JPH10251196A - 光学活性3−ヒドロキシ脂肪酸の合成法 - Google Patents

光学活性3−ヒドロキシ脂肪酸の合成法

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JPH10251196A
JPH10251196A JP7052297A JP7052297A JPH10251196A JP H10251196 A JPH10251196 A JP H10251196A JP 7052297 A JP7052297 A JP 7052297A JP 7052297 A JP7052297 A JP 7052297A JP H10251196 A JPH10251196 A JP H10251196A
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acid
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Teruyoshi Kamanaka
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 光学活性3−ヒドロキシ脂肪酸を工業的に合
成する方法を提供する。 【構成】 光学活性エピクロロヒドリンからキラルプー
ル的に合成し得る光学活性3−ヒドロキシアルカンニト
リルを、対応するイミド酸エステル、次いで3−ヒドロ
キシ脂肪酸エステルを経由して光学活性3−ヒドロキシ
脂肪酸へ加水分解する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】本発明は、主鎖炭素数5〜16の光学活性
3−ヒドロキシ脂肪酸、すなわち(R)−および(S)
−ヒドロキシ脂肪酸の合成法に関する。
【0002】3−ヒドロキシ脂肪酸は脂肪酸生合成及び
代謝の重要中間体であり、多くの生理活性物質の構成要
素として生体内に広く分布しており、マクロライド系抗
生物質、プロスタグランジン等の医薬品、昆虫フェロモ
ン、成長ホルモン等の農薬の出発原料である。中でも光
学活性3−ヒドロキシミリスチン酸は、種々の生理活性
を示すリピッドAや、抗肥満作用のある(−)−テトラ
ヒドロリポスタチン、または抗ガン剤の合成中間体にな
ることから光学的純度の高い3−ヒドロキシ脂肪酸を得
る方法が近年盛んに研究されている。
【0003】従来技術とその問題点 これまで光学活性3−ヒドロキシ脂肪族カルボン酸およ
びそのエステルを得る方法としては、(1)β−ケトカ
ルボン酸およびそのエステルの不斉還元法および生物学
的還元法、(2)不斉レフォルマトスキー反応、(3)
不斉アルドール法、(4)光学活性エポキシアルコール
および光学活性ジオールからの変換法、(5)dl体か
らの光学分割法などが知られているが、これらの方法は
高圧力、超低温を必要としたり、操作の繁雑さ等による
生産性の低さの問題、また許容し得る光学純度を有する
不斉触媒の入手が困難なことから、工業的に高純度の光
学活性3−ヒドロキシ脂肪酸を合成することは非常に困
難であった。
【0004】問題点を解決するための手段 そこで本発明者らは、光学活性3−ヒドロキシ脂肪酸酸
の工業的合成法を確立すべく研究を重ねた結果、極めて
簡便な操作により、光学活性3−ヒドロキシ脂肪酸を高
純度かつ高収率で合成する方法を確立するに至った。本
発明による光学活性3−ヒドロキシ脂肪酸の全合成ルー
トは、工業的に容易に入手可能な光学活性エピクロロヒ
ドリンを出発原料とする以下の工程よりなる。
【0005】第1工程:光学活性エピクロロヒドリン
(I)に主鎖炭素数1〜12のアルキルマグネシウムハ
ライドを反応させ、対応する光学活性1−クロロ−2−
ヒドロキシアルカン(II)を得る。 第2工程:化合物(II)を塩基性条件下環化し、対応す
る光学活性1,2−エポキシアルカン(III )へ変換す
る。 第3工程:化合物(III )に塩化アルミニウムの存在
下、トリメチルシリルニトリルを付加させ、主鎖炭素数
5〜16の光学活性3−トリメチルシロキシアルカンニ
トリル(IV)を得る。 第4工程:化合物(IV)をフッ化物で処理し、光学活性
3−ヒドロキシアルカンニトリル(V)へ変換する。 第5工程:化合物(V)を塩酸/低級アルコールで処理
し、光学活性3−ヒドロキシアルカンイミド酸エステル
(VI)へ変換する。 第6工程:化合物(VI)を鉱酸で処理し、光学活性3−
ヒドロキシ脂肪酸エステル(VII)へ変換する。 第7工程:化合物(VII )を加水分解し、主鎖炭素数5
〜16の光学活性3−ヒドロキシ脂肪酸(VIII)へ変換
する。
【0006】理解を容易にするため、(S)−3−ヒド
ロキシミリスチン酸を例にとり、図1に示した(S)−
エピクロロヒドロヒドリンからの全合成ルートを詳細に
説明する。
【0007】第1工程は、窒素雰囲気下、(S)−エピ
クロロヒドリン(I)とデシルマグネシウムハライド例
えばデシルマグネシウムブロマイドを無水テトラハイド
ロフラン中、ヨウ化第一銅の存在下、低温例えば−20
℃以下で反応せしめ、(S)−1−クロロ−2−ヒドロ
キシトリデカン(II)を得る工程である。
【0008】第2工程は、(II)を塩基例えば水酸化ナ
トリウムで処理し、環化により、1,2−エポキシトリ
デカン(III )へ変換する工程である。
【0009】第3工程は、(III )に無水ヘプタン中、
塩化アルミニウムの存在下トリメチルシリルニトリルを
付加させ、(S)−3−トリメチルシロキシテトラデカ
ンニトリル(IV)へ変換する反応である。
【0010】第4工程は、(IV)をフッ化物例えばフッ
化カリウムで処理し、(S)−3−ヒドロキシテトラデ
カンニトリル(V)へ変換する工程である。
【0011】この(S)−3−ヒドロキシテトラデカン
ニトリル(V)の加水分解は、水酸化ナトリウムなどの
塩基性条件下では、水酸基が脱離し、オレフィノカルボ
ン酸が生成することがすでに知られている。一方、塩酸
および硫酸などの酸性条件の加水分解では、対応するア
ミド体は得られるものの、反応がそれ以上進行せず、目
的の3−ヒドロキシカルボン酸は得られなかった。そこ
で発明者らは、(S)−3−ヒドロキシテトラデカンニ
トリル(V)をHCl/低級アルコール例えばエタノー
ルと反応せしめ、(S)−3−ヒドロキシテトラデカン
イミド酸エチル(VI)へ変換し、(第5工程)これを
水、エタノール、テトラハイドロフラン混液中、鉱酸例
えば硫酸で処理することにより、光学純度の低下および
水酸基の脱離などの副反応を全く伴うことなく、高収率
で(S)−3−ヒドロキシテトラデカン酸エチル(VII
)の合成に成功した。(第6工程)
【0012】最終の第7工程は、(VII )を塩基例えば
水酸化ナトリウム水溶液で加水分解し、これにより目的
化合物である(S)−3−ヒドロキシミリスチン酸を得
る工程である。
【0013】これらの工程を実施することにより、光学
活性エピクロロヒドリンより対応する3−ヒドロキシミ
リスチン酸の光学活性体を純度99%以上、光学純度9
9%ee以上、出発原料であるエピクロルヒドリンか
ら、40.6%の収率で合成することができた。
【0014】また(R)−3−ヒドロキシミリスチン酸
は、対応する(R)−エピクロロヒドリンを出発原料と
し、上と全く同様の工程によって得ることが出来る。
【0015】同様にして主鎖炭素数が5〜16の(S)
−および(R)−3−ヒドロキシ脂肪酸を合成すること
もできる。
【0016】発明の効果 以上のように、光学活性エピクロロヒドリンを出発原料
とする、この新規合成法により高収率および高純度で光
学活性3−ヒドロキシ脂肪酸を工業的に合成することが
可能である。さらに第1工程のグリニャール反応剤を変
更することにより、主鎖炭素数5〜16の光学活性3−
ヒドロキシ脂肪酸類を容易に高純度で得ることが出来
る。またこの新規合成法において特に3−ヒドロキシア
ルカンニトリルの加水分解法は、副反応が少ないことお
よび光学純度の低下がないことから非常に有用な方法で
ある。
【0017】以下に本発明の実施例を挙げる。 実施例1(S)−1−クロロ−2−ヒドロキシトリデカンの合成 窒素気流下、マグネシウム 399.5gを無水テトラ
ハイドロフラン(THF)30Lに懸濁させ、攪拌下、
1−ブロモデカン 7.55Kgの無水THF溶液(1
0L)を滴下する。2.5時間攪拌後ヨウ化第一銅 7
71.5gを加え、−20℃以下に冷却する。これへ
(S)−エピクロロヒドリン(光学純度98.3%e
e)2.5Kgの無水THF溶液(3L)を−20℃以
下で滴下し、室温で1時間攪拌する。この後、飽和塩化
アンモニウム水溶液を加え、反応を停止させ、不溶物を
濾過し、THFを減圧留去する。残渣をイソプロピルエ
ーテル(IPE)で2回抽出し、ついで飽和食塩水で洗
浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮す
る。(S)−1−クロロ−2−ヒドロキシトリデカンを
含む油状物が得られる。
【0018】(S)−1,2−エポキシトリデカンの合
前工程で得られた油状物をIPE 50Lに溶解し水酸
化ナトリウム 5.4Kgを加え、室温にて3.5時間
攪拌する。10℃以下に冷却後、水 60Lを加え、無
機物をすべて溶解させ、IPE層を分液する。さらに水
層をIPEで再抽出し、ついで飽和食塩水で洗浄し、無
水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮する。この残
渣からカラムクロマトグラフィーを用い(S)−1,2
−エポキシトリデカンが4.35Kg(収率81.3
%)得られた。
【0019】(S)−3−トリメチルシロキシテトラデ
カンニトリルの合成 窒素気流下、無水塩化アルミ 290.5gを無水ヘプ
タン 30Lに懸濁させ、攪拌下トリメチルシリルニト
リル 2.5Kgを滴下する。20分間攪拌後、(S)
−1,2−エポキシトリデカン 4.35Kgを滴下
し、その後1時間攪拌する。10℃以下に冷却後、2N
水酸化ナトリウム水溶液 20Lを加え、反応を停止さ
せ、IPE層を分液する。さらに水層を再抽出し、つい
で水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧
濃縮する。(S)−3−トリメチルシロキシテトラデカ
ンニトリルを含む油状物が得られる。
【0020】(S)−3−ヒドロキシテトラデカンニト
リルの合成 前工程で得られた油状物をメタノール 45Lに溶解
し、フッ化カリウム 2.7Kgを加え、室温で2時間
攪拌する。メタノールを減圧留去し、残渣に水を加え、
IPEで抽出する。さらに水層を再抽出し、ついで水で
洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮す
る。(S)−3−ヒドロキシテトラデカンニトリルを含
む油状物が得られる。
【0021】(S)−3−ヒドロキシテトラデカンイミ
ド酸エチルの合成 前工程で得られた油状物に37%HCl/エタノール
55Lを加え、18時間攪拌後、減圧濃縮する。(S)
−3−ヒドロキシテトラデカンイミド酸エチルを含む油
状物が得られる。
【0022】(S)−3−ヒドロキシテトラデカン酸エ
チルの合成 前工程で得られた油状物をTHF/水/エタノール(1
2:8:5)混液 70Lに溶解し、硫酸 2.1Kg
を加え、40℃で3時間攪拌する。THFおよびエタノ
ールを減圧留去し、残渣をIPEで2回抽出し、飽和食
塩水で洗浄後、減圧濃縮する。(S)−3−ヒドロキシ
テトラデカン酸エチルを含む油状物が得られる。
【0023】(S)−3−ヒドロキシミリスチン酸の合
前工程で得られた油状物に2N水酸化ナトリウム水溶液
45Lを加え、60℃で1時間攪拌する。10℃以下
で6N塩酸でpH2に調整し、酢酸エチルで抽出する。
さらに水層を酢酸エチルで再抽出し、ついで飽和食塩水
で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、酢酸エチ
ルを減圧留去する。得られた粗結晶を酢酸エチル 95
Lに再溶解し、不溶物を濾過した後、濾液にシクロヘキ
シルアミン 2.16Kgを滴下する。室温にて一晩攪
拌し、(S)−3−ヒドロキシミリスチン酸のシクロヘ
キシルアミン塩として晶析させる。得られたこのシクロ
ヘキシルアミン塩を1N塩酸 110Lに溶解し、同量
の酢酸エチルで抽出する。ついで酢酸エチルで水層を再
抽出し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾
燥した後、減圧濃縮する。残留した白色結晶を酢酸エチ
ル/ヘプタン(3:20)混液 75Lで再結晶する
と、(S)−3−ヒドロキシミリスチン酸 2.68K
gを得た。収率(S)−1,2−エポキシトリデカンよ
り49.9%
【0024】(S)−3−ヒドロキシミリスチン酸の分
析結果1 H NMR (CDCl3) :0.87 (t.3H CH3 CH2-), 1.26(m.20H
CH3 (CH2)10-),2.55(m.2H CH(OH)CH2 COOH), 4.00(m.1
H- CH(OH)CH2COOH) IR:3557,2954,2917,2848,16
79,1468cm-1 比旋光度:〔α〕D 20=+16.0(c=1,CHCl
3 文献値+16.0) 融点:73〜74℃ 光学純度:99.8%ee(フェナシルエステル化後、
キラルカラムを用いたHPLC分析により決定) HPLC条件: カラム:Chiralcel OJ(4.6×250m
m) 溶出液:n−ヘキサン/イソプロパノール/エタノール
=3:1:1 カラム温度:27.5℃ 検出:UV244nm 注入量:フェナシルエステル5mgをイソプロパノール
1mLに溶解し、1μL注入
【0025】実施例2(S)−3−ヒドロキシオクタン酸の合成 工程1:窒素気流下、マグネシウム7.48gを無水テ
トラハイドロフラン(THF)250mlに懸濁させ、
攪拌下、1−ブロモブタン38.5gの無水THF溶液
(50ml)を滴下する。2.5時間攪拌後ヨウ化第一
銅6.17gを加え、−20℃以下に冷却する。これへ
(S)−エピクロロヒドリン(光学純度98.3%e
e)20gの無水THF溶液(24ml)を−20℃以
下で滴下し、室温で1時間攪拌する。この後、飽和塩化
アンモニウム水溶液を加え、反応を停止させ、不溶物を
濾過し、THFを減圧留去する。残渣をイソプロピルエ
ーテル(IPE)で2回抽出し、次いで飽和食塩水で洗
浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮す
る。(S)−1−クロロ−2−ヒドロキシヘプタンを含
む油状物を得る。 工程2:前工程で得られた油状物をジエチルエーテル4
00mlに溶解し、水酸化ナトリウム43.25gを加
え、室温にて3.5時間攪拌する。10℃以下に冷却
後、水340mlを加え、無機物をすべて溶解させ、エ
ーテル層を分液する。さらに水層をエーテルで再抽出
し、次いで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで
乾燥した後、単蒸留でエーテルを留去する。この残渣か
ら単蒸留にて(S)−1,2−エポキシヘプタン(b.
p.120〜122℃)を得る。 収量 16.72g 収率 67.8% この(S)−1,2−エポキシヘプタン16.0gを用
いて、実施例1の(S)−3−ヒドロキシミリスチン酸
合成時と全く同様の手法を用いて、(S)−3−ヒドロ
キシオクタン酸10.24gを得た。 収率 45.6%(1,2−エポキシヘプタンより) 全収率 30.9%((S)−エピクロロヒドリンよ
り) 比旋光度:〔α〕D 25=+18.0(c=1.4,CH
Cl3 文献値+18.0) 融点:38.0〜38.5° 光学純度:99.0%ee(フェナシルエステル化後、
キラルカラムを用いてHPLC分析により決定)
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による光学活性3−ヒドロキシミリス
チン酸合成法の全合成ルートを示す工程図。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】主鎖炭素数5〜16の光学活性3−ヒドロ
    キシアルカンニトリル(V)を塩酸/低級アルコールで
    処理し、光学活性3−ヒドロキシアルカンイミド酸エス
    テル(VI)へ変換する工程、 化合物(VI)を鉱酸で処理し、光学活性3−ヒドロキシ
    アルカン酸エステル(VII )へ変換する工程、 化合物(VII )を加水分解し、光学活性3−ヒドロキシ
    脂肪酸(VIII)へ変換する工程よりなることを特徴とす
    る主鎖炭素数5〜16の光学活性3−ヒドロキシ脂肪酸
    の合成法。
  2. 【請求項2】光学活性エピクロロヒドリン(I)に主鎖
    炭素数1〜12のアルキルマグネシウムハライドを反応
    させ、対応する光学活性1−クロロ−2−ヒドロキシア
    ルカン(II)を得る工程、 化合物(II)を塩基性条件下環化し、対応する光学活性
    1,2−エポキシアルカン(III )へ変換する工程、 化合物(III )に塩化アルミニウムの存在下トリメチル
    シリルニトリルを付加させ、主鎖炭素数5〜16の光学
    活性3−トリメチルシロキシアルカンニトリル(IV)を
    得る工程、 化合物(IV)をフッ化物で処理し、光学活性3−ヒドロ
    キシアルカンニトリル(V)へ変換する工程をさらに含
    んでいる請求項1の光学活性3−ヒドロキシ脂肪酸の合
    成法。
JP7052297A 1997-03-07 1997-03-07 光学活性3−ヒドロキシ脂肪酸の合成法 Withdrawn JPH10251196A (ja)

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WO2013122185A1 (ja) * 2012-02-16 2013-08-22 花王株式会社 エポキシ化合物の製造方法

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