JPH10225824A - 放電表面処理方法及びその処理装置 - Google Patents

放電表面処理方法及びその処理装置

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JPH10225824A
JPH10225824A JP3181897A JP3181897A JPH10225824A JP H10225824 A JPH10225824 A JP H10225824A JP 3181897 A JP3181897 A JP 3181897A JP 3181897 A JP3181897 A JP 3181897A JP H10225824 A JPH10225824 A JP H10225824A
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長男 斎藤
Naotake Mori
尚武 毛利
Akihiro Goto
昭弘 後藤
Takuji Magara
卓司 真柄
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Kagaku Gijutsu Shinko Jigyodan
Mitsubishi Electric Corp
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Kagaku Gijutsu Shinko Jigyodan
Mitsubishi Electric Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 被処理材の材質を問うことなく、金属表面に
良質な硬質表面処理層を形成すること。 【解決手段】 加工液10中において、Ti電極2Aと
回転工具1の間に放電加工用電源18によりパルス状の
放電を発生させ、比較的放電エネルギーを供給し、表面
処理を行う。この前処理により、回転工具1の表面は僅
かに面が荒れ、かつ、脱炭された状態になる。その後に
コーティング処理を行っても良好なコーティングが得ら
れる。この前処理により、回転工具1の硬度が上がると
共に、本処理においてコーティング材料の付着を良くす
ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、改質材料或いは改
質材料の元となる材料からなる電極と被処理材である金
属との間に放電を発生させることにより金属表面に改質
層を形成する放電表面処理方法及びその処理装置に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】液中放電によって金属材料等の表面をコ
ーティングして、耐食性、耐磨耗性を与える技術は、既
に、特開平6−182626号公報等で公知となってい
る。この公報に掲載の技術は、WC(タングステンカー
バイト)とCo(コバルト)の粉末を混合して圧縮成形
した電極で液中放電を行うことにより、その電極材料を
ワークに堆積させる。その後、別の電極、例えば、銅電
極、グラファイト電極等によって、再溶融放電加工を行
い、より高い硬度と高い密着力を得るものである。
【0003】次に、従来技術について図5を用いて説明
する。図5は従来の被処理材の金属表面に改質層を形成
する放電表面処理方法の説明図である。51はWC−C
o(タングステンカーバイド−コバルト)からなる混合
圧粉体で成形した混合圧粉体電極である。54は被処理
材(S50C)である。52は銅電極、55は被処理材
54の表面に形成したWC−Coからなる被覆層であ
る。ここで、WC−Coからなる混合圧粉体電極51を
用いて、加工液中で被処理材54と混合圧粉体電極51
との間に放電を発生させ、被処理材54の表面にWC−
Coを堆積させ、WC−Coの堆積物からなる被覆層5
5を堆積加工する一次加工を行う。次いで、Cu(銅)
電極52のように、それほど消耗しない電極によって被
処理材54の表面に堆積されたWC−Coの被覆層55
に堆積再溶融加工、即ち、二次加工を行う。特に、一次
加工の被覆層55の堆積のままでは、組織は硬度もHv
=1410程度であり、また、空洞も多いが、二次加工
の再溶融加工を行うことによって、被覆層55が堆積し
た被処理材54の表面に堆積物の空洞が無くなり、その
硬度もHv=1750と向上する。この方法によれば、
被処理材54がS50C等の鋼材である場合には、硬
く、しかも、密着度のよい被覆層55が得られる。しか
しながら、超硬合金のような焼結材料の表面には、強固
な密着力を持った被覆層55を形成することが困難であ
った。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の放電表面処理方
法は、前述の事例のように、超硬合金のような焼結材料
の表面には、強固な密着力を持った被覆層55を形成す
ることが困難であり、特に、被処理材54の種類等によ
っては、良質の被覆層55が得られなかった。そこで、
本発明は、被処理材の材質が鋼材であるか、超硬合金で
あるかを問うことなく、良好な被覆層を形成できる放電
表面処理装置及び放電表面処理方法の提供を課題とする
ものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1にかかる放電表
面処理方法は、改質材料の元となる材料を含む改質材料
からなる電極と、被処理材である金属との間に電圧を印
加して、その間に放電を発生させることにより前記被処
理材である金属表面に改質層を形成する放電表面処理方
法において、前記被処理材の表面に改質層を形成する本
処理の前に、予め電極材料、電気条件のうちの1つ以上
を、前記改質層を形成する本処理と異なる条件に設定し
て放電を発生させる前処理を行うものである。
【0006】請求項2にかかる放電表面処理方法は、前
記放電表面処理の前に予め行う放電に使用する前処理電
極を、放電によって炭化物が生成され、その炭化物が高
硬度の材料を含む材料としたものである。
【0007】請求項3にかかる放電表面処理方法は、前
記改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極
を、金属の水素化物の粉体を含む材料で形成したもので
ある。
【0008】請求項4にかかる放電表面処理方法は、前
記放電表面処理の前に予め行う放電に使用する前処理電
極を、前記被処理材の表面に改質層を形成する本処理に
使用する電極と同一にしたものである。
【0009】請求項5にかかる放電表面処理方法は、前
記被処理材の表面に改質層を形成する本処理を、前記被
処理材である金属表面に改質層を形成する堆積加工を行
う一次加工、被処理材の表面に堆積された改質層に堆積
再溶融加工を行う二次加工としたものである。
【0010】請求項6にかかる放電表面処理装置は、改
質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極と、
被処理材である金属との間に電圧を印加して、その間に
放電を発生させることにより前記被処理材である金属表
面に改質層を形成する放電表面処理装置において、放電
によって炭化物が生成され、その炭化物が高硬度の材料
を含む電極材料を保持し、前記被処理材との間で放電を
行う前処理で使用する前処理用電極保持機構と、前記被
処理材の金属表面に改質層を形成する本処理で使用する
本処理用電極保持機構とを具備するものである。
【0011】請求項7にかかる放電表面処理装置は、改
質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極と、
被処理材である金属との間に電圧を印加して、その間に
放電を発生させることにより前記被処理材である金属表
面に改質層を形成する放電表面処理装置において、放電
によって炭化物が生成され、その炭化物が高硬度の材料
を含む電極材料を保持し、前記被処理材との間で放電を
行う前処理で使用する前処理用電極保持機構と、前記被
処理材の金属表面に改質層を形成する堆積加工で使用す
る一次加工用電極保持機構と、前記被処理材の金属表面
に堆積された改質層に堆積再溶融加工を行うのに使用す
る二次加工用電極保持機構とを具備するものである。
【0012】請求項8にかかる放電表面処理装置は、前
記放電表面処理の前に予め行う放電に使用する前処理電
極を、放電によって炭化物が生成され、その炭化物が高
硬度の材料を含む材料としたものである。
【0013】請求項9にかかる放電表面処理装置は、前
記改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極
を、金属の水素化物の粉体を含む材料で形成したもので
ある。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て、図を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態の
説明において、従来例及び各実施の形態と同一符号及び
記号は従来例及び各実施の形態の構成部分と同一または
相当する構成部分を示すものである。
【0015】実施の形態1.図1は本発明の第一の実施
の形態の放電表面処理装置の全体の構成を示す構成図で
ある。図において、1は表面処理を施すエンドミルやド
リル等の回転工具、2Bは改質層を形成する成分、例え
ば、TiH2 (水素化チタン)系の圧粉体電極で、本発
明を実施する場合には、改質材料或いは改質材料の元と
なる材料からなる電極であり、即ち、改質材料の元とな
る材料を含む改質材料であればよい。2AはTi(チタ
ン)電極、3は回転工具1を保持するチャッキング機
構、4Bは圧粉体電極2Bを保持する本処理用電極保持
機構で、回転工具1と圧粉体電極2BとをZ軸方向に相
対移動させるものである。4AはTi電極2Aを保持す
る前処理用電極保持機構で、回転工具1とTi電極2A
とをZ軸方向に相対移動させるものである。5は回転工
具1の上下方向、即ち、Z軸方向の移動を行う主軸、6
は回転工具1の回転を行う回転軸(C軸)、7は回転工
具1と共に主軸5を上下方向に駆動するZ軸駆動機構、
8は回転軸6を回転させるモータ等からなる回転軸駆動
機構、9は本処理用電極保持機構4B及び前処理用電極
保持機構4Aを固定すると共に放電加工用の加工液10
を収容する加工槽、11は加工槽9の水平方向(X方
向)の移動を自在とするXテーブル、12は加工槽9の
水平方向(Y方向)の移動を自在とするYテーブル、1
3はXテーブル11用のX軸駆動機構、14はYテーブ
ル12用のY軸駆動機構、15はコンピュータ等を内蔵
した制御回路で、通常のNC装置に相当するものであ
る。17は回転工具1と圧粉体電極2BまたはTi電極
2Aの間の極間電圧または短絡を検出する極間検出回
路、18は回転工具1と圧粉体電極2BまたはTi電極
2Aとの間で電圧を印加する放電加工用電源である。回
転工具1と圧粉体電極2BまたはTi電極2Aとの間
は、回転工具1と圧粉体電極2Bの間に放電を発生させ
るとき、回転工具1とTi電極2Aとの間隔を広くし、
また、回転工具1とTi電極2Aの間に放電を発生させ
るとき、回転工具1と圧粉体電極2Bとの間隔を広く
し、放電に干渉しないようにしている。因に、本実施の
形態の制御回路15で電極位置を制御する本処理用電極
保持機構4Bと前処理用電極保持機構4Aは、圧粉体電
極2BとTi電極2Aとが同一X軸線上に位置するよう
に配設されおり、X軸方向の移動のみで電極の切替えが
可能になっている。
【0016】まず、本実施の形態の放電表面処理装置の
全体の動作について説明する。チャッキング機構3によ
り保持された回転工具1は、回転軸駆動機構8により回
転軸6と共に回転し、Z軸駆動機構7により主軸5と共
に上下移動を行う。このとき、上下移動と回転は同期し
ており、その同期状態は放電加工される回転工具1の切
刃のねじれ角に沿って圧粉体電極2BまたはTi電極2
Aの放電面が移動するように主軸5の移動量、即ち、回
転工具1の軸方向の刃長分の送りに相当するその回転量
が特定され、それが設定されている。主軸プラス方向、
即ち、チャッキング機構3側からエンドミルの先端方向
に移動させるときは逆方向へ回転させることになる。こ
れにより、圧粉体電極2BまたはTi電極2Aの放電面
が、回転工具1の外周切刃逃げ面との加工開始前の位置
関係を維持しながら切刃のねじれに沿って外周切刃逃げ
面上を往復移動されることになる。圧粉体電極2Bは本
処理用電極保持機構4B、Ti電極2Aは前処理用電極
保持機構4Aに各々取付けられ、更に、本処理用電極保
持機構4B及び前処理用電極保持機構4Aは加工液10
が満たされた加工槽9内に配設される。極間検出回路1
7は圧粉体電極2BまたはTi電極2Aと回転工具1の
位置関係を接触によって検出し、検出された情報は制御
回路15に送られ、圧粉体電極2BまたはTi電極2A
の放電面と回転工具1の外周切刃逃げ面等が互いに対向
するように位置決めする場合に使用される。また、制御
回路15は処理対象の回転工具1のねじれ角、処理する
刃長、直径、ねじれ刃の情報(右ねじれ、左ねじれ)、
及び、移動速度、移動回数等が入力されると、放電面が
外周切刃逃げ面をなぞるように相対移動させるべく、X
軸駆動機構13、Y軸駆動機構14、Z軸駆動機構7及
び、回転軸駆動機構8を制御して所望の移動動作を回転
工具1に行わせる。
【0017】このとき、まず、放電部分が加工液10中
に浸漬された状態で、最初に、Ti電極2Aを処理刃面
になぞらせながら、放電加工用電源18により回転工具
1とTi電極2Aとの間に電圧を印加して放電を発生さ
せ、回転工具1の外周切刃逃げ面、すくい面等の面あら
さを荒くする。なお、このとき、加工槽9内に設置され
たTi電極2Aと回転工具1の処理部分を加工液10に
浸漬させなくても、放電加工部分に加工液10を吹きか
けながら前述の方法で放電加工することによっても、回
転工具1の外周切刃逃げ面等の面あらさを荒くすること
もできる。なお、放電によって回転工具1の表面の面あ
らさを荒くする処理を、回転工具1の外周切刃逃げ面等
に改質層を形成する処理の前に行うことから、以下、単
に、これを「前処理」という。
【0018】次に、放電部分が加工液10中に浸漬され
た状態で、圧粉体電極2Bを面あらさが荒くなっている
処理刃面になぞらせながら、放電加工用電源18により
回転工具1と圧粉体電極2Bとの間に電圧を印加して放
電を発生させることにより回転工具1の外周切刃逃げ
面、すくい面に改質層を形成する。なお、加工槽9内に
設置された圧粉体電極2Bと回転工具1の処理部分を加
工液10に浸漬させなくても、放電加工部分に加工液1
0を吹きかけながら前述の方法で放電加工することによ
っても、回転工具1の外周切刃逃げ面等に改質層を形成
することができる。なお、放電によって被処理材である
回転工具1の表面に改質層を形成する処理を、以下、単
に、「本処理」という。
【0019】次に、本実施の形態の放電表面処理装置に
よる表面処理について詳述する。まず、前処理において
は、加工液10中において、Ti電極2Aと回転工具1
の間に放電加工用電源18によりパルス状の放電を発生
させている。この放電加工用電源18は通常の放電加工
用の所望の放電エネルギーを供給するパルス電流を発生
する電源でよい。放電の加工条件は、例えば、Ti電極
2Aを負極性とし、コンデンサ放電等の比較的放電エネ
ルギーの小さな条件が好適である。即ち、前処理におい
ては、Ti電極2Aを用いて比較的小さなエネルギーの
放電を発生させて表面処理を行う。この前処理により、
回転工具1の表面は僅かに面が荒れる。また、回転工具
1が超硬合金の場合には、超硬合金中のWC(タングス
テンカーバイド)が脱炭された状態になる。一般に、表
面処理のように硬質材料の表面にコーティングを行う場
合、母材表面が僅かに面あらさが荒くなり、脱炭される
と良好なコーティング膜が形成される。本実施の形態に
おけるTi電極2A等の電極で比較的小さなエネルギー
条件で放電加工を行うと、そのような面の状態が得られ
る。ただし、発明者等の実験によると、Ti電極2Aの
代わりにCu(銅)電極を使用すると、荒れ及び脱炭さ
れた面は得られるものの、その後にコーティング処理を
行っても良好なコーティングが得られないことが確認さ
れている。
【0020】前処理に使用する電極は、発明者等の実験
によると、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb
(ニオブ)、Ta(タンタル)等の高硬度な炭化物を生
成する材料が良好であることが判明している。これらの
材料の電極を用いて加工液10中で放電加工を行うと加
工液(油)10中の成分である炭素と反応し、炭化物を
生成する。これらの金属の炭化物は、高硬度セラミック
スにも使用される材料であることから判断できるよう
に、安定しており、かつ、硬度が高い。例えば、Ti
(チタン)の炭化物であるTiC(炭化チタン)はビッ
カース硬度でHv2500〜3200程度の硬度であ
り、また、V(バナジウム)の炭化物であるVC(炭化
バナジウム)はビッカース硬度でHv2500〜310
0の硬度である。
【0021】このような、Ti(チタン)、V(バナジ
ウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)等の材料か
らなる電極で前処理を行うことにより、前処理の際の放
電によって電極材料の炭化物が生成され、これが被処理
材としての回転工具1に僅かではあるがコーティングさ
れる。この前処理により、回転工具1の硬度が上がると
共に、本処理においてコーティング材料の付着を良くす
ることができる。また、回転工具1のような被処理材の
表面は、脱炭し、僅かに荒い面になり、コーティングが
行い易くなる。
【0022】前処理を行った後、TiH2 (水素化チタ
ン)系の圧粉体電極2Bと回転工具1の間に放電を発生
させ、回転工具1の表面処理を行う。即ち、本処理を行
う。TiH2 系の圧粉体電極2Bとしては、TiH2
ベースとし、TiB2 (ホウ化チタン)、TiN(窒化
チタン)、TiC(炭化チタン)、V(バナジウム)、
VC(炭化バナジウム)等の粉末を混合して成形し、圧
粉体としたものである。本処理により、TiH2 系の圧
粉体電極2B中の成分であるTiB2 、TiN、及び、
TiH2 中のTiが加工液10と反応してできたTiC
(炭化チタン)が回転工具1にコーティングされる。
【0023】本処理において金属の水素化物をベースに
した圧粉体電極2Bを使用することによって、次のよう
な効果を奏する。即ち、金属の水素化物は一般的に不安
定であり、数百度の温度で分解して水素を放出する。こ
のため、金属の水素化物をベースにした電極で放電を行
うと分解した水素が被処理材としての回転工具1の表面
をクリーニングする。また、金属の水素化物をベースに
した電極は放電の熱で容易に崩れるため、コーティング
のスピードが速くなる。このように、改質材料の元とな
る材料を含む改質材料からなる電極を、金属の水素化物
の粉体を含む材料で形成した圧粉体電極2Bとしたもの
では、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問
わず良好な改質層をすばやく均一に金属表面形成するこ
とができる。また、金属の水素化物は一般的に不安定
で、数百度の温度で分解して水素を放出するから、金属
の水素化物をベースにした電極で放電を行うと分解した
水素が被処理材としての回転工具1の表面をクリーニン
グすることができる。
【0024】図2は第一の実施の形態の放電表面処理装
置によって前処理を行った場合の寿命関係を示す表図で
ある。図2は超硬合金であるスローアウェイチップに本
実施の形態による放電表面処理装置によって表面処理を
施したもの、及び表面処理を施していないものとの比較
を図表に示したものである。ここで、表面処理を施して
いない市販の状態のスローアウェイチップの寿命を
「1」とし、本実施の形態による放電表面処理装置によ
って表面処理を施したことにより、寿命が何倍になった
かを表している。前処理なしの場合、即ち、TiH2
の圧粉体電極2Bのみによる処理を行った場合、処理を
行わないスローアウェイチップの寿命に比べ、約2倍の
寿命の延びが確認された。Ti電極2Aによる前処理を
行ったものは、約3倍の寿命の延びが確認された。これ
により前処理によって市販のスローアウェイチップ1本
分をそのまま使用できるだけの寿命が延びていることが
わかる。
【0025】しかし、前処理をCu電極で行うと寿命が
0.5倍、即ち、市販のスローアウェイチップをそのま
ま使用する場合の半分の寿命になってしまい表面処理を
行う意味が全くなくなっている。これによっても、回転
工具1の表面の脱炭及び荒れが問題ではなく、前処理の
際の放電によって電極材料の炭化物が生成され、これが
被処理材としての回転工具1に僅かではあるがコーティ
ングされ、被処理材料の硬度が上がると共に、本処理に
おいてコーティング材料の付着を良くすることができ、
その相乗効果により、被処理材の表面が脱炭し、僅かに
荒い面になることにより、コーティングが行い易くな
る。
【0026】本実施の形態の放電表面処理装置は、改質
材料の元となる材料を含む改質材料からなる圧粉体電極
2Bと、回転工具1からなる被処理材である金属との間
に放電加工用電源18から電圧を印加して、その間に放
電を発生させることにより被処理材である回転工具1の
金属表面に改質層を形成する放電表面処理装置におい
て、前記被処理材との間で放電を行う前処理に使用さ
れ、かつ、放電によって炭化物が生成され、その炭化物
が高硬度の材料を含むTi電極2Aを保持する前処理用
電極保持機構4Aと、前記被処理材の金属表面に改質層
を形成する本処理で使用する圧粉体電極2Bを保持する
本処理用電極保持機構4Bとを具備するものである。
【0027】したがって、前処理に使用する電極は、T
i(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、T
a(タンタル)等の高硬度な炭化物を生成する材料であ
るから、加工液10中で放電加工を行うと加工液10中
の成分である炭素と反応し、炭化物を生成する。これら
の金属の炭化物は、安定しており、かつ、硬度が高いの
で改質層を強靭なものにすることができる。また、前処
理の際の放電によって電極材料の炭化物が生成され、こ
れが被処理材に僅かではあるがコーティングされ、本処
理においてコーティング材料の付着を良くすることがで
きる。そして、回転工具1のような被処理材の表面は、
脱炭し、僅かに荒い面になり、コーティングが行い易く
なる。更に、本処理において金属の水素化物をベースに
した圧粉体電極2Bを使用することによって、数百度の
温度で分解して水素を放出し、その水素が被処理材の表
面をクリーニングする。また、金属の水素化物をベース
にした電極は放電の熱で容易に崩れるため、コーティン
グのスピードを速くすることができる。更に、Ti電極
2Aを保持する前処理用電極保持機構4Aと、圧粉体電
極2Bを保持する本処理用電極保持機構4Bとを有する
ことにより、加工液10中の放電加工による前処理及び
本処理を加工液10を排出することなく連続でき、その
作業性を良くすることができる。
【0028】実施の形態2.図3は本発明の第二の実施
の形態の放電表面処理装置の全体の構成を示す構成図で
ある。なお、図中、第一の実施の形態と同一符号及び記
号は第一の実施の形態の構成部分と同一または相当する
構成部分を示すものであるから、ここでは重複する説明
を省略し、相違点のみ説明する。図において、2はTi
2 (水素化チタン)系の圧粉体電極、1はエンドミル
等の回転工具、4は回転工具1を保持し、かつ、制御回
路15の指令により回転を与える電極保持機構である。
【0029】次に、本実施の形態の放電表面処理装置の
動作について説明する。加工液10中においてTiH2
系の圧粉体電極2と回転工具1の間に放電加工用電源1
8によりパルス状の放電を発生させる。放電加工用電源
18は通常の放電加工用の電源が使用できる。放電の条
件、即ち、加工条件は、例えば、TiH2 系の圧粉体電
極2が負極性で、コンデンサ放電等の比較的放電エネル
ギーの小さな条件がよい。これにより第一実施の形態の
前処理と同様の効果を回転工具1に与えることができ
る。この前処理を行った後、同一の電極であるTiH2
系の圧粉体電極2と回転工具1との間に放電を発生さ
せ、本処理を行う。ただし、Ti電極2Aで行う場合と
異なり、TiH2 系の圧粉体電極2の場合には、前処理
の面がポーラス状になるので、Ti電極2Aで行う場合
より若干特性が落ちる。しかし、同一のTiH2 系の圧
粉体電極2で、前処理及び本処理と行える効果がある。
【0030】本実施の形態の形態では、改質材料の元と
なる材料を含む改質材料からなる圧粉体電極2と、回転
工具1からなる被処理材である金属との間に放電加工用
電源18から電圧を印加して、その間に放電を発生させ
ることにより被処理材である回転工具1の金属表面に改
質層を形成する放電表面処理方法において、前記放電表
面処理の前に予め行う放電、即ち、前処理に使用する前
処理電極をTiH2 系の圧粉体電極2とし、回転工具1
からなる被処理材の表面に改質層を形成する本処理に使
用する電極と同一にしたものである。この種の実施の形
態では、前処理で放電加工用電源18からTiH2 系の
圧粉体電極2が負極性の比較的放電エネルギーの小さな
条件で処理し、その後、放電エネルギーを大きくし、同
一の電極であるTiH2 系の圧粉体電極2と回転工具1
との間に放電を発生させることにより本処理を行うもの
であるから、同一のTiH2 系の圧粉体電極2で、前処
理及び本処理と行うことができ、電極を交換することな
く放電エネルギーの制御のみで、前処理の際の放電によ
って電極材料の炭化物が生成され、これが被処理材に僅
かではあるがコーティングされ、被処理材料の硬度が上
がると共に、本処理におけるコーティング材料の付着を
良くすることができ、その相乗効果により、被処理材の
表面が脱炭し、僅かに荒い面になることにより、コーテ
ィングが行い易くなる。故に、被処理材の材質を問うこ
となく、金属表面に良質な硬質表面処理層を形成するこ
とができる。
【0031】なお、第一の実施の形態の放電表面処理装
置は、前記被処理材である回転工具1の金属表面に改質
層を形成する本処理の前に、予め、前記改質層を形成す
る本処理と異なる電極材料を用いて放電を発生させる前
処理を行うものであるが、第二の実施の形態の放電表面
処理装置は、電気条件を前記改質層を形成する本処理と
異なる条件に設定して放電を発生させる前処理を行うも
のである。したがって、本実施の形態の放電表面処理装
置は、改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる
圧粉体電極2と、回転工具1からなる被処理材である金
属との間に放電加工用電源18から電圧を印加して、そ
の間に放電を発生させることにより被処理材である回転
工具1の金属表面に改質層を形成する放電表面処理方法
において、前記被処理材である回転工具1の金属表面に
改質層を形成する本処理の前に、予め、電極材料、電気
条件のうちの1つ以上を、前記改質層を形成する本処理
と異なる条件に設定して放電を発生させる前処理を行う
方法として捕えることができる。故に、前処理に使用す
る電極は、高硬度な炭化物を生成する材料であるから、
加工液10中で放電加工を行うと加工液10中の成分で
ある炭素と反応し、炭化物を生成する。これらの金属の
炭化物は、安定しており、かつ、硬度が高いので改質層
を強靭なものにすることができる。また、前処理の際の
放電によって電極材料の炭化物が生成され、これが被処
理材に僅かではあるがコーティングされ、本処理におい
てコーティング材料の付着を良くすることができる。そ
して、回転工具1のような被処理材の表面は、脱炭し、
僅かに荒い面になり、コーティングが行い易くなる。更
に、本処理において金属の水素化物をベースにした圧粉
体電極2を使用することによって、数百度の温度で分解
して水素を放出し、その水素が被処理材の表面をクリー
ニングする。また、金属の水素化物をベースにした電極
は放電の熱で容易に崩れるため、コーティングのスピー
ドを速くすることができる。
【0032】実施の形態3.図4は本発明の第三の実施
の形態の放電表面処理装置の要部の構成を示す構成図
で、(a)は要部正面図及び(b)は要部平面図であ
る。なお、図中、第一の実施の形態と同一符号及び記号
は第一の実施の形態の構成部分と同一または相当する構
成部分を示すものであるから、ここでは重複する説明を
省略し、相違点のみ説明する。図において、1は表面処
理を施すエンドミルやドリル等の回転工具、20Bは改
質層を形成する成分、例えば、WC−Co(タングステ
ンカーバイド−コバルト)からなる混合圧粉体で成形し
た圧粉体電極で、改質材料或いは改質材料の元となる材
料からなる電極であり、一次加工を行うものである。2
0Aは前処理を行うTi電極、20CはCu電極で、そ
れほど消耗しない電極であればよい。Cu電極20Cは
回転工具1からなる被処理材の表面に堆積された被覆層
に堆積再溶融加工、即ち、二次加工を行うものである。
また、40Bは圧粉体電極20Bを保持する一次加工用
電極保持機構で、回転工具1と圧粉体電極20BとをZ
軸方向に相対移動させるものである。40AはTi電極
20Aを保持する前処理用電極保持機構で、回転工具1
とTi電極20AとをZ軸方向に相対移動させるもので
ある。40CはCu電極20Cを保持する二次加工用電
極保持機構で、回転工具1とCu電極20CとをZ軸方
向に相対移動させるものである。
【0033】次に、本実施の形態の放電表面処理装置に
よる表面処理について詳述する。まず、前処理において
は、加工液10中において、Ti電極20Aと回転工具
1の間に放電加工用電源18によりパルス状の放電を発
生させる。放電の加工条件は、例えば、Ti電極20A
を負極性とし、コンデンサ放電等の比較的放電エネルギ
ーの小さな条件が好適である。この前処理においては、
Ti電極20Aを用いて比較的小さなエネルギーの放電
を発生させて表面処理を行う。この前処理により、回転
工具1の表面は僅かに面が荒れる。また、回転工具1が
超硬合金の場合には、超硬合金中のWC(タングステン
カーバイド)が脱炭された状態になる。
【0034】本実施の形態のTi電極20A以外にも、
前述のV(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タン
タル)等の材料からなる電極で前処理を行っても、前処
理の際の放電によって電極材料の炭化物が生成され、こ
れが被処理材である回転工具1に僅かではあるがコーテ
ィングされる。この前処理により、回転工具1の硬度が
上がると共に、本処理においてコーティング材料の付着
性を良くすることができる。また、回転工具1の表面
は、脱炭し、僅かに荒い面になり、コーティングが行い
易くなる。
【0035】前処理を行った後、WC−Coからなる圧
粉体電極20Bを用いて、加工液10中で回転工具1と
圧粉体電極20Bとの間に放電を発生させ、回転工具1
の表面にWC−Coを堆積させる一次加工を行う。次い
で、Cu電極20Cのように、それほど消耗しない電極
によって回転工具1の表面に堆積されたWC−Coに堆
積再溶融加工、即ち、二次加工を行う。これによって、
回転工具1の表面に堆積されたWC−Coの層を硬く、
しかも、密着度を良くすることができる。
【0036】本実施の形態の放電表面処理装置では、改
質材料の元となる材料を含む改質材料からなる圧粉体電
極20Bと、回転工具1からなる被処理材である金属と
の間に放電加工用電源18から電圧を印加して、その間
に放電を発生させることにより被処理材である回転工具
1の金属表面に改質層を形成する放電表面処理装置にお
いて、被処理材としての回転工具1との間で放電を行う
前処理に使用され、かつ、放電によって炭化物が生成さ
れ、その炭化物が高硬度の材料を含むTi電極20Aを
保持する前処理用電極保持機構40Aと、被処理材とし
ての回転工具1の金属表面に改質層を形成する堆積加工
で使用する圧粉体電極20Bを保持する一次加工用電極
保持機構40Bと、被処理材としての回転工具1の金属
表面に堆積された改質層に堆積再溶融加工を行うCu電
極20Cを保持する二次加工用電極保持機構40Cとを
具備するものである。
【0037】したがって、前処理に使用する電極は、高
硬度な炭化物を生成する材料であるから、加工液10中
で放電加工を行うと加工液10中の成分である炭素と反
応し、炭化物を生成する。これらの金属の炭化物は、安
定しており、かつ、硬度が高いので改質層を強靭なもの
にすることができる。また、前処理の際の放電によって
電極材料の炭化物が生成され、これが被処理材に僅かで
はあるがコーティングされ、本処理においてコーティン
グ材料の付着を良くすることができる。そして、回転工
具1の表面は、脱炭し、僅かに荒い面になり、コーティ
ングが行い易くなる。更に、本処理において一次加工及
び二次加工により、所望の金属材料を被処理材の表面に
改質層として形成でき、しかも、これによって、回転工
具1の表面に堆積された改質層を硬く、しかも、密着度
を良くすることができる。更に、Ti電極20Aを保持
する前処理用電極保持機構40Aと、圧粉体電極20B
を保持する一次加工用電極保持機構40Bと、Cu電極
20Cを保持する二次加工用電極保持機構40Cとを有
することにより、加工液10中の放電加工による前処理
及び本処理を加工液10を排出することなく連続でき、
その作業性を良くすることができる。
【0038】
【発明の効果】以上のように、請求項1の放電表面処理
方法は、改質材料の元となる材料を含む改質材料からな
る電極と、被処理材である金属との間に電圧を印加し
て、その間に放電を発生させることにより前記被処理材
である金属表面に改質層を形成する場合、前記被処理材
の表面に改質層を形成する本処理の前に、予め、電極材
料、電気条件のうちの1つ以上を、前記改質層を形成す
る本処理と異なる条件に設定して放電を発生させる前処
理を行うものである。したがって、前記被処理材の表面
に改質層を形成する本処理の前に、前処理の際の放電に
よって、被処理材の表面は脱炭し、僅かに荒い面にな
り、コーティングが行い易くなり、本処理におけるコー
ティング材料の付着を良くすることができる。また、被
処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず金属
表面に良好な硬質層を形成することができる。故に、被
処理材の材質を問うことなく、金属表面に良質な硬質表
面処理層を形成することができる。
【0039】請求項2の放電表面処理方法は、請求項1
に記載の前記放電表面処理の前に予め行う放電に使用す
る前処理電極を、放電によって炭化物が生成され、その
炭化物が高硬度の材料を含む材料としたものであるか
ら、請求項1の効果に加えて、前処理の際の放電によっ
て電極材料の炭化物が生成され、これが被処理材に僅か
ではあるがコーティングされる。この前処理により、被
処理材の硬度が上がると共に、被処理材の表面は、脱炭
し、僅かに荒い面になり、本処理におけるコーティング
材料の付着を良くすることができる。故に、被処理材料
が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず、硬度が高く
密着力のよい改質層を金属表面に形成することができ
る。
【0040】請求項3の放電表面処理方法は、請求項1
または請求項2に記載の前記改質材料の元となる材料を
含む改質材料からなる電極を、金属の水素化物の粉体を
含む材料で形成したものであるから、請求項1または請
求項2に記載の効果に加えて、金属の水素化物は一般的
に不安定であり、数百度の温度で分解して水素を放出す
るから、金属の水素化物をベースにした電極で放電を行
うと分解した水素が被処理材の表面をクリーニングでき
る。また、金属の水素化物をベースにした電極は放電の
熱で容易に崩れるため、コーティングのスピードが速く
なる。故に、被処理材料が鋼材であるか超硬合金である
かを問わず良好な改質層をすばやく均一に金属表面に形
成することができる。
【0041】請求項4の放電表面処理方法は、請求項1
乃至請求項3の何れか1つに記載の前記放電表面処理の
前に予め行う放電に使用する前処理電極を、前記被処理
材の表面に改質層を形成する本処理に使用する電極と同
一にしたものであるから、請求項1乃至請求項3の何れ
か1つに記載の効果に加えて、前処理で放電加工用電源
から前処理電極を比較的放電エネルギーの小さな条件で
処理し、その後、放電エネルギーを大きくし、同一の電
極と前記被処理材との間に放電を発生させることにより
本処理を行うものであるから、同一の電極で前処理及び
本処理と行うことができ、電極を交換することなく放電
エネルギーの制御のみで、前処理の際の放電によって電
極材料の炭化物が生成され、これが被処理材に僅かでは
あるがコーティングされ、被処理材料の硬度が上がると
共に、本処理におけるコーティング材料の付着を良くす
ることができ、その相乗効果により、被処理材の表面が
脱炭し、僅かに荒い面になり、コーティングが行い易く
なる。故に、被処理材の材質を問うことなく、金属表面
に良質な硬質表面処理層を形成することができる。
【0042】請求項5の放電表面処理方法は、請求項1
乃至請求項3の何れか1つに記載の前記被処理材の表面
に改質層を形成する本処理を、前記被処理材である金属
表面に改質層を形成する堆積加工を行う一次加工と、被
処理材の表面に堆積された改質層に堆積再溶融加工を行
う二次加工とからなるものであるから、請求項1乃至請
求項3の何れか1つに記載の効果に加えて、本処理にお
いて一次加工及び二次加工により、所望の金属材料を被
処理材の表面に改質層として形成でき、しかも、これに
よって、被処理材の表面に堆積された改質層を硬く、し
かも、密着度を良くすることができる。
【0043】請求項6の放電表面処理装置は、改質材料
の元となる材料を含む改質材料からなる電極と、被処理
材である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を
発生させることにより前記被処理材である金属表面に改
質層を形成する放電表面処理装置において、前記被処理
材との間で放電を行う前処理に使用され、かつ、放電に
よって炭化物が生成され、その炭化物が高硬度の材料を
含む電極材料を保持する前処理用電極保持機構と、前記
被処理材の金属表面に改質層を形成する本処理で使用す
る本処理用電極保持機構とを具備するものである。した
がって、前処理に使用する電極は、高硬度な炭化物を生
成する材料であるから、加工液中で放電加工を行うと加
工液中の成分である炭素と反応し、炭化物を生成し、こ
れらの金属の炭化物は安定しており、かつ、硬度が高い
ので改質層を強靭なものにすることができる。また、前
処理の際の放電によって電極材料の炭化物が生成され、
これが被処理材に僅かではあるがコーティングされ、本
処理においてコーティング材料の付着を良くすることが
できる。更に、前処理で使用される放電によって炭化物
が生成され、その炭化物が高硬度の材料を含む電極材料
を保持する前処理用電極保持機構と、改質層を形成する
本処理で使用する本処理用電極保持機構とを有すること
により、加工液中の放電加工による前処理及び本処理を
加工液を排出することなく連続でき、その作業性を良く
することができる。故に、被処理材料が鋼材であるか超
硬合金であるかを問わず金属表面に良好な硬質層を形成
することができる。
【0044】請求項7の放電表面処理装置は、改質材料
の元となる材料を含む改質材料からなる電極と、被処理
材である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を
発生させることにより前記被処理材である金属表面に改
質層を形成する放電表面処理装置において、前記被処理
材との間で放電を行う前処理に使用され、かつ、放電に
よって炭化物が生成され、その炭化物が高硬度の材料を
含む電極を保持する前処理用電極保持機構と、前記被処
理材の金属表面に改質層を形成する堆積加工で使用する
電極を保持する一次加工用電極保持機構と、前記被処理
材の金属表面に堆積された改質層に堆積再溶融加工を行
う電極を保持する二次加工用電極保持機構とを具備する
ものである。したがって、前処理に使用する電極は、高
硬度な炭化物を生成する材料であるから、加工液中で放
電加工を行うと加工液中の成分である炭素と反応し、炭
化物を生成し、これらの金属の炭化物は安定しており、
かつ、硬度が高いので改質層を強靭なものにすることが
できる。また、前処理の際の放電によって電極材料の炭
化物が生成され、これが被処理材に僅かではあるがコー
ティングされ、本処理においてコーティング材料の付着
を良くすることができる。そして、被処理材の表面は、
脱炭し、僅かに荒い面になり、コーティングが行い易く
なる。また、本処理において一次加工及び二次加工によ
り、所望の金属材料を被処理材の表面に改質層として形
成でき、しかも、これによって、被処理材の表面に堆積
された改質層を硬く、しかも、密着度を良くすることが
できる。更に、被処理材との間で放電を行う前処理に使
用され、かつ、放電によって炭化物が生成され、その炭
化物が高硬度の材料を含む電極を保持する前処理用電極
保持機構、改質層を形成する堆積加工で使用する電極を
保持する一次加工用電極保持機構、堆積された改質層に
堆積再溶融加工を行う電極を保持する二次加工用電極保
持機構とを有することにより、加工液中の放電加工によ
る前処理及び本処理を加工液を排出することなく連続で
き、その作業性を良くすることができる。故に、被処理
材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず金属表面
に良好な硬質層を形成することができる。
【0045】請求項8の放電表面処理装置は、請求項6
または請求項7に記載の前記放電表面処理の前に予め行
う放電に使用する前処理電極を、放電によって炭化物が
生成され、その炭化物が高硬度の材料を含む材料とした
ものであるから、請求項6または請求項7に記載の効果
に加えて、前処理の際の放電によって電極材料の炭化物
が生成され、これが被処理材に僅かではあるがコーティ
ングされる。この前処理により、被処理材の硬度が上が
ると共に、被処理材の表面は、脱炭し、僅かに荒い面に
なり、本処理におけるコーティング材料の付着を良くす
ることができる。故に、被処理材料が鋼材であるか超硬
合金であるかを問わず、硬度が高く密着力のよい改質層
を金属表面に形成することができる。
【0046】請求項9の放電表面処理装置は、請求項6
乃至請求項8の何れか1つに記載の前記改質材料の元と
なる材料を含む改質材料からなる電極を、金属の水素化
物の粉体を含む材料で形成したものであるから、請求項
6乃至請求項8の何れか1つに記載の効果に加えて、金
属の水素化物は一般的に不安定であり、数百度の温度で
分解して水素を放出するから、金属の水素化物をベース
にした電極で放電を行うと分解した水素が被処理材の表
面をクリーニングできる。また、金属の水素化物をベー
スにした電極は放電の熱で容易に崩れるため、コーティ
ングのスピードが速くなる。故に、被処理材料が鋼材で
あるか超硬合金であるかを問わず良好な改質層をすばや
く均一に金属表面に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の第一の実施の形態の放電表面
処理装置の全体の構成を示す構成図である。
【図2】 図2は本発明の第一の実施の形態の放電表面
処理装置によって前処理を行った場合の寿命関係を示す
表図である。
【図3】 図3は本発明の第二の実施の形態の放電表面
処理装置の全体の構成を示す構成図である。
【図4】 図4は本発明の第三の実施の形態の放電表面
処理装置の要部の構成を示す構成図で、(a)は要部正
面図及び(b)は要部平面図である。
【図5】 図5は従来の被処理材の金属表面に改質層を
形成する放電表面処理方法の説明図である。
【符号の説明】
1 回転工具、2 TiH2 (水素化チタン)系の圧粉
体電極、2A Ti電極、2B 圧粉体電極、4 電極
保持機構、4A 前処理用電極保持機構、4B本処理用
電極保持機構、18 放電加工用電源、20A Ti電
極、20B圧粉体電極、20C Cu電極、40A 前
処理用電極保持機構、40B 一次加工用電極保持機
構、40C 二次加工用電極保持機構
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 斎藤 長男 愛知県春日井市岩成台九丁目12番地12 (72)発明者 毛利 尚武 愛知県名古屋市天白区八事石坂661−51 (72)発明者 後藤 昭弘 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三 菱電機株式会社内 (72)発明者 真柄 卓司 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三 菱電機株式会社内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 改質材料の元となる材料を含む改質材料
    からなる電極と、被処理材である金属との間に電圧を印
    加して、その間に放電を発生させることにより前記被処
    理材である金属表面に改質層を形成する放電表面処理方
    法において、 前記被処理材の表面に改質層を形成する本処理の前に、
    予め、電極材料、電気条件のうちの1つ以上を、前記改
    質層を形成する本処理と異なる条件に設定して放電を発
    生させる前処理を行うことを特徴とする放電表面処理方
    法。
  2. 【請求項2】 前記放電表面処理の前に予め行う放電に
    使用する前処理電極は、放電によって炭化物が生成さ
    れ、その炭化物が高硬度の材料を含む材料としたことを
    特徴とする請求項1に記載の放電表面処理方法。
  3. 【請求項3】 前記改質材料の元となる材料を含む改質
    材料からなる電極は、金属の水素化物の粉体を含む材料
    で形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に
    記載の放電表面処理方法。
  4. 【請求項4】 前記放電表面処理の前に予め行う放電に
    使用する前処理電極は、前記被処理材の表面に改質層を
    形成する本処理に使用する電極と同一にしたことを特徴
    とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の放電
    表面処理方法。
  5. 【請求項5】 前記被処理材の表面に改質層を形成する
    本処理は、前記被処理材である金属表面に改質層を形成
    する堆積加工を行う一次加工、被処理材の表面に堆積さ
    れた改質層に堆積再溶融加工を行う二次加工からなるこ
    とを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記
    載の放電表面処理方法。
  6. 【請求項6】 改質材料の元となる材料を含む改質材料
    からなる電極と、被処理材である金属との間に電圧を印
    加して、その間に放電を発生させることにより前記被処
    理材である金属表面に改質層を形成する放電表面処理装
    置において、 前記被処理材との間で放電を行う前処理に使用され、か
    つ、放電によって炭化物が生成され、その炭化物が高硬
    度の材料を含む電極材料を保持する前処理用電極保持機
    構と、 前記被処理材の金属表面に改質層を形成する本処理で使
    用する本処理用電極保持機構とを具備することを特徴と
    する放電表面処理装置。
  7. 【請求項7】 改質材料の元となる材料を含む改質材料
    からなる電極と、被処理材である金属との間に電圧を印
    加して、その間に放電を発生させることにより前記被処
    理材である金属表面に改質層を形成する放電表面処理装
    置において、 前記被処理材との間で放電を行う前処理に使用され、か
    つ、放電によって炭化物が生成され、その炭化物が高硬
    度の材料を含む電極を保持する前処理用電極保持機構
    と、 前記被処理材の金属表面に改質層を形成する堆積加工で
    使用する電極を保持する一次加工用電極保持機構と、 前記被処理材の金属表面に堆積された改質層に堆積再溶
    融加工を行う電極を保持する二次加工用電極保持機構と
    を具備することを特徴とする放電表面処理装置。
  8. 【請求項8】 前記放電表面処理の前に予め行う放電に
    使用する前処理電極は、放電によって炭化物が生成さ
    れ、その炭化物が高硬度の材料を含む材料としたことを
    特徴とする請求項6または請求項7に記載の放電表面処
    理装置。
  9. 【請求項9】 前記改質材料の元となる材料を含む改質
    材料からなる電極は、金属の水素化物の粉体を含む材料
    で形成したことを特徴とする請求項6乃至請求項8の何
    れか1つに記載の放電表面処理装置。
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