JPH10215894A - 生細胞の検出方法 - Google Patents

生細胞の検出方法

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JPH10215894A
JPH10215894A JP2370997A JP2370997A JPH10215894A JP H10215894 A JPH10215894 A JP H10215894A JP 2370997 A JP2370997 A JP 2370997A JP 2370997 A JP2370997 A JP 2370997A JP H10215894 A JPH10215894 A JP H10215894A
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medium
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fluorescent
fluorescence
enzyme substrate
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JP2370997A
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Yukishige Kawasaki
行繁 河崎
Takashi Tsuji
堯 辻
Seiji Tanaka
省二 田中
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Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 検出効率の優れた生細胞の検出方法の提供。 【解決手段】 (a)蛍光性酵素基質で媒体を染色し、
その蛍光画像を記録し、(b)染色された媒体に光照射
して光退色させた後、その蛍光画像を記録し、(c)上
記(a)で得られた蛍光画像と、上記(b)で得られた
蛍光画像との差画像を取ることを特徴とする生細胞の検
出方法。 【効果】 本発明の方法によれば、任意の媒体中におけ
る生細胞の数を、感度良く、簡便に検出することができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は生細胞の検出方法に
関し、更に詳しくは、特定の条件を用いることによる、
細胞の生死を効率的に検出する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】媒体中における生細胞の検出は、滅菌状
態の確認や、細胞の生存状態の異常を検出する上で重要
な技術である。例えば、工業用水、飲料水、嗜好飲料、
アルコール飲料などに存在する生菌を検出することは、
工業製品の歩留りや飲料の安全性、衛生性、品質保証の
面で重要な業務である。LSIを生産する電子工業にお
いては、その中間製品である半導体ウエハーの洗浄にあ
たり、その歩留りを向上させるために、洗浄水の水質管
理は極めて重要な業務となっている。また、近年のバイ
オテクノロジーの急速な進展に伴い、医薬品等の有用な
物質が微生物、昆虫細胞、哺乳動物由来の細胞等の宿主
細胞を培養して生産されているが、生産性を管理する上
でこれら宿主細胞の生存を確認することは必要不可欠で
ある。 従来、このような生細胞を検出するための手段
として、生体染色といわれる方法や、フルオレセインジ
アセテートを媒体に添加し、細胞内からの蛍光を測定す
ることによる検出方法が知られている。
【0003】しかし、自然界の媒体を測定する場合、蛍
光性酵素基質により染色された生細胞以外の物質、例え
ば岩石や有機物の塊などから発せられた蛍光によって測
定が妨害され、生細胞のみを効率的に検出することは困
難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、蛍光性酵素
基質を媒体に添加する方法における欠点、例えば蛍光の
強度が弱いこと、細胞内部と細胞外部の蛍光強度の差
(コントラスト)が弱いこと等が解決された後に、なお
強い蛍光を発する夾雑物が存在する系の中で生細胞の自
動検出方法を提供するためになされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記の課題
を解決するため、媒体中に存在する生細胞内からの蛍光
の測定条件を種々検討した結果、媒体を染色した後に光
退色させて、光退色前の蛍光との差画像をとれば生細胞
を効率良く検出できることを見いだした。本発明は、上
記の知見に基づいて完成されたものである。
【0006】即ち本発明によれば、(a)蛍光性酵素基
質で媒体を染色し、その蛍光画像を記録し、(b)染色
された媒体に光照射して光退色させた後、その蛍光画像
を記録し、(c)上記(a)で得られた蛍光画像と、上
記(b)で得られた蛍光画像との差画像を取ることを特
徴とする生細胞の検出方法が提供される。この発明の好
ましい態様によれば、蛍光性酵素基質が、5−カルボキ
シフルオレセインジアセテートアセトキシメチルエステ
ル、5−(及び6−)カルボキシフルオレセインジアセ
テート、5−スルホフルオレセインジアセテート、6−
スルホフルオレセインジアセテート及び2’,7’−ビ
ス−(2−カルボキシエチル)−5−(及び6−)−カ
ルボキシフルオレセインアセトキシメチルエステルより
なる群から選ばれる化合物である上記方法が提供され
る。
【0007】また、本発明の別の態様によれば、少なく
とも、蛍光性酵素基質を含有する染色液よりなり、媒体
中に存在する生細胞の検出に使用するための試薬キット
であって、(a)蛍光性酵素基質で媒体を染色し、その
蛍光画像を記録し、(b)染色された媒体に光照射して
光退色させた後、その蛍光画像を記録し、(c)上記
(a)で得られた蛍光画像と、上記(b)で得られた蛍
光画像との差画像を取ることを特徴とする方法に使用す
るための試薬キットが提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を更に詳細に説明す
る。本発明における蛍光性酵素基質としては、単独では
蛍光を発しないが、生細胞内でエステラーゼ等の生体内
酵素の作用により蛍光を発する物質(蛍光性物質)に変
化し得る化合物であって、かつ、生成する蛍光性物質が
光退色するものであれば、いかなるものでも使用するこ
とができる。ここで、本明細書において光退色とは、蛍
光性物質への励起光の照射による蛍光性物質の化学変化
に伴う光吸収の減少、即ち蛍光の減弱を意味する。
【0009】具体的には、例えば、5−カルボキシフル
オレセインジアセテートアセトキシメチルエステル(5
−carboxyfluorescein diace
tate acetoxymethyl ester/
以下、「CFDA−AM」と略す)、5−(及び6−)
カルボキシフルオレセインジアセテート(5−(and
−6)−carboxyfluorescein di
acetate/CFDA)、5−スルホフルオレセイ
ンジアセテート及び6−スルホフルオレセインジアセテ
ート(以下、両者を合わせて「SFDA」と総称す
る)、2’,7’−ビス−(2−カルボキシエチル)−
5−(及び6−)−カルボキシフルオレセインアセトキ
シメチルエステル(2’,7’−bis−(2−car
boxyethyl)−5−(and−6)−carb
oxyfluorescein acetoxymet
hyl ester/BCECF−AM)等の化合物を
蛍光性酵素基質として使用することができる。これら
は、いずれも既知の化合物であり容易に入手できる。
【0010】これらの蛍光性酵素基質のうち、CFDA
−AM(この状態では非蛍光性である)はCF(6−c
arboxyfluorescein )のカルボキシ
ル基、水酸基をアセトキシメチル基およびアセチル基に
よってブロックしたもので、親水基がまったく無くなっ
ている。親油性が強いので細胞膜を通過し易く、結果的
に細胞を効率よく染色するため、本発明の蛍光性酵素基
質としては特に好ましい。BCECF−AMも同様に親
油性が強いが、この化合物は合成が難しくかつ、保存中
に自然分解してしまうことが多いので使用に際して注意
が必要である。
【0011】本発明の方法で検出しようとする生細胞と
しては、バクテリア、酵母、放線菌、カビ類等の微生
物、カイコのSf9細胞等の昆虫細胞、CHO細胞、C
OS細胞等の哺乳動物由来の細胞等が挙げられるが、こ
れらに限定されるものではなく、いずれの細胞でもよ
い。エステラーゼ等の生体内酵素は、細胞が死滅すると
急速に失活してしまうので、死んだ細胞は本発明の方法
では検出の感度が低く、従って生細胞と、死細胞との区
別をすることができる。
【0012】生細胞を検出しようとする媒体としては、
水、酒、培養液等の液体の媒体、土、砂等の固体の媒
体、寒天、ゲル等の半固体やそれらの混合物等が挙げら
れる。本発明で使用する蛍光性酵素基質を媒体に添加す
る方法は、媒体に応じて適宜行えばよい。蛍光性酵素基
質はそれぞれを単独で使用することもできるが、複数の
蛍光性酵素基質を併用してもよい。
【0013】蛍光性酵素基質は一般に水に難溶性である
ので、媒体が水性である場合には、蛍光性酵素基質を溶
媒に溶解もしくは懸濁した後、媒体に加えればよい。固
体の溶媒の場合にも、同様に溶媒に蛍光性酵素基質を溶
解もしくは懸濁し、媒体に加えることにより行えばよ
い。蛍光性酵素基質を溶解もしくは懸濁する溶媒として
は、通常水に溶解しやすいこと、検出しようとする生細
胞中の酵素を失活させにくいものを用いる。また、必要
に応じて界面活性剤を用いて溶解しても良い。
【0014】土壌中の生細胞を検出しようとする場合に
は、土壌中の水分含量を調節するほうが好ましい結果を
与える。好ましい水分含量は、2〜15%程度である。
土壌中の水分が多い場合には、0〜4℃程度で、ゆっく
り乾燥させれば、好ましい結果を与える。水分含有量が
多いと、背景蛍光輻射が増加し、顕微鏡での観察が困難
となることがある。
【0015】液体媒体中の生細胞を検出しようとする場
合には、蛍光性酵素基質を添加した後、poly−D−
lysineコートして細胞を固着させたり、寒天やゼ
ラチン等で非流動体化して蛍光を測定するのが好まし
い。細胞内部に侵入した蛍光性酵素基質は細胞内に多量
に存在するエステラーゼによって分解を受け蛍光性物質
となる。例えば、CFDA−AMには蛍光性はないが、
エステラーゼにより分解されCFとなるとともに蛍光性
となる。CFはpHが中性の条件下では−3価に帯電し
ており親水性である。従って、細胞膜を透過しにくくな
り、結果的に細胞内部にCFが蓄積される。このような
原理で細胞を蛍光性にすることが出来る。
【0016】本発明の蛍光性酵素基質が分解されて生じ
た蛍光性物質、例えばCFは光退色を受けやすい。それ
に対し、自然界に存在する岩石や有機物凝集体等に含ま
れる種々の蛍光性物質は、光退色を受けないことが多
い。一般的には光退色しやすい蛍光色素は蛍光測定には
不向きであるとされるが、本発明の方法ではこの不利な
点を逆手にとって、細胞検出の効率を上げたものであ
る。本発明の方法ではCFに限らず、生細胞内で蛍光性
酵素基質より生成する物質が光退色しやすい蛍光性物質
であればすべて利用可能である。
【0017】本発明の生細胞の検出方法における操作手
順に特に制限はないが、通常、以下の手順によって行わ
れるのが好ましい。 1)蛍光生酵素基質を溶媒に溶かし、染色液を作成す
る。 2)染色液と媒体(細胞や土壌等)を混ぜ、混合液を作
成する。 3)該混合液をスライドガラスとカバーガラスにはさ
む。
【0018】4)水蒸気で飽和したインキュベーター中
に放置する。 5)蛍光画像(A)を記録する。 6)光照射(光退色)後、その蛍光画像(B)を記録す
る。 7)手順5)で得られた蛍光画像と、手順6)で得られ
た蛍光画像との差画像(A−B)を取る。ここで差画像
として残るのは、光退色を受けた物体のみである。これ
は蛍光性物質により染色された物体であり、媒体中に含
まれる微生物等の生細胞である可能性が高い。また、岩
石等の夾雑物も若干の光退色する場合は、(A−B)/
Aという画像をとれば良い。
【0019】蛍光性酵素基質を溶解又は分散させる溶媒
としては、通常、水性溶媒が用いられ、好ましくは適当
な酸性緩衝液、例えば、ナトリウムリン酸緩衝液、クエ
ン酸ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、酢酸−酢酸
ナトリウム緩衝液、クエン酸ナトリウム−ホウ酸ナトリ
ウム緩衝液、リン酸ナトリウム−クエン酸緩衝液等が用
いられる。緩衝液のpHは特に制限されないが、通常p
H3〜6が適当である。蛍光性酵素基質がCFDA−A
Mである場合、その溶媒としては、pHを調整したナト
リウムリン酸緩衝液にpluronicTMF127(B
ASF Wyandotte社製界面活性剤;分子量1
2500)を少量(0.025〜0.05%)添加した
ものを用いることが好ましい。
【0020】蛍光性酵素基質の添加量は特に制限されな
いが、通常媒体中のおける最終濃度が1〜30μM、よ
り好ましくは1〜10μMとなるように調製するのが適
当である。色素濃度が低すぎると、蛍光の絶対強度が低
くなってしまう。また、蛍光性酵素基質の濃度が高すぎ
ると、分解によって生じる細胞外部の蛍光性物質による
背景光が強いために検出効率が下がる傾向がある。
【0021】上記においては、混合液をスライドガラス
とカバーガラスにはさんだ後、インキュベートする例を
挙げたが、スライドガラスとカバーガラスにはさむ代わ
りにホールスライドガラスに入れてカバーガラスで密閉
してもよい。また、細胞外に存在する酵素や土壌の触媒
作用によって蛍光性酵素基質が分解され背景光が高くな
ってしまう場合は、手順2)において遠心チューブ中で
混合液をインキュベート(約30分程度)し、そのまま
遠心によって一回洗い、その沈殿を溶媒に懸濁した後、
コートされたスライドガラスとカバーガラスにはさんで
もよい。
【0022】蛍光性酵素基質を用いる測定では反応時間
とともに細胞ばかりでなく背景の蛍光強度が増していく
ので、測定は染色後70分以内に行うことが好ましい。
また、媒体中の色素濃度が10μMを越えている場合に
は、40分以内に測定を終えることが必要である。検出
しようとする細胞が、メラニン色素等で着色している場
合には、そのまま蛍光性酵素基質と反応させても、蛍光
が色素で妨害されて観察しにくいので、反応させる前
に、予め過酸化水素等で細胞を脱色しておくことが望ま
しい。
【0023】蛍光を検出する手段としては特に制限はさ
れないが、例えば蛍光性酵素基質を添加した媒体をスラ
イドガラス上にのせて蛍光顕微鏡で観察する方法や、C
CDカメラとパソコンとを組み合わせた画像解析装置を
用いて観察する方法などが挙げられる。また細胞数を定
量する場合には、顕微鏡下のサンプルを写真撮影し、焦
点深度法(focal depth method)に
より算出することができる。
【0024】本発明は、上記手順5)の光退色前の蛍光
画像と、上記手順6)の光退色させた後の蛍光画像との
差画像をとることに一つの特徴を有する方法である。光
退色のために照射する励起光としては、蛍光性物質が吸
収する波長であれば特に制限されないが、通常470〜
510nmの波長が適当であり、特に488及び514
nmで発光するアルゴンイオンレーザー、アルゴンクリ
プトンレーザーが好ましい。超高圧水銀灯を用いて光照
射を行う場合、この発振波長は430nmで強く、47
0〜510nmで弱いので50Wより強力な100Wを
使用することが好ましい。光照射時間は、対象となる蛍
光性物質の種類によっても異なるが、通常1分以内が適
当である。
【0025】更に本発明の方法においては、細胞内でp
H依存性の蛍光性物質を生成し得る蛍光性酵素基質を用
いて生細胞を染色し、細胞外部のpHを酸性にしてpH
依存性の波長で励起する方法と組み合わせると、細胞外
部の物体の自家蛍光や染色に用いた蛍光性酵素基質の分
解物による蛍光の両方を減ずることができ、生きた細胞
の検出効率を更に向上することができる。
【0026】ここで、pH依存性の蛍光性物質とは、p
Hによってその蛍光強度に差があるものを意味する。p
H依存性の蛍光性物質を生成し得る蛍光性酵素基質とし
ては、前記した中で、例えば、CFDA−AM、CFD
A、BCECF−AM等の化合物をあげることができ
る。この場合、蛍光測定は、媒体のpHを酸性にした状
態で行われる。媒体のpHは、通常pH6以下が好まし
く、水素イオン濃度の細胞への影響を考慮するとpH3
〜6程度がより好ましい。励起波長は、対象となる蛍光
性物質によっても異なるが、媒体のpHによって光吸収
(蛍光)強度が変化する波長であれば、いかなる波長で
も良い。例えば、蛍光性酵素基質にCFDA−AMを用
い、生成するCFを励起する場合は、特にアルゴンイオ
ンレーザーを用いるのが好ましい。
【0027】本発明の試薬キットは、上記した生細胞の
検出方法に基づいて、それ自体既知の通常用いられる材
料及び手法で調製することができる。
【0028】
【発明の効果】本発明の方法によれば、任意の媒体中に
おける生細胞の数を、感度良く、簡便に検出することが
できる。
【0029】
【実施例】次に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説
明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものでは
ない。尚、以下の実施例において枯草菌(Bacill
us subtilis)はantibiotic m
edium3培地(バクト牛エクストラクト0.15
%、バクトイーストエクストラクト0.15%、バクト
ペプトン0.5%、バクトデキストローズ0.1%、N
aCl 0.35%、K2HPO4 0.368%、KH
2PO4 0.32%)中、30℃で培養し、対数増殖期
の中期から後期の細胞を集めて使用した。大腸菌(
coli)はLB培地(トリプトン1%、イーストエク
ストラクト0.5%、NaCl 0.5%)中、37℃
で培養し、対数増殖期の中期から後期の細胞を集めて使
用した。
【0030】土壌は町田市南大谷のかしの木山の表土
(ANDO土壌、深さ0〜5cmの範囲のもの)を乳鉢
で粉砕した後、加熱滅菌(120℃、30分)したもの
を用いた。細胞が動き回るのを抑えるためスライドガラ
スを予めpoly−D−lysine(0.1mg/m
l H2O)でコートしておいた。コートは次のように
行った。ピペットでpoly−D−lysine(0.
2μl程度)をスライドガラスに滴下して滴状にした。
この滴を10個程度作る。そのまま室温に放置して乾燥
した。
【0031】実施例1 pHを5.9に調整した20mMナトリウムリン酸緩衝
液中にpluronicTMF127を0.025%の割
合で溶解させたものをCFDA−AMの溶媒として用い
た(以下、この緩衝液をNa−P−Pと呼ぶ)。Na−
P−PにCFDA−AMを3μM溶解し、Na−P−P
液を調製した。
【0032】Na−P−P液100μlに培養した細菌
(1〜10μl)、またはそれにさらに土壌(1〜10
μl)を混合し、直ちにコートされたスライドガラスと
カバーガラスではさみ水蒸気で飽和したインキュベータ
ー中で20分放置し反応を進ませた。このようにして得
られた試料を顕微鏡で観察した。測定には冷却CCD付
き蛍光顕微鏡および共焦点レーザー顕微鏡を用いた。ま
ず、細胞と土壌の状態を知るために微分干渉像を観察記
録した。次に蛍光像を記録した。用いた蛍光フィルター
はB励起フィルター(励起バンドパスフィルター:45
0〜489nm、ダイクロイックミラー:530nm、
蛍光バンドパスフィルター:510〜550nm)であ
る。共焦点レーザー顕微鏡を用いた場合は488nmの
励起光を用いた。その後40秒励起光をあて続けCFD
A−AMの分解産物CFを退色させ、再度蛍光像を記録
した。細胞に取り込まれたCFの光退色の割合は30〜
60%程度であった。
【0033】記録は冷却CCDで行い、得られたデジタ
ル画像は光磁気ディスクに記録された。解析は自作の解
析ソフトウエアで行った。まず一連の画像から光退色前
の蛍光画像と光退色後の蛍光画像とを抽出し、顕微鏡の
光ムラ補正、電気雑音除去を行った後、蛍光差画像を作
製した。この蛍光差画像の中から明るさが特定レベル
(通常は背景光の平均的明るさ+背景光の明るさのゆら
ぎの標準偏差)以上の物体を細胞と見なし、その個数A
を計測した。一方、微分干渉画像から視野中の細胞数B
を計測し、AとBを比較することによって検出効率を調
べた。
【0034】この測定結果を図1に示す。図1におい
て、縦軸は細胞の数で面積密度に変換されている。図1
中、Aは微分干渉像(dic)から肉眼で細胞の個数を
数えたものである。B1、B2、C1及びC2は自動解析の
結果及び目測の結果を示している。これらを比較すると
自動解析に光退色前の蛍光画像(raw)を用いた場合
(B1)は細胞密度が過剰になっており、土壌粒子が細
胞と見なされていることが示されているが、蛍光差画像
(raw−ble)を用いた場合(C1)では微分干渉
像とほぼ同じ値が得られている。また、目測で細胞数を
数えた場合は、光退色前の蛍光画像を用いる(B2
と、背景の蛍光に妨害され、蛍光差画像を用いた場合
(C2)に比べ、細胞数が少なくなっていることがわか
る。従って、本発明方法の蛍光差画像を用いると生細胞
のみを効率的に検出できることが示された。
【0035】自然界では強い蛍光を発する非生物粒子が
数多く存在するが、本発明の方法によってこれらの物質
の妨害効果をかなり除去出来ることが示された。一般的
には染色された蛍光色素が顕微鏡観察中に光退色してし
まうということは望ましくないことであると考えられて
いるが、本発明の方法はこの不利な点の逆手をとって、
検出効率の向上を図れるということを証明したものであ
り、非常に特異的で応用範囲が広いと方法であると考え
られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法で計測され細胞数を示す図であ
る。図中、Aは微分干渉像(dic)から目視によって
得られた細胞数(計測した細胞は長円形のものだけを選
んだ)を示し、B1及びB2は光退色前の蛍光画像(ra
w)から得られた細胞数を示し、C1及びC2は蛍光差画
像(raw−ble)から得られた細胞数を示す。細胞
数は、測定領域の大きさを基に面積当りの細胞密度に変
換して示した。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)蛍光性酵素基質で媒体を染色し、
    その蛍光画像を記録し、(b)染色された媒体に光照射
    して光退色させた後、その蛍光画像を記録し、(c)上
    記(a)で得られた蛍光画像と、上記(b)で得られた
    蛍光画像との差画像を取ることを特徴とする生細胞の検
    出方法。
  2. 【請求項2】 蛍光性酵素基質が、5−カルボキシフル
    オレセインジアセテートアセトキシメチルエステル、5
    −(及び6−)カルボキシフルオレセインジアセテー
    ト、5−スルホフルオレセインジアセテート、6−スル
    ホフルオレセインジアセテート及び2’,7’−ビス−
    (2−カルボキシエチル)−5−(及び6−)−カルボ
    キシフルオレセインアセトキシメチルエステルよりなる
    群から選ばれる化合物である請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 少なくとも、蛍光性酵素基質を含有する
    染色液よりなり、媒体中に存在する生細胞の検出に使用
    するための試薬キットであって、(a)蛍光性酵素基質
    で媒体を染色し、その蛍光画像を記録し、(b)染色さ
    れた媒体に光照射をして光退色させた後、その蛍光画像
    を記録し、(c)上記(a)で得られた蛍光画像と、上
    記(b)で得られた蛍光画像との差画像を取ることを特
    徴とする方法に使用するための試薬キット。
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