JP4355862B2 - 非水電解質電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は非水電解質電池に関するもので、さらに詳しくはその負極活物質とその電池に用いられる電解質に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より非水電解質電池用の負極活物質として、リチウムを用いることが代表的であったが、充電時に生成するリチウムの樹枝状析出(デンドライト)のため、サイクル寿命の点で問題があった。また、このデンドライトはセパレーターを貫通し内部短絡を引き起こしたり、発火の原因ともなっている。
【0003】
また、上記のような充電時に生成するデンドライトを防止する目的でアルミニウム−リチウム合金等も用いられたが、充電量が大きくなると負極の微細粉化や、負極活物質の脱落などの問題があった。
【0004】
現在、長寿命化及び安全性のために負極に炭素材料を用いる電池などが注目を集め一部実用化されている。しかしながら、負極に用いられる炭素材料は、急速充電時、内部短絡や充電効率の低下という問題があった。これらの炭素材料は一般的に、炭素材料へのリチウムのドープ電位が0Vに近いため、急速充電を行う場合、電位が0V以下になり電極上にリチウムを析出することがあった。そのため、セルの内部短絡を引き起こしたり、放電効率を低下させる原因となっていた。また、このような炭素材料は、サイクル寿命の点でかなりの改善がなされているが、密度が比較的小さいため、体積当たりの容量が低くなってしまうことになる。つまり、この炭素材料は高エネルギー密度という点からは未だ不十分である。その上、炭素上に被膜を形成する必要があるものについては初期充放電効率が低下し、この被膜形成に使われる電気量は不可逆であるため、その電気量分の容量低下につながる。従って、さらなる高容量、高エネルギー密度で、サイクル寿命が長く、安全な非水電解質電池用負極材料の開発が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
既に、リチウムとシリコンの合金として、Binary Alloy Phase Diagrams(p2465)にあるように、Li22Si5 までの組成で合金化することが知られている。また、特開平5−74463号公報では、負極にシリコンの単結晶を用いることを報告している。シリコンを電池材料に用いることは、資源的に豊富であり、毒性も低いことから、安価かつ安全な材料の一つであるといえる。しかしながら、急速充放電用非水電解質電池の負極材としてシリコンの単結晶にリチウムのドープを試みると、ほとんどドープが起こらずにリチウムが析出してしまうことが分かった。また、このシリコン単結晶の低温性能は悪く、さらに溶質としてLiBF4 等のルイス酸塩を用いた電解質を用いた場合、各サイクルの充放電効率が低く、サイクル劣化が起こる問題があった。
【0006】
つまり、負極としてリチウム金属やリチウムと金属の合金を用いる場合は高電圧や、高容量、高エネルギー密度としての利点はあるものの、サイクル性や安全性の上で問題があり、一方炭素材料を用いる場合、高電圧や、安全性の面で有利であるものの、高容量、高エネルギー密度の面で不十分である。高容量、高エネルギー密度が期待されるシリコンを負極活物質として用いた場合、急速充電や高出力放電が難しいことや、各サイクルの充放電効率が低く、サイクル劣化につながることが問題であった。
【0007】
このため、高電圧、高エネルギー密度で、優れた充放電サイクル特性を示し、急速充電が可能で高出力の、安全性の高い非水電解質電池を得るには、充放電時のリチウムの吸蔵放出の際に結晶系の変化や体積変化が少なく、急速充電や高出力放電が可能で、低温特性にも優れ、かつ可逆的にリチウムを吸蔵放出可能な導電性のある化合物が望まれている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、負極活物質の主構成物質として、粒径が0.1〜0.01μmであり、シリコン原子10 7 個にドナー原子またはアクセプター原子となり得る元素を1個以上の割合でドーピングしてなるシリコンを用いたことを特徴とする非水電解質電池である。
また、本発明は、前記シリコンは、電子伝導度が常温で10 −5 Scm −1 以上であることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の非水電解質電池は、非水電解質の主構成溶質が、下記一般式(1)
(R1SO 2 )(R2SO 2 )NLi ・・・・ 一般式(1)
(R1 、R2 はC n F 2n+1 で表され、nは1から4までの数であり、R1 =R2 又はR1 ≠R2 である)からなる塩であることを特徴としている。
また、本発明の非水電解質電池は、非水電解質の主構成溶質が、(C 2 H 5 SO 2 ) 2 NLiであることを特徴としている。
【0010】
ここで、非水電解質電池において、従来一般的に用いられていたLiBF4 やLiPF6 を電解質に用いると、そのもののイオン伝導性は優れているものの、分解するとフッ化水素等を生じることが分かっている。これらの溶質を用いて超微粒子活物質を負極活物質として用いた場合、溶質から生じる不純物が超微粒子活物質表面に存在する被膜と反応し、その表面被膜は電気抵抗が高くイオン伝導性の悪い被膜に変化することが分かった。そのため、充放電を行う毎に電極抵抗が増大し、充放電効率を低下させ、よってサイクル劣化につながることが考えられる。
【0011】
一方、炭素を含む塩は分解しにくく、水との反応においてもフッ化水素等をほとんど放出しないことが分かった。よって、超微粒子活物質を負極活物質として用いた場合、その表面被膜の電気抵抗増大や、イオン伝導性の低下がが抑えられ、充放電効率が向上し、よってサイクル特性が向上することが考えられる。
従来、シリコンとリチウムの合金は知られていたものの、そのリチウムの吸蔵放出に際する体積変化が大きく、活物質である結晶が微細化するため、活物質の孤立化を生じ、充放電効率を低下させていた。その結果、サイクル劣化が大きい原因の一つとなっていた。そこで本発明者らは、負極活物質を超微粒子化し、リチウムの吸蔵放出に際する結晶の微細化を抑制することにより、充放電効率が向上し、その結果サイクル特性が向上することを見い出し、本発明に至った。さらに、本発明の超微粒子負極活物質を用いることで高出力放電が可能となり、低温特性も優れることも分かった。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
負極に用いる超微粒子活物質は、リチウムを吸蔵、放出できる物で有れば何れでもかまわない。例えば、リチウムと合金可能な元素でアルカリ土類金属や遷移金属、非金属の単体、酸化物、窒化物、硫化物、リン酸塩等が挙げられる。好ましくは、シリコン、ヒ素、アルミニウム、スズ、アンチモン、鉛、炭素を主成分とする合金であるが、本発明においては、そのリチウムの吸蔵能力の大きさから最も好ましいシリコンである。
【0014】
本発明に用いる超微粒子活物質は、粒子の粒径が0.1〜0.01μmである。超微粒子活物質の製造方法は、蒸着法、アルゴンスパッタ法、イオンコーター法、プラズマCVD法、光CVD法、熱CVD法、急冷法、熱プラズマ法や粉砕や分級が用いられる。粉砕方法として例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
【0015】
これらの超微粒子活物質を負極として用いる場合、例えば集電体上にアルゴンスパッタ法を用いて、直接超微粒子活物質層を得る方法や、急冷により得られた超微粒子活物質を粉砕することにより、バインダーや導電材と混練し集電体上にコーティングする方法が挙げられる。特に、集電体上に直接超微粒子活物質層を形成する方法は、バインダーや導電材、さらにコーティング作業が必要でないので好ましい。
【0016】
また、超微粒子活物質は、電子伝導性の優れたものがリチウムとの合金化に適していることも分かった。特に電子伝導度が常温で10-5Scm-1以上、好ましくは、1Scm-1以上あるものが充放電特性に優れていることが分かった。例えばシリコンの場合元来半導体であるが、負極活物質の主構成物質として用いる場合、該活物質と集電体との電子の流れが重要である。つまり、半導体であるシリコンに不純物をドーピングすることにより、外来半導体、特にp型半導体、n型半導体、p−n接合を有する半導体とすることにより、電子伝導性の良好なものが得られ、負極活物質としてより充放電特性の優れた特性が得られる。ここで言う不純物とは周期律表のすべての元素のうち、ドナー原子、アクセプター原子となり得るものであるが、好ましくはP,Al,As,Sb,B,Ga,In等であり、最も好ましくはBであるが、これらに限定されるものではない。また、格子欠陥の存在も電子伝導向上に寄与することが考えられる。上記不純物のドーピング方法としては、あらかじめ不純物の混入したシリコンをアルゴンスッパッタのターゲットとして用いる方法や、合金法、拡散法、イオン注入法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。不純物添加の濃度については、通常シリコン原子107 個から106 個にドナー原子あるいはアクセプター原子1個の割合であるが、好ましくは高濃度のドーピングが適しており、シリコン原子104 個にドナー原子あるいはアクセプター原子1個の割合、またはそれ以上の高濃度であることが望ましい。
【0017】
本発明に併せて用いることができる負極材料としては、リチウム金属、リチウム合金などや、リチウムイオンまたはリチウム金属を吸蔵放出できる焼成炭素質化合物やカルコゲン化合物、メチルリチウム等のリチウムを含有する有機化合物等が挙げられる。また、リチウム金属やリチウム合金、リチウムを含有する有機化合物を併用することによって、本発明に用いる超微粒子活物質にリチウムを電池内部で挿入することも可能である。
【0018】
本発明の超微粒子を粉末として用いる場合、電極合剤として導電剤や結着剤やフィラー等を添加することができる。導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば何でも良い。通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛など)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維や金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)粉、金属繊維、金属の蒸着、導電性セラミックス材料等の導電性材料を1種またはそれらの混合物として含ませることができる。これらの中で、黒鉛とアセチレンブラックとケッチェンブラックの併用が望ましい。その添加量は1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。
【0019】
結着剤としては、通常、テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、カルボキシメチルセルロース等といった熱可塑性樹脂、ゴム弾性を有するポリマー、多糖類等を1種または2種以上の混合物として用いることができる。また、多糖類の様にリチウムと反応する官能基を有する結着剤は、例えばメチル化するなどしてその官能基を失活させておくことが望ましい。その添加量としては、1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。
【0020】
フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料であれば何でも良い。通常、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、アエロジル、ゼオライト、ガラス、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は30重量%以下が好ましい。
【0021】
電極活物質の集電体としては、構成された電池において悪影響を及ぼさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、正極用集電体材料として、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス等の他に、接着性、導電性、耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理したものを用いることができる。負極用集電体材料として、銅、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、チタン、焼成炭素、炭素繊維、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金等の他に、接着性、導電性、耐酸化性向上の目的で、銅や炭素繊維群等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理したものを用いることができる。また、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系ポリマー、ポリイミド等のフィルム上に、銅、白金、金、銀等を蒸着によって形成したものを用いることができる。これらの材料については表面を酸化処理することも可能である。これらの形状については、圧延や電解によって製造されるフォイルの他、フィルム、シート、ネット、パンチ、エキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発砲体、繊維群の形成体等が用いられる。厚みは特に限定はないが、1〜500μmのものが用いられる。
【0022】
一方、正極活物質としては、MnO2 ,MoO3 ,V2 O5 ,Lix CoO2 ,Lix NiO2 ,Lix Mn2 O4 等の金属酸化物や、TiS2 ,MoS2 ,NbSe3 等の金属カルコゲン化物、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリアニリン等のグラファイト層間化合物、及び導電性高分子等のアルカリ金属イオンや、アニオンを吸放出可能な各種の物質を利用することができる。
【0023】
特に本発明の超微粒子活物質を負極活物質として用いる場合、高エネルギー密度という観点からV2 O5 ,MnO2 ,Lix CoO2 ,Lix NiO2 ,Lix Mn2 O4 等の3〜4Vの電極電位を有するものが望ましい。特にLix CoO2 ,Lix NiO2 ,Lix Mn2 O4 等のリチウム含有遷移金属酸化物が好ましい。
【0024】
また、電解質としては、例えば有機電解液、高分子固体電解質、無機固体電解質、溶融塩等を用いることができ、この中でも有機電解液を用いることが好ましい。この有機電解液の有機溶媒として、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン等のエステル類や、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の置換テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、ギ酸メチル、酢酸メチル、N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド等が挙げられ、これらを単独又は混合溶媒として用いることができる。
【0025】
本発明に用いられる電解質の主構成溶質としては、炭素を含む塩が好ましい。例えば、特開昭58−225045号公報で用いられている式:(Cn X2n+1Y)2 N- ,M+ で表せるものや、
下記一般式(2)(3):
(RSO2 )3 C- ,M+ ・・・・ 一般式(2)
(RSO2 )O- ,M+ ・・・・ 一般式(3)
で表せるものが好ましい。さらに好ましくは下記一般式(1)
(R1 SO2 )(R2 SO2 )NLi ・・・・ 一般式(1)
で表せるものを用いることである。
【0026】
上記式中のYはSO2 又はCO、RはCn F2n+1、R1 、R2 はCn F2n+1であり、nは1から4までの数であり、R1 =R2 又はR1 ≠R2 である。最も好ましくはR1 =R2 =CF3 、R1 =R2 =C2 F5 、あるいはR1 =CF3 、R2 =C4 F9 である。
【0027】
一方、固体電解質として、例えば無機固体電解質、有機固体電解質、無機有機固体電解質、溶融塩等を用いることができる。無機固体電解質には、リチウムの窒化物、ハロゲン化物、酸素酸塩、硫化リン化合物などがよく知られており、これらの1種または2種以上を混合して用いることができる。なかでも、Li3 N,LiI,Li5 NI2 ,Li3 N−LiI−LiOH,Li4 SiO4 ,Li4 SiO4 −LiI−LiOH,xLi3 PO4-(1-x) Li4 SiO4 ,Li2 SiS3 等が有効である。一方、有機固体電解質では、ポリエチレンオキサイド誘導体か、少なくとも該誘導体を含むポリマー、ポリプロピレンオキサイド誘導体か、少なくとも該誘導体を含むポリマー、ポリフォスファゼンや該誘導体、イオン解離基を含むポリマー、リン酸エステルポリマー誘導体、さらにポリビニルピリジン誘導体、ビスフェノールA誘導体、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンフルオライド、フッ素ゴム等に非水電解液を含有させた高分子マトリックス材料(ゲル電解質)等が有効である。
【0028】
セパレーターとしては、イオンの透過度が優れ、機械的強度のある絶縁性薄膜を用いることができる。耐有機溶剤性と疎水性からポリプロピレンやポリエチレンといったオレフィン系のポリマー、ガラス繊維、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等からつくられたシート、微孔膜、不織布、布等が用いられる。セパレーターの孔径は、一般に電池に用いられる範囲のものであり、例えば0.01〜10μmである。またその厚みについても同様で、一般に電池に用いられる範囲のものであり、例えば5〜300μmである。
【0029】
本発明の超微粒子活物質において、集電をとる目的で集電体と活物質の間に導電性接着層を設けることもできる。導電性接着剤として通常、銀ペースト、カーボンペーストが用いられる。また、結晶の一部をニッケルメッキすることによって、はんだや銀ロウのような溶融した金属による接合も可能である。
【0030】
この様に本発明は、非水電解質電池において負極活物質の主構成物質として、超微粒子活物質を用いることにより、金属リチウムに対し少なくとも0〜2Vの範囲でリチウムイオンを吸蔵放出することができ、また負極活物質が超微粒子であることから、通常の合金に見られる充放電時の微細粉化や負極活物質の部分的な孤立化が抑えられ低温特性も向上する。さらに、電解質の主構成溶質として炭素を含む塩を用いることにより、充放電効率に優れ、サイクル特性が良好な充放電特性の優れた非水電解質電池の負極として用いることができる。特に、負極活物質がシリコンの様な半導体の場合に高濃度の不純物をドープすることにより、電極内部での電子伝導性を向上させ、超微粒子活物質とリチウムの合金化をスムーズにし、充放電のレート特性が向上する。さらに正極活物質の主構成物質としてリチウム含有遷移金属酸化物を用いることにより、正極の電位が高いため、電池としての電圧が高電圧となり、またその容量が大きいことから高エネルギー密度が達成される。
【0031】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0032】
(実施例1)
シリコン原子104 個にB原子1個の割合でドープしたp型半導体であるシリコン単結晶をターゲットに用い、真空中、200W、2時間の条件で10μmの電解銅箔上にアルゴンスパッタを行い約3μmのシリコン層を得た。このシリコン層のSEM像を観察したところ、このシリコン層は粒径が0.1〜0.01μmである超微粒子であることを確認した。
【0033】
この超微粒子シリコン負極を5×5mmの大きさに切り出し、重量を測定し負極とした。次に、10×10mmのニッケル板にスポット溶接し、ワイヤーを取り付け試験電極とした。以下の操作は乾燥空気中で行い、材料はすべてあらかじめ十分に乾燥を行った後に用いた。適当な大きさの金属リチウムをニッケル板上に圧着したものを2個作製し、対極及び電位参照極とした。ビーカー中でエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比1:1の混合溶剤に(C2 F5 SO2 )2 NLiを1mol/リットル溶解した電解液を用い、上記で作製した3個の電極、即ち試験電極、対極、電位参照極を電解液中に浸漬し、三端子セルとした。この単極性能試験セルを(a)とする。
【0034】
(比較例1)
超微粒子以外のシリコンとしてシリコン単結晶を0.3×5×5mmの大きさに切り出し、重量を測定した。このシリコン単結晶をニッケルメッシュで挟み込み、負極として用いること以外は上記実施例1と同様にして単極性能試験セルを作製し同様の容量試験を行った。この単極性能試験セルを(b)とする。
【0035】
これらの単極性能試験セルを用いて充放電試験を行った。このセルに1mA電流を流し、電位参照極に対する試験極の電位が0.00〜2.00Vの範囲について容量試験を行った。この様に作製した単極性能試験セルの容量試験結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
超微粒子シリコンを用いた単極性能試験セル(a)に関してはリチウムの吸蔵放出が確認されたが、セル(b)についてはほとんどリチウムの吸蔵放出ができずリチウムの析出が観察された。さらに、この単極性能評価セル(a)を用いて10mAでの高率放電を行ったところ1mAにおける放電容量の約85%が得られた。また、−20℃における1mAでの低温放電を行ったところ、20℃での放電容量の約70%が得られた。
【0038】
この結果から明らかなように、本発明である超微粒子シリコンを用いた負極については、充放電サイクル性に優れ、高容量であり、高率放電や低温放電が可能であることが分かる。この理由については明確ではないが、次のように考えられる。即ち、粒子の大きなシリコンは、規則的な結晶配列を持っているため、リチウムが存在できる場が決められており、シリコン表面での反応は瞬時に進行するものの、内部への合金化反応が律速となり、急速な充電を行うとリチウムの析出が起こることが考えられる。それに比べて、超微粒子シリコンは粒子が細かいため反応する表面積が大きく、リチウムの吸着、合金化といった反応が同時進行し、急速充電や高率放電、低温放電時においても良好な特性が得られることが考えられる。また、リチウムの吸蔵放出の際に体積変化が生じても、超微粒子であるため結晶の崩壊が少なく、サイクル特性が向上することが考えられる。
【0039】
(実施例2)
実施例1で用いた負極を用いて次のようにしてコイン型非水電解質電池を試作した。この実施例1で用いた負極を直径16mmの円形に打ち抜き、減圧下200℃で15時間乾燥して負極2を得た。負極2は、アルゴンスパッタの際に基板として用いた10μmの電解銅箔である負極集電体7の面を負極缶5に装着して用いた。正極1は、正極活物質としてLiCoO2 とアセチレンブラック及びポリテトラフルオロエチレン粉末とを重量比85:10:5で混合し、トルエンを加えて十分混練した。これをローラープレスにより厚み0.8mmのシート状に成形した。次にこれを直径16mmの円形に打ち抜き、減圧下200℃で15時間乾燥して正極1を得た。正極1は正極集電体6の付いた正極缶4に圧着して用いた。エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比1:1の混合溶剤に(C2 F5 SO2 )2 NLiを1mol/リットル溶解した電解液を用い、セパレータ3にはポリプロピレン製微多孔膜を用いた。上記正極、負極、電解液及びセパレータを用いて直径20mm、厚さ1.6mmのコイン型リチウム電池を作製した。この電池を電池(A1)とする。
【0040】
(実施例3)
電解液の溶質として、(C2 F5 SO2 )2 NLiの代わりにLiBF4 を用い、それ以外は本発明と同様にして電池を作製した。得られた電池を電池(A2)とする。
【0041】
このようにして作製した本発明電池(A1)、(A2)を用いて充放電サイクル試験を行った。試験条件は、充電電流3mA、充電終止電圧4.1V、放電電流3mA、放電終止電圧3.0Vとした。これら作製した電池の充放電試験の結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
表2から分かるように、炭素を含む塩を用いた電池(A1)は、電解液の溶質にLiBF4 を用いた電池(A2)に比べて充放電特性に優れており、10サイクル後の減少が小さかった。この理由については明確ではないが、次のように考えられる。即ち、実施例3のようにLiBF4 を電解質に用いると、そのもののイオン伝導性は優れているものの、その溶質の分解等により電解液中にフッ化水素等の不純物が存在していることが考えられる。このような電解液を用いて超微粒子シリコンへのリチウムの吸蔵放出を行った場合、溶質から生じる不純物が超微粒子シリコン表面に存在する被膜と反応し、その表面被膜は電気抵抗が高くイオン伝導性の悪い被膜に変化することが考えられる。そのため、充放電を行う毎に電極抵抗が増大し、充放電効率を低下させ、よってサイクル劣化につながることが考えられる。一方、炭素を含む塩は分解しにくく、水との反応においてもフッ化水素等をほとんど放出しないため、超微粒子シリコンへのリチウムの吸蔵放出を行った場合、その表面での電気抵抗増大や、イオン伝導性の低下がが抑えられ、充放電効率が向上し、よってサイクル特性が向上することが考えられる。 上記においては、超微粒子活物質としてシリコンを、電解液の溶質として(C2 F5 SO2 )2 NLiについて挙げたが、同様の効果が超微粒子活物質として他の元素や化合物、また電解液として他の炭素を含む塩についても確認された。なお、本発明は上記実施例に記載された活物質の出発原料、製造方法、正極、負極、電解質、セパレータ及び電池形状などに限定されるものではない。
【0044】
【発明の効果】
本発明は上述の如く構成されているので、高電圧、高容量、高エネルギー密度で、優れた充放電サイクル特性を示し、急速充電特性、高率放電特性、低温放電特性に優れ、高出力で安全性の高い非水電解質電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るコイン型非水電解質電池の断面図である。
【符号の説明】
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 正極缶
5 負極缶
6 正極集電体
7 負極集電体
8 絶縁パッキング
Claims (4)
- 負極活物質の主構成物質として、粒径が0.1〜0.01μmであり、シリコン原子10 7 個にドナー原子またはアクセプター原子となり得る元素を1個以上の割合でドーピングしてなるシリコンを用いたことを特徴とする非水電解質電池。
- 前記シリコンは、電子伝導度が常温で10 −5 Scm −1 以上である請求項1記載の非水電解質電池。
- 非水電解質の主構成溶質が、下記一般式(1)
(R1SO 2 )(R2SO 2 )NLi ・・・・ 一般式(1)
(R1 、R2 はC n F 2n+1 で表され、nは1から4までの数であり、R1 =R2 又はR1 ≠R2 である)からなる塩であることを特徴とする請求項1又は2記載の非水電解質電池。 - 非水電解質の主構成溶質が、(C 2 H 5 SO 2 ) 2 NLiであることを特徴とする請求項1又は2記載の非水電解質電池。
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