JPH1018195A - 高級水彩紙 - Google Patents

高級水彩紙

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JPH1018195A JP18831396A JP18831396A JPH1018195A JP H1018195 A JPH1018195 A JP H1018195A JP 18831396 A JP18831396 A JP 18831396A JP 18831396 A JP18831396 A JP 18831396A JP H1018195 A JPH1018195 A JP H1018195A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 絵筆等で描かれた水性絵の具の水が速やかに
紙の内部に吸収され、画線がにじまず、均一な発色性を
持ち、経時により紙が変色したり、強度劣化しにくい高
級水彩紙を得ること。 【解決手段】 30重量%以上がコットンパルプからな
る製紙用繊維を350〜550mlC.S.F.に叩解
し、かつエポキシ化高級脂肪酸アミドを0.1〜1.5
重量%含有させて抄紙し、冷水抽出pHが6.0〜9.
5であることを特徴とする高級水彩紙。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】水彩画を描く時に用いる水彩
紙は、原料として使用する製紙用パルプの種類に応じ
て、通常3つのグレードに分けられている。最も高級な
ものは「最高級水彩紙」と呼ばれ、コットンパルプをほ
ぼ100%使用して製造されている。次いで少しグレー
ドが落ちるものは「高級水彩紙」と呼ばれ、コットンパ
ルプに木材パルプを併用して製造されている。最もグレ
ードの落ちるものは、単なる「水彩紙」と呼ばれ、木材
パルプのみで製造されている。「最高級水彩紙」と「高
級水彩紙」は、上級者向けとして、単なる「水彩紙」は
初心者向けとして使用されている。以下本発明では、最
高級水彩紙と高級水彩紙を合わせて「高級水彩紙」と呼
ぶこととし、本発明はこの「高級水彩紙」の構成に関す
る新規な提案に関するものである。
【0002】
【従来の技術】水彩画はヨーロッパで発達した絵画の一
つで、水を溶剤とした絵の具(水性絵の具)を用いて画
いた絵を言う。本来は透明もしくは半透明描法によるも
のをさすが、本発明では不透明性絵の具(テンペラ、グ
ァッシュ等)も水を溶剤に用いているので水彩画の範疇
に入れるものとする。
【0003】水彩画は水性絵の具を水で希釈して描くた
め、初心者向けの、上記した単なる「水彩紙」は水の吸
収性を抑え、描き直しが可能なような配慮がなされてい
るのに対し、「高級水彩紙」は反対に、水性絵の具の水
が速やかに紙の内部に吸収されるような配慮がなされて
いる。この他、高級水彩紙には、画線がにじまず、均一
な発色性を持つことが要求される。また作品が長期保存
に耐えるように、経時により紙が変色したり、強度劣化
しないことも要求される。これらの要求性能を満たすた
め、高級水彩紙の原料としては、木材繊維よりセルロー
スの純度が高く、水の吸収性に優れたコットン繊維が古
くから用いられてきたわけである。
【0004】また、高級水彩紙は、水性絵の具で描いた
画線をにじまないようにさせるため、ニカワ、ゼラチン
等の動物性蛋白質を、内添法、含浸法、塗工法、あるい
はこれらを組み合わせた方法で含ませている。しかしな
がら、これら天然の動物性蛋白質は、安定した品質の原
料を確保し難く、温度、湿度の影響を受けやすく、水の
吸収性の安定性に欠けるという問題点があった。
【0005】これらの問題点は、本出願人が先に実願平
3−23881号(実公平7−54320号)で提案し
た画材用紙に使用した技術で相当改善できることが判明
している。この提案は、硫酸アルミニウムが添加されて
おり、400〜100mlC.S.F.に叩解されたパ
ルプで抄紙した原紙の片面もしくは両面に0.3〜4g
/m2(片面塗工量)のカルボキシル基変性ポリビニル
アルコール塗工層を形成して画材用紙を製造することを
要旨としたものである。しかしながら、この用紙は硫酸
アルミニウム塩が紙料に添加された、いわゆる酸性紙で
あるため、経時で劣化する等、耐久性に問題があり、作
品として長期保存はできない問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこれら従来の
高級水彩紙の問題点を解決することを課題とする。具体
的には、絵筆等で描かれた水性絵の具の水が速やかに紙
の内部に吸収され、画線がにじまず、均一な発色性を持
ち、経時により紙が変色したり、強度劣化しにくい高級
水彩紙を得ることを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、前記した
問題点を解決するには、コットンパルプを主体とする製
紙用繊維に製紙用サイズ剤を適当に使用すればよいとの
発想で検討を開始したが、簡単には前記要求性能を満た
した高級水彩紙は得られないことが判った。本発明者等
はさらに検討を進めた結果、ある特定の製紙用繊維を使
用し、特定の濾水度に紙料を調製し、特定の薬品を使用
した時のみが前記要求性能を満たす高級水彩紙が得られ
ることを見いだし、本発明を完成させたものである。即
ち、本発明は、30重量%以上がコットンパルプからな
る製紙用繊維を350〜550mlC.S.F.に叩解
し、かつエポキシ化高級脂肪酸アミドを0.1〜1.5
重量%含有させて抄紙し、冷水抽出pHが6.0〜9.
5であることを特徴とする高級水彩紙である。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の高級水彩紙は、製紙用繊
維を主体として構成され、該繊維の30重量%以上、好
ましくは50重量%以上がコットンパルプであることが
必要である。コットンパルプが30重量%未満であると
水の吸収性が不足し高級水彩紙としての適性を満たさな
くなる。本発明のコットンパルプは、純粋なコットンパ
ルプだけでなく、リンターパルプ、コットンラグパルプ
もその範疇に入れるものとし、これらの1種以上を使用
する。
【0009】上記コットンパルプと併用できる製紙用繊
維としては、赤松、黒松、エゾマツ、トドマツ、杉等の
針葉樹、ブナ、カバ、シイノキ等の広葉樹等を主原料と
した砕木パルプ、亜硫酸パルプ、クラフトパルプ、セミ
ケミカルパルプ、ケミグランドパルプ等の木材パルプ、
ケナフ、麻、楮、三椏、竹、バガス、葦、エスパルト等
の非木材パルプ、及びこれらを変性したパルプ、ポリオ
レフィン等の合成パルプやレーヨン、ビニロン、ナイロ
ン、ポリエステル等の合成繊維であり、これらの1種類
以上を適宜を併用し、濾水度350〜550mlC.
S.F.、好ましくは400〜500mlC.S.F.
に叩解する。濾水度が350mlC.S.F.未満であ
ると繊維自身の水吸収性が悪くなり、またシートの地合
が緻密になりすぎ吸水性が低下するからである。一方、
550mlC.S.F.を越えるとシートの地合が悪く
なり絵の具の用紙への吸収が不均一となる。従って、上
記範囲の濾水度に調整することが必要である。
【0010】本発明では、さらに絵の具をにじませない
ようにするための薬品を使用することが必要である。製
紙用サイズ剤がその代表的な例である。製紙用サイズ剤
は、酸性処方用のサイズ剤と中性処方用のサイズ剤に大
別できる。前者の例としては強化ロジン型やエマルジョ
ン型のロジン系サイズ剤、主にC5芳香族系の石油樹脂
系サイズ剤等があり、後者の例としては、アルキルケテ
ンダイマー(AKD)やアルケニル無水コハク酸(AS
A)等の反応性サイズ剤、樹脂型やポリマー型等のカチ
オン型サイズ剤、ワックスエマルジョン型サイズ剤、ロ
ジン系中性サイズ剤等がある。本発明者等はこれらのサ
イズ剤を種々の濾水度に調製した製紙用繊維に定着させ
て検討した結果、樹脂型のカチオン型サイズ剤である、
エポキシ化高級脂肪酸アミドのみが特に優れた効果を発
揮することを見いだした。
【0011】本発明で使用するエポキシ化高級脂肪酸ア
ミドとしては、特公昭38−20601や特公昭39−
4507号等に記載されているように脂肪酸と多価アミ
ンの縮合により得られるもの、特開昭51−1705号
に記載されているような、アルケニルコハク酸と多価ア
ミンとの反応により得られるもの等がある。
【0012】上記脂肪酸の中でも炭素数8ないし30の
高級脂肪酸モノカルボン酸及び多価カルボン酸が本発明
においては好ましく、特に炭素数12〜25のものが好
ましい。このような脂肪族カルボン酸の例としては、ス
テアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、
アラキン酸、ベヘン酸、トール油脂肪酸、アルキルコハ
ク酸、アルケニルコハク酸等を挙げることができる。脂
肪酸は2種以上を併用しても良い。
【0013】また、前記多価アミンとしては、ポリアル
キレンポリアミンが好ましく、中でもアミノ基の間にメ
チレン基を2〜3個有するものが好ましい。具体的な例
としてはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミ
ン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサ
ミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラ
ミン、アミノエチルエタノールアミン等を挙げることが
できる。
【0014】本発明においては、物理的な力がかかるこ
とによって製紙用繊維からサイズ剤が脱落しないよう
に、特に脂肪族カルボン酸と多価アミンとの反応物を、
エピクロルヒドリンを用いて4級塩としたものを使用す
ることが好ましい。
【0015】本発明におけるエポキシ化高級脂肪酸アミ
ドの使用量は、製紙用繊維に対して0.1〜1.5重量
%であることが好ましく、特に0.3〜1.0重量%で
あることが好ましい。0.1重量%未満であると、画線
がにじみ易くなり、1.5重量%を越えると水性絵の具
の水が速やかに紙に吸収され難くなる。
【0016】本発明で、その他のカチオン性のサイズ
剤、例えばアルキルケテンダイマー、スチレンアクリル
酸共重合体、中性ロジン系等が使用できない理由は、こ
れらは絵の具の均一な発色性が得られないことが原因で
ある。本発明者は、この理由は、これらのサイズ剤が紙
層内で不均一に定着しているため、水の吸収性にムラを
生じて、絵の具の乗りも不均一になるからであると推定
した。
【0017】これに対し、本発明者が検討した結果で
は、エポキシ化高級脂肪酸アミドは、パルプの吸水性を
阻害することなく、にじみを防止することができ、均一
な発色性が得られることが判った。この理由は、エポキ
シ化高級脂肪酸アミドが、紙層内、特に表層と中層で同
様のサイズ効果を得ることができ、その結果、上記効果
が得られるからであると推定した。
【0018】本発明においては、要求性能を阻害しない
範囲で、更に、クレー、タルク、カオリン、炭酸カルシ
ウム、酸化チタン等の無機顔料、ポリアクリルアミド系
ポリマー、澱粉等の紙力増強剤、ロジン、パラフィンワ
ックス、アルケニルコハク酸無水物、スチレンアクリル
酸共重合体、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、メ
ラミンホルマリン縮合物等の湿潤紙力増強剤、その他染
料、消泡剤等を適宜添加し、長網抄紙機や円網抄紙機等
の抄紙機を使用して、常法により、通常坪量60〜30
0g/m2で用紙を製造する。
【0019】紙の経時劣化と冷水抽出pHとは密接な関
係があり、この値が6.0〜9.5の範囲に入る紙は経
時劣化を起こしにくいと言われている。本発明者が検討
した結果では、水彩紙に於いても同様の結果が得られる
ことを見いだした。本発明で使用するエポキシ化高級脂
肪酸アミドはカチオン性であり、製紙用繊維がマイナス
の電荷を持っているため、ロジン系サイズ剤のように硫
酸アンモニウム塩等の定着剤を使用しないで製紙用繊維
に定着し、いわゆる中性紙処方で用紙を製造でき、これ
により経時により劣化の少ない高級水彩紙を得ることが
できる。そのためには、本発明の目的を阻害しない範囲
で使用する種々の製紙用副資材は、用紙の冷水抽出pH
が6.0〜9.5の範囲に入る範囲で使用することが必
要である。
【0020】また、本発明では筆のタッチを滑らかに
し、かつ作品としての高級感を出すため、成紙をエンボ
スしたり、抄紙機上の湿紙をエンボスロールやフエルト
でプレス処理して製造しても良い。具体的には、抄紙機
上の、又は成紙に加水した水分率15%程度の湿紙にゴ
ム、金属、合成樹脂等のエンボスロールで押圧処理する
方法や、抄紙機上の水分率50%程度の湿紙に、編み模
様を形成したフェルト等で押圧賦型処理する方法等で製
造する。
【0021】上記の如くして得られた用紙の表面には、
毛羽立ちをなくすため、各種の水溶性添加剤を含有する
液をサイズプレス、タブサイズ、またはゲートロールコ
ーター等で含浸、塗布しても良い。本発明に用いられる
水溶性添加剤としては、例えば澱粉、セルロース誘導
体、カゼイン、ポリビニルアルコール、カルボキシ変性
ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリア
クリルアマイド等がある。塗工量は通常0.3〜4g/
2とする。
【0022】
【実施例】以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、
重量部、重量%、g/m2はすべて乾燥した場合の数値
を意味する。実施例1 コットンパルプ30重量部、広葉樹晒クラフトパルプ7
0重量部を混合したパルプを350mlC.S.F.に
叩解し、カチオン澱粉(商品名「ネオタックL−1」、
日本食品(株)製造)1.0重量部、エポキシ化脂肪酸
アミド系中性サイズ剤(商品名「N−815」、近代化
学工業(株)製造)0.1重量部を添加し、十分に混合
して抄紙原料とし、円網抄紙機を用いて坪量185g/
2の高級水彩紙を製造した。
【0023】実施例2 中性サイズ剤(同上)を1.5重量部とした以外は実施
例1と同一の高級水彩紙を製造した。
【0024】実施例3 濾水度を550mlC.S.F.にした以外は実施例1
と同一の高級水彩紙を製造した。
【0025】実施例4 中性サイズ剤(同上)を1.5重量部、濾水度を550
mlC.S.F.にした以外は実施例1と同一の高級水
彩紙を製造した。
【0026】実施例5 コットンパルプを100重量部にした以外は実施例1と
同一の高級水彩紙を製造した。
【0027】実施例6 コットンパルプを100重量部、中性サイズ剤(同上)
を1.5重量部にした以外は実施例1と同一の高級水彩
紙を製造した。
【0028】実施例7 コットンパルプを100重量部、濾水度を550ml
C.S.F.にした以外は実施例1と同一の高級水彩紙
を製造した。
【0029】実施例8 コットンパルプを100重量部、濾水度を550ml
C.S.F.、中性サイズ剤(同上)を1.5重量部に
した以外は実施例1と同一の高級水彩紙を製造した。
【0030】実施例9 コットンパルプを50重量部にした以外は実施例1と同
一の高級水彩紙を製造した。
【0031】実施例10 コットンパルプを100重量部、濾水度を450ml
C.S.F.、中性サイズ剤(同上)を0.5重量部に
した以外は実施例1と同一の高級水彩紙を製造した。
【0032】比較例1 コットンパルプ25重量部にした以外は実施例1と同一
の用紙を製造した。
【0033】比較例2 コットンパルプを30重量部、濾水度を300mlC.
S.F.、中性サイズ剤(同上)を0.1重量部にした
以外は実施例1と同一の用紙を製造した。
【0034】比較例3 コットンパルプを30重量部、濾水度を600mlC.
S.F.、中性サイズ剤(同上)を0.1重量部にした
以外は実施例1と同一の用紙を製造した。
【0035】比較例4 コットンパルプを30重量部、濾水度を350mlC.
S.F.、中性サイズ剤(同上)を0.05重量部にし
た以外は実施例1と同一の用紙を製造した。
【0036】比較例5 コットンパルプを30重量部、濾水度を350mlC.
S.F.、中性サイズ剤(同上)を2.0重量部にした
以外は実施例1と同一の用紙を製造した。
【0037】比較例6 実施例10で調整したコットンパルプ100重量部に対
して、カチオン澱粉(同上)1.0重量部、アルキルケ
テンダイマー系中性サイズ剤(商品名「NSK−37
0」、近代化学工業(株)製造)0.2重量部を添加
し、十分に混合して抄紙原料とし、円網抄紙機を用いて
坪量185g/m2の用紙を製造した。
【0038】比較例7 サイズ剤をロジン系中性サイズ剤(商品名「R−1
0」、近代化学工業(株)製造)0.4重量部、硫酸バ
ンド2.0重量部とした以外は実施例10と同一の用紙
を製造した。
【0039】比較例8 実施例10で調整したコットンパルプ100重量部に対
して、ポリアクリルアマイド(商品名「ポリストロン1
45」、荒川化学工業(株)製造)0.2重量部、ロジ
ン系酸性サイズ剤(商品名「サイズパインE」、荒川化
学工業(株)製造)0.5重量部、硫酸バンド3.5重
量部を添加し、十分に混合して抄紙原料とし、円網抄紙
機を用いて米坪185g/m2の用紙を製造した。
【0040】これらの各高級水彩紙の評価結果を表1に
示す。
【0041】
【表1】
【0042】評価は次の方法によった。いづれも水彩用
透明絵の具(色名:「フレンチウルトラマリン」、ウィ
ンザー&ニュートン社製)を水と重量比で1:1に希釈
した溶液を用い、水の吸収性、画線のにじみ、均一な発
色性等について評価した。なお、表のサイズ剤の項目
で、「E」はエポキシ化高級脂肪酸アミドを使用したこ
とを、「他」はそれ以外のサイズ剤を使用したことを意
味する。また評価結果は5点法で示した。5点が最も優
れ、1点が最も劣ることを示すが、3点以上が実用的に
満足できるレベルを示す。
【0043】「水の吸収性」の評価 筆で描いた時、紙に付着した水が内部に浸透するまでの
秒数を測定した。紙表面に水が溜まらず瞬時に吸収され
るものを5点、5秒以下を4点、6秒以上10秒以下を
3点、11秒以上20秒以下を2点、20秒以上を1点
で示した。
【0044】「画線のにじみ」の評価 画線が明確なものを5点、明確ではあるが細部が若干に
じんでいるものを4点、やや不明確であるが実用上問題
ないものを3点、部分的ににじみがひどく不明確なもの
を2点、不明瞭であるものを1点とした。
【0045】「均一な発色性」 顔料の発色のムラを目視で評価した。全くムラのないも
のを5点、良く見ると若干ムラがあるものを4点、若干
ムラはあるが実用上問題のないものを3点、水の輪染み
等部分的にむらのあるものを2点、全面的にムラのある
ものを1点で示した。
【0046】「強度劣化」について、強制劣化させた後
の耐折強さの残存率で示した。残存率(%)は、(強制
劣化後の耐折強さ(回)/強制劣化前の耐折強さ
(回))×100で求められた値である。強制劣化は、
用紙を80℃、65%RHの高温多湿条件下で56日間
放置することで行った。また用紙の着色具合も合わせて
評価した。残存率50%以上、色相の変化のないものを
5点、残存率50%未満40%以上、色相の変化の殆ど
無いものを4点、残存率40%未満30%以上、色相変
化が少しあるものを3点、残存率30%未満20%以
上、色相の変化が認められるものを2点、残存率20%
未満、色相の変化が大きいものを1点とした。
【0047】冷水抽出pHは、JIS P−8133に
準拠して測定した。
【0048】表1から明らかなように、本発明によれ
ば、吸水性、画線のにじみ、均一な発色性、経時変化の
いづれに関してもに優れていることが判る。全パルプ中
のコットンの含有率が低いものは、やや吸水性や均一な
発色性に劣り、サイズ剤の添加量の少ないものはややに
じんだ(実施例1〜9)が、実用上問題はないことが判
る。しかし、比較例から判るように、濾水度が一定範囲
内にあってもコットンパルプの含有率が低すぎるもの
(比較例1)や、コットンパルプの含有量が一定範囲内
にあっても濾水度が低すぎるもの(比較例2)は、紙表
面に水が溜まり発色性がムラとなることが判る。また、
濾水度が高すぎるもの(比較例3)は、部分的に吸水し
てしまい発色性がムラとなることが判る。コットンパル
プの含有率や濾水度が一定範囲内にあってもサイズ剤の
添加量が少なすぎる場合(比較例4)は、にじみが起
き、添加量が多すぎる場合(比較例5)は、吸水性が劣
り、かつ発色性も悪くなることが判る。また、エポキシ
化脂肪酸アミドを全く使用しないサイズ剤の系におい
て、中性系では部分的に吸水速度が異なり、均一に発色
せず(比較例6、7)、酸性の系では、強度劣化を起こ
すことが判る(比較例8)。また、この強度劣化は紙面
pHと密接な関係があることが判る。
【0049】
【発明の効果】以上説明したように本発明の高級水彩紙
は、水の吸収性、絵の具の均一な発色性に優れているだ
けでなく、中性域で抄紙しているため、経時変化による
強度劣化が少なく、作品の長期保存が可能であるという
利点がある。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 30重量%以上がコットンパルプからな
    る製紙用繊維を350〜550mlC.S.F.に叩解
    し、かつエポキシ化高級脂肪酸アミドを0.1〜1.5
    重量%含有させて抄紙し、冷水抽出pHが6.0〜9.
    5であることを特徴とする高級水彩紙。
  2. 【請求項2】 コットンパルプが50重量%以上である
    ことを特徴とする請求項1記載の高級水彩紙。
  3. 【請求項3】 エポキシ化高級脂肪酸アミドを0.3〜
    1.0重量%含有させたことを特徴とする請求項1記載
    の高級水彩紙。
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