JP3653717B2 - 非水電解質電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は非水電解質電池に関するもので、さらに詳しくはその負極活物質に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より非水電解質電池用の負極活物質として、リチウムを用いることが代表的であったが、充電時に生成するリチウムの樹枝状析出(デンドライト)のため、サイクル寿命の点で問題があった。また、このデンドライトはセパレーターを貫通し内部短絡を引き起こしたり、発火の原因ともなっている。
【0003】
また、上記のような充電時に生成するデンドライトを防止する目的で金属リチウムとの合金も用いられたが、充電量が大きくなると負極の微細粉化や、負極活物質の脱落などの問題があった。
【0004】
現在、長寿命化及び安全性のために負極に炭素材料を用いる電池などが注目を集め一部実用化されている。しかしながら、負極に用いられる炭素材料は、急速充電時に内部短絡や充電効率の低下が生じるという問題があった。これらの炭素材料は一般的に、炭素材料へのリチウムのドープ電位が0Vに近いため、急速充電を行う場合、電位が0V以下になり電極上にリチウムを析出することがあった。そのため、セルの内部短絡を引き起こしたり、放電効率が低下する原因となる。また、この様な炭素材料は、サイクル寿命の点でかなりの改善がなされているが、密度が比較的小さいため、体積当たりの容量が低くなってしまうことになる。つまり、この炭素材料は高エネルギー密度という点からは未だ不十分である。その上、炭素上に被膜を形成する必要があるものについては初期充放電効率が低下し、この被膜形成に使われる電気量は不可逆であるため、その電気量分の容量低下につながる。
【0005】
一方、金属リチウムやリチウム合金または炭素材料以外の負極活物質として、ケイ素とリチウムを含有する複合酸化物Lix Si1-y y z (特開平7−230800号)や、非晶質カルコゲン化合物M1 2 p 4 q (特開平7−288123号)を用いることが提唱されており、高容量、高エネルギー密度の点で改善されている。
【0006】
しかしながら、上記のような複合酸化物は、活物質自身の電気伝導度が低いため、急速充電性能、及び負荷特性に問題があった。この問題を解決する目的で導電剤の添加が試みられているが、密度の低い炭素材料を導電剤として用いることにより、体積当たりの容量が低下することになる。さらに、導電剤を添加することにより、急速充電を行うと部分的に電流集中が起こり、導電剤からリチウムの析出が観測された。そのため、セルの内部短絡を引き起こしたり、充放電効率を低下させることがあった。
【0007】
また、複合酸化物等は材料自身が酸化物であるため、酸化物の還元を経てリチウムとの反応が進行すると考えられるため、特に初期での不可逆的な還元が起こり、初期充放電効率が低くなることがあった。従って、さらなる高容量、高エネルギー密度で、サイクル寿命が長く、安全な非水電解質電池用負極材料の開発が望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
即ち、負極としてリチウム金属やリチウムと金属の合金を用いる場合は、高電圧や、高容量、高エネルギー密度としての利点はあるものの、サイクル性や安全性の上で問題があり、炭素材料を用いる場合は、高電圧や、安全性の面で有利であるものの、高容量、高エネルギー密度の面で不十分である。さらに、酸化物負極を用いる場合は、高容量、高エネルギー密度の点は改善されているようであるが、高電圧、充放電効率特性、サイクル寿命や安全性の点では満足がいかないものである。
【0009】
このため、高電圧、高エネルギー密度で、優れた充放電サイクル特性を示し、安全性の高い二次電池を得るには、充放電時のリチウムの吸蔵放出の際に結晶系の変化や体積変化が少なく、できるだけリチウム電位に近い作動領域で、かつ可逆的にリチウムを吸蔵放出可能な導電性のある化合物の開発が望まれている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、非水電解質電池に使用される理想的な負極活物質を提案するもので、負極活物質の主構成物質が、共有結合結晶とリチウムの合金からなることを特徴とする。
【0011】
さらに、上記に挙げた共有結合結晶が、シリコンの単結晶であることが好ましい。
【0012】
先にリチウムとケイ素の合金としてはBinary Alloy PhaseDiagrams(p2465)にあるように、Li22Si5 までの組成で合金化することが知られている。また、特開平5−74463号では、負極にシリコンの単結晶を用いることで、サイクル特性が向上することを報告している。しかしながら、急速充放電用非水電解質電池の負極材としてシリコンにリチウムをドープさせようと試みると、ほとんどドープが起こらずにリチウムが析出してしまうことが分かった。そこで、本発明者らは、共有結合結晶であるシリコンとリチウムの合金についてリチウムの吸蔵、放出の検討を行った結果、リチウムの析出といった現象が起こらずにリチウムの吸蔵、放出がスムーズに進行することが分かった。さらに、この反応は約0.1Vという極めてリチウム電位に近い電位で進行し、理論容量に近い高容量が得られ、可逆性に優れることが分かった。
【0013】
つまり、リチウムとケイ素の合金は知られているものの、ケイ素自身は元来真性半導体であり、そのままでは電子伝導性が低く、電池負極材料としての特性が悪かった。そのため、研究の対象になりにくい素材であったが、電池内部に組み込む材料としてケイ素とリチウムの合金を用いることにより、電子伝導性が向上してリチウムの吸蔵放出が容易に起こることを見い出し本発明に至った。特に、合金の出発材料となるシリコンを単結晶とすることで、結晶の崩壊や微粉末化や脱落といった現象が見られず、サイクル特性が向上することが分かった。
【0014】
【発明の実施の形態】
ここで言う共有結合結晶としては、Si,Ge,GaAs,GaP,InSb,GaP,SiC,BN等が挙げられ、それらのうちシリコンについては、特に優れた充放電特性が得られ、資源的に豊富であり、毒性が低いため最も好ましいが、これらに限定されるものではない。また、その結晶系については、単結晶、多結晶、アモルファス等が挙げられ、それらのうち単結晶については、特に優れた充放電特性が得られるので好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0015】
さらに、この共有結合結晶は、不純物を含ませることができる。ここで言う不純物とは、周期律表のすべての元素のうち、ドナー原子、アクセプター原子となり得るものであり、好ましくはP,Al,As,Sb,B,Ga,In等であるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
シリコンの単結晶を得る方法としては、CZ法(チョクラルスキ法、または引き上げ法)、FZ(フローティング・ゾーン)法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
混在する不純物の濃度については、通常シリコン原子107 個から106 個にドナー原子あるいはアクセプター原子1個の割合であるが、好ましくは高濃度のドーピングが適しており、シリコン原子104 個にドナー原子あるいはアクセプター原子1個の割合、またはそれ以上の高濃度であることが望ましい。
【0018】
本発明に用いる共有結合結晶とリチウムの合金は、厚みが0.1〜500μmであるウエハー状の単板、もしくは平均粒子サイズ0.1〜100μmである粉体が望ましい。所定の形状を得る上で、ウエハー状の単板を得るためにはダイヤモンドカッターが用いられ、また粉体を得るためには粉砕機や分級機が用いられる。粉体を得る場合、例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェットミル、旋回気流型ジェットミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
【0019】
本発明に併せて用いることができる負極材料としては、リチウム金属、リチウム合金などや、リチウムイオンまたはリチウム金属を吸蔵放出できる焼成炭素質化合物やカルコゲン化合物、メチルリチウム等のリチウムを含有する有機化合物等が挙げられる。また、リチウム金属やリチウム合金、リチウムを含有する有機化合物を併用することによって、本発明に用いる共有結合結晶とリチウムの合金に、さらにリチウムを電池内部で挿入することも可能である。
【0020】
本発明の共有結合結晶とリチウムの合金を粉末として用いる場合、電極合剤として導電剤や結着剤やフィラー等を添加することができる。導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば何でも良い。通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛など)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維や金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)粉、金属繊維、金属の蒸着、導電性セラミックス材料等の導電性材料を1種またはそれらの混合物として含ませることができる。これらの中で、黒鉛とアセチレンブラックとケッチェンブラックの併用が望ましい。その添加量は1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。
【0021】
結着剤としては、通常、テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、カルボキシメチルセルロース等といった熱可塑性樹枝、ゴム弾性を有するポリマー、多糖類等を1種または2種以上の混合物として用いることができる。また、多糖類の様にリチウムと反応する官能基を有する結着剤は、例えばメチル化するなどしてその官能基を失活させておくことが望ましい。その添加量としては、1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。
【0022】
フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料であれば何でも良い。通常、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、アエロジル、ゼオライト、ガラス、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は0〜30重量%が好ましい。
【0023】
電極活物質の集電体としては、構成された電池において悪影響を及ぼさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、正極集電体の材料としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス等の他に、接着性、導電性、耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理した物を用いることができる。負極集電体の材料としては、銅、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、チタン、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金等の他に、接着性、導電性、耐酸化性向上の目的で、銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理した物を用いることができる。これらの材料については表面を酸化処理することも可能である。これらの形状については、フォイル状の他、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされた形状、ラス体、多孔質体、発砲体、繊維群の形成体等が用いられる。厚みは特に限定はないが、1〜500μm程度のものが用いられる。
【0024】
この様にして得られる共有結合結晶とリチウムの合金を負極活物質として用いることができる。一方、正極活物質としては、MnO2 ,MoO3 ,V2 5 ,Lix CoO2 ,Lix NiO2 ,Lix Mn2 4 ,等の金属酸化物や、TiS2 ,MoS2 ,NbSe3 等の金属カルコゲン化物、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリアニリン等のグラファイト層間化合物、及び導電性高分子等のアルカリ金属イオンや、アニオンを吸放出可能な各種の物質を利用することができる。
【0025】
特に本発明の共有結合結晶とリチウムの合金を負極活物質として用いる場合、高エネルギー密度という観点からV2 5 ,MnO2 ,Lix CoO2 ,Lix NiO2 ,Lix Mn2 4 等の3〜4Vの電極電位を有するものが望ましい。特にLix CoO2 ,Lix NiO2 ,Lix Mn2 4 等のリチウム含有遷移金属酸化物が好ましい。
【0026】
また、電解質としては、例えば有機電解液、高分子固体電解質、無機固体電解質、溶融塩等を用いることができ、この中でも有機電解液を用いることが好ましい。この有機電解液の有機溶媒として、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン等のエステル類や、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の置換テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、ギ酸メチル、酢酸メチル、N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド等が挙げられ、これらを単独又は混合溶媒として用いることができる。また、支持電解質塩としては、LiClO4 、LiPF6 、LiBF4 、LiAsF6 、LiCF3 SO3 、LiN(CF3 SO2 2 等が挙げられる。一方、高分子固体電解質としては、上記のような支持電解質塩をポリエチレンオキシドやその架橋体、ポリフォスファゼンやその架橋体等といったポリマーの中に溶かし込んだ物を用いることができる。さらに、Li3 N,LiI等の無機固体電解質も使用可能である。つまり、リチウムイオン導伝性の非水電解質であればよい。
【0027】
セパレーターとしては、イオンの透過度が優れ、機械的強度のある絶縁性薄膜を用いることができる。耐有機溶剤性と疎水性からポリプロピレンやポリエチレンといったオレフィン系のポリマー、ガラス繊維、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等からつくられたシート、微孔膜、不織布が用いられる。セパレーターの孔径は、一般に電池に用いられる範囲のものであり、例えば0.01〜10μmである。またその厚みについても同様で、一般に電池に用いられる範囲のものであり、例えば5〜300μmである。
【0028】
本発明の共有結合結晶とリチウムの合金に於いてウエハー状の板状の形状として用いる場合、集電をとる目的で集電体と活物質の間に導電性接着層を設けることもできる。導電性接着剤としては、通常、銀ペースト、カーボンペーストが用いられる。また、結晶の一部をニッケルでメッキすることにより、ハンダや銀ロウのような溶融した金属による接合も可能である。また、その形状は、ダイヤモンドカッターやエッチング処理によって自由に加工することができる。
【0029】
この様な優れた充放電特性が得られる理由として、必ずしも明確ではないが以下のように考察される。すなわち、共有結合を有する結晶はリチウムとの合金が可能であり、その合金中のリチウムの存在比は大きいことが窺える。しかしながら、共有結合を有する結晶は半導体であるものの真性半導体であり、その常温での電気伝導度は低く充放電時の分極が比較的大きいのに対し、共有結合結晶とリチウムの合金を用いると電子伝導度が向上し充放電時の分極が小さくなり、容易にリチウムイオンに電子を与えることができ、リチウム合金として吸蔵し、また吸蔵されたリチウム合金は容易に電子を放出することができ、リチウムイオンを放出する。つまり、共有結合を有する結晶は、あらかじめリチウムと合金化することによって結晶内部での電子の流れがスムーズになり、リチウムイオンの吸蔵放出を容易にすると推定される。また、シリコンやGaの結晶構造はダイヤモンドと同じ面心立方構造であるため、結晶の結合が非常に強固であり、リチウムの吸蔵放出に関わる膨脹収縮に追随し、活物質自身の微細化や脱落といったことが見られず、充放電の可逆性を向上しているものと考えられる。
【0030】
本発明の、共有結合結晶とリチウムの合金を主構成物質とする負極活物質は、非水電解質中において金属リチウムに対し少なくとも0〜2Vの範囲でリチウムイオンを吸蔵放出することができ、また共有結合結晶が強固なことから、通常の合金にみられる充放電時の微細粉化や負極活物質の部分的な孤立化が抑えられる。また、あらかじめ共有結合結晶とリチウムを合金化することにより、結晶内部での電子伝導性が向上し、共有結合結晶とリチウムの合金化をスムーズにし、充放電のレート特性が向上する。さらに負極電位がリチウム電位に近く低いため、電池としての電圧が高電圧となり、その上リチウムを吸蔵できる量が大きいことから高エネルギー密度が達成される。その上、負極材料としてシリコンを用いると、シリコン自身の毒性が低く、資源的に豊富な材料であるため特に優れている。このような負極活物質を電極材料として用いることにより、高電圧、高エネルギー密度で、優れた充放電サイクル特性を示し、安全性の高い非水電解質電池を得ることができる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0032】
(実施例1)
引き上げ法により得られたシリコン単結晶とリチウムを原子比9:1の割合で計り取り、アルゴン雰囲気下800℃に加熱することにより合金(a)を、ゲルマニウム単結晶とリチウムを原子比9:1の割合で計り取り、アルゴン雰囲気下1000℃に加熱することにより合金(b)を、インジウム−アンチモン単結晶とリチウムを原子比9:1の割合で計り取り、アルゴン雰囲気下1000℃に加熱することにより合金(c)を得た。以下の操作は乾燥空気中で行い、材料はすべてあらかじめ十分に乾燥を行った後に用いた。得られた合金を厚さ0.3mm×縦5mm×横5mmの大きさに切り出し、重量を測定した。次にその合金を縦10mm×横10mmのニッケルメッシュ2枚で挟み込み、ワイヤーを取り付け試験電極とした。適当な大きさの金属リチウムをニッケル板上に圧着したものを2個作製し、対極及び電位参照極とした。ビーカー中でLiClO4 を1mol/リットルの濃度に溶解したプロピレンカーボネート溶液を電解液とし、上記で作製した3個の電極、即ち試験電極、対極、電位参照極を電解液中に浸漬し、三端子セルとした。この単極性能試験セルを用いて充放電試験を行った。このセルに1mA電流を流し、電位参照極に対する試験極の電位が0.00〜2.00Vの範囲について容量試験を行った。
【0033】
(比較例1)
リチウムとの合金化を行っていないシリコン単結晶(d)を厚さ0.3mm×縦5mm×横5mmの大きさに切り出し、重量を測定した。これ以外は上記実施例1と同様にして単極性能試験セルを作製し同様の容量試験を行った。
【0034】
この様に作製した単極性能試験セルの容量試験を行った。共有結合結晶とリチウムの合金(a)〜(c)、及びシリコン単結晶(d)を用いた単極性能試験セルをそれぞれのセル(A)〜(D)とする。セル(A)〜(C)に関してはリチウムの吸蔵放出が確認されたが、セル(D)についてはほとんどリチウムの吸蔵放出ができずリチウムの析出が観察された。このときの初期の容量と10サイクル目の容量を表1に示した。この結果から明らかなように、本発明である共有結合結晶とリチウムの合金を用いた負極については、充放電サイクル性に優れ、高容量であることが分かる。一方、この電流密度において純粋な共有結合結晶のみの場合、リチウムの吸蔵、放出がほとんど起こらないことも分かった。また、同じ共有結合結晶の合金においては、シリコンを用いたものが容量面で若干優れていることが分かった。
【0035】
【表1】
Figure 0003653717
【0036】
(実施例2)
実施例1で用いた合金(a)、シリコン多結晶とリチウムを原子比9:1の割合で計り取り、アルゴン雰囲気下800℃に加熱することにより得られた合金(e)について乳鉢で粉砕し、この負極活物質を用いて次のようなコイン型リチウム二次電池を試作した。活物質とアセチレンブラック及びポリテトラフルオロエチレン粉末とを重量比85:10:5で混合し、トルエンを加えて十分混練したものをローラープレスにより厚み0.3mmのシート状に成形した。次にこれを直径16mmの円形に打ち抜き、減圧下200℃で15時間熱処理して負極1を得た。負極1は負極集電体6の付いた負極缶4に圧着して用いた。正極1は、正極活物質としてLiCoO2 とアセチレンブラック及びポリテトラフルオロエチレン粉末とを重量比85:10:5で混合し、トルエンを加えて十分混練した。これをローラープレスにより厚み0.8mmのシート状に成形した。次にこれを直径16mmの円形に打ち抜き、減圧下200℃で15時間熱処理して正極2を得た。正極2は正極集電体7の付いた正極缶5に圧着して用いた。 エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比1:1の混合溶剤にLiPF6 を1mol/リットルの濃度で溶解した電解液を用い、セパレータ3にはポリプロピレン製微多孔膜を用いた。上記正極、負極、電解液及びセパレータを用いて直径20mm、厚さ1.6mmのコイン型リチウム電池を作製した。合金(a),(e)を用いた電池をそれぞれA1,E1とする。
【0037】
(比較例2)
単結晶シリコンの代わりにアルミニウム粉末を用い、それ以外は実施例2と同様にして電池を作製した。得られた電池をF1とする。
【0038】
(実施例3)
ニッケル集電体上にアモルファスシリコンを0.1mm形成し、シリコンに対してリチウムを原子比9:1の割合で計り取り、アルゴン雰囲気下752℃に加熱することにより得られた合金を負極として用い、それ以外は実施例2と同様にして電池を作製した。得られた電池をG1とする。
【0039】
参考例)単結晶シリコンにエピタキシャル法によりシリコン原子104個にAs原子1個の割合でドープしたn型半導体であるシリコン単結晶を(h)、シリコン原子104 個にIn原子1個の割合でドープしたp型半導体であるシリコン単結晶を(i)とし、これらの単結晶を負極に用いること以外は実施例2と同様にして電池を作製した。得られた電池をH1,I1とする。
【0040】
このようにして作製した電池A1,E1,F1,G1,H1,I1を用いて充放電サイクル試験を行った。試験条件は、充電電流3mA、充電終止電圧4.2V、放電電流3mA、放電終止電圧3.0Vとした。これら作製した電池の充放電試験の結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
Figure 0003653717
【0042】
表1から分かるように電池A1,B1,E1,F1,H1,I1は比較電池F1に比べて充放電特性に優れ、さらに10サイクル後の容量減少が小さかった。また、A1とE1の比較から、単結晶半導体のサイクル特性が、多結晶半導体よりも優れていることが分かる。この理由については、明確ではないものの次のように考えられる。多結晶半導体は、多くの小さな結晶の塊であり結晶と結晶の間には粒界が存在する。これらの共有結合結晶がリチウムを吸蔵、放出するにあたって結晶の体積変化が伴う。つまり、この体積変化に伴って粒界部分に亀裂が入り、活物質の電気的孤立化、微粉末化が起こり、サイクル劣化が起こると考えられる。アモルファスシリコンを用いたG1については、若干容量が低下したもののサイクル特性は優れている。また、共有結合結晶に不純物を添加したp型、n型半導体においては、不純物無添加の物に比べてその性能にほとんど差が見られなかった。
【0043】
実施例においては、外来半導体としてシリコン,ゲルマニウムについて挙げたが、同様の効果が他の外来半導体についても確認された。なお、本発明は上記実施例に記載された活物質の出発原料、製造方法、正極、負極、電解質、セパレータ及び電池形状などに限定されるものではない。
【0044】
【発明の効果】
本発明は上述の如く構成されているので、高電圧、高容量、高エネルギー密度で、優れた充放電サイクル特性を示し、安全性の高い非水電解質電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例2に係るコイン型非水電解質電池の断面図である。
【符号の説明】
1 負極
2 正極
3 セパレータ
4 負極缶
5 正極缶
6 負極集電体
7 正極集電体
8 絶縁パッキング

Claims (3)

  1. 共有結合結晶に不純物元素を前記共有結合結晶の原子10 4 個に対して1個以上の割合で含んでなるp型又はn型半導体とリチウムの合金を負極活物質の主構成物質として用いて作製した非水電解質電池。
  2. 前記共有結合結晶は、シリコンである請求項1記載の非水電解質電池。
  3. 前記不純物は、P,Al,As,Sb,B,Ga又はInである請求項1又は2記載の非水電解質電池。
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