JPH10190143A - 圧縮歪多重量子井戸構造 - Google Patents
圧縮歪多重量子井戸構造Info
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- JPH10190143A JPH10190143A JP34325396A JP34325396A JPH10190143A JP H10190143 A JPH10190143 A JP H10190143A JP 34325396 A JP34325396 A JP 34325396A JP 34325396 A JP34325396 A JP 34325396A JP H10190143 A JPH10190143 A JP H10190143A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】井戸層と障壁層との間の歪の食い違いを小さく
して、障壁層の不安定性に起因する多重量子井戸構造
(MQW)の破壊を防止した構造が安定で光学特性にす
ぐれた圧縮歪多重量子井戸構造を提供する。 【解決手段】InP基板に対して、少なくとも圧縮歪を
有するInGaAs井戸層と、圧縮歪を有するInGa
AsPの障壁層もしくはInGaAsの障壁層を積層し
てなる圧縮歪多重量子井戸構造とする。
して、障壁層の不安定性に起因する多重量子井戸構造
(MQW)の破壊を防止した構造が安定で光学特性にす
ぐれた圧縮歪多重量子井戸構造を提供する。 【解決手段】InP基板に対して、少なくとも圧縮歪を
有するInGaAs井戸層と、圧縮歪を有するInGa
AsPの障壁層もしくはInGaAsの障壁層を積層し
てなる圧縮歪多重量子井戸構造とする。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は量子井戸層(以下、
井戸層と言う)に圧縮歪を持つ圧縮歪多重量子井戸構造
に関する。
井戸層と言う)に圧縮歪を持つ圧縮歪多重量子井戸構造
に関する。
【0002】
【従来の技術】厚さが数十Åの井戸層を、それよりもバ
ンドギャップの大きい障壁層で挟み、それらを多層に積
層した多重量子井戸構造(MQW)は、現在の光半導体
素子の活性層に広く利用されている。近年、井戸層に圧
縮歪を導入した歪MQWを活性層に用いたレーザが、従
来の基板に格子整合した井戸層を有するMQWに較べ、
素子特性(しきい値電流、光出力など)が向上すること
を多くの研究機関から報告されている。しかしながら、
所望の歪量を持つ井戸層を、基板に格子整合した障壁層
で挟み、それらを交互に多層に積層してMQWを形成す
ると、MQW全体の厚さが所定の臨界値(いわゆる、臨
界膜厚)を超えると、基板とMQWとの界面にミスフィ
ット転位が発生する。井戸層の歪が大きい程、臨界膜厚
は小さくなる。これは、井戸層の歪による応力が井戸層
の数が増えるごとに蓄積され、この応力がミスフィット
転位の発生を招くからである。素子特性を向上させるた
めには、大きな歪を掛ける必要はあるが、MQWの厚さ
は臨界膜厚により制限される。これを避けるために、歪
補償型MQWが提案されている。この歪補償型MQWで
は、圧縮歪を有する井戸層に対し、引張り歪を有する障
壁層を組合せることにより、ミスフィット転位を発生さ
せる応力を相殺させ、ミスフィット転位の発生を抑制す
るものである。歪補償型MQWを作製する際には、ガイ
ドラインとして、次の(数1)式で定義される実効歪ε
を、ほぼゼロにすることが提案されている〔B.I.Miller
et.al.,Appl.Phys.Lett.,58(1991)1952〕。
ンドギャップの大きい障壁層で挟み、それらを多層に積
層した多重量子井戸構造(MQW)は、現在の光半導体
素子の活性層に広く利用されている。近年、井戸層に圧
縮歪を導入した歪MQWを活性層に用いたレーザが、従
来の基板に格子整合した井戸層を有するMQWに較べ、
素子特性(しきい値電流、光出力など)が向上すること
を多くの研究機関から報告されている。しかしながら、
所望の歪量を持つ井戸層を、基板に格子整合した障壁層
で挟み、それらを交互に多層に積層してMQWを形成す
ると、MQW全体の厚さが所定の臨界値(いわゆる、臨
界膜厚)を超えると、基板とMQWとの界面にミスフィ
ット転位が発生する。井戸層の歪が大きい程、臨界膜厚
は小さくなる。これは、井戸層の歪による応力が井戸層
の数が増えるごとに蓄積され、この応力がミスフィット
転位の発生を招くからである。素子特性を向上させるた
めには、大きな歪を掛ける必要はあるが、MQWの厚さ
は臨界膜厚により制限される。これを避けるために、歪
補償型MQWが提案されている。この歪補償型MQWで
は、圧縮歪を有する井戸層に対し、引張り歪を有する障
壁層を組合せることにより、ミスフィット転位を発生さ
せる応力を相殺させ、ミスフィット転位の発生を抑制す
るものである。歪補償型MQWを作製する際には、ガイ
ドラインとして、次の(数1)式で定義される実効歪ε
を、ほぼゼロにすることが提案されている〔B.I.Miller
et.al.,Appl.Phys.Lett.,58(1991)1952〕。
【0003】
【数1】
【0004】上記(数1)式中のhとHは、それぞれ井
戸層と障壁層の厚さ、εwとεbは、それぞれ井戸層と障
壁層の歪(引張り歪は−、圧縮歪は+の符号を付す)を
表わす。すなわち、実効歪εをできるだけ小さくするよ
うに井戸層および障壁層の厚さと歪を選ぶことが、ミス
フィット転位の無い多重量子井戸層を成長させるための
条件となる。歪補償型MQWにおいては、圧縮歪を有す
る井戸層と引張り歪を有する障壁層を組み合わせるため
に、井戸層と障壁層の界面に大きな歪の食い違いが存在
する。そのため井戸層の上に障壁層を成長する際に、障
壁層が層状に成長せずに3次元的な島状に成長すること
が知られている。そして、島状となったもの同士が合体
して層状に成長するときに欠陥(ミスフィット転位以外
の欠陥)が入り、MQWの光学特性を劣化させていた。
また、障壁層の上に井戸層を成長する時にも上記と同様
の欠陥が生じる。このような欠陥は、井戸層と障壁層の
歪の食い違いが大きいほど顕著となり、また成長温度が
高いほど欠陥が顕著となる。したがって、歪補償型MQ
Wにおいては実効歪をほぼ完全にゼロ(零)にしても、
ミスフィット転位以外の欠陥により光学特性が劣化する
という問題が生じる。上記島状成長の発生を抑制するた
めに、井戸層と障壁層の界面に中間層を入れる試みが行
われている。中間層としては、基板と同じ組成の層(
X.S.Jiang et.al.,Appl.Phys.Lett.vol.65,pp2536〜253
8,1994年)、あるいは、井戸層と障壁層の中間の組成
を有する層(S.Ishikawa et.al.,Tech.Dig.of Topica
l Meet.on Optical Amplical Amplifiers and Their Ap
plications,Breckenridge,Colorado,p.43,1994年)を
導入することが試みられている。上記は、圧縮歪の掛
かったInAs0.66P0.34井戸層と引張り歪の掛かった
In0.74Ga0.26P障壁層の界面に基板と同じ組成のI
nP層を挿入した歪補償型多重量子井戸構造をInP基
板上に成長させている。井戸層の歪は+2.13%、障
壁層の歪は−1.82%である。上記は、圧縮歪の掛
かったIn0.24Ga0.76As井戸層と基板に格子整合す
るGaAs障壁層との界面に井戸層と障壁層の中間組成
を有するIn0.12Ga0.88Asを挿入した歪多重量子井
戸構造をGaAs基板上に成長させている。この場合の
井戸層の歪は+1.72%である。この中間層を挿入し
た歪多重量子井戸構造は、組成の異なる井戸層、中間
層、障壁層を多重に積層した構造となるため、構造が複
雑になり、そのため製作が困難になるという欠点があ
る。
戸層と障壁層の厚さ、εwとεbは、それぞれ井戸層と障
壁層の歪(引張り歪は−、圧縮歪は+の符号を付す)を
表わす。すなわち、実効歪εをできるだけ小さくするよ
うに井戸層および障壁層の厚さと歪を選ぶことが、ミス
フィット転位の無い多重量子井戸層を成長させるための
条件となる。歪補償型MQWにおいては、圧縮歪を有す
る井戸層と引張り歪を有する障壁層を組み合わせるため
に、井戸層と障壁層の界面に大きな歪の食い違いが存在
する。そのため井戸層の上に障壁層を成長する際に、障
壁層が層状に成長せずに3次元的な島状に成長すること
が知られている。そして、島状となったもの同士が合体
して層状に成長するときに欠陥(ミスフィット転位以外
の欠陥)が入り、MQWの光学特性を劣化させていた。
また、障壁層の上に井戸層を成長する時にも上記と同様
の欠陥が生じる。このような欠陥は、井戸層と障壁層の
歪の食い違いが大きいほど顕著となり、また成長温度が
高いほど欠陥が顕著となる。したがって、歪補償型MQ
Wにおいては実効歪をほぼ完全にゼロ(零)にしても、
ミスフィット転位以外の欠陥により光学特性が劣化する
という問題が生じる。上記島状成長の発生を抑制するた
めに、井戸層と障壁層の界面に中間層を入れる試みが行
われている。中間層としては、基板と同じ組成の層(
X.S.Jiang et.al.,Appl.Phys.Lett.vol.65,pp2536〜253
8,1994年)、あるいは、井戸層と障壁層の中間の組成
を有する層(S.Ishikawa et.al.,Tech.Dig.of Topica
l Meet.on Optical Amplical Amplifiers and Their Ap
plications,Breckenridge,Colorado,p.43,1994年)を
導入することが試みられている。上記は、圧縮歪の掛
かったInAs0.66P0.34井戸層と引張り歪の掛かった
In0.74Ga0.26P障壁層の界面に基板と同じ組成のI
nP層を挿入した歪補償型多重量子井戸構造をInP基
板上に成長させている。井戸層の歪は+2.13%、障
壁層の歪は−1.82%である。上記は、圧縮歪の掛
かったIn0.24Ga0.76As井戸層と基板に格子整合す
るGaAs障壁層との界面に井戸層と障壁層の中間組成
を有するIn0.12Ga0.88Asを挿入した歪多重量子井
戸構造をGaAs基板上に成長させている。この場合の
井戸層の歪は+1.72%である。この中間層を挿入し
た歪多重量子井戸構造は、組成の異なる井戸層、中間
層、障壁層を多重に積層した構造となるため、構造が複
雑になり、そのため製作が困難になるという欠点があ
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、従来
の歪補償型MQWにおいては、井戸層と障壁層の界面に
大きな歪の食い違いが存在する。そのため、井戸層の上
に障壁層を成長する際に、障壁層は層状に成長せずに3
次元的な島状に成長し、島状に成長したもの同士が合体
するときに欠陥(ミスフィット転位以外の欠陥)が生
じ、MQWの光学特性を劣化させていた。また、障壁層
の上に井戸層を成長する時もにも上記と同様の欠陥が生
じるので、歪補償型MQWにおいては実効歪をほぼゼロ
(零)にしてもミスフィット転位以外の欠陥により光学
特性が劣化するという問題があった。また、上記島状成
長の発生を抑制するために、井戸層と障壁層の界面に中
間層(基板と同じ組成の層、または井戸層と障壁層の中
間の組成を有する層)を挿入する試みがなされている
が、構造が複雑になるため製作が困難になるという欠点
があった。
の歪補償型MQWにおいては、井戸層と障壁層の界面に
大きな歪の食い違いが存在する。そのため、井戸層の上
に障壁層を成長する際に、障壁層は層状に成長せずに3
次元的な島状に成長し、島状に成長したもの同士が合体
するときに欠陥(ミスフィット転位以外の欠陥)が生
じ、MQWの光学特性を劣化させていた。また、障壁層
の上に井戸層を成長する時もにも上記と同様の欠陥が生
じるので、歪補償型MQWにおいては実効歪をほぼゼロ
(零)にしてもミスフィット転位以外の欠陥により光学
特性が劣化するという問題があった。また、上記島状成
長の発生を抑制するために、井戸層と障壁層の界面に中
間層(基板と同じ組成の層、または井戸層と障壁層の中
間の組成を有する層)を挿入する試みがなされている
が、構造が複雑になるため製作が困難になるという欠点
があった。
【0006】本発明の目的は、上記従来技術における問
題点を解消し、井戸層と障壁層との間の歪の食い違いを
小さくして、障壁層の不安定性に起因する多重量子井戸
構造(MQW)の破壊を防止できる構造の安定した圧縮
歪多重量子井戸構造を提供することにある。
題点を解消し、井戸層と障壁層との間の歪の食い違いを
小さくして、障壁層の不安定性に起因する多重量子井戸
構造(MQW)の破壊を防止できる構造の安定した圧縮
歪多重量子井戸構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記本発明の目的を達成
するために、本発明は特許請求の範囲に記載のような構
成とするものである。すなわち、本発明は請求項1に記
載のように、InP基板に対して、少なくとも圧縮歪を
有するInGaAs井戸層と、圧縮歪を有するInGa
AsPの障壁層もしくはInGaAsの障壁層を積層し
た圧縮歪多重量子井戸構造とするものである。また、本
発明は請求項2に記載のように、請求項1において、井
戸層の数が2層である圧縮歪多重量子井戸構造とするも
のである。また、本発明は請求項3に記載のように、請
求項1または請求項2において、圧縮歪量子井戸構造の
発光波長が2μm帯である圧縮歪多重量子井戸構造とす
るものである。本発明の圧縮歪多重量子井戸構造は、請
求項1に記載のように、InP基板に対して、少なくと
も圧縮歪を有するInGaAs井戸層と、圧縮歪を有す
るInGaAsPの障壁層もしくはInGaAsの障壁
層の積層構造とすることにより、圧縮歪の井戸層と圧縮
歪の障壁層との間における歪の食い違いを小さくするこ
とができるので、障壁層の組成分離が抑制され、そのた
め多重量子井戸構造(MQW)が構造的に安定し、障壁
層の不安定性に起因するMQWの破壊を防止できる効果
がある。また、請求項2または請求項3に記載のよう
に、例えば、圧縮歪多重量子井戸構造の井戸層の数を2
層〔図2(a)、(b)、(c)〕とすることにより、
発光波長が2μm帯で、光学特性に優れ安定した構造の
圧縮歪多重量子井戸構造(MQW)を実現できる効果が
ある。本発明の圧縮歪多重量子井戸構造(MQW)は、
圧縮歪の井戸層と圧縮歪の障壁層とを組合せているの
で、井戸層と障壁層との間の歪の食い違いが小さくなる
ため、障壁層の組成分離が抑制される。そのため圧縮歪
多重量子井戸構造が構造的に安定となる。また、井戸層
の圧縮歪を大きくして、例えば2μm以上の発光波長が
得られる1.6%以上としても、障壁層に圧縮歪を掛け
ることにより、井戸層と障壁層との間の歪の食い違いを
小さくすることができ、欠陥が無く光学特性に優れた圧
縮歪多重量子井戸構造を実現することができる。図1
(a)、(b)は、本発明の基本構造を示す模式図であ
り、図1(a)に圧縮歪多重量子井戸構造を、図1
(b)に、その圧縮歪の分布を示す。図において、半導
体単結晶からなる基板1の上に、井戸層3と障壁層4か
らなる圧縮歪多重量子井戸構造2が構成されている。井
戸層3と障壁層4は交互に積層され、井戸層3にキャリ
アが閉じ込められる構造となっている。図1(a)は、
井戸層3の数が6層で、障壁層4の数が6層の場合を示
している。井戸層3には圧縮歪εwが掛かっており、障
壁層4にも圧縮歪εbが掛かっている。比較のために、
従来の歪多重量子井戸構造の歪分布を図4に示す。図4
においては、井戸層3は圧縮歪εwであるが、障壁層4
には引張り歪εbが掛かっている。すなわち、井戸層3
の歪と障壁層4の歪は異符号である点が本発明の圧縮歪
多重量子井戸構造と異なるところである。従来の歪多重
量子井戸構造においては、井戸層3が圧縮歪の場合に、
障壁層4は、基板に格子整合するか、あるいは引張り歪
を掛けていた。また、本発明の圧縮歪多重量子井戸構造
においては中間層を用いていない。
するために、本発明は特許請求の範囲に記載のような構
成とするものである。すなわち、本発明は請求項1に記
載のように、InP基板に対して、少なくとも圧縮歪を
有するInGaAs井戸層と、圧縮歪を有するInGa
AsPの障壁層もしくはInGaAsの障壁層を積層し
た圧縮歪多重量子井戸構造とするものである。また、本
発明は請求項2に記載のように、請求項1において、井
戸層の数が2層である圧縮歪多重量子井戸構造とするも
のである。また、本発明は請求項3に記載のように、請
求項1または請求項2において、圧縮歪量子井戸構造の
発光波長が2μm帯である圧縮歪多重量子井戸構造とす
るものである。本発明の圧縮歪多重量子井戸構造は、請
求項1に記載のように、InP基板に対して、少なくと
も圧縮歪を有するInGaAs井戸層と、圧縮歪を有す
るInGaAsPの障壁層もしくはInGaAsの障壁
層の積層構造とすることにより、圧縮歪の井戸層と圧縮
歪の障壁層との間における歪の食い違いを小さくするこ
とができるので、障壁層の組成分離が抑制され、そのた
め多重量子井戸構造(MQW)が構造的に安定し、障壁
層の不安定性に起因するMQWの破壊を防止できる効果
がある。また、請求項2または請求項3に記載のよう
に、例えば、圧縮歪多重量子井戸構造の井戸層の数を2
層〔図2(a)、(b)、(c)〕とすることにより、
発光波長が2μm帯で、光学特性に優れ安定した構造の
圧縮歪多重量子井戸構造(MQW)を実現できる効果が
ある。本発明の圧縮歪多重量子井戸構造(MQW)は、
圧縮歪の井戸層と圧縮歪の障壁層とを組合せているの
で、井戸層と障壁層との間の歪の食い違いが小さくなる
ため、障壁層の組成分離が抑制される。そのため圧縮歪
多重量子井戸構造が構造的に安定となる。また、井戸層
の圧縮歪を大きくして、例えば2μm以上の発光波長が
得られる1.6%以上としても、障壁層に圧縮歪を掛け
ることにより、井戸層と障壁層との間の歪の食い違いを
小さくすることができ、欠陥が無く光学特性に優れた圧
縮歪多重量子井戸構造を実現することができる。図1
(a)、(b)は、本発明の基本構造を示す模式図であ
り、図1(a)に圧縮歪多重量子井戸構造を、図1
(b)に、その圧縮歪の分布を示す。図において、半導
体単結晶からなる基板1の上に、井戸層3と障壁層4か
らなる圧縮歪多重量子井戸構造2が構成されている。井
戸層3と障壁層4は交互に積層され、井戸層3にキャリ
アが閉じ込められる構造となっている。図1(a)は、
井戸層3の数が6層で、障壁層4の数が6層の場合を示
している。井戸層3には圧縮歪εwが掛かっており、障
壁層4にも圧縮歪εbが掛かっている。比較のために、
従来の歪多重量子井戸構造の歪分布を図4に示す。図4
においては、井戸層3は圧縮歪εwであるが、障壁層4
には引張り歪εbが掛かっている。すなわち、井戸層3
の歪と障壁層4の歪は異符号である点が本発明の圧縮歪
多重量子井戸構造と異なるところである。従来の歪多重
量子井戸構造においては、井戸層3が圧縮歪の場合に、
障壁層4は、基板に格子整合するか、あるいは引張り歪
を掛けていた。また、本発明の圧縮歪多重量子井戸構造
においては中間層を用いていない。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の圧縮歪多重量子井戸構造
を、2μm帯域の発光波長を有する多重量子井戸構造に
適用した場合について、図2(a)、(b)、(c)を
用いて説明する。図2(a)は圧縮歪多重量子井戸構造
の構成を示し、図2(b)はその歪分布を示し、図2
(c)はそのバンドギャップの構成を示す図である。図
において、井戸層として、圧縮歪を1.6%掛けた厚さ
120ÅのInGaAs井戸層13を、障壁層として、
厚さ200ÅのInGaAs障壁層14を用い、上記井
戸層13の数を2層としたものである。次に、図2
(a)に示す圧縮歪多重量子井戸構造の作製手順につい
て説明する。まず、n−InP(001)基板11上
に、バンドギャップ波長1.3μmのInGaAsP光
閉じ込め層15を形成し、その上にInGaAs障壁層
14、InGaAs井戸層13、InGaAs障壁層1
4、InGaAs井戸層13、InGaAs障壁層14
の順に積層し、その上にバンドギャップ波長1.3μm
のInGaAsP光閉じ込め層15とInP層16を形
成した。InGaAsP光閉じ込め層15は、n−In
P(001)基板11に格子整合させた。成長は有機金
属分子線エピタキシー法を用い、成長温度は520℃で
行った。作製した圧縮歪多重量子井戸構造の発光波長は
2.06μmであった。図3は、上記の手順で作製した
圧縮歪多重量子井戸構造の効果を示す図であり、横軸に
障壁層の歪(%)をとり、縦軸に多重量子井戸構造のP
L強度(任意単位)をとっている。圧縮歪の場合はプラ
ス(+)に、引張り歪の場合をマイナス(−)とした。
黒丸印はPL強度を示し、黒丸印を貫いている矢印で示
す線分の幅は、PL強度のばらつきを示している。曲線
はPL強度と障壁層の歪との関係を示す。障壁層の歪が
ゼロのときには発光しなかった。障壁層の歪を圧縮歪と
し、その値を+0.2%、+0.4%とすると強い発光が
得られた。さらに、圧縮歪を増加すると+0.6%にお
いてPL強度は劣化した。逆に、実効歪がゼロとなるよ
うに、障壁層の歪を引張り歪とし、その値を−0.64
%としたときには発光しなかった。また、図3は圧縮歪
の井戸層に対し、歪の食い違いの小さい圧縮歪をもつ障
壁層を組合せると、歪多重量子井戸構造が安定化し、強
い発光が得られることを示している。これは、図3にお
ける障壁層の歪が+0.2%と+0.4%の場合において
如実に示している。障壁層歪を+0.6%とした場合に
PL発光強度が減少した原因は、多重量子井戸構造全体
の歪が大きくなり過ぎたために、ミスフィット転位が形
成されたことを示している。一方、図3は、圧縮歪の井
戸層に対し歪の食い違いの大きい引張り歪をもつ障壁層
を組合せると、歪多重量子井戸構造が不安定化し、発光
が得られることを示している。
を、2μm帯域の発光波長を有する多重量子井戸構造に
適用した場合について、図2(a)、(b)、(c)を
用いて説明する。図2(a)は圧縮歪多重量子井戸構造
の構成を示し、図2(b)はその歪分布を示し、図2
(c)はそのバンドギャップの構成を示す図である。図
において、井戸層として、圧縮歪を1.6%掛けた厚さ
120ÅのInGaAs井戸層13を、障壁層として、
厚さ200ÅのInGaAs障壁層14を用い、上記井
戸層13の数を2層としたものである。次に、図2
(a)に示す圧縮歪多重量子井戸構造の作製手順につい
て説明する。まず、n−InP(001)基板11上
に、バンドギャップ波長1.3μmのInGaAsP光
閉じ込め層15を形成し、その上にInGaAs障壁層
14、InGaAs井戸層13、InGaAs障壁層1
4、InGaAs井戸層13、InGaAs障壁層14
の順に積層し、その上にバンドギャップ波長1.3μm
のInGaAsP光閉じ込め層15とInP層16を形
成した。InGaAsP光閉じ込め層15は、n−In
P(001)基板11に格子整合させた。成長は有機金
属分子線エピタキシー法を用い、成長温度は520℃で
行った。作製した圧縮歪多重量子井戸構造の発光波長は
2.06μmであった。図3は、上記の手順で作製した
圧縮歪多重量子井戸構造の効果を示す図であり、横軸に
障壁層の歪(%)をとり、縦軸に多重量子井戸構造のP
L強度(任意単位)をとっている。圧縮歪の場合はプラ
ス(+)に、引張り歪の場合をマイナス(−)とした。
黒丸印はPL強度を示し、黒丸印を貫いている矢印で示
す線分の幅は、PL強度のばらつきを示している。曲線
はPL強度と障壁層の歪との関係を示す。障壁層の歪が
ゼロのときには発光しなかった。障壁層の歪を圧縮歪と
し、その値を+0.2%、+0.4%とすると強い発光が
得られた。さらに、圧縮歪を増加すると+0.6%にお
いてPL強度は劣化した。逆に、実効歪がゼロとなるよ
うに、障壁層の歪を引張り歪とし、その値を−0.64
%としたときには発光しなかった。また、図3は圧縮歪
の井戸層に対し、歪の食い違いの小さい圧縮歪をもつ障
壁層を組合せると、歪多重量子井戸構造が安定化し、強
い発光が得られることを示している。これは、図3にお
ける障壁層の歪が+0.2%と+0.4%の場合において
如実に示している。障壁層歪を+0.6%とした場合に
PL発光強度が減少した原因は、多重量子井戸構造全体
の歪が大きくなり過ぎたために、ミスフィット転位が形
成されたことを示している。一方、図3は、圧縮歪の井
戸層に対し歪の食い違いの大きい引張り歪をもつ障壁層
を組合せると、歪多重量子井戸構造が不安定化し、発光
が得られることを示している。
【0009】
【発明の効果】本発明の圧縮歪多重量子井戸構造は、圧
縮歪の井戸層と圧縮歪の障壁層とを組合せているので、
井戸層と障壁層との間における歪の食い違いを小さくす
ることができるため障壁層の組成分離が抑制される。し
たがって、歪多重量子井戸構造が構造的に安定となる。
また、井戸層の圧縮歪を大きくし、2μm以上の発光波
長が得られる1.6%以上としても、障壁層に圧縮歪を
掛けることにより、井戸層と障壁層の間の歪の食い違い
を小さくできるので、欠陥の無い安定した歪多重量子井
戸構造が得られる効果がある。
縮歪の井戸層と圧縮歪の障壁層とを組合せているので、
井戸層と障壁層との間における歪の食い違いを小さくす
ることができるため障壁層の組成分離が抑制される。し
たがって、歪多重量子井戸構造が構造的に安定となる。
また、井戸層の圧縮歪を大きくし、2μm以上の発光波
長が得られる1.6%以上としても、障壁層に圧縮歪を
掛けることにより、井戸層と障壁層の間の歪の食い違い
を小さくできるので、欠陥の無い安定した歪多重量子井
戸構造が得られる効果がある。
【図1】本発明の圧縮歪多重量子井戸構造の基本構造を
示す模式図。
示す模式図。
【図2】本発明の実施の形態で例示した圧縮歪多重量子
井戸構造と歪分布とバンドギャップの構成を示す模式
図。
井戸構造と歪分布とバンドギャップの構成を示す模式
図。
【図3】本発明の実施の形態で例示した圧縮歪多重量子
井戸構造の光学特性を示す図。
井戸構造の光学特性を示す図。
【図4】従来の歪多重量子井戸構造の歪分布を示す模式
図。
図。
1…基板 2…圧縮歪多重量子井戸構造 3…井戸層 4…障壁層 11…n−InP(001)基板 12…多重量子井戸構造(MQW) 13…InGaAs井戸層 14…InGaAs障壁層 15…InGaAsP光閉じ込め層 16…InP層 21…基板のEg(エネルギーギャップ) 23…井戸層のEg(エネルギーギャップ) 24…障壁層のEg(エネルギーギャップ) 25…光閉じ込め層のEg(エネルギーギャップ)
Claims (3)
- 【請求項1】InP基板に対して、少なくとも圧縮歪を
有するInGaAs井戸層と、圧縮歪を有するInGa
AsPの障壁層もしくはInGaAsの障壁層を積層し
てなることを特徴とする圧縮歪多重量子井戸構造。 - 【請求項2】請求項1において、井戸層の数が2層であ
ることを特徴とする圧縮歪多重量子井戸構造。 - 【請求項3】請求項1または請求項2において、圧縮歪
量子井戸構造の発光波長が2μm帯であることを特徴と
する圧縮歪多重量子井戸構造。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP34325396A JPH10190143A (ja) | 1996-12-24 | 1996-12-24 | 圧縮歪多重量子井戸構造 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP34325396A JPH10190143A (ja) | 1996-12-24 | 1996-12-24 | 圧縮歪多重量子井戸構造 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH10190143A true JPH10190143A (ja) | 1998-07-21 |
Family
ID=18360106
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP34325396A Pending JPH10190143A (ja) | 1996-12-24 | 1996-12-24 | 圧縮歪多重量子井戸構造 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH10190143A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2004273587A (ja) * | 2003-03-06 | 2004-09-30 | Sony Corp | 半導体発光素子 |
KR100701127B1 (ko) | 2004-12-08 | 2007-03-28 | 한국전자통신연구원 | 교번 성장법에 의한 양자점 형성 방법 |
KR100750508B1 (ko) | 2005-12-06 | 2007-08-20 | 한국전자통신연구원 | 양자점 레이저 다이오드 및 그 제조방법 |
US7542201B2 (en) * | 2005-08-31 | 2009-06-02 | Fujitsu Limited | Semiconductor optical amplification device and optical integrated circuit |
US9520496B2 (en) | 2014-12-30 | 2016-12-13 | International Business Machines Corporation | Charge carrier transport facilitated by strain |
-
1996
- 1996-12-24 JP JP34325396A patent/JPH10190143A/ja active Pending
Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2004273587A (ja) * | 2003-03-06 | 2004-09-30 | Sony Corp | 半導体発光素子 |
KR100701127B1 (ko) | 2004-12-08 | 2007-03-28 | 한국전자통신연구원 | 교번 성장법에 의한 양자점 형성 방법 |
US7542201B2 (en) * | 2005-08-31 | 2009-06-02 | Fujitsu Limited | Semiconductor optical amplification device and optical integrated circuit |
KR100750508B1 (ko) | 2005-12-06 | 2007-08-20 | 한국전자통신연구원 | 양자점 레이저 다이오드 및 그 제조방법 |
US9520496B2 (en) | 2014-12-30 | 2016-12-13 | International Business Machines Corporation | Charge carrier transport facilitated by strain |
US9997630B2 (en) | 2014-12-30 | 2018-06-12 | International Business Machines Corporation | Charge carrier transport facilitated by strain |
US10529855B2 (en) | 2014-12-30 | 2020-01-07 | International Business Machines Corporation | Charge carrier transport facilitated by strain |
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A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20040803 |