JPH10219429A - 耐摩耗性及び耐欠損性に優れた硬質皮膜被覆部材 - Google Patents
耐摩耗性及び耐欠損性に優れた硬質皮膜被覆部材Info
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- JPH10219429A JPH10219429A JP2154997A JP2154997A JPH10219429A JP H10219429 A JPH10219429 A JP H10219429A JP 2154997 A JP2154997 A JP 2154997A JP 2154997 A JP2154997 A JP 2154997A JP H10219429 A JPH10219429 A JP H10219429A
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Abstract
部材を提供する。 【解決手段】 異なる硬質皮膜を2層以上被覆した硬質
皮膜被覆部材であって、硬質皮膜被覆面の荷重50gfでの
押し込み硬度が2000kgf/mm2 以上であると共に、該硬度
よりも荷重5gfでの押し込み硬度が100kgf/mm2以上小さ
いことを特徴とするもの、及び、N、C、B、CN、BN、
BC又はCBN をQと表示したとき、硬質皮膜層の中の基材
表面の近傍〔2μm 以内〕に(Ti1-(x+y)Hfx Aly ) Qの
組成〔但し、0<x≦0.8 、0≦y≦0.8 、x+y<
1〕の硬質皮膜層を有し、硬質皮膜被覆層表面の近傍
〔2μm 以内〕に(Ti1-ZAlZ )Qの組成〔但し、0<z
≦0.8 〕の硬質皮膜層を有することを特徴とするもの。
Description
損性に優れた硬質皮膜被覆部材に関する技術分野に属す
る。
工具鋼(ハイス)等の工具や機械部品の耐摩耗性をより
優れたものとすることを目的として、それらの表面に4
a族金属の窒化物や炭化物よりなる硬質皮膜を被覆(コ
ーティング)することが行われている。
覆層が硬いほどよく、超硬合金や高速度工具鋼等よりも
硬度が高いTiN 、TiC 、TiCN、或いは、AlTiN 皮膜をコ
ーティングすることにより耐摩耗性を向上させることが
主流になっている。
め、さらに硬度が高いTi-Hf の複合窒化物等のTi-Hf 系
皮膜を付与する方法が、特開昭55-58364号公報、特開昭
62-207858 号公報、特開平04-17662号公報に開示されて
いる。
物等のTi-Hf 系皮膜は硬度が2500〜3000kgf/mm2 程度と
高く、超硬合金等にコーティングした場合は平坦部の摺
動に限れば耐摩耗性を向上させることができる。
分は、摩耗とともに欠損の問題が生じ、特に硬質皮膜を
付与した場合は、皮膜硬度が高いほど硬質皮膜及び基材
の欠損が顕著になる。
あり、Ti-Hf の複合窒化物等のTi-Hf系皮膜のような硬
度が2500kgf/mm2 以上の皮膜は、硬度が2000kgf/mm2 程
度のTiN やTiC 皮膜よりも靱性が低く、割れやすい。こ
のため、皮膜硬度が高いと、表面にひびが入りやすく、
このひびが起点となって基材に割れが伝搬するため、基
材の欠損が顕著になると考えられる。
性は向上するものの、基材の耐欠損性は悪化してしま
う。又、耐欠損性を向上させるために皮膜表面を軟らか
くすると充分な耐摩耗性を得ることができない。従っ
て、前記従来の硬質皮膜では部材の耐摩耗性と耐欠損性
とを同時に向上させることは困難である。
のであって、その目的は前記従来の硬質皮膜を被覆した
部材での問題点を解消し、耐摩耗性及び耐欠損性に優れ
た硬質皮膜被覆部材、即ち、前記TiN 、TiC 、TiCN、或
いは、AlTiN 皮膜を被覆した部材よりも耐摩耗性に優
れ、かつ、前記Ti-Hf の複合窒化物等のTi-Hf 系皮膜を
被覆した部材よりも耐欠損性に優れた硬質皮膜被覆部材
を提供しようとするものである。
に、本発明に係る硬質皮膜被覆部材は請求項1〜3記載
の硬質皮膜被覆部材としており、それは次のような構成
としたものである。
は、異なる硬質皮膜を2層以上被覆した硬質皮膜被覆部
材であって、硬度測定用圧子により荷重50gfで測定した
硬質皮膜被覆面の押し込み硬度が2000kgf/mm2 以上であ
ると共に、硬度測定用圧子により荷重5gfで測定した硬
質皮膜被覆面の押し込み硬度が前記荷重50gfで測定した
押し込み硬度よりも100kgf/mm2以上小さいことを特徴と
する耐摩耗性及び耐欠損性に優れた硬質皮膜被覆部材で
ある(第1発明)。
る硬質皮膜を2層以上被覆した硬質皮膜被覆部材であっ
て、基材表面から硬質皮膜被覆層の表面方向へ厚さ2μ
m 以内の個所までの領域に、少なくとも、TiとHfとAlの
複合窒化物、複合炭化物、複合ホウ化物、複合炭窒化
物、複合ホウ窒化物、複合炭ホウ化物、複合炭窒ホウ化
物の1種以上と不可避的不純物とを含み、そのTiとHfと
Alの組成が下記式で示される組成からなる硬質皮膜層
を有し、且つ、硬質皮膜被覆層の表面から基材方向へ厚
さ2μm 以内の個所までの領域に、少なくとも、TiとAl
の複合窒化物、複合炭化物、複合ホウ化物、複合炭窒化
物、複合ホウ窒化物、複合炭ホウ化物、複合炭窒ホウ化
物の1種以上と不可避的不純物とを含み、そのTiとAlの
組成が下記式で示される組成からなる硬質皮膜層を有
することを特徴とする耐摩耗性及び耐欠損性に優れた硬
質皮膜被覆部材である(第2発明)。 Ti1-(x+y) Hfx Aly ----- 式 但し、上記式において、0<x≦0.8、0≦y≦
0.8、x+y<1である。 Ti1-Z AlZ ----- 式 但し、上記式において、0<z≦0.8である。
が高速度工具鋼、超硬合金または硬質セラミックスであ
る請求項1又は2記載の耐摩耗性及び耐欠損性に優れた
硬質皮膜被覆部材である(第3発明)。
は、例えばアークイオンプレーティング法やスパッタリ
ング法等により、基材表面に異なる硬質皮膜を2層以上
被覆することにより得られる。この硬質皮膜被覆層は、
前記の如き硬度を有し、そのため、耐摩耗性及び耐欠損
性に優れている。
態を詳細に調べ、その損傷を防止する手段を鋭意検討し
てきた。その結果、基材の欠損の起点は硬質皮膜被覆層
の表面から基材方向へ厚さ2μm 以内の個所までの領域
の硬質皮膜被覆層最表層部のみの割れ特性に依存してお
り、この硬質皮膜被覆層最表層部の割れを抑制すれば基
材の欠損を防止することができることをつきとめた。さ
らに、部材全体の耐摩耗性は硬質皮膜被覆層の表面から
基材方向へ厚さ4μm 以上の個所までの領域の硬質皮膜
被覆層と基材を合わせたマクロ硬度に依存しており、こ
の領域の平均硬度が高ければ部材の摩耗を低減すること
ができることをつきとめた。
重ねた結果、なされたものであり、第1発明に係る硬質
皮膜被覆部材は、前記の如く、異なる硬質皮膜を2層以
上被覆した硬質皮膜被覆部材であって、硬度測定用圧子
により荷重50gfで測定した硬質皮膜被覆面の押し込み硬
度が2000kgf/mm2 以上であると共に、硬度測定用圧子に
より荷重5gfで測定した硬質皮膜被覆面の押し込み硬度
が前記荷重50gfで測定した押し込み硬度よりも100kgf/m
m2以上小さいことを特徴とするものとしており、この硬
質皮膜被覆部材によれば、耐摩耗性と耐欠損性を高度な
レベルで同時に充たすことができる。
の押し込み硬度:2000kgf/mm2 程度の場合は硬度測定用
圧子の押し込み深さは約1μm であり、硬度測定用圧子
による変形の影響領域は硬質皮膜被覆層の表面から深さ
方向(硬質皮膜被覆層の厚さ方向)に約4μm 以上の個
所までになる。このような領域の硬質皮膜被覆層と基材
を合わせたマクロ硬度(平均硬度)が高ければ、前記の
如く、部材の摩耗を低減することができる。そして、か
かる平均硬度が少なくとも2000kgf/mm2 以上、好ましく
は2200kgf/mm2 以上であれば、充分に優れた耐摩耗性を
有することが確認された。
の如く、荷重50gfで測定した硬質皮膜被覆面の押し込み
硬度が2000kgf/mm2 以上である。
は、硬質皮膜被覆層の表面から深さ方向(硬質皮膜被覆
層の厚さ方向)に厚さ4μm 以上の個所までの領域の硬
質皮膜被覆層の平均硬度が2000kgf/mm2 以上であり、そ
のため耐摩耗性に優れ、高度なレベルの耐摩耗性を有す
る。
の押し込み硬度:2000kgf/mm2 程度の場合は硬度測定用
圧子の押し込み深さは約0.3 μm であり、硬度測定用圧
子による変形の影響領域は硬質皮膜被覆層の表面から深
さ方向(硬質皮膜被覆層の厚さ方向)に約2μm 程度に
なる。かかる硬質皮膜被覆層の表面から厚さ(深さ)2
μm 以内の個所までの領域の割れを抑制すれば、前記の
如く、基材の欠損を防止することができる。
割れ性が低下する傾向があり、硬度が低くなると耐割れ
性が向上する。そこで、前記硬質皮膜被覆層の表面から
深さ(厚さ)2μm 以内の個所までの領域の硬度と耐割
れ性及び基材の耐欠損性との関係について調べたとこ
ろ、その領域の硬質皮膜被覆層の硬度が硬質皮膜被覆層
の表面から厚さ4μm 以上の個所までの領域の硬質皮膜
被覆層と基材を合わせた平均硬度(即ち、荷重50gfで測
定した硬質皮膜被覆面の押し込み硬度)よりも100kgf/m
m2以上低ければ、充分に優れた耐欠損性を有することが
確認された。
の如く、荷重5gfで測定した硬質皮膜被覆面の押し込み
硬度が前記荷重50gfで測定した押し込み硬度よりも100k
gf/mm2以上小さい。
は、硬質皮膜被覆層の表面から基材方向へ厚さ2μm 以
内の個所までの領域の硬質皮膜被覆層の硬度(即ち、荷
重5gfで測定した硬質皮膜被覆面の押し込み硬度)が、
硬質皮膜被覆層の表面から基材方向へ厚さ4μm 以上の
個所までの領域の硬質皮膜被覆層と基材を合わせた平均
硬度(即ち、荷重50gfで測定した硬質皮膜被覆面の押し
込み硬度)よりも100kgf/mm2以上低く、そのため高度な
レベルの耐欠損性を有する。
材によれば、耐摩耗性と耐欠損性を高度なレベルで同時
に充たすことができることがわかる。
いて、硬度測定用圧子としては特に限定されるものでは
なく、硬質皮膜被覆面の押し込み硬度:2000kgf/mm2 程
度の場合に、荷重50gfで硬度測定用圧子の押し込み深
さ:約1μm 、硬度測定用圧子による変形の影響領域:
約4μm 以上になり、荷重5gfで硬度測定用圧子の押し
込み深さ:約0.3 μm 、硬度測定用圧子による変形の影
響領域:約2μm 程度になるものであればよい。かかる
硬度測定用圧子としては、例えばビッカース硬度測定用
圧子を挙げることができる。荷重50gfの場合と荷重5gf
の場合とで、硬度測定用圧子は同一でなくてもよい。
皮膜被覆部材の硬質皮膜被覆層の表面側から硬度測定用
圧子により測定される硬度のことである。
込み硬度は、2000kgf/mm2 以上であればよく、その範囲
内で特に制限されないが、耐摩耗性向上の点から、2200
kgf/mm2 以上であることが望ましく、更には、切削工具
等への適用の点から、2400kgf/mm2 以上であることが望
ましい。
込み硬度は、前記荷重50gfで測定した押し込み硬度より
も100kgf/mm2以上小さければよく、その範囲内で特に制
限されないが、高速度鋼基板のような欠損しやすい基材
への適用の点から、150kgf/mm2以上小さいことが望まし
く、更には、もっと欠損しやすい超硬への適用の点か
ら、200kgf/mm2以上小さいことが望ましい。
のように、異なる硬質皮膜を2層以上被覆した硬質皮膜
被覆部材であって、基材表面から硬質皮膜被覆層の表面
方向へ厚さ2μm 以内の個所までの領域に、少なくと
も、TiとHfとAlの複合窒化物、複合炭化物、複合ホウ化
物、複合炭窒化物、複合ホウ窒化物、複合炭ホウ化物、
複合炭窒ホウ化物の1種以上と不可避的不純物とを含
み、そのTiとHfとAlの組成がTi1-(x+y) Hfx Aly (但
し、0<x≦0.8、0≦y≦0.8、x+y<1)で
示される組成からなる硬質皮膜層〔以下、硬質皮膜層A
(下層)という〕を有し、且つ、硬質皮膜被覆層の表面
から基材方向へ厚さ2μm 以内の個所までの領域に、少
なくとも、TiとAlの複合窒化物、複合炭化物、複合ホウ
化物、複合炭窒化物、複合ホウ窒化物、複合炭ホウ化
物、複合炭窒ホウ化物の1種以上と不可避的不純物とを
含み、そのTiとAlの組成がTi1-Z AlZ (但し、0<z≦
0.8)で示される組成からなる硬質皮膜層〔以下、硬
質皮膜層B(上層)という〕を有することを特徴とする
ものとしており、この硬質皮膜被覆部材によれば、前記
第1発明に係る硬質皮膜被覆部材での特徴的構成要件で
あるところの「荷重50gfで測定した硬質皮膜被覆面の押
し込み硬度が2000kgf/mm2 以上であると共に、荷重5gf
で測定した硬質皮膜被覆面の押し込み硬度が前記荷重50
gfで測定した押し込み硬度よりも100kgf/mm2以上小さ
い」という点を充たすことができ、そのため、耐摩耗性
と耐欠損性を高度なレベルで同時に充たすことができ
る。
高く、例えばHv3500以上であり、上記硬質皮膜層B(上
層)は比較的硬度が低く、例えばHv2600程度であり、上
記硬質皮膜層A(下層)よりも硬度が低いという特性が
ある。このような高硬度の硬質皮膜層A(下層)が基材
表面から厚さ2μm 以内の個所までの領域に有し、それ
よりも低硬度の硬質皮膜層B(上層)が硬質皮膜被覆層
の表面から厚さ2μm以内の個所までの領域に有する
と、これらを有する硬質皮膜被覆層は全体として硬く、
荷重50gfで測定した硬質皮膜被覆面の押し込み硬度(即
ち、硬質皮膜被覆層の表面から厚さ4μm 以上の個所ま
での領域の硬質皮膜被覆層の平均硬度)が2000kgf/mm2
以上となると共に、硬質皮膜被覆層の上層部の硬度が低
く、荷重5gfで測定した硬質皮膜被覆面の押し込み硬度
(即ち、硬質皮膜被覆層の表面から厚さ2μm 以内の個
所までの領域の硬質皮膜被覆層の硬度)が前記荷重50gf
で測定した押し込み硬度よりも100kgf/mm2以上小さくな
る。従って、第2発明に係る硬質皮膜被覆部材は、前記
第1発明に係る硬質皮膜被覆部材での特徴的構成要件を
充たすことができ、そのため、耐摩耗性と耐欠損性を高
度なレベルで同時に充たすことができる。
おいて、硬質皮膜層A(下層)は、(Ti1-(x+y)Hfx A
ly ) N、(Ti1-(x+y)Hfx Aly ) C、(Ti1-(x+y)Hfx Al
y ) B、(Ti1-(x+y)Hfx Aly ) CN、(Ti1-(x+y)Hfx A
ly )BN 、(Ti1-(x+y)Hfx Aly )BC 、又は、(Ti1-(x+y)H
fx Aly )CBNで示される組成(但し、0<x≦0.8 、0
<y≦0.8 、且つx+y<1)からなるものである。こ
こで、N、C、B、CN、BN、BC又はCBN をQとすると、
この硬質皮膜層A(下層)は(Ti1-(x+y)Hfx Aly ) Qで
示される組成(但し、0<x≦0.8 、0<y≦0.8 、且
つx+y<1)からなるものである。但し、(Ti1-(x+y)
Hfx Aly ) :Qは、1:1であるとは限らず、1:約1
の場合も含まれ、例えば、1:0.90や、1:1.10の場合
もある。
i1-(x+y)Hfx Aly ) Qよりなり、このTi、Hf及びAl中に
占めるHfの割合が80at%以下(0%を含まず)、Alの割
合が80at%以下(0%を含む)である硬質皮膜である。
の割合をそれぞれ80at%以下、即ち(Ti1-(x+y)Hfx A
ly ) Qでのx及びyを0<x≦0.8 、且つ0<y≦0.8
としているのは、x及び/又はyを0.8 超とすると、
(Ti1-(x+y)Hfx Aly ) Qの硬度がTiN 並みのHv2000程度
に低下し、前記第1発明に係る硬質皮膜被覆部材での特
徴的構成要件を充たすことができず、その結果、硬質皮
膜被覆部材の耐摩耗性が低下して不充分となり、一方、
xを0とするとHfが含有されず、耐摩耗性が不充分とな
るからである。x+y<1としているのは、x+y≧1
とすると(Ti1-(x+y)Hfx Aly )Qの組成が成立しなくな
るからである。
N、(Ti1-ZAlZ ) C、(Ti1-ZAlZ ) B、(Ti1-ZAlZ )CN
、(Ti1-ZAlZ )BN 、(Ti1-ZAlZ )BC 、又は、(Ti1-ZAl
Z )CBNで示される組成、即ち、(Ti1-ZAlZ ) Qで示され
る組成(但し、0<z≦0.8 )からなるものである。但
し、(Ti1-ZAlZ ) :Qは、1:1であるとは限らず、
1:約1の場合も含まれ、例えば、1:0.90や、1:1.
10の場合もある。
at%以下(0%を含まず)、即ち、(Ti1-ZAlZ ) Qでの
zを0<z≦0.8 としているのは、zを0.8 超とする
と、(Ti1-ZAlZ ) Qの硬度がTiN 並みのHv2000程度に低
下し、前記第1発明に係る硬質皮膜被覆部材での特徴的
構成要件を充たすことはできるものの、最表面がやわら
かすぎて摺動時に上層が摩滅してしまうおそれがあり、
一方、zを0とするとAlが含有されず、耐熱性が低下す
るからである。
質皮膜被覆層は、硬質皮膜層A(下層)及び硬質皮膜層
B(上層)を含む必要があるが、これら以外の硬質皮膜
層を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
膜被覆層と基材との界面に該当する個所のことである。
基材表面から硬質皮膜被覆層の表面方向へ厚さ2μm 以
内の個所までの領域に、少なくとも、硬質皮膜層A(下
層)を有するとは、この領域に硬質皮膜層A(下層)が
含まれている必要があるが、その他の硬質皮膜層を含む
こともできるという意味である。硬質皮膜被覆層の表面
から基材方向へ厚さ2μm 以内の個所までの領域に、少
なくとも、硬質皮膜層B(上層)を有するとは、この領
域に硬質皮膜層B(上層)が含まれている必要がある
が、その他の硬質皮膜層を含むこともできるという意味
である。基材表面から硬質皮膜被覆層の表面方向へ厚さ
2μm (以内)の個所までの領域とは、基材表面から、
該表面から硬質皮膜被覆層の表面に向けて硬質皮膜被覆
層の厚さ方向に2μm (以内)の距離にある個所までに
わたる領域のことである。硬質皮膜被覆層の表面から基
材方向へ厚さ2μm (以内)の個所までの領域とは、硬
質皮膜被覆層の表面から、該表面から基材表面に向けて
硬質皮膜被覆層の厚さ方向に2μm (以内)の距離にあ
る個所までにわたる領域のことである。
材としては、特に限定されるものではなく、用途や必要
性に応じて種々の基材を使用できるが、硬度が高い基
材、例えば硬度800kgf/mm2以上の基材を用いた場合に本
発明が特に有効であり、かかる高硬度の基材としては高
速度工具鋼、超硬合金、硬質セラミックスを挙げること
ができる(第3発明)。即ち、基材として硬度800kgf/m
m2未満の基材を用いた硬質皮膜被覆部材では、損傷形態
が摩耗中心であり、基材の欠損はあまり問題とならない
ので、本発明の適用効果は比較的小さいが、高速度工具
鋼(ハイス)、超硬合金(WC-Co 系焼結合金)、硬質セ
ラミックス(サーメット、SiC 焼結体、Si 3N4 焼結体
等)の如く硬度が高く、硬度800kgf/mm2以上の基材を用
いた硬質皮膜被覆部材では、摩耗に加えて基材の欠損が
問題となるので、本発明の適用効果は大きい。
ち、用途としては、特に限定されるものではないが、耐
摩耗性及び耐欠損性を必要とする工具や機械部品に好適
に用いることができる。
m、試験部直径44mm、厚さ8mmのピンオンディスク摺動
試験用ディスクを作製した。
結材)、高速度工具鋼(ハイス)、サーメット、又は、
炭素鋼S45Cを用い、図2に示す如く一端を平坦状、他端
をエッジ状に加工し、基材を得た。この基材にアークイ
オンプレーティングにより下記構成の硬質皮膜〜を
被覆して、ピンオンディスク摺動試験用ピンを作製し
た。このとき、プレーティング処理時の反応ガス(B,
C,Nを含むガス)の圧力及び基材に印加するバイアス
電圧を変化させることにより、硬質皮膜の硬度を変化さ
せた。尚、下記〜において、QはN、C、B、CN、
BN、BC、又は、CBN である。
の硬質皮膜を被覆したもの 組成:(Ti0.58Hf0.39Al0.03)Q、膜厚:4μm の硬
質皮膜を被覆したもの 組成:(Ti0.58Hf0.39Al0.03)Q、膜厚:2μm の硬
質皮膜を被覆し、その上に、組成:(Al0.6Ti0.4)Q、膜
厚:2μm の硬質皮膜を被覆したもの 組成:ZrQ、膜厚:2μm の硬質皮膜を被覆し、そ
の上に、組成:TiQ、膜厚:2μm の硬質皮膜を被覆し
たもの
について、ビッカース硬度測定用圧子により荷重50gf、
荷重5gfで硬質皮膜被覆面の押し込み硬度を測定した。
ンディスク摺動試験用ディスクとピンとを組み合わせ、
ピンオンディスク摺動試験を行った。このとき、図1に
示す如くピンのエッジ部を摺動面とし、又、ピンの平坦
部を摺動面とした。ピンエッジ部を摺動面とする場合、
摺動試験条件は荷重:5N、速度(ディスクの回転周速
度):1m/秒、走行距離:1kmとし、そして、ピンエ
ッジ部の摺動による欠け損傷の発生の有無を観察し、耐
欠損性を調べた。ピン平坦部を摺動面とする場合、摺動
試験条件は荷重:400 N、速度:1m/秒、走行距離:
2kmとし、ピン平坦部の摺動による摩耗面積率を測定
し、耐摩耗性を調べた。ここで、摩耗面積率とは、ピン
平坦部の面積に対する摩耗部(摩耗を生じた部分)の面
積の割合のことである。
スク摺動試験の結果を表1〜7に示す。表1はピンの基
材に被覆された硬質皮膜がQがNである場合、即ち、窒
化物である場合についてのものである。表2はQがC、
表3はQがB、表4はQがCN、表5はQがBN、表6はQ
がBC、表7はQがCBN である場合についてのものであ
る。これらの表1〜7より、Qの種類(N、C、B、C
N、BN、BC、CBN )にかかわらず、同様の傾向の挙動を
示すことがわかる。その詳細を以下説明する。
0.58Hf0.39Al0.03)Qを被覆したピンは、荷重50gfでの
押し込み硬度と荷重5gfでの押し込み硬度とがほぼ同等
である。
が2000kgf/mm2 程度と低いが、この(Al0.6Ti0.4)Qの膜
靱性が優れているためにピン尖端部は欠けることなく摩
耗損傷となり、耐欠損性に優れている。しかし、硬度が
低いことからピン平坦部の摩耗面積率が90%と大きい
〔比較例〕。これに対し、(Ti0.58Hf0.39Al0.03)Qを被
覆したピンでは、硬度が2800kgf/mm2 程度と大きいの
で、ピン平坦部の摩耗面積率は10%と小さいが、(Ti
0.58Hf0.39Al0.03)Qは割れやすい傾向があるので、基
材の超硬合金の欠けを誘発してピン尖端部に欠け損傷が
生じ、耐欠損性に劣っている〔比較例〕。
し、その上に(Al0.6Ti0.4)Qを被覆したピンについて
は、荷重50gfでの押し込み硬度が1800kgf/mm2 程度であ
る場合、荷重5gfでの押し込み硬度の如何にかかわら
ず、ピン尖端部は欠けることなく摩耗損傷となるが、ピ
ン平坦部の摩耗面積率が90%と大きい。
2000kgf/mm2 以上である場合には、ピン平坦部の摩耗面
積率は20%以下となり、耐摩耗性に優れている。このと
き、荷重5gfでの押し込み硬度が上記荷重50gfでの押し
込み硬度に近い場合には、ピン尖端部に欠け損傷が生
じ、耐欠損性が不充分であり、耐摩耗性及び耐欠損性を
両立することができないが、荷重5gfでの押し込み硬度
が上記荷重50gfでの押し込み硬度よりも100kgf/mm2以上
小さい場合には、ピン尖端部の欠け損傷が生じず、耐欠
損性に優れており、耐摩耗性及び耐欠損性を両立するこ
とができる〔本発明の実施例〕。
覆したピンについては、荷重50gfでの押し込み硬度が20
00kgf/mm2 であり、荷重5gfでの押し込み硬度と上記荷
重50gfでの押し込み硬度との差が0又は50kgf/mm2 の場
合には、ピン尖端部に欠け損傷が生じているが、荷重5
gfでの押し込み硬度が上記荷重50gfでの押し込み硬度よ
りも100kgf/mm2以上小さい場合には、ピン尖端部の欠け
損傷の発生が抑制されている。しかし、ピン平坦部の摩
耗面積率が50%程度である。これに対し、前記の硬質
皮膜が被覆され、荷重50gfでの押し込み硬度が2000kgf/
mm2 、荷重5gfでの押し込み硬度が上記荷重50gfでの押
し込み硬度よりも100kgf/mm2以上小さいピンの場合の方
が、耐摩耗性に優れている(ピン平坦部の摩耗面積率:
20%)。これは、上層の(Al0.6Ti0.4)QがTiQよりも、
耐酸化性が優れていること等の化学的影響因子によるも
のと考えられる。
炭素鋼の場合 基材として高速度鋼、サーメット、又は、炭素鋼を用い
た場合には、前記の(Ti0.58Hf0.39Al0.03)Qを被覆
し、その上に(Al0.6Ti0.4)Qを被覆したピンを作製し、
試験を行った。このとき、前述のピン基材が超硬合金の
場合の試験結果に基づき、荷重50gfでの押し込み硬度が
2200kgf/mm2 程度、荷重5gfでの押し込み硬度が2050kg
f/mm2 程度になるようにした。尚、この両者の押し込み
硬度の差は、150kgf/mm2程度となる〔本発明の実施
例〕。
生じず、耐欠損性に優れている。しかし、ピン平坦部の
耐摩耗性は基材により異なり、基材が高速度鋼、サーメ
ットの場合にはピン平坦部の摩耗面積率は10%程度であ
り、耐摩耗性に優れているが、基材が炭素鋼の場合には
ピン平坦部の摩耗面積率は90%であり、耐摩耗性に劣っ
ている。
が劣っているのは、炭素鋼のような硬度800kgf/mm2未満
の基材の場合には、元来(Ti0.58Hf0.39Al0.03)Q等の硬
質皮膜と基材との密着性が少し悪く、更には摺動時に基
材の変形が起こり、それらにより、硬質皮膜被覆層の基
材からの剥離が生じてしまうためと考えられる。但し、
基材として炭素鋼のような比較的低硬度で軟らかい材料
を用いる場合には、欠損はあまり問題とならず、摩耗が
問題となるので、本発明を適用する必要性はあまりない
といえる。
〜に代えて下記構成の硬質皮膜A〜Aを被覆し
た。かかる点を除き、実施例1と同様のピンオンディス
ク摺動試験用ピンを作製し、実施例1と同様の押し込み
硬度の測定及びピンオンディスク摺動試験を行った。そ
の結果を表8に示す。
0.4)C、膜厚:4μm の硬質皮膜を被覆したもの A -- 組成:(Ti0.58Hf0.39Al0.03)N+(Ti0.58Hf
0.39Al0.03)C、膜厚:4μm の硬質皮膜を被覆したも
の A -- 組成:(Ti0.58Hf0.39Al0.03)N+(Ti0.58Hf
0.39Al0.03)C、膜厚:2μm の硬質皮膜を被覆し、そ
の上に、組成:(Al0.6Ti0.4)N+(Al0.6Ti0.4)C、膜
厚:2μm の硬質皮膜を被覆したもの A -- 組成:ZrN+ZrC、膜厚:2μm の硬質皮膜を
被覆し、その上に、組成:TiN+TiC、膜厚:2μm の
硬質皮膜を被覆したもの
Yとの混合体よりなることを示すものである。例えば、
Aの場合、(Al0.6Ti0.4)Nと(Al0.6Ti0.4)Cとの混合
体よりなることを示すものである。
も、実施例1の場合と同様の傾向の挙動を示すことがわ
かる。
耗性及び耐欠損性に優れ、耐摩耗性と耐欠損性を高度な
レベルで同時に充たすことができ、そのため、切削工具
の刃先のように耐摩耗性及び耐欠損性に優れていること
が必要な工具等の部材として好適に用いることができ、
それらの性能や寿命の向上が図れるようになるという効
果を奏する。
況の概要を示す斜視図である。
ンの基材形状を示す図であり、その中の(イ)は側面
図、(ロ)は正面図である。
Claims (3)
- 【請求項1】 異なる硬質皮膜を2層以上被覆した硬質
皮膜被覆部材であって、硬度測定用圧子により荷重50gf
で測定した硬質皮膜被覆面の押し込み硬度が2000kgf/mm
2 以上であると共に、硬度測定用圧子により荷重5gfで
測定した硬質皮膜被覆面の押し込み硬度が前記荷重50gf
で測定した押し込み硬度よりも100kgf/mm2以上小さいこ
とを特徴とする耐摩耗性及び耐欠損性に優れた硬質皮膜
被覆部材。 - 【請求項2】 異なる硬質皮膜を2層以上被覆した硬質
皮膜被覆部材であって、基材表面から硬質皮膜被覆層の
表面方向へ厚さ2μm 以内の個所までの領域に、少なく
とも、TiとHfとAlの複合窒化物、複合炭化物、複合ホウ
化物、複合炭窒化物、複合ホウ窒化物、複合炭ホウ化
物、複合炭窒ホウ化物の1種以上と不可避的不純物とを
含み、そのTiとHfとAlの組成が下記式で示される組成
からなる硬質皮膜層を有し、且つ、硬質皮膜被覆層の表
面から基材方向へ厚さ2μm 以内の個所までの領域に、
少なくとも、TiとAlの複合窒化物、複合炭化物、複合ホ
ウ化物、複合炭窒化物、複合ホウ窒化物、複合炭ホウ化
物、複合炭窒ホウ化物の1種以上と不可避的不純物とを
含み、そのTiとAlの組成が下記式で示される組成から
なる硬質皮膜層を有することを特徴とする耐摩耗性及び
耐欠損性に優れた硬質皮膜被覆部材。 Ti1-(x+y) Hfx Aly ----- 式 但し、上記式において、0<x≦0.8、0≦y≦
0.8、x+y<1である。 Ti1-Z AlZ ----- 式 但し、上記式において、0<z≦0.8である。 - 【請求項3】 基材が高速度工具鋼、超硬合金または硬
質セラミックスである請求項1又は2記載の耐摩耗性及
び耐欠損性に優れた硬質皮膜被覆部材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP02154997A JP3742174B2 (ja) | 1997-02-04 | 1997-02-04 | 耐摩耗性及び耐欠損性に優れた硬質皮膜被覆部材 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH10219429A true JPH10219429A (ja) | 1998-08-18 |
JP3742174B2 JP3742174B2 (ja) | 2006-02-01 |
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ID=12058085
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP02154997A Expired - Lifetime JP3742174B2 (ja) | 1997-02-04 | 1997-02-04 | 耐摩耗性及び耐欠損性に優れた硬質皮膜被覆部材 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP3742174B2 (ja) |
-
1997
- 1997-02-04 JP JP02154997A patent/JP3742174B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
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