JPH10208740A - 非水電解質電池 - Google Patents

非水電解質電池

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JPH10208740A
JPH10208740A JP9011115A JP1111597A JPH10208740A JP H10208740 A JPH10208740 A JP H10208740A JP 9011115 A JP9011115 A JP 9011115A JP 1111597 A JP1111597 A JP 1111597A JP H10208740 A JPH10208740 A JP H10208740A
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crystal
alloy
silicon
negative electrode
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徳雄 稲益
Takaaki Iguchi
隆明 井口
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高電圧、高容量、高エネルギー密度で、優れ
た充放電サイクル特性を示し、安全性の高い非水電解質
電池を提供することを目的とする。 【構成】 負極活物質の主構成物質が、共有結合結晶と
リチウムの合金からなる非水電解質電池とすることで、
上記目的を達成できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は非水電解質電池に関
するもので、さらに詳しくはその負極活物質に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来より非水電解質電池用の負極活物質
として、リチウムを用いることが代表的であったが、充
電時に生成するリチウムの樹枝状析出(デンドライト)
のため、サイクル寿命の点で問題があった。また、この
デンドライトはセパレーターを貫通し内部短絡を引き起
こしたり、発火の原因ともなっている。
【0003】また、上記のような充電時に生成するデン
ドライトを防止する目的で金属リチウムとの合金も用い
られたが、充電量が大きくなると負極の微細粉化や、負
極活物質の脱落などの問題があった。
【0004】現在、長寿命化及び安全性のために負極に
炭素材料を用いる電池などが注目を集め一部実用化され
ている。しかしながら、負極に用いられる炭素材料は、
急速充電時に内部短絡や充電効率の低下が生じるという
問題があった。これらの炭素材料は一般的に、炭素材料
へのリチウムのドープ電位が0Vに近いため、急速充電
を行う場合、電位が0V以下になり電極上にリチウムを
析出することがあった。そのため、セルの内部短絡を引
き起こしたり、放電効率が低下する原因となる。また、
この様な炭素材料は、サイクル寿命の点でかなりの改善
がなされているが、密度が比較的小さいため、体積当た
りの容量が低くなってしまうことになる。つまり、この
炭素材料は高エネルギー密度という点からは未だ不十分
である。その上、炭素上に被膜を形成する必要があるも
のについては初期充放電効率が低下し、この被膜形成に
使われる電気量は不可逆であるため、その電気量分の容
量低下につながる。
【0005】一方、金属リチウムやリチウム合金または
炭素材料以外の負極活物質として、ケイ素とリチウムを
含有する複合酸化物Lix Si1-y y z (特開平7
−230800号)や、非晶質カルコゲン化合物M1
2 p 4 q (特開平7−288123号)を用いること
が提唱されており、高容量、高エネルギー密度の点で改
善されている。
【0006】しかしながら、上記のような複合酸化物
は、活物質自身の電気伝導度が低いため、急速充電性
能、及び負荷特性に問題があった。この問題を解決する
目的で導電剤の添加が試みられているが、密度の低い炭
素材料を導電剤として用いることにより、体積当たりの
容量が低下することになる。さらに、導電剤を添加する
ことにより、急速充電を行うと部分的に電流集中が起こ
り、導電剤からリチウムの析出が観測された。そのた
め、セルの内部短絡を引き起こしたり、充放電効率を低
下させることがあった。
【0007】また、複合酸化物等は材料自身が酸化物で
あるため、酸化物の還元を経てリチウムとの反応が進行
すると考えられるため、特に初期での不可逆的な還元が
起こり、初期充放電効率が低くなることがあった。従っ
て、さらなる高容量、高エネルギー密度で、サイクル寿
命が長く、安全な非水電解質電池用負極材料の開発が望
まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】即ち、負極としてリチ
ウム金属やリチウムと金属の合金を用いる場合は、高電
圧や、高容量、高エネルギー密度としての利点はあるも
のの、サイクル性や安全性の上で問題があり、炭素材料
を用いる場合は、高電圧や、安全性の面で有利であるも
のの、高容量、高エネルギー密度の面で不十分である。
さらに、酸化物負極を用いる場合は、高容量、高エネル
ギー密度の点は改善されているようであるが、高電圧、
充放電効率特性、サイクル寿命や安全性の点では満足が
いかないものである。
【0009】このため、高電圧、高エネルギー密度で、
優れた充放電サイクル特性を示し、安全性の高い二次電
池を得るには、充放電時のリチウムの吸蔵放出の際に結
晶系の変化や体積変化が少なく、できるだけリチウム電
位に近い作動領域で、かつ可逆的にリチウムを吸蔵放出
可能な導電性のある化合物の開発が望まれている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は上記問題点に鑑
みてなされたものであって、非水電解質電池に使用され
る理想的な負極活物質を提案するもので、負極活物質の
主構成物質が、共有結合結晶とリチウムの合金からなる
ことを特徴とする。
【0011】さらに、上記に挙げた共有結合結晶が、シ
リコンの単結晶であることが好ましい。
【0012】先にリチウムとケイ素の合金としてはBi
nary Alloy PhaseDiagrams
(p2465)にあるように、Li22Si5 までの組成
で合金化することが知られている。また、特開平5−7
4463号では、負極にシリコンの単結晶を用いること
で、サイクル特性が向上することを報告している。しか
しながら、急速充放電用非水電解質電池の負極材として
シリコンにリチウムをドープさせようと試みると、ほと
んどドープが起こらずにリチウムが析出してしまうこと
が分かった。そこで、本発明者らは、共有結合結晶であ
るシリコンとリチウムの合金についてリチウムの吸蔵、
放出の検討を行った結果、リチウムの析出といった現象
が起こらずにリチウムの吸蔵、放出がスムーズに進行す
ることが分かった。さらに、この反応は約0.1Vとい
う極めてリチウム電位に近い電位で進行し、理論容量に
近い高容量が得られ、可逆性に優れることが分かった。
【0013】つまり、リチウムとケイ素の合金は知られ
ているものの、ケイ素自身は元来真性半導体であり、そ
のままでは電子伝導性が低く、電池負極材料としての特
性が悪かった。そのため、研究の対象になりにくい素材
であったが、電池内部に組み込む材料としてケイ素とリ
チウムの合金を用いることにより、電子伝導性が向上し
てリチウムの吸蔵放出が容易に起こることを見い出し本
発明に至った。特に、合金の出発材料となるシリコンを
単結晶とすることで、結晶の崩壊や微粉末化や脱落とい
った現象が見られず、サイクル特性が向上することが分
かった。
【0014】
【発明の実施の形態】ここで言う共有結合結晶として
は、Si,Ge,GaAs,GaP,InSb,Ga
P,SiC,BN等が挙げられ、それらのうちシリコン
については、特に優れた充放電特性が得られ、資源的に
豊富であり、毒性が低いため最も好ましいが、これらに
限定されるものではない。また、その結晶系について
は、単結晶、多結晶、アモルファス等が挙げられ、それ
らのうち単結晶については、特に優れた充放電特性が得
られるので好ましいが、これらに限定されるものではな
い。
【0015】さらに、この共有結合結晶は、不純物を含
ませることができる。ここで言う不純物とは、周期律表
のすべての元素のうち、ドナー原子、アクセプター原子
となり得るものであり、好ましくはP,Al,As,S
b,B,Ga,In等であるが、これらに限定されるも
のではない。
【0016】シリコンの単結晶を得る方法としては、C
Z法(チョクラルスキ法、または引き上げ法)、FZ
(フローティング・ゾーン)法等が挙げられるが、これ
らに限定されるものではない。
【0017】混在する不純物の濃度については、通常シ
リコン原子107 個から106 個にドナー原子あるいは
アクセプター原子1個の割合であるが、好ましくは高濃
度のドーピングが適しており、シリコン原子104 個に
ドナー原子あるいはアクセプター原子1個の割合、また
はそれ以上の高濃度であることが望ましい。
【0018】本発明に用いる共有結合結晶とリチウムの
合金は、厚みが0.1〜500μmであるウエハー状の
単板、もしくは平均粒子サイズ0.1〜100μmであ
る粉体が望ましい。所定の形状を得る上で、ウエハー状
の単板を得るためにはダイヤモンドカッターが用いら
れ、また粉体を得るためには粉砕機や分級機が用いられ
る。粉体を得る場合、例えば乳鉢、ボールミル、サンド
ミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミ
ル、カウンタージェットミル、旋回気流型ジェットミル
や篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン
等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもでき
る。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級
機などが乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
【0019】本発明に併せて用いることができる負極材
料としては、リチウム金属、リチウム合金などや、リチ
ウムイオンまたはリチウム金属を吸蔵放出できる焼成炭
素質化合物やカルコゲン化合物、メチルリチウム等のリ
チウムを含有する有機化合物等が挙げられる。また、リ
チウム金属やリチウム合金、リチウムを含有する有機化
合物を併用することによって、本発明に用いる共有結合
結晶とリチウムの合金に、さらにリチウムを電池内部で
挿入することも可能である。
【0020】本発明の共有結合結晶とリチウムの合金を
粉末として用いる場合、電極合剤として導電剤や結着剤
やフィラー等を添加することができる。導電剤として
は、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であ
れば何でも良い。通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒
鉛、土状黒鉛など)、人造黒鉛、カーボンブラック、ア
セチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイ
スカー、炭素繊維や金属(銅、ニッケル、アルミニウ
ム、銀、金など)粉、金属繊維、金属の蒸着、導電性セ
ラミックス材料等の導電性材料を1種またはそれらの混
合物として含ませることができる。これらの中で、黒鉛
とアセチレンブラックとケッチェンブラックの併用が望
ましい。その添加量は1〜50重量%が好ましく、特に
2〜30重量%が好ましい。
【0021】結着剤としては、通常、テトラフルオロエ
チレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプ
ロピレン、エチレン−プロピレンジエンターポリマー
(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエ
ンゴム(SBR)、フッ素ゴム、カルボメトキシセルロ
ース等といった熱可塑性樹枝、ゴム弾性を有するポリマ
ー、多糖類等を1種または2種以上の混合物として用い
ることができる。また、多糖類の様にリチウムと反応す
る官能基を有する結着剤は、例えばメチル化するなどし
てその官能基を失活させておくことが望ましい。その添
加量としては、1〜50重量%が好ましく、特に2〜3
0重量%が好ましい。
【0022】フィラーとしては、電池性能に悪影響を及
ぼさない材料であれば何でも良い。通常、ポリプロピレ
ン、ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、アエロジ
ル、ゼオライト、ガラス、炭素等が用いられる。フィラ
ーの添加量は0〜30重量%が好ましい。
【0023】電極活物質の集電体としては、構成された
電池において悪影響を及ぼさない電子伝導体であれば何
でもよい。例えば、正極集電体の材料としては、アルミ
ニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、
導電性高分子、導電性ガラス等の他に、接着性、導電
性、耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅等の表面
をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理した物を用
いることができる。負極集電体の材料としては、銅、ス
テンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、チタン、焼成炭
素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金等の
他に、接着性、導電性、耐酸化性向上の目的で、銅等の
表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理した物
を用いることができる。これらの材料については表面を
酸化処理することも可能である。これらの形状について
は、フォイル状の他、フィルム状、シート状、ネット
状、パンチ又はエキスパンドされた形状、ラス体、多孔
質体、発砲体、繊維群の形成体等が用いられる。厚みは
特に限定はないが、1〜500μm程度のものが用いら
れる。
【0024】この様にして得られる共有結合結晶とリチ
ウムの合金を負極活物質として用いることができる。一
方、正極活物質としては、MnO2 ,MoO3 ,V2
5 ,Lix CoO2 ,Lix NiO2 ,Lix Mn2
4 ,等の金属酸化物や、TiS2 ,MoS2 ,NbSe
3 等の金属カルコゲン化物、ポリアセン、ポリパラフェ
ニレン、ポリピロール、ポリアニリン等のグラファイト
層間化合物、及び導電性高分子等のアルカリ金属イオン
や、アニオンを吸放出可能な各種の物質を利用すること
ができる。
【0025】特に本発明の共有結合結晶とリチウムの合
金を負極活物質として用いる場合、高エネルギー密度と
いう観点からV2 5 ,MnO2 ,Lix CoO2 ,L
xNiO2 ,Lix Mn2 4 等の3〜4Vの電極電
位を有するものが望ましい。特にLix CoO2 ,Li
x NiO2 ,Lix Mn2 4 等のリチウム含有遷移金
属酸化物が好ましい。
【0026】また、電解質としては、例えば有機電解
液、高分子固体電解質、無機固体電解質、溶融塩等を用
いることができ、この中でも有機電解液を用いることが
好ましい。この有機電解液の有機溶媒として、プロピレ
ンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカー
ボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネー
ト、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン等
のエステル類や、テトラヒドロフラン、2−メチルテト
ラヒドロフラン等の置換テトラヒドロフラン、ジオキソ
ラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキ
シエタン、メトキシエトキシエタン等のエーテル類、ジ
メチルスルホキシド、スルホラン、メチルスルホラン、
アセトニトリル、ギ酸メチル、酢酸メチル、N−メチル
ピロリドン、ジメチルフォルムアミド等が挙げられ、こ
れらを単独又は混合溶媒として用いることができる。ま
た、支持電解質塩としては、LiClO4 、LiP
6 、LiBF4 、LiAsF6 、LiCF3 SO3
LiN(CF3 SO2 2 等が挙げられる。一方、高分
子固体電解質としては、上記のような支持電解質塩をポ
リエチレンオキシドやその架橋体、ポリフォスファゼン
やその架橋体等といったポリマーの中に溶かし込んだ物
を用いることができる。さらに、Li3 N,LiI等の
無機固体電解質も使用可能である。つまり、リチウムイ
オン導伝性の非水電解質であればよい。
【0027】セパレーターとしては、イオンの透過度が
優れ、機械的強度のある絶縁性薄膜を用いることができ
る。耐有機溶剤性と疎水性からポリプロピレンやポリエ
チレンといったオレフィン系のポリマー、ガラス繊維、
ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等
からつくられたシート、微孔膜、不織布が用いられる。
セパレーターの孔径は、一般に電池に用いられる範囲の
ものであり、例えば0.01〜10μmである。またそ
の厚みについても同様で、一般に電池に用いられる範囲
のものであり、例えば5〜300μmである。
【0028】本発明の共有結合結晶とリチウムの合金に
於いてウエハー状の板状の形状として用いる場合、集電
をとる目的で集電体と活物質の間に導電性接着層を設け
ることもできる。導電性接着剤としては、通常、銀ペー
スト、カーボンペーストが用いられる。また、結晶の一
部をニッケルでメッキすることにより、ハンダや銀ロウ
のような溶融した金属による接合も可能である。また、
その形状は、ダイヤモンドカッターやエッチング処理に
よって自由に加工することができる。
【0029】この様な優れた充放電特性が得られる理由
として、必ずしも明確ではないが以下のように考察され
る。すなわち、共有結合を有する結晶はリチウムとの合
金が可能であり、その合金中のリチウムの存在比は大き
いことが窺える。しかしながら、共有結合を有する結晶
は半導体であるものの真性半導体であり、その常温での
電気伝導度は低く充放電時の分極が比較的大きいのに対
し、共有結合結晶とリチウムの合金を用いると電子伝導
度が向上し充放電時の分極が小さくなり、容易にリチウ
ムイオンに電子を与えることができ、リチウム合金とし
て吸蔵し、また吸蔵されたリチウム合金は容易に電子を
放出することができ、リチウムイオンを放出する。つま
り、共有結合を有する結晶は、あらかじめリチウムと合
金化することによって結晶内部での電子の流れがスムー
ズになり、リチウムイオンの吸蔵放出を容易にすると推
定される。また、シリコンやGaの結晶構造はダイヤモ
ンドと同じ面心立方構造であるため、結晶の結合が非常
に強固であり、リチウムの吸蔵放出に関わる膨脹収縮に
追随し、活物質自身の微細化や脱落といったことが見ら
れず、充放電の可逆性を向上しているものと考えられ
る。さらに、単結晶を用いると、結晶内部に粒界が存在
しないためリチウムの吸蔵放出時に結晶の膨脹収縮が生
じても、粒界にストレスがたまることが無く、その結果
活物質自身の微粉化や脱落といったことが見られず充放
電の可逆性を向上しているものと考えられる。
【0030】本発明の、共有結合結晶とリチウムの合金
を主構成物質とする負極活物質は、非水電解質中におい
て金属リチウムに対し少なくとも0〜2Vの範囲でリチ
ウムイオンを吸蔵放出することができ、また共有結合結
晶が強固なことから、通常の合金にみられる充放電時の
微細粉化や負極活物質の部分的な孤立化が抑えられる。
また、あらかじめ共有結合結晶とリチウムを合金化する
ことにより、結晶内部での電子伝導性が向上し、共有結
合結晶とリチウムの合金化をスムーズにし、充放電のレ
ート特性が向上する。さらに負極電位がリチウム電位に
近く低いため、電池としての電圧が高電圧となり、その
上リチウムを吸蔵できる量が大きいことから高エネルギ
ー密度が達成される。特に共有結合結晶として単結晶を
用いると、結晶内部に粒界が存在しないため、リチウム
の吸蔵放出時に結晶の膨脹収縮が生じても粒界にストレ
スがたまることが無く、その結果活物質自身の微細化や
脱落といったことが見られず、充放電の可逆性を向上し
ているものと考えられる。その上、負極材料としてシリ
コンを用いると、シリコン自身の毒性が低く、資源的に
豊富な材料であるため特に優れている。このような負極
活物質を電極材料として用いることにより、高電圧、高
エネルギー密度で、優れた充放電サイクル特性を示し、
安全性の高い非水電解質電池を得ることができる。
【0031】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
【0032】(実施例1)引き上げ法により得られたシ
リコン単結晶とリチウムを原子比9:1の割合で計り取
り、アルゴン雰囲気下800℃に加熱することにより合
金(a)を、ゲルマニウム単結晶とリチウムを原子比
9:1の割合で計り取り、アルゴン雰囲気下1000℃
に加熱することにより合金(b)を、インジウム−アン
チモン単結晶とリチウムを原子比9:1の割合で計り取
り、アルゴン雰囲気下1000℃に加熱することにより
合金(c)を得た。以下の操作は乾燥空気中で行い、材
料はすべてあらかじめ十分に乾燥を行った後に用いた。
得られた合金を厚さ0.3mm×縦5mm×横5mmの
大きさに切り出し、重量を測定した。次にその合金を縦
10mm×横10mmのニッケルメッシュ2枚で挟み込
み、ワイヤーを取り付け試験電極とした。適当な大きさ
の金属リチウムをニッケル板上に圧着したものを2個作
製し、対極及び電位参照極とした。ビーカー中でLiC
lO4 を1mol/リットルの濃度に溶解したプロピレ
ンカーボネート溶液を電解液とし、上記で作製した3個
の電極、即ち試験電極、対極、電位参照極を電解液中に
浸漬し、三端子セルとした。この単極性能試験セルを用
いて充放電試験を行った。このセルに1mA電流を流
し、電位参照極に対する試験極の電位が0.00〜2.
00Vの範囲について容量試験を行った。
【0033】(比較例1)リチウムとの合金化を行って
いないシリコン単結晶(d)を厚さ0.3mm×縦5m
m×横5mmの大きさに切り出し、重量を測定した。こ
れ以外は上記実施例1と同様にして単極性能試験セルを
作製し同様の容量試験を行った。
【0034】この様に作製した単極性能試験セルの容量
試験を行った。共有結合結晶とリチウムの合金(a)〜
(c)、及びシリコン単結晶(d)を用いた単極性能試
験セルをそれぞれのセル(A)〜(D)とする。セル
(A)〜(C)に関してはリチウムの吸蔵放出が確認さ
れたが、セル(D)についてはほとんどリチウムの吸蔵
放出ができずリチウムの析出が観察された。このときの
初期の容量と10サイクル目の容量を表1に示した。こ
の結果から明らかなように、本発明である共有結合結晶
とリチウムの合金を用いた負極については、充放電サイ
クル性に優れ、高容量であることが分かる。一方、この
電流密度において純粋な共有結合結晶のみの場合、リチ
ウムの吸蔵、放出がほとんど起こらないことも分かっ
た。また、同じ共有結合結晶の合金においては、シリコ
ンを用いたものが容量面で若干優れていることが分かっ
た。
【0035】
【表1】
【0036】(実施例2)実施例1で用いた合金
(a)、シリコン多結晶とリチウムを原子比9:1の割
合で計り取り、アルゴン雰囲気下800℃に加熱するこ
とにより得られた合金(e)について乳鉢で粉砕し、こ
の負極活物質を用いて次のようなコイン型リチウム二次
電池を試作した。活物質とアセチレンブラック及びポリ
テトラフルオロエチレン粉末とを重量比85:10:5
で混合し、トルエンを加えて十分混練したものをローラ
ープレスにより厚み0.3mmのシート状に成形した。
次にこれを直径16mmの円形に打ち抜き、減圧下20
0℃で15時間熱処理して負極1を得た。負極1は負極
集電体6の付いた負極缶4に圧着して用いた。正極1
は、正極活物質としてLiCoO2 とアセチレンブラッ
ク及びポリテトラフルオロエチレン粉末とを重量比8
5:10:5で混合し、トルエンを加えて十分混練し
た。これをローラープレスにより厚み0.8mmのシー
ト状に成形した。次にこれを直径16mmの円形に打ち
抜き、減圧下200℃で15時間熱処理して正極2を得
た。正極2は正極集電体7の付いた正極缶5に圧着して
用いた。 エチレンカーボネートとジエチルカーボネー
トとの体積比1:1の混合溶剤にLiPF6 を1mol
/リットルの濃度で溶解した電解液を用い、セパレータ
3にはポリプロピレン製微多孔膜を用いた。上記正極、
負極、電解液及びセパレータを用いて直径20mm、厚
さ1.6mmのコイン型リチウム電池を作製した。合金
(a),(e)を用いた電池をそれぞれA1,E1とす
る。
【0037】(比較例2)単結晶シリコンの代わりにア
ルミニウム粉末を用い、それ以外は実施例2と同様にし
て電池を作製した。得られた電池をF1とする。
【0038】(実施例3)ニッケル集電体上にアモルフ
ァスシリコンを0.1mm形成し、シリコンに対してリ
チウムを原子比9:1の割合で計り取り、アルゴン雰囲
気下752℃に加熱することにより得られた合金を負極
として用い、それ以外は実施例2と同様にして電池を作
製した。得られた電池をG1とする。
【0039】(実施例4)単結晶シリコンにエピタキシ
ャル法によりシリコン原子104 個にAs原子1個の割
合でドープしたn型半導体であるシリコン単結晶を
(h)、シリコン原子104 個にIn原子1個の割合で
ドープしたp型半導体であるシリコン単結晶を(i)と
し、これらの単結晶を負極に用いること以外は実施例2
と同様にして電池を作製した。得られた電池をH1,I
1とする。
【0040】このようにして作製した電池A1,E1,
F1,G1,H1,I1を用いて充放電サイクル試験を
行った。試験条件は、充電電流3mA、充電終止電圧
4.2V、放電電流3mA、放電終止電圧3.0Vとし
た。これら作製した電池の充放電試験の結果を表2に示
す。
【0041】
【表2】
【0042】表1から分かるように本発明による電池A
1,B1,E1,F1,H1,I1は比較電池F1に比
べて充放電特性に優れ、さらに10サイクル後の容量減
少が小さかった。また、A1とE1の比較から、単結晶
半導体のサイクル特性が、多結晶半導体よりも優れてい
ることが分かる。この理由については、明確ではないも
のの次のように考えられる。多結晶半導体は、多くの小
さな結晶の塊であり結晶と結晶の間には粒界が存在す
る。これらの共有結合結晶がリチウムを吸蔵、放出する
にあたって結晶の体積変化が伴う。つまり、この体積変
化に伴って粒界部分に亀裂が入り、活物質の電気的孤立
化、微粉末化が起こり、サイクル劣化が起こると考えら
れる。アモルファスシリコンを用いたG1については、
若干容量が低下したもののサイクル特性は優れている。
また、共有結合結晶に不純物を添加したp型、n型半導
体においては、不純物無添加の物に比べてその性能にほ
とんど差が見られなかった。
【0043】実施例においては、外来半導体としてシリ
コン,ゲルマニウムについて挙げたが、同様の効果が他
の外来半導体についても確認された。なお、本発明は上
記実施例に記載された活物質の出発原料、製造方法、正
極、負極、電解質、セパレータ及び電池形状などに限定
されるものではない。
【0044】
【発明の効果】本発明は上述の如く構成されているの
で、高電圧、高容量、高エネルギー密度で、優れた充放
電サイクル特性を示し、安全性の高い非水電解質電池を
提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例2に係るコイン型非水電解質電
池の断面図である。
【符号の説明】
1 負極 2 正極 3 セパレータ 4 負極缶 5 正極缶 6 負極集電体 7 正極集電体 8 絶縁パッキング

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 負極活物質の主構成物質が、共有結合結
    晶とリチウムの合金からなることを特徴とする非水電解
    質電池。
  2. 【請求項2】 前記負極活物質の共有結合結晶が、単結
    晶である請求項1記載の非水電解質電池。
  3. 【請求項3】 前記単結晶が、シリコンからなる請求項
    2記載の非水電解質電池。
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