JPH10282105A - 血清アミロイドa測定用キャリブレーターの製造方法 - Google Patents

血清アミロイドa測定用キャリブレーターの製造方法

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JPH10282105A
JPH10282105A JP10386597A JP10386597A JPH10282105A JP H10282105 A JPH10282105 A JP H10282105A JP 10386597 A JP10386597 A JP 10386597A JP 10386597 A JP10386597 A JP 10386597A JP H10282105 A JPH10282105 A JP H10282105A
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JP
Japan
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saa
human serum
serum amyloid
calibrator
buffer
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JP10386597A
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Jiro Nemoto
二郎 根本
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Eiken Chemical Co Ltd
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Eiken Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明の目的は、炎症症状と関連の深いヒト血
清アミロイドA(SAA)測定用キャリブレーターの新
しい製造方法の提供である。 【解決手段】ヒトのSAA高値患者血清から精製したS
AA、あるいは遺伝子組み換えによって得られたSAA
をアルカリ性の緩衝液に溶解するヒトSAA測定用キャ
リブレーターの製造方法。ならびに、この溶液を必要に
応じて凍結乾燥した上でHDLを含む緩衝液または血清
と混和、あるいは再溶解して得られるSAA測定用キャ
リブレーター。 【効果】本発明によれば容易に高濃度のSAA測定用キ
ャリブレーターを製造することができ、かつHDLを含
む緩衝液や血清と混和、あるいは再溶解しても溶解性や
安定性に悪影響を及ぼさない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ヒトの血清アミロイド
A(以下、SAAと省略する)測定用キャリブレーター
の製造方法、ならびにこの方法で調製されたヒトSAA
測定用キャリブレーターに関するものである。
【0002】SAAはある種のアミロイドーシスにおい
て組織に沈着するアミロイドタンパクA(以下、AAタ
ンパクと省略する)の前駆体タンパクとされる分子量約
12000の血清タンパクである1)。近年になって、こ
のSAAの血清値が炎症性疾患で上昇することが明らか
にされ、ウイルス性疾患、局所炎症、ガン、あるいは移
植拒絶等における炎症マーカーとして評価されている
2)。特にSAAは各種炎症マーカーの中では最も増大率
が高く、成人の正常値は数μg/ml(測定法によって
異なる)であるが、急性炎症において24〜48時間で
正常値の約1000倍に増大することもある。このよう
な増大率を示す炎症マーカーは他に知られていない。ま
た、SAAは血中半減期が短く、鋭敏な炎症マーカーと
して有用性が高い。
【0003】
【従来技術の問題点】SAAの測定法としては、SAA
と特異的に結合する抗体を利用した免疫学的な測定法が
一般的である。 enzyme immunoassay法(EIA)3)、l
atex agglutination nephelometric immunoasay 法(ラ
テックス凝集免疫比濁法)4)等が報告されていて、すで
にSAA測定用の試薬キットとして市販されているもの
もある。これらの測定法はいずれも微量の物質を正確に
定量するのに適した方法であるが、測定間の再現性は必
ずしも十分なわけではなく、測定のつど標準物質を測定
して検量線を作成する必要がある。時には数1000μ
g/mlになることもあるSAA高値の検体を希釈せず
に測定することは、測定系の限界もあるために実際には
困難であるが、できるだけ高濃度の標準物質を作製し
て、希釈測定やスケールオーバーによる再測定が必要な
検体を減らすことは臨床面からも重要なことである。
【0004】測定に必要な標準物質に必要な条件として
は、正確な濃度がわかっていること、測定対象物と同じ
反応性を備えていること、ならびに保存安定性が高いこ
とがあげられる。SAAは疎水性の強いタンパクであ
り、精製品は非常に不安定で凝集しやすく溶解度も低
い。血液中でSAAは高比重リポタンパク(HDL)と
結合して安定化している。通常SAAは血清から精製さ
れ、界面活性剤、および塩酸グアニジン、尿素等のタン
パク可溶化剤が共存する溶液として回収される。この溶
液中のSAA濃度を定量した上で測定用標準物質を調製
するが、溶液中に共存するこれらのタンパク可溶剤はS
AA自身や免疫測定系に含まれる抗体の反応性を変化さ
せるおそれがある。また、SAAを安定化するためにH
DLを添加する場合にも界面活性剤やタンパク可溶化剤
の存在は好ましくない。7Mの尿素を含む溶液に溶解し
たSAAをFBS(ウシ胎児血清)に添加して標準物質
とした報告があるが5)、このような例は実験室レベルで
は可能であっても、市販の試薬キットに添付する標準物
質としては安定性や品質管理の面からはとうてい実現不
可能である。したがってSAAの標準を調製する際に
は、界面活性剤やタンパク可溶化剤を除去する必要があ
る。しかし、界面活性剤やタンパク可溶化剤を含まない
精製SAA溶液の濃度は1mg/mlが限界なので、こ
れをSAAの標準物質とするのは実用性に乏しい。
【0005】高濃度の標準SAAを調製するためには、
精製SAAを凍結乾燥等の方法で乾燥し、これを液体の
媒体に溶解すればよいと考えられるが、媒体中に界面活
性剤やタンパク可溶化剤が含まれることはすでに述べた
理由により避けなければならない。しかしながら、乾燥
した精製SAAは血清にも完全に溶解することはできな
い。本発明の発明者らの実験によれば、血清に乾燥した
精製SAAを溶解して1mg/mlの溶液を調合した
が、実際にSAA濃度を測定したところ0.5mg/m
l程度の濃度しか得られず、しかも調合したバッチによ
って測定値には大きなばらつきがみられた。この理由は
非溶解状態にあるSAAの微細な凝集物が残っていて反
応性を損なっているためと考えられる。
【0006】市販のSAA測定試薬キットでは、SAA
高値の患者のプール血清やこの血清から精製したSAA
を多量に含むHDL分画を標準物質としている。この標
準物質は二次標準であり、その濃度はSDS−PAGE
により一次標準である精製SAAの濃度との比較により
決定される。このような濃度決定の方法は煩雑であり、
また、患者血清を用いることで次のような問題点を抱え
ている。
【0007】ヒトの血清は各種動物血清に比べて入手が
困難であり、新鮮なものも得にくい。また、SAAの濃
度が一定の血清が常に入手できるわけではないので、長
期にわたり一定の品質の製品を供給しなければならない
市販の試薬キットでは、ヒトの血清を原料とすることは
避けなければならない。さらに、ヒトの患者血清を原料
とする際は、各種病原体による汚染の可能性を考慮しな
ければならない。血液を介して感染するおそれのある病
原体としてはHBV、HCV等の各種肝炎ウイルス、な
らびにHIV等があげられる。病原体による汚染の可能
性を除くための処理や検査は、生産コストの上昇につな
がるので好ましくない。
【0008】このようなSAAの原料供給や感染の問題
は、ヒトSAAを遺伝子組み換えにより大腸菌等の微生
物で産生することで解決できる。SAAはアミノ酸10
4残基、分子量約12000の比較的単純なタンパク質
なので今日の遺伝子組み換え技術をもってすれば、微生
物にSAAを産生させることは容易である。遺伝子組み
換えによってSAAを得る試みとしては、インビトロ発
現系の利用6)や、動物細胞を宿主としてSAAを発現さ
せた報告7)が知られているが、これらの発現系はあくま
でも実験室レベルのものであり、収量的にもコスト面で
も商用ベースへの応用は現実的でない。細菌を宿主とす
るSAAの発現系には、大腸菌ファージT7プロモータ
ーを持つベクターを基礎とするものが知られている8)。
しかしながら産生された組み換えSAAを用いて標準物
質を作製するためには、前述のようなSAAの溶解性に
関わる問題を解決しなければならず、市販の試薬キット
に添付するのに適した品質をもち、かつ高濃度の患者血
清も測定可能なSAAの標準物質を作製するのは容易で
はなく、組み換えSAAを標準物質に用いた市販のSA
A測定キットは存在していない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、従来
よりも高濃度で、かつ安定なヒトSAA測定用キャリブ
レーターの新しい製造方法の提供である。そしてこの方
法で製造したSAA測定用キャリブレーターも併せて提
供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の発明者は、界面
活性剤、塩酸グアニジン、あるいは尿素といった特にH
DLに対して悪影響を及ぼす物質を使用しないで、高濃
度のSAA溶液を調製する方法を鋭意検討した結果、ア
ルカリ性の緩衝液に対してSAAの溶解度が高いことを
見いだし、この知見に基づき本発明を完成した。
【0011】本発明は以下の構成からなる。 (1)以下の工程を含むヒト血清アミロイドA測定用キ
ャリブレーターの製造方法。 1)高比重リポタンパクと結合していないヒト血清アミロ
イドAをアルカリ性緩衝液に溶解する。 2)1)で得られたヒト血清アミロイドAを高比重リポタン
パクを含む媒体と混合する。 (2)アルカリ性緩衝液のpHが9以上であることを特
徴とする(1)のヒト血清アミロイドA測定用キャリブ
レーターの製造方法 (3)アルカリ性緩衝液の緩衝剤が揮発性緩衝剤である
(1)のヒト血清アミロイドA測定用キャリブレーター
の製造方法 (4)アルカリ性緩衝液がアンモニウム緩衝液である
(3)のヒト血清アミロイドA測定用キャリブレーター
の製造方法 (5)高比重リポタンパクを含む媒体が血清もしくは血
清を含むものである(1)のヒト血清アミロイドA測定
用キャリブレーターの製造方法 (6)ヒト血清アミロイドAが遺伝子組み換えによって
得られたものであることを特徴とする(1)から(5)
のいずれかのヒト血清アミロイドA測定用キャリブレー
ターの製造方法 (7)以下の工程から得られるヒト血清アミロイドA測
定用キャリブレーター1)高比重リポタンパクと結合して
いないヒト血清アミロイドAを緩衝剤が揮発性であるア
ルカリ性緩衝液に溶解する 2)1)で得られたヒト血清アミロイドAの溶液を凍結乾燥
する 3)2)で得られたヒト血清アミロイドAの凍結乾燥品を高
比重リポタンパクを含む媒体に再溶解する (8)ヒト血清アミロイドAが遺伝子組み換えによって
得られたものであり、高比重リポタンパクを含む媒体が
ヒト以外の動物血清であることを特徴とする(7)のヒ
ト血清アミロイドA測定用キャリブレーター (9)遺伝子組み換えによって得られるヒト血清アミロ
イドAを、高比重リポタンパクを含む液体媒体中に溶解
させたヒト血清アミロイドA測定用キャリブレーターで
あって、非溶解状態のヒト血清アミロイドAが実質的に
存在していないことを特徴とするヒト血清アミロイドA
測定用キャリブレーター (10)人為的に添加された界面活性剤およびタンパク
可溶化剤を含まないことを特徴とする(9)のヒト血清
アミロイドA測定用キャリブレーター (11)ヒト血清アミロイドAの濃度が500μg/m
l以上であることを特徴とする(9)のヒト血清アミロ
イドA測定用キャリブレーター
【0012】本発明のSAA測定用キャリブレーターの
製造方法では、難溶性のSAAの溶解性を改善するため
に従来使われた界面活性剤、および塩酸グアニジン、尿
素等のタンパク可溶化剤を必要としない。そのため、S
AA自身や免疫反応に関与する抗体等の反応性や、SA
Aと結合して安定性を向上させるHDLに悪影響を及ぼ
さない。また、SAA高値の患者血清の代わりに、遺伝
子組み換えで得られるSAAを原料としてSAA測定用
キャリブレーターを製造することが可能になるので、品
質の安定化や感染の危険性を減らすのに非常に有用であ
る。
【0013】SAAの製造方法としては、血清から精製
する方法と遺伝子組み換えにより大腸菌に生産させる方
法がある。血清からSAAを精製するには、まず血清か
ら超遠心法で比重1.063−1.230g/mlのH
DLを分画する。得られたHDL分画を有機溶媒で脱脂
し、さらにゲルろ過、イオン交換、あるいはアフィニテ
ィクロマトグラフィーにより共存タンパクを除去するこ
とにより精製SAA溶液が得られる。
【0014】遺伝子組み換えによりSAAを生産するに
は、SAAのアミノ酸配列をコードする遺伝子を適切な
ベクターに組み込み、このベクターを宿主となる大腸菌
に導入する。遺伝子発現産物は、必要に応じて細胞構造
を超音波処理等によって破壊し、更に界面活性剤、およ
び塩酸グアニジン、尿素等のタンパク可溶化剤により溶
解することで上清として回収できる。この上清を透析
し、さらにアフィニティクロマトグラフィー、ゲルろ
過、イオン交換クロマトグラフィー等による精製を行う
ことにより、精製SAA溶液が得られる8)。先に述べた
ように患者血清から精製するよりも遺伝子組み換えによ
り大腸菌に産生させる方が、量や質の面では一定のもの
が得られ、安全性の面でも望ましい。
【0015】このようにして得られた精製SAA溶液は
精製方法にもよるが、界面活性剤や可溶化剤として尿素
やグアニジン塩酸を含んでいる。このままでは測定用キ
ャリブレーターとしては使用できないので、界面活性剤
やタンパク可溶化剤を取り除くために、アルカリ性の緩
衝液に対して透析を行う。アルカリ性緩衝液は免疫反応
系やHDLに対して悪影響を及ぼさないので、SAA測
定用キャリブレーターとすることができる。また、必要
に応じて濃縮してさらに高濃度とすることも可能であ
る。
【0016】SAAを溶解する緩衝液のpHは9以上、
できれば10以上が好ましい。また、緩衝液の組成は特
に限定がなく、前述のpHの領域で緩衝能を持つもので
あればどのようなものでもかまわない。例として以下の
ような緩衝液をあげることができる。 ジエタノールアミン緩衝液 ほう酸緩衝液 グリシン緩衝液 炭酸緩衝液 N−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−3−アミノプロ
パンスルホン酸(CAPSO) N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸
(CAPS)
【0017】より望ましい緩衝液の成分としては、揮発
性緩衝剤をあげることができる。揮発性緩衝剤とは蒸発
乾固させたときに溶媒とともに蒸発し、一切残留物の残
らない緩衝剤のことである。揮発性緩衝剤を含む緩衝液
に精製SAAを溶解した後に凍結乾燥し、これを別の溶
媒に溶解すれば、溶液同士を混合するよりも高濃度の標
準物質の調製が可能である。また、後で述べるようにH
DLを含む血清に溶解した際にも血清が希釈されないの
でHDLが変性するおそれがない。本発明の発明者らは
アルカリ性の揮発性緩衝液に溶解後、凍結乾燥した精製
SAAは溶解性が良好であり、従来は不可能であった高
濃度標準の調製が可能であることも見いだした。精製S
AAの溶液を凍乾する際には、糖、あるいは糖アルコー
ルを添加することが、凍乾品の再溶解性の向上や、溶解
後の溶液の濁りを防止する上で好ましい。揮発性緩衝剤
を含むアルカリ性の緩衝液の例としては以下のものがあ
げられる。 アンモニア−炭酸緩衝液 トリメチルアミン−炭酸緩衝液 トリエチルアミン−炭酸緩衝液 エタノールアミン−塩酸緩衝液
【0018】また、調製したSAAの溶液はそのままで
も測定用キャリブレーターとして使用可能だが、安定性
が十分ではないのでHDLと結合させて安定化すること
が望ましい。HDLとの結合に際しては特別な操作は必
要なく、SAAとHDLを含む溶液とを混合することに
よりSAAはHDLと結合する。HDLを含む溶液とし
ては特に限定はなく、HDLを溶解した緩衝液や各種血
清を使用することができるが、血清を使用するのが最も
簡単である。血清を使用する際の注意点は、その血清自
身がSAAを含むことによるSAA値の変動である。ま
た、感染の危険性にも注意しなければならない。さら
に、鮮度の低い血清は血清中のHDLが分解しているの
で、SAAの安定化につながらないおそれがある。
【0019】本発明に用いるHDLや血清の由来は特に
限定しない。精製HDLではヒト、ウサギ、ブタ、ウ
マ、ウシ、イヌ、ヤギ等のものを利用することができ
る。血清を用いる場合には、感染の危険を避けるために
ヒト以外の動物血清の利用が望ましい。また、SAAの
アミノ酸配列の比較や抗体の反応性の検討により交差反
応性の低い動物種を選択すれば、SAAと血清を混合し
た際のSAA値の変動も避けることができる。具体的に
はウサギ、ブタ等を示すことができる。
【0020】本発明によって得られるSAA測定用キャ
リブレーターは、各種測定方法における標準物質として
使用可能である。SAAの測定方法としては、その濃度
範囲から主としてEIA、ラテックス凝集法等の免疫学
的測定方法が行われている。本発明によって得られるS
AA測定用キャリブレーターは、界面活性剤、塩酸グア
ニジン、あるいは尿素等のタンパク可溶化作用やリポタ
ンパク変性作用を持つ成分を含まないので、免疫学的測
定を行うにも都合がよい。
【0021】本発明によって得られるSAA測定用キャ
リブレーターは、精度管理用物質としても使用可能であ
る。免疫学的測定法に限らず各種測定においては測定毎
の精度を管理するために予め濃度のわかっている検体を
コントロールとして測定することがある。コントロール
に必要とされる条件としては、長期間継続使用できるよ
うに量が確保できて保存安定性が高いこと、反応性が検
体と同一あるいは近いことである。さらに、できれば目
的とする濃度を自在に設定できればより望ましい。本発
明によって得られるSAAをヒト血清に溶解したものは
このような条件にかなっている。原料となるSAAは遺
伝子組み換えで得られるSAAが使用可能なので、原料
の確保、ならびに濃度の設定が自在である。また、溶解
後に凍結乾燥し、ヒト血清に再溶解したSAAはHDL
と結合して安定化し、天然に存在するものと同一の反応
性を持つと考えられる。
【0022】
【発明の効果】SAAをアルカリ性の緩衝液に溶解する
ことにより、高濃度のSAA溶液を調製することが可能
になった。本発明の製造方法は、従来高濃度のSAA溶
液を調製するために添加されていた界面活性剤、および
グアニジン塩酸、尿素等のタンパク可溶化剤を用いない
ので、測定系に悪影響をおよぼすおそれがないし、HD
Lを含む溶液と混和して安定性の高いSAA測定用のキ
ャリブレーターを調製することが可能である。さらに揮
発性緩衝剤を用いれば凍結乾燥も可能であり、再溶解性
の良好なSAAの凍結乾燥品が得られるので、このSA
AをHDLを含む溶液に溶解することで、より保存安定
性が高く高濃度のSAA測定用キャリブレーターを調製
することができる。実施例に示したようなSAA濃度が
4000μg/mlの標準物質は、組み換えSAAを用いた本発
明でしか実現し得ないものであり、検体でもそのような
高値となることはまれである。また、従来溶解性に問題
があるために実用性に乏しかった遺伝子組み換えによっ
て得られるSAAも測定用キャリブレーターの原料とし
て使用できるようになった。原料の入手や感染の危険性
の面で組み換えSAAは安心して使用することができる
し、濃度やpH設定の面でも自由度が増す。SAAは炎
症性疾患において正常時の数1000倍にまで増大する
ことがあるので、高濃度の標準物質を提供することによ
り、SAA高値検体に対する希釈測定や再測定の手間を
大きく減らすのに役立つ。
【0023】以下実施例により本発明を更に詳細に説明
する。
【実施例】
1.組み換えSAAの発現 公知のヒトSAAをコードするDNAの塩基配列をもと
に遺伝子増幅用のプライマーを合成し、ヒト肝組織のc
DNAライブラリーをテンプレートにしてヒトSAAを
コードするDNAを増幅した。このDNAをプラスミド
ベクターpET21−a(+)に組み込んで大腸菌BL
21に導入し形質転換させた。形質転換された菌株の中
から元のプラスミドベクターpET21−a(+)より
も大きな分子量を持つプラスミドを持つ菌株を選択し、
さらに抗SAA抗体と反応する分子量12000のタン
パクを発現する株を選択した。発現タンパクを精製しN
末端のアミノ酸配列を調べ、公知のSAAのアミノ酸配
列と一致することを確認した。
【0024】2.組み換えSAAの精製 1で得た菌株を大量に培養し、菌体を遠心分離により沈
殿物として回収した。沈殿物をグアニジン緩衝液( 4M
塩酸グアニジン、25mMトリス塩酸pH8.6)に分散後超音
波処理により菌体の破砕と組み換えSAAの可溶化を行
った。可溶化したサンプルはアフィニティー緩衝液(
0.5M NaCl、2mM EDTA、10mM トリス塩酸pH8.2、0.1% Tw
een20)に透析し、遠心分離により上清を分取後、抗S
AA抗体を吸着させたアフィニティーカラムで精製し、
さらにゲル濾過クロマトグラフィにより精製した。
【0025】3.各種pHにおける精製SAAの溶解性
の検討 8M尿素を含むりん酸緩衝液中で2.61mg/ml溶解している
精製SAAを、pH7.2から10.8の各種緩衝液で透析後、
沈殿物の有無と遠心後の上清中のタンパク質濃度を 280
nmの吸光度により測定した。表1から明らかなように、
アルカリ側のpHでは、タンパク質の溶解度が高くな
り、本発明の製造方法の効果がよく示されている。
【0026】
【表1】
【0027】4.界面活性剤添加による精製SAAの溶
解性の検討 8M尿素中で、2.1mg/mlに溶解している精製SAAを生理
食塩水と10mM-Ammonium Buffered Saline(pH7.7)で透析
し、析出した精製SAAを含む懸濁液に0.05%,0.1% Twe
en20、0.5%,1%, 2% のOctyl-β-Glucoside(OGL)を添加
し、遠心し上清中のタンパク質濃度を 280nmの吸光度に
より測定した。これらの結果から中性域のpHでは、界
面活性剤を使用してもSAAを十分に溶解できないこと
がわかる。
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】5.抗体の調製 2で得た精製SAA( 1mg/ml生理食塩水)をヒト型結
核死菌を加えたFCA(1mlのFCAに対して結核死菌
を4mg)と等量混合し、じゅうぶんに乳化させた後に1
mlを家兎の四肢に免疫した。同時に百日咳ワクチンを後
足基部に筋注した。免疫は2週間ごとに行った。4ヶ月
後に一部採血して得られる抗血清について、SAAに対
する反応性をオクテロニー法によって確認した。高い抗
体価が確認された個体の抗血清を 40%硫安分画してI
gGを回収し、PBSに対して透析し本発明による抗S
AA抗体( 10mg/ml)を得た。
【0031】6.抗体による試薬の調製 5で得た抗SAA抗体( 10mg/ml)をポリスチレンラテ
ックス(平均粒径0.109μm)に37℃で1時間物理吸着さ
せた後、0.1MのHEPES緩衝液で洗浄し、最終的にラ
テックス濃度0.4%となるように分散媒( 1%BSAを含
む0.1MのHEPES緩衝液、pH7.4)に懸濁させてSA
Aラテックス凝集反応用試薬(以下単に乳液と呼ぶ)を
得た。
【0032】7.交差反応性の検討 6で得た乳液を用い、ヒトを含む各種動物血清中のSA
Aの測定を行った。操作は次のとおりである。試料 50
μlに試薬を300μl加えて37℃で約3分間反応させた。
この間の免疫学的凝集反応に基づく 585nmにおける吸光
度変化量を測定した。公知の方法9)よって設定した標準
に基づいて作成した検量線をもとにSAA濃度を決定し
た。表4に示すように、ウサギ、ならびにブタの血清が
平均してSAAの濃度が低く、ヒトSAAとの交差反応
性が低いと言える。したがって、凍結乾燥したSAAを
再溶解するには、ウサギ、あるいはブタ血清を使用する
のが好ましい。
【0033】
【表4】
【0034】8.本発明による標準の調製 8M尿素を含むりん酸緩衝液中で 2.61mg/ml溶解している
精製SAAを、アンモニウム緩衝液pH10.8で透析後、凍
結乾燥した。これをブタ血清に溶解して4℃で一晩放置
しSAA標準原液とした。標準原液の濃度は、希釈系列
を作り測定したところ、4096μg/mlであった。
【0035】9.ヒトならびに各種動物血清に凍結乾燥
したSAAを溶解した場合の検討 本発明により得られたSAA標準と公知の方法9)によっ
て設定した標準に基づいて作成した検量線を比較した。
結果は図1に示す。本発明によるSAA標準は、 600μ
g/mlまでの直線性を示し、高濃度のSAA標準として有
用であることを確認した。
【0036】参考文献 1)J. Clin. Invest. 53:1054-1061,1974 2)臨床検査 32:2,P168,1988 3)Scand. J. Immunol. 18:329,1983 4)Ann. Clin. Biochem. 30:72-76,1993 5)J. Immunol. Meth. 116:131-135,1989 6)Biochemistry 24,2931-2936,1984 7)J.Biol.Chem. 262 32:15790-15795,1987 8)Biochim.Biophysica.Acta.1226,323-329;1994 9)J.Immunol.Methods.83,217-225;1985
【図面の簡単な説明】
【図1】ラテックス凝集反応法によるSAAの検量線。
●は本発明により設定したSAA標準であり、○は公知
の方法により設定したSAA標準である。図中、縦軸は
585nmにおける散乱光変化量、横軸はSAA濃度(μg/m
l)を示す。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】以下の工程を含むヒト血清アミロイドA測
    定用キャリブレーターの製造方法。 1)高比重リポタンパクと結合していないヒト血清アミロ
    イドAをアルカリ性緩衝液に溶解する。 2)1)で得られたヒト血清アミロイドAを高比重リポタン
    パクを含む媒体と混合する。
  2. 【請求項2】アルカリ性緩衝液のpHが9以上であるこ
    とを特徴とする請求項1のヒト血清アミロイドA測定用
    キャリブレーターの製造方法
  3. 【請求項3】アルカリ性緩衝液の緩衝剤が揮発性緩衝剤
    である請求項1のヒト血清アミロイドA測定用キャリブ
    レーターの製造方法
  4. 【請求項4】アルカリ性緩衝液がアンモニウム緩衝液で
    ある請求項3のヒト血清アミロイドA測定用キャリブレ
    ーターの製造方法
  5. 【請求項5】高比重リポタンパクを含む媒体が血清もし
    くは血清を含むものである請求項1のヒト血清アミロイ
    ドA測定用キャリブレーターの製造方法
  6. 【請求項6】ヒト血清アミロイドAが遺伝子組み換えに
    よって得られたものであることを特徴とする請求項1か
    ら5のいずれかのヒト血清アミロイドA測定用キャリブ
    レーターの製造方法
  7. 【請求項7】以下の工程によって得ることができるヒト
    血清アミロイドA測定用キャリブレーター 1)高比重リポタンパクと結合していないヒト血清アミロ
    イドAを緩衝剤が揮発性であるアルカリ性緩衝液に溶解
    する 2)1)で得られたヒト血清アミロイドAの溶液を凍結乾燥
    する 3)2)で得られたヒト血清アミロイドAの凍結乾燥品を高
    比重リポタンパクを含む媒体に再溶解する
  8. 【請求項8】ヒト血清アミロイドAが遺伝子組み換えに
    よって得られたものであり、高比重リポタンパクを含む
    媒体がヒト以外の動物血清であることを特徴とする請求
    項7のヒト血清アミロイドA測定用キャリブレーター
  9. 【請求項9】遺伝子組み換えによって得られるヒト血清
    アミロイドAを、高比重リポタンパクを含む液体媒体中
    に溶解させたヒト血清アミロイドA測定用キャリブレー
    ターであって、非溶解状態のヒト血清アミロイドAが実
    質的に存在していないことを特徴とするヒト血清アミロ
    イドA測定用キャリブレーター
  10. 【請求項10】人為的に添加された界面活性剤およびタ
    ンパク可溶化剤を含まないことを特徴とする請求項9の
    ヒト血清アミロイドA測定用キャリブレーター
  11. 【請求項11】ヒト血清アミロイドAの濃度が500μ
    g/ml以上であることを特徴とする請求項9のヒト血
    清アミロイドA測定用キャリブレーター
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