JPH10221505A - 導電性反射防止膜 - Google Patents

導電性反射防止膜

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JPH10221505A
JPH10221505A JP9020242A JP2024297A JPH10221505A JP H10221505 A JPH10221505 A JP H10221505A JP 9020242 A JP9020242 A JP 9020242A JP 2024297 A JP2024297 A JP 2024297A JP H10221505 A JPH10221505 A JP H10221505A
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JP
Japan
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oxide
thin film
film
silver
transparent
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JP9020242A
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English (en)
Inventor
Kenzo Fukuyoshi
健蔵 福吉
Akihiko Furuya
明彦 古屋
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Toppan Inc
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Toppan Printing Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】薄膜で導電性と可視光線透過率が高く、かつ可
視光反射率も低く、しかも耐湿性が強く、経時安定性に
優れた導電性反射防止膜を提供する。 【解決手段】銀系薄膜と、銀系薄膜を挟持する透明酸化
物薄膜からなる3層構成の導電性反射防止膜において、
透明酸化物薄膜が、酸化スズ、酸化セリウム、および酸
化ガリウムを含有する3元系の混合酸化物から成り、か
つ、銀系薄膜に 1.5at%(原子パーセント)以上の金元
素を含有せしめたことを特徴とする導電性反射防止膜。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶ディスプレイ
装置の表示画面に設けられた偏光フィルムまたは光制御
膜などの上に好適に適用される導電性反射防止膜に係わ
り、特に、可視光の反射防止性能と外部電磁波の遮断性
能とに優れた導電性反射防止膜の改良に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】液晶ディスプレイ装置は、画素毎に電圧
の印加を行える電極が配置された一対の電極板と、これ
ら電極板間に封入された液晶物質とでその主要部が構成
され、上記両電極間に電圧を印加することにより液晶物
質の配向状態を画素毎に変化させてこの液晶物質を透過
する光の偏光面を制御すると共に、偏光フィルムにより
その透過、不透過を制御して画面表示を行うものであ
る。なお、表示画面表面には一般に上記偏光フィルム
や、表示光の位相を補償する位相差フィルム等が設けら
れており、これら偏光フィルムの表面には、外部から飛
来する電磁波を遮断するため、酸化インジウムおよび酸
化スズの混合物からなる薄膜(以下、ITO薄膜とい
う)から構成される透明電磁波シールド膜が設けられて
いることがある。
【0003】ところで、液晶表示装置は室内、屋外に限
らず明るいところで使用されることが多く、外光が液晶
表示装置の表示画面に入射するといえる。そして、この
入射光の一部は、上記偏光フィルム等やその表面に設け
られたITO薄膜により正反射され、この正反射光が光
源の虚像を表示画面中に再生したり、あるいは上記正反
射光が表示光に混合してその表示品質を低下させる場合
がある。
【0004】この様な欠点を防止し、表示画面中の光像
の虚像の再生を防止するため、上記偏光フィルム等の表
面に凹凸を設け、入射光を散乱させる手段が提案されて
いる。しかしながら、このような手段によれば光源の虚
像の再生を防止することは可能であるが、その光反射率
を低下させることができず、反射光が表示光に混合して
表示品質を低下させることを防止することができない。
【0005】このため、近年、上記偏光フィルム等の光
反射率自体を低下させることにより、表示光に混合され
る上記反射光を低減させて、表示画面の品質を向上させ
る技術が求められるようになった。特に反射型液晶ディ
スプレイ装置においては、上記外光等を液晶ディスプレ
イ装置に入射させ、装置背面に設けられた光反射材料で
反射させて表示光とするため、この表示光の強度を大き
くすることができず、強い反射光の存在がそのまま表示
品質に大きく影響することから、光反射率として 0.5%
以下という極めて低いものが求められている。
【0006】ところで、従来、優れた光反射防止性能を
有する反射防止膜としては、例えば高屈折率のTiO2
(酸化チタン)薄膜と低屈折率のSiO2 (酸化ケイ
素)薄膜とを、交互に、合計層数4〜12層に達するまで
積層して構成される無機多層反射防止膜が知られてお
り、この無機多層反射防止膜は極めて優れた反射防止性
能を有し、光反射率を 0.5%以下に抑えることも可能で
ある。
【0007】他方、透明な電磁波シールド膜として、銀
薄膜の表裏にITO薄膜を積層して構成される多層薄膜
が提案されており(特開昭63−173395号公報)、優れた
導電性、電磁波遮断性能を有している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記無
機多層反射防止膜においては、これを構成するSiO2
薄膜やTiO2 薄膜は導電性が無いため、外部から飛来
する電磁波を遮断することができず、これら外部電磁波
の侵入により液晶表示装置が誤動作を起こす恐れがある
という問題があった。
【0009】加えて、特開昭63−173395号公報に提案さ
れている、〔ITO/Ag/ITO〕の構成は、この光
学特性上の問題点ばかりではなく、湿度に弱く、室内放
置で簡単にシミが発生し、この3層成分が水分存在下で
破壊されてしまうという重欠点がある。銀薄膜を挟持す
る構成の酸化物は、ITOの他、酸化インジウム単体、
酸化スズ単体、酸化亜鉛などが選ばれ、これらにより熱
線反射膜用途への試みがなされている。しかし、いずれ
もITOと同様、耐湿性に問題があるといえる。
【0010】本発明は、以上のような問題点に着目して
なされたもので、その課題とするところは、薄膜で導電
性と可視光線透過率が高く、かつ可視光反射率も低く、
しかも耐湿性が強く、経時安定性に優れた導電性反射防
止膜を提供するところにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】3層構成の導電性反射防
止膜において、酸化インジウムなどの酸化物薄膜との結
晶粒界では銀が移動しやすく、この銀と水分の存在で酸
化物との反応が除々に進み、構成を破壊する傾向にあ
る。同時に銀の凝集が進行することが観察された。この
傾向は、銀と固溶域の広い金属の金属酸化物の場合が顕
著であることを見い出した。酸化ガリウム、酸化インジ
ウム、酸化スズ、酸化亜鉛単体でも3層構成の導電性反
射防止膜において耐湿性が充分ではない。
【0012】しかし、本発明者らは、酸化スズに、以下
に示すような金属の酸化物を 5%以上、好ましくは10%
以上添加することにより、透明酸化物薄膜は非晶質とな
るため結晶粒界が無くなり、あるいは極めて微細な結晶
の膜となり、また銀の粒界移動が少なくなり、3層構成
の導電性反射防止膜の耐湿性を大きく改善し得る事を発
見した。添加する金属には、チタン、クロム、ジルコニ
ウム、ハフニウム、ニオブ、タンタルなど高融点の遷移
金属、セリウムなどのランタン系金属、ケイ素、ビスマ
ス、ゲルマニウムなどの半金属がある。これら金属は、
銀合金に対する固溶域が極めて小さいか、固溶域のない
金属である。これらの酸化物の添加により耐湿性が向上
する。ただし、これら銀と固溶しにくい金属の酸化物
は、銀との密着力が不十分なため、銀と固溶しやすい金
属の酸化物と混合して、3層構成の導電性反射防止膜に
用いる透明酸化物薄膜とする必要がある。また、耐湿性
の観点から、酸化スズ混合酸化物に酸化ガリウムを添加
した非晶質の透明酸化物を用いることは、さらに好まし
い。
【0013】上記金属酸化物の中で、チタン、ジルコニ
ウム、ハフニウム、ニオブ、タンタルなどは、これらを
混合することによりスパッタレート(成膜速度)が低下
する問題がある。ケイ素は軽元素であり、屈折率が低い
ため、銀系薄膜を挟持する3層構成の酸化物として用い
るには、製造面で最適光学特性を得ることが比較的難し
い。
【0014】化学的に安定で、スパッタレートがとれる
酸化物として、酸化スズ、酸化セリウム、酸化ガリウム
があげられる。ただし、酸化スズ─酸化ガリウムの2元
系の薄膜は、可視域短波長側の消衰係数が大きく、特に
光の波長 500nm以下の短波長の透過率が悪くなるという
問題がある。
【0015】酸化スズ─酸化セリウムの2元系では、こ
の透過率の問題はないが、耐湿性がやや不十分である。
本発明者らは、酸化スズ─酸化ガリウム─酸化セリウム
の3元系とすると、2元系で抱えていた問題が無くなる
ことを見いだした。
【0016】銀は、蒸着やスパッタリングなどの真空時
にかかる熱やプラズマの影響で凝集しやすい。また、マ
イグレーション等で移動しやすく、銀を用いた電子デバ
イスの信頼性を損ないやすい。これを避けるために、
1.5at%(原子パーセント)以上の金元素を銀に添加す
ることが有効である。しかし、この金元素の添加量が多
くなると、3層膜の光透過率を減少させる傾向にあり、
さらに高価であるため、コストの点で少量添加が好まし
いといえ、例えば10at%以下が好ましいといえる。
【0017】銀薄膜への金元素の添加は、3層膜の導電
性、光透過率を低下させることなく、移動しやすい銀の
動きを抑制するため、3層膜の耐湿性向上に有効であ
る。すなわち、請求項1の発明となる。
【0018】透明酸化物薄膜の屈折率を変化させた場合
の、波長 550nmの可視光に対する3層膜の光反射率およ
び光透過率のシミュレーション結果を、以下の(表1)
に示す。なお、このシミュレーションにおいては、光反
射率が最低となるように銀系薄膜および透明酸化物薄膜
の厚みを調整した。
【0019】
【表1】
【0020】上記シミュレーション結果では、透明酸化
物薄膜を低屈折率(例えば、屈折率1.5〜 1.8)として
も、低い反射率を得ることができる。しかし、この場
合、(表1)に示すように、透明酸化物薄膜の膜厚を厚
くする必要があり、生産面で好ましくない。生産を考え
ると、透明酸化物薄膜の屈折率を高く(例えば、屈折率
1.9〜 2.2)して、薄い膜厚で形成した方が良い。
【0021】高屈折率の酸化物である酸化セリウムを、
透明酸化物薄膜への混合酸化物として添加することは、
この点で好ましい。また、前記したように、酸化スズ、
あるいは酸化スズ─酸化ガリウムの系で特有の短波長側
の消衰係数を、酸化セリウム添加により小さくする特異
な効果がある。この効果は、セリウムの原子パーセント
(酸素元素をカウントせず、金属元素のみをカウント)
にて 3at%から次第に顕著となってくる。
【0022】しかし、セリウム元素換算で40at%を超え
て酸化セリウムを添加すると、スパッタリングに用いる
ターゲットが割れやすくなるものである。また、混合酸
化物の屈折率が高くなりすぎるものであり、上記の(表
1)に示したように、屈折率が高すぎると銀系薄膜の膜
厚を厚くする傾向となり、透過率が低下してしまう。こ
のため、セリウム元素の添加の割合は、 3〜40at%の範
囲内が良いといえる。
【0023】従って、請求項2に係わる発明は、透明酸
化物薄膜の酸化セリウムの含有割合が、金属元素のみの
原子パーセントにて、 3〜40at%の範囲にあることを特
徴とする。
【0024】室温付近(無加熱)の条件で、3層構成の
導電性反射防止膜を成膜する場合、酸化ガリウムの添加
は、耐湿性向上に効果がある。酸化ガリウムの添加量
は、ガリウム元素のみの原子パーセント(酸素元素をカ
ウントしない)にて、 3at%から効果がある。しかし、
酸化ガリウムの量を多くしすぎると、逆に耐湿性が低下
しはじめる。特に、ガリウム元素の割合で50at%を超え
るレベルで酸化ガリウムを添加したものでは、経熱後
(例えば、 200℃にて熱処理後)の耐湿性低下が見ら
れ、50at%を超える添加量付近からこうした傾向が強く
なってくる。
【0025】従って、請求項3に係わる発明は、透明酸
化物薄膜の酸化ガリウムの含有割合が、金属元素のみの
原子パーセントにて 3〜50at%の範囲にあることを特徴
とする。
【0026】本発明に用いることの可能な基板は、透明
であれば特に限定しない。ここで透明とは必ずしも無色
あるいはクリアである必要はない。例えば、ガラス、プ
ラスチックボード、プラスチックフィルム等が使用でき
る。自動車や飛行機などの窓部材に直接着膜しても良
い。液晶表示装置に用いる偏光フィルム上に形成しても
良いし、プラズマディスプレイパネルやエレクトロルミ
ネッセンス表示装置などの表示パネル面に、直接あるい
は間接的に形成しても良い。また、反射型液晶表示装置
のパネル上に形成されている光制御膜等の膜上に成膜す
ることも可能である。さらに、プラスチックフィルム
が、調光フィルムや回折格子、位相差フィルムあるいは
光散乱性を持つ散乱膜であっても良い。
【0027】外部光源の映り込みを緩和するため、あら
かじめ基板表面に凹凸を形成して、いわゆる防眩(アン
チグレア)効果を出すことも可能である。あるいは、本
発明の導電性反射防止膜を形成した後、微細な白色顔料
を分散させた塗膜を積層させて凹凸を形成し、アンチグ
レア効果を出しても良い。
【0028】また、導電性反射防止膜として、ディスプ
レイ表面に形成する場合、膜表面に付着する油脂や指紋
などの汚れがディスプレイの表示品位を低下させること
が問題となる。こうした汚れ付着を少なくするため、フ
ッ素樹脂、フッ素系アクリル樹脂などの撥水性の塗膜
を、導電性反射防止膜の表面に形成することが好まし
い。撥水性塗膜の膜厚は、光学特性に悪影響を与えない
よう、例えば 0.5μm以下、より好ましくは 0.1μm以
下の可能な限り薄いほうがよい。また、撥水性塗膜の屈
折率は低い方が良い。
【0029】また、上記銀系薄膜と透明酸化物薄膜の成
膜方法は、スパッタリング法、真空蒸着、イオンプレー
ティング法、CVD法、ゾルゲル法等いかなる方法でも
良く、適宜選択されるものである。また、スパッタリン
グ法においては、マグネトロンスパッタリングであって
も良く、さらに、プラズマを発生させる方法が直流であ
っても交流であっても良い。そして、成膜の際、成膜装
置内部の酸素量を制御することにより、透明酸化物薄膜
の屈折率をある程度コントロールすることができる。成
膜時の基板温度は、 180℃以下、ないし室温程度の基板
温度が望ましい。
【0030】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態例につき、以
下に示す図面に基づいて、詳細に説明する。 <実施例1>この実施形態に係わる導電性反射防止膜2
は、図1に示すように、アクリル系ハードコート層11が
施された偏光フィルム10を基材とし、この基材上に順
次、厚さ51nmの透明酸化物薄膜21、厚さ11nmの銀系薄膜
22、および厚さ52nmの透明酸化物薄膜23を積層し、導電
性反射防止膜2とした。
【0031】透明酸化物薄膜21、23の組成は、各々、ス
ズ元素、ガリウム元素、セリウム元素の合計量に対し、
スズ元素80at%、ガリウム元素10at%、セリウム元素10
at%となる量とした。なお、上記組成割合は、酸素元素
をカウントしていない。また、銀系薄膜22は、銀元素94
at%に 6at%の金元素を添加した銀合金を、出発材料と
した。
【0032】上記(実施例1)に係わる3層構成の導電
性反射防止膜2を、温度60℃、湿度95%の高温高湿の条
件下で 300時間保持したが、なんら外観変化は観察され
ず、反射率の低下も観察されなかった。また、耐アルカ
リ性、耐溶剤性等の耐性も実用レベルであった。
【0033】さらに、(実施例1)に係わる3層構成の
導電性反射防止膜2の面積抵抗を、銀系薄膜22と導通が
とれるよう測定したところ、約15Ω/□と低抵抗であ
り、十分な電磁波シールド性を有していた。
【0034】次いで、上記(実施例1)に係わる3層構
成の導電性反射防止膜2の分光反射率を図2に示す。図
2に示すように、波長 550nm付近の反射率は 0.4%程度
であり、十分な低反射率といえる。また、波長 550nm付
近の透過率も95%前後と高透過であった。このように、
可視域では低反射、高透過率であるが、逆に、2μm以
上の長波長(赤外)領域では、高い反射率であった。
【0035】なお、上記(実施例1)では、基材がプラ
スチックフィルムであるため、アニール処理の際、高温
での熱処理ができなかった。しかし、基材をガラス板に
変えて同じ条件で成膜した導電性反射防止膜に、温度 2
30℃にて1時間加熱するアニール処理を施したところ、
波長 550nm付近の透過率は約98%と高い透過率が得られ
た。また、反射率も、(実施例1)と同じく良好であっ
た。
【0036】<実施例2>酸化スズ単体、および酸化ス
ズの含有量の多い混合酸化物(例えば、金属元素のみの
換算で、スズ80at%─ガリウム20at%)に、酸化セリウ
ムを添加すると、光学定数である消衰係数kの値が小さ
くなり、結果として3層構成の導電性反射防止膜の光学
特性に寄与する。
【0037】当(実施例2)では、この検討例として、
100nmの膜厚にて3種類の異なる組成の混合酸化物をシ
リコンウェハー、もしくは素ガラス上に成膜し、その消
衰係数kを分光エリプソメーターにて測定した。なお、
以下に示すように、3種類の混合酸化物の組成は、金属
元素換算のみの原子パーセント(酸素元素はノーカウン
トとする)にて、 試料 スズ元素80at%、ガリウム元素10at%、セリウ
ム元素10at%、 試料 スズ元素77at%、ガリウム元素20at%、セリウ
ム元素 3at%、 試料 スズ元素80at%、ガリウム元素20at%、とし
た。
【0038】上記試料〜の混合物酸化物のターゲッ
トを用いて、同一条件でスパッタリング成膜し、膜厚 1
00nmの測定試料として分光エリプソメーターにて測定し
たものであり、各試料における、各波長での消衰係数k
の値を以下の(表2)に示す。
【0039】
【表2】
【0040】上記(表2)に示したように、セリウムを
添加しない試料では、各波長での消衰係数が大きく、
特に短波長側での値が大きい。しかし、セリウムを 3at
%添加した試料では消衰係数が小さくなり、セリウム
を10at%添加した試料では更に小さくなった。
【0041】消衰係数が大きいと透過率が低下してしま
い、好ましくない。また、酸化スズ単体でも消衰係数が
大きく、〔酸化スズ/銀系薄膜/酸化スズ〕の3層構成
では本発明のような高透過率を得にくい。
【0042】以上のように、酸化セリウムを添加するこ
とによって、光学定数(k)が、改善されることが確認
できた。
【0043】<実施例3>本発明者らは、酸化スズ─酸
化セリウム─酸化ガリウムの3元系を選択するに先立
ち、種々の混合酸化物の検討を行ったものである。すな
わち、種々の混合酸化物を用い、ガラス基板上に〔混合
酸化物/銀系薄膜/混合酸化物〕の3層構成にて、導電
性反射防止膜を形成したものであり、それぞれの混合酸
化物および銀系薄膜(当実施例では、Au(金)を 1.5
at%含む銀合金)をガラス基板上に積層した後、温度60
℃、湿度95%の雰囲気中に 100時間放置する耐湿試験を
行ったものである。以下の(表3)および(表4)に、
各耐湿試験の結果例を示す。
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】ここで、(表3)中で試料として用いた試
料(1)、および(表4)中で試料として用いた試料
(2)〜(9)の、混合酸化物の組成を以下に記す。な
お、以下の混合酸化物の組成は原子パーセント(at%)
で表しており、金属元素換算のみの原子パーセント(酸
素元素はノーカウントとする)としている。
【0047】試料(1) スズ元素60at%、セリウム元
素20at%、ガリウム元素20at%。 試料(2) 酸化スズ単体。 試料(3) スズ元素80at%、ジルコニウム元素20at
%。 試料(4) スズ元素80at%、インジウム元素20at%。 試料(5) スズ元素80at%、ガリウム元素20at%。 試料(6) スズ元素80at%、アルミニウム元素20at
%。 試料(7) スズ元素80at%、セリウム元素20at%。 試料(8) スズ元素80at%、タンタル元素20at%。 試料(9) スズ元素80at%、ゲルマニウム元素20at
%。 なお、上記いずれの試料においても、混合酸化物にて挟
持する銀系薄膜は、Au(金)を 1.5at%含む銀合金と
している。
【0048】また、耐湿試験の評価は、透過率、反射
率、外観について行ったものであり、このときの評価基
準は、以下のようにしたものである。すなわち、透過率
の評価においては、ガラス基板の透過率を基準として、
透過率がガラス基板の93%以上あった場合を○、93%未
満を×とし、また、反射率の評価は反射率3%以下を
○、3%より大きい反射率は×とした。また、外観評価
においては、目視にてシミ発生等の変化が見られないも
のを○、目視にてシミ発生等の変化があったものを×と
し、特に顕微鏡観察でも外観変化のないものを◎とし
た。
【0049】上記(表3)に示すように、試料(1)は
本発明の導電性反射防止膜の組成であり、本発明の導電
性反射防止膜は、耐湿性試験後もなんら変化無く、きわ
めて良好であった。試料(2)のスズ単体、および試料
(5)の酸化スズ─酸化ガリウムの試料片においては、
耐湿性試験後の外観は良好であったが、前述した(実施
例2)で示したように、大きな消衰係数のため透過率が
良くなかった。試料(7)の酸化スズ─酸化セリウムの
試料片は、透過率が良いものの、耐湿性試験後に、顕微
鏡観察にて微小なシミの発生が観察され、耐湿性に若干
劣るものであった。
【0050】<実施例4>上記(実施例1)と同じく、
図1に示す構成にて、アクリル系ハードコート層11上に
本発明による酸化スズ─酸化セリウム─酸化ガリウムの
3元系混合酸化物を用いて、導電性反射防止膜2を形成
した。ただし、当(実施例4)では、銀系薄膜22には、
銀元素98.5at%に 1.5at%の金元素を添加、銀元素97.0
at%に 3.0at%の金元素を添加、および銀元素94.0at%
に 6.5at%の金元素を添加して構成した3種類の銀合金
を各々用いた。以下の(表5)に、この金の添加量を変
えた導電性反射防止膜の、耐湿性試験の結果を示す。な
お、耐湿性試験は、上述した(実施例3)と同様に行っ
たものであり、評価基準を(表5)中に記している。
【0051】
【表5】
【0052】<比較例1>また、上記(実施例4)との
比較のため、上述した(実施例4)と同様に、アクリル
系ハードコート層11上に酸化スズ─酸化セリウム─酸化
ガリウムの3元系混合酸化物を用いて、導電性反射防止
膜2を形成した。ただし、当(比較例1)においては、
銀系薄膜22には、銀元素 100at%、銀元素99.7at%に
0.3at%の金元素を添加、銀元素99.5at%に 0.5at%の
金元素を添加、および、銀元素99.0at%に 1.0at%の金
元素を添加して構成した4種類の銀合金を各々用い導電
性反射防止膜を形成したものである。(実施例4)と同
様に耐湿性試験を行った結果を、上記の(表4)に合わ
せて記している。
【0053】上記(表4)に示すように、金添加量が
1.5at%を超えると、良好な耐湿性を持つことが確認で
きた。
【0054】さらに、本発明者らは、銀系薄膜への金添
加量の影響について、金添加量を増やして別途シミュレ
ーションを行った。当シミュレーション結果では、金添
加量が増えるに従い、光学定数の屈折率nが、 350nm〜
550nmの領域で増加してくることが分かった。また、導
電性反射防止膜への分光特性には、波長 350nm〜 550nm
における透過率が減少する形で影響することが分かっ
た。例えば、金添加量が20at%付近になると波長 450nm
(青色)の透過率が80%前後となる。すなわち、金の添
加量は、20at%以下が良く、コスト(金は銀の 100倍位
の高価格)を考えると、好ましくは10at%以下が良いと
いえる。
【0055】
【発明の効果】上記請求項1〜3に係わる発明によれ
ば、3層の極めて簡単な構成でありながら、電磁波シー
ルドに必要な導電性と、反射防止に必要な低反射率を確
保しながら、高信頼性の導電性反射防止膜を提供でき
る。
【0056】本発明はさらに、窓ガラス用の熱線反射
膜、太陽電池用の透明電極等に応用でき、さらに、銀を
厚く形成することにより高反射率の光の反射板やミラー
等にも応用できる。また、液晶表示素子では、画素の透
明電極と、あるいは反射電極を兼ねて、TFT等の配線
(例えば、信号線、バスライン等)に用いることもでき
る。
【0057】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の導電性反射防止膜の一実施例を示す断
面図。
【図2】本発明の導電性反射防止膜の反射率の一例を示
すグラフ図。
【符号の説明】
2 導電性反射防止膜 10 偏光フィルム 11 ハードコート層 21 透明酸化物薄膜 22 銀系薄膜 23 透明酸化物薄膜

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】銀系薄膜と、銀系薄膜を挟持する透明酸化
    物薄膜からなる3層構成の導電性反射防止膜において、
    透明酸化物薄膜が、酸化スズ、酸化セリウム、および酸
    化ガリウムを含有する3元系の混合酸化物から成り、か
    つ、銀系薄膜に 1.5at%(原子パーセント)以上の金元
    素を含有せしめたことを特徴とする導電性反射防止膜。
  2. 【請求項2】上記透明酸化物薄膜の酸化セリウムの含有
    割合が、金属元素のみの原子パーセント(酸素元素をカ
    ウントしない)にて、 3〜40at%(原子パーセント)の
    範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の導電性反
    射防止膜。
  3. 【請求項3】上記透明酸化物薄膜の酸化ガリウムの含有
    割合が、金属元素のみの原子パーセント(酸素元素をカ
    ウントしない)にて、 3〜50at%(原子パーセント)の
    範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の
    導電性反射防止膜。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN102610720A (zh) * 2012-03-21 2012-07-25 厦门市三安光电科技有限公司 具有全方位反射镜的发光二极管及其制作方法
WO2023210436A1 (ja) * 2022-04-27 2023-11-02 日東電工株式会社 反射防止フィルム及びその製造方法、並びに画像表示装置
CN117445520A (zh) * 2023-12-26 2024-01-26 成都艾立本科技有限公司 用于libs分析的复合纳米结构及分析方法及用途

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