JPH10226863A - 溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法 - Google Patents

溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法

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JPH10226863A
JPH10226863A JP33907197A JP33907197A JPH10226863A JP H10226863 A JPH10226863 A JP H10226863A JP 33907197 A JP33907197 A JP 33907197A JP 33907197 A JP33907197 A JP 33907197A JP H10226863 A JPH10226863 A JP H10226863A
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plating
steel sheet
bath
hot
plating bath
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JP33907197A
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English (en)
Inventor
Masahiko Tada
雅彦 多田
Chiaki Kato
千昭 加藤
Kazuya Miyagawa
和也 宮川
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JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】めっき密着性、表面外観の良好な溶融亜鉛めっ
き鋼板を製造する。 【解決手段】Al:0.12〜1.0重量%、その他Z
nと不可避不純物を含有しFeが未飽和のめっき浴を浴
温450℃以上とし、めっき浴に浸漬する鋼板の温度を
浴温+(10〜100℃)と高温にした鋼板を0.00
1〜0.5秒該めっき浴中に浸漬して溶融亜鉛めっきを
施し、Al:0.25〜2.0重量%、残部Znと不可
避的不純物からなりZn−η相の最表層にFe:0.0
1重量%以下含むめっき層を少なくとも片面に形成す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は自動車、家電、建材
等に使用される溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法に
関し、めっき密着性に優れ、かつドロス付着のない清浄
な溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法を提供するもの
である。
【0002】
【従来の技術】溶融亜鉛めっき鋼板は、自動車用を始め
家電用、建材用として広く用いられている。一般に知ら
れている溶融亜鉛めっき鋼板の製造装置の概略図を図2
に示し、その製造方法を以下に示す。冷延鋼板を前処理
工程で表面を洗浄し、非酸化性あるいは還元性の雰囲気
中で焼鈍し、次いで鋼板を酸化させることなく冷却し
て、ほぼ溶融亜鉛浴の温度まで鋼板温度を下げてめっき
浴中に浸漬させる。スナウト4を介してめっき浴2中に
浸漬された鋼板1は、シンクロール3により鉛直方向の
方向転換され、サポートロール5に支持されながら引き
上げられめっきが施される。次いで、鋼板1に付着した
過剰の溶融亜鉛を付着量調整装置6にて除去して付着量
を調整した後、そのまま冷却したものである。
【0003】上記のようなめっき浴中でシンクロール等
を使用する場合、以下のような問題点がある。 (1)浴中にシンクロールを浸漬するため、めっき浴量
が大容量となる。この結果、浴組成の切替が困難とな
る。 (2)シンクロールにより鋼板表面に擦り疵が発生す
る。
【0004】(3)めっき浴中のシンクロールを頻繁に
補修する必要がある。 上記の問題点を解決するために、溶融金属を満たし、そ
の中を貫通して鉛直上方に向かって鋼板が走行する溶融
金属保持容器を用いた溶融金属めっき鋼板の製造装置が
提案されている。特開平2−298247号公報や特開
平5−78802号公報ではめっき浴槽底部での溶融金
属の保持に電磁力を利用した装置、特開平4−356号
公報では、鋼板に非接触のシール板により溶融金属を保
持する技術が開示されている。
【0005】従来より、溶融亜鉛めっき層には、硬くて
脆いFe−Zn合金層が存在し、このFe−Zn合金層
が素地鋼板と溶融亜鉛めっき層の界面に必要以上生成す
ると、鋼板に対する溶融亜鉛めっき層の密着性が低下す
る。このため、従来より、亜鉛めっき浴中には少量のA
lを添加し、ZnよりもAlを優先的に、鋼板から溶出
するFeと反応させ、素地鋼板界面にFe−Al合金層
(Al富化層)を生成させることが知られている。上記
少量のAl添加はシンクロールを有する溶融亜鉛めっき
鋼板の製造装置を使用した場合、0.1〜0.2重量%
である。
【0006】また、特開平4−000356号公報に開
示されたシンクロールを使用しない小容量のめっき浴槽
を使用する場合、鋼板がめっき浴中に浸漬される時間が
短くなるので、例えば特開平8−109456号公報に
開示されたように、亜鉛めっき浴中には比較的多くのA
l(0.12〜1.0重量%)を添加し、適正なFe−
Al合金層を生成させなければ所定のめっき品質が得ら
れない。多量のAlをめっき浴に含有することにより硬
くて脆いFe−Zn合金層が素地鋼板界面に生成するこ
とを抑制し、密着性の良好な溶融亜鉛めっき鋼板を製造
することができる。
【0007】ところで、鉄と鋼vol.60(197
4)No.1p96〜103資料(山口ら)あるいは
「鉄と鋼」vol.81(1995)、No.8p43
〜48資料(高村ら)に記載されたように、溶融亜鉛め
っき鋼板を製造する場合、一般的に溶融亜鉛めっき浴中
には不可避不純物としてFeが飽和な状態で存在する。
Feが飽和しているめっき浴を使用すると、鋼板から溶
出したFeは過飽和な状態となるので、めっき浴中のA
lと反応して上記Fe−Al合金層を形成しやすくな
り、めっき層の密着性が向上する。特開平8−1094
56号公報では、亜鉛めっき浴組成としてFeの存在を
強く示唆する記載はないが、不可避不純物として含まれ
ていることは言うまでもない。
【0008】シンクロールを有する溶融亜鉛めっき鋼板
の製造装置を使用した場合、鋼板が浸漬される時間は3
〜5秒程度と長いため、鋼板から溶出したFeは上記F
e−Al合金層を形成する以外に、めっき浴中にも溶出
する。すなわち、積極的にFeを添加しなくても、めっ
き浴は定常的にFe飽和の条件が保持される。一方、シ
ンクロールを使用しない小容量めっき浴槽を使用する場
合、鋼板がめっき浴中に浸漬される時間が短いので、め
っき浴中に溶出するFeは極めて少なくなる。長時間め
っき操業を継続すればFeが飽和しためっき浴となる場
合もあるが、膨大な時間を必要とするか、あるいは膨大
な通板材を必要とする。このような場合、予めFeを添
加したFe飽和なめっき浴を使用するのである。
【0009】しかし、Fe飽和な従来から用いられてい
るめっき浴を使用する場合、めっき後に得られる溶融め
っき層(例えばZn−η層)中にもFeが含まれてい
る。このようにFe飽和なめっき浴を用いて得られたF
eを含んだ状態の溶融めっき層の場合、めっき表層に湯
じわと呼ばれる筋状の模様が発生することがあり、この
模様が発生するとめっき表面外観を損なうので好ましく
ない。この湯じわの発生機構については、溶融めっき層
の付着量制御過程及び凝固過程に起因していると考えら
れるが、従来明確でなかった。
【0010】さらに、めっき浴がFe飽和な場合、鋼板
からめっき浴中に過剰に溶出したFeは、めっき浴中で
ドロスを生成する。シンクロールを有する溶融亜鉛めっ
き鋼板の製造装置を使用した場合、鋼板がめっき浴中に
浸漬される時間が長いので、Feの過剰溶出を抑制する
ことができず、めっき浴槽内には慢性的にドロスが堆積
する。浴中のドロスが鋼板表面に付着すると凹凸欠陥を
引き起こすため、定期的にドロスを汲み出す必要があっ
た。一方、Fe飽和なめっき浴を用い、シンクロールを
使用しない小容量めっき浴槽を使用する場合、鋼板がめ
っき浴中に浸漬される時間が短いので、めっき浴中に過
剰溶出するFeは極めて少なくなり、上記シンクロール
を有する溶融亜鉛めっき鋼板の製造装置を使用した場合
より鋼板表面のドロス欠陥は抑制される。しかし、めっ
き浴中に過剰溶出するFeは皆無ではなく、微量である
がFeが溶出するため、ドロス発生を皆無にするには至
っていない。
【0011】また、めっき浴槽内のめっき浴温が低下し
た場合、めっき浴中のFe飽和濃度が減少するので、過
飽和となったFeがドロスとなって析出する。すなわ
ち、Fe飽和なめっき浴を使用した場合、めっき浴温の
変動によりドロス発生を引き起こすという問題があっ
た。その結果、鋼板へのドロス付着欠陥が僅かに発生
し、溶融亜鉛めっき鋼板の高品質化が求められる状況の
もとで、その解決が望まれていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は高品質の溶融
亜鉛めっき鋼板を提供することを目的とし、めっき表層
に湯じわ及びドロス欠陥のないめっき鋼板であって、溶
融亜鉛めっき層の密着性に優れた鋼板を提供する。ま
た、本発明は上述した問題点を有利に解決する溶融亜鉛
めっき鋼板及びその製造方法を提供する。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するた
めに本発明者らが種々研究の結果、めっき表層に湯じわ
を生ずることなく、溶融亜鉛めっき層の密着性に優れた
溶融亜鉛めっき鋼板として、Al:0.25〜2.0重
量%、残部Znと不可避不純物からなり、Zn−η相の
最表層にFe:0.01重量%以下含むめっき層を少な
くとも片面に形成したことを特徴とする溶融亜鉛めっき
鋼板が適切であることを見出した。
【0014】めっき層中のAlが0.25重量%未満で
はめっき層界面でのFe−Al合金層が生成されておら
ず、密着性が十分でない。一方、Al濃度が2.0重量
%を越えるとめっき層の凹凸が顕著になり表面性状が劣
化するので、過剰に高めることは好ましくない。また、
残部Znと不可避不純物の内にFeを含有させないこと
が重要である。さらに、発明者らはめっき層の表面に湯
じわを発生させないために、Zn−η相中にFe:0.
01重量%以下含むめっき層を少なくとも最表層に形成
させることが効果的であるとの知見を得た。すなわち、
Zn−η相中のFe濃度が0.01重量%を越える層が
最表層に存在すると過飽和のFeがドロスの生成を引き
起こし、また湯じわを発生することが判明した。上記の
ようなめっき層を少なくとも片面に形成していなければ
ならない。両面共に上記範囲のめっき層が形成されてい
てもよく、片面の場合、他方の片面は上記範囲ではない
めっき層が形成されていても、めっき層が形成されてい
なくてもよく、特に制限はしない。
【0015】このような溶融亜鉛めっき鋼板を好適に製
造する本発明方法として、底部又は側部に設けた開口部
からめっき浴槽内に鋼板を浸入させてめっきを行う溶融
亜鉛めっき鋼板の製造方法を用いることが適切であり、
このような方法において、Al:0.12〜1.0重量
%、その他Znと不可避不純物を含有し、かつFeを未
飽和に保持しためっき浴を450℃以上とした浴温より
高温にした鋼板を0.001〜0.5秒該めっき浴中に
浸漬して溶融亜鉛めっきを施すことを特徴とする溶融亜
鉛めっき鋼板の製造方法を提供する。
【0016】この場合に前記めっき浴に浸漬する鋼板の
温度を浴温+(10〜100℃)とすると好ましい。ま
た、溶融めっき後の冷却速度を1〜5℃/秒とすると好
適である。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の溶融亜鉛めっき鋼
板を好適に製造することができる条件について、実施の
形態を詳細に説明する。本発明では、Feを未飽和に保
持しためっき浴を使用する。従来のシンクロールを有す
るめっき装置を使用した場合、鋼板がめっき浴中に浸漬
される時間が長いため、鋼板からのFeの過剰溶出を抑
制することができない。すなわち、Feを含有しないめ
っき浴を使用したとしても、過剰溶出したFeによりめ
っき浴中のFe含有量は上昇し、ついに飽和状態とな
る。その後、過剰溶出した過飽和のFeはドロスとなっ
てめっき浴中に堆積する。上記鋼板からFeの過剰溶出
を極力抑制するためには、浸漬時間を短くする必要があ
り、本発明ではめっき浴中の浸漬時間を0.001〜
0.5秒とする。この場合、めっき装置は特に限定され
るものではないが、シンクロールを有しないめっき装置
を使用する場合に有効であり、図1に本発明を好適に実
施できる装置の一実施例を示す。鋼板にめっきを施すめ
っき浴槽の底部に設けた開口部からめっき浴槽内に鋼板
を浸入させてめっきを行う。
【0018】上記本発明を好適に実施できる装置を使用
してめっき浴中のFeを未飽和に保持する方法について
は特に限定しないが、以下のような方法を用いることが
できる。めっき条件によっては、特別な方法を採用する
必要はない。すなわち、図1に示したように、めっき浴
槽とは別に補助浴槽を有しめっき浴槽へめっき浴を供給
及び排出するめっき装置において、補助浴槽内に新たに
添加するめっき金属中にFeを含まないめっき金属を添
加し、補助浴槽内でめっきに適した組成に調合する。こ
れを繰り返すことで、たとえめっき浴槽中で鋼板から微
量のFeが溶出したとしても、大部分は鋼板によって持
ち去られ、かつ、補助浴槽内にFeを含まないめっき金
属を添加するので、めっき浴中のFeが飽和濃度に達す
ることはない。
【0019】あるいは、図1に示したように、めっき浴
槽とは別に補助浴槽を有しめっき浴槽へめっき浴を供給
及び排出する際、めっき浴排出経路あるいはその近傍で
の溶融亜鉛の温度をめっき浴槽内のめっき浴温より低温
とすることで、溶融亜鉛中の飽和Fe濃度を低下させ、
補助浴槽に戻すのである。このことにより、めっき浴槽
内でめっき浴中に微量のFeが含まれたとしても、めっ
き浴排出経路内でドロスとなって析出し、補助浴槽に戻
るのである。補助浴槽内あるいはその近傍に設置された
ドロス除去装置によりドロスを除去され、かつ補助浴槽
内で温度を調整した後、再びめっき浴供給経路を通って
めっき浴槽内へ供給される。この結果、めっき浴槽内へ
供給されるめっき浴は常にFe未飽和の状態で保持され
ることになる。
【0020】また、浸漬時間が0.5秒を超えると、め
っき浴中へのFeの過剰溶出が発生してめっき浴中のF
e濃度を未飽和に保持することができず、ついにドロス
付着欠陥が発生した。一方、浸漬時間が0.001秒未
満であると、Fe−Al合金層の生成が十分となり、め
っき密着性が劣化した。本発明を好適に実施できる図1
に示しためっき装置を使用する場合、鋼板がめっき浴中
に浸漬される時間が短いので、Fe−Al合金層の生成
が不十分となってしまう。この欠点を補うために、シン
クロールを有するめっき装置におけるめっき浴中のAl
含有量よりもAlを増加させればよく、Al含有量を
0.12〜1.0重量%とすれば好適にめっきを行うこ
とができる。Al含有量が0.12重量%未満の場合、
Fe−Al合金層が十分に形成されず、素地鋼板−めっ
き層界面にFe−Zn合金層が過剰に形成されるので、
めっき密着性が劣化する。一方、Al含有量が1.0重
量%を超える場合、めっき密着性は問題なく、Al:
1.0重量%を超えた範囲での優位性は見られなかった
が、Al含有ドロス、例えばAl酸化物等が増加して、
鋼板へのドロス付着欠陥を引き起こすという問題がある
ので上限を1.0重量%とした。
【0021】ところで、本発明では前述の通り、鋼板が
めっき浴中に浸漬される時間が短く、Fe未飽和な状態
を保持しためっき浴を使用するので、素地鋼板−めっき
層界面でのFe−Al合金層の形成が抑制される。すな
わち、上記のように浴中Al含有量を増加させたとして
も局所的にFe−Al合金層の形成が十分でなく、Fe
−Al合金層が不足している部分ではめっき密着性が劣
化した。Fe−Al合金層を適正に形成するためには、
素地鋼板−めっき層界面での反応性を増加する必要があ
る。
【0022】素地鋼板−めっき層界面での反応性を増加
させるために、本発明ではめっき浴温を450℃以上と
し、かつめっき浴に浸漬する板温を浴温より高温にす
る。浴温が450℃未満ではFe−Al合金層が十分に
形成されないので、めっき密着性が劣化した。また、め
っき浴に浸漬する板温が浴温より低温の場合も局所的に
Fe−Al合金層の形成が十分でなくめっき密着性が劣
化した。この際、板温=浴温+(10〜100℃)とす
ると好適である。板温が浴温+10℃未満の場合、Fe
−Al合金層が局所的に不足し、めっき密着性が劣化す
る場合があった。一方、板温が浴温+100℃より高い
場合、必要以上に反応性が増加し、著しいFeの過剰溶
出によるドロス付着欠陥の発生、あるいは素地鋼板−め
っき層界面での過剰なFe−Zn合金層の形成によるめ
っき密着性の劣化が発生した。
【0023】次にさらに素地鋼板−めっき層界面での反
応性を増加させるために、めっき後の冷却速度を遅くす
ることが好ましく1〜5℃/秒とすると好適である。即
ち、冷却速度を遅くすることによって、めっき浴浸漬後
のめっき層を長時間溶融状態に維持し、素地鋼板−めっ
き層界面での反応時間を増加するのである。この結果、
素地鋼板−めっき層界面に適正なFe−Al合金層を形
成することができる。冷却速度が1℃/秒未満の場合、
素地鋼板−めっき層界面でのFe−Zn合金相の形成が
局所的に著しくなり、めっき密着性が劣化することがあ
った。一方、冷却速度が5℃/秒を超えると、Fe−A
l合金層の形成が局所的に不十分となり、わずかにめっ
き密着性が劣化することがあった。なお、ここでいう冷
却速度とは、めっき後のめっき層が凝固するまでの平均
冷却速度を意味する。
【0024】ここで、めっき後の冷却速度を1〜5℃/
秒にする手段は、本発明が特別に限定するものではな
く、従来から用いられているガスワイピングにより付着
量調整を行う場合、用いるガス温度を制御することによ
ってめっき層の冷却速度を1〜5℃/秒にすることがで
きる。さらに、上記以外の付着量調整装置を使用する場
合、例えば電磁力による付着量調整を行う場合、付着量
調整後に加熱保持帯を設け、めっき層の冷却速度を1〜
5℃/秒にすることができる。
【0025】次に、得られためっき層の組成としてはA
l:0.25〜2.0重量%、残部Znと不可避不純物
からなる。ここでいう不可避不純物としてFeが含まれ
ないことはいうまでもない。そして、特に少なくとも最
表層Zn−η相中のFe含有量が0.01重量%以下で
あることが重要である。溶融亜鉛めっき鋼板の場合、め
っき表層に湯じわと呼ばれる筋状の模様が発生する。こ
の模様が発生するとめっき表面外観を損なうので好まし
くない。本発明者らはこの湯じわの発生が、Zn−η相
中のFe濃度、特にめっき最表層でのFe濃度によって
変化することを知見した。すなわち、Zn−η相の最表
層にFe:0.01重量%以下のめっき層を形成するこ
とによって、湯じわの発生を問題のないレベルまで抑制
することができた。この機構については、溶融めっき層
の付着量制御過程及び凝固過程に起因していると考えら
れるが、詳細な理由は今のところ不明である。また、図
1に示した本発明の一実施例のようにガスワイピング装
置によって付着量を調整する場合、特に有効であった。
【0026】Zn−η相の最表層に含まれるFe濃度の
測定方法としては種々の方法があるが、ここでは、次の
方法を採用した。すなわち、サンプル任意の断面をXM
A(X線マイクロアナライザ)にて元素分析し、表層1
μmまでのZn−η相中に含まれるFe濃度を測定し
た。また、めっき層中のAlが0.25重量%以下の場
合、素地鋼板−めっき層界面でのFe−Zn合金層の過
剰生成を抑制するためのFe−Al合金層の生成がが充
分でなく、めっき密着性の劣化が発生した。一方、めっ
き層中のAlが2.0重量%以上の場合、めっき密着性
は問題なく、Al:2.0重量%を越えた範囲での優位
性は見られなかったが、めっき層の凹凸が顕著になり表
面性状が劣化し、鋼板表面にAlが主成分の酸化ドロス
が多量に付着し、ドロス付着欠陥を引き起こした。
【0027】上記めっき層組成を得るためには、Al:
0.12〜1.0重量%、その他Znと不可避不純物を
含有し、かつ、Feを未飽和に保持しためっき浴を浴温
450℃以上とし、かつ浴温より高温に加熱した鋼板を
0.001〜0.5秒このめっき浴中に浸漬してめっき
するとよい。その際、浸漬する鋼板の温度を浴温+(1
0〜100℃)にすると好適である。また、めっき後の
冷却速度を1〜5℃/秒とすると好適である。
【0028】さらに、上記めっき層中の素地鋼板とめっ
き層との界面に形成されるFe−Al合金層は、Fe−
Al合金層中のAl量で0.05g/m2 以上であれば
よく、0.10〜0.50g/m2 とすれば好適であ
る。また、素地鋼板とめっき層との界面に形成されるF
e−Zn合金層量は、5.0g/m2 以下が好ましい。
【0029】上記Fe−Zn合金層量の測定は電位測定
法を用いることができる。すなわち、ZnSO4 ・7H
2 Oが100g/リットル、NaClが200g/リッ
トルからなる電解液中で電流密度を20mA/dm2
して試料陽極として定電流電解する。そして測定電位が
−1000mm(vs SCE)以上の層をFe−Zn
合金層と判断し、その量を求めた。
【0030】また、本発明においてめっき装置は特に限
定されるものではなく、図3に示すような、めっき浴槽
をほぼ水平に鋼板が通過するめっき装置でも、本発明を
好適に実施できる。すなわち、めっき浴槽中に溶融亜鉛
めっき浴を保持し、このめっき浴中に鋼板を浴槽側壁の
開口部から浸入させ、浴中を水平方向に貫通させて短時
間浸漬させるものである。この場合、付着量調整装置と
して、従来から使用されているガスワイピング装置の使
用は好ましくなく、浴槽出側の開口部において電磁力を
利用した付着量調整装置を使用することによって本発明
を好適に実施することができる。またこのような装置で
は、鋼板の上面と下面のめっきの性質を変えることもで
き、この場合、少なくとも片面を、本発明の要件に合致
させるようにする。
【0031】なお、本発明を好適に実施するには、シン
クロールを有しない溶融亜鉛めっき鋼板の製造装置を用
いることが有効であるが、この場合、シンクロールを使
用しないので、容易に鋼板搬送速度を増加することがで
きるという付加的な効果も得ることができる。さらに、
本発明によるめっき後に加熱合金化処理しても何ら問題
はない。
【0032】
【実施例】
実施例1 次に、本発明を実施例に基づいて説明する。めっき用素
材として板厚:0.7mm、板幅300mmの極低炭素
鋼を使用し、図1に示した本発明の一実施例である連続
溶融めっきラインにて、めっきを行った。デフレクタロ
ール7で方向変換した鋼板1は、サポートロール5、ガ
イドロール8に案内されてめっき浴槽11の下方から上
方に通過し、めっきを行う。めっき浴槽11の底部には
鋼板1との間隔が10mmの開口が設けられ、鋼板1の
表裏位置に対向して高周波コイル9が設けられている。
溶融亜鉛浴10を通過してめっきが施された鋼板1は、
ガスワイピング装置6にてめっき付着量を調整した。溶
融亜鉛浴槽11から溶融亜鉛10を抜き出し、補助浴槽
12で溶融亜鉛中のFe濃度を調整しめっき浴供給装置
13によりめっき槽11に循環した。
【0033】このようにして、得られた溶融亜鉛めっき
鋼板の任意位置をサンプリングし、めっき密着性、耐ド
ロス付着性及びめっき表面外観を評価した。次に各試験
における評価基準を示す。 <めっき密着性>溶融亜鉛めっき鋼板をデュポン衝撃試
験(直径:1/2インチの突起物の上に溶融亜鉛めっき
鋼板を乗せ、上方より重量:1kgの重りを1mの高さ
から鋼板上に落下させる)後、セロテープを貼り、次い
で剥して、めっき密着性を評価した。
【0034】 ◎:めっき層の亀裂、剥離なし(問題なし) 〇:わずかにめっき層の亀裂あり(問題なし) △:めっき層の亀裂あり ×:めっき層の剥離あり <耐ドロス付着性(目視評価)>溶融亜鉛めっき鋼板の
めっき表面を目視観察し、ドロス付着欠陥の有無につい
て評価し、得られた結果を比較例と共に表1に示した。
【0035】 ◎:直径100μm以上のドロス付着がない(問題な
し) 〇:直径100μm以上のドロスが5個/m2 未満であ
る(問題なし) △:直径100μm以上のドロスが5個/m2 以上であ
る ×:直径100μm以上のドロスが5個/m2 以上あり
不めっきもある <めっき表面外観(目視評価)>溶融亜鉛めっき鋼板の
めっき表面を目視観察し、湯じわの有無について評価
し、得られた結果を比較例とともに表1に示した。
【0036】 〇:湯じわなし(問題無し) △:湯じわわずかにあり(問題無し) ×:湯じわあり
【0037】
【表1】
【0038】実施例2 めっき用素材として板厚:0.7mm、板幅300mm
の極低炭素鋼を使用し、実施例1で使用した図1に示す
本発明の一実施例である連続溶融めっきラインにて、め
っきを行った。溶融亜鉛浴槽11から溶融亜鉛10を抜
き出し、補助浴槽12で溶融亜鉛浴中のFe濃度を調整
しめっき浴供給装置13によりめっき浴槽11に循環し
た。また、比較例として、Feが飽和なめっき浴を使用
して上記めっき装置にてめっきを行った。
【0039】めっき条件を以下に示す。 鋼板搬送速度: 100m/min 浴温: 470℃ 浸入板温: 485℃ 浸漬時間: 0.09秒 めっき後冷却速度:5℃/秒 付着量: 45g/m2 このようにして、得られた溶融亜鉛めっき鋼板の任意位
置をサンプリングし、めっき密着性、耐ドロス付着性、
及びめっき表面外観を評価した。評価基準は実施例1と
同様である。得られた結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
【発明の効果】以上説明したごとく、本発明の溶融亜鉛
めっき鋼板は、めっき密着性、耐ドロス付着性、表面外
観の良好な溶融亜鉛めっき鋼板であり、このような溶融
亜鉛めっき鋼板は本発明方法により容易に製造すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例装置の縦断面図である。
【図2】従来装置の縦断面図である。
【図3】実施例装置の縦断面図である。
【符号の説明】
1 鋼板 2 溶融亜鉛浴 3 シンクロール 4 スナウト 5 サポートロール 6 付着量調整装置 7 デフレクタロール 8 ガイドロール 9 シール装置 10 溶融亜鉛浴 11 浴槽 12 補助浴槽 13 めっき浴供給装置 14 付着量調整装置

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Al:0.25〜2.0重量%、残部Z
    nと不可避不純物からなり、Zn−η相の最表層中にF
    e:0.01重量%以下含むめっき層を少なくとも片面
    に形成してなることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
  2. 【請求項2】 底部又は側部に設けた開口部からめっき
    浴槽内に鋼板を浸入させてめっきを行う溶融亜鉛めっき
    鋼板の製造方法において、Al:0.12〜1.0重量
    %、その他Znと不可避不純物を含有し、かつFeを未
    飽和に保持しためっき浴を浴温450℃以上とし、かつ
    浴温より高温にした鋼板を0.001〜0.5秒該めっ
    き浴中に浸漬して溶融亜鉛めっきを施すことを特徴とす
    る溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記めっき浴に浸漬する鋼板の温度を浴
    温+(10〜100℃)とすることを特徴とする請求項
    2記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記溶融めっき後の冷却速度が1〜5℃
    /秒であることを特徴とする請求項2又は3記載の溶融
    亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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