JP3504835B2 - 低合金耐熱鋳鋼及び蒸気タービン用鋳鋼部品 - Google Patents

低合金耐熱鋳鋼及び蒸気タービン用鋳鋼部品

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JP3504835B2
JP3504835B2 JP24660097A JP24660097A JP3504835B2 JP 3504835 B2 JP3504835 B2 JP 3504835B2 JP 24660097 A JP24660097 A JP 24660097A JP 24660097 A JP24660097 A JP 24660097A JP 3504835 B2 JP3504835 B2 JP 3504835B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は最終部品形状に近い
形を、鍛造等の素材鍛練工程を経ずに鋳造法によって製
造することができる、靱性と高温強度特性に優れ、火力
発電用蒸気タービン車室をはじめとするタービン用鋳鋼
部品に好適な低合金耐熱鋳鋼及びそれを用いたタービン
用鋳鋼部品に関する。
【0002】
【従来の技術】火力発電用蒸気タービンプラントに用い
られる車室材や圧力容器用材料としては鋳物材料が多く
使われている。これは複雑な形状を有し、かつ同一形状
のものがあまりない単品生産部品を経済的に製造するた
めである。これらの材料のうち低合金鋼系の材料として
は主にCrMoV鋳鋼、2.25%CrMo鋳鋼、Cr
Mo鋳鋼などが挙げられる。これらの材料は高温で使用
されるため、良好な高温強度特性が必要とされ、さらに
鋳造欠陥部を溶接により補修できるように、優れた溶接
性もあわせて必要とする。
【0003】2.25%CrMo鋳鋼やCrMo鋳鋼
は、常温の衝撃特性が優れており、その結果、溶接性も
良好である。しかし、Vを添加していないためクリープ
破断強度が必ずしも十分でなく、年々高温化する蒸気タ
ービンの車室材に対するニーズに対応できないものとな
っている。一方、CrMoV鋳鋼はクリープ破断強度に
優れているが、衝撃特性が劣るために溶接性が悪く、製
造時の溶接補修が行いにくい問題点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記技術水準
に鑑み、CrMoV鋳鋼の優れたクリープ破断強度を現
状もしくはそれ以上に高くし、さらに靱性をCrMoV
鋳鋼よりも改善して溶接性を高めた、高強度低合金耐熱
鋳鋼材料及びそれを用いたタービン用鋳鋼部品を提供し
ようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決すべくCrMoV鋳鋼を基本成分として合金元素
の厳選を行って高温強度の改善を鋭意行い、優れた高温
特性を有する新しい低合金耐熱鋳鋼材料及びこの低合金
鋳鋼によるタービン用鋳鋼部品を見出した。すなわち、
本発明は次の(1)〜(5)の発明を含むものである。
【0006】 (1)重量比で炭素:0.06〜0.1
4%、ケイ素:0.01〜0.35%、マンガン:0.
2〜0.8%、クロム:0.8〜1.5%(1.5%含
まず)、ニッケル:0.1〜0.5%、バナジウム:
0.05〜0.3%、ニオブ:0.01〜0.1%、モ
リブデン:0.1〜1.5%、タングステン:0.1〜
3%、ホウ素:0.001〜0.01%、カルシウム:
0.001〜0.009%を含み、残部が不可避的不純
物及び鉄からなることを特徴とする低合金耐熱鋳鋼。 (2)不可避的に不純物として含有する量を除いては、
ニッケル及び/又はマンガンを含まないことを特徴とす
る上記(1)の低合金耐熱鋳鋼。 (3)鉄の一部をコバルトで置換し、その含有量が重量
比で0.1〜3.5%であることを特徴とする上記
(1)又は(2)の低合金耐熱鋳鋼。 (4)鉄の一部をチタンで置換し、その量が重量比でチ
タン:0.01〜0.045%であることを特徴とする
上記(1)〜(3)のいずれかに記載の低合金耐熱鋳
鋼。 (5)上記の(1)〜(4)のいずれかの低合金耐熱鋳
鋼で構成されてなることを特徴とするタービン用鋳鋼部
品。
【0007】
【発明の実施の形態】以下に前記発明(1)における各
成分範囲の限定理由を述べる。 炭素:炭素は熱処理時の焼入れ性を確保するとともに材
料強度を高める効果がある。また、炭化物を形成して高
温におけるクリープ破断強度の向上に寄与する。本合金
系では0.06%未満の添加では十分な材料強度が得ら
れないため、下限値を0.06%とする。一方、炭素の
添加量が多すぎると靱性が低下し、溶接性が低下するた
め、添加量の上限を0.14%とする。材料強度特性と
優れた靱性を兼ね揃えるために特に望ましい範囲は0.
08〜0.12%である。
【0008】ケイ素:ケイ素は湯流れ性を高めるととも
に脱酸材としての効果がある反面、過剰に添加すると基
地を脆化させる元素である。脱酸効果を十分に期待する
場合、最大0.35%までの添加を許容するが、本発明
材の製造において、製鋼過程で真空カーボン脱酸法を適
用する場合は、特にケイ素による脱酸効果をさほど期待
しなくてもよく、添加量を最小限度にとどめることが可
能となる。ただし、極端にケイ素量を低くするためには
原料の厳選が必要となりコストが上昇するため、下限を
0.01%とする。よってケイ素の成分範囲を0.01
〜0.35%とする。
【0009】マンガン:マンガンは製鋼時に脱酸材とし
て作用するとともに熱処理時の焼入れ性を高める作用が
ある。しかし、マンガンを加えるとその量に応じてクリ
ープ破断強度が劣化するとともに、脆化を引き起こすた
め添加の最大量を0.8%とした。ただし、含有量を
0.2%以下に制御するためには、原料鋼の厳選と過度
の精練工程が必要となりコスト高を招くため、最低量を
0.2%に設定している。
【0010】クロム:クロムは熱処理時の焼入れ性を高
めるとともに炭化物を形成してクリープ破断強度の改善
に寄与し、かつマトリックス中に溶け込んで耐酸化性を
改善する。またマトリックス自体を強化することでもク
リープ破断強度の向上に寄与する。0.8%未満である
とその効果が十分でないため、下限値を0.8%とす
る。一方、1.5%を越える量を添加すると溶湯の流動
性が低下して鋳造性が低下する傾向を示すとともに、本
合金系ではクリープ破断強度も低下する傾向にある。し
たがって、添加範囲を0.8〜1.5%(1.5%含ま
ず)とする。望ましい範囲は1.2〜1.45%であ
る。
【0011】ニッケル:ニッケルは熱処理時の焼入れ性
を高め、引張強さや耐力を向上させるほか、特に靱性を
高めるのに有効である。しかしその反面、長時間クリー
プ破断強度はニッケル添加により低下する。本発明材で
は、CrMoV鋳鋼に比べて炭素量を低めに設定し靱性
を高めているため、ニッケルによる靱性向上はさほど期
待しないが、炭素量が上限に近い場合は0.5%程度の
ニッケルを添加し、炭素増量による靱性低下を補う必要
がある場合も生じるため、上限値を0.5%とする。長
時間クリープ破断強度を最重視する場合、ニッケル含有
量は低いほど望ましいが、0.1%以下に抑制するため
には原料の厳選が必要となりコストが上昇するため、下
限を0.1%とする。
【0012】バナジウム:バナジウムは熱処理時の焼入
れ性を高めるとともに炭化物となってクリープ破断強度
を改善する。0.05%未満の添加では十分な効果が得
られない。また、逆に0.35%を越える量を添加する
と靱性が低下してしまう。このため、成分範囲を0.0
5〜0.3%とする。強度特性と靱性のバランスを考慮
すると望ましい添加量は0.15〜0.25%である。
【0013】ニオブ:ニオブは焼入れ性を高めるととも
に微細な炭化物を形成して高温強度の改善に寄与する。
また、溶体化処理等の高温加熱時の結晶粒成長を適度に
抑制し、靱性の向上に寄与する。添加量が0.01%未
満では顕著な効果はなく、また0.1%を越える量を添
加すると、溶湯凝固製造時に生成した粗大なニオブの炭
化物が熱処理(溶体化処理)時にマトリックスに十分に
固溶できず多量に残存し、靱性や長時間のクリープ破断
強度を低下させる。そこで成分範囲を0.01〜0.1
%に限定する。強度特性と靱性のバランスを考慮すると
望ましい添加量は0.02〜0.05%である。
【0014】モリブデン:モリブデンは熱処理時の焼入
れ性を高めるとともにマトリックス中や炭化物中に固溶
してクリープ破断強度を改善する。添加量が0.1%未
満であれば顕著な効果は期待されない。一方、多量に添
加すると靱性が低下するとともにコスト高を招くため
に、添加量の上限を1.5%に制限している。強度特
性、靱性、コストのバランスを考慮すると望ましい添加
量は0.45〜1.2%、靱性、コストとのバランスを
とりながら特にクリープ破断強度を重視する場合、より
望ましい添加量は0.8〜1.2%である。
【0015】タングステン:タングステンはマトリック
ス中や炭化物中に固溶してクリープ破断強度を改善す
る。添加量が0.1%未満であれば顕著な効果は期待さ
れない。一方、過剰に添加すると靱性を低下させるとと
もに、偏析して材料特性が不均一になる恐れもあり、さ
らにはコスト高も招くため、添加量の上限を3%に制限
している。強度特性、靱性、コストのバランスを考慮す
ると望ましい添加量は1〜2.5%、靱性、コストとの
バランスをとりながら特にクリープ破断強度を重視する
場合、より望ましい添加量は1.7〜2.5%である。
【0016】ホウ素:ホウ素は粒界に適当量偏析して焼
入れ性を高めるとともに、粒界を強化し靱性や高温強度
特性を改善する。微小量の添加で大きな特性向上をもた
らす有用な元素であるが、過剰に添加すると逆に粒界を
脆弱化して靱性を低下させる方向に転じてしまうため、
微小量を適切に制御して添加する必要がある。添加量が
0.001%未満では、焼入れ性向上や靱性、高温強度
特性向上効果は明確に現れず、逆に0.01%を超える
量を添加すると靱性低下を招くため、添加範囲を0.0
01〜0.01%とする。望ましい添加範囲は0.00
2〜0.007%である。カルシウム:カルシウムは介在物を球状化し細かく分散
させるとともに、その接種効果によって等軸晶の成長を
促進して、硫黄等の有害不純物元素のマクロ偏析を低減
する。また、介在物の融点を下げて、精錬工程で介在物
を取り除きやすくする効果も有している。この結果、材
料の靱性や高温強度特性が向上する。とくに本発明材の
ような鋳鋼材では、鍛造等の素材加工工程により、介在
物と基地金属の密着や偏析の解消を図ることはできない
ため、カルシウムの添加は有効である。添加量が0.0
01%未満では有効な作用を生じないため、下限値を
0.001%とする。また、過剰に添加すると、カルシ
ウム酸化物を生成し素材の清浄度が低下してしまうた
め、添加の上限値を0.009%とする。望ましい添加
範囲は0.002〜0.006%である。
【0017】本発明材1においては、上記の合金元素以
外は不可避的に不純物として混入するものを除いては含
有されないこと、すなわち意図的な添加を行わないこと
をその特徴の一つとしている。以下、いくつかの元素に
ついて添加を行わない理由を説明する。
【0018】窒素:窒素は炭素と同様に熱処理時の焼入
れ性を確保するとともに材料強度を高める効果がある。
また、炭窒化物を形成して高温におけるクリープ破断強
度の向上に寄与する。しかしながら、窒素はホウ素と化
合物を形成しやすいため、少量でも不用意に添加すると
ホウ素が粒界に適度に偏析せずにホウ素添加による効果
が消失してしまう。場合によっては、焼入れ処理時に、
ホウ素化合物がフェライト生成の核として作用するため
に焼入れ性を低下させる。本発明材1では、ホウ素添加
による焼入れ性向上効果、高温強度向上効果を優先させ
るために、窒素を無添加としている。
【0019】チタン:チタンは炭窒化物を形成しやすい
元素であり、特に窒素との親和力が強いことから微量の
添加によって窒素を固定する(ホウ素と窒素が結び付か
ないようにする)効果を有している。しかしながら、酸
素と結合して酸化物を形成し、材料欠陥を生じさせやす
い元素でもある。鋳鋼材では鍛造工程を取らないことが
大前提であり、鍛造により酸化物と基地金属を密着させ
ることもできないため、素材の清浄性を高めることが肝
要である。また、不可避的に混入するレベルの窒素であ
れば、あえてチタンを添加してこれを固定しなくともホ
ウ素は有効に作用するため、本発明材1ではチタンを無
添加としている。
【0020】アルミニウム:アルミニウムも窒素との親
和力が強いことから窒素を固定する作用を有している
が、チタンと同様に酸化物を形成して素材の清浄度を下
げる元素である。したがって、チタンの場合と同様の理
由により無添加としている。
【0021】次に、前記発明(2)における成分限定理
由を述べる。なお、前述の発明(1)に関する説明で既
に述べた成分については限定理由は同じなので、ここで
は前記発明(1)の低合金耐熱鋳鋼材料に含まれるニッ
ケル及び/又はマンガンを鉄で置換した理由を述べる。
【0022】マンガン:発明(1)の低合金耐熱鋳鋼材
料においてマンガンは、脱酸効果や焼入れ性向上効果を
期待して添加されている。しかしながら、その量に応じ
てクリープ破断強度が劣化するため、素材コストは上昇
してもクリープ破断特性を高めることを重視する場合に
は無添加とすることが望ましい。脱酸効果に関しては、
真空カーボン脱酸法の採用やケイ素などの他の脱酸材に
よる効果を考慮すればマンガンを無添加としても問題は
ない。また、焼入れ性に関しても、必要に応じて炭素、
クロム、バナジウム、ニオブ、モリブデン、ホウ素など
の焼入れ性を高める元素の添加量をコントロールするこ
とで確保することが可能である。したがって、特に高温
強度特性を最重視するために、コストの上昇を容認した
うえでマンガンを無添加としている。
【0023】ニッケル:発明(1)の低合金耐熱鋳鋼材
料においてニッケルは熱処理時の焼入れ性を高め、引張
強さや耐力を向上させるほか、特に靱性を高める効果を
期待して添加されている。しかしその反面、長時間クリ
ープ破断強度はニッケル添加により低下するため、素材
コストは上昇してもクリープ破断特性を高めることを重
視する場合には無添加とすることが望ましい。焼入れ性
に関しては、必要に応じて炭素、クロム、バナジウム、
ニオブ、モリブデン、ホウ素などの焼入れ性を高める元
素の添加量をコントロールすることで確保することが可
能である。また、靱性に関しては、本発明材では、Cr
MoV鋳鋼に比べて炭素量を低めに設定し靱性を高めて
いるため、ニッケルによる靱性向上はさほど期待しない
が、炭素量が上限に近い場合は、靱性が低下して溶接性
が悪くなり、コスト上昇を招く場合もある。しかしなが
ら、このようなコスト高を容認したうえで、特に、高温
強度特性を最重視するために、ニッケルを無添加として
いる。
【0024】次に前記発明(3)における成分限定の理
由を述べるが、コバルト以外の元素については発明
(1)と同じであるのでここでは省略し、コバルトの作
用についてのみ説明する。 コバルト:コバルトは焼入れ性を高めるとともにマトリ
ックスに固溶して基地自体を強化する。さらにコバルト
は焼戻し軟化抵抗を高める作用があり、強度と靱性のバ
ランスを図るためにも有用である。コバルト添加の効果
が現れるのは添加量0.1%以上であるが、3.5%を
越える量を添加すると、炭化物の析出を促進してしまう
ために、長時間側のクリープ破断強度を劣化させてしま
う。加えてコバルト自体高価な材料であるため、多量の
添加はコスト高を招く。このため、成分範囲として0.
1〜3.5%を設定している。望ましい範囲としては
0.5〜2.5%である。
【0025】次に前記発明(4)における成分限定の理
由を述べるが、新規添加元素であるチタンと、チタンの
添加に関連するものとして不可避的不純物として混入す
る窒素以外の元素については発明(1)〜(3)と同じ
であるのでここでは省略し、チタン(窒素の影響を含
)の作用についてのみ説明する。
【0026】チタン:発明(1)〜(3)の成分的特徴
の一つは、窒素およびチタンの意図的な添加を行わない
点である。窒素無添加の理由は窒素はホウ素と化合物を
形成しやすく、少量でも不用意に添加するとホウ素が粒
界に適度に偏析せずにホウ素添加による効果が消失して
しまうためである。製鋼工程で真空脱ガスが可能な場
合、不純物として混入する窒素量は低く抑えられるた
め、発明(1)〜(3)の成分でもホウ素が有効に作用
するが、製造設備の関係等で大気溶解を余儀なくされる
場合や、出発原料のスクラップ中の窒素濃度が高い場合
には、不純物として混入する窒素量が許容量を越えるよ
うになり、ホウ素が有効に作用しなくなる
【0027】一方、チタンは炭窒化物を形成しやすい元
素であり、特に窒素との親和力が強いことから微量の添
加によって窒素を固定する(ホウ素と窒素が結び付かな
いようにする)効果を有している。不純物として混入す
る窒素の許容量は、他の元素との兼ね合いで微妙に変化
するが、本発明者らがこれまで得てきた多くの実験結果
に基づけば0.006%を越えるような場合には、ホウ
素の有効な効果が低下する傾向にあるため、このような
場合にチタンを添加するものとする。チタンの添加量が
0.01%未満では窒素の固定効果が不十分であるた
め、下限値を0.01%とする。一方、必要以上の添加
は材料の清浄度を低下させて靱性や高温強度特性を低下
させるため、上限値を0.045%とする。窒素を確実
に固定し、かつ過剰添加とならないことを考慮すると、
望ましい添加量は0.02%〜0.04%である。
【0028】
【実施例】以下に実施例に基づいて本発明をさらに具体
的に説明する。(例 1) 表1に試験に供した材料の化学成分を示す。試料番号1
〜7が参考材、試料番号8〜12が比較材に相当する。
比較材のうち、試料番号11は2.25CrMo鋳鋼の
代表的成分、試料番号12はCrMoV鋳鋼の代表的な
成分である。全ての試験材料は50kg真空高周波溶解
炉にて溶製し、砂型を用いて造塊した。続いて、タービ
ン車室のような大型鋳鋼品の製造熱処理を模擬する形
で、均質化焼鈍、溶体化処理後、500℃までの平均冷
却速度3℃/分で冷却した。なお、この冷却速度は肉厚
400mmの部品の中心部の冷却を模擬したものであ
る。焼戻しは0.2%耐力がおよそ50±3kgf/m
2 になるように各材料の焼戻し温度を決めて行った。
【0029】表2に参考材1〜7及び比較材8〜12
機械的性質及びクリープ破断特性を示す。使用時の組織
安定性を考慮すると、焼戻しは使用温度より150℃以
上は高い温度で行うのが望ましいため、焼戻しの下限温
度を680℃としたが、本発明材は、いずれも目標強度
を確保できたのに対して、一部の比較材では、680℃
で焼き戻しても目標の0.2%耐力を得られないものが
あった。これは、大型部品を想定したゆっくりとした冷
却では十分に焼きが入らなかったためである。比較材の
うち、鋼種8,9及び11は十分に焼きが入らず、下限
温度:680℃で焼き戻しても目標の0.2%耐力に到
達しなかった鋼種である。
【0030】参考材1〜7のシャルピー衝撃吸収エネル
ギー(常温試験)は、最低でも11.9kgf−mであ
り、溶接性が良好な2.25CrMo鋳鋼(比較材:鋼
種11)と比べても遜色はない。このことは、参考材1
〜7が2.25CrMo鋳鋼と同等以上の溶接性を有し
ていることを示している。600℃で15kgf/mm
2 の荷重を負荷した場合のクリープ破断時間に着目する
と、参考材1〜7は比較材8〜12を大幅に上回る破断
時間を示しており、クリープ破断特性が十分に高いこと
がわかる。以上のことは、参考材1〜7における各種元
素の適切な成分設計が靱性の確保とクリープ破断強度の
向上に有効であったことを示唆している。
【0031】(例2) 表3に試験に供した材料の化学成分を示す。試料番号1
は例1で用いた試料番号3の成分をベースに、ニッケ
ルを無添加とした鋼種、試料番号14は例1で用いた試
料番号4の成分をベースに、マンガン及びニッケルを無
添加とし、焼入れ性確保のためにモリブデンを増量した
鋼種、試料番号15は例1で用いた試料番号5の成分を
ベースに、マンガンを無添加とし焼入れ性確保のために
クロムを増量した鋼種である。全ての試料材料は50k
g真空高周波溶解炉にて溶製し、砂型を用いて造塊し
た。続いて、タービン車室のような大型鋳鋼品の製造熱
処理を模擬する形で、均質化焼鈍、溶体化処理後、50
0℃までの平均冷却速度3℃/分で冷却した。なお、こ
の冷却速度は肉厚400mmの部品の中心部の冷却を模
擬したものである。焼戻しは0.2%耐力がおよそ50
±3kgf/mm2 になるように各材料の焼戻し温度を
決めて行った。
【0032】表4に参考材(試料番号13〜15)の機
械的性質及びクリープ破断特性を示す。試料番号13〜
15の鋼種の特性を表2に示した例1のベース材の特性
と比較すると、シャルピー衝撃吸収エネルギー(常温試
験)は若干低めであるが、それでも、表1の比較材:試
料番号11(2.25CrMo鋳鋼)と比べて遜色はな
い。一方、600℃で15kgf/mm2 の荷重を負荷
した場合のクリープ破断時間は確実に伸びており、クリ
ープ破断強度が上昇したことを示している。
【0033】(例3) 表5に試験に供した材料の化学成分を示す。試料番号1
6,17は例1の試料番号1,3の成分をベースとした
参考材、試料番号18,19は例2の試料番号14,1
5の成分をベースとした参考材である。全ての試験材料
は50kg真空高周波溶解炉にて溶製し、砂型を用いて
造塊した。続いて、タービン車室のような大型鋳鋼品の
製造熱処理を模擬する形で、均質化焼鈍、溶体化処理
後、500℃までの平均冷却速度3℃/分で冷却した。
なお、この冷却速度は肉厚400mmの部品の中心部の
冷却を模擬したものである。焼戻しは0.2%耐力がお
よそ50±3kgf/mm2 になるように各材料の焼戻
し温度を決めて行った。
【0034】表6に参考材16〜19の機械的性質及び
クリープ破断特性を示す。鋼種16〜19の特性を表2
に示した例1のベース材の特性及び表4に示した例2の
ベース材の特性と比較すると、シャルピー衝撃吸収エネ
ルギー(常温試験)はほとんど変わらないか、むしろ高
めの良好な値を示している。一方、600℃で15kg
f/mm2 の荷重を負荷した場合のクリープ破断時間は
確実に伸びており、クリープ破断強度が上昇したことを
示している。
【0035】(例4) 表7には試験に供した材料の化学成分を示す。試料番号
20,23,24は例1の試料番号3の成分をベースに
とした材料であり、試料番号20は参考材、試料番号2
3は発明(4)に係る発明材、試料番号24は発明
(1)に係る発明材である。試料番号21は例2の試料
番号14の成分をベースにとした参考材、試料番号2
2、25は例3の試料番号17の成分をベースにとした
材料であり、試料番号22は参考材、試料番号25は
明()に係る発明材である。また、試料番号26〜2
8は比較材である。また、上記の試料のうち、試料番号
20〜23、26、27は、製造設備の関係等で大気溶
解を余儀なくされる場合や、出発原料のスクラップ中の
窒素濃度が高い場合を想定して、不可避的に混入する量
の不純物としての窒素を模擬する形であえて窒素を加え
ている(窒素添加による有用な効果を狙ったものではな
い)。全ての試験材料は50kg真空高周波溶解炉にて
溶製し、砂型を用いて造塊した。続いて、タービン車室
のような大型鋳鋼品の製造熱処理を模擬する形で、均質
化焼鈍、溶体化処理後、500℃までの平均冷却速度3
℃/分で冷却した。なお、この冷却速度は肉厚400m
mの部品の中心部の冷却を模擬したものである。焼もど
しは0.2%耐力がおよそ50±3kgf/mm2 にな
るように各材料の焼もどし温度を決めて行った。
【0036】表8に本発明材、参考材、比較材の機械的
性質およびクリープ破断特性を示す。まず、チタン添加
の効果について記述する。試料番号20〜23および2
7のように不可避的に混入する窒素の量が大きい場合で
も、適切量のチタンの添加を行えばホウ素による焼入性
向上効果が有効に作用して目標強度を確保することがで
きる。一方、チタン添加量が本発明の下限値より低い試
料番号26では焼入性が低く目標強度を確保できていな
いとともに、初析フェライトが多量に出現するためにシ
ャルピー衝撃吸収エネルギー(常温試験)も低い。試料
番号20〜22では、本発明範囲内の量のチタンの添加
を行うことで、シャルピー衝撃吸収エネルギー(常温試
験)や600℃で15kgf/mm2 の荷重を負荷した
場合のクリープ破断時間はそれぞれのベース材より若干
低下する。しかし衝撃吸収エネルギーに関しては10k
gf−m以上の十分に高い値を示し、現用材(試料番号
11)と比較しても大きく劣るものではなく、かつ、ク
リープ破断時間に関しては現用材(試料番号11)を大
幅に上回っている。試料番号27は本発明の上限値以上
のチタンを添加したものであるが、クリープ破断時間は
現用材(試料番号11)を大幅に上回るものの、衝撃吸
収エネルギーが極端に劣っている。
【0037】以上の結果より、不可避的に混入する窒素
の量が大きい場合において、焼入性を確保して目標強度
を確保するとともに、かつ良好なシャルピー衝撃吸収エ
ネルギーとクリープ破断強度強度を得るためには、本発
明にて限定した範囲内のチタンを添加することが有用で
あることが明らかである。
【0038】つぎにカルシウム添加の効果について記述
する。表8から明らかなように、本発明範囲内のカルシ
ウムを添加した鋼種(試料番号23〜25)は、それぞ
れのベース材料に比べて、シャルピー衝撃吸収エネルギ
ー(常温試験)、600℃で15kgf/mm2 の荷重
を負荷した場合のクリープ破断時間とともにほぼ同等
(試料番号23)あるいは同等以上の高い値(試料番号
24,25)を示している。一方、上限値以上の量のカ
ルシウムを添加した試料番号28では、現用材(試料番
号11)に比べて衝撃吸収エネルギーが極端に劣ってい
る。以上の結果より、本発明にて限定した範囲内のカル
シウムの添加は靱性とクリープ破断強度を高める有効な
作用を有することが明らかである。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
【表6】
【0045】
【表7】
【0046】
【表8】
【0047】
【発明の効果】本発明の低合金耐熱鋳鋼材は優れた高温
強度及び靱性を有するため、最終製品形状に近い形を鋳
造等の素材鍛練工程を経ずに製造するための材料として
適している。特に、遅い冷却速度でも十分に焼きが入る
成分であるため、火力発電用蒸気タービン車室をはじめ
とする大型のタービン用鋳鋼部品材料として有用であ
る。本発明により、低コストで高効率の発電プラントの
建設が可能となり、化石燃料の節約に寄与するとともに
二酸化炭素の発生量を抑制するうえで効果がある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田代 康則 福岡県北九州市戸畑区大字中原先ノ浜46 番地59 日本鋳鍛鋼株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−199850(JP,A) 特開 平8−260091(JP,A) 特開 平8−269616(JP,A) 特開 平8−209293(JP,A) 特開 平9−194987(JP,A) 特開 平9−268343(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量比で炭素:0.06〜0.14%、
    ケイ素:0.01〜0.35%、マンガン:0.2〜
    0.8%、クロム:0.8〜1.5%(1.5%を含ま
    ず)、ニッケル:0.1〜0.5%、バナジウム:0.
    05〜0.3%、ニオブ:0.01〜0.1%、モリブ
    デン:0.1〜1.5%、タングステン:0.1〜3
    %、ホウ素:0.001〜0.01%、カルシウム:
    0.001〜0.009%を含み、残部が不可避的不純
    物及び鉄からなることを特徴とする低合金耐熱鋳鋼。
  2. 【請求項2】 不可避的に不純物として含有する量を除
    いては、ニッケル及び/又はマンガンを含まないことを
    特徴とする請求項1に記載の低合金耐熱鋳鋼。
  3. 【請求項3】 鉄の一部をコバルトで置換し、その含有
    量が重量比で0.1〜3.5%であることを特徴とする
    請求項1又は2に記載の低合金耐熱鋳鋼。
  4. 【請求項4】 鉄の一部をチタンで置換し、その量が重
    量比でチタン:0.01〜0.045%であることを特
    徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の低合金耐熱鋳
    鋼。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の低合金
    耐熱鋳鋼で構成されてなることを特徴とするタービン用
    鋳鋼部品。
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