JP3798100B2 - 放電表面処理方法及びその処理装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、改質材料或いは改質材料の元となる材料からなる電極と被処理材である金属との間に放電を発生させることにより金属表面に改質層を形成する放電表面処理方法及びその処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液中放電によって金属材料等の表面をコーティングして、耐食性、耐磨耗性を与える技術は、既に、特開平6−182626号公報等で公知となっている。
この公報に掲載の技術は、WC(タングステンカーバイト)とCo(コバルト)の粉末を混合して圧縮成形した電極で液中放電を行うことにより、その電極材料をワークに堆積させる。その後、別の電極、例えば、銅電極、グラファイト電極等によって、再溶融放電加工を行い、より高い硬度と高い密着力を得るものである。
【0003】
次に、従来技術について図5を用いて説明する。
図5は従来の被処理材の金属表面に改質層を形成する放電表面処理方法の説明図である。
51はWC−Co(タングステンカーバイド−コバルト)からなる混合圧粉体で成形した混合圧粉体電極である。54は被処理材(S50C)である。52は銅電極、55は被処理材54の表面に形成したWC−Coからなる被覆層である。
ここで、WC−Coからなる混合圧粉体電極51を用いて、加工液中で被処理材54と混合圧粉体電極51との間に放電を発生させ、被処理材54の表面にWC−Coを堆積させ、WC−Coの堆積物からなる被覆層55を堆積加工する一次加工を行う。次いで、Cu(銅)電極52のように、それほど消耗しない電極によって被処理材54の表面に堆積されたWC−Coの被覆層55に堆積再溶融加工、即ち、二次加工を行う。特に、一次加工の被覆層55の堆積のままでは、組織は硬度もHv=1410程度であり、また、空洞も多いが、二次加工の再溶融加工を行うことによって、被覆層55が堆積した被処理材54の表面に堆積物の空洞が無くなり、その硬度もHv=1750と向上する。
この方法によれば、被処理材54がS50C等の鋼材である場合には、硬く、しかも、密着度のよい被覆層55が得られる。しかしながら、超硬合金のような焼結材料の表面には、強固な密着力を持った被覆層55を形成することが困難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の放電表面処理方法は、前述の事例のように、超硬合金のような焼結材料の表面には、強固な密着力を持った被覆層55を形成することが困難であり、特に、被処理材54の種類等によっては、良質の被覆層55が得られなかった。
そこで、本発明は、被処理材の材質が鋼材であるか、超硬合金であるかを問うことなく、良好な被覆層を形成できる放電表面処理装置及び放電表面処理方法の提供を課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1にかかる放電表面処理方法は、改質材料の元となる金属の水素化物の粉体を含む材料で形成した電極と、被処理材である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより前記被処理材である金属表面に改質層を形成する放電表面処理方法において、前記被処理材の表面に改質層を形成する本処理の前に、予め電極材料、電気条件のうちの1つ以上を、前記改質層を形成する本処理と異なる条件に設定して放電を発生させ、被処理材表面を脱炭し、面粗さを粗くする前処理を行うものである。
【0006】
請求項2にかかる放電表面処理方法は、改質材料の元となる金属の水素化物の粉体を含む材料で形成した電極と、被処理材である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより前記被処理材である金属表面に改質層を形成する放電表面処理方法において、前記被処理材の表面に改質層を形成する本処理の前に、予め、電極材料、電気条件のうちの1つ以上を、前記改質層を形成する本処理と異なる条件に設定して放電を発生させ、被処理材表面に炭化物を生成させる前処理を行うものである。
【0007】
請求項3にかかる放電表面処理方法は、前記放電表面処理の前に予め行う放電に使用する前処理電極を、放電によって炭化物が生成され、その炭化物が高硬度の材料を含む材料としたものである。
【0008】
請求項にかかる放電表面処理方法は、前記放電表面処理の前に予め行う放電に使用する前処理電極を、前記被処理材の表面に改質層を形成する本処理に使用する電極と同一にしたものである。
【0009】
請求項にかかる放電表面処理方法は、前記被処理材の表面に改質層を形成する本処理を、前記被処理材である金属表面に改質層を形成する堆積加工を行う一次加工、被処理材の表面に堆積された改質層に堆積再溶融加工を行う二次加工としたものである。
【0010】
請求項にかかる放電表面処理装置は、改質材料の元となる金属の水素化物の粉体を含む材料で形成した電極と、被処理材である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより前記被処理材である金属表面に改質層を形成する放電表面処理装置において、放電によって炭化物が生成され、その炭化物が高硬度の材料を含む電極材料を保持し、前記被処理材との間で放電を行う前処理で使用する前処理用電極保持機構と、前記被処理材の金属表面に改質層を形成する本処理で使用する本処理用電極保持機構とを具備するものである。
【0011】
請求項にかかる放電表面処理装置は、改質材料の元となる金属の水素化物の粉体を含む材料で形成した電極と、被処理材である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより前記被処理材である金属表面に改質層を形成する放電表面処理装置において、放電によって炭化物が生成され、その炭化物が高硬度の材料を含む電極材料を保持し、前記被処理材との間で放電を行う前処理で使用する前処理用電極保持機構と、前記被処理材の金属表面に改質層を形成する堆積加工で使用する一次加工用電極保持機構と、前記被処理材の金属表面に堆積された改質層に堆積再溶融加工を行うのに使用する二次加工用電極保持機構とを具備するものである。
【0012】
請求項にかかる放電表面処理装置は、前記放電表面処理の前に予め行う放電に使用する前処理電極を、放電によって炭化物が生成され、その炭化物が高硬度の材料を含む材料としたものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態の説明において、従来例及び各実施の形態と同一符号及び記号は従来例及び各実施の形態の構成部分と同一または相当する構成部分を示すものである。
【0014】
実施の形態1.
図1は本発明の第一の実施の形態の放電表面処理装置の全体の構成を示す構成図である。
図において、1は表面処理を施すエンドミルやドリル等の回転工具、2Bは改質層を形成する成分、例えば、TiH2 (水素化チタン)系の圧粉体電極で、本発明を実施する場合には、改質材料或いは改質材料の元となる材料からなる電極であり、即ち、改質材料の元となる材料を含む改質材料であればよい。2AはTi(チタン)電極、3は回転工具1を保持するチャッキング機構、4Bは圧粉体電極2Bを保持する本処理用電極保持機構で、回転工具1と圧粉体電極2BとをZ軸方向に相対移動させるものである。4AはTi電極2Aを保持する前処理用電極保持機構で、回転工具1とTi電極2AとをZ軸方向に相対移動させるものである。5は回転工具1の上下方向、即ち、Z軸方向の移動を行う主軸、6は回転工具1の回転を行う回転軸(C軸)、7は回転工具1と共に主軸5を上下方向に駆動するZ軸駆動機構、8は回転軸6を回転させるモータ等からなる回転軸駆動機構、9は本処理用電極保持機構4B及び前処理用電極保持機構4Aを固定すると共に放電加工用の加工液10を収容する加工槽、11は加工槽9の水平方向(X方向)の移動を自在とするXテーブル、12は加工槽9の水平方向(Y方向)の移動を自在とするYテーブル、13はXテーブル11用のX軸駆動機構、14はYテーブル12用のY軸駆動機構、15はコンピュータ等を内蔵した制御回路で、通常のNC装置に相当するものである。17は回転工具1と圧粉体電極2BまたはTi電極2Aの間の極間電圧または短絡を検出する極間検出回路、18は回転工具1と圧粉体電極2BまたはTi電極2Aとの間で電圧を印加する放電加工用電源である。回転工具1と圧粉体電極2BまたはTi電極2Aとの間は、回転工具1と圧粉体電極2Bの間に放電を発生させるとき、回転工具1とTi電極2Aとの間隔を広くし、また、回転工具1とTi電極2Aの間に放電を発生させるとき、回転工具1と圧粉体電極2Bとの間隔を広くし、放電に干渉しないようにしている。
因に、本実施の形態の制御回路15で電極位置を制御する本処理用電極保持機構4Bと前処理用電極保持機構4Aは、圧粉体電極2BとTi電極2Aとが同一X軸線上に位置するように配設されおり、X軸方向の移動のみで電極の切替えが可能になっている。
【0015】
まず、本実施の形態の放電表面処理装置の全体の動作について説明する。
チャッキング機構3により保持された回転工具1は、回転軸駆動機構8により回転軸6と共に回転し、Z軸駆動機構7により主軸5と共に上下移動を行う。このとき、上下移動と回転は同期しており、その同期状態は放電加工される回転工具1の切刃のねじれ角に沿って圧粉体電極2BまたはTi電極2Aの放電面が移動するように主軸5の移動量、即ち、回転工具1の軸方向の刃長分の送りに相当するその回転量が特定され、それが設定されている。
主軸プラス方向、即ち、チャッキング機構3側からエンドミルの先端方向に移動させるときは逆方向へ回転させることになる。これにより、圧粉体電極2BまたはTi電極2Aの放電面が、回転工具1の外周切刃逃げ面との加工開始前の位置関係を維持しながら切刃のねじれに沿って外周切刃逃げ面上を往復移動されることになる。圧粉体電極2Bは本処理用電極保持機構4B、Ti電極2Aは前処理用電極保持機構4Aに各々取付けられ、更に、本処理用電極保持機構4B及び前処理用電極保持機構4Aは加工液10が満たされた加工槽9内に配設される。極間検出回路17は圧粉体電極2BまたはTi電極2Aと回転工具1の位置関係を接触によって検出し、検出された情報は制御回路15に送られ、圧粉体電極2BまたはTi電極2Aの放電面と回転工具1の外周切刃逃げ面等が互いに対向するように位置決めする場合に使用される。また、制御回路15は処理対象の回転工具1のねじれ角、処理する刃長、直径、ねじれ刃の情報(右ねじれ、左ねじれ)、及び、移動速度、移動回数等が入力されると、放電面が外周切刃逃げ面をなぞるように相対移動させるべく、X軸駆動機構13、Y軸駆動機構14、Z軸駆動機構7及び、回転軸駆動機構8を制御して所望の移動動作を回転工具1に行わせる。
【0016】
このとき、まず、放電部分が加工液10中に浸漬された状態で、最初に、Ti電極2Aを処理刃面になぞらせながら、放電加工用電源18により回転工具1とTi電極2Aとの間に電圧を印加して放電を発生させ、回転工具1の外周切刃逃げ面、すくい面等の面あらさを荒くする。なお、このとき、加工槽9内に設置されたTi電極2Aと回転工具1の処理部分を加工液10に浸漬させなくても、放電加工部分に加工液10を吹きかけながら前述の方法で放電加工することによっても、回転工具1の外周切刃逃げ面等の面あらさを荒くすることもできる。なお、放電によって回転工具1の表面の面あらさを荒くする処理を、回転工具1の外周切刃逃げ面等に改質層を形成する処理の前に行うことから、以下、単に、これを「前処理」という。
【0017】
次に、放電部分が加工液10中に浸漬された状態で、圧粉体電極2Bを面あらさが荒くなっている処理刃面になぞらせながら、放電加工用電源18により回転工具1と圧粉体電極2Bとの間に電圧を印加して放電を発生させることにより回転工具1の外周切刃逃げ面、すくい面に改質層を形成する。なお、加工槽9内に設置された圧粉体電極2Bと回転工具1の処理部分を加工液10に浸漬させなくても、放電加工部分に加工液10を吹きかけながら前述の方法で放電加工することによっても、回転工具1の外周切刃逃げ面等に改質層を形成することができる。なお、放電によって被処理材である回転工具1の表面に改質層を形成する処理を、以下、単に、「本処理」という。
【0018】
次に、本実施の形態の放電表面処理装置による表面処理について詳述する。
まず、前処理においては、加工液10中において、Ti電極2Aと回転工具1の間に放電加工用電源18によりパルス状の放電を発生させている。この放電加工用電源18は通常の放電加工用の所望の放電エネルギーを供給するパルス電流を発生する電源でよい。放電の加工条件は、例えば、Ti電極2Aを負極性とし、コンデンサ放電等の比較的放電エネルギーの小さな条件が好適である。即ち、前処理においては、Ti電極2Aを用いて比較的小さなエネルギーの放電を発生させて表面処理を行う。この前処理により、回転工具1の表面は僅かに面が荒れる。また、回転工具1が超硬合金の場合には、超硬合金中のWC(タングステンカーバイド)が脱炭された状態になる。
一般に、表面処理のように硬質材料の表面にコーティングを行う場合、母材表面が僅かに面あらさが荒くなり、脱炭されると良好なコーティング膜が形成される。本実施の形態におけるTi電極2A等の電極で比較的小さなエネルギー条件で放電加工を行うと、そのような面の状態が得られる。ただし、発明者等の実験によると、Ti電極2Aの代わりにCu(銅)電極を使用すると、荒れ及び脱炭された面は得られるものの、その後にコーティング処理を行っても良好なコーティングが得られないことが確認されている。
【0019】
前処理に使用する電極は、発明者等の実験によると、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)等の高硬度な炭化物を生成する材料が良好であることが判明している。これらの材料の電極を用いて加工液10中で放電加工を行うと加工液(油)10中の成分である炭素と反応し、炭化物を生成する。これらの金属の炭化物は、高硬度セラミックスにも使用される材料であることから判断できるように、安定しており、かつ、硬度が高い。例えば、Ti(チタン)の炭化物であるTiC(炭化チタン)はビッカース硬度でHv2500〜3200程度の硬度であり、また、V(バナジウム)の炭化物であるVC(炭化バナジウム)はビッカース硬度でHv2500〜3100の硬度である。
【0020】
このような、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)等の材料からなる電極で前処理を行うことにより、前処理の際の放電によって電極材料の炭化物が生成され、これが被処理材としての回転工具1に僅かではあるがコーティングされる。この前処理により、回転工具1の硬度が上がると共に、本処理においてコーティング材料の付着を良くすることができる。また、回転工具1のような被処理材の表面は、脱炭し、僅かに荒い面になり、コーティングが行い易くなる。
【0021】
前処理を行った後、TiH2(水素化チタン)系の圧粉体電極2Bと回転工具1の間に放電を発生させ、回転工具1の表面処理を行う。即ち、本処理を行う。TiH2系の圧粉体電極2Bとしては、TiH2をベースとし、TiB2(ホウ化チタン)、TiN(窒化チタン)、TiC(炭化チタン)、V(バナジウム)、VC(炭化バナジウム)等の粉末を混合して成形し、圧粉体としたものである。本処理により、TiH2系の圧粉体電極2B中の成分であるTiB2、TiN、及び、TiH2中のTiが加工液10と反応してできたTiC(炭化チタン)が回転工具1にコーティングされる。
【0022】
本処理において金属の水素化物をベースにした圧粉体電極2Bを使用することによって、次のような効果を奏する。即ち、金属の水素化物は一般的に不安定であり、数百度の温度で分解して水素を放出する。このため、金属の水素化物をベースにした電極で放電を行うと分解した水素が被処理材としての回転工具1の表面をクリーニングする。また、金属の水素化物をベースにした電極は放電の熱で容易に崩れるため、コーティングのスピードが速くなる。
このように、改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極を、金属の水素化物の粉体を含む材料で形成した圧粉体電極2Bとしたものでは、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず良好な改質層をすばやく均一に金属表面形成することができる。また、金属の水素化物は一般的に不安定で、数百度の温度で分解して水素を放出するから、金属の水素化物をベースにした電極で放電を行うと分解した水素が被処理材としての回転工具1の表面をクリーニングすることができる。
【0023】
図2は第一の実施の形態の放電表面処理装置によって前処理を行った場合の寿命関係を示す表図である。
図2は超硬合金であるスローアウェイチップに本実施の形態による放電表面処理装置によって表面処理を施したもの、及び表面処理を施していないものとの比較を図表に示したものである。ここで、表面処理を施していない市販の状態のスローアウェイチップの寿命を「1」とし、本実施の形態による放電表面処理装置によって表面処理を施したことにより、寿命が何倍になったかを表している。前処理なしの場合、即ち、TiH2 系の圧粉体電極2Bのみによる処理を行った場合、処理を行わないスローアウェイチップの寿命に比べ、約2倍の寿命の延びが確認された。Ti電極2Aによる前処理を行ったものは、約3倍の寿命の延びが確認された。これにより前処理によって市販のスローアウェイチップ1本分をそのまま使用できるだけの寿命が延びていることがわかる。
【0024】
しかし、前処理をCu電極で行うと寿命が0.5倍、即ち、市販のスローアウェイチップをそのまま使用する場合の半分の寿命になってしまい表面処理を行う意味が全くなくなっている。これによっても、回転工具1の表面の脱炭及び荒れが問題ではなく、前処理の際の放電によって電極材料の炭化物が生成され、これが被処理材としての回転工具1に僅かではあるがコーティングされ、被処理材料の硬度が上がると共に、本処理においてコーティング材料の付着を良くすることができ、その相乗効果により、被処理材の表面が脱炭し、僅かに荒い面になることにより、コーティングが行い易くなる。
【0025】
本実施の形態の放電表面処理装置は、改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる圧粉体電極2Bと、回転工具1からなる被処理材である金属との間に放電加工用電源18から電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより被処理材である回転工具1の金属表面に改質層を形成する放電表面処理装置において、前記被処理材との間で放電を行う前処理に使用され、かつ、放電によって炭化物が生成され、その炭化物が高硬度の材料を含むTi電極2Aを保持する前処理用電極保持機構4Aと、前記被処理材の金属表面に改質層を形成する本処理で使用する圧粉体電極2Bを保持する本処理用電極保持機構4Bとを具備するものである。
【0026】
したがって、前処理に使用する電極は、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)等の高硬度な炭化物を生成する材料であるから、加工液10中で放電加工を行うと加工液10中の成分である炭素と反応し、炭化物を生成する。これらの金属の炭化物は、安定しており、かつ、硬度が高いので改質層を強靭なものにすることができる。また、前処理の際の放電によって電極材料の炭化物が生成され、これが被処理材に僅かではあるがコーティングされ、本処理においてコーティング材料の付着を良くすることができる。そして、回転工具1のような被処理材の表面は、脱炭し、僅かに荒い面になり、コーティングが行い易くなる。更に、本処理において金属の水素化物をベースにした圧粉体電極2Bを使用することによって、数百度の温度で分解して水素を放出し、その水素が被処理材の表面をクリーニングする。また、金属の水素化物をベースにした電極は放電の熱で容易に崩れるため、コーティングのスピードを速くすることができる。
更に、Ti電極2Aを保持する前処理用電極保持機構4Aと、圧粉体電極2Bを保持する本処理用電極保持機構4Bとを有することにより、加工液10中の放電加工による前処理及び本処理を加工液10を排出することなく連続でき、その作業性を良くすることができる。
【0027】
実施の形態2.
図3は本発明の第二の実施の形態の放電表面処理装置の全体の構成を示す構成図である。なお、図中、第一の実施の形態と同一符号及び記号は第一の実施の形態の構成部分と同一または相当する構成部分を示すものであるから、ここでは重複する説明を省略し、相違点のみ説明する。
図において、2はTiH2(水素化チタン)系の圧粉体電極、1はエンドミル等の回転工具、4は回転工具1を保持し、かつ、制御回路15の指令により回転を与える電極保持機構である。
【0028】
次に、本実施の形態の放電表面処理装置の動作について説明する。
加工液10中においてTiH2系の圧粉体電極2と回転工具1の間に放電加工用電源18によりパルス状の放電を発生させる。放電加工用電源18は通常の放電加工用の電源が使用できる。放電の条件、即ち、加工条件は、例えば、TiH2系の圧粉体電極2が負極性で、コンデンサ放電等の比較的放電エネルギーの小さな条件がよい。これにより第一実施の形態の前処理と同様の効果を回転工具1に与えることができる。この前処理を行った後、同一の電極であるTiH2系の圧粉体電極2と回転工具1との間に放電を発生させ、本処理を行う。
ただし、Ti電極2Aで行う場合と異なり、TiH2系の圧粉体電極2の場合には、前処理の面がポーラス状になるので、Ti電極2Aで行う場合より若干特性が落ちる。しかし、同一のTiH2系の圧粉体電極2で、前処理及び本処理と行える効果がある。
【0029】
本実施の形態の形態では、改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる圧粉体電極2と、回転工具1からなる被処理材である金属との間に放電加工用電源18から電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより被処理材である回転工具1の金属表面に改質層を形成する放電表面処理方法において、前記放電表面処理の前に予め行う放電、即ち、前処理に使用する前処理電極をTiH2系の圧粉体電極2とし、回転工具1からなる被処理材の表面に改質層を形成する本処理に使用する電極と同一にしたものである。
この種の実施の形態では、前処理で放電加工用電源18からTiH2系の圧粉体電極2が負極性の比較的放電エネルギーの小さな条件で処理し、その後、放電エネルギーを大きくし、同一の電極であるTiH2系の圧粉体電極2と回転工具1との間に放電を発生させることにより本処理を行うものであるから、同一のTiH2系の圧粉体電極2で、前処理及び本処理と行うことができ、電極を交換することなく放電エネルギーの制御のみで、前処理の際の放電によって電極材料の炭化物が生成され、これが被処理材に僅かではあるがコーティングされ、被処理材料の硬度が上がると共に、本処理におけるコーティング材料の付着を良くすることができ、その相乗効果により、被処理材の表面が脱炭し、僅かに荒い面になることにより、コーティングが行い易くなる。故に、被処理材の材質を問うことなく、金属表面に良質な硬質表面処理層を形成することができる。
【0030】
なお、第一の実施の形態の放電表面処理装置は、前記被処理材である回転工具1の金属表面に改質層を形成する本処理の前に、予め、前記改質層を形成する本処理と異なる電極材料を用いて放電を発生させる前処理を行うものであるが、第二の実施の形態の放電表面処理装置は、電気条件を前記改質層を形成する本処理と異なる条件に設定して放電を発生させる前処理を行うものである。
したがって、本実施の形態の放電表面処理装置は、改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる圧粉体電極2と、回転工具1からなる被処理材である金属との間に放電加工用電源18から電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより被処理材である回転工具1の金属表面に改質層を形成する放電表面処理方法において、前記被処理材である回転工具1の金属表面に改質層を形成する本処理の前に、予め、電極材料、電気条件のうちの1つ以上を、前記改質層を形成する本処理と異なる条件に設定して放電を発生させる前処理を行う方法として捕えることができる。
故に、前処理に使用する電極は、高硬度な炭化物を生成する材料であるから、加工液10中で放電加工を行うと加工液10中の成分である炭素と反応し、炭化物を生成する。これらの金属の炭化物は、安定しており、かつ、硬度が高いので改質層を強靭なものにすることができる。また、前処理の際の放電によって電極材料の炭化物が生成され、これが被処理材に僅かではあるがコーティングされ、本処理においてコーティング材料の付着を良くすることができる。そして、回転工具1のような被処理材の表面は、脱炭し、僅かに荒い面になり、コーティングが行い易くなる。更に、本処理において金属の水素化物をベースにした圧粉体電極2を使用することによって、数百度の温度で分解して水素を放出し、その水素が被処理材の表面をクリーニングする。また、金属の水素化物をベースにした電極は放電の熱で容易に崩れるため、コーティングのスピードを速くすることができる。
【0031】
実施の形態3.
図4は本発明の第三の実施の形態の放電表面処理装置の要部の構成を示す構成図で、(a)は要部正面図及び(b)は要部平面図である。なお、図中、第一の実施の形態と同一符号及び記号は第一の実施の形態の構成部分と同一または相当する構成部分を示すものであるから、ここでは重複する説明を省略し、相違点のみ説明する。
図において、1は表面処理を施すエンドミルやドリル等の回転工具、20Bは改質層を形成する成分、例えば、WC−Co(タングステンカーバイド−コバルト)からなる混合圧粉体で成形した圧粉体電極で、改質材料或いは改質材料の元となる材料からなる電極であり、一次加工を行うものである。20Aは前処理を行うTi電極、20CはCu電極で、それほど消耗しない電極であればよい。Cu電極20Cは回転工具1からなる被処理材の表面に堆積された被覆層に堆積再溶融加工、即ち、二次加工を行うものである。
また、40Bは圧粉体電極20Bを保持する一次加工用電極保持機構で、回転工具1と圧粉体電極20BとをZ軸方向に相対移動させるものである。40AはTi電極20Aを保持する前処理用電極保持機構で、回転工具1とTi電極20AとをZ軸方向に相対移動させるものである。40CはCu電極20Cを保持する二次加工用電極保持機構で、回転工具1とCu電極20CとをZ軸方向に相対移動させるものである。
【0032】
次に、本実施の形態の放電表面処理装置による表面処理について詳述する。
まず、前処理においては、加工液10中において、Ti電極20Aと回転工具1の間に放電加工用電源18によりパルス状の放電を発生させる。放電の加工条件は、例えば、Ti電極20Aを負極性とし、コンデンサ放電等の比較的放電エネルギーの小さな条件が好適である。この前処理においては、Ti電極20Aを用いて比較的小さなエネルギーの放電を発生させて表面処理を行う。この前処理により、回転工具1の表面は僅かに面が荒れる。また、回転工具1が超硬合金の場合には、超硬合金中のWC(タングステンカーバイド)が脱炭された状態になる。
【0033】
本実施の形態のTi電極20A以外にも、前述のV(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)等の材料からなる電極で前処理を行っても、前処理の際の放電によって電極材料の炭化物が生成され、これが被処理材である回転工具1に僅かではあるがコーティングされる。この前処理により、回転工具1の硬度が上がると共に、本処理においてコーティング材料の付着性を良くすることができる。また、回転工具1の表面は、脱炭し、僅かに荒い面になり、コーティングが行い易くなる。
【0034】
前処理を行った後、WC−Coからなる圧粉体電極20Bを用いて、加工液10中で回転工具1と圧粉体電極20Bとの間に放電を発生させ、回転工具1の表面にWC−Coを堆積させる一次加工を行う。次いで、Cu電極20Cのように、それほど消耗しない電極によって回転工具1の表面に堆積されたWC−Coに堆積再溶融加工、即ち、二次加工を行う。これによって、回転工具1の表面に堆積されたWC−Coの層を硬く、しかも、密着度を良くすることができる。
【0035】
本実施の形態の放電表面処理装置では、改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる圧粉体電極20Bと、回転工具1からなる被処理材である金属との間に放電加工用電源18から電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより被処理材である回転工具1の金属表面に改質層を形成する放電表面処理装置において、被処理材としての回転工具1との間で放電を行う前処理に使用され、かつ、放電によって炭化物が生成され、その炭化物が高硬度の材料を含むTi電極20Aを保持する前処理用電極保持機構40Aと、被処理材としての回転工具1の金属表面に改質層を形成する堆積加工で使用する圧粉体電極20Bを保持する一次加工用電極保持機構40Bと、被処理材としての回転工具1の金属表面に堆積された改質層に堆積再溶融加工を行うCu電極20Cを保持する二次加工用電極保持機構40Cとを具備するものである。
【0036】
したがって、前処理に使用する電極は、高硬度な炭化物を生成する材料であるから、加工液10中で放電加工を行うと加工液10中の成分である炭素と反応し、炭化物を生成する。これらの金属の炭化物は、安定しており、かつ、硬度が高いので改質層を強靭なものにすることができる。また、前処理の際の放電によって電極材料の炭化物が生成され、これが被処理材に僅かではあるがコーティングされ、本処理においてコーティング材料の付着を良くすることができる。そして、回転工具1の表面は、脱炭し、僅かに荒い面になり、コーティングが行い易くなる。更に、本処理において一次加工及び二次加工により、所望の金属材料を被処理材の表面に改質層として形成でき、しかも、これによって、回転工具1の表面に堆積された改質層を硬く、しかも、密着度を良くすることができる。
更に、Ti電極20Aを保持する前処理用電極保持機構40Aと、圧粉体電極20Bを保持する一次加工用電極保持機構40Bと、Cu電極20Cを保持する二次加工用電極保持機構40Cとを有することにより、加工液10中の放電加工による前処理及び本処理を加工液10を排出することなく連続でき、その作業性を良くすることができる。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の放電表面処理方法は、改質材料の元となる金属の水素化物の粉体を含む材料で形成した電極と、被処理材である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより前記被処理材である金属表面に改質層を形成する場合、前記被処理材の表面に改質層を形成する本処理の前に、予め、電極材料、電気条件のうちの1つ以上を、前記改質層を形成する本処理と異なる条件に設定して放電を発生させ、被処理材表面を脱炭し、面粗さを粗くする前処理を行うものである。
したがって、前記被処理材の表面に改質層を形成する本処理の前に、前処理の際の放電によって、被処理材の表面は脱炭し、僅かに荒い面になり、コーティングが行い易くなり、本処理におけるコーティング材料の付着を良くすることができる。また、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず金属表面に良好な硬質層を形成することができる。故に、被処理材の材質を問うことなく、金属表面に良質な硬質表面処理層を形成することができる。
また、改質材料の元となる金属の水素化物の粉体を含む材料で形成した電極は、放電の熱で容易に崩れるため、コーティングのスピードが速くなる。したがって、改質材料の元 となる金属の水素化物の粉体を含む材料で形成した圧粉体電極としたものでは、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず良好な改質層をすばやく均一に金属表面形成することができる。また、金属の水素化物は一般的に不安定で、数百度の温度で分解して水素を放出するから、金属の水素化物をベースにした電極で放電を行うと分解した水素が被処理材としての回転工具の表面をクリーニングすることができる。
【0038】
請求項2の放電表面処理方法は、改質材料の元となる金属の水素化物の粉体を含む材料で形成した電極と、被処理材である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより前記被処理材である金属表面に改質層を形成する放電表面処理方法において、前記被処理材の表面に改質層を形成する本処理の前に、予め、電極材料、電気条件のうちの1つ以上を、前記改質層を形成する本処理と異なる条件に設定して放電を発生させ、被処理材表面に炭化物を生成させる前処理を行うものである。
したがって、前記被処理材の表面に改質層を形成する本処理を行う前の前処理の際の放電によって、電極材料の炭化物が生成され、これが被処理材にコーティングされる。この前処理により、被処理材の硬度が上がると共に、本処理においてコーティング材料の付着を良くすることができる。また、被処理材の表面は、脱炭し、僅かに荒い面になり、コーティングが行い易くなる。故に、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず良好な改質層をすばやく均一に金属表面に形成することができるという作用効果に帰結します。
また、改質材料の元となる金属の水素化物の粉体を含む材料で形成した電極は、放電の熱で容易に崩れるため、コーティングのスピードが速くなる。したがって、改質材料の元となる金属の水素化物の粉体を含む材料で形成した圧粉体電極としたものでは、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず良好な改質層をすばやく均一に金属表面形成することができる。また、金属の水素化物は一般的に不安定で、数百度の温度で分解して水素を放出するから、金属の水素化物をベースにした電極で放電を行うと分解した水素が被処理材としての回転工具の表面をクリーニングすることができる。
【0039】
請求項3の放電表面処理方法は、請求項1または請求項2に記載の前記放電表面処理の前に予め行う放電に使用する前処理電極を、放電によって炭化物が生成され、その炭化物が高硬度の材料を含む材料としたものであるから、請求項1または請求項2の効果に加えて、前処理の際の放電によって電極材料の炭化物が生成され、これが被処理材に僅かではあるがコーティングされる。この前処理により、被処理材の硬度が上がると共に、被処理材の表面は、脱炭し、僅かに荒い面になり、本処理におけるコーティング材料の付着を良くすることができる。故に、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず、硬度が高く密着力のよい改質層を金属表面に形成することができる。
【0040】
請求項の放電表面処理方法は、請求項1乃至請求項の何れか1つに記載の前記放電表面処理の前に予め行う放電に使用する前処理電極を、前記被処理材の表面に改質層を形成する本処理に使用する電極と同一にしたものであるから、請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の効果に加えて、前処理で放電加工用電源から前処理電極を比較的放電エネルギーの小さな条件で処理し、その後、放電エネルギーを大きくし、同一の電極と前記被処理材との間に放電を発生させることにより本処理を行うものであるから、同一の電極で前処理及び本処理と行うことができ、電極を交換することなく放電エネルギーの制御のみで、前処理の際の放電によって電極材料の炭化物が生成され、これが被処理材に僅かではあるがコーティングされ、被処理材料の硬度が上がると共に、本処理におけるコーティング材料の付着を良くすることができ、その相乗効果により、被処理材の表面が脱炭し、僅かに荒い面になり、コーティングが行い易くなる。故に、被処理材の材質を問うことなく、金属表面に良質な硬質表面処理層を形成することができる。
【0041】
請求項の放電表面処理方法は、請求項1乃至請求項の何れか1つに記載の前記被処理材の表面に改質層を形成する本処理を、前記被処理材である金属表面に改質層を形成する堆積加工を行う一次加工と、被処理材の表面に堆積された改質層に堆積再溶融加工を行う二次加工とからなるものであるから、請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の効果に加えて、本処理において一次加工及び二次加工により、所望の金属材料を被処理材の表面に改質層として形成でき、しかも、これによって、被処理材の表面に堆積された改質層を硬く、しかも、密着度を良くすることができる。
【0042】
請求項の放電表面処理装置は、改質材料の元となる金属の水素化物の粉体を含む材料で形成した電極と、被処理材である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより前記被処理材である金属表面に改質層を形成する放電表面処理装置において、前記被処理材との間で放電を行う前処理に使用され、かつ、放電によって炭化物が生成され、その炭化物が高硬度の材料を含む電極材料を保持する前処理用電極保持機構と、前記被処理材の金属表面に改質層を形成する本処理で使用する本処理用電極保持機構とを具備するものである。
したがって、前処理に使用する電極は、高硬度な炭化物を生成する材料であるから、加工液中で放電加工を行うと加工液中の成分である炭素と反応し、炭化物を生成し、これらの金属の炭化物は安定しており、かつ、硬度が高いので改質層を強靭なものにすることができる。また、前処理の際の放電によって電極材料の炭化物が生成され、これが被処理材に僅かではあるがコーティングされ、本処理においてコーティング材料の付着を良くすることができる。更に、前処理で使用される放電によって炭化物が生成され、その炭化物が高硬度の材料を含む電極材料を保持する前処理用電極保持機構と、改質層を形成する本処理で使用する本処理用電極保持機構とを有することにより、加工液中の放電加工による前処理及び本処理を加工液を排出することなく連続でき、その作業性を良くすることができる。故に、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず金属表面に良好な硬質層を形成することができる。
また、改質材料の元となる金属の水素化物の粉体を含む材料で形成した電極は、放電の熱で容易に崩れるため、コーティングのスピードが速くなる。したがって、改質材料の元となる金属の水素化物の粉体を含む材料で形成した圧粉体電極としたものでは、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず良好な改質層をすばやく均一に金属表面形成することができる。また、金属の水素化物は一般的に不安定で、数百度の温度で分解して水素を放出するから、金属の水素化物をベースにした電極で放電を行うと分解した水素が被処理材としての回転工具の表面をクリーニングすることができる。
【0043】
請求項の放電表面処理装置は、改質材料の元となる金属の水素化物の粉体を含む材料で形成した電極と、被処理材である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより前記被処理材である金属表面に改質層を形成する放電表面処理装置において、前記被処理材との間で放電を行う前処理に使用され、かつ、放電によって炭化物が生成され、その炭化物が高硬度の材料を含む電極を保持する前処理用電極保持機構と、前記被処理材の金属表面に改質層を形成する堆積加工で使用する電極を保持する一次加工用電極保持機構と、前記被処理材の金属表面に堆積された改質層に堆積再溶融加工を行う電極を保持する二次加工用電極保持機構とを具備するものである。
したがって、前処理に使用する電極は、高硬度な炭化物を生成する材料であるから、加工液中で放電加工を行うと加工液中の成分である炭素と反応し、炭化物を生成し、これらの金属の炭化物は安定しており、かつ、硬度が高いので改質層を強靭なものにすることができる。また、前処理の際の放電によって電極材料の炭化物が生成され、これが被処理材に僅かではあるがコーティングされ、本処理においてコーティング材料の付着を良くすることができる。そして、被処理材の表面は、脱炭し、僅かに荒い面になり、コーティングが行い易くなる。また、本処理において一次加工及び二次加工により、所望の金属材料を被処理材の表面に改質層として形成でき、しかも、これによって、被処理材の表面に堆積された改質層を硬く、しかも、密着度を良くすることができる。更に、被処理材との間で放電を行う前処理に使用され、かつ、放電によって炭化物が生成され、その炭化物が高硬度の材料を含む電極を保持する前処理用電極保持機構、改質層を形成する堆積加工で使用する電極を保持する一次加工用電極保持機構、堆積された改質層に堆積再溶融加工を行う電極を保持する二次加工用電極保持機構とを有することにより、加工液中の放電加工による前処理及び本処理を加工液を排出することなく連続でき、その作業性を良くすることができる。故に、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず金属表面に良好な硬質層を形成することができる。
また、改質材料の元となる金属の水素化物の粉体を含む材料で形成した電極は、放電の熱で容易に崩れるため、コーティングのスピードが速くなる。したがって、改質材料の元となる金属の水素化物の粉体を含む材料で形成した圧粉体電極としたものでは、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず良好な改質層をすばやく均一に金属表面形成することができる。また、金属の水素化物は一般的に不安定で、数百度の温度で分解して水素を放出するから、金属の水素化物をベースにした電極で放電を行うと分解した水素が被処理材としての回転工具の表面をクリーニングすることができる。
【0044】
請求項の放電表面処理装置は、請求項または請求項に記載の前記放電表面処理の前に予め行う放電に使用する前処理電極を、放電によって炭化物が生成され、その炭化物が高硬度の材料を含む材料としたものであるから、請求項または請求項に記載の効果に加えて、前処理の際の放電によって電極材料の炭化物が生成され、これが被処理材に僅かではあるがコーティングされる。この前処理により、被処理材の硬度が上がると共に、被処理材の表面は、脱炭し、僅かに荒い面になり、本処理におけるコーティング材料の付着を良くすることができる。故に、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず、硬度が高く密着力のよい改質層を金属表面に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の第一の実施の形態の放電表面処理装置の全体の構成を示す構成図である。
【図2】 図2は本発明の第一の実施の形態の放電表面処理装置によって前処理を行った場合の寿命関係を示す表図である。
【図3】 図3は本発明の第二の実施の形態の放電表面処理装置の全体の構成を示す構成図である。
【図4】 図4は本発明の第三の実施の形態の放電表面処理装置の要部の構成を示す構成図で、(a)は要部正面図及び(b)は要部平面図である。
【図5】 図5は従来の被処理材の金属表面に改質層を形成する放電表面処理方法の説明図である。
【符号の説明】
1 回転工具、
2 TiH2 (水素化チタン)系の圧粉体電極、
2A Ti電極、
2B 圧粉体電極、
4 電極保持機構、
4A 前処理用電極保持機構、
4B 本処理用電極保持機構、
18 放電加工用電源、
20A Ti電極、
20B 圧粉体電極、
20C Cu電極、
40A 前処理用電極保持機構、
40B 一次加工用電極保持機構、
40C 二次加工用電極保持機構

Claims (8)

  1. 改質材料の元となる金属の水素化物の粉体を含む材料で形成した電極と、被処理材である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより前記被処理材である金属表面に改質層を形成する放電表面処理方法において、
    予め、電極材料、電気条件のうちの1つ以上を、前記改質層を形成する本処理と異なる条件に設定して放電を発生させ、被処理材表面を脱炭し、面粗さを粗くする前処理と、放電によって前記被処理材の表面に改質層を形成する本処理とを行うことを特徴とする放電表面処理方法。
  2. 改質材料の元となる金属の水素化物の粉体を含む材料で形成した電極と、被処理材である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより前記被処理材である金属表面に改質層を形成する放電表面処理方法において、
    予め、電極材料、電気条件のうちの1つ以上を、前記改質層を形成する本処理と異なる条件に設定して放電を発生させ、被処理材表面に炭化物を生成させる前処理と、放電によって前記被処理材の表面に改質層を形成する本処理とを行うことを特徴とする放電表面処理方法。
  3. 前記放電表面処理の前に予め行う放電に使用する前処理電極は、放電によって炭化物が生成され、その炭化物が高硬度の材料を含む材料としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放電表面処理方法。
  4. 前記放電表面処理の前に予め行う放電に使用する前処理電極は、前記被処理材の表面に改質層を形成する本処理に使用する電極と同一にしたことを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1つに記載の放電表面処理方法。
  5. 前記被処理材の表面に改質層を形成する本処理は、前記被処理材である金属表面に改質層を形成する堆積加工を行う一次加工、被処理材の表面に堆積された改質層に堆積再溶融加工を行う二次加工からなることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1つに記載の放電表面処理方法。
  6. 改質材料の元となる金属の水素化物の粉体を含む材料で形成した電極と、被処理材である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより前記被処理材である金属表面に改質層を形成する放電表面処理装置において、
    前記被処理材との間で放電を行う前処理に使用され、かつ、放電によって炭化物が生成され、その炭化物が高硬度の材料を含む電極材料を保持する前処理用電極保持機構と、
    前記被処理材の金属表面に改質層を形成する本処理で使用する本処理用電極保持機構と
    を具備することを特徴とする放電表面処理装置。
  7. 改質材料の元となる金属の水素化物の粉体を含む材料で形成した電極と、被処理材である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより前記被処理材である金属表面に改質層を形成する放電表面処理装置において、
    前記被処理材との間で放電を行う前処理に使用され、かつ、放電によって炭化物が生成され、その炭化物が高硬度の材料を含む電極を保持する前処理用電極保持機構と、
    前記被処理材の金属表面に改質層を形成する堆積加工で使用する電極を保持する一次加工用電極保持機構と、
    前記被処理材の金属表面に堆積された改質層に堆積再溶融加工を行う電極を保持する二次加工用電極保持機構と
    を具備することを特徴とする放電表面処理装置。
  8. 前記放電表面処理の前に予め行う放電に使用する前処理電極は、放電によって炭化物が生成され、その炭化物が高硬度の材料を含む材料としたことを特徴とする請求項または請求項に記載の放電表面処理装置。
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