JPH10265913A - 高クロム鋳鋼車室材及び同材製圧力容器 - Google Patents

高クロム鋳鋼車室材及び同材製圧力容器

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JPH10265913A
JPH10265913A JP11097697A JP11097697A JPH10265913A JP H10265913 A JPH10265913 A JP H10265913A JP 11097697 A JP11097697 A JP 11097697A JP 11097697 A JP11097697 A JP 11097697A JP H10265913 A JPH10265913 A JP H10265913A
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cast steel
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JP11097697A
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Akiji Fujita
明次 藤田
Masatomo Kamata
政智 鎌田
Yasunori Tashiro
康則 田代
Kouji Morinaka
康治 守中
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Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Heavy Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 600℃以上の蒸気条件にも適用可能な高温
強度の優れた車室材および圧力容器を実現する。 【解決手段】 所定の重量比のC,Si,Cr,Ni,
V,Nb,N,Mo,W,不可避的不純物,及びFeか
らなるものとし、また、これに所定の重量比のCu,
B,Caを添加するものとし、更に、所定の重量比のM
n,MnとCu,B,Caを添加するものとする。ま
た、これらの材料を用いて圧力容器を形成することとす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、火力発電用蒸気プ
ラント等に適用される高Cr鋳鋼車室材及び圧力容器に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来の火力発電用蒸気タービンプラント
に適用される高温用の車室材としては、2.25%Cr
Mo鋳鋼,CrMo鋳鋼,CrMoV鋳鋼や12Cr鋳
鋼が用いられていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の火力発電用ター
ビンプラントに適用される高温用の車室材において、
2.25%CrMo鋳鋼,CrMo鋳鋼,CrMoV鋳
鋼等の低合金鋼からなる鋳鋼材は、高温強度の限界から
566℃までの蒸気温度のプラントに制限されていた。
【0004】一方、12Cr鋳鋼材(例えば特願昭59
−216322号公報など)は、高温強度が低合金鋼製
鋳鋼よりも優れているため、600℃に近い温度までの
蒸気温度のプラントに適用することも可能であるが、こ
れを越える温度に対しては高温強度が不足することか
ら、蒸気タービン車室等の圧力容器として適用すること
は困難であった。
【0005】本発明は、上記の課題を解決するため、高
Cr系鋼の材料で600℃以上の蒸気条件でも適用する
ことができる高温強度の優れた高温用の車室材を提供し
ようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
(1)請求項1に記載の発明に係る高クロム(Cr)鋳
鋼車室材は、重量比で炭素(C):0.08〜0.14
%,シリコン(Si):0.10〜0.30%,クロム
(Cr):8〜10%,ニッケル(Ni):0.01〜
0.60%,バナジウム(V):0.1〜0.2%,ニ
オブ(Nb):0.03〜0.06%,窒素(N):
0.02〜0.07%,モリブデン(Mo):0.1〜
0.7%,タングステン(W):1〜2.5%,コバル
ト(Co):0.01〜2%,不可避的不純物,及び鉄
(Fe)からなることを特徴としている。
【0007】本発明については、本発明者らが、高Cr
系鋼を基本成分として合金元素の厳選を行って高温強度
の改善を鋭意行った結果、優れた高温特性を有する新し
い蒸気タービン車室等の圧力容器用材料を発明したもの
であり、以下に本発明における成分の限定理由について
説明する。
【0008】Cは、Nとともに炭窒化物を形成し、クリ
ープ破断強度の向上に寄与する。また、オーステナイト
形成元素として作用し、δフェライトの生成を抑制す
る。0.08%未満では十分な効果は得られず、また、
0.14%を越えると使用中に炭窒化物が疑集粗大化
し、高温長時間強度を劣化させる。
【0009】加えて、C量が多くなると溶接性が劣化
し、圧力容器等を製造する場合に溶接割れなどの不具合
が生じる。このため、炭窒化物として高温強度を改善す
ることやδフェライトの生成を抑制するため以外には必
要以上に添加しないことが必要である。このため、0.
08〜0.14%とする。
【0010】Siは、脱酸材としての効果がある。ま
た、鋳鋼材料では鋳型の隅々まで溶湯が流れ込むことが
必要であることから湯流れ性が必要であるが、Siは湯
流れ性を確保する上で必要な元素である。
【0011】しかし、Siは靱性を低下させ、高温強度
も低下させ、さらにはδフェライトの生成を促進する効
果を持つため、可能な限り低く抑えることが必要であ
る。0.1%未満では湯流れ性の確保の点で十分ではな
く、また、0.3%を越える量を添加すると、上記の不
具合が顕在化する。そこで、0.1〜0.3%とする。
【0012】Crは、炭化物を形成し、クリープ破断強
度の改善に寄与し、同時にマトリックス中に溶け込んで
耐酸化性を改善するとともに、マトリックス自体を強化
して高温長時間側の強度の向上に寄与する。8%未満の
場合にはその効果が十分でなく、また、10%を越える
量を添加するとδフェライトを生成しやすくなって強度
の低下や靱性の劣化をもたらす。このため、8〜10%
とする。
【0013】Niは、靱性を改善する上で有効な元素で
ある。また、δフェライト生成を抑制する上で有用な元
素である。しかし、多量の添加はクリープ破断強度を著
しく劣化させる。このため、必要最小限度の添加が望ま
しい。0.6%を越える量を添加すると著しくクリープ
破断強さが低下する。また、不可避的に鋼材に混入され
るNi量は0.01%程度が考えられるので、0.01
〜0.6%とする。
【0014】Vは、炭窒化物となってクリープ破断強度
を改善する。0.1%未満では十分な効果が得られな
い。また、逆に、0.2%を越える量を添加するとむし
ろクリープ破断強度は低下してしまう。このため、0.
1〜0.2%とする。
【0015】Nbは、炭窒化物を形成して高温強度の改
善に寄与する。また、高温で析出する炭化物(M
236 )を微細にして、長時間クリープ破断強度の改善
に寄与する。0.03%未満ではその効果はなく、ま
た、0.06%を越える量を添加すると、鋼塊製造時に
生成したNbの炭窒化物が熱処理時にマトリックスに十
分に固溶できず、使用中に粗大化して長時間のクリープ
破断強度を低下させる。このため、0.03〜0.06
%とする。
【0016】Nは、Cや合金元素とともに炭窒化物を形
成して高温強度の改善に寄与する。また、δフェライト
の生成を抑制する効果があり、Mnの添加を行わない本
発明材においては重要な元素である。
【0017】0.02%未満では、十分な炭窒化物を形
成することができないばかりでなく、δフェライト生成
抑制の効果が十分に発揮されないために、十分なクリー
プ破断強度が得られないことや靱性が劣る結果となる。
また、0.07%を越える量を添加すると、長時間側で
炭窒化物が疑集粗大化して、十分なクリープ破断強度を
得ることができなくなる。このため、0.02〜0.0
7%とする。
【0018】Moは、Wとともにマトリックス中に固溶
してクリープ破断強度を改善する。Moの単独の添加で
あれば1.5%程度添加することが可能であるが、Wを
1〜2.5%の範囲で添加する場合、Wの方が高温強度
の改善に有効であり、また、Mo及びWを多量に添加す
るとδフェライトが形成されてクリープ破断強度を劣化
させる。このため、Wの添加量とのバランスから、0.
1〜0.7%の添加とする。
【0019】Wは、上記のようにMoとともにマトリッ
クス中に固溶してクリープ破断強度を改善する。Wは、
Moよりも固溶強化機能が強く、有効な元素である。し
かし、多量に添加するとδフェライトや多量のラーベス
相を生成するため、逆にクリープ破断強度を劣化させ
る。このため、Moの添加量とのバランスを考慮して、
1〜2.5%の添加とする。
【0020】Coは、Niと同様にマトリックスに固溶
してδフェライトの生成を抑制する。また、Niのよう
に高温強度を劣化させることはない。このため、Coを
添加すると、Coを添加しないものよりもCrやWの強
化元素を多く添加することが可能となる。この結果、高
いクリープ破断強度を得ることが可能となる。
【0021】しかし、2%を越える量を添加すると、炭
化物の析出を促進してしまうために、長時間側のクリー
プ破断強度を劣化させてしまう。加えてCoは高価な元
素であり、経済性から判断して可能な限り低いことが望
ましい。Niが添加されている本発明材の場合、0.0
1%程度はとくに添加をしなくても不可避的混入量とし
て鋼材中に含まれている。このため、本発明材では添加
量を0.01〜2%とする。
【0022】本発明材においては、上記の合金元素以外
は不可避的に不純物として混入するものを除いては含有
されないこと、すなわち意図的な添加を行わないことを
その特徴の一つとしている。以下、いくつかの元素につ
いて添加を行わない理由を説明する。
【0023】Mnは、脱酸材として有用な元素である。
また、δフェライトの生成を抑制する作用がある。一
方、元素が増えるに従い、クリープ破断強度が劣化す
る。このような背景から従来は1%未満で適量添加させ
ているが、高温強度の向上が不可欠である材料の場合に
は可能な限り低くして、高温強度、とりわけクリープ破
断強さの向上を最優先することとし、本発明材ではとく
に添加はしない。
【0024】このときに、δフェライトの生成が問題に
なることがあるが、他のオーステナイト生成元素である
C,Ni,N,Co,Cu等の適量添加によりその生成
を抑制する。従って、Mnについては不可避的不純物と
して混入する以外は故意に添加しない。
【0025】チタンTiは、酸素と結合して酸化物を形
成し、材料欠陥を生じさせやすい元素である。とくに鋳
鋼材では、鍛造工程を取らないことが大前提であり、鍛
造により酸化物と基地金属を密着させることもできない
ため、素材の清浄性を高めることが肝要である。したが
って、本発明材ではチタンを無添加としている。
【0026】アルミニウムAlも、Tiと同様に酸化物
を形成して素材の清浄度を下げる元素である。したがっ
て、チタンの場合と同様の理由により本発明材では無添
加としている。
【0027】本発明においては、それぞれの成分が上記
のように作用するため、従来の車室材と比較してより優
れた高温強度を有する車室材を実現するすることが可能
となる。
【0028】(2)請求項2に記載の発明に係る高クロ
ム(Cr)鋳鋼車室材は、重量比で炭素(C):0.0
8〜0.14%,シリコン(Si):0.10〜0.3
0%,クロム(Cr):8〜10%,ニッケル(N
i):0.01〜0.60%,バナジウム(V):0.
1〜0.2%,ニオブ(Nb):0.03〜0.06
%,窒素(N):0.02〜0.07%,モリブデン
(Mo):0、1〜0.7%,タングステン(W):1
〜2.5%,コバルト(Co):0.01〜2%,銅
(Cu):0.02〜2.5%,不可避的不純物,及び
鉄からなることを特徴としている。
【0029】本発明についても、本発明者らが、高Cr
系鋼を基本成分として合金元素の厳選を行って高温強度
の改善を鋭意行った結果、優れた高温特性を有する新し
い蒸気タービン車室等の圧力容器用材料を発明したもの
であり、以下に本発明における成分の限定理由を述べる
が、上記発明(1)の説明と重複するところは省略し、
新たに加わったCuの限定理由のみの説明を行う。
【0030】Cuは、δフェライトを抑制する元素とし
て有効である。また、Cu自体は、マトリックス中に微
細に析出して高温強度の改善に有効である。ただし、多
量に添加すると1000℃を越える高温状態に保持した
場合に粒界析出を起こして低融点のCu相を形成するた
め、溶接性を阻害する。
【0031】この溶接性から判断して、Cuの添加量は
2.5%以下にすることが望ましい。なお、通常の鋼材
には、0.02%程度のCuが不純物として混入してい
る。そこで、Cuの添加量は、0.02〜2.5%とす
る。
【0032】本発明においては、上記発明(1)に係る
成分にCuを加えることによって、発明(1)に係る車
室材よりも更に高温強度が改善された車室材を実現する
ことが可能となる。
【0033】(3)請求項3に記載の発明は、上記発明
(1)又は(2)に記載の高クロム(Cr)鋳鋼車室材
において、0.002〜0.010%のほう素(B)が
添加されたことを特徴としている。
【0034】本発明についても、本発明者らが高Cr系
鋼を基本成分として合金元素を厳選して高温強度の改善
を鋭意行った結果、優れた高温特性を有する新しい蒸気
タービン車室等の圧力容器用材料を発明したものであ
り、以下に本発明における成分の限定理由を述べるが、
上記発明(1)及び(2)の説明と重複するところは省
略し、新たに加わったBの限定理由のみの説明を行う。
【0035】Bは、粒界強度を高くする作用がある。こ
のため、クリープ破断強度の改善に寄与する。しかし、
多量に添加すると靱性を低下させてしまうが、0.00
2%未満の場合には添加した効果が十分に発揮されな
い。このため、Bの添加量は、0.002〜0.01%
とする。
【0036】本発明においては、上記発明(1)又は
(2)に係る成分にBを加えることによって、発明
(1)及び(2)に係る車室材よりも更に高温強度が改
善された車室材を実現することが可能となる。
【0037】(4)請求項4に記載の発明に係る高クロ
ム(Cr)鋳鋼車室材製圧力容器は、上記発明(1),
(2)又は(3)のいずれかの高クロム(Cr)鋳鋼車
室材により形成されたことを特徴としている。
【0038】上記発明(5),(6)又は(7)に係る
高Cr鋳鋼車室材は、いずれも優れた高温強度を有する
ため、これらのいずれかを用いて形成された圧力容器は
いずれも超々臨界圧発電プラント等において使用しうる
ものとなる。
【0039】(5)請求項5に記載の発明に係る高クロ
ム(Cr)鋳鋼車室材は、重量比で炭素(C):0.0
8〜0.14%,シリコン(Si):0.10〜0.3
0%,マンガン(Mn):0.01〜1.0%,クロム
(Cr):8.0〜9.5%,ニッケル(Ni):0.
01〜0.60%,バナジウム(V):0.1〜0.2
%,ニオブ(Nb):0.03〜0.06%,窒素
(N):0.02〜0.07%,モリブデン(Mo):
0.1〜0.7%,タングステン(W):1.5〜2.
5%,コバルト(Co):0.01〜2%,不可避的不
純物,及び鉄(Fe)からなることを特徴としている。
【0040】本発明についても、本発明者らが、高Cr
系鋼を基本成分として合金元素の厳選を行って高温強度
の改善を鋭意行った結果、優れた高温特性を有する新し
い蒸気タービン車室等の圧力容器用材料を発明したもの
であり、以下に本発明における成分の限定理由について
説明する。なお、C,Si,Ni,V,Nb,N,M
o,Co,については上記発明(1)の説明と重複する
ため省略し、新たに添加するMnおよび成分範囲が異な
るCr,Wについてのみ説明する。
【0041】Mnも、脱酸材として有用な元素である。
また、δフェライトの生成を抑制する作用がある。δフ
ェライトが生成すると延性,靱性が低下し、さらに高温
強度であるクリープ破断強さも著しく低下する。このた
め、他の元素とのバランスを考慮してMnを添加するこ
とが必要となる。
【0042】一方、元素が増えるに従い、クリープ破断
強度が劣化する。このような背景から、クリープ破断強
さを損なわずに、しかも、大型の鋳鋼品を製造したとき
にδフェライトが決して生成しないようにするために、
Mn量を制御して添加することが必要となる。
【0043】1%を越える量を添加すると高温強度が著
しく低下するため、1%以下の添加となる。また、不可
避的に鋼材に混入されるMn量は0.01%程度が考え
られるので、0.01%以上とする。したがって、添加
量は0.01〜1%とする。
【0044】なお、上記発明(1)乃至(4)は、Mn
を添加していないことをその特徴の1つとしている。こ
れは、クリープ破断強度を高めることを第一の目的とし
たためであるが、この場合は、原料の厳選が必要とな
り、コストの上昇を招いてしまう。また、製品の大きさ
製造条件にもよるが、成分偏析等に関して厳重な管理を
行わないと有害なδフェライトが生成する危険性も有し
ている。
【0045】本発明においては、Mn添加によるクリー
プ破断強度の低下現象についてはこれを容認した上で、
コストの抑制やδフェライトが生成する危険性を下げる
ことを重視しており、Mnの添加を行うものとしてい
る。
【0046】Crは、炭化物を形成し、クリープ破断強
度の改善に寄与し、マトリックス中に溶け込んで耐酸化
性を改善するとともに、マトリックス自体を強化して高
温長時間側の強度の向上に寄与する。8.0%未満の場
合にはその効果が十分でなく、また、他の合金元素との
関係もあるが、9.5%を越える量を添加するとδフェ
ライトを生成しやすくなって強度の低下や靱性の劣化を
もたらす。
【0047】このため、8.0〜9.5%とする。な
お、上記発明(1)乃至(4)に比べて上限値を下げた
のは、有害なδフェライト生成の危険性を下げることを
重視したためである。
【0048】Wは、上記のようにMoとともにマトリッ
クス中に固溶してクリープ破断強度を改善する。Wは、
Moよりも固溶強化機能が強く、有効な元素である。し
かし、多量に添加するとδフェライトや多量のラーベス
相を生成するため、逆にクリープ破断強度を劣化させ
る。このため、Moの添加量とのバランスを考慮して、
1.5〜2.5%の添加とする。なお、上記発明(1)
乃至(4)に比べて下限値を上げたのは、Mnの添加に
よるクリープ破断強度低下分をWで補うためである。
【0049】(6)請求項6に記載の発明に係る高クロ
ム(Cr)鋳鋼車室材は、重量比で炭素(C):0.0
8〜0.14%,シリコン(Si):0.10〜0.3
0%,マンガン(Mn):0.01〜1.0%,クロム
(Cr):8.0〜9.5%,ニッケル(Ni):0.
01〜0.60%,バナジウム(V):0.1〜0.2
%,ニオブ(Nb):0.03〜0.06%,窒素
(N):0.02〜0.07%,モリブデン(Mo):
0.1〜0.7%,タングステン(W):1.5〜2.
5%,コバルト(Co):0.01〜2%,銅(C
u):0.02〜2.5%,不可避的不純物,及び鉄か
らなることを特徴としている。
【0050】本発明についても、本発明者らが、高Cr
系鋼を基本成分として合金元素の厳選を行って高温強度
の改善を鋭意行った結果、優れた高温特性を有する新し
い蒸気タービン車室等の圧力容器用材料を発明したもの
であり、上記発明(5)に対して本発明において新たに
加わったCuの限定理由については、上記発明(2)に
記載された理由と同様である。
【0051】本発明においては、上記発明(5)に係る
成分にCuを加えることによって、発明(5)に係る車
室材よりも更に高温強度が改善された車室材を実現する
ことが可能となる。
【0052】(7)請求項7に記載の発明は、上記発明
(5)又は(6)に記載の高クロム(Cr)鋳鋼車室材
において、0.002〜0.010%のほう素(B)が
添加されたことを特徴としている。
【0053】本発明についても、本発明者らが高Cr系
鋼を基本成分として合金元素を厳選して高温強度の改善
を鋭意行った結果、優れた高温特性を有する新しい蒸気
タービン車室等の圧力容器用材料を発明したものであ
り、上記発明(5)及び(6)に対して本発明において
新たに加わったBの限定理由については、上記発明
(3)に記載された理由と同様である。
【0054】本発明においては、上記発明(5)又は
(6)に係る成分にBを加えることによって、発明
(5)及び(6)に係る車室材よりも更に高温強度が改
善された車室材を実現することが可能となる。
【0055】(8)請求項8に記載の発明は、上記発明
(1),(2),(3),(5),(6)又は(7)に
記載の高クロム(Cr)鋳鋼車室材において、0.00
1〜0.009%のカルシウム(Ca)が添加されたこ
とを特徴としている。
【0056】本発明についても、本発明者らが高Cr系
鋼を基本成分として合金元素を厳選して高温強度の改善
を鋭意行った結果、優れた高温強度を有する新しい蒸気
タービン等の圧力容器材料を発明したものであり、上記
発明(1),(2),(3),(5),(6)および
(7)に対して本発明において新たに加わったCaの限
定理由について以下説明する。
【0057】Caは、介在物を球状化し細かく分散させ
るとともに、その接種効果によって等軸晶の成長を促進
して、硫黄等の有害不純物元素のマクロ偏析を低減す
る。また、介在物の融点を下げて、精錬工程で介在物を
取り除きやすくする効果も有している。
【0058】この結果、材料の靭性や高温強度特性が向
上する。特に鋳鋼材(本発明材)では、鍛造等の素材加
工工程により、介在物と基地金属の密着や偏析の解消を
図ることはできないため、Caの添加は有効である。
【0059】添加量が0.001%未満では有効な作用
を生じないため、下限値を0.001%とする。また、
過剰に添加すると、多量のCa酸化物のCa酸化物を生
成し素材の清浄度が低下してしまうため、添加の上限値
を0.009%とする。望ましい添加範囲は0.002
〜0.006%である。
【0060】本発明においては、上記発明(1),
(2),(3),(5),(6)又は(7)に係る成分
にCaを加えることによって、発明(1),(2),
(3),(5),(6)又は(7)に係る車室材よりも
さらに靭性、高温強度が改善された車室材を実現するこ
とが可能となる。
【0061】(9)請求項9に記載の発明に係る高クロ
ム鋳鋼車室材製圧力容器は、上記発明(5),(6),
(7)又は(8)のいずれかの高クロム(Cr)鋳鋼車
室材により形成されたことを特徴としている。
【0062】上記発明(5),(6),(7)又は
(8)に係る高Cr鋳鋼車室材は、いずれも優れた高温
強度を有するため、これらのいずれかを用いて形成され
た圧力容器はいずれも超々臨界圧発電プラント等におい
て使用しうるものとなる。
【0063】
【発明の実施の形態】本発明の実施の第1形態に係る高
Cr鋳鋼車室材について、以下に説明する。本実施形態
に係る高Cr鋳鋼車室材は、重量比で0.08〜0.1
4%のC,0.10〜0.30%のSi,8〜10%の
Cr,0.01〜0.60%のNi,0.1〜0.2%
のV,0.03〜0.06%のNb,0.02〜0.0
7%のN,0.1〜0.7%のMo,1〜2.5%の
W,0.01〜2%のCo,不可避的不純物,及びFe
からなっている。
【0064】本実施形態においては、その特性確認のた
めに比較材とともに上記成分範囲の本発明材1について
試験を行っており、以下にその内容と結果について説明
する。本試験に供した材料の化学成分について、本発明
材1を表1に、比較材を表2に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】全ての材料は、50kg真空高周波溶解炉に
て溶製し、砂鋳型に溶湯を流し込んで試験材とした。各
種試験に用いた試験材の熱処理は、400mm厚の蒸気タ
ービン車室を空冷による焼入れしたときの肉厚中心部を
模擬した焼入れ処理を行い、次いで、焼もどしは0.2
%耐力がおよそ63〜68kgf/mm2 になるように各材料
の焼もどし温度を決めて行った。
【0068】各種試験により得られた本発明材1及び比
較材についての試験結果である機械的性質、及び625
℃の10万時間後のクリープ破断強さ(外挿値)を、表
3に示す。
【0069】
【表3】
【0070】常温引張試験の結果から明らかなように、
本発明材1の伸びや絞り等の延性及び衝撃値が安定して
高く、溶接性が良好であることを示すものとなってい
る。また、本発明材1のクリープ破断強さは比較材に比
べて格段に優れていることがわかる。
【0071】次に、本発明の実施の第2形態に係る高C
r鋳鋼車室材について、以下に説明する。本実施形態に
係る高Cr鋳鋼車室材は、重量比で0.08〜0.14
%のC,0.10〜0.30%のSi,8〜10%のC
r,0.01〜0.60%のNi,0.1〜0.2%の
V,0.03〜0.06%のNb,0.02〜0.07
%のN,0.1〜0.7%のMo,1〜2.5%のW,
0.01〜2%のCo,0.02〜2.5%のCu,不
可避的不純物,及び鉄からなっている。
【0072】本実施形態においても、その特性確認のた
めに上記成分範囲の本発明材2について試験を行ってお
り、以下にその内容と結果について説明する。本試験に
供した材料の化学成分については、表4に示す。この表
に示す本発明材1は第1実施形態において試験を行った
発明材料であり、表1の試験材番号のものと同じもので
あり、比較材は表2に示したものである。
【0073】
【表4】
【0074】本試験においても、第1実施形態における
試験と同じように試験材を準備して各種試験に供した。
すなわち、全ての材料は、50kg真空高周波溶解炉にて
溶製し、砂鋳型に溶湯を流し込んで試験材とした後、4
00mm厚の蒸気タービン車室を空冷による焼入れしたと
きの肉厚中心部を模擬した焼入れ処理を行い、次いで、
焼もどしは0.2%耐力がおよそ63〜68kgf/mm2
なるように各材料の焼もどし温度を決めて行った。
【0075】各種試験により得られた本発明材2につい
ての試験結果である機械的性質、及び625℃の10万
時間後のクリープ破断強さ(外挿値)を、比較材及び本
発明材1と比較して表5に示す。
【0076】
【表5】
【0077】表5に示された試験結果について、はじめ
に比較材と本発明材2との比較を行う。この表に示され
るように、本発明材2の常温引張特性並びにクリープ破
断特性は比較材に比べて遙かに優れた特性を示すもので
ある。
【0078】次に、本発明材2を本発明材1と比較す
る。この表に示されるように、常温引張試験特性及び衝
撃特性については本発明材1と本発明材2では差はな
く、銅を添加したことによる材料特性の向上は認められ
ない。
【0079】しかし、類似鋼の比較(試験材番号3と2
1,8と22,10と23の比較)から明らかなよう
に、本発明材2のクリープ破断強さは本発明材1に比べ
て相対的に高くなっており、銅の添加によってさらにク
リープ破断強さ、すなわち高温強度が改善されているこ
とがわかる。
【0080】次に、本発明の実施の第3形態に係る高C
r鋳鋼車室材について、以下に説明する。本実施形態に
係る高Cr鋳鋼車室材は、上記第1実施形態及び第2実
施形態に係る高Cr鋳鋼車室材において、0.002〜
0.010%のBが添加されている。
【0081】本実施形態においても、その特性確認のた
めに上記成分範囲の本発明材3について試験を行ってお
り、以下にその内容と結果について説明する。本試験に
供した材料の化学成分については、表6に示す。
【0082】この表に示す本発明材1は第1実施形態に
おいて試験を行った発明材料、本発明材2は第2実施形
態において試験を行った発明材料であり、それぞれ表1
及び表4の試験材番号のものと同じものであり、また、
比較材は表2に示したものである。
【0083】
【表6】
【0084】本試験においても、第1実施形態及び第2
実施形態における試験と同じように試験材を準備して各
種試験に供した。すなわち、全ての材料は、50kg真空
高周波溶解炉にて溶製し、砂鋳型に溶湯を流し込んで試
験材とした後、400mm厚の蒸気タービン車室を空冷に
よる焼入れしたときの肉厚中心部を模擬した焼入れ処理
を行い、次いで、焼もどしは0.2%耐力がおよそ63
〜68kgf/mm2 になるように各材料の焼もどし温度を決
めて行った。
【0085】各種試験により得られた本発明材3につい
ての試験結果である機械的性質、及び625℃の10万
時間後のクリープ破断強さ(外挿値)を、比較材及び本
発明材1,2と比較して表7に示す。
【0086】
【表7】
【0087】表7に示された試験結果について、はじめ
に比較材と本発明材3との比較を行う。この表に示され
るように、本発明材3の常温引張特性並びにクリープ破
断特性は、本発明材1及び2と同様に比較材に比べて遙
かに優れた特性を示すものである。
【0088】次に、本発明材3を本発明材1及び2と比
較する。Bを添加した本発明材3は、類似鋼との比較
(試験材番号3と31,10と32,22と33,22
と34,25と35の比較)でわかるように、常温引張
試験における延性(伸び,絞り)並びにクリープ破断強
さにおいて特性が向上している。すなわち、Bを添加す
ることにより常温延性並びにクリープ破断強さが向上
し、優れた材料特性を有するようになることがわかる。
【0089】次に、本発明の実施の第4形態に係る高C
r鋳鋼車室材について、以下に説明する。本実施形態に
係る高Cr鋳鋼車室材は、重量比で0.08〜0.14
%のC,0.10〜0.30%のSi,0.01〜1.
0%のMn,8.0〜9.5%のCr,0.01〜0.
60%のNi,0.1〜0.2%のV,0.03〜0.
06%のNb,0.02〜0.07%のN,0.1〜
0.7%のMo,1.5〜2.5%のW,0.01〜2
%のCo,不可避的不純物,及びFeからなっている。
【0090】本実施形態においても、その特性確認のた
めに比較材とともに上記成分範囲の本発明材4について
試験を行っており、以下にその内容と結果について説明
する。本試験に供した材料の化学成分について、本発明
材4を表8に、比較材を表9に示す。
【0091】
【表8】
【0092】
【表9】
【0093】全ての材料は、50kg真空高周波溶解炉に
て溶製し、砂鋳型に溶湯を流し込んで試験材とした。得
られた試験材は切断により押湯部と試験材本体とに分
け、押湯についてはさらに2つに切断を行った。そして
押湯の一方と試験材本体については以下に示す熱処理を
施した。
【0094】試験材の熱処理は、400mm厚の蒸気ター
ビン車室を空冷による焼入れしたときの肉厚中心部を模
擬した焼入れ処理を行い、次いで、焼もどしは0.2%
耐力がおよそ63〜68kgf/mm2 になるように各材料の
焼もどし温度を決めて行った。押湯部の鋳造のままの状
態と熱処理後の状態でのδフェライトの生成量を表10
に示す。
【0095】
【表10】
【0096】表10によると、本発明材4のδフェライ
ト量は鋳造のままにおいては比較材に比べて低く、また
熱処理を施すことによって完全に消滅していることがわ
かる。これに対して、比較材のものでは熱処理の有無に
よらず本発明材4と比較してδフェライトの生成量は多
い。また、熱処理を行った後にもδフェライトは残存し
ており、鋳鋼材として不適当であることがわかる。
【0097】各種試験により得られた本発明材4及び比
較材についての試験結果である機械的性質、及び625
℃の10万時間後のクリープ破断強さ(外挿値)を、表
11に示す。
【0098】
【表11】
【0099】この常温引張試験の結果から明かであるよ
うに、本発明材4の伸びや絞り等の延性及び衝撃値が安
定して高く、溶接性が良好であることを示すものとなっ
ている。これに対して、比較材の延性、靱性は相対的に
悪くなっている。また、本発明材4のクリープ破断強さ
は、比較材に比べて格段に優れていることがわかる。
【0100】次に、本発明の実施の第5形態に係る高C
r鋳鋼車室材について、以下に説明する。本実施形態に
係る高Cr鋳鋼車室材は、重量比で0.08〜0.14
%のC,0.10〜0.30%のSi,0.01〜1.
0%のMn,8.0〜9.5%のCr,0.01〜0.
60%のNi,0.1〜0.2%のV,0.03〜0.
06%のNb,0.02〜0.07%のN,0.1〜
0.7%のMo,1.5〜2.5%のW,0.01〜2
%のCo,0.02〜2.5%のCu,不可避的不純
物,及び鉄からなっている。
【0101】本実施形態においても、その特性確認のた
めに上記成分範囲の本発明材5について試験を行ってお
り、以下にその内容と結果について説明する。本試験に
供した材料の化学成分については、表12に示す。この
表に示す本発明材4は第4実施形態において試験を行っ
た発明材料であり、表8の試験材番号のものと同じもの
であり、比較材は表9に示したものである。
【0102】
【表12】
【0103】本試験においても、第4実施形態における
試験と同じように試験材を準備して各種試験に供した。
すなわち、全ての材料は、50kg真空高周波溶解炉にて
溶製し、砂鋳型に溶湯を流し込み、試験材とした。得ら
れた試験材は切断により押湯部と試験材本体とに分け、
押湯についてはさらに2つに切断を行った。そして押湯
の一方と試験材本体については以下に示す熱処理を施し
た。
【0104】試験材の熱処理は、400mm厚の蒸気ター
ビン車室を空冷による焼入れしたときの肉厚中心部を模
擬した焼入れ処理を行い、次いで、焼もどしは0.2%
耐力がおよそ63〜68kgf/mm2 になるように各材料の
焼もどし温度を決めて行った。押湯部の鋳造のままの状
態と熱処理後の状態でのδフェライトの生成量につい
て、表13に示す。
【0105】
【表13】
【0106】表13によると、本発明材5の場合には、
鋳造のままにおいてもδフェライト量は生成しない。こ
れは、Cuが添加されることによって本発明材4よりも
さらにδフェライトがでにくくなったことを示すもので
あり、本発明材5がδフェライトを生成しにくいことを
示すものである。
【0107】各種試験により得られた本発明材5につい
ての試験結果である機械的性質、及び625℃の10万
時間後のクリープ破断強さ(外挿値)を、本発明材4と
比較して表14に示す。
【0108】
【表14】
【0109】この表に示されるように、常温引張試験特
性及び衝撃特性は本発明材4と本発明材5では差はな
く、銅を添加したことによる影響は認められない。しか
し、表11に示した比較材に比べて延性や衝撃特性が優
れており、良好な機械的性質を有することがわかる。
【0110】次に、本発明の実施の第6形態に係る高C
r鋳鋼車室材について、以下に説明する。本実施形態に
係る高Cr鋳鋼車室材は、上記第4実施形態及び第5実
施形態に係る高Cr鋳鋼車室材において、0.002〜
0.010%のBが添加されている。
【0111】本実施形態においても、その特性確認のた
めに上記成分範囲の本発明材6について試験を行ってお
り、以下にその内容と結果について説明する。本試験に
供した材料の化学成分については、表15に示す。
【0112】この表に示す本発明材4は第4実施形態に
おいて試験を行った発明材料、本発明材5は第5実施形
態において試験を行った発明材料であり、それぞれ表8
及び表12の試験材番号のものと同じものであり、ま
た、比較材は表9に示したものである。
【0113】
【表15】
【0114】本試験においても、第4実施形態及び第5
実施形態と同じように試験材を準備して各種試験に供し
た。すなわち、全ての材料は、50kg真空高周波溶解炉
にて溶製し、砂鋳型に溶湯を流し込み試験材とした。得
られた試験材は切断により押湯部と試験材本体とに分
け、押湯についてはさらに2つに切断を行った。そして
押湯の一方と試験材本体については以下に示す熱処理を
施した。
【0115】試験材の熱処理は、400mm厚の蒸気ター
ビン車室を空冷による焼入れしたときの肉厚中心部を模
擬した焼入れ処理を行い、次いで焼もどしは0.2%耐
力がおよそ63〜68kgf/mm2 になるように各材料の焼
もどし温度を決めて行った。押湯部の鋳造のままの状態
と熱処理後の状態でのδフェライトの生成量について、
表16に示す。
【0116】
【表16】
【0117】本発明材6の場合には、本発明材4及び5
の類似鋼と同様なδフェライトの生成挙動を示す。すな
わち、試験材番号71の類似鋼は試験材番号41であ
り、試験材番号72の類似鋼は試験材番号43であり、
以下同様に73→61,74→63,75→65がそれ
ぞれの類似鋼となるが、δフェライトの生成はBの添加
の影響を受けていない。いずれにしても、本説明材4,
5,6は熱処理を施した後には完全にδフェライトが消
滅しており、何ら問題ないものであるといえる。
【0118】各種試験により得られた本発明材6につい
ての試験結果である機械的性質、及び625℃の10万
時間後のクリープ破断強さ(外挿値)を、本発明材4,
5と比較して表17に示す。
【0119】
【表17】
【0120】Bを添加した本発明材4は、類似鋼との比
較(試験材番号41と71の比較、43と72、61と
73、63と74、65と75)でわかるように常温引
張試験における延性(伸び、絞り)は類似鋼と同等以上
であり、またクリープ破断強さでは類似鋼よりも優れて
いることがわかる。すなわち、Bを添加することにより
常温延性並びにクリープ破断強さが向上し、優れた材料
特性を有するようになるといえる。
【0121】次に、本発明の実施の第7形態に係る高C
r鋳鋼車室材について、以下に説明する。本実施形態に
係る高Cr鋳鋼車室材は、上記第1実施形態、第2実施
形態、第3実施形態、第4実施形態、第5実施形態及び
第6実施形態に係る高Cr鋳鋼車室材において、0.0
01〜0.009%のCaが添加されている。
【0122】本実施形態においても、その特性確認のた
めに上記成分範囲の本発明材7について試験を行ってお
り、以下にその内容と結果について説明する。本試験に
供した材料の化学成分については、表18及び表19に
示す。
【0123】
【表18】
【0124】
【表19】
【0125】この表に示す本発明材1は第1実施形態に
おいて試験を行った発明材料、本発明材2は第2実施形
態において試験を行った発明材料、本発明材3は第3実
施形態において試験を行った発明材料、本発明材4は第
4実施形態において試験を行った発明材料、本発明材5
は第5実施形態において試験を行った発明材料、本発明
材6は第6実施形態において試験を行った発明材料であ
り、それぞれ表1,表4,表6,表8,表12および表
15の試験材番号のものと同じである。
【0126】なお、表1,表4,表6,表8,表12お
よび表15では、不純物として混入する可能性があるC
aの分析結果を示していなかったが、表18に示したよ
うに本発明材1,本発明材2,本発明材3,本発明材
4,本発明材5,本発明材6ではいずれも0.000%
であった。比較材は、表2,表9に示したもの及び表1
9中、比較材に分類しているもの(試験材番号91,9
2,93)である。
【0127】試験材番号81の類似鋼は試験材番号2で
あり、試験材番号82の類似鋼は試験材番号22であ
り、以下同様に83→31,84→35,85→43,
86→61,87→71,88→73である。また、比
較材に分類されている試験材番号91,92,93は、
それぞれ本発明材7の試験材番号85,86,87の成
分を基本として、Caを本発明材7の上限値以上に添加
した材料である。
【0128】本試験においても、第4実施形態,第5実
施形態及び第6実施形態と同じように試験材を準備して
各種試験に供した。すなわち、全ての材料は、50kg真
空高周波溶解炉にて溶製し、砂鋳型に溶湯を流し込み試
験材とした。得られた試験材は切断により押湯部と試験
材本体とに分け、押湯部についてはさらに2つに切断を
行った。そして押湯部の一方と試験材本体については以
下に示す熱処理を施した。
【0129】試験材の熱処理は、400mm厚の蒸気ター
ビン車室を空冷による焼入としたときの肉厚中心部を模
擬した焼入れ処理を行い、次いで焼もどしは、0.2%
耐力がおよそ63〜68kgf/mm2 になるように各材料の
焼もどし温度を決めて行った。押湯部の鋳造のままの状
態と熱処理後の状態でのδフェライトの生成量につい
て、表20に示す。
【0130】
【表20】
【0131】本発明材7では、試験材番号81,82,
83において鋳造のままではごく僅かのδフェライトが
認められるが、熱処理を施すことでこれは完全に消失し
ており、実用上問題はない。また、試験材番号84,8
5,86,87,88では、鋳造のままでもδフェライ
トの生成はなく、健全な組織状態である。すなわち、δ
フェライトの生成はCaの添加の影響を受けていない。
なお、Caを本発明材7の上限値以上に添加した比較材
91,92,93についてもδフェライトきは生成して
いない。
【0132】各試験により得られた本発明材7について
の試験結果である機械的性質、及び625℃の10万時
間後のクリープ破断強さ(外挿値)を、本発明材1、本
発明材2、本発明材3、本発明材4、本発明材5、本発
明材6および比較材とともに表21に示す。
【0133】
【表21】
【0134】Caを添加した本発明材7は、類似鋼との
比較(試験材番号81と試験材番号2、試験材番号82
と試験材番号22、以下同様に83→31,84→3
5,85→43,86→61,87→71,88→7
3)でわかるように常温引張試験における延性(伸び、
絞り)は同等あるいは若干向上しており、2mmVノッチ
シャルピー衝撃値(試験温度:20℃)には、有意義な
特性向上が認められる。また、650℃の10万時間後
のクリープ破断強さも、類似鋼に比べて確実に向上し、
優れた材料特性を有するようになるといえる。
【0135】一方、試材番号43および85と91の比
較、61および86と91の比較、71および87と9
3の比較から明らかなように、Caを本発明材7の上限
値以上に添加した比較材では本発明材7および本発明材
7の類似鋼に比べて、衝撃値やクリープ破断強さが明ら
かに低下しており、Caの過剰な添加は、かえって材料
特性を害することがわかる。
【0136】
【発明の効果】本発明の高Cr鋳鋼車室材及び同材製圧
力容器は、所定の重量比のC,Si,Cr,Ni,V,
Nb,N,Mo,W,不可避的不純物,及びFeからな
るものとしたことによって、また、これに所定の重量比
のCu,B,Caを添加したことによって、更に、所定
の重量比のMn,MnとCu,B,Caを添加したこと
によって、優れた高温強度を有するものとなったため、
蒸気温度が600℃を越える超々臨界圧発電プラント用
の高温用蒸気タービン車室材として有用な材料を実現
し、これらの材料を用いて圧力容器を形成したことによ
って、現在の超々臨界圧発電プラントをさらに高温化す
ることが可能になり、化石燃料の節約に寄与するととも
に二酸化炭素の発生量を低く抑える上で有用な圧力容器
を実現する。
フロントページの続き (72)発明者 守中 康治 北九州市戸畑区大字中原先ノ浜46番地59 日本鋳鍛鋼株式会社技術部技術開発室内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量比で炭素:0.08〜0.14%,
    シリコン:0.10〜0.30%,クロム:8〜10
    %,ニッケル:0.01〜0.60%,バナジウム:
    0.1〜0.2%,ニオブ:0.03〜0.06%,窒
    素:0.02〜0.07%,モリブデン:0.1〜0.
    7%,タングステン:1〜2.5%,コバルト:0.0
    1〜2%,不可避的不純物,及び鉄からなることを特徴
    とする高クロム鋳鋼車室材。
  2. 【請求項2】 重量比で炭素:0.08〜0.14%,
    シリコン:0.10〜0.30%,クロム:8〜10
    %,ニッケル:0.01〜0.60%,バナジウム:
    0.1〜0.2%,ニオブ:0.03〜0.06%,窒
    素:0.02〜0.07%,モリブデン:0.1〜0.
    7%,タングステン:1〜2.5%,コバルト:0.0
    1〜2%,銅:0.02〜2.5%,不可避的不純物,
    及び鉄からなることを特徴とする高クロム鋳鋼車室材。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載の高クロム鋳鋼車
    室材において、0.002〜0.010%のほう素が添
    加されたことを特徴とする高クロム鋳鋼車室材。
  4. 【請求項4】 請求項1,2又は3に記載のいずれかの
    高クロム鋳鋼車室材により形成されたことを特徴とする
    高クロム鋳鋼車室材製圧力容器。
  5. 【請求項5】 重量比で炭素:0.08〜0.14%,
    シリコン:0.10〜0.30%,マンガン:0.01
    〜1.0%,クロム:8.0〜9.5%,ニッケル:
    0.01〜0.60%,バナジウム:0.1〜0.2
    %,ニオブ:0.03〜0.06%,窒素:0.02〜
    0.07%,モリブデン:0.1〜0.7%,タングス
    テン:1.5〜2.5%,コバルト:0.01〜2%,
    不可避的不純物,及び鉄からなることを特徴とする高ク
    ロム鋳鋼車室材。
  6. 【請求項6】 重量比で炭素:0.08〜0.14%,
    シリコン:0.10〜0.30%,マンガン:0.01
    〜1.0%,クロム:8.0〜9.5%,ニッケル:
    0.01〜0.60%,バナジウム:0.1〜0.2
    %,ニオブ:0.03〜0.06%,窒素:0.02〜
    0.07%,モリブデン:0.1〜0.7%,タングス
    テン:1.5〜2.5%,コバルト:0.01〜2%,
    銅:0.02〜2.5%,不可避的不純物,及び鉄から
    なることを特徴とする高クロム鋳鋼車室材。
  7. 【請求項7】 請求項5又は6に記載の高クロム鋳鋼車
    室材において、0.002〜0.010%のほう素が添
    加されたことを特徴とする高クロム鋳鋼車室材。
  8. 【請求項8】 請求項1,2,3,5,6又は7に記載
    の高クロム鋳鋼車室材において、0.001〜0.00
    9%のカルシウムが添加されたことを特徴とする高クロ
    ム鋳鋼車室材。
  9. 【請求項9】 請求項5,6,7又は8に記載のいずれ
    かの高クロム鋳鋼車室材により形成されたことを特徴と
    する高クロム鋳鋼車室材製圧力容器。
JP11097697A 1996-04-30 1997-04-28 高クロム鋳鋼車室材及び同材製圧力容器 Pending JPH10265913A (ja)

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JP11097697A JPH10265913A (ja) 1996-04-30 1997-04-28 高クロム鋳鋼車室材及び同材製圧力容器
AT98100567T ATE250152T1 (de) 1997-01-27 1998-01-14 Hochchromhaltiger, hitzebeständiger gussstahl und daraus hergestellter druckbehälter
DE69818117T DE69818117T2 (de) 1997-01-27 1998-01-14 Hochchromhaltiger, hitzebeständiger Gussstahl und daraus hergestellter Druckbehälter
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