された。しかし、X−gal濃度が60mg/l以上含
有すると、マンニットからの酸の生成が抑制された。よ
って、X−galの添加量としては、30mg/l以上が適
し、特にコロニーの発色が良好な40〜60mg/lが最適であ
った。 【0048】次にX−gal卵黄加マンニット食塩寒天
培地の黄色ブドウ球菌の選択性を調べた。試験方法およ
び評価方法は 【0037】と同様とした。X−galは50mg/l、IP
TGは25mg/lを卵黄加マンニット食塩寒天培地に添加し
た。この試験に用いたX−gal卵黄加マンニット食塩
寒天培地の組成を表7に示した。選択性試験の結果を表
8および表9に示した。 【0049】 【表7】 枠07 【0050】 【表8】枠08 【0051】 【表9】枠9 【0052】X−gal卵黄加マンニット食塩寒天培地
の黄色ブドウ球菌の選択性について次の結果を得た。X
−gal卵黄加マンニット食塩寒天培地では、黄色ブド
ウ球菌の色は黄色ないし白色であった。黄色ブドウ球菌
以外のブドウ球菌は、S.saprophyticus JCM2427Tおよび
S.xylosus JCM2427Tの2菌株がコロニーが青くなり、他
の菌株は白色であった。このことは従来の培地よりも黄
色ブドウ球菌の絞り込みが容易になったことを意味す
る。さらに、培養時間を48時間とすると、S.saprophyti
cus JCM2427T、スタフィロコッカス・スキウリー(S.sc
iuri) JCM2425T、およびスタフィロコッカス・シミュ
ランス(S.simulans) JCM2424Tのコロニーが緑色がか
って発色し、さらに絞り込みが容易となった。また、X
−gal卵黄加マンニット食塩寒天培地ではMicrococcu
s、およびEnterococcusの生育は抑制され、大腸菌の生
育は完全に阻止された。 【0053】以上より、卵黄加マンニット食塩寒天培地
の選択性を損なうことなく、さらに黄色ブドウ球菌の識
別が明瞭な新規培地(X−gal卵黄加マンニット食塩
寒天培地X−gal卵黄加マンニット食塩寒天培地)が
できたといえる。 【0054】 【発明の効果】本発明によれば、従来の培地では確認が
困難だった黄色ブドウ球菌を識別する決め手となる卵黄
反応による白濁環(油膜)が明瞭となり、識別が容易か
つ低コストで可能となる。
フロントページの続き (72)発明者 田村吉史 北海道江別市文京台緑町589番地4 北 海道立食品加工研究センター内

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 亜テルル酸塩を10〜20mg/l添加
    し、培地上の黄色ブドウ球菌を着色することにより、黄
    色ブドウ球菌コロニーの識別を明瞭にした卵黄加マンニ
    ット食塩寒天培地。
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