JPH10195620A - シンクロールのない溶融めっき浴における鋼帯の形状制御方法及び装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋼帯搬入部に入る前に鋼帯の幅方向反りを解
消し、めっき浴のシールを容易にする。 【解決手段】 鋼帯４を挟んでターンロール５に対向配
置した反り制御ロール８の押し込みによって、ターンロ
ール５による曲げとは逆の曲げを鋼帯４に付与する。反
り制御ロール８の押し込みによって、鋼帯４の幅方向反
りが制御され、適正条件の選択によって幅方向反りが矯
正される。反り制御ロール８の押し込み量は、鋼帯４の
幅方向に関する鋼帯４の基準位置からのズレを測定する
ことによって、幅方向反りの程度に基づいて制御するこ
とができる。 【効果】 鋼帯の幅方向反りを容易かつ確実に矯正で
き、溶融めっき浴の下部の鋼帯搬入部のシールが容易と
なる。その結果安定的なめっきが行われる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、シンクロールのない溶
融めっき技術に関し、めっき浴内を連続的に鋼帯を通板
させて溶融めっきする際に、鋼帯搬入部に鋼帯を入れる
前に、鋼帯の幅方向反りを矯正する方法及び装置に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】耐食性に優れた亜鉛めっき鋼板、合金化
亜鉛めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板等は、溶融め
っき法で製造されている。被めっき材である鋼帯は、還
元焼鈍後に、スナウトを経て、溶融めっき浴に送り込ま
れ、シンクロールを周回し、溶融めっき浴から引き上げ
られる。引き上げ後、めっき付着量制御手段で、ガス吹
き付け等によって鋼帯の表面に付着している過剰の溶融
金属を除去し、めっき付着量を調整する。通常のこの溶
融めっきラインでは、めっき浴に浸漬しているシンクロ
ールが溶融めっき金属により浸食される。浸食は特に軸
受け部で激しく、ロールの円滑回転が損なわれ、シンク
ロールを煩雑に交換することを余儀なくされ、生産性が
低くなる。またシンクロールが異物を巻き込み、鋼帯表
面の品質上のトラブルとなる。このため、ロールのない
溶融めっき方式が特公昭５１−２０３３４号公報、特開
昭６３−３１０９４９号公報、特開平２−２９８２４７
号公報等に開示されている。それらにおいては、めっき
槽下部の鋼帯搬入部の周りに電磁力付加手段を設けて、
磁場引加により、溶融金属にかかる重力を主に電磁力と
バランスさせて鋼帯搬入部をシールしている。これらの
方式では、ロール交換する必要がないため、操業能率を
向上させることができる。まためっき浴内にシンクロー
ルを必要としないため、めっき槽を小容量化でき、めっ
き浴の加熱時間を短縮することができる。

【０００３】しかし、この溶融めっき方式において、鋼
帯の形状が悪いと、鋼帯と鋼帯搬入部との接触による鋼
帯の疵発生や、鋼帯搬入部の破損の恐れがあるため、鋼
帯搬入部のギャップをその分広くしなければならなくな
る。そのため、より多くの溶融金属を電磁力で保持しな
ければならなくなる。鋼帯搬入部のギャップ増加にとも
ない、例えば電磁力付加手段の間隔が広くなるため、磁
場は距離の２乗に反比例するので、ギャップが広くなる
とシールに必要な電磁力を保つには、電磁力付加手段を
強力にしなければならない。また鋼帯の形状が安定して
いないとめっき浴が振動し、溶融金属の流動による力が
加わるので、その分さらに強力な電磁力付加手段を用い
て電磁力を増加させなければならない。その対策とし
て、特開平５−８６４５０号公報に示される技術があ
る。鋼帯の形状不良としては幅方向反りや耳伸び及び中
伸びなどがあるが、シンクロールのない溶融めっき方式
で問題となるのは、主に幅方向の反りである。そこで
は、図１に示すように、めっき浴Ａに金属ストリップＢ
が進入するとき、鋼帯搬入部Ｃに高周波磁場印可装置Ｄ
を設置して、その電磁力によって溶融金属の流出を防止
すると共に金属ストリップの幅方向に生じたＣ字状の反
り（＝幅方向反り）の矯正と金属ストリップの振動の抑
制とを併せて図っている。なお、Ｅはガイド用ローラと
されている。しかし、この技術によっても鋼帯の幅方向
反りの抑制は十分ではない。鋼帯搬入部の最小ギャップ
量を決めるのは、鋼帯搬入部での鋼帯の最大幅方向反り
量であるが、鋼帯の鋼帯搬入部直前での幅方向反りが大
きいと、限られた高周波磁場印可装置によっては鋼帯搬
入部の幅方向反りが抑制されきれないことが起こり、ギ
ャップを広くするか、高周波磁場印可装置をより強力な
ものとしなければならない。そのため、鋼帯搬入部での
シールを容易にするには、鋼帯搬入部に入る前に幅方向
反りを抑制ないし矯正しておく必要がある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】鋼帯がターンロールで
曲げられると、長手方向に加え幅方向に関しても応力が
生じ、鋼帯がターンロールないしガイドロールから離れ
たときに幅方向応力による曲げモーメントが解放され、
鋼帯搬入部に入る前の幅方向反りが発生する。本発明
は、鋼帯搬入部に入る前の幅方向反りを矯正すべく案出
されたものであり、鋼帯を挟むようにターンロールと反
り抑制ロールを配置することにより、鋼帯の幅方向反り
を矯正し、鋼帯搬入部のシールを容易にすることを目的
とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明は、その目的を達
成するため、シンクロールのない溶融めっきラインにお
ける鋼帯の形状を制御するために、被めっき材である鋼
帯を、ターンロールを周回させた後、溶融めっき浴の下
部に設けられた鋼帯搬入部から導入する際、鋼帯を挟ん
でターンロールに対向配置した反り制御ロールで鋼帯を
押し曲げ、鋼帯の幅方向反りを矯正する。幅方向に関す
る鋼帯の基準位置からのズレ量を測定し、ズレ量に応じ
て反り制御ロールの押し込み量を制御することができ
る。また、鋼帯形状制御装置は、溶融めっき浴下部に配
置されたターンロールと、被めっき材を挟んでターンロ
ールに対向配置された反り制御ロールと、ターンロール
を周回した鋼帯が溶融めっき浴の下部に設けた鋼帯搬入
部に導入される位置に配置されたガイドロールとを備え
ており、反り制御ロールは、鋼帯を押し曲げるようにタ
ーンロール側に移動可能に配置されている。

【０００６】

【実施の形態】本発明による幅方向反りの制御は、図２
に示すように、行われる。すなわち、還元焼鈍等所望の
前処理を施された鋼帯４は、ターンロール５により上向
きに曲げられて、鋼帯搬入部６を通ってめっき槽２中の
めっき浴１へと送入されめっきされる。３は、めっき付
着量制御手段である。ターンロール５と鋼帯搬入部６の
前に配置されているガイドロール９との中間に、鋼帯４
を挟んで反り制御ロール８をターンロール５に対向配置
する。この位置関係にある反り制御ロール８を前進させ
て鋼帯４を押し曲げると、ターンロール５による曲げと
は逆の曲げが鋼帯４に付与される。このとき、鋼帯４は
ターンロール５を周回しているので、反り制御ロール８
を押し込んでもターンロール５による曲げは一定であ
り、反り制御ロール８の押し込みによって逆の曲げが付
与されるので、押し込み量の適正条件の選択によって幅
方向反りが抑制される。反り制御ロール８の押し込みに
より、ガイドロール９でも曲げが発生する。しかし、反
り制御ロール８からガイドロール９間での距離を、反り
制御ロール８からターンロール５間での距離に比較して
大きくすることにより、ガイドロール９での曲げの影響
は小さく、押し込み量の適正条件の選択で十分に対処可
能な範囲である。

【０００７】

【実施例】径８０６ｍｍのターンロール５、径４００ｍ
ｍの反り制御ロール８及び径３００ｍｍのガイドロール
９を、図２に示すように配置した。ターンロール５から
反り制御ロール８までの鉛直方向の距離を４００ｍｍ、
反り制御ロール８からガイドロール９までの鉛直方向の
距離を８００ｍｍに設定した。還元焼鈍により表面を活
性化した板厚０．８ｍｍ及び２．０ｍｍ、板幅１２２０
ｍｍ、材料温度４９０℃、通板速度１００ｍ／分で、２
種類のＡｌキルド鋼帯４を溶融めっき浴１に導入した。
このとき、鋼帯搬入部６における鋼帯４の幅方向反りの
程度を確認するために、反り制御ロール８の押し込み量
を変化させて、押し込み量と幅方向反りとの関係を調査
した。図３（板厚０．８ｍｍの場合）、図４（板厚２．
０ｍｍの場合）にそれぞれの調査結果を示す。図３及び
図４にみられるように、反り制御ロールの押し込み量が
０の場合には、ターンロール５で発生した幅方向反りは
かなり大きく、このままでは鋼帯搬入部６のギャップを
かなり広くしなければならない。図４においては、５０
ｍｍ以上の幅方向反りである。しかし反り制御ロール８
の押し込みにより、幅方向反りは低減される。反り制御
ロール８の押し込みによって、ターンロールで発生した
幅方向反りとは逆の反りが与えられると解釈されるが、
ガイドロール９の影響も受け、反り制御ロールの押し込
み量を増加していくと、逆の反りが単調に増加していく
のではなく、反り制御ロール８の押し込みに対する幅方
向反りの変化が少ない領域が生じることが明らかになっ
た。

【０００８】

【比較例】比較のために、図５のように反り制御ロール
８を鋼帯４を挟んでガイドロール９に対向配置した場合
の、板厚０．８ｍｍの場合について、押し込み量と幅方
向反りとの関係も調査した。反り制御ロール８の径は、
ターンロール５と反り制御ロール８とが離れている分、
図２の場合よりも小さくし２５０ｍｍとした。ターンロ
ール５から反り制御ロール８までの鉛直方向の距離を９
００ｍｍ、反り制御ロール８からガイドロール９までの
鉛直方向の距離を４００ｍｍに設定した。溶融めっきは
実施例の場合と同条件で実施した。図６に調査結果を示
す。図６にみられるように、反り制御ロール８の押し込
みにより、幅方向反りはやはり低減されるが、反り制御
ロール８の押し込み量を更に増加させると、ガイドロー
ル９の影響を大きく受けて、幅方向反りがかえって増加
してきてしまい、幅方向反りを所望量以下に矯正・抑制
できる押し込み量の設定範囲が非常に狭くなることがわ
かった。以上のことからわかるように、反り制御ロール
８は、ガイドロール９から遠く、ターンロール５に近い
位置に対向配置することが重要である。なお、図３、図
４及び図６においては、ターンロール５で発生する幅方
向反りの向きをプラスとしている。

【０００９】反り制御ロール８の押し込み量は、幅方向
に関する鋼帯４の基準位置からのズレに応じて制御する
ことができる。例えば、図７に示すように、反り測定器
１０の渦電流センサー等により幅方向反りを測定する。
すなわち、鋼帯の中央と両端とのそれぞれの基準位置か
らの距離の差から幅方向反りの程度・向きを検出・測定
し、測定結果に応じて、例えば図３、図４を利用して、
反り制御ロール８の押し込み所要量を算定して制御し、
幅方向反りを解消する。

【００１０】

【発明の効果】以上に説明したように、本発明において
は、鋼帯を挟んでターンロールに対向する反り制御ロー
ルを設け、反り制御ロールの押し込みによって鋼帯の幅
方向反りを矯正している。この方法によるとき、鋼帯の
幅方向反りを容易かつ確実に矯正でき、溶融めっき浴の
下部の鋼帯搬入部のシールが容易となる。その結果安定
的なめっきが行われる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 電磁力シール機構を付設したシンクロールの
ない溶融めっき装置の従来例

【図２】 本発明に従って、ターンロールに反り制御ロ
ールを対向配置した溶融めっき装置

【図３】 本発明に従ったロール配置での、板厚０．８
ｍｍの鋼帯の幅方向反りに及ぼす反り制御ロールの押し
込み量の影響

【図４】 本発明に従ったロール配置での、板厚２．０
ｍｍの鋼帯の幅方向反りに及ぼす反り制御ロールの押し
込み量の影響

【図５】 ガイドロールに反り制御ロールを対向配置し
た比較例

【図６】 ガイドロールに反り制御ロールを対向配置し
た場合の、板厚０．８ｍｍの鋼帯の幅方向反りに及ぼす
反り制御ロールの押し込み量の影響

【図７】 幅方向に関する鋼帯の基準位置からのズレに
基づいて反り制御ロールの押し込み量を制御する機構

【符号の説明】

Ａ：めっき浴 Ｂ：金属ストリップ Ｃ：鋼帯搬入部
Ｄ：高周波磁場印可装置Ｅ：ガイド用ローラ １：溶融めっき浴 ２：めっき槽 ３：めっき付着量制
御手段 ４：鋼帯 ５：ターンロール ６：鋼帯搬入部
７：電磁力付加手段 ８：反り制御ロール ９：ガイ
ドロール １０：反り測定器 １１：押し込み量制御装
置

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 被めっき材である鋼帯を、ターンロール
   を周回させた後、溶融めっき浴の下部に設けた鋼帯搬入
   部から導入する際、鋼帯を挟んでターンロールに対向配
   置した反り制御ロールで鋼帯を押し曲げ、鋼帯の幅方向
   反りを抑制することを特徴とする、シンクロールのない
   溶融めっき浴内を連続的に鋼帯を通すための鋼帯の形状
   制御方法。
2. 【請求項２】 幅方向に関する鋼帯の基準位置からのズ
   レ量を測定し、そのズレ量に応じて、反り制御ロールの
   押し込み量を制御する請求項１記載のシンクロールのな
   い溶融めっき浴内を連続的に鋼帯を通すための鋼帯の形
   状制御方法。
3. 【請求項３】 溶融めっき浴下部に配置されたターンロ
   ールと、被めっき材を挟んでターンロールに対向配置さ
   れた反り制御ロールと、ターンロールを周回した鋼帯が
   溶融めっき浴の下部に設けた鋼帯搬入部に導入される位
   置に配置されたガイドロールとを備え、反り制御ロール
   は、鋼帯を押し曲げるようにターンロール側に移動可能
   に配置されていることを特徴とする、シンクロールのな
   い溶融めっき浴内を連続的に鋼帯を通すための鋼帯の形
   状制御装置。