JP3411425B2 - 溶融金属めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

溶融金属めっき鋼板の製造方法

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【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、溶融亜鉛めっき鋼板又
は合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に関し、特に操
業の安定性および密着性等のめっき性能に優れた溶融金
属めっきの製造に関する。 【0002】 【従来の技術】溶融亜鉛、溶融亜鉛−アルミニウム、溶
融アルミニウムめっき鋼板は耐食性に優れ、また、比較
的安価であることから建材および家電製品の分野で広く
用いられている。特に、溶融亜鉛めっき後加熱し、鋼板
とめっき層を合金化した合金化溶融亜鉛めっき鋼板は耐
食性に優れるとともに、加工度の大きいプレス加工にも
耐えられることから自動車用鋼板としても、需要が近年
急速に拡大している。 【0003】現在行われている一般的な、溶融亜鉛めっ
き鋼板の製造装置は図4のようなものであり、めっき鋼
板の製造方法は次の通りである。冷間圧延後の鋼板を前
処理工程で表面清浄化してから無酸化性又は還元性の雰
囲気中で焼鈍することによって表面酸化膜を除去し、つ
いで鋼板を酸化することなく冷却して、ほぼ溶融金属め
っき浴の温度まで冷却した後溶融金属めっき浴中に侵入
させ、浴中に設けられたシンクロールによって上向きに
反転させ、溶融金属めっき浴上方に導き、鋼板面に付着
した余剰のめっき金属を凝固前にガスワイパで除去して
付着量を調整し冷却することによって溶融金属めっき鋼
板を得る。 【0004】上述の方法で鋼板に溶融亜鉛めっきを施し
た後、更に加熱合金化したものが合金化溶融亜鉛めっき
鋼板である。溶融金属めっき鋼板は、上述のように優れ
た耐食性を有しているものの、プレス加工時における耐
剥離性向上や製造時の表面欠陥の低減や操業性の改善と
いった課題が残されている。 【0005】例えば溶融亜鉛めっき鋼板では、めっき時
において鋼板とめっきの界面に脆いZn−Fe合金層が
成長し、めっき密着性が劣る場合がある。この合金層の
成長を抑制するために通常0.15重量%以上のAlを
添加し、めっき時に鋼板とめっき層の界面にAl−Fe
金属間化合物(以下Al富化層と呼ぶ)を形成し、Zn
−Fe合金層の成長を抑制する。合金化溶融亜鉛めっき
においても、脆いZn−Fe(Γ相)合金層の発達を抑
制するためにAlを添加するが、多量のAl添加は、加
熱合金化の遅延および不均一化を招くため、0.14重
量%程度とする。したがって、合金化の有無に応じてA
l濃度を変えるとラインを長時間停止させる必要があり
生産性が悪化する問題があり、また、同一Al濃度のめ
っき浴で溶融亜鉛めっきと合金化溶融亜鉛めっきを製造
した場合、溶融亜鉛めっきと合金溶融亜鉛めっきのめっ
き密着性を十分に両立させることは困難であった。ま
た、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっきともAl濃
度の適正化を行っても密着性は不十分で、めっき剥離の
問題がしばしば発生する。 【0006】また、こうしためっき密着性の改善といっ
た課題は、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっきに限
らず、溶融亜鉛−アルミニウム、アルミニウムめっき鋼
板等の他の溶融金属めっきにおいても同様に改善すべき
課題であり、更に、シンクロール等の浴中機器を用いた
従来の溶融金属めっき方法では、シンクロール等の浴中
機器の溶損および、これによるめっき品質の劣化が起こ
るといった問題や鋼板のシンクロールと接する面に擦り
傷がついたり、シンクロールへ付着したドロス等が鋼板
に押しつけられ押し傷がつく、いわゆるロールマークが
発生する等の表面欠陥の問題があり、めっき密着性の向
上およびシンクロール等の浴中機器等を原因としためっ
き表面欠陥の改善は、溶融金属めっき鋼板の製造におい
て解決すべき課題であった。 【0007】このような課題に対して、密着性の改善に
ついては、浴中添加元素やその添加量の検討が行われて
いる。例えば溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっきで
は、浴中に添加するAl濃度の適正化によって、両者の
密着性を両立しようとする提案として、特開平5−27
1892号公報がある。しかしながら、浴中添加元素の
検討では、浴中で生成されるドロスや浴中機器の溶損、
耐食性等のめっき性能への影響といった問題があり、ま
た、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっきでの単なる
Al添加量の検討では、両者の密着性を十分に両立させ
ることは困難であった。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】本発明では、従来の溶
融金属めっきで解決すべき課題であっためっき密着性の
向上、および浴中機器等を用いた従来法におけるめっき
表面の欠陥を抑制することを課題とする。また、特に溶
融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっきの両者の製造にお
いて、Al濃度等の浴組成の変更なしで密着性の良好な
めっき鋼板を製造する技術を提供する。 【0009】本発明は、溶融亜鉛めっき又は合金化溶融
亜鉛めっきにおいて、従来の浸漬式めっき方法に適用可
能な技術であり、さらに空中ポットを用いる技術にも適
用可能な技術であって、特に合金化溶融亜鉛めっきの耐
パウダリング性を向上させる技術である。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明は、Al濃度0.
1〜1.0重量%残部Znおよび不可避不純物からなる
溶融亜鉛めっき浴を用い、このめっき浴に鋼板が進入直
後0.2〜2秒間、下記式を満足する磁束密度Tの磁界
を鋼板面に垂直に印加することを特徴とする溶融金属め
っき鋼板の製造方法である。 【0011】 T>3.61×10-2/[Al] +1.39×10-2 ここに [Al]は溶解Al濃度重量%である。 【0012】 【作用】本発明の具体的構成および作用について以下に
説明する。本発明は、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛
めっきにおいて、被めっき鋼板がめっき浴に侵入した時
点で磁場を印加することによって、密着性、特に合金化
溶融亜鉛めっきの耐パウダリング性を向上することがで
き、溶融亜鉛めっきと合金化溶融亜鉛めっきでAl濃度
を変化させる必要なく良好なめっき密着性を得ることが
できることを知見し発明に至ったものである。 【0013】本発明において、浴中Al濃度を0.1〜
1.0重量%に限定したのは、0.1重量%未満では磁
場を印加しても密着性改善効果が得られず、1.0重量
%を越えるとそれ以上の密着性効果が得られず、また、
合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合に合金化速度
が遅くなり、生産性を阻害するからである。Zn浴中へ
のAl添加は密着性に寄与するAl富化層量を得るため
に行うが、Al富化層量は、鋼板の亜鉛浴中での浸漬時
間によっても変化する。つまり、従来の大型の浸漬槽の
ように浸漬時間が比較的長い場合は、浴中Al濃度を
0.1〜0.2重量%にすることが好ましく、空中ポッ
トのように浸漬時間が短い場合には、Al濃度が高い方
がよく、Al濃度0.2〜1.0重量%が好ましい。大
型の浸漬槽の場合、空中ポットの場合のいずれの場合で
もそれぞれ下限は、磁場を印加しても密着性改善効果が
得られず、上限は、合金化速度の遅延、生産性の阻害が
問題となることから制約される。 【0014】磁場を印加する場所は、Al富化層が生成
する鋼板の溶融亜鉛めっき浴接触直後が理想的であり、
印加時間は板速度と磁場印加長さで決定され、鋼板が溶
融亜鉛めっき浴に侵入した時点から0.2秒以上ないと
効果が得られず、2秒以上磁場印加しても効果が飽和し
無意味である。また、密着性改善効果には磁束密度Tと
浴中に溶解しているAl濃度[Al]との間に密接な関
係があり、その関係を図3に示す。これより解るように T>3.61×10-2/[Al] +1.39×10-2 の領域で密着性が良好である。 【0015】磁場を印加すると密着性が向上する理由
は、明確でないが、磁場印加によってAl富化層の凸凹
が発生しやすく、めっき−鋼板界面全体に合金層が形成
されるのを防止し、剥離時に合金層内に亀裂が生じるこ
とを防止するためと考えられ、Al富化層の変化によっ
て、脆いZn−Fe(Γ相)合金層の成長が抑制され剥
離時の亀裂の進行が抑制され耐剥離性が向上すると推察
される。 【0016】また、本発明の磁場印加は、図1に示した
ように、印加装置12を従来の溶融金属めっき装置のス
ナウト11内に設置し、鋼板が磁場印加された状態で亜
鉛浴2に接するようにした装置を用いる。図3に示すよ
うな空中ポットを用いたものでもよい。 【0017】 【実施例】図3に示す連続式溶融亜鉛空中ポットを使用
し、板厚0.7mm、板幅300mmの極低炭素鋼板を
30m/minで通板し、鋼板から10mmの位置に3
kHzの高周波磁界を印加した。印加した高周波磁界の
鋼板長さ方向の寸法は300mmとした。溶融亜鉛浴中
のAl量と磁束密度とを種々変化させ、溶融亜鉛めっき
鋼板、及び合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。この
とき、溶融亜鉛浴の温度及び鋼板の板温を470℃とし
てめっきを行った。窒素ワイパーを使用しめっき付着量
を50g/m2 とした。合金化溶融亜鉛めっき鋼板の場
合はめっき後470℃15秒間の合金化処理を行った。
またその時の表面状態を目視観察し、合金化状態を調査
した。 【0018】さらに図1に示す連続式溶融亜鉛めっき装
置を使用し、板厚0.7mm、板幅300mmの極低炭
素鋼板を30m/minで通板し、鋼板から10mmの
位置に3kHzの高周波磁界を印加した。印加した高周
波磁界の鋼板長さ方向の寸法は300mmとした。溶融
亜鉛浴中のAl量と磁束密度とを種々変化させ、溶融亜
鉛めっき鋼板、及び合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造し
た。このとき、溶融亜鉛浴の温度及び鋼板の板温を47
0℃としてめっきを行った。窒素ワイパーを使用しめっ
き付着量を50g/m2 とした。合金化溶融亜鉛めっき
鋼板の場合はめっき後470℃15秒間の合金化処理を
行った。またその時の表面状態を目視観察し、合金化状
態を調査した。 【0019】めっきの密着性を調査した溶融亜鉛めっき
鋼板では、OTベント試験(密着曲げ)後、エポキシ系
接着剤で2枚の鋼板を接着し、剪断引張試験を行い、め
っきと鋼板との界面での剥離の有無を調査した。従来の
大型浸漬槽でめっきした溶融亜鉛めっき鋼板の結果を実
施例と比較例共に表1に示した。また合金化溶融亜鉛め
っき鋼板の結果を比較例と共に表2に示した。実施例は
何れも好成績を示している。 【0020】表3、表4にそれぞれ空中ポットでめっき
した場合の溶融亜鉛めっき、合金化溶融めっきの場合を
示す。いずれも実施例では良好な密着性を示している。 【0021】 【表1】【0022】 【表2】 【0023】 【表3】【0024】 【表4】 【0025】 【発明の効果】以上述べたように本発明による溶融金属
めっき方法によれば、密着性の良好な溶融亜鉛めっき鋼
板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を効率的に供給すること
が可能であり、産業の意義は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】 【図1】実施例装置の断面図である。 【図2】めっき密着性改善効果を示すグラフである。 【図3】実施例めっき装置の縦断面図である。 【図4】従来例めっき装置の縦断面図である。 【符号の説明】 1 鋼板 2 溶融金属
(溶融亜鉛) 3 シンクロール 4 ガイドロー
ル 5 電磁装置 7 ワイパ 11 スナウト 12 磁場印加装
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 海野 茂 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社 技術研究所内 (72)発明者 赤岡 和夫 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社 千葉製鉄所内 (56)参考文献 特開 平5−86447(JP,A) 特開 平2−298247(JP,A) 特開 昭63−303045(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 2/00 - 2/40

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 Al濃度0.1〜1.0重量%残部Zn
    および不可避不純物からなる溶融亜鉛めっき浴を用い、
    該めっき浴に鋼板が進入直後0.2〜2秒間、下記式を
    満足する磁束密度(T)の磁界を鋼板面に垂直に印加す
    ることを特徴とする溶融金属めっき鋼板の製造方法。 T>3.61×10-2/[Al] +1.39×10-2 ここに [Al]は溶解Al濃度重量%である。
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