JPH10179733A - 高脂血症治療用吸着材 - Google Patents

高脂血症治療用吸着材

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JPH10179733A
JPH10179733A JP8354650A JP35465096A JPH10179733A JP H10179733 A JPH10179733 A JP H10179733A JP 8354650 A JP8354650 A JP 8354650A JP 35465096 A JP35465096 A JP 35465096A JP H10179733 A JPH10179733 A JP H10179733A
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JP
Japan
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phe
peptide
amino acid
lys
ile
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JP8354650A
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English (en)
Inventor
Yoshihiro Hatanaka
美博 畑中
Katsuya Watanabe
勝哉 渡邊
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
Asahi Kasei Medical Co Ltd
Original Assignee
Asahi Medical Co Ltd
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 5〜10個のアミノ酸残基からなるペプ
チドであって、少なくとも1つのPheおよび少なくと
も1つのArgまたはLysを含むアミノ酸配列を有
し、かつ、特定の電荷を有し、さらに、該ペプチドはそ
のアミノ酸配列中に、特定されたアミノ酸配列を少なく
とも1つ有するペプチドで、これが結合した水不溶性担
体からなる高脂血症治療用吸着材。 【効果】 優れた低比重リポ蛋白質選択吸着性を有し、
それでいて、ブラジキニンの産生、血液細胞の活性化や
ペプチドへの吸着、血液凝固系の活性化等を惹起しない
ため、全血や血漿等の体液から低比重リポ蛋白質を除去
するための吸着材として有利に用いることができる。さ
らに、吸着材に結合しているペプチドは、10個以下の
アミノ酸残基からなるため、比較的容易に、しかも、低
コストで作製することができるだけでなく、滅菌操作等
に対する安定性や、保存性に優れている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、低比重リポ蛋白質
(以下、しばしば、”LDL”と称す)結合用ペプチド
を水不溶性担体に結合させてなる高脂血症治療用吸着材
に関する。
【0002】
【従来の技術】血液中に存在するリポ蛋白のうち、LD
Lはコレステロールを多く含み、動脈硬化の原因になる
ことが知られている。従来、血液中のLDLの量が多い
家族性高コレステロール血症患者において、LDLを吸
着する吸着材を用いた血液体外循環治療(以下、しばし
ば、LDLアフェレーシスと称す)が施され、患者の種
々の症状が改善されてきた。LDL除去用の吸着材とし
ては、例えば、EP特許第0 225 867号公報
に、陰性の電荷を有する硫酸化多糖をリガンドとして化
学的に固定化させた樹脂が開示され、実際に、デキスト
ラン硫酸をリガンドとしてセルロース粒子担体に固定化
したものが市販されている。
【0003】しかし、デキストラン硫酸をリガンドとし
たLDL吸着材を用いてLDLアフェレーシスを行う
と、デキストラン硫酸が持つ陰性電荷の影響により、血
液中にブラジキニンと呼ばれる生理活性物質が産生され
易い。ブラジキニンは血圧降下作用、平滑筋収縮作用お
よび膜透過性亢進作用等を有する物質であることが知ら
れている。(例えば、EP特許出願公開第93 104
348.3号公報を参照)。また、例えば、WO90
/04416号公報には、アガロース粒子にヒト低比重
リポ蛋白質と結合性を持つ抗体を結合させたものが開示
されている。
【0004】しかし、抗体は、一般的に細胞培養や生物
体内で産生されるために、LDLが関与している疾患に
対する治療に用いるのに十分な量を調製するためには、
多大な労力と生産コストがかかるばかりでなく、体外循
環治療に用いるには、滅菌操作等に対する安定性が低
い。また、一般に、LDLアフェレーシス治療において
は、特に高比重リポ蛋白質(以下、しばしば、”HD
L”と称す)の吸着除去を行わずに、LDLを選択的に
吸着除去することが望まれている。したがって、全血お
よび血漿等の体液からのLDLの吸着除去を行う際に、
優れたLDL選択吸着性を示すだけでなく、ブラジキニ
ンの産生を惹起しない等、安全性に優れたLDL除去用
吸着材の開発が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の1つの目的
は、優れたLDL選択吸着性を有し、それでいて、ブラ
ジキニンの産生を惹起しないために安全性に優れてお
り、全血や血漿等の体液からLDLを除去するための高
脂血症治療用吸着材を提供することにある。本発明のさ
らに他の1つの目的は、上記の優れた特性を有し、さら
に、比較的容易に、しかも、低コストで作製することが
できるだけでなく、滅菌操作等に対する安定性や保存性
に優れたLDL結合用ペプチドを、水不溶性担体に結合
させてなるLDL除去用吸着材であって、LDLアフェ
レーシスに用いる血液浄化処理装置等に用いると、効率
よく、しかも、安全にLDLの除去を行うことができる
高脂血症治療用吸着材を提供することにある。本発明の
さらに他の1つの目的は、体液を上記の高脂血症治療用
吸着材と接触させることにより、効率よく、しかも、安
全に体液からLDLを除去する方法を提供することにあ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】本明細書において、アミ
ノ酸およびペプチドは、下記に示すIUPAC−IUB
生化学命名委員会(CBN)で採用された略号を用いて
表される。なお、アミノ酸等に関し特に記載のない場合
は、L体もしくはD体のいずれかの立体構造をとるアミ
ノ酸残基を示すものとする。さらに、特に明示しない限
りペプチドのアミノ酸配列の左端および右端は、それぞ
れN末端およびC末端である。AまたはAla:アラニ
ン残基、 DまたはAsp:アスパラギン酸残基、E
またはGlu:グルタミン酸残基、FまたはPhe:フ
ェニルアラニン残基、GまたはGly:グリシン残基、
HまたはHis:ヒスチジン残基、IまたはIl
e:イソロイシン残基、KまたはLys:リジン残基、
LまたはLeu:ロイシン残基、 MまたはMet:
メチオニン残基、NまたはAsn:アスパラギン残基、
PまたはPro:プロリン残基、QまたはGln:グル
タミン残基、 RまたはArg:アルギニン残基、Sま
たはSer:セリン残基、 TまたはThr:スレ
オニン残基、VまたはVal:バリン残基、 Wま
たはTrp:トリプトファン残基、YまたはTyr:チ
ロシン残基、 CまたはCys:システイン残基
【0007】本発明者らは、前記の目的を解決するため
に鋭意研究を重ねた。本発明者らは、まず、下記式
(1’)または式(2’)で表されるアミノ酸配列を有
し、ペプチド分子の総荷電数が+1以上、+4以内であ
り、かつ、総アミノ酸残基数が2以上、10以下である
ペプチドが、優れたLDL吸着性を有することを見いだ
し、すでに特許出願を行った(特願平7−17690
4)。
【0013】 −A−(Xn)−B− ・・・・・・・・(1’) −B−(Xn)−A− ・・・・・・・・(2’) ここで、 A : Phe または Trp B : Arg または Lys Xn: 任意のn個のアミノ酸からなるアミノ酸配列 nは、M−2を越えず、かつ、0以上、5以下の整数 (ただし、Mは総アミノ酸残基数)
【0008】さらに、鋭意検討した結果、5〜10個の
アミノ酸残基からなるペプチドであって、少なくとも1
つのPheおよび少なくとも1つのArgまたはLys
を含む特定のアミノ酸配列を有し、かつ、特定の電荷
(E)[ただし、Eは式:E=(該ペプチド中の正電荷
を有する官能基の数)−(該ペプチド中の負電荷を有す
る官能基の数)で定義される]が式:+1≦E≦+2の
条件を満足し、さらに、該ペプチドはそのアミノ酸配列
中に、Ile−Phe−Xa −Xb −Pro,Ile−
Phe−Xa −Lys,Ile−Phe−Xa −Ar
g,Phe−Xa −Arg−Lys,Phe−Xa −L
ys−Pro,Leu−Phe−Xa −Lys,Phe
−Tyr−Xa −Gly,Phe−Ile−Lys−A
rg,Ile−Phe−Trp−Arg,Phe−Ph
e−LysあるいはPhe−Pro−Phe(ただし、
各Xa および各Xb は、任意の1つのアミノ酸残基を示
す)のいずれかの配列を少なくとも1つ有するペプチド
が結合した水不溶性担体からなる高脂血症治療用吸着材
が、驚くべきことに、優れたLDL選択吸着性を有し、
それでいてブラジキニンの産生を惹起しないため、優れ
た高脂血症治療用吸着材であることを見いだし、本発明
を完成した。
【0009】すなわち、本発明は、式(1)または式
(2)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドであ
り、該ペプチドが有する電荷(E)が+1≦E≦+2、
さらに、該ペプチドはそのアミノ酸配列中にIle−P
he−Xa −Xb −Pro,Ile−Phe−Xa −L
ys,Ile−Phe−Xa −Arg,Phe−Xa
Arg−Lys,Phe−Xa −Lys−Pro,Le
u−Phe−Xa −Lys,Phe−Tyr−Xa −G
ly,Phe−Ile−Lys−Arg,Ile−Ph
e−Trp−Arg,Phe−Phe−Lysあるいは
Phe−Pro−Phe(ただし、各Xa および各Xb
は、任意の1つのアミノ酸残基を示す)のいずれかの配
列を少なくとも1つ有するペプチドが結合した水不溶性
担体からなる高脂血症治療用吸着材が提供される。
【0010】 (X1 p ―Phe―(X2 q ―Lys―(X3 r (1)、または (X1 p ―Phe―(X2 q ―Arg―(X3 r (2) [ただし、式(1)および式(2)の左端および右端
は、それぞれN末端およびC末端であり、各X1 、各X
2 および各X3 は、それぞれ独立して、任意のアミノ酸
残基であり、p、qおよびrは、それぞれアミノ酸残基
1 、X2 およびX3 の数であり,さらに、p、qおよ
びrは次の関係を満足する。 3≦p+q+r≦8 0≦q≦3] さらに、本発明は、高脂血症の体液と上記の吸着材を接
触させた後、体液を回収することからなる、体液からL
DLを選択的に除去する方法を提供する。
【0011】本発明の高脂血症治療用吸着材に結合して
いるペプチドは、式(1)または式(2)で表されるア
ミノ酸配列を有し、芳香族炭化水素基を側鎖とするアミ
ノ酸残基であるPheを少なくとも1つ有し、さらに、
陽性電荷を有するグアニジノ基を側鎖に持つArg、ま
たは陽性電荷を有するアミノ基を側鎖に持つLysから
選ばれるアミノ酸残基を少なくとも1つ有することが必
要である。
【0012】本発明において、上記のアミノ酸残基であ
るPheおよびArgまたはLysは、いずれもL型で
あってもD型であってもよい。陽性電荷を有するグアニ
ジノ基を側鎖に持つArg、および陽性電荷を有するア
ミノ基を側鎖に持つLysは、LDLが有するリン脂質
のリン酸部位と静電的に相互作用することができると考
えられる。
【0013】さらに、該ペプチドは、Ile−Phe−
a −Xb−Pro,Ile−Phe−Xa −Lys,
Ile−Phe−Xa −Arg,Phe−Xa −Arg
−Lys,Phe−Xa −Lys−Pro,Leu−P
he−Xa −Lys,Phe−Tyr−Xa −Gly,
Phe−Ile−Lys−Arg,Ile−Phe−T
rp−Arg,Phe−Phe−LysあるいはPhe
−Pro−Phe(ただし、各Xa および各Xb は、任
意の1つのアミノ酸残基を示す)のいずれかの配列を少
なくとも1つ有することが必須である。
【0014】本発明の高脂血症治療用吸着材に結合して
いるペプチド、すなわち、少なくとも1つのアミノ酸残
基であるPheと、少なくとも1つのアミノ酸残基であ
るArgまたはLysを有し、Ile−Phe−Xa
b −Pro,Ile−Phe−Xa −Lys,Ile
−Phe−Xa −Arg,Phe−Xa −Arg−Ly
s,Phe−Xa −Lys−Pro,Leu−Phe−
a −Lys,Phe−Tyr−Xa −Gly,Phe
−Ile−Lys−Arg,Ile−Phe−Trp−
Arg,Phe−Phe−LysあるいはPhe−Pr
o−Phe(ただし、各Xa および各Xb は、任意の1
つのアミノ酸残基を示す)のいずれかの配列を少なくと
も1つ有するペプチドが、優れたLDL選択吸着性を発
揮する理由は明らかではないが、以下のように考えられ
る。
【0015】一般に、疎水性分子はLDLやHDLのよ
うな脂溶性物質と相互作用すると言われている。同じ疎
水性アミノ酸に分類されるものに、Ile、Leu、V
al等の脂肪族アミノ酸とPheの芳香族アミノ酸があ
る。本発明者らは、ArgまたはLysを有し、さら
に、Ile、LeuおよびVal等の脂肪族アミノ酸を
有し、上記のアミノ酸配列からなる構成単位を有さない
ペプチドのLDLおよびHDLの吸着性と、Argまた
はLysを有し、さらに、芳香族アミノ酸であるPhe
を有する上記のアミノ酸配列からなる構成単位を有する
ペプチドのLDLおよびHDLの吸着性を、それぞれ測
定し、比較した。その結果、驚くべきことに、後者の方
が前者に比べ、LDL選択吸着性が高いということを見
いだした。すなわち、上記のアミノ酸配列からなる構成
単位を有するペプチドは、上記のアミノ酸配列からなる
構成単位を有さないペプチドよりも、LDLに存在する
脂質部分と強く相互作用することができるので、HDL
よりもLDLとより強く結合することができると考えら
れる。
【0016】なお、本明細書に記載されるLDL選択吸
着性とは、(LDLの吸着率/HDLの吸着率)の値、
または(LDLの吸着量/HDLの吸着量)の値をい
う。例えば、(LDLの吸着率/HDLの吸着率)の
値、または(LDLの吸着量/HDLの吸着量)の値が
1より大きいものは、HDLよりもLDLを多く吸着
し、LDL選択吸着性があり、その値が大きければ大き
いほど、LDL選択吸着性に優れていることになる。逆
に、(LDLの吸着率/HDLの吸着率)の値、または
(LDLの吸着量/HDLの吸着量)の値が1以下のも
のは、LDL選択吸着性がないことになる。
【0017】式(1)または式(2)で表されるアミノ
酸配列を有する本発明の高脂血症治療用吸着材に結合し
たペプチドにおいて、X1 、X2 およびX3 として用い
ることのできるアミノ酸残基とは、1分子内に少なくと
も1つのアミノ基と少なくとも1つのカルボキシル基を
持つ有機化合物分子であるアミノ酸に由来するものであ
れば特に限定はなく、アミノ基の水素が分子内の他の部
分と置換して二級アミンとなった環状化合物に由来する
残基であってもよく、また、非蛋白質性のアミノ酸に由
来する残基であってもよい。上記のアミノ酸の例として
は、L体の立体構造を有するαーアミノ酸、D体の立体
構造を有するαーアミノ酸、βーアミノ酸、γーアミノ
酸およびδーアミノ酸が挙げられる。
【0018】αーアミノ酸の例としてはグリシンや、L
体の立体構造を有するL−アラニン、L−アスパラギン
酸、L−グルタミン酸、L−フェニルアラニン、L−ヒ
スチジン、L−イソロイシン、L−リジン、L−ロイシ
ン、L−メチオニン、L−アスパラギン、L−プロリ
ン、L−グルタミン、L−アルギニン、L−セリン、L
−スレオニン、L−バリン、L−トリプトファン、L−
チロシンおよびL−システインが挙げられる。
【0019】D型の立体構造を有するアミノ酸の例とし
ては、上記したL型アミノ酸の光学異性体が挙げられ
る。非蛋白質性のアミノ酸としては、β−アラニン、γ
−アミノ酪酸、ホモシステイン、オルニチン、5−ヒド
ロキシトリプトファン、3,4−ジヒドロキシフェニル
アラニン、トリヨードチロニンおよびチロキシンが挙げ
られる。本発明におけるペプチドとは、アミノ酸がペプ
チド結合したものを言うが、さらに、アミノ酸とN−置
換グリシンモノマーが結合した組成物も、本発明におけ
るペプチドに含まれる。本発明においてペプチドの電荷
(E)とは、ペプチドが担体に結合する前のペプチドの
電荷を指し、式:E=(該ペプチド中の正電荷を有する
官能基の数)−(該ペプチド中の負電荷を有する官能基
の数)で定義される。
【0020】本発明において、正電荷を有する官能基ま
たは負電荷を有する官能基とは、該ペプチドが有する官
能基の中で中性(pH7.0)の水溶液中でイオン化し
て、正または負の電荷を帯びる官能基のことである。例
えば、ペプチド分子のN末端のアミノ基は正の電荷を有
し、C末端のカルボキシル基は負の電荷を有する。ただ
し、アミノ酸は水溶液中において、その種類および水溶
液のpHによって様々な電離状態を有するので、側鎖に
官能基を有するアミノ酸残基の場合、そのアミノ酸を有
するペプチドの中性(pH7.0)水溶液において、そ
のアミノ酸残基の80%以上が有する電離状態に基づ
き、イオン化した官能基の数を求める。例えば、ペプチ
ドが側鎖にグアニジノ基を有するArgを有する場合、
そのペプチドの中性(pH7.0)水溶液中において、
80%以上のArgが、イオン化されて正電荷を帯びた
グアニジノ基を有するので、Argが側鎖に有するグア
ニジノ基は、正電荷を有する官能基とみなす。Lysが
側鎖に有するアミノ基も、正電荷を有する官能基であ
る。一方、AspやGluが側鎖に有するカルボキシル
基等は、負電荷を持つ官能基である。ただし、該ペプチ
ド分子が有するアミノ基またはカルボキシル基が、該ペ
プチド分子以外の分子と反応して酸アミド結合等を形成
したり、保護基によって保護されたりして、電荷を持た
ない状態になった基は、もちろん、イオン化した官能基
とはみなさない。
【0021】本発明の高脂血症治療用吸着材に結合して
いるペプチドの電荷(E)は、ペプチドが担体に結合す
る前の状態で、+1以上、+2以内であることが必要で
ある。電荷(E)が0以下の場合には、LDLとの結合
に重要なリン脂質に存在するリン酸部位との静電的な相
互作用が弱まり、LDLとの結合性が低下する。さら
に、電荷(E)が負の場合、陰性電荷の影響により、血
液中にブラジキニンと呼ばれる生理活性物質が生成され
てしまう恐れがある。
【0022】本発明の高脂血症治療用吸着材に結合して
いるペプチドの総アミノ酸残基数は、最低5残基が必要
である。また、アミノ酸残基数は一般に多くなれば物理
化学的な安定性が悪くなり、10個を越えるアミノ酸残
基からなるペプチドは、耐滅菌性や保存性が低下する傾
向にある。さらに、経済性を考慮すると、できるだけ短
い方が好ましく、より好ましくは5残基である。
【0023】式(1)または式(2)で表されるアミノ
酸配列を有する本発明の高脂血症治療用吸着材に結合し
ているペプチドにおいては、LDLの有する脂質部位と
相互作用するアミノ酸残基であるPheと、LDLのリ
ン脂質の陰性電荷を帯びたリン酸部位と相互作用するア
ミノ酸残基であるArgまたはLysとの間の距離が、
優れたLDL選択吸着性を達成するために特に重要であ
る。
【0024】すなわち、LDLと結合する本発明のペプ
チドは、式(1)および式(2)におけるアミノ酸残基
2 の数qが0〜3であることが必要である。qが4以
上になると、アミノ酸残基PheとArgまたはLys
との共同作用によるLDLとの相互作用が弱まり、ペプ
チドとLDLとの結合性は低下する。したがって、ペプ
チドに存在するアミノ酸残基であるPheとArgまた
はLysとの共同作用による効果を利用して、LDLと
の結合性を高めるには、qが0〜3の範囲にあることが
必要である。
【0025】本発明において、例えば、アミノ酸残基に
その光学異性体や光学異性体の混合物を用いたり、該ペ
プチドのN末端部分のアミノ基やC末端部分のカルボキ
シル基および該ペプチドに含まれるアミノ酸残基の側鎖
に有するアミノ基、グアニジノ基、イミダゾリル基、カ
ルボキシル基、カルバミド基、水酸基、メルカプト基お
よびインドリル基等を保護基にて保護してもよい。
【0026】ペプチドのN末端部分のアミノ基や、アミ
ノ酸残基の側鎖に存在するアミノ基の保護基の例として
は、ベンジルオキシカルボニル(Z)基、p−メトキシ
ベンジルオキシカルボニル〔Z(OMe)〕基、p−ク
ロロベンジルオキシカルボニル〔Z(Cl)〕基、p−
ニトロベンジルオキシカルボニル〔Z(NO2 )〕基、
p−フェニルアゾベンジルオキシカルボニル(Pz)
基、p−メトキシフェニルアゾベンジルオキシカルボニ
ル(Mz)基、3,5−ジメトキシベンジルオキシカル
ボニル〔Z(OMe)2 〕基、3,4,5−トリメトキ
シベンジルオキシカルボニル〔Z(OMe)3 〕基、第
三ブトキシカルボニル(Boc)基、第三アミロキシカ
ルボニル(Aoc)基、p−ビフェニルイソプロピルオ
キシカルボニル(Bpoc)基、ジイソプロピルメチロ
キシカルボニル(Dipmoc)基、アダマンチルオキ
シカルボニル(Adoc)基、イソボルニルオキシカル
ボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル(Poc)
基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、フルフリルオ
キシカルボニル基、ベンズヒドリルオキシカルボニル
基、ピペリジノオキシカルボニル基、ホルミル(HC
O)基、トリフルオロアセチル(Tfa)基、フタリル
(Pht)基、トシル(Tos)基、o−ニトロフェニ
ルスルフェニル(Nps)基、ベンゾイル(Bz)基、
クロロアセチル基、アセトアセチル基、トリチル(Tr
t)基、ベンジリデン基、ベンジル基、2−ベンゾイル
−1−メチルビニル(Bmv)基、トリメチルシリル
(Tms)基、2−ヒドロキシアリリデン基、エナミン
基、ジメドン(5,5−ジメチルシクロヘキサン−1,
3−ジオン)基、9−フルオレニルメチルオキシカルボ
ニル(Fmoc)基等が挙げられる。
【0027】ペプチドのC末端部分のカルボキシル基
や、アミノ酸残基の側鎖に存在するカルボキシル基の保
護基の例としては、アミド、ジメチルアミド、メチルエ
ステル(―OMe)、エチルエステル(―OEt)、ベ
ンジルエステル(―OBzl)、p−ニトロベンジルエ
ステル〔―OBzl(NO2 )〕、p−メトキシベンジ
ルエステル、2,4,6−トリメチルベンジルエステ
ル、ペンタメチルベンジルエステル、第三ブチルエステ
ル(―OBut)、ジフェニルメチルエステル(―OD
PM)、ベンズヒドリルエステル、トリチルエステル、
フタルイミドメチルエステル、シクロペンチルエステ
ル、β―メチルチオエチルエステル、β―(p−ニトロ
チオフェニル)―エチルエステル、フェナシルエステ
ル、4−ピコリルエステルなどが挙げられる。その他、
アミノ酸残基が側鎖に有する官能基に対して、種々の保
護基を用いることができる。(例えば、泉屋信夫、加藤
哲夫、青柳東彦、脇道典著「ペプチド合成の基礎と実
験」日本国、丸善株式会社(1985年)参照)。
【0028】ペプチドの合成は、ペプチド合成において
通常用いられる方法、例えば、固相合成法、または液相
合成法により行われるが、固相合成法により行う方が、
操作が簡便であるため好ましい〔例えば、日本国、日本
生化学会編「新生化学実験講座1タンパク質IV 合成
および発現」日本国、東京化学同人(1992年)参
照〕。
【0029】固相合成法によるペプチドの合成は、市販
のペプチド合成用の樹脂、例えば、ジビニルベンゼンを
含むポリスチレンなどの重合体に、ペプチド固相合成に
適した反応性を持つ官能基を結合させた樹脂を用い、目
的とするペプチドの合成を、そのC末端側からN末端方
向に向かって行う。例えば、α−カルボキシル基以外の
アミノ基などの官能基を保護したアミノ酸と、α−アミ
ノ基以外の、カルボキシル基等の官能基を保護したアミ
ノ酸とを縮合させて結合させる操作と、結合したアミノ
酸におけるα−アミノ基などのペプチド結合を形成する
アミノ基が有する保護基のみを除去する操作を、順次繰
返していくことによってペプチド鎖を伸長させ、所望の
アミノ酸配列を持つペプチドを形成し、次いで、該ペプ
チドを樹脂から脱離させ、かつ、保護基が付加されてい
る全ての官能基から保護基を除去することにより、目的
とするペプチドを得ることができる。必要に応じてこの
ペプチドをさらに精製することにより、純度の高いもの
を得ることができる。ペプチドの精製は有機化合物の精
製に、一般的に用いられている方法が使用できる。特に
カラムクロマトグラフィーによる精製は、効率良く精製
を行えるので好ましい。
【0030】本発明の高脂血症治療用吸着材は、本発明
におけるペプチドを水不溶性担体に、直接またはスペー
サーを介して間接的に結合させることによって、腹水、
組織液、全血および血漿等の体液から、LDLを除去す
るための吸着材として使用することができる。例えば、
血液を人工的な装置によって体外循環させ、血液中のL
DLを除去する際に用いる吸着材として用いることがで
き、例えば、家族性高コレステロール血症等の疾病を有
する患者に対し、LDLアフェレーシスを行う際に、上
記の吸着材を利用した装置を用いると、効率よく、しか
も、安全にLDLを除去することができるので、高い治
療効果を得ることが可能である。上記の吸着材は、該ペ
プチドのN末端部分のアミノ基や、C末端部分のカルボ
キシル基、またはアミノ酸の側鎖が有する官能基を利用
して、水不溶性担体に固定化することにより得ることが
できる。
【0031】ペプチドを水不溶性担体に固定化する具体
的な方法としては、例えば、水不溶性担体上に、保護基
を外す条件においても切断されない結合性の基を付加
し、上記水不溶性担体上で、ペプチドを上記のペプチド
の固相合成法で合成し、保護基が付加されている全ての
官能基から保護基を除去することにより得る方法が挙げ
られる。
【0032】また、ペプチドの水不溶性担体への固定化
は、一般にペプチドまたは蛋白質を担体上に固定化する
方法を用いて行うことができる。そのような方法として
は、例えば、カルボキシル基を有する担体を用い、この
カルボキシル基をN−ヒドロキシコハク酸イミドと反応
させることによって、スクシンイミドオキシカルボニル
基に変換し、これにペプチドをアミノ基の部分で反応さ
せる方法(活性エステル法)、アミノ基またはカルボキ
シル基を有する担体を用い、ジシクロヘキシルカルボジ
イミドなどの縮合試薬の存在下で、担体のアミノ基また
はカルボキシル基と、ペプチドのカルボキシル基または
アミノ基を縮合反応させて結合させる方法(縮合法)、
担体とペプチドとを、グルタルアルデヒドなどの2個以
上の官能基を有する化合物を用いて架橋させて結合させ
る方法(担体架橋法)、水酸基を有する担体を用い、臭
化シアンなどのハロゲン化シアンを担体に作用させ、ペ
プチドや蛋白質のアミノ基の部分で反応させて結合させ
る方法、メルカプト基を有する担体を用い、ペプチドや
蛋白質のメルカプト基の部分で反応させる方法、および
エピクロロヒドリンなどのエポキシドを担体に作用さ
せ、ペプチドのアミノ基の部分や水酸基の部分で反応さ
せて結合させる方法等が挙げられる。
【0033】さらに、必要に応じて水不溶性担体とペプ
チドを、任意の長さの分子(スペーサー)を介して結合
させてもよい。スペーサーの詳細に関しては、例えば、
「アフィニティクロマトグラフィー」笠井献一ら、日本
国、東京化学同人、1991年、105〜108頁を参
照することができる。スペーサーを使用することは、本
発明のLDL結合用ペプチドと水不溶性担体との間に距
離をもたせることにより、該ペプチドとLDLの結合部
位を増加させる観点から好ましい。スペーサーの例とし
ては、ポリメチレン鎖およびポリエチレングリコール鎖
等が挙げられる。スペーサーの長さは、500Å以下で
あることが好ましく、200Å以下であることがさらに
好ましい。スペーサーを介して水不溶性担体にペプチド
を結合させる方法としては、例えば、水不溶性担体とし
てアガロースを用いる場合、アガロースの水酸基とスペ
ーサーとして用いるヘキサメチレンジイソシアナートの
片側のイソシアナート基を反応、結合させ、残ったイソ
シアナート基とペプチドのアミノ基、水酸基またはカル
ボキシル基等を反応、結合させる方法が挙げられる。
【0034】水不溶性担体としては、親水性の表面を有
し、かつ、ペプチドとの間で共有結合を形成することが
できるアミノ基、カルボキシル基および水酸基などの反
応性の官能基を有するものが好ましい。また、上記の不
溶性担体は、吸着させ得る有効表面積が広い多孔質性で
あるものが好ましい。多孔質の担体は、排除限界分子量
が2.0×106 〜1.0×108 の範囲であることが
好ましく,2.2×106 〜8.0×107 の範囲であ
ることがさらに好ましい。また、多孔質の担体の平均細
孔径については、20〜100nmの範囲であることが
好ましく、22〜80nmの範囲であることがさらに好
ましい。担体は粒子状、繊維状、シート状、中空糸状な
どの任意の形状を用いることができる。
【0035】使用できる担体の材質としては、表面にペ
プチドを担持できるものであれば特に限定されず、無機
化合物、有機化合物であってもよく、また、通常のアフ
ィニティクロマトグラフィーに用いられる担体用の材料
は全て用いることができる。有機化合物からなる担体の
具体例としては、旭化成マイクロキャリア〔日本国、旭
化成工業(株)社製〕、CM−セルロファインCH〔排
除限界タンパク質分子量:約3×106 、日本国、生化
学工業(株)社販売〕などのセルロース系担体;セファ
デックス[Sephadex:スウェーデン国、ファル
マシアバイオテク(Pharmacia Biotec
h AB)社製]等のデキストラン系担体;日本国、特
公平1−44725号公報記載の全多孔質活性化ゲル
や、CM−トヨパール650C〔排除限界タンパク質分
子量:5×106 、日本国、東ソー(株)社製〕等のポ
リビニルアルコール系担体;CM−トリスアクリルM
(CM−Trisacryl M)〔排除限界タンパク
質分子量:1×107 、スウェーデン国、ファルマシア
−LKB(Pharmacia−LKB)社製〕等のポ
リアクリルアミド系担体;ポリエチレン系担体(特開平
6−296859号、特開平6−296860号参照)
およびセファロースCL−4B(SepharoseC
L−4B)〔排除限界タンパク質分子量:2×107
スウェーデン国、ファルマシア−LKB(Pharma
cia−LKB)社製〕、Thiopropyl−Se
pharose 6B[排除限界タンパク質分子量:4
×106、スウェーデン国、ファルマシア−LKB(P
harmacia−LKB)社製]等のアガロース系担
体が挙げられる。
【0036】無機化合物からなる担体の具体例として
は、CPG−10−1000〔排除限界タンパク質分子
量:1×108 、平均細孔径:100nm、米国エレク
トロ−ニュークレオニクス(Electro−nucl
eonics)社製〕などの多孔性ガラス等が挙げられ
る。水不溶性担体に固定化するペプチドの量は、一般的
には、0.001μmol/ml(担体)〜1,000
μmol/ml(担体)の範囲であり、0.01μmo
l/ml〜500μmol/mlの範囲であることが好
ましく、0.1μmol/ml〜200μmol/ml
の範囲であることがより好ましい。また、上記の水不溶
性担体として、アガロースゲルなどのソフトゲルまたは
架橋されたポリビニルアルコールなどのハードゲルを用
いた場合には、液体クロマトグラフィー等において、L
DLの分離、精製用ゲルとして用いることもできる。
【0037】水不溶性担体にペプチドを結合させてなる
吸着材のLDLおよびHDLに対する結合性を評価する
方法の例としては、吸着材にLDLまたはHDLを吸着
させ、LDLまたはHDLの吸着した担体を用いて発色
させる方法が挙げられる[ABC法( avidin-biotin c
omplex method )]。例えば、ビオチン標識化されたL
DLまたはHDLを血漿中に添加し、吸着材をその血漿
中に、一定時間浸漬後、吸着材を取り出して洗浄し、こ
れを西洋ワサビペルオキシダーゼで標識されたストレプ
トアビジン溶液に浸漬し、上記酵素の基質であるオルト
フェニレンジアミン溶液を添加することによって、発色
させることによりLDLまたはHDLの結合性を評価す
ることができる。なお、LDLおよびHDLの結合性の
評価方法に関しては、例えば、S.M. Hsu, L. Raine, H.
Fanger: J. Histchem. Cytochem., 29, 577 (1981) お
よび H. Towbin, T. Staehelin, J. Gordon: Proc. Nat
l.Acad. Sci. U.S.A.,76, 4350 (1979)を参照すること
ができる。
【0038】また、水不溶性担体に固定化されたペプチ
ドのLDLおよびHDLの吸着量を測定する方法の例と
しては、吸着材にLDLまたはHDLを吸着させ、LD
LまたはHDLの減少率を測定する方法が挙げられる。
例えば、ペプチドが固定化された担体を、一定時間LD
LまたはHDL溶液に浸漬させ、その後、LDLまたは
HDLの減少率を、コレステロールを定量して求めるこ
とができる。
【0039】また、吸着材を、一定時間血漿に浸漬さ
せ、その後、LDLコレステロールまたはHDLコレス
テロールを分離し、そのそれぞれの減少率を、コレステ
ロールを定量して求めることができる。なお、LDLお
よびHDLの吸着量の測定方法については、例えば、Ri
chmond, W,: Scand. J. Clin. Lab. Invest., 29(supp
l.), 126 (1972)や Allain, C.C., Poon, L.S., Chan,
C.S.G., Richmond, W. and Fu, P.C.: Clin. Chem., 2
0, 470-475 (1974) および Burstein, M., Scholnick,
H.R. and Morfin, R: J. Lipid Res., 11, 583-595 (19
70) を参照することができる。
【0040】
【発明の実施の形態】以下、実施例および比較例を挙げ
て、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、何ら
これに限定されるものではない。また、実施例中では、
アミノ酸残基は1文字で表記する。
【0041】
【実施例】
(実施例1および比較例1)表1に示す一連のペプチド
をペプチド合成キットSPOTs(米国、Genosy
s社製)を用いて、取り扱い説明書に従い、セルロース
membrane上の SPOT 部分にそれぞれ合成した。
また、ペプチドとLDLとの結合性の測定は、以下の手
順にて行った。すなわち、それぞれのペプチドが合成さ
れたmembrane上の SPOT 部分を直径5mmの円
形状に切り取り、96穴プレートにそれぞれ一枚ずつ入
れた。
【0042】その後、0.1%Tween20を含むP
BS(−)bufferで4倍に希釈したブロックエー
ス(日本国、大日本製薬製)溶液150μlを加えて、
4℃で一昼夜放置した。その後、上記溶液を除去後、2
00μlの0.1%Tween20を含むPBS(−)
bufferで3回洗浄し、続いて200μlの蒸留水
で3回洗浄除去後、予めLDLを除去した10分の1量
の3.8%クエン酸ナトリウム溶液を含む健常人血漿
に、ビオチン標識キット(米国、アマシャム社製)を用
いて、その添付された操作手順書に従い、LDL(米
国、シグマ社製)をビオチン標識した溶液を、終濃度が
0.26μg/mlになるように加えた血漿を100μ
l添加し、室温で1時間放置した。その後、上記溶液を
除去後、200μlの0.1%Tween20を含むリ
ン酸緩衝溶液(以後、PBSと略す)で3回洗浄し、続
いて200μlの蒸留水で3回洗浄除去後、0.1%T
ween20を含むPBSで10倍に希釈したブロック
エース(日本国、大日本製薬製)溶液で5000倍に希
釈された西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ストレプトア
ビジン溶液(0.2μg/ml)100μlを添加し、
30分間室温で放置した。その後、上記溶液を除去後、
200μlの0.1%Tween20を含むPBSで5
回洗浄し、続いて200μlの蒸留水で5回洗浄除去
後、0.008%の過酸化水素水を含むオルトフェニレ
ンジアミン溶液(0.55mg/ml)100μlを加
えて、15分間室温で反応させた。その後、2Nの硫酸
溶液100μlを加えて反応停止させ、反応溶液150
μlを別の96穴プレートに移し替え、その溶液の49
0nmにおける吸光度を測定し、それぞれのペプチドに
対するLDLの吸着率は、WFWRRGGGGGの場合
を100%としたときの相対値(%)として求めた。
【0043】なお、ペプチドとHDLとの結合性の測定
は、上記記載のペプチドとLDLとの結合性測定の操作
において、ビオチン標識したLDLの代わりにビオチン
標識されたHDL(米国、パーイミューン社製)を用い
て、同様に測定し、それぞれのペプチドに対するHDL
の吸着率は、WFWRRGGGGGの場合を100%と
したときの相対値(%)として求めた。また、LDL選
択吸着性は、LDLの吸着率(%)/HDLの吸着率
(%)として数値化して求めた。以上の結果を表1に示
した。明らかに、実施例1のペプチドは、比較例1に比
べて、LDL選択吸着性が優れていることがわかる。
【0044】
【表1】
【0045】(実施例2および比較例2)表2に示す一
連のペプチドをペプチド合成キットSPOTs(米国、
Genosys社製)を用いて、取り扱い説明書に従
い、セルロースmembrane上の SPOT 部分にそれ
ぞれ合成した。また、ペプチドとLDLとの結合性の測
定は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0046】なお、ペプチドとHDLとの結合性の測定
は、上記記載のペプチドとLDLとの結合性測定の操作
において、ビオチン標識したLDLの代わりにビオチン
標識されたHDL(米国、パーイミューン社製)を用い
て、同様に測定し、それぞれのペプチドに対するHDL
の吸着率は、WFWRRGGGGGの場合を100%と
したときの相対値(%)として求めた。また、LDL選
択吸着性は、LDLの吸着率(%)/HDLの吸着率
(%)として数値化して求めた。以上の結果を表2に示
した。明らかに、実施例2のペプチドは、比較例2に比
べて、LDL選択吸着性が優れていることがわかる。
【0047】
【表2】
【0048】(実施例3および比較例3)表3に示す一
連のペプチドをペプチド合成キットSPOTs(米国、
Genosys社製)を用いて、取り扱い説明書に従
い、セルロースmembrane上の SPOT 部分にそれ
ぞれ合成した。また、ペプチドとLDLとの結合性の測
定は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0049】なお、ペプチドとHDLとの結合性の測定
は、上記記載のペプチドとLDLとの結合性測定の操作
において、ビオチン標識したLDLの代わりにビオチン
標識されたHDL(米国、パーイミューン社製)を用い
て、同様に測定し、それぞれのペプチドに対するHDL
の吸着率は、WFWRRGGGGGの場合を100%と
したときの相対値(%)として求めた。また、LDL選
択吸着性は、LDLの吸着率(%)/HDLの吸着率
(%)として数値化して求めた。以上の結果を表3に示
した。明らかに、実施例3のペプチドは、比較例3に比
べて、LDL選択吸着性が優れていることがわかる。
【0050】
【表3】
【0051】(実施例4)カルボキシル基末端がアミド
化されたすべてL体のアミノ酸からなるFFKRDC−
CONH2 の配列を持つペプチドを、ペプチド自動合成
機(9050 plusペプチドシンセサイザー、日本
国、日本パーセプティブ・リミテッド社)を用いて、固
相合成法により合成した。すなわち、4−アミノメチル
−3,5−ジメトキシフェノキシメチル基を0.18m
mol/g(樹脂)の割合で有するスチレン−ジビニル
ベンゼン共重合体からなる粒状樹脂(Fmoc−PAL
−PEG−PS:日本国、日本パーセプティブリミテッ
ド社製)を用い、すべてL体のFmoc−アミノ酸を用
いて、定法に従って固相合成を行った。
【0052】得られたペプチドを分析用高速液体クロマ
トグラフィーにて、逆相系カラム〔TSKgel OD
S−80TM:日本国、東ソー(株)社製〕を用いて、
220nmの波長で分析し、単一のピークであることを
確認した。同様にして、カルボキシル基末端がアミド化
されたすべてL体のアミノ酸からなるLFYKGC−C
ONH2 、IFFKPC−CONH2 、IFIRTC−
CONH2 の配列を持つペプチドも合成した。
【0053】上記のペプチドを定法に従い、Thiopropyl
-Sepharose 6B (スウェーデン国、ファルマシア社製)
に、ペプチドの固定化量が9.6〜11.0μmol/
mlゲルになるように樹脂に固定化した。すなわち、樹
脂を秤り取り、脱気した0.2Mの食塩を含む0.1M
のpH7.0のトリス塩酸緩衝溶液で洗浄後、精製した
ペプチド160μmolを、上記の緩衝溶液16mlに
溶解し、膨潤したゲル8mlに加えて、室温で2時間反
応させた。反応終了後、上記の緩衝溶液で洗浄し、反応
を終了させた。
【0054】その後、樹脂をPBSで洗浄後、膨潤状態
の樹脂250μlに、高脂血症患者の血漿1mlを添加
した。LDLの吸着量は、LDLコレステロール分離キ
ット(米国、SIGMA DIAGNOSTICS社製)を用いて、LD
Lコレステロールを血漿中から分離し、添加前後でのL
DLの含有量を、コレステロールE−テストワコー(日
本国、和光純薬製)を用いて求めた。HDLの吸着量
は、添加前後でのHDLの含有量を、HDLコレステロ
ールE−テストワコー(日本国、和光純薬製)を用いて
求めた。また、LDL選択吸着性は、LDLの吸着量/
HDLの吸着量として数値化して求めた。その結果を表
4に示す。本発明の吸着材は、高脂血症治療用に有効で
あることがわかる。
【0055】
【表4】
【0056】(実施例5および比較例4)実施例4で合
成したペプチドFFKRDC−CONH2 を実施例4と
同様の方法でThiopropyl-Sepharose 6B(スウェーデン
国、ファルマシア社製)に結合させた。ブラジキニンの
測定については、以下の手順で行った。ヘパリン(10
IU/ml)を添加した健常人の血液を遠心分離器で分
離し、得られた血漿にカプトプリル(50ng/ml、
米国、シグマ社製)を添加した血漿成分5mlを、膨潤
状態の樹脂1mlの入ったポリカーボネート製三角フラ
スコに加え、37℃で5分間放置した。
【0057】その後、直ちに血漿成分を分離し、その血
漿成分にトラジロール、大豆トリプシンインヒビター、
硫酸プロタミンおよびEDTA−2Naの入ったインヒ
ビター溶液2mlを加え反応を停止させ、血漿中に産生
されたブラジキニン量をRIA法にて測定した。なお、
比較のために、樹脂として市販のデキストラン硫酸固定
化セルロースも用いて、本操作を行った。また、参考の
ために、ブラジキニン産生を顕著に促進させると考えら
れるガラス製三角フラスコを用い、樹脂を入れずにこの
操作を行った。その結果を表5に示した。明らかに、F
FKRDC−CONH2 固定化Thiopropyl-Sepharose 6
B は、対照として行った空容器試験以上のブラジキニン
産生はなかった。
【0058】
【表5】
【0059】
【発明の効果】本発明の高脂血症治療用吸着材は、優れ
たLDL選択吸着性を有し、それでいて、ブラジキニン
の産生を惹起しないため、全血や血漿等の体液からLD
Lを除去するための吸着材として有利に用いることがで
きる。さらに、本発明の高脂血症治療用吸着材に結合し
ているペプチドは、10個以下のアミノ酸残基からなる
ため、比較的容易に、しかも、低コストで作製すること
ができるだけでなく、滅菌操作等に対する安定性や、保
存性に優れている。また、本発明の高脂血症治療用吸着
材を、血液中のLDLが病的な原因により、健常人より
も多くなる疾患において、そのLDLを血液中から除去
する場合に必要な血液浄化処理装置等に用いると、効率
よく、しかも、安全にLDLの除去を行うことができ
る。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(1)または式(2)で表される
    アミノ酸配列を有するペプチドであり、該ペプチドが有
    する電荷(E)が+1≦E≦+2であり、さらに、該ペ
    プチドはそのアミノ酸配列中にIle−Phe−Xa
    b −Pro,Ile−Phe−Xa −Lys,Ile
    −Phe−Xa −Arg,Phe−Xa −Arg−Ly
    s,Phe−Xa −Lys−Pro,Leu−Phe−
    a −Lys,Phe−Tyr−Xa −Gly,Phe
    −Ile−Lys−Arg,Ile−Phe−Trp−
    Arg,Phe−Phe−LysあるいはPhe−Pr
    o−Phe(ただし、各Xa および各Xb は、任意の1
    つのアミノ酸残基を示す)のいずれかの配列を少なくと
    も1つ有するペプチドが結合した水不溶性担体からなる
    高脂血症治療用吸着材。 (X1 p −Phe−(X2 q −Lys−(X3 r (1)、または (X1 p −Phe−(X2 q −Arg−(X3 r (2) 〔ただし、式(1)および式(2)の左端および右端
    は、それぞれN末端およびC末端であり、各X1 、各X
    2 および各X3 は、それぞれ独立して、任意のアミノ酸
    残基であり、p、qおよびrは、それぞれアミノ酸残基
    1 、X2 およびX3 の数であり、さらに、p、qおよ
    びrは次の関係を満足する。 3≦p+q+r≦8 0≦q≦3〕
  2. 【請求項2】 3≦p+q+r≦4であるところのペプ
    チドが水不溶性担体に結合ししていることを特徴とする
    請求項1に記載の高脂血症治療用吸着材。
  3. 【請求項3】 ペプチドが水不溶性担体に直接結合して
    いることを特徴とする請求項1に記載の高脂血症治療用
    吸着材。
  4. 【請求項4】 ペプチドが水不溶性担体にスペーサーを
    介して結合していることを特徴とする請求項1に記載の
    高脂血症治療用吸着材。
  5. 【請求項5】 水不溶性担体に結合したペチドの量が
    0.001μmol/ml以上1000μmol/ml
    以下であることを特徴とする請求項1に記載の高脂血症
    治療用吸着材。
  6. 【請求項6】 水不溶性担体に結合したペプチドの量が
    0.01μmol/ml以上500μmol/ml以下
    であることを特徴とする請求項1に記載の高脂血症治療
    用吸着材。
  7. 【請求項7】 水不溶性担体に結合したペプチドの量が
    0.1μmol/ml以上200μmol/ml以下で
    あることを特徴とする請求項1に記載の高脂血症治療用
    吸着材。
  8. 【請求項8】 水不溶性担体がアガロース系担体、セル
    ロース系担体、ポリビニルアルコール系担体、あるいは
    ポリエチレン系担体のいずれかであることを特徴とする
    請求項1に記載の高脂血症治療用吸着材。
  9. 【請求項9】 高脂血症の体液と、下記式(1)または
    式(2)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドであ
    り、該ペプチドが有する電荷(E)が+1≦E≦+2、
    さらに、該ペプチドはそのアミノ酸配列中にIle−P
    he−Xa −Xb −Pro,Ile−Phe−Xa −L
    ys,Ile−Phe−Xa −Arg,Phe−Xa
    Arg−Lys,Phe−Xa −Lys−Pro,Le
    u−Phe−Xa −Lys,Phe−Tyr−Xa −G
    ly,Phe−Ile−Lys−Arg,Ile−Ph
    e−Trp−Arg,Phe−Phe−Lysあるいは
    Phe−Pro−Phe(ただし、各Xa およびX
    b は、任意の1つのアミノ酸残基を示す)のいずれかの
    配列を少なくとも1つ有するペプチドが結合した水不溶
    性担体からなる吸着材とを接触させた後、体液を回収す
    ることからなる、体液から低比重リポ蛋白質を選択的に
    除去する方法。 (X1 p −Phe−(X2 q −Lys−(X3 r (1)、または (X1 p −Phe−(X2 q −Arg−(X3 r (2) 〔ただし、式(1)および式(2)の左端および右端
    は、それぞれN末端およびC末端であり、各X1 、X2
    およびX3 は、それぞれ独立して、任意のアミノ酸残基
    であり、p、qおよびrは、それぞれアミノ酸残基
    1 、X2 およびX3 の数であり、さらに、p、qおよ
    びrは次の関係を満足する。 3≦p+q+r≦8 0≦q≦3〕
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012143707A (ja) * 2011-01-12 2012-08-02 Asahi Kasei Medical Co Ltd 水不溶性担体及びエンドトキシン吸着材

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JP2012143707A (ja) * 2011-01-12 2012-08-02 Asahi Kasei Medical Co Ltd 水不溶性担体及びエンドトキシン吸着材

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