JPH10188680A - 透明導電膜 - Google Patents

透明導電膜

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JPH10188680A
JPH10188680A JP8345779A JP34577996A JPH10188680A JP H10188680 A JPH10188680 A JP H10188680A JP 8345779 A JP8345779 A JP 8345779A JP 34577996 A JP34577996 A JP 34577996A JP H10188680 A JPH10188680 A JP H10188680A
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transparent conductive
conductive film
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Toshiharu Hayashi
年治 林
Akira Nishihara
明 西原
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ブラウン管表面に、可視光最低反射率が1%
以下、ヘーズが1%以下、全可視光線透過率が55%以
上、表面抵抗が102 Ω/□台で、反射光が青みを帯びず
無色である透明導電膜を形成して、外部映像の映り込み
による視認性低下と電磁波漏洩の防止を図る。 【解決手段】 シリカ質マトリックス中に平均一次粒子
径5〜50 nm の金属微粉末の二次粒子を含む導電層から
なる下層の上に、シリカ質の上層を被覆した2層構造の
透明導電膜とする。下層の表面が凹凸を有し、下層の凸
部での平均膜厚が50〜150 nmであり、凹部での平均膜厚
が凸部での平均膜厚の50〜85%であって、凸部の平均ピ
ッチが20〜300 nmである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ブラウン管などの
透明基体に帯電防止、電磁波シールド、映り込みの防止
などの機能を付与するのに適した、低反射性で低抵抗の
透明導電膜に関する。
【0002】
【従来の技術】TVや各種ディスプレイ用CRTを含む
ブラウン管の画像表示部であるフロントパネルガラスの
表面には、静電気によりほこりが付着し易く、また表面
が高反射性であるため、スクリーンへの外部の光の反射
や外部映像の映り込みにより画像が不明瞭になるといっ
た問題点がある。また、最近ではブラウン管から出る電
磁波の人体に対する影響が懸念されるようになり、低周
波の漏洩電磁波に対する規格も各国で制定されるように
なってきた。
【0003】ほこりの付着防止や電磁波の漏洩防止に
は、帯電防止効果や電磁波シールド効果のある透明導電
膜をスクリーン外面に形成する手段が一般に採用されて
いる。映り込みの防止対策としては、スクリーンのガラ
ス表面をフッ酸等を用いて微細凹凸処理して光を散乱さ
せるノングレアー処理が一般に行われてきた。しかし、
ノングレアー処理は画像の解像度を悪化させ、視認性が
低下するという問題がある。
【0004】そのため、最近では高屈折率の透明導電膜
の上に低屈折率の透明オーバーコート膜を形成した2層
膜によって、帯電防止(ほこり付着防止)と映り込み防
止の両方の機能を付与することが試みられている。この
ような2層膜では、高屈折率膜と低屈折率膜の屈折率差
が大きければ、上層の低屈折率膜表面からの反射光が下
層の高屈折率膜との界面からの反射光の干渉によって打
ち消され、結果として映り込みが防止される。この透明
導電膜の導電性が高い場合には、電磁波シールド効果も
同時に付与される。
【0005】例えば、特開平5−290634号公報には、Sb
ドープ酸化錫 (ATO) 微粉末を界面活性剤を用いて分
散させたアルコール分散液をガラス基体に塗布し、乾燥
して、高屈折率の導電膜を形成し、その上にフッ化マグ
ネシウムを含有していてもよいアルコキシシランから形
成されたシリカの低屈折率膜を形成することによって、
反射率を0.7 %まで低減させた2層膜が提案されてい
る。
【0006】特開平6−12920 号公報には、基体上に形
成した高屈折率層−低屈折率層の光学的膜厚nd (n:
膜厚、d:屈折率)をそれぞれ 1/2λ−1/4λ (λ=入
射光の波長) とした場合に低反射性となることが記載さ
れている。この公報によれば、高屈折率層はATOまた
はSnドープ酸化インジウム (ITO) 微粉末を含有する
シリカ質の膜であり、低屈折率層はシリカ膜である。
【0007】特開平6−234552号公報にもITO含有シ
リケート高屈折率導電膜−シリケートガラス低屈折率膜
からなる2層膜が開示されている。特開平5−107403号
公報には、導電性微粉末とTi塩を含有する液を塗布して
形成した高屈折率導電膜と低屈折率膜との2層膜が記載
されている。
【0008】特開平6−344489号公報には、ATO微粉
末と黒色導電性微粉末 (好ましくはカーボンブラック微
粉末) とからなる、固形分が密に充填された高屈折率の
第1層膜と、その上に形成したシリカ質の低屈折率膜と
からなる、黒色味を帯びた2層膜が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかし、ATOやIT
Oといった半導体性の導電性粉末を使用した透明導電膜
では、電磁波シールド効果を生ずるように低抵抗化する
ことが困難であるか、或いは電磁波シールド効果を生ず
るように低抵抗化できても、それにより透明性が著しく
阻害される。特に最近では、ブラウン管からの漏洩電磁
波に対する規格がより厳しくなり、上述した従来技術で
は電磁波シールド効果が不十分で対応が困難になってお
り、より低抵抗で電磁波シールド効果の大きい透明導電
膜が求められている。
【0010】本発明の目的は、高度の電磁波シールド効
果を発揮するように低抵抗化され、しかもブラウン管の
視認性を阻害しない高い透明性と低ヘーズ値を保持し、
ブラウン管に外部映像の映り込み防止機能を付与するこ
とができる低反射性を備え、かつ反射光が無色に近く、
青みや赤みを帯びていない、透明導電膜を提供すること
である。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ブラウン
管の電磁波シールド性に対する最近の厳しい規格を考慮
すると、透明導電膜に使用する導電性粉末として、AT
OやITOといった半導体性の無機微粉末ではなく、よ
り導電性が高い金属微粉末の使用が望ましいとの結論に
達し、さらに検討を進めた結果、金属微粉末を含有する
下層の透明導電膜にシリカ質の低屈折率の上層皮膜を設
けた2層膜がこの目的に適していることが判明した。
【0012】しかし、この2層膜は、最低反射率は1%
以下と低いものの、最低反射率を示す波長の両側での反
射率の増大が大きく、特に短波長側で反射率が急カーブ
を描いて増大するため、反射光が青みを帯び、映像の色
調を変化させてしまうことが分かった。そこでさらに検
討した結果、塗布に用いる金属微粉末の分散液中におけ
る金属微粉末の二次粒子 (凝集粒子) の粒径分布をばら
つかせることにより、金属微粉末を含有する下層の表面
に凹凸を形成することで、最低反射率を示す波長の両側
での反射率の増大が抑えられ、反射光の青みが大きく低
減することを見出した。
【0013】ここに、本発明は、透明基体の表面に設け
た、シリカ質マトリックス中に金属微粉末を含有する下
層と、その上に設けたシリカ質の上層とからなる、2層
構造の透明導電膜であって、該下層の表面が凹凸を有
し、下層の凸部での平均膜厚が50〜150 nmであり、凹部
での平均膜厚が凸部での平均膜厚の50〜85%であり、該
凸部の平均ピッチが20〜300 nmであることを特徴とす
る、低反射性で低抵抗の透明導電膜である。
【0014】この金属微粉末を含む下層は、分散剤を含
有する溶媒に平均一次粒子径が5〜50 nm の金属微粉末
を分散させた分散液から形成することができ、この分散
液中での金属微粉末が、10%積算粒径が60 nm 以下、50
%積算粒径が50〜150 nm、90%積算粒径が80〜500 nmと
いう粒度分布を持つ二次粒子を形成していると、前記の
凹凸表面を持つ下層皮膜を得ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の透明導電膜を形成する透
明基体は特に制限されず、低反射性と電磁波シールド性
を付与することが望ましい任意の透明基体でよい。代表
的な透明基体はガラスであるが、透明プラスチック等の
基体上に本発明の透明導電膜を形成することもできる。
【0016】前述したように、低反射性と電磁波シール
ド性の付与が特に求められている透明基体は、TVやコ
ンピュータ等の表示装置として使用されるブラウン管の
フロントパネルガラスである。本発明の透明導電膜は、
低反射性と電磁波シールド性(低抵抗) に加えて、反射
スペクトルが平坦で、従来のある種の透明導電膜のよう
に青〜紫味または赤〜黄色味を帯びておらず、無色であ
り、視感度がよいという特徴を持つ。従って、この導電
膜をブラウン管の画面表示部の表面に形成すると、健康
に有害でコンピュータの誤動作の原因ともなる電磁波の
漏洩、ほこりの付着、および外部映像の映り込みを防止
ないし低減でき、膜の透明性 (可視光透過率) とヘーズ
が良好で、反射光が無色であるため、映像の視感度が良
好に保持される。
【0017】本発明の透明導電膜は、シリカ質マトリッ
クス中に導電性粉末として金属微粉末を含有する下層
(導電層) と、粉末を含有しないシリカ質の上層とから
なる2層膜である。下層は金属微粉末を密に含有するた
め屈折率が高いのに対し、上層は低屈折率である。この
2層膜構成により、本発明の透明導電膜は、低反射性と
低抵抗という特性を有し、上記の機能を発揮することが
できる。
【0018】本発明の透明導電膜において、下層の導電
層のシリカ質マトリックスと、シリカ質の上層は、いず
れもアルコキシシラン (より広義には、加水分解性シラ
ン化合物) から形成することができる。
【0019】アルコキシシランとしては、少なくとも1
個、好ましくは2個以上、さらに好ましくは3個以上の
アルコキシル基を有する任意の1種または2種以上のシ
ラン化合物が使用できる。加水分解性の基としてハロゲ
ンを含有するハロシラン類も、アルコキシシランと一緒
に、またはアルコキシシランに代えて使用することがで
きる。
【0020】アルコキシシランの具体例としては、テト
ラエトキシシラン (=エチルシリケート) 、テトラプロ
ポキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジ
メトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、クロル
トリメトキシシラン、各種のシランカップリング剤
(例、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピル
トリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシ
シラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メ
タクリロキシプロピルトリメトキシシラン、 N−フェニ
ル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、 N−β−
(アミノエチル) −γ−アミノプロピルトリメトキシシ
ラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリ
メトキシシラン) などが挙げられる。好ましいのは、最
も安価で容易に加水分解するエチルシリケートである。
【0021】アルコキシシランからなる皮膜は、加水分
解を受けるとアルコールが脱離し、生成したOH基同士
が縮合して、シリカゾルになる。このゾルを加熱して焼
付けると、縮合がさらに進んで最終的に硬質のシリカ
(SiO2) 皮膜になる。従って、アルコキシシランは、無
機皮膜形成剤としてシリカ質皮膜を形成するのに利用で
き、粉末と一緒に皮膜化した場合には、粉末を結合する
無機バインダーとして機能して、皮膜のマトリックスを
構成することになる。なお、ハロシランも加水分解によ
り同様に最終的にシリカ皮膜を形成できるが、以下では
アルコキシシランを使用する場合について説明する。
【0022】下層導電層 本発明の透明導電膜の下層導電層は、シリカ質マトリッ
クス中に金属微粉末を含有する。シリカ質マトリックス
は、前述したように、アルコキシシランから形成するこ
とができる。
【0023】金属微粉末としては、アルコキシシランの
皮膜形成性に悪影響を及ぼさない限り、任意の金属もし
くは合金の粉末、または金属および/もしくは合金粉末
の混合物が使用できる。金属微粉末の材質として好まし
いのは、Fe、Co、Ni、Cr、W、Al、In、Zn、Pb、Sb、B
i、Sn、Ce、Cd、Pd、Cu、Pt、AgおよびAuよりなる群か
ら選ばれた1種もしくは2種以上の金属、ならびに/ま
たはこれらの金属の合金、ならびに/またはこれらの金
属および/もしくは合金の混合物である。これらの中で
特に好ましい金属種は、Ni、W、In、Zn、Sn、Pd、Cu、
Pt、Bi、Ag、およびAuであり、最も好ましいのは低抵抗
のAgである。好ましい合金は、Cu−Ag、Ni−Ag、Ag−P
d、Ag−Sn、Ag−PbなどのAg合金であるが、これに限定
されるものではない。また、Agと他の金属(例、W、P
b、Bi、Cu、In、Sn) との混合物も金属微粉末として好
ましい。
【0024】金属微粉末には、P、B、C、N、Sなど
の1種もしくは2種以上の非金属、またはNa、Kなどの
アルカリ金属および/もしくはMg、Caなどのアルカリ土
類金属の1種もしくは2種以上が固溶していてもよい。
【0025】金属微粉末は、平均一次粒子径が5〜50 n
m の範囲内の微粒子状のものを使用することが好まし
い。平均一次粒子径が5nmより小さいと、本発明の特徴
である比較的深い表面凹凸を持った下層の導電層を形成
することが困難となる。平均一次粒子径が50 nm より大
きいと、下層の導電層に表面凹凸を形成することはでき
るが、その凹凸のピッチが大きくなりすぎる。平均一次
粒子径はより好ましくは8〜35 nm である。このような
微粒子状金属微粉末は、コロイド生成の手法 (例、保護
コロイドの存在下で金属化合物を適当な還元剤により金
属に還元させる)を利用して製造することができる。
【0026】前述したように、本発明の2層構造の透明
導電膜においては、導電性粉末として平均一次粒子径5
〜50 nm の金属微粉末を含有する下層の表面 (即ち、下
層と上層との界面) が、図1に模式的に示すように、凹
凸形状を有している。この金属微粉末のようにサブミク
ロンの微粒子は、一般に一次粒子 (個々の粒子) が凝集
して二次粒子 (凝集粒子) を形成する傾向があるが、本
発明においては、下層の膜厚を金属微粉末の二次粒子の
平均粒径とほぼ同じ厚みにし、この二次粒子の粒度分布
に比較的大きなバラツキを持たせる (即ち、大きな二次
粒子と小さな二次粒子を共存させる) ことにより、下層
の表面に凹凸を生じさせる。それにより、最低反射率を
示す波長の両側での反射率の増大が抑えられ、反射光が
無色に近くなる。
【0027】具体的には、凹凸表面を有する下層の膜厚
は、凸部での平均膜厚が50〜150 nmであり、凹部での平
均膜厚が凸部での平均膜厚の50〜85%であり、凸部の平
均ピッチが20〜300 nmの範囲内である。凸部は表面凹凸
における山型の頂部を意味し、凹部は表面凹凸における
谷型の底部を意味する。このような表面凹凸を持つ下層
は、後述する方法により形成することができる。
【0028】凸部での平均膜厚が50 nm より小さいと、
表面凹凸による反射光の無色化の効果が小さくなる。凸
部での平均膜厚が150 nmを超えると、膜の透明性が低下
し、映像の視認性が低下する。凹部での平均膜厚が凸部
での平均膜厚の50%未満になると、凹凸が急激すぎて膜
のヘーズが増大し、映像の視認性が低下し、この値が85
%を超えると、凹凸がゆるやかすぎて、反射光の無色化
の効果がほとんど得られない。凸部の平均ピッチが20 n
m より小さいと、凹凸が小さく、反射光の無色化の効果
が少ない。凸部の平均ピッチが300 nmより大きいと、膜
のヘーズが増大し、反射光の無色化の効果も低下し、映
像の視感度が低下する。
【0029】導電性粉末として、金属微粉末に加えて、
ITOやATOなどの無機酸化物系の透明導電性微粉末
(平均一次粒子径が0.2 μm以下、好ましくは0.1 μm
以下のもの) を併用することもできる。その場合でも、
導電性粉末の50重量%以上が金属微粉末となるようにす
ることが好ましく、より好ましくは導電性微粉末の60重
量%以上が金属微粉末からなる。
【0030】下層の導電層におけるシリカ質マトリック
スの量は、金属微粉末を結合するのに十分な量であれば
よい。この導電層はシリカ質の上層で被覆されるので、
特に高い膜強度や硬度を必要としない。好ましくは、シ
リカ質マトリックスの量は5〜30重量%である。
【0031】透明導電膜の形成方法 本発明の2層構造の透明導電膜の形成方法は、下層に前
述した表面凹凸が形成されうる限り特に制限されるもの
ではないが、例えば、以下に説明する方法を採用するこ
とができる。
【0032】まず、透明基体の上に、下層形成用の塗料
を塗布して、金属微粉末の二次粒子が前述した凹凸状に
分布した膜を形成する。この下層形成用の塗料は、分散
剤を含有する溶媒中に、平均一次粒子径が5〜50 nm の
金属微粒子を分散させた分散液から構成することが好ま
しい。この塗料には、焼付け後にシリカ質マトリックス
となるアルコキシシランを含有させない方が好ましい。
【0033】下層形成用の塗料がバインダーとなるアル
コキシシランを含有していないと、この塗料を塗布し、
乾燥して溶媒を蒸発させた時に、実質的に金属微粉末の
みからなる皮膜が基体表面に形成される。金属微粉末が
サブミクロンの微粒子からなり、凝集性が強いため、バ
インダーが存在しなくても皮膜化できる。その後、上層
形成用のアルコキシシランの溶液からなる塗料を塗布す
ると、塗布した溶液の一部は下層の金属微粉末の粒子間
の空隙に浸透し、金属微粉末を結合するバインダーとし
て機能する。この上層形成用の塗料の塗布は、下層皮膜
中に浸透しきれなかった塗料が下層皮膜の上に残るよう
に行う。
【0034】次いで加熱して皮膜を焼付けると、アルコ
キシシランはシリカ質皮膜に変化し、下層の粒子間に浸
透したアルコキシシランは、粒子間の空隙や空孔を埋め
るシリカ質マトリックスとなり、浸透しきれなかったア
ルコキシシランは上層のシリカ質皮膜を形成し、本発明
の2層構造の透明導電膜が得られる。
【0035】この方法では、時間とエネルギーコストの
かかる焼付け工程が1回で済み、製造工程が単純化され
る。即ち、この方法では、塗料の塗布は2回行うが、ス
ピンコート法で塗布すれば、1台のスピンコーター上で
順に下層用塗料と上層用塗料を滴下することにより連続
的に塗布を実施でき、その後に一度に焼付けを行うた
め、実質的には1回の塗布と同様の単純な作業工程で2
層膜を形成することができる。また、最初に金属微粉末
を皮膜化した時にバインダーが存在していないので、金
属微粉末が直接接触した皮膜となり、この状態がバイン
ダーのアルコキシシランを含浸させた後も保持されるの
で、より低抵抗の皮膜が得られる点でも有利である。
【0036】下層形成用の塗料がアルコキシシランを含
有する場合には、この塗料を透明基体に塗布した後、塗
膜を焼付けてアルコキシシランをシリカ質マトリックス
に転化させ、下層の導電層を形成する。その後、アルコ
キシシラン溶液からなる上層用塗料を塗布し、再び焼付
ける。従って、2回の焼付け工程が必要である。
【0037】いずれの場合でも、下層形成用の塗料 (金
属微粉末の分散液) は、この分散液中で金属微粉末の二
次粒子が特定の粒度分布を持つように調整する。具体的
には、この分散液中で平均一次粒子径5〜50 nm の金属
微粉末が凝集して、10%積算粒径が60 nm 以下、50%積
算粒径が50〜150 nm、90%積算粒径が80〜500 nmという
粒度分布を持つ二次粒子を形成するようにする。
【0038】分散液中の金属微粉末の凝集状態 (即ち、
二次粒子の粒度分布) は、金属微粉末の平均一次粒子
径、溶媒の表面張力、粉末分散時の攪拌条件、分散液の
粘度、分散剤等の添加剤といった因子に依存する。従っ
て、溶媒種、金属微粉末の平均一次粒子径、金属微粉末
の濃度、攪拌速度および時間、添加剤の種類と添加量な
どのパラメータを、金属微粉末の二次粒子の粒度分布が
上記の範囲内になるように選択すればよく、これは当業
者であれば実験により可能である。
【0039】金属微粉末をこのように分散させるのに適
した溶媒としては、水および/または低級アルコール
(メタノール、エタノール、イソプロパノール等) に30
重量%以下、特に25重量%以下のセロソルブ系溶媒
(例、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等) を混合
した混合溶媒が好ましい。但し、溶媒はこれに限定され
るものではなく、使用した金属微粉末を上記の粒度分布
を持つ二次粒子を形成するような凝集状態で分散させる
ことができれば、任意の溶媒を用いて分散液を調製する
ことができる。使用しうる他の溶媒としては、アセト
ン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シ
クロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;トルエン、
キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;
N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド
などのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキ
シド類などが挙げられる。
【0040】下層形成用の塗料 (分散液) は、チタネー
ト系もしくはアルミニウム系カップリング剤、高分子分
散剤、および界面活性剤の1種もしくは2種以上を含有
することが好ましい。チタネート系もしくはアルミニウ
ム系カップリング剤の例としては、イソプロピルトリイ
ソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベ
ンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス (ジ
オクチルパイロホスフェート) チタネート、テトライソ
プロピルビス (ジオクチルホスファイト) チタネート、
テトラオクチルビス (ジトリデシルホスファイト) チタ
ネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチ
ル) ビス (ジ−トリデシル) ホスファイトチタネート、
ビス (ジオクチルパイロホスフェート) オキシアセテー
トチタネート、トリス (ジオクチルパイロホスフェー
ト) エチレンチタネート、アセトアルコキシアルミニウ
ムジイソプロピレートなどが挙げられる。高分子分散剤
の例は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコー
ル、ポリエチレングリコール−モノ−p−ノニルフェニ
ルエーテル等である。界面活性剤はノニオン系、カチオ
ン系、アニオン系のいずれでもよく、その例としては、
p−アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベ
ンゼンスルホン酸ナトリウム、長鎖アルキルトリメチル
アンモニウム塩 (例、ステアリルトリメチルアンモニウ
ムクロリド) などがある。これらの添加剤の添加量は、
例えば、分散液 (塗料) の 0.001〜0.200重量%の範囲
内の少量でよい。
【0041】下層形成用の塗料の粘度は好ましくは 0.8
〜10 cps、より好ましくは 0.9〜5cpsである。塗料中
の金属微粉末の量は、塗料の 0.1〜15重量%の範囲内が
適当である。アルコキシシランを含有する場合には、ア
ルコキシシランの量 (SiO2に換算した量) は、金属微粉
末との合計量に対して 1.0〜18重量%の範囲内が好まし
い。
【0042】アルコキシシランは予め加水分解させて、
塗料に使用することもできる。それにより、塗布後の焼
付けを短時間で完了させることができる。この場合の加
水分解は、反応を促進させるため、酸触媒 (例、塩酸な
どの無機酸、またはp−トルエンスルホン酸などの有機
酸) と水の存在下で行うことが好ましい。アルコキシシ
ランの加水分解は、室温ないし加熱下で行うことがで
き、好ましい反応温度は20〜80℃の範囲内である。
【0043】下層形成用の塗料の塗布は、スプレー法、
スピンコート法、浸漬法などによって行うことができる
が、成膜精度の点からスピンコート法が好ましい。塗布
は、乾燥後に、表面凹凸の凸部の平均膜厚が50〜150 nm
となるように行う。この膜厚は、金属微粉末の二次粒子
の50%積算粒径と同じ範囲であるので、塗膜はほぼ二次
粒子の単層からなり、二次粒子の粒度分布がそのまま表
面凹凸して塗膜表面に現れる。従って、金属微粉末の二
次粒子が前述した粒度分布を有していれば、乾燥して溶
媒を除去した後に、前述した表面凹凸を持つ金属微粉末
の塗膜を得ることができる。
【0044】下層形成用の塗料がアルコキシシランを含
有していても、金属微粉末はアルコキシシラン溶液に比
べて密度が非常に高いので、塗膜内で金属微粉末の二次
粒子は沈降する。この場合、形成された塗膜の表面は平
滑であるが、金属微粉末を含有する部分には、二次粒子
の粒度のバラツキに応じて凹凸を生じる。この凹凸の凹
部の上に溜まったアルコキシシラン溶液の部分は、焼付
け後に金属微粉末を含まないシリカ質の皮膜となり、最
終的に上層のシリカ質皮膜と一体化して、上層皮膜の一
部となる。即ち、下層用塗料から形成された塗膜のう
ち、金属微粉末を含有する部分だけが下層となり、この
部分は凹凸を持っているので、下層は表面凹凸を有する
ことになる。
【0045】金属微粉末の分散液 (下層形成用の塗料)
がアルコキシシランを含有しない場合には、塗膜から適
宜手段で溶媒を蒸発させ、実質的に金属微粉末のみから
なる表面が凹凸の皮膜を基体上に形成する。この溶媒の
蒸発は、使用した溶媒の沸点に応じて、無加熱または加
熱により実施することができる。例えば、塗布をスピン
コート法で行う場合には、溶媒の種類にもよるが、回転
時間を十分にとれば、加熱せずに回転中に溶媒を蒸発さ
せることができる。なお、溶媒の蒸発は完全に行う必要
はなく、溶媒が一部残っていてもよい。
【0046】分散液がアルコキシシランを含有している
場合には、塗布後に焼付けを行って、アルコキシシラン
をシリカに転化させる。この焼付けは、上層の焼付けと
同様に行うことができる。
【0047】こうして形成された下層皮膜の上に、上層
形成用のアルコキシシラン溶液からなる塗料を塗布し、
焼付けてシリカ質皮膜を形成する。この塗料中のアルコ
キシシランは、塗布後のアルコキシシランの加水分解を
促進させるため、予め加水分解した、シリカゾルと呼ば
れるものでもよい。シリカゾルは、アルコキシシランを
酸触媒 (好ましくは塩酸または硝酸) の存在下で室温ま
たは加熱下に加水分解させることにより調製することが
できる。
【0048】シリカゾルを使用する場合、上層形成用の
塗料中のシリカゾル濃度は、SiO2換算で 0.5〜2.5 重量
%の範囲内が好ましい。この塗料の粘度は好ましくは
0.8〜10 cps、より好ましくは 1.0〜4.0cpsである。シ
リカゾル濃度が低すぎると、下層の粉末の結合や上層の
膜厚が不十分となり、高すぎると成膜精度が低下し、上
層の膜厚の制御が困難となる。また、この塗料の粘度が
高すぎると、シリカゾルが下層の粉末粒子間の間隙に十
分に含浸しなくなり、導電性が低下する上、成膜精度が
低下して、上層の膜厚の制御も困難となる。
【0049】この塗料の塗布後の焼付けは、特に透明基
体がブラウン管である場合には、ブラウン管の寸法精
度、蛍光体の脱落防止のため、250 ℃以下、好ましくは
200 ℃、さらに好ましくは180 ℃以下に加熱することに
より行う。透明基体がブラウン管以外のものである場合
には、その基体材質に許される範囲内でこれより高い乾
燥温度を採用してもよい。
【0050】下層皮膜をアルコキシシランを含まない塗
料から形成した場合には、前述したように、上層塗料の
塗布により、この塗料中のアルコキシシラン (またはそ
の加水分解物、特にシリカゾル) が、金属微粉末の粒子
間の空隙に浸透して、これらの空隙を充填し、焼付け後
にシリカ質マトリックスを形成する。一方、浸透しきれ
なかった塗料は、焼付け後にシリカ質の上層を形成す
る。この場合、浸透性の調整のための界面活性剤などの
添加剤を、塗料に添加してもよい。
【0051】金属微粉末を含有しないシリカ質の上層
は、金属微粉末を含有する下層に比べて屈折率が低く、
それにより従来の導電性2層膜と同様に、低反射性の2
層膜が得られる。この機能にとって好ましい上層皮膜の
膜厚 (下層表面の凸部からの平均膜厚) は、20〜150 n
m、より好ましくは50〜120 nm、最も好ましくは60〜100
nmである。上層形成用塗料の塗布方法は、下層の場合と
同様でよいが、膜厚制御の容易なスピンコート法が好ま
しい。
【0052】本発明の2層構造の透明導電膜は、金属微
粉末を含有する高屈折率の下層とシリカのみからなる低
屈折率の上層との界面が適度の凹凸を持っているため、
低反射性である上、反射光が青みや赤みを帯びずに無色
に近く、しかも透明性が高く、低ヘーズであるという光
学的特徴を持つ。具体的には、可視光透過率が55%以
上、好ましくは60%以上と高く、ヘーズは1%以下と低
い。可視光反射率は、最低反射率が1%と低い上、反射
スペクトルが平坦であり、従来の2層導電膜の反射光の
青みの原因であった短波長側 (例、400 nm) での反射率
の増大が、長波長側(例、800 nm) とほぼ同レベルに抑
えられている。そのため、反射光は青みがなく、実質的
に無色であり、映像の視感度が著しく改善される。ま
た、この透明導電膜は表面抵抗で 102Ω/□台という低
抵抗を示し、電磁波シールド機能を十分に果たすことが
できる。
【0053】
【実施例】下層形成用の塗料 添加剤として界面活性剤または高分子分散剤を含有する
溶媒中に金属微粉末を加え、直径0.3 mmのジルコニアビ
ーズを用いてペイントシェーカーで混合することにより
金属微粉末を溶媒中に分散させて、アルコキシシランを
含有しない下層形成用の塗料を調製した。使用した金属
微粉末、分散剤および溶媒の種類と塗料中のそれぞれの
量 (%は重量%) は表1に示す通りであった。
【0054】使用した金属微粉末は、コロイド的手法
(保護コロイドの存在下で金属化合物を還元剤と反応さ
せて還元する) により調製したものであり、その平均一
次粒子径 [TEM (透過式電子顕微鏡) により測定] お
よび塗料 (分散液) 中における二次粒子の粒度分布 [10
%、50%および90%の積算粒径、UPA粒度分析計 (日
機装製) により測定] も表1に一緒に示す。
【0055】表1に示した分散剤および溶媒 (かっこ内
は重量比) の記号の意味は次の通りである。 添加剤: A=ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド B=ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム C=ポリビニルピロリドン (関東化学製K-30)。
【0056】溶媒: エタノール/メチルセロソルブ (85/15) 、 メタノール/メチルセロソルブ (80/20) 、 水/ブチルセロソルブ (90/10) 、 エタノール/メタノール/ブチルセロソルブ (80/10
/10) 、 エタノール (100) 水/エタノール/ブチルセロソルブ (80/10/10) 。
【0057】上層形成用塗料 エトキシシラン (エチルシリケート) を、少量の塩酸と
水を含有するエタノール中で60℃に1時間加熱して加水
分解させ、シリカゾルを合成した。得られたシリカゾル
溶液を、エタノール/イソプロパノール/ブタノールの
重量比5:8:1の混合溶媒で希釈して、SiO2換算濃度
が 0.7重量%、粘度が1.65 cpsの塗料を調製した。
【0058】成膜方法 100 mm×100 mm×厚さ3mmの寸法のソーダライムガラス
(青板ガラス) からなる基体の片面に、スピンコーター
を用いて、下層形成用塗料と上層形成用塗料を順に滴下
して成膜した。各塗料とも、滴下量は5〜10g、回転数
は 140〜180rpm、回転時間は60〜150 秒の範囲内であっ
た。その後、基体を大気中において170℃に30分間加熱
して塗膜を焼付け、ガラス基体上に透明導電膜を形成し
た。得られた膜の特性を次のようにして評価し、それら
の結果を表1に一緒に示した。
【0059】膜特性の評価 下層 (金属微粉末含有層) の表面凹凸の凸部および凹部
の平均膜厚および平均ピッチ、ならびに上層の膜厚 (下
層凸部からの平均膜厚) :TEM断面写真上で測定し
た。
【0060】密着性:ライオン社製の消しゴムER-20Rを
用い、荷重1kgf/cm2 、ストローク幅5cm、往復50回後
のキズの状態を目視で観察した。○はキズなし、×はキ
ズ認められる、を意味する。
【0061】表面抵抗:四探針法 (ロレスタAP:三菱油
化製) により測定した。 光透過率 (全可視光線透過率) :自記分光光度計 (U-40
00型:日立製作所製)により測定した。 ヘーズ:ヘーズメーター (HGM-3D:スガ試験機製) によ
り測定した。
【0062】可視光反射率:ガラス基体の背面に、黒色
ビニールテープ (No.21:日東電工)を貼り、50℃で30分
保温してブラックマスクを形成した後、自記分光光度計
によって12°の正反射による可視域波長の反射スペクト
ルを測定した。この反射スペクトルから反射率の最小値
(最低反射率) と400 nmおよび800 nmでの反射率とを求
め、最低反射率となった波長と一緒に表1に示した。
【0063】また、試験No. 4の本発明例の透明導電膜
の透過スペクトルおよび反射スペクトルを図2(a) およ
び(b) に、試験No.11 の比較例の透明導電膜の透過スペ
クトルおよび反射スペクトルを図3(a) および(b) に示
す。
【0064】
【表1】
【0065】表1からわかるように、本発明例では、平
均一次粒子径が5〜50 nm の金属微粉末を、比較的粒度
分布のバラツキの大きい二次粒子を生ずるような凝集状
態で、分散剤を含有する溶媒中に分散させた塗料を用い
た結果、下層の導電層において、例えば図1に模式的に
示すように、金属微粉末を含む下層を、これを含まない
上層との界面 (即ち、下層の表面) にかなり大きな凹凸
を生じていた。
【0066】但し、本発明の透明導電膜の形成方法は、
実施例に示した方法に限定されるものではなく、同じよ
うな下層の表面凹凸が生成するのであれば、どのような
方法で2層膜を形成してもよい。また、金属微粉末が比
較的大きな二次粒子を形成しているにもかかわらず、膜
の密着性は良好であった。
【0067】これに対して、比較例の試験No. 11では、
積算粒度分布が不適切 (50%径小)であったため、下層
膜の凹部での平均膜厚が凸部での平均膜厚の89.1%とな
り、表面抵抗は低いものの、可視400 nmの反射率は著し
く高く青〜紫色を帯びた。逆に試験No. 14では、50%積
算粒径が大きすぎたため、可視光透過率が著しく低下
し、実用に耐える密着性が得られなかった。試験No. 12
では、金属微粉末の平均一次粒子径が大きすぎ、下層の
表面凹凸は十分に形成されていたものの、そのピッチが
大きすぎた。これらでは、いずれの膜の密着性が著しく
低下し、実用に耐える密着性が得られなかった。また、
試験No. 13では、金属微粉末の平均一次粒子径が小さす
ぎたため、下層の表面凹凸が浅く (小さく) なった。
【0068】本発明例の透明導電膜は、いずれも1%以
下の可視光最低反射率、1%以下のヘーズ、55%以上
(1例を除いて60%以上) の全可視光線透過率を示し、
画像の映り込みを防止することができる低反射性で、か
つ映像の視認性を妨害しない十分な透明性を有している
ことがわかる。
【0069】また、400 nmおよび800 nmでの反射率を比
較すると、両者の反射率の値は全く或いはほぼ同レベル
であり、図2(b) に示すように、反射スペクトルは、最
低反射率の両側でほぼ同じカーブを描いて増大し、かつ
その増大の程度も比較的小さかった。その結果、低反射
性である上に、反射光が実質的に無色で、映像の視感度
に優れていることがわかる。さらに、図2(a) に示すよ
うに、透過スペクトルも非常に平坦であり、膜自体も無
色である。
【0070】これに対し、比較例では、最低反射率は低
いものの、図3(b) に示すように特に短波長側における
反射スペクトルの増大が大きく、400 nmでの反射率が80
0 nmでの反射率の倍以上に高くなった。そのため、反射
光は青みを帯び、映像の視感度に悪影響が出る。
【0071】導電性を見ると、いずれの透明導電膜も、
下層に金属微粉末を含有するため、102 Ω/□台の低抵
抗を示し、電磁波シールド性を十分に付与することがで
きる水準である。
【0072】
【発明の効果】本発明の2層構造の透明導電膜は、表面
抵抗が102 Ω/□台と低抵抗であるので、特にパソコン
用CRTおよび大型TV用ブラウン管で問題となってい
る電磁波の漏洩を防止できる電磁波シールド性をブラウ
ン管に付与できる。
【0073】また、この透明導電膜は、金属微粉末を含
有するにもかかわらず、可視光最低反射率が1%以下、
ヘーズが1%以下、全可視光線透過率が55%以上、好ま
しくは60%以上という、低反射性と十分な透明性を備え
ている。その上、この透明導電膜は、従来より問題にな
っていた紫〜青味または赤〜黄色味の反射光が少なく、
反射光が実質的に無色である。
【0074】従って、本発明の透明導電膜をブラウン管
の画像表示部に形成した場合、反射による外部映像の映
り込みが防止できると同時に、映像の色調を変化させる
ことがないので、画像の視認性が大きく向上する。従っ
て、本発明の透明導電膜は、映像を見やすくする上、電
磁波の漏洩による人体への悪影響やコンピュター誤動作
の防止にも役立つ。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の2層構造の透明導電膜の断面構造を示
す説明図である。
【図2】図2(a) は実施例で作製した本発明の透明導電
膜の透過スペクトル、図2(b)は同じく反射スペクトル
を示す。
【図3】図3(a) は実施例で作製した比較例の透明導電
膜の透過スペクトル、図3(b)は同じく反射スペクトル
を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI H05K 9/00 H05K 9/00 V // G02B 1/10 G02B 1/10 Z

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 透明基体の表面に設けた、シリカ質マト
    リックス中に金属微粉末を含有する下層と、その上に設
    けたシリカ質の上層とからなる、2層構造の透明導電膜
    であって、該下層の表面が凹凸を有し、下層の凸部での
    平均膜厚が50〜150 nmであり、凹部での平均膜厚が凸部
    での平均膜厚の50〜85%であり、該凸部の平均ピッチが
    20〜300 nmであることを特徴とする、低反射性で低抵抗
    の透明導電膜。
  2. 【請求項2】 金属微粉末がFe、Co、Ni、Cr、W、Al、
    In、Zn、Pb、Sb、Bi、Sn、Ce、Cd、Pd、Cu、Pt、Agおよ
    びAuよりなる群から選ばれた1種もしくは2種以上の金
    属、ならびに/またはこれらの金属の合金、ならびに/
    またはこれらの金属および/もしくは合金の混合物から
    なる、請求項1記載の透明導電膜。
  3. 【請求項3】 透明基体がブラウン管の画像表示部であ
    る請求項1または2記載の透明導電膜。
  4. 【請求項4】 該下層が、分散剤を含有する溶媒に平均
    一次粒子径が5〜50nm の金属微粉末を分散させた分散
    液から形成されたものであり、この分散液中において該
    金属微粉末が、10%積算粒径が60 nm 以下、50%積算粒
    径が50〜150nm、90%積算粒径が80〜500 nmという粒度
    分布を持つ二次粒子を形成していたことを特徴とする、
    請求項1ないし3のいずれか1項に記載の透明導電膜。
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