JPH10254090A - モーションイメージングフィルム - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 処理前にハレーション防止性、フェロタイピ
ング防止性、ブロッキング防止性及び帯電防止性を示す
と共に、フィルム処理で損なわれることのない帯電防止
性を示す改良されたモーションイメージングフィルムを
提供すること。 【解決手段】 支持体の片面上に、順に、処理で損なわ
れることのない導電性層と、少なくとも一のハロゲン化
銀乳剤層と、保護オーバーコートとを有し且つその反対
面上にアルカリ可溶性の高分子バインダーと導電性カー
ボンブラックとを含むカーボンブラック含有裏層を有し
て成り、前記処理で損なわれることのない導電性層の抵
抗率が５×１０⁹ Ω／□未満であるモーションイメージ
ングフィルム。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、支持体材料の片面
上に、順に、導電性下塗層と、写真乳剤層と、保護オー
バーコートとを有し且つその反対面上にカーボンブラッ
ク含有裏層及び必要に応じて該カーボンブラック含有層
を被覆する滑層を有して成る写真フィルムに関する。こ
の写真フィルムは、例えば映画フィルムやテレビジョン
フィルムのようなモーションイメージングフィルム(mot
ion imaging film) としての使用に特に適している。

【０００２】

【従来の技術】オリジネーションフィルム（例、カメラ
フィルム及び中間フィルム、プリントフィルムを得るた
めには後者が用いられる）やプリントフィルムとして用
いられる映写フィルム等のモーションイメージングフィ
ルムは、そのフィルムの裏側にカーボンブラック含有層
を使用する場合がある。この裏側の層は、ハレーション
防止特性及び帯電防止特性の両方を付与する。さらに、
映画フィルムやテレビジョン産業で用いられる巨大なロ
ール状フィルムの場合、カーボンブラック含有層が、と
りわけフィルムが高温多湿のような悪条件に晒された場
合に、裏層がフィルムの画像形成面と接触した際のブロ
ッキングやフェロタイピングからの優れた保護性をも提
供する。

【０００３】このカーボンブラックは、フィルムをアル
カリ性溶液中に浸漬し、裏層をスクラビングし、そして
水ですすぎ洗いする工程により現像前に層を除去できる
ように、アルカリ可溶性のバインダーに適用される。カ
ーボンブラック含有層の除去後には、フィルムの帯電防
止特性は失われる。すると、処理後の映画フィルムやテ
レビジョンフィルムには、オリジネーションフィルムの
場合には印刷工程において露光装置内を搬送される時
に、また映画用プリントフィルムの場合には劇場の投影
機内を搬送される時に、望ましくない静電荷の発生が起
こりうる。

【０００４】このような静電荷の発生や放電は、中間フ
ィルムマスターからプリントフィルムを露光する際や、
映画用プリントフィルムを映画館で投影する際に、いく
つかの重大な問題を引き起こす可能性がある。プリント
フィルムの露光時に中間フィルム上に静電荷が発生する
と、静電放電がプリントフィルム内のスタチックマーク
の原因となる恐れがある。さらに、オリジネーションフ
ィルムやプリントフィルムの場合、フィルム搬送時に発
生する多量の静電荷が塵粒子をフィルム表面に引きつけ
ることもある。フィルム表面に付着すると、これらの塵
粒子が摩擦や引掻き傷を生ぜしめる恐れもある。このよ
うな摩擦や引掻き傷を含有したり、或いは十分に大きい
場合には塵粒子自体を含有するオリジネーションフィル
ムは、印刷工程に際してこれらの欠陥による像をプリン
トフィルム上に転写させる恐れがある。また、プリント
フィルムも映画館においてフィルム投影時に静電荷を発
生する場合があり、その場合には同様に塵粒子をフィル
ム表面に引きつけ、最終的には磨耗、引掻き傷、塵粒子
等の欠陥を映画館のスクリーン上に投影してしまうこと
にもなりかねない。

【０００５】このように、処理前にハレーション防止
性、フェロタイピング防止性、ブロッキング防止性及び
帯電防止性を示すと共に、フィルム処理で損なわれるこ
とのない帯電防止性を示す改良されたモーションイメー
ジングフィルムを提供することが非常に望まれている。

【０００６】静電荷の問題を解決するために通常実施さ
れている方法は、写真フィルム上に帯電防止層を設ける
方法である。この目的のため多種多様な帯電防止剤が用
いられている。例えば、米国特許第３，０３３，６７９
号明細書に、スチレン及びスチリルウンデカン酸のコポ
リマーのアルカリ金属塩を含む帯電防止層が記載されて
いる。米国特許第３，４３７，４８４号明細書に、硬化
ポリビニルアルコールバインダー中に導電性物質として
塩化ナトリウム又は塩化カリウムのような金属ハロゲン
化物を有する写真フィルムが記載されている。米国特許
第３，５２５，６２１号明細書には、アルキルアリール
ポリエーテルスルホネート、アリールスルホン酸の金属
塩又はポリカルボン酸のアルカリ金属塩を含む帯電防止
層が記載されている。米国特許第３，６３０，７４０号
明細書には、アニオン性皮膜形成性高分子電解質、コロ
イドシリカ及びポリ酸化アルキレンを含む帯電防止層が
記載されている。米国特許第３，６８１，０８０号明細
書には、帯電防止剤がスチレンとスチレンスルホン酸と
のコポリマーである帯電防止層が記載されている。米国
特許第４，５４２，０９５号明細書には、バインダー、
酸化アルキレンモノマーの重合体を含む非イオン性界面
活性ポリマー及びアルカリ金属塩を含む帯電防止組成物
が記載されている。米国特許第４，９１６，０１１号明
細書には、スチレンスルホネート−マレイン酸コポリマ
ー、ラテックスバインダー及びアルキル置換三官能性ア
ジリジン架橋剤を含む帯電防止層が記載されている。米
国特許第４，２３７，１９４号、同第４，３０８，３３
２号及び同第４，５２６，７０６号明細書に、ポリアニ
リン塩含有層をベースにした帯電防止層が記載されてい
る。米国特許第４，０７０，１８９号明細書には、架橋
ビニルベンジル第四アンモニウムポリマー帯電防止層が
記載されている。

【０００７】文献では、五酸化バナジウム系の帯電防止
層を使用することがよく知られている。米国特許第４，
２０３，７６８、同第５，００６，４５１号、同第５，
２２１，５９８号及び同第５，３６８，９９５号明細書
その他に、五酸化バナジウムコロイドゲルの組成物から
帯電防止層を調製することが記載されている。五酸化バ
ナジウムを含有する帯電防止層は静電荷に対して優れた
防護性を提供すると共に透明性に優れるという利点があ
り、またその性能は周囲湿度により著しい影響を受ける
ということがない。これらの帯電防止層の優れた性能
は、該物質の特異な形態によるものである。コロイド状
の五酸化バナジウムゲルは、幅約５０〜１００Å、厚さ
約１０Å、長さ約１０００〜１０，０００Åのアスペク
ト比が高いフラットなリボン状物がからまっているもの
から成る。このアスペクト比の高い形態のため、非常に
少ない被覆量の五酸化バナジウムで低い表面抵抗率を達
成することができる。帯電防止層の団結性を高め且つ下
部の支持体材料に対する付着性を向上させるため、塩化
ビニリデン含有ターポリマーラテックス又はポリエステ
ルイオノマー分散体のような高分子バインダーを使用す
ることが好ましい。

【０００８】五酸化バナジウムの帯電防止層は、処理液
中の成分と相互作用することが知られている。写真処理
液中の化学物質が帯電防止層中の導電性化合物と反応す
る又はこれを可溶化する可能性があり、所望の帯電防止
特性を減損又は消滅させてしまうことが頻発する。この
相互作用は帯電防止層の導電性を消失せしめるため、処
理で損なわれることのない帯電防止層であれば処理後の
フィルムに付与するであろう汚れ防止性が失われる。帯
電防止層が処理液の成分と相互作用しないようにするた
めに、帯電防止層に保護オーバーコート又はバリヤ層が
適用される。

【０００９】導電性金属含有粒子を含む帯電防止層が知
られている。有用な導電性金属含有粒子の例として、ド
ナーをドープした金属酸化物、酸素欠陥を含有する金属
酸化物、並びに導電性窒化物、炭化物及び臭化物が挙げ
られる。特に有用な粒子の具体例として、導電性のＴｉ
Ｏ₂ 、ＳｎＯ₂ 、Ｖ₂ Ｏ₅ 、Ａｌ₂ Ｏ₃ 、ＺｒＯ₂ 、Ｉ
ｎ₂ Ｏ₃ 、ＺｎＯ、ＺｎＳｂ₂ Ｏ₆ 、ＩｎＳｂＯ₄ 、Ｔ
ｉＢ₂ 、ＺｒＢ₂ 、ＮｂＢ₂ 、ＴａＢ₂ 、ＣｒＢ、Ｍｏ
Ｂ、ＷＢ、ＬａＢ₆ 、ＺｒＮ、ＴｉＮ、ＷＣ、ＨｆＣ、
ＨｆＮ及びＺｒＣが挙げられる。これらの導電性粒子に
ついて記載している特許明細書の例として、米国特許第
４，２７５，１０３号、同第４，３９４，４４１号、同
第４，４１６，９６３号、同第４、４１８，１４１号、
同第４，４３１，７６４号、同第４，４９５，２７６
号、同第４，５７１，３６１号、同第４，９９９，２７
６号、同第５，１２２，４４５号及び同第５，３６８，
９９５号明細書が挙げられる。また、米国特許第４，８
４５，３６９号及び同第５，１１６，６６６号明細書に
記載されているように、例えば、アンチモンをドープし
た酸化錫を非導電性チタン酸カリウムウィスカーの表面
にコーティングしたものからなる繊維状の導電性粉末も
含まれる。

【００１０】欧州特許出願公開第２５２５５０Ａ号に、
透明支持体上に、順に、青感性ハロゲン化銀乳剤層、赤
感性ハロゲン化銀乳剤層、中間層、緑感性ハロゲン化銀
乳剤層及び耐応力層をコーティングして成り、該支持体
と該青感性ハロゲン化銀乳剤層の間にイエローハレーシ
ョン防止層を、また該青感性ハロゲン化銀乳剤層と赤感
性ハロゲン化銀乳剤層の間にブルーハレーション防止層
を具備する映画用プリントフィルム要素が記載されてい
る。この出願明細書には、支持体の写真乳剤とは反対側
にポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩のような導電性
ポリマーを含む帯電防止層を設けることについても記載
されている。これらの導電性ポリマーの帯電防止特性
は、保護トップコートがない場合には、処理後に大幅に
消失されうる。

【００１１】カーボンブラック含有層を使用した写真フ
ィルムが、例えば、米国特許第２，２７１，２３４号、
同第２，３２７，８２８号、同第２，９７６，１６８
号、同第３，７５３，７６５号、同第３，８８１，９３
２号、同第４，３０１，２３９号、同第４，９１４，０
１１号及び同第４，９９０，４３４号明細書に記載され
ている。支持体の写真乳剤側に、下塗層、中間層及びフ
ィルター層をはじめとする他の層を使用することが記載
されている。しかしながら、これらカーボンブラック含
有層を使用した写真フィルムの従来技術に関する文献に
は、支持体のカーボンブラック含有層とは反対側に、帯
電防止特性がフィルム処理で損なわれることのない導電
性下塗層を追加的に使用すること及びその使用により得
られる利点については教示がない。

【００１２】

【発明が解決しようとする課題】上記の従来技術文献
は、本発明の特徴の一部を記載しているが、改良された
モーションイメージングフィルムに要求される要件に対
する十分な解決策を教示又は提供するものではない。

【００１３】

【課題を解決するための手段】本発明によると、映画フ
ィルムやテレビジョンフィルムのようなモーションイメ
ージングフィルム用として特に適している写真フィルム
は、支持体材料の片面上に、順に、処理で損なわれるこ
とのない導電性下塗層と、写真乳剤と、保護オーバーコ
ートとを有し且つ、その反対面上にカーボンブラック含
有裏層及び必要に応じて該裏層を被覆する滑剤を有して
成る。該カーボンブラック含有層は、未処理フィルムに
ハレーション防止性及び帯電防護性を付与する。該導電
性下塗層はその帯電防止性を処理後にも維持するため、
モーションイメージングフィルムは、該カーボンブラッ
ク含有層が処理の際に除去された後でも、静電荷の発生
から保護される。該導電性下塗層はフィルム処理後に５
×１０⁹ Ω／□未満の抵抗率を示す。

【００１４】本発明の詳細な説明 本発明は、支持体材料の片面上に、順に、処理で損なわ
れることのない導電性下塗層と、写真乳剤と、保護オー
バーコートとを有し且つ、その反対面上にカーボンブラ
ック含有裏層及び必要に応じて該裏層を被覆する滑剤層
を有する写真フィルムに関する。この写真フィルムは、
映画フィルムやテレビジョンフィルムのようなモーショ
ンイメージングフィルム用として特に適している。

【００１５】本発明の実施に用いられる写真フィルムの
支持体材料は、合成高分子量ポリマー材料である。これ
らの支持体材料は、各種の高分子フィルム、紙、等を含
んで成ることができるが、当該技術分野で周知のポリエ
ステルやトリアセテート系のフィルム支持体が好適であ
る。支持体の厚さは重要ではない。例えば、２〜１０ミ
ル（０．００２〜０．０１０インチ、５０．８〜２５４
μｍ）の支持体厚を使用することで非常に良好な結果を
得ることができる。ポリエステル系支持体は、導電性下
塗層とポリエステル系支持体との間にアンダーコート又
はプライマー層を使用することが典型的である。このよ
うなアンダーコート層は当該技術分野では周知である
が、例えば、塩化ビニリデン／アクリル酸メチル／イタ
コン酸系ターポリマー又は塩化ビニリデン／アクリロニ
トリル／アクリル酸系ターポリマーを含み、米国特許第
２，６２７，０８８号、同第２，６９８，２３５号、同
第２，６９８，２４０号、同第２，９４３，９３７号、
同第３，１４３，４２１号、同第３，２０１，２４９
号、同第３，２７１，１７８号及び同第３，５０１，３
０１号明細書に記載されている。

【００１６】カーボンブラック含有裏層は、アルカリ可
溶性の高分子バインダー、導電性カーボンブラック並び
にその他必要に応じて分散助剤、界面活性剤、滑剤、融
合助剤及びマットビーズのような成分を含む。カーボン
ブラック含有層に好適に用いられるアルカリ可溶性の高
分子バインダーとして、アルキル（メタ）アクリレート
及び（メタ）アクリル酸のコポリマー、ポリビニルフタ
レート、ジカルボン酸基を含有するセルロース系有機酸
エステル、例えば、酢酸フタル酸セルロース、酢酸マレ
イン酸セルロース、酢酸プロピオン酸フタル酸セルロー
ス、酢酸プロピオン酸コハク酸セルロース、その他、が
挙げられる。該裏層には、「Carbon Black」[J.B. Donn
et及び A. Voet、Marcel Dekker (1976)] に記載されて
いるもののような各種の導電性カーボンブラックが使用
され、成功を収めることができる。

【００１７】カーボンブラック含有層の乾燥被覆重量は
２００〜５０００ｍｇ／ｍ² の範囲にあることが典型的
である。該層に含まれるカーボンブラックの量は、未処
理フィルムに十分なハレーション防止性及び帯電防護性
を付与するために、裏層の光学濃度が０．５より高く、
抵抗率が１×１０⁸ Ω／□未満になるような量とする。
該カーボンブラック含有層は、高分子フィルム支持体の
上に直接適用してもよいし、また該フィルム支持体上に
予め適用しておいたプライマー層の上に適用してもよ
い。ポリエステル系のフィルム支持体の場合には、コロ
ナ放電処理のようなエネルギー処理を施した後のフィル
ム支持体上に裏層を直接適用することが好ましい。

【００１８】必要により、フィルムの裏側の摩擦特性を
よりよく制御するために、カーボンブラック含有層の上
に滑剤を適用する。滑剤は水性媒体又は有機溶媒のいず
れかから適用される。有効に使用できる滑剤として、脂
肪酸の高級アルコールエステル、高級脂肪酸カルシウム
塩、金属ステアレート、シリコーン化合物、パラフィン
蝋並びにカルナバ蝋及び蜜蝋のような天然蝋が挙げら
れ、米国特許第２，５８８，７５６号、同第３，１２
１，０６０号、同第３，２９５，９７９号、同第３，０
４２，５２２号及び同第３，４８９，５６７号明細書そ
の他に記載されている。

【００１９】本発明の導電性下塗層は、写真処理液に対
して元来安定である導電剤を含有する単一層であっても
よいし、また導電性下塗層を処理液から保護するために
導電性下塗層の上にバリヤ層をコーティングしてもよ
い。導電性下塗層はフィルム処理後に５×１０⁹ Ω／□
未満の抵抗率を有する。

【００２０】導電性下塗層は、処理後に帯電防止特性を
保存させるためのバリヤ層を追加する必要のない単一層
として使用されることが好ましい。この場合、導電性下
塗層に用いられる好適な導電剤として以下のものが挙げ
られる。 （１）ドナーをドープした金属酸化物、酸素欠陥を含有
する金属酸化物、並びに導電性窒化物、炭化物及び臭化
物が挙げられる。特に有用な粒子の具体例として、導電
性のＴｉＯ₂ 、ＳｎＯ₂ 、Ｖ₂ Ｏ₅ 、Ａｌ₂ Ｏ₃ 、Ｚｒ
Ｏ₂ 、Ｉｎ₂ Ｏ ₃ 、ＺｎＯ、ＺｎＳｂ₂ Ｏ₆ 、ＩｎＳｂ
Ｏ₄ 、ＴｉＢ₂ 、ＺｒＢ₂ 、ＮｂＢ₂ 、ＴａＢ₂ 、Ｃｒ
Ｂ、ＭｏＢ、ＷＢ、ＬａＢ₆ 、ＺｒＮ、ＴｉＮ、ＷＣ、
ＨｆＣ、ＨｆＮ及びＺｒＣが挙げられる。これらの導電
性粒子について記載している特許明細書の例として、米
国特許第４，２７５，１０３号、同第４，３９４，４４
１号、同第４，４１６，９６３号、同第４、４１８，１
４１号、同第４，４３１，７６４号、同第４，４９５，
２７６号、同第４，５７１，３６１号、同第４，９９
９，２７６号、同第５，１２２，４４５号及び同第５，
３６８，９９５号明細書が挙げられる。 （２）米国特許第４，８４５，３６９号及び同第５，１
１６，６６６号明細書に記載されているように、例え
ば、アンチモンをドープした酸化錫を非導電性チタン酸
カリウムウィスカーの表面にコーティングしたものから
なる繊維状の導電性粉末、並びに係属中の米国特許出願
第０８／７４７，４８０号及び同第０８／７４６，６１
８号（１９９６年１１月１２日出願）に記載されている
アンチモンをドープした酸化錫の繊維体又は「ウィスカ
ー」が挙げられる。 （３）米国特許第４，２３７，１９４号及び同第５，３
７０，９８１号並びに特願平２−２８２２４５号及び同
２−２８２２４８号に記載されている導電性ポリアセチ
レン、ポリチオフェン及びポリピロールが挙げられる。

【００２１】上記の導電剤は高分子バインダーにより適
用される。層の形成には各種の高分子バインダーを使用
することができ、例えば、ゼラチン、セルロース類、ポ
リウレタン、ポリエステル、（メタ）アクリル酸及びそ
のエステル、スチレン及びその誘導体、塩化ビニル、ブ
タジエンその他のようなエチレン系不飽和モノマーの共
重合体を使用することができる。しかしながら、導電性
下塗層の上に来る写真乳剤に対する付着性を助長し最適
化するために、バインダーとしてゼラチンを使用するこ
とが好ましい。

【００２２】上を覆うバリヤ層がない場合にはフィルム
処理液中で溶解するか又はその他の影響を受ける導電剤
であっても、導電性下塗層と写真乳剤との間にバリヤ層
を挿入する場合には有効に使用することができる。この
ような導電剤として、米国特許第４，０７０，１８９号
に記載されている導イオン性の架橋ビニルベンジル第四
アンモニウムポリマー又は米国特許第４，２０３，７６
９号、同第５，００６，４５１号、同第５，２２１，５
９８号及び同第５，２８４，７１４号に記載されている
五酸化バナジウム若しくは銀をドープした五酸化バナジ
ウムの導電性コロイドゲルが挙げられる。有用なバリヤ
層は、例えば、米国特許第５，００６，４５１号及び同
第５，２２１，５９８号明細書に記載されているもので
ある。

【００２３】導電剤及び高分子バインダーの他、導電性
下塗層は必要に応じて塗布助剤、分散剤、硬膜剤、架橋
剤、マットビーズ、等を含有する。特に好ましい実施態
様では、本発明のイメージング要素は、画像形成層が感
輻射線性ハロゲン化銀乳剤層である写真フィルム、写真
印画紙又は写真ガラス乾板のような写真要素である。こ
のような乳剤層は皮膜形成性の親水性コロイドを含むこ
とが典型的である。最も一般に用いられるのがゼラチン
であり、またゼラチンは本発明における特に好ましい材
料である。有用なゼラチンにはアルカリ処理ゼラチン
（牛骨又は獣皮ゼラチン）、酸処理ゼラチン（豚皮ゼラ
チン）及びアセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、等
のようなゼラチン誘導体が含まれる。単独で又はゼラチ
ンとの組み合わせで使用できる他の親水性コロイドとし
て、デキストラン、アラビアゴム、ゼイン、カゼイン、
ペクチン、コラーゲン誘導体、コロジオン、寒天、アロ
ールート、アルブミン、等が挙げられる。さらに別の有
用な親水性コロイドとして、ポリビニルアルコール、ポ
リアクリルアミド、ポリ（ビニルピロリドン）、等のよ
うな水溶性ポリビニル化合物が挙げられる。

【００２４】本発明の写真要素は、一層の感光性ハロゲ
ン化銀乳剤を支持体に担持する簡単な黒白要素又はモノ
クロ要素であってもよいし、また多層要素及び／又は多
色要素であってもよい。本発明のカラー写真要素は、ス
ペクトルの三つの主要領域の各々に感光性を有する色素
像形成単位を含有することが典型的である。各単位は、
単一のハロゲン化銀乳剤層から構成されていてもよい
し、またスペクトルの特定領域に感光性を有する複数の
乳剤層から構成されていてもよい。写真要素の層は、画
像形成単位の層を含み、当該技術分野で周知であるよう
に様々な順序で配置されることができる。

【００２５】本発明による好ましい写真要素は、イエロ
ー像色素提供物質を組み合わせた少なくとも一層の青感
性ハロゲン化銀乳剤層と、マゼンタ像色素提供物質を組
み合わせた少なくとも一層の緑感性ハロゲン化銀乳剤層
と、シアン像色素提供物質を組み合わせた少なくとも一
層の赤感性ハロゲン化銀乳剤層とを担持する支持体を含
んで成る。乳剤層の他、本発明の写真要素は、写真要素
に慣用されている補助像、例えば、オーバーコート層、
スペーサー層、フィルター層、中間層、ハレーション防
止層、ｐＨ低下層（酸層又は中和層と呼ばれることもあ
る）、タイミング層、不透明反射層、不透明吸収層、等
を含有することができる。支持体は、写真要素に用いら
れる適当ないずれの支持体であってもよい。典型的な支
持体として、高分子フィルム、紙（ポリマー塗被紙を含
む）、ガラス、等が挙げられる。本発明の写真要素の他
の層及び支持体に関する詳細については、リサーチ・デ
ィスクロージャー(Research Disclosure) 、アイテム３
６５４４（１９９４年９月）に記載されている。

【００２６】本発明の写真要素に用いられる感光性ハロ
ゲン化銀乳剤は、粗粒子、規則粒子若しくは微粒子のハ
ロゲン化銀結晶又はこれらの混合物を含むこと、また塩
化銀、臭化銀、臭ヨウ化銀、塩臭化銀、塩ヨウ化銀、塩
臭ヨウ化銀及びこれらの混合物のようなハロゲン化銀を
含むことができる。乳剤は、例えば、感光性平板状粒子
ハロゲン化銀乳剤であることができる。乳剤はネガ型で
あっても直接ポジ型であってもよい。乳剤は、ハロゲン
化銀粒子の主に表面に潜像を形成するものであっても、
またハロゲン化銀粒子の内部に潜像を形成するものであ
ってもよい。乳剤は、通常の方法で化学増感や分光増感
されることができる。乳剤はゼラチン系乳剤であること
が典型的であるが、通常の方法で他の親水性コロイドを
使用することもできる。ハロゲン化銀乳剤に関する詳細
については、リサーチ・ディスクロージャー(Research
Disclosure) 、アイテム３６５４４（１９９４年９月）
及びそこに列記されている刊行物に記載されている。

【００２７】本発明に用いられる写真用ハロゲン化銀乳
剤は、写真技術分野で慣用されているその他の添加物を
含有することができる。有用な添加物については、例え
ば、リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosu
re) 、アイテム３６５４４（１９９４年９月）に記載さ
れている。有用な添加物として、分光増感色素、減感
剤、カブリ防止剤、マスキングカプラー、ＤＩＲカプラ
ー、ＤＩＲ化合物、ステイン防止剤、画像色素安定剤、
フィルター色素やＵＶ吸収剤のような吸収物質、光散乱
物質、塗布助剤、可塑剤及び滑剤、等が挙げられる。

【００２８】写真要素に用いられる色素像提供物質は、
その種類に応じて、ハロゲン化銀乳剤層に内蔵される
か、乳剤層と組み合わされた独立した層に内蔵されるこ
とができる。色素像提供物質は、色素生成カプラー、被
漂白性色素、色素現像剤及びレドックス色素放出剤のよ
うに、当該技術分野で周知の多くのもののいずれであっ
てもよく、使用に際しては、要素の性質や、望ましい画
像のタイプによって個別具体的に決められる。

【００２９】独立した溶液で処理されるように設計され
た常用のカラー材料に用いられる色素像提供物質は、色
素生成カプラー、すなわち現像主薬酸化体とカップリン
グして色素を生成する化合物、であることが好ましい。
シアン色素像を形成させるのに好適なカプラーはフェノ
ール類及びナフトール類である。マゼンタ色素像を形成
させるのに好適なカプラーはピラゾロン類及びピラゾロ
トリアゾール類である。イエロー色素像を形成させるの
に好適なカプラーはベンゾイルアセトアニリド類及びピ
バリルアセトアニリド類である。

【００３０】写真乳剤層の上に来る保護オーバーコート
は、ゼラチン、マットビーズ、滑剤、塗布助剤、界面活
性剤（フッ素系界面活性剤を含む）、並びに当該技術分
野で周知の任意添加剤、例えば、硬膜剤、ポリマーラテ
ックス、合成ポリマー（例、ポリアクリルアミド、ポリ
ビニルピロリドン）、その他、を含む。

【００３１】

【実施例】以下の実施例は本発明をより具体的に説明す
るものであり、本発明の範囲を限定するものではない。実施例１〜６及び比較試料Ａ〜Ｄ まず、延伸(drafting)及び幅出し(tentering) の前の支
持体の片面上にアクリロニトリル、塩化ビニリデン及び
アクリル酸のターポリマーからなるプライマー層を、最
終コーティング量が約９０ｍｇ／ｍ² となるように適用
することによって、ポリエステル支持体を調製した。

【００３２】下記の成分からなる導電性下塗層の塗布組
成物を、全固形分含有量が１．５〜３重量％となるよう
に調製した。ゼラチン；導電性アンチモン酸亜鉛粒子又
はアンチモンをドープした酸化錫粒子（それぞれ平均粒
径は約５０ｎｍ）；サポニン界面活性剤；カリウムクロ
ムミョウバン硬膜剤；０．８μｍのポリマーマットビー
ズ；脱イオン水

【００３３】この導電性下塗層の塗布組成物を上記ター
ポリマー系プライマー層の上に塗布し、１２０℃で乾燥
させた。下塗層におけるアンチモン酸亜鉛粒子の配合量
は全固形分の８０〜９０重量％とし、またコーティング
は乾燥量で１５０〜４００ｍｇ／ｍ² となるように適用
した。支持体の導電性下塗層とは反対側に、アルカリ可
溶性のバインダーを有するカーボンブラック含有層を適
用した。カーボンブラック含有層は、乾燥塗布量７００
ｍｇ／ｍ² 、光学濃度１．２、及び２点プローブ法で測
定した５０％ＲＨ時の表面抵抗率４×１０⁷ Ω／□を示
した。

【００３４】次いで、導電性下塗層の上にカラー映画フ
ィルム用乳剤を塗布し、その乳剤の上にゼラチン１００
０ｍｇ／ｍ² 、２μｍポリマーマット５ｍｇ／ｍ² 及び
ポリジメチルシロキサン系滑剤を含有する常用の乳剤オ
ーバーコートを塗布した。これらのフィルム試料を、下
記の試験法により、導電性下塗層に対する乳剤層の乾燥
時付着性及び湿潤時付着性について評価した。乾燥時付
着性は、支持体の乳剤側にクロスハッチパターンをけが
きし、そのフィルム表面に高粘着性テープを貼付し、そ
してそのテープをフィルム試料から素早く引き剥がすこ
とにより測定した。乳剤層が剥離した程度を乾燥時付着
性の測定値とした。湿潤時付着性は、試料をフィルム現
像液に３０秒間浸漬し、次いでそのフィルム表面を指で
強く擦ることにより測定し、乳剤層が剥離した程度を湿
潤時付着性の測定値とした。

【００３５】フィルムの処理は常用の映画用フィルムの
処理装置で行い、カーボンブラック含有層の除去後にフ
ィルムの内部抵抗率（R.A. Elder, Proc. EOS/ESD Symp
os.,EOS-12, pp. 251-4, 1990年９月）を測定した。さ
らに、フィルム試料のセンシトメトリー及び画質を、Ｄ
_min 値、ハレーションラチチュード、鮮鋭度及び粒状度
の測定により評価した。本発明のフィルムはこれらの試
験において優れたセンシトメトリー及び画質を有するこ
とがわかった。フィルム試料の説明並びに付着性及び抵
抗率について得られた結果を表１に示す。

【００３６】

【表１】

【００３７】また、上記フィルム試料について、処理後
の帯電防止保護性の有効性を下記の実用試験で評価し
た。搬送工程は、現像後フィルムをループ（長さ〜２
ｍ）に３０ｍ／分の速度で走行させることにより模倣し
た。この実用試験でフィルムは帯電し、生じた電場を測
定し、そして移動しているフィルムへ高荷電粒子を引き
つける試みを行った。フィルムの片面に配置した高電圧
電源に接続した放射線発生源とフィルムの反対面に配置
した接地金属板との間をフィルムに通過させることによ
って、フィルムの乳剤側の表面を帯電させた。帯電装置
を約１８ｃｍ越えたところで、非接触型フィールドメー
ターを使用して電場を測定した。高荷電粒子を含有する
小さなガラス皿を該フィールドメーターを約２２ｃｍ越
えたところに配置した。

【００３８】ウェブを平衡電場レベルに帯電させた後、
シサーズ・ジャック(scissors jack) によりフィルムの
方へ荷電粒子をゆっくりと移動させ、ガラス皿の中の粒
子をフィルムに引きつけさせた。得られた結果は、約５
×１０⁹ Ω／□よりも高い場合、すなわち比較試料Ａ〜
Ｄでは、粒子を引きつけるに十分な強さの外部電場をも
たらすレベルにまでウェブを帯電させることができたこ
とを示している。５×１０⁹ Ω／□未満の場合、すなわ
ち本発明の実施例１〜６では、粒子を引きつけるに十分
なほどフィルムを帯電させることができなかった。

【００３９】処理後の抵抗率が５×１０⁹ Ω／□未満を
示す処理で損なわれることのない導電性下塗層とカーボ
ンブラック含有裏層とを含んで成る本発明のフィルム
は、モーションイメージングフィルムとして改良された
性能を提供することが明確に示された。多種多様なフィ
ルム製品のための下塗層をはじめとする導電性層に様々
な導電剤が使用されているが、従来技術は、本研究で見
い出された利点、すなわち未処理フィルムにハレーショ
ン防止性と帯電防止性を付与するカーボンブラック含有
裏層と、処理後フィルムに帯電防止性を付与する処理で
損なわれることのない導電性下塗層との両方を使用する
モーションイメージングフィルムの利点については、何
ら教示するものではない。

【００４０】以下、本発明の実施態様について列挙す
る。 （１）支持体の片面上に、順に、処理で損なわれること
のない導電性層と、少なくとも一のハロゲン化銀乳剤層
と、保護オーバーコートとを有し且つその反対面上にア
ルカリ可溶性の高分子バインダーと導電性カーボンブラ
ックとを含むカーボンブラック含有裏層を有して成り、
前記処理で損なわれることのない導電性層の抵抗率が５
×１０⁹ Ω／□未満であるモーションイメージングフィ
ルム。 （２）前記支持体がポリエステルフィルムである、
（１）に記載のモーションイメージングフィルム。 （３）前記支持体と前記処理で損なわれることのない導
電性層との間に、塩化ビニリデン／アクリル酸メチル／
イタコン酸系ターポリマー又は塩化ビニリデン／アクリ
ロニトリル／アクリル酸系ターポリマーを含むプライマ
ー層をさらに含んで成る、（２）に記載のモーションイ
メージングフィルム。 （４）前記支持体がセルローストリアセテートフィルム
である、（１）に記載のモーションイメージングフィル
ム。 （５）前記アルカリ可溶性の高分子バインダーが、アル
キル（メタ）アクリレート及び（メタ）アクリル酸のコ
ポリマー、ポリビニルフタレート並びにジカルボン酸を
含有するセルロース系有機酸エステルから成る群より選
ばれた、（１）に記載のモーションイメージングフィル
ム。 （６）前記カーボンブラック含有裏層が分散助剤、界面
活性剤、滑剤、融合助剤又はマットビーズをさらに含
む、（１）に記載のモーションイメージングフィルム。 （７）前記処理で損なわれることのない導電性層が、ド
ナーをドープした金属酸化物、酸素欠陥を含有する金属
酸化物、導電性窒化物、導電性炭化物及び導電性臭化物
から成る群より選ばれた導電性金属含有粒子並びに高分
子バインダーを含む、（１）に記載のモーションイメー
ジングフィルム。 （８）前記処理で損なわれることのない導電性層が、繊
維状の導電性粉末及び高分子バインダーを含む、（１）
に記載のモーションイメージングフィルム。 （９）前記処理で損なわれることのない導電性層が、導
電性ポリアセチレン、ポリチオフェン又はポリピロール
及び高分子バインダーを含む、（１）に記載のモーショ
ンイメージングフィルム。 （１０）前記処理で損なわれることのない導電性層が、
フィルム処理液の影響を受ける導電剤及びバインダー並
びに該導電剤及びバインダーとハロゲン化銀乳剤層との
間に挿入されたバリヤ層をさらに含む、（１）に記載の
モーションイメージングフィルム。 （１１）前記導電剤が、導イオン性の架橋ビニルベンジ
ル第四アンモニウムポリマー、五酸化バナジウムの導電
性コロイドゲル及び銀をドープした五酸化バナジウムか
ら成る群より選択された、（１０）に記載のモーション
イメージングフィルム。 （１２）前記処理で損なわれることのない導電性層が、
塗布助剤、分散剤、硬膜剤、架橋剤又はマットビーズを
さらに含む、（１）に記載のモーションイメージングフ
ィルム。 （１３）前記保護オーバーコートが、ゼラチン、マット
ビーズ、滑剤、塗布助剤、界面活性剤、硬膜剤、ポリマ
ーラテックス又は合成ポリマーを含む、（１）に記載の
モーションイメージングフィルム。 （１４）カーボンブラック含有裏層の上にさらに滑剤を
重ねた、（１）に記載のモーションイメージングフィル
ム。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 支持体の片面上に、順に、処理で損なわ
   れることのない導電性層と、少なくとも一のハロゲン化
   銀乳剤層と、保護オーバーコートとを有し且つその反対
   面上にアルカリ可溶性の高分子バインダーと導電性カー
   ボンブラックとを含むカーボンブラック含有裏層を有し
   て成り、前記処理で損なわれることのない導電性層の抵
   抗率が５×１０⁹ Ω／□未満であるモーションイメージ
   ングフィルム。