JPH10182694A - 低比重リポ蛋白質結合用化合物 - Google Patents

低比重リポ蛋白質結合用化合物

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JPH10182694A
JPH10182694A JP8354602A JP35460296A JPH10182694A JP H10182694 A JPH10182694 A JP H10182694A JP 8354602 A JP8354602 A JP 8354602A JP 35460296 A JP35460296 A JP 35460296A JP H10182694 A JPH10182694 A JP H10182694A
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JP
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compound
substituted
group
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ldl
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JP8354602A
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English (en)
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Takahiro Sasaki
隆弘 佐々木
Yoshihiro Hatanaka
美博 畑中
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
Asahi Kasei Medical Co Ltd
Original Assignee
Asahi Medical Co Ltd
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 少なくとも1つのN−置換グリシンモノ
マーを含み、N−置換グリシンあるいはアミノ酸から選
ばれる2〜10個のモノマーからなる化合物であって、
少なくとも1つの、側鎖がアレーン基を含む置換基であ
るモノマーを有し、および少なくとも1の、側鎖が全体
として正電荷を持つ置換基であるモノマーを有する特定
の配列を持つ化合物であり、かつ、特定の電荷を有する
低比重リポ蛋白質結合用化合物。 【効果】 低比重リポ蛋白質に対して特異的に優れた結
合性を有し、それでいて、ブラジキニンの産生、血液細
胞の活性化や化合物への吸着、血液凝固系の活性化等を
惹起しないために安全性に優れるので、全血や血漿等の
体液から低比重リポ蛋白質を除去するための吸着材用の
試薬、さらには、低比重リポ蛋白質が関与している疾患
に対する医薬品および医薬品のキャリヤーとして有利に
用いることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、低比重リポ蛋白質
(以下、しばしば、”LDL”と称す)結合用の化合
物、および水不溶性担体に該化合物を結合させてなる吸
着材に関する。さらに詳細には、本発明は、少なくとも
1つのN−置換グリシンモノマーを含み、N−置換グリ
シンあるいはアミノ酸から選ばれる2〜10個のモノマ
ーからなる化合物であって、少なくとも1つの、側鎖が
アレーン基を含む置換基であるモノマーを有し、および
少なくとも1つの、側鎖が全体として正電荷を持つ置換
基であるモノマーを有する特定の配列を持つ化合物であ
り、かつ、特定の電荷(E)[ただし、Eは式:E=
(該化合物中の正電荷を有する官能基の数)−(該化合
物中の負電荷を有する官能基の数)で定義される]を有
するLDL結合用化合物に関する。本発明はまた、水不
溶性担体に、上記の化合物を結合させてなる、体液から
LDLを除去するための吸着材に関する。さらに、本発
明は、体液を上記の化合物と接触させることにより、体
液からLDLを除去する方法にも関する。
【0002】
【従来の技術】血液中に存在するリポ蛋白のうち、LD
Lはコレステロールを多く含み、動脈硬化の原因になる
ことが知られている。従来、血液中のLDLの量が多い
家族性高コレステロール血症患者において、LDLを吸
着する吸着材を用いた血液体外循環治療(以下、しばし
ば、LDLアフェレーシスと称す)が施され、患者の種
々の症状が改善されてきた。
【0003】公知のLDL除去用の吸着材としては、例
えば、EP特許第0 225 867号公報(日本国、
特公昭62−56782号公報および日本国、特公昭6
3−19214号公報に対応)に開示されている陰性の
電荷を有する硫酸化多糖をリガンドとして、化学的に固
定化させた樹脂が公知であり、実際に、デキストラン硫
酸をリガンドとして、セルロース粒子担体に固定化した
ものが市販されている。
【0004】しかし、デキストラン硫酸をリガンドとし
たLDL吸着材を用いてLDLアフェレーシスを行う
と、デキストラン硫酸がもつ陰性電荷の影響により、血
液中にブラジキニンと呼ばれる生理活性物質が産生され
てしまう。ブラジキニンは血圧降下作用、平滑筋収縮作
用および膜透過性亢進作用等を有する物質であることが
知られている。(例えば、EP特許出願公開第93 1
04 348.3号公報を参照)。また、例えば、WO
90/04416号公報には、アガロース粒子にヒト低
比重リポ蛋白質と結合性をもつ抗体を結合させたものが
提案されている。
【0005】しかし、抗体は、一般的に細胞培養や生物
体内で産生されるために、LDLが関与している疾患に
対する治療に用いるのに十分な量を調製するためには、
多大な労力と生産コストがかかる等の不利があるばかり
でなく、体外循環治療に用いるには滅菌操作等に対する
安定性が低いため、安全性などの点で問題がある。
【0006】また、LDLに対する結合性を有すること
が示唆されている物質としては、例えば、約25個〜2
50個のアミノ酸残基からなるポリリジンやポリアルギ
ニン(Olov Wiklund,et.al.:Ca
tionic polypeptides modul
ate in vitro associationo
f low density lipoprotein
with arterial proteoglyc
ans, fibloblasts,andarter
ial tissue.Arterioscleros
is.1990,10,695−702)およびVVW
RLTRKRGLKVVVの15残基のアミノ酸残基か
らなるペプチド(Urban Olsson,et.a
l.:Binding of a synthetic
apolipoprotein B−100 pep
tide and peptide analogue
s to chondroitin 6−sulfat
e:Effectsof the lipid env
ironment.Biochemistry,199
3,32,1858−1865)が知られている。
【0007】しかし、上記の約25〜250個のアミノ
酸残基からなるポリリジンやポリアルギニン、およびV
VWRLTRKRGLKVVVの15個のアミノ酸残基
からなるペプチド等のポリペプチドは、いずれも10残
基を越えるアミノ酸残基からなっているので、抗体と同
様に耐滅菌性や保存性に劣る。また、一般に極端な陽性
電荷を有する物質においては、このような物質の表面に
血液が接触した際に、血液中の赤血球や白血球ならびに
血小板等の細胞成分が活性化されてしまったり、強い静
電的相互作用によって、上記の物質の表面に吸着されて
しまうことが知られている。さらに、このような物質は
血漿蛋白の非特異的吸着や血液凝固系因子の活性化等を
惹起してしまうため、安全にLDLアフェレーシス治療
を実施するためには、このような物質を吸着材に用いる
ことは好ましくないと考えられる。
【0008】したがって、全血および血漿等の体液から
のLDLの吸着除去を行う際に、LDLに対する優れた
特異的結合性を示すだけでなく、ブラジキニンの産生、
血液細胞の吸着や活性化、血液凝固系の活性化等を惹起
しない等安全性に優れるために、LDL除去用吸着材に
有利に使用することのできるLDL結合用物質の開発が
望まれていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の1つの目的
は、LDLに対する優れた結合性を有し、それでいて、
ブラジキニンの産生、血液細胞の活性化や化合物への吸
着、血液凝固系の活性化等を惹起しないために安全性に
優れており、全血や血漿等の体液からLDLを除去する
ための吸着材用の試薬、さらには、LDLが関与してい
る疾患に対する医薬品および医薬品のキャリヤーとして
有利に用いることができるLDL結合用化合物を提供す
ることにある。
【0010】本発明のさらに他の1つの目的は、上記の
優れた特性を有し、さらに、比較的容易に、しかも、低
コストで調製することができるだけでなく、滅菌操作等
に対する安定性や、保存性に優れたLDL結合用化合物
を提供することにある。本発明のさらに他の1つの目的
は、水不溶性担体に本発明の化合物を結合させてなるL
DL除去用吸着材であって、LDLアフェレーシスに用
いる血液浄化処理装置等に用いると、効率よく、しか
も、安全にLDLの除去を行うことができる吸着材を提
供することにある。本発明のさらに他の1つの目的は、
体液を上記の化合物と接触させることにより、効率よ
く、しかも、安全に体液からLDLを除去する方法を提
供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、少なくとも1
つのN−置換グリシンモノマーを含み、N−置換グリシ
ンあるいはアミノ酸から選ばれる2〜10個のモノマー
からなる化合物であって、少なくとも1つの、側鎖がア
レーン基を含む置換基であるモノマーを有し、および少
なくとも1つの、側鎖が全体として正電荷を持つ置換基
であるモノマーを有する特定の配列を持つ化合物であ
り、かつ、特定の電荷(E)〔ただし、Eは式:E=
(該化合物中の正電荷を有する官能基の数)−(該化合
物中の負電荷を有する官能基の数)で定義される〕を有
する化合物が、驚くべきことに、LDLに対して特異的
に優れた結合性を有し、それでいてブラジキニンの産
生、血液細胞の活性化や化合物への吸着、血液凝固系の
活性化等を惹起しないために安全性に優れることを知見
した。
【0012】さらに、この化合物は、10個以下のモノ
マーユニットからなるため、比較的容易に、しかも、低
コストで調製することができるだけでなく、滅菌操作等
に対する安全性や、保存性に優れている。本発明によれ
ば、下記式(1)で表されるN−置換グリシンあるいは
N−置換グリシンおよびアミノ酸からなる化合物であ
り、それぞれN−置換グリシンにおいてはR’を有する
アミノ基、アミノ酸においてはα炭素に最も近い位置に
存在するアミノ基が他のN−置換グリシンまたはアミノ
酸のカルボキシル基との間で置換あるいは無置換の酸ア
ミド結合を形成している、式(2)または式(3)で表
される化合物であり、該化合物が有する電荷(E)が+
1≦E≦+4である低比重リポ蛋白質結合用化合物が提
供される。
【0013】
【化2】
【0014】[ただし、式(1)中のR’は水素、フッ
素、塩素、臭素、ヨウ素、置換あるいは置換されていな
い(C1−C6)アルキル、置換あるいは置換されてい
ない(C2−C6)アルケニル、置換あるいは置換され
ていない(C2−C6)アルキニル、置換あるいは置換
されていない(C3−C8)シクロアルキル、(C2−
C8)アルコキシアルキル、置換あるいは置換されてい
ないアレーン、置換あるいは置換されていないアレーン
(C1−C6)アルキル、置換あるいは置換されていな
いヘテロアレーン、置換あるいは置換されていないヘテ
ロアレーン(C1−C6)アルキル、カルボキシ、(C
2−C6)カルボキシアルキル、(C3−C10)カル
ボアルコキシアルキル、カルバモイル、置換あるいは置
換されていない(C2−C6)カルバモイルアルキル、
ヒドロキシ、アミノ、イミノ、アンモニオ、ヒドラジ
ノ、アミジノ、グアニジノ、メルカプト、(C1−C
6)メルカプトアルキル、(C1−C6)アルキルチ
オ、(C2−C10)アルキルチオアルキル、イミダゾ
リル、(C7−C20)アルコキシアレーン、カルボキ
シアレーン、(C8−C22)カルボアルコキシアレー
ン、カルバモイルアレーン、メルカプトアレーン、アレ
ーンチオ、あるいは(C7−C20)アルキルチオアレ
ーン基を表す。
【0015】式(2)および式(3)の左端および右端
は、それぞれN末端およびC末端であり、各αは、それ
ぞれ独立して、R’がアレーン基を含み式(1)で表さ
れるN−置換グリシンあるいは側鎖にアレーン基を有す
るアミノ酸であり、各βは、それぞれ独立して、R’が
全体として正電荷を持ち、式(1)で表されるN−置換
グリシンあるいは側鎖が全体として正電荷を持つアミノ
酸であり、各X1 、各X2 および各X3 は、それぞれ独
立して、式(1)で表されるN−置換グリシンあるいは
N−置換グリシンおよびアミノ酸からなる化合物であ
り、mおよびnは、それぞれαおよびβの数であり、
p、qおよびrは、それぞれX1 、X2 およびX3 の化
合物を構成するN−置換グリシンまたはアミノ酸の数で
あり(ただし、p、qおよびrは同じでも異なっていて
もよい);さらに、m、n、p、qおよびrは次の関係
を満足する。
【0016】2≦m+n+p+q+r≦10 (ただし、mおよびnは次式: 2≦m+n≦10および1≦m、n≦9 の条件を満足し、p、qおよびrは次式: 0≦p+q+r≦8、0≦p、r≦8および0≦q≦5 の条件を満足する。)]
【0017】本発明においてN−置換グリシンとは、式
(1)で表される化合物である。式(1)中のR’は水
素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、あるいは任意にフッ
素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシ、アミノ、イミ
ノ、アンモニオ、ヒドラジノ、アミジノ、グアニジノ、
イミダゾニル、ピリジル、インドリルによって置換され
ていてもよい(C1−C6)アルキル、任意にフッ素、
塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシ、アミノ、イミノ、ア
ンモニオ、ヒドラジノ、アミジノ、グアニジノ、イミダ
ゾニル、ピリジル、インドリルによって置換されていて
もよい(C2−C6)アルケニル、任意にフッ素、塩
素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシ、アミノ、イミノ、アン
モニオ、ヒドラジノ、アミジノ、グアニジノ、イミダゾ
ニル、ピリジル、インドリルによって置換されていても
よい(C2−C6)アルキニル、任意にフッ素、塩素、
臭素、ヨウ素、ヒドロキシ、アミノ、イミノ、アンモニ
オ、ヒドラジノ、アミジノ、グアニジノ、イミダゾニ
ル、ピリジル、インドリルによって置換されていてもよ
い(C3−C8)シクロアルキル、(C2−C8)アル
コキシアルキル、任意にフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、
ヒドロキシ、アミノ、イミノ、アンモニオ、ヒドラジ
ノ、アミジノ、グアニジノ、イミダゾニル、ピリジル、
インドリルによって置換されていてもよいアレーン、任
意にフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシ、アミ
ノ、イミノ、アンモニオ、ヒドラジノ、アミジノ、グア
ニジノ、イミダゾニル、ピリジル、インドリルによって
置換されていてもよいアレーン(C1−C6)アルキ
ル、任意にフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシ、
アミノ、イミノ、アンモニオ、ヒドラジノ、アミジノ、
グアニジノ、イミダゾニル、ピリジル、インドリルによ
って置換されていてもよいヘテロアレーン、任意にフッ
素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシ、アミノ、イミ
ノ、アンモニオ、ヒドラジノ、アミジノ、グアニジノ、
イミダゾニル、ピリジル、インドリルによって置換され
ていてもよいヘテロアレーン(C1−C6)アルキル、
カルボキシ、(C2−C6)カルボキシアルキル、(C
3−C10)カルボアルコキシアルキル、カルバモイ
ル、任意にフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシ、
アミノ、イミノ、アンモニオ、ヒドラジノ、アミジノ、
グアニジノ、イミダゾニル、ピリジル、インドリルによ
って置換されていてもよい(C2−C6)カルバモイル
アルキル、ヒドロキシ、アミノ、イミノ、アンモニオ、
ヒドラジノ、アミジノ、グアニジノ、メルカプト、(C
1−C6)メルカプトアルキル、(C1−C6)アルキ
ルチオ、(C2−C10)アルキルチオアルキル、イミ
ダゾリル、(C7−C20)アルコキシアレーン、カル
ボキシアレーン、(C8−C22)カルボアルコキシア
レーン、カルバモイルアレーン、メルカプトアレーン、
アレーンチオ、あるいは(C7−C20)アルキルチオ
アレーン基から任意に選択される。
【0018】アレーンの用語の範囲内にあってR’とし
て適切な芳香族炭化水素環式基には、フェニル、ペンタ
レニル、インデニル、ナフチル、フルオレニル、フェナ
ントレニル、アントラセニルおよびピレニル基が含まれ
る。ヘテロアレーンの用語の範囲内にあってR’として
適切な複素環式基には、ピリジル、キノリル、イソキノ
リル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピラ
ニル、フリル、ベンゾフリル、ジベンゾフリル、チエニ
ル、ベンゾチエニル、インドリル、インダゾリル、イミ
ダゾリル、ベンゾイミダゾリル、オキサジアゾリルおよ
びチアジアゾリル基が含まれる。
【0019】アミノ酸とは、1分子内に少なくとも1つ
のアミノ基と少なくとも1つのカルボキシル基を持つ有
機化合物分子であるアミノ酸に由来するものであれば、
特に限定はなく、アミノ基の水素が分子内の他の部分と
置換して二級アミンとなった環状化合物に由来する残基
であってもよく、また、非蛋白質性のアミノ酸に由来す
る残基であってもよい。上記のアミノ酸の例としては、
L体の立体構造を有するαーアミノ酸、D体の立体構造
を有するα−アミノ酸、β−アミノ酸、γ−アミノ酸お
よびδ−アミノ酸が挙げられる。
【0020】α−アミノ酸の例としてはグリシンや、L
体の立体構造を有するL−アラニン、L−アスパラギン
酸、L−グルタミン酸、L−フェニルアラニン、L−ヒ
スチジン、L−イソロイシン、L−リジン、L−ロイシ
ン、L−メチオニン、L−アスパラギン、L−プロリ
ン、L−グルタミン、L−アルギニン、L−セリン、L
−スレオニン、L−バリン、L−トリプトファン、L−
チロシンおよびL−システインが挙げられる。
【0021】D型の立体構造を有するアミノ酸の例とし
ては、上記したL型アミノ酸の光学異性体が挙げられ
る。非蛋白質性のアミノ酸としては、β−アラニン、γ
−アミノ酪酸、ホモシステイン、オルニチン、5−ヒド
ロキシトリプトファン、3,4−ジヒドロキシフェニル
アラニン、トリヨードチロニンおよびチロキシンが挙げ
られる。また、本明細書において、モノマーおよび化合
物は、下記に示す略号を用いて表される。なお、アミノ
酸に関し特に記載のない場合は、L体もしくはD体のい
ずれかの立体構造をとるアミノ酸残基を示すものとす
る。
【0022】AまたはAla:アラニン CまたはCys:システイン DまたはAsp:アスパラギン酸 EまたはGlu:グルタミン酸 FまたはPhe:フェニルアラニン GまたはGly:グリシン HまたはHis:ヒスチジン IまたはIle:イソロイシン KまたはLys:リジン LまたはLeu:ロイシン MまたはMet:メチオニン NまたはAsn:アスパラギン PまたはPro:プロリン QまたはGln:グルタミン RまたはArg:アルギニン SまたはSer:セリン TまたはThr:スレオニン VまたはVal:バリン WまたはTrp:トリプトファン YまたはTyr:チロシン Na:R’がメチル基であるN−置換グリシン Nd:R’がカルボキシメチル基であるN−置換グリシ
ン Ne:R’がカルボキシエチル基であるN−置換グリシ
ン Nf:R’がベンジル基であるN−置換グリシン Nhh:R’が2−イミダゾリルエチル基であるN−置
換グリシン Ni:R’がs−ブチル基である基であるN−置換グリ
シン Nnk:R’が2−アミノエチル基であるN−置換グリ
シン Nl:R’がイソブチル基であるN−置換グリシン Nm:R’がメチルチオエチル基であるN−置換グリシ
ン Nn:R’がカルバモイルメチル基であるN−置換グリ
シン Nq:R’が2−カルバモイルエチル基であるN−置換
グリシン Nhr:R’が4−グアニジノブチル基であるN−置換
グリシン Nhs:R’が2−ヒドロキシエチル基であるN−置換
グリシン Nt:R’が1−ヒドロキシエチル基であるN−置換グ
リシン Nv:R’がイソプロピル基であるN−置換グリシン Nhw:R’が2−インドリルエチル基であるN−置換
グリシン Nhy:R’がp−ヒドロキシフェネチル基であるN−
置換グリシン 本発明において、式(2)または式(3)のαは、N−
置換グリシンにおいてはR’が、また、アミノ酸におい
ては、側鎖がアレーン基を含む置換基であるモノマーを
指す。式(2)または式(3)のβはN−置換グリシン
においてはR’が、アミノ酸においては側鎖が全体とし
て正電荷を持つ置換基である化合物である。
【0023】本発明において、正電荷を有する置換基ま
たは負電荷を有する置換基とは、該化合物が有する置換
基の中で中性(pH7.0)の水溶液中でイオン化し
て、正または負の電荷を帯びる置換基のことである。例
えば、化合物分子のN末端のアミノ基は正の電荷を有
し、C末端のカルボキシル基は負の電荷を有する。ただ
し、モノマーの場合、そのモノマーを有する化合物の中
性(pH7.0)水溶液において、そのモノマーの80
%以上が有する電離状態に基づき、イオン化した置換基
の数を求める。例えば、化合物が、側鎖にグアニジノ基
を有するArgを有する場合、その化合物の中性(pH
7.0)水溶液中において、80%以上のArgが、イ
オン化されて正電荷を帯びたグアニジノ基を有するの
で、Argが側鎖に有するグアニジノ基は、正電荷を有
する置換基とみなす。Lysが側鎖に有するアミノ基
も、正電荷を有する置換基である。一方、AspやGl
uが側鎖に有するカルボキシル基等は、負電荷をもつ官
能基である。ただし、該化合物分子が有するアミノ基ま
たはカルボキシル基が、該化合物分子以外の分子と反応
して酸アミド結合等を形成したり、保護基によって保護
されたりして、電荷を持たない状態になった基は、もち
ろん、イオン化した置換基とはみなさない。
【0024】本発明において化合物の電荷(E)とは、
吸着材用担体や薬剤に結合していない状態で化合物の有
する電荷のことを指し、式:E=(該化合物中の正電荷
を有する官能基の数)−(該化合物中の負電荷を有する
官能基の数)で定義される。該化合物は上記N−置換グ
リシンのみ、あるいはN−置換グリシンとアミノ酸から
なり、各モノマーが、N−置換グリシンにおいてはR’
を有するアミノ基、アミノ酸においてはα炭素に最も近
い位置に存在するアミノ基が他のモノマーのカルボキシ
ル基との間で置換あるいは無置換の酸アミド結合を形成
し、最終的にモノマーが2〜10個結合したものを指
す。残基とは、該化合物を構成するモノマーの種類を示
す。該化合物のモノマーの配列は、通常ペプチドの表記
法として用いられているように、アミノ基末端の残基か
らカルボキシル基末端の残基に向かって左から右へと記
載する。なお、アミノ末端あるいはN−末端とは、N−
置換グリシンにおいてはR’を有するアミノ基、アミノ
酸においてはα炭素に最も近い位置に存在するアミノ基
が、他のモノマーと結合していない場合、その残基を示
し、カルボキシル末端あるいはC−末端とは、モノマー
のα炭素に結合したカルボキシル基が他のモノマーと結
合していない場合、その残基を示す。
【0025】本発明の化合物において、式(2)または
式(3)で表されるモノマー配列を有する化合物は、ア
レーン基を含む置換基を側鎖とするモノマーαを少なく
とも1つ有し、さらに、全体として正電荷を持つ置換基
を側鎖に持つモノマーβを少なくとも1つ有することが
必須である。側鎖が全体として正電荷を持つ置換基であ
るモノマーは、LDLが有するリン脂質のリン酸部位と
静電的に相互作用することができると考えられる。本発
明の化合物が優れたLDL結合性を発揮する理由は明ら
かではないが、以下のように考えられる。
【0026】一般に、疎水性分子はLDLのような脂溶
性物質と相互作用すると言われている。同じ疎水性置換
基に分類されるアルキル、アルケン、アルキン、シクロ
アルキル等の脂肪族炭化水素基とアレーンと呼ばれる芳
香族炭化水素環式基がある。本発明者らは、側鎖が全体
として正電荷を持つ置換基であるモノマーを有し、さら
に、側鎖が脂肪族炭化水素基であるモノマーを有する化
合物のLDL結合性と、側鎖が全体として正電荷を持つ
置換基であるモノマーを有し、さらに、側鎖が芳香族炭
化水素環式基であるモノマーを有する化合物のLDL結
合性をそれぞれ測定し、比較した。その結果、驚くべき
ことに、後者の方が前者に比べ、LDLとの結合性が高
いということを見いだした。すなわち、該化合物におい
て芳香族炭化水素環式基を側鎖に持つモノマーは、脂肪
族炭化水素基を側鎖に持つモノマーよりも、LDLに存
在する脂質部分と強く相互作用することができるので、
LDLとより強く結合することができると考えられる。
【0027】本発明の化合物の電荷(E)は、+1以
上、+4以内であることが必要である。電荷(E)が0
以下の場合には、LDLとの結合に重要なリン脂質に存
在するリン酸部位との静電的な相互作用が弱まり、LD
Lとの結合性が低下する。さらに、電荷(E)が負の場
合、陰性電荷の影響により、血液中にブラジキニンと呼
ばれる生理活性物質が生成されてしまう恐れがある。
【0028】一方、化合物の電荷(E)が+5以上の場
合、血液がそのような化合物に接触すると、血液中の赤
血球や白血球ならびに血小板等の細胞成分が、化合物と
強い静電的相互作用によって、活性化されてしまった
り、化合物に吸着されてしまうというような不利が生じ
る。また、この場合、血漿蛋白の非特異的吸着や血液凝
固系の活性化等を惹起し、安全にLDLアフェレーシス
治療を実施することができない。したがって、本発明の
化合物分子の電荷(E)は、+1〜+4の範囲であるこ
とが必須であり、+1〜+2の範囲にあることが好まし
い。
【0029】本発明の化合物の総モノマー数〔式(2)
および式(3)において、m+n+p+q+rで表され
る〕は、最低2残基が必要である。また、モノマー数は
一般に多くなれば物理化学的な安定性が悪くなり、10
個を越えるモノマーからなる化合物は、耐滅菌性や保存
性が低下する傾向にある。さらに、経済性を考慮する
と、5残基以下が好ましい。式(2)または式(3)で
表されるモノマー配列を有する本発明の化合物において
は、LDLの有する脂質部位と相互作用するアミノ酸残
基αと、LDLのリン脂質の陰性電荷を帯びたリン酸部
位と相互作用するアミノ酸残基βとの間の距離が、LD
Lに対する優れた結合性を達成するために特に重要であ
る。
【0030】すなわち、LDLと結合する本発明の化合
物は、式(2)および式(3)におけるモノマーX2
数qが0〜5であることが必要である。qが6以上にな
ると、モノマーαとβとの共同作用によるLDLとの相
互作用が弱まり、化合物とLDLとの結合性は著しく低
下する。化合物に存在するモノマーαとβとの共同作用
による効果を利用してLDLとの結合性を高めるには、
qが0〜3の範囲にあることが好ましい。
【0031】本発明において、例えば、アミノ酸残基に
その光学異性体や光学異性体の混合物を用いたり、該化
合物のN末端部分のアミノ基やC末端部分のカルボキシ
ル基および該化合物に含まれるモノマーの側鎖に有する
アミノ、グアニジノ、イミダゾリル、カルボキシル、カ
ルバモイル、ヒドロキシ、メルカプトおよびインドリル
等の官能基を保護基にて保護してもよい。
【0032】化合物のN末端部分のアミノ基や、モノマ
ーの側鎖に存在するアミノ基の保護基の例としては、ベ
ンジルオキシカルボニル(Z)基、p−メトキシベンジ
ルオキシカルボニル〔Z(OMe)〕基、p−クロロベ
ンジルオキシカルボニル〔Z(Cl)〕基、p−ニトロ
ベンジルオキシカルボニル〔Z(NO2)〕基、p−フ
ェニルアゾベンジルオキシカルボニル(Pz)基、p−
メトキシフェニルアゾベンジルオキシカルボニル(M
z)基、3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル
〔Z(OMe)2〕基、3,4,5−トリメトキシベン
ジルオキシカルボニル〔Z(OMe)3〕基、第三ブト
キシカルボニル(Boc)基、第三アミロキシカルボニ
ル(Aoc)基、p−ビフェニルイソプロピルオキシカ
ルボニル(Bpoc)基、ジイソプロピルメチロキシカ
ルボニル(Dipmoc)基、アダマンチルオキシカル
ボニル(Adoc)基、イソボルニルオキシカルボニル
基、シクロペンチルオキシカルボニル(Poc)基、シ
クロヘキシルオキシカルボニル基、フルフリルオキシカ
ルボニル基、ベンズヒドリルオキシカルボニル基、ピペ
リジノオキシカルボニル基、ホルミル(HCO)基、ト
リフルオロアセチル(Tfa)基、フタリル(Pht)
基、トシル(Tos)基、o−ニトロフェニルスルフェ
ニル(Nps)基、ベンゾイル(Bz)基、クロロアセ
チル基、アセトアセチル基、トリチル(Trt)基、ベ
ンジリデン基、ベンジル基、2−ベンゾイル−1−メチ
ルビニル(Bmv)基、トリメチルシリル(Tms)
基、2−ヒドロキシアリリデン基、エナミン基、ジメド
ン(5,5−ジメチルシクロヘキサン−1,3−ジオ
ン)基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(F
moc)基等が挙げられる。
【0033】化合物のC末端部分のカルボキシル基や、
モノマーの側鎖に存在するカルボキシル基の保護基の例
としては、アミド、ジメチルアミド、メチルエステル
(―OMe)、エチルエステル(―OEt)、ベンジル
エステル(―OBzl)、p−ニトロベンジルエステル
〔―OBzl(NO2 )〕、p−メトキシベンジルエス
テル、2,4,6−トリメチルベンジルエステル、ペン
タメチルベンジルエステル、第三ブチルエステル(―O
But)、ジフェニルメチルエステル(―ODPM)、
ベンズヒドリルエステル、トリチルエステル、フタルイ
ミドメチルエステル、シクロペンチルエステル、β―メ
チルチオエチルエステル、β―(p−ニトロチオフェニ
ル)―エチルエステル、フェナシルエステル、4−ピコ
リルエステルなどが挙げられる。その他、アミノ酸残基
が側鎖に有する官能基に対して、種々の保護基を用いる
ことができる(例えば、泉屋信夫、加藤哲夫、青柳東
彦、脇道典著「ペプチド合成の基礎と実験」日本国、丸
善株式会社(1985年)参照)。
【0034】該化合物の合成は、モノマーを入手あるい
は合成し、該モノマーを縮合させることにより行う。N
−置換グリシンモノマーの合成は、既に文献等で報告さ
れている〔Reyna J.Simon et al.
Proc.Natl.Acad.Sci.USA(19
92)89,9367−9371.,Zuckerma
nn,J.M.et al.J.Am.Chem.So
c.(1992)114,10646〕。モノマーの縮
合は、ペプチド合成において通常用いられる方法、例え
ば、固相合成法または液相合成法により行われるが、固
相合成法により行う方が、操作が簡便であるため好まし
い(例えば、日本国、日本生化学会編「新生化学実験講
座1タンパク質IV 合成および発現」日本国、東京化
学同人(1992年)参照)。
【0035】固相合成法による化合物の合成は、市販の
ペプチド合成用の樹脂、例えば、ジビニルベンゼンを含
むポリスチレンなどの重合体に、ペプチド固相合成に適
した反応性をもつ官能基を結合させた樹脂を用い、目的
とする化合物の合成を、そのC末端側からN末端方向に
向かって行う。例えば、α−アミノ酸においては、α−
カルボキシル基以外のアミノ基などの官能基を保護した
モノマーと、α−アミノ基以外の、カルボキシル基等の
官能基を保護したモノマーとを縮合させて結合させる操
作と、結合したモノマーにおけるα−アミノ基などの酸
アミド結合を形成するアミノ基が有する保護基のみを除
去する操作を、順次繰返していくことによって化合物鎖
を伸長させ、所望の配列をもつ化合物を形成し、次い
で、該化合物を樹脂から脱離させ、かつ、保護基が付加
されている全ての官能基から保護基を除去することによ
り、目的とする化合物を得ることができる。必要に応じ
て、この化合物をさらに精製することにより、純度の高
いものを得ることができる。化合物の精製は、有機化合
物の精製に一般的に用いられている方法が使用できる。
特にカラムクロマトグラフィーによる精製は、効率良く
精製を行えるので好ましい。
【0036】本発明のLDL結合用化合物は、水不溶性
担体に、直接またはスペーサーを介して間接的に結合さ
せることによって、腹水、組織液、全血および血漿等の
体液からLDLを除去するための吸着材として使用する
ことができる。例えば、血液を人工的な装置によって体
外循環させ、血液中のLDLを除去する際に用いる吸着
材として用いることができ、例えば、家族性高コレステ
ロール血症等の疾病を有する患者に対し、LDLアフェ
レーシスを行う際に、上記の吸着材を利用した装置を用
いると、効率よく、しかも、安全にLDLを除去するこ
とができるので、高い治療効果を得ることが可能であ
る。上記の吸着材は、該化合物のN末端部分のアミノ基
や、C末端部分のカルボキシル基またはアミノ酸の側鎖
が有する官能基を利用して、水不溶性担体に固定化する
ことにより得ることができる。
【0037】化合物を水不溶性担体に固定化する具体的
な方法としては、例えば、水不溶性担体上に、保護基を
外す条件においても切断されない結合性の基を付加し、
上記水不溶性担体上で化合物を上記の化合物の固相合成
法で合成し、保護基が付加されている全ての官能基から
保護基を除去することにより得る方法が挙げられる。ま
た、化合物の水不溶性担体への固定化は、一般にペプチ
ドまたは蛋白質を担体上に固定化する方法を用いて行う
ことができる。そのような方法としては、例えば、カル
ボキシル基を有する担体を用い、このカルボキシル基を
N−ヒドロキシコハク酸イミドと反応させることによっ
て、スクシンイミドオキシカルボニル基に変換し、これ
に化合物をアミノ基の部分で反応させる方法(活性エス
テル法)、アミノ基またはカルボキシル基を有する担体
を用い、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどの縮合試
薬の存在下で、担体のアミノ基またはカルボキシル基と
化合物のカルボキシル基またはアミノ基を縮合反応させ
て結合させる方法(縮合法)、担体と化合物とをグルタ
ルアルデヒドなどの2個以上の官能基を有する化合物を
用い、架橋させて結合させる方法(担体架橋法)、水酸
基を有する担体を用い、臭化シアンなどのハロゲン化シ
アンを担体に作用させ、化合物や蛋白質のアミノ基の部
分で反応させて結合させる方法、およびエピクロロヒド
リンなどのエポキシドを担体に作用させ、化合物のアミ
ノ基の部分や水酸基の部分で反応させて結合させる方法
等が挙げられる。
【0038】さらに、必要に応じて水不溶性担体と化合
物を、任意の長さの分子(スペーサー)を介して結合さ
せてもよい。スペーサーの詳細に関しては、例えば、
「アフィニティクロマトグラフィー」笠井献一ら、日本
国、東京化学同人、1991年、105〜108頁を参
照することができる。スペーサーを使用することは、本
発明のLDL結合用化合物と水不溶性担体との間に距離
をもたせることにより、該化合物とLDLの結合部位を
増加させる観点から好ましい。スペーサーの例として
は、ポリメチレン鎖およびポリエチレングリコール鎖等
が挙げられる。スペーサーの長さは500Å以下である
ことが好ましく、200Å以下であることがさらに好ま
しい。スペーサーを介して水不溶性担体に化合物を結合
させる方法としては、例えば、水不溶性担体としてアガ
ロースを用いる場合、アガロースの水酸基とスペーサー
として用いるヘキサメチレンジイソシアナートの片側の
イソシアナート基を反応、結合させ、残ったイソシアナ
ート基と化合物のアミノ基、水酸基またはカルボキシル
基等を反応、結合させる方法が挙げられる。
【0039】水不溶性担体としては、親水性の表面を有
し、かつ、化合物との間で共有結合を形成することがで
きるアミノ基、カルボキシル基および水酸基などの反応
性の官能基を有するものが好ましい。また、上記の不溶
性担体は、吸着させ得る有効表面積が広い多孔質性であ
るものが好ましい。多孔質の担体は、排除限界分子量が
2.0×106 〜1.0×108 の範囲であることが好
ましく,2.2×106 〜8.0×107 の範囲である
ことがさらに好ましい。また、多孔質の担体の平均細孔
径については、20〜100nmの範囲であることが好
ましく、22〜80nmの範囲であることがさらに好ま
しい。担体は粒子状、繊維状、シート状、中空糸状など
の任意の形状を用いることができる。使用できる担体の
材質としては、表面に化合物を担持できるものであれば
特に限定されず、無機化合物、有機化合物であってもよ
く、また、通常のアフィニティクロマトグラフィーに用
いられる担体用の材料は全て用いることができる。
【0040】有機化合物からなる担体の具体例として
は、旭化成マイクロキャリア〔日本国、旭化成工業
(株)社製〕、CM−セルロファインCH〔排除限界タ
ンパク質分子量:約3×106 、日本国、生化学工業
(株)社販売〕等のセルロース系担体;セファデックス
[Sephadex:スウェーデン国、ファルマシアバ
イオテク(Pharmacia Biotech A
B)社製]等のデキストラン系担体;日本国、特公平1
−44725号公報記載の全多孔質活性化ゲルや、CM
−トヨパール650C〔排除限界タンパク質分子量:5
×106 、日本国、東ソー(株)社製〕等のポリビニル
アルコール系担体;CM−トリスアクリルM(CM−T
risacryl M)〔排除限界タンパク質分子量:
1×107 、スウェーデン国、ファルマシア−LKB
(Pharmacia−LKB)社製〕等のポリアクリ
ルアミド系担体;ポリエチレン系担体(特開平6−29
6859号、特開平6−296860号参照)およびセ
ファロースCL−4B(SepharoseCL−4
B)〔排除限界タンパク質分子量:2×107 、スウェ
ーデン国、ファルマシア−LKB(Pharmacia
−LKB)社製〕等のアガロース系担体が挙げられる。
無機化合物からなる担体の具体例としては、CPG−1
0−1000〔排除限界タンパク質分子量:1×1
8 、平均細孔径:100nm、米国エレクトロ−ニュ
ークレオニクス(Electro−nucleonic
s)社製〕などの多孔性ガラス等が挙げられる。
【0041】水不溶性担体に固定化する化合物の量は、
一般的には、0.001μmol/ml(担体)〜1,
000μmol/ml(担体)の範囲であり、0.01
μmol/ml〜500μmol/mlの範囲であるこ
とが好ましく、0.1μmol/ml〜200μmol
/mlの範囲であることがより好ましい。また、上記の
水不溶性担体として、アガロースゲルなどのソフトゲル
または架橋されたポリビニルアルコールなどのハードゲ
ルを用いた場合には、液体クロマトグラフィー等におい
てLDLの分離、精製用ゲルとして用いることもでき
る。
【0042】水不溶性担体に化合物を結合させてなる吸
着材のLDLに対する結合性を評価する方法の例として
は、吸着材にLDLを吸着させ、LDLの吸着した担体
を染色する方法が挙げられる[ABC法(avidin
−biotin complex method)]。
例えば、ビオチン標識化されたLDLを血漿中に添加
し、吸着材をその血漿中に一定時間浸漬後、吸着材を取
り出して洗浄し、これを西洋ワサビペルオキシダーゼで
標識されたストレプトアビジン溶液に浸漬し、上記酵素
の基質である3,3’ージアミノベンジジン溶液を添加
することによって、担体を染色させることによりLDL
の結合性を評価することができる。なお、LDLの結合
性の評価方法に関しては、例えば、S.M.Hsu,
L.Raine,H.Fanger:J.Histch
em.Cytochem.,29,577(198
1)、およびH.Towbin,T.Staeheli
n,J.Gordon:Proc.Natl.Aca
d.Sci.U.S.A.,76,4350(197
9)を参照することができる。
【0043】また、水不溶性担体に固定化された化合物
のLDLの吸着量を測定する方法の例としては、吸着材
にLDLを吸着させ、LDLの減少率を測定する方法が
挙げられる。例えば、化合物が固定化された担体を一定
時間LDL溶液に浸漬させ、その後、LDLの減少率を
コレステロールを定量して求めることができる。なお、
LDLの吸着量の測定方法については、例えば、Ric
hmond,W,:Scand.J.Clin.La
b.Invest.,29(suppl.),126
(1972)、およびAllain,C.C.,Poo
n,L.S.,Chan,C.S.G.,Richmo
nd,W.and Fu,P.C.:Clin.Che
m.,20,470−475(1974)を参照するこ
とができる。
【0044】
【発明の実施の形態】以下、実施例および比較例を挙げ
て本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、何らこ
れに限定されるものではない。また、実施例中では、ア
ミノ酸残基は1文字で表記する。
【0045】
【実施例】
(実施例1および比較例1)マルチペプチド合成システ
ム、RaMPS(米国、NEN ResearchPr
oducts社製)を用いて取扱説明書に従い、末端に
アミノ基を有するポリエチレングリコール鎖が結合した
ポリスチレン樹脂(TGレジン;米国、ノヴァバイオケ
ミカル社製)を使用し、アミノ基をFmoc基で保護し
たモノマーの縮合による固相合成を行う。アミノ基をF
moc基により保護したモノマーの合成は、市販の化合
物以外は、すでに論文等で報告のある方法によって行う
〔Reyna J.Simon et al.Pro
c.Natl.Acad.Sci.USA(1992)
89,9367−9371.〕。
【0046】実施例1において得られる表1に示す配列
を有する化合物は、下記の(1)〜(3)の条件を満足
するように合成する。 (1)化合物が、予め決められた位置にモノマーβとし
て、全体として正電荷を持つ置換基を側鎖に持つN−置
換グリシン(NnkまたはNhr)、あるいは全体とし
て正電荷を持つ置換基を側鎖に持つアミノ酸(Kまたは
R)を1個有する。 (2)化合物が、上記(1)で定めた位置以外の任意の
位置にモノマーαとして、アレーン基を側鎖に持つN−
置換グリシン(NfまたはNhw)、あるいはアレーン
基を側鎖に持つアミノ酸(FまたはW)を1個有する。 (3)化合物が、上記(1)および(2)で定めた位置
以外の3つの位置に、化合物の電荷(E)が+1になる
ように、それぞれ、20種類の天然アミノ酸に対応する
側鎖を有するN−置換グリシンの中から、または20種
類のL体の天然アミノ酸から適宜選択された3個のモノ
マーを有する。
【0047】比較例1において得られる表1に示す化合
物は、下記の(1’)〜(3’)の条件を満足するよう
に合成する。 (1’)化合物が、予め決められた位置にモノマーβと
して、全体として正電荷を持つ置換基を側鎖に持つN−
置換グリシン(NnkまたはNhr)、あるいは全体と
して正電荷を持つ置換基を側鎖に持つアミノ酸(Kまた
はR)を1個有する。 (2’)化合物が、上記(1’)で定めた位置以外の任
意の位置に、脂肪族炭化水素基を側鎖に持つN−置換グ
リシン(NiまたはNlまたはNv)、あるいは脂肪族
炭化水素基を側鎖に持つアミノ酸(IまたはLまたは
V)を1個有する。 (3’)化合物が、上記(1’)および(2’)で定め
た位置以外の3つの位置に、化合物の電荷(E)が+1
になるように、それぞれ、モノマーα(NfまたはNh
w)を除く18種類の天然アミノ酸に対応する側鎖を有
するN−置換グリシンの中から、またはモノマーα(F
またはW)を除く18種類のL体の天然アミノ酸から適
宜選択された3個のモノマーを有する。
【0048】また、それぞれの化合物のLDLに対する
結合性の評価は、以下の手順にて行う。すなわち、健常
な人の血液に、その10分の1量の3.8%クエン酸ナ
トリウム溶液を添加し、遠心分離器で血球成分と血漿成
分に分離する。この血漿成分に、ビオチン標識キット
(英国、アマシャム製)を用いて、添付の取扱説明書に
従い、LDL(米国、シグマ社製)をビオチン標識した
溶液を、終濃度が10μg/mlになるように添加す
る。
【0049】上記の樹脂に結合した化合物のLDLとの
結合性を評価するために、それぞれの樹脂を取り出し、
濾過フィルター付きカラム(米国、バイオラッド社製)
に入れ、続いて、上記の溶液を添加し、室温で1時間放
置する。その後、0.1%Tween20とリン酸ナト
リウムを含む生理食塩水で洗浄する。洗浄後、10%ブ
ロックエース(日本国、大日本製薬社製)を含む西洋ワ
サビペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン溶液
(0.2μg/ml)1mlを添加し、30分間室温で
放置する。その後、0.005%の過酸化水素を含む
3,3’−ジアミノベンジジン四塩酸塩溶液(0.5g
/ml)1mlを加えて、10分間室温で放置し染色す
る。結果を表1に示す。なお、表1において、茶褐色に
染色された樹脂を+(プラス)、染色されなかった樹脂
を−(マイナス)で表す。
【0050】実施例1で作成する化合物を結合する樹脂
は染色されるが、比較例1で作成する化合物は染色され
ない。この結果から、Nnk、Nhr、KあるいはRを
含み、さらにアレーンを有するNf、Nhw、Fあるい
はWを含む化合物が、LDLとの結合性を有することが
明らかとなる。
【0051】
【表1】
【0052】(実施例2および比較例2)マルチペプチ
ド合成システム、RaMPS(米国、NEN Rese
archProducts社製)を用いて取扱説明書に
従い、末端にアミノ基を有するポリエチレングリコール
鎖が結合したポリスチレン樹脂(TGレジン;米国、ノ
ヴァバイオケミカル社製)を使用し、アミノ基をFmo
c基で保護したモノマーの縮合による固相合成を行う。
【0053】実施例2において得られる表2に示す配列
を有する化合物は、下記の(1)〜(3)の条件を満足
するように合成する。 (1)化合物が、予め決められた位置にモノマーβとし
て、全体として正電荷を持つ置換基を側鎖に持つN−置
換グリシン(NnkまたはNhr)、あるいは全体とし
て正電荷を持つ置換基を側鎖に持つアミノ酸(Kまたは
R)を1個有する。 (2)化合物が、上記(1)で定めた位置以外の任意の
位置に、モノマーαとして、アレーン基を側鎖に持つN
−置換グリシン(NfまたはNhw)、あるいはアレー
ン基を側鎖に持つアミノ酸(FまたはW)を1個有す
る。 (3)化合物が、上記(1)および(2)で定めた位置
以外の3つの位置に、化合物の電荷(E)が+1以上で
あって、かつ、+4以内になるように、それぞれ、20
種類の天然アミノ酸に対応す側鎖を有するN−置換グリ
シンの中から、または20種類のL体の天然アミノ酸か
ら、適宜選択された3個のモノマーを有する。
【0054】比較例2において得られる表2に示す化合
物は、下記の(1’)の条件を満足するように合成す
る。 (1’)化合物が、それぞれ、20種類の天然アミノ酸
に対応する側鎖を有するN−置換グリシンモノマーの中
から、または20種類の天然アミノ酸の中から、重複を
許して任意に選択された5個のモノマーを有する。ただ
し、この化合物は、以下のaおよびbの条件を同時に満
足しない。 a:化合物内にNf、Nhw、FおよびWから選択され
るモノマーとNnk、Nhr、KおよびRから選択され
るモノマーを同時に含む。 b:化合物の電荷(E)が+1以上であって、かつ、+
4以内の範囲にある。また、それぞれの化合物とLDL
との結合性の評価については、実施例1と同様の手順に
て行う。結果を表2に示す。表2から、実施例2で得ら
れる化合物を結合させる樹脂は染色され、LDLとの結
合性を有することが示される。
【0055】
【表2】
【0056】(実施例3および比較例3)マルチペプチ
ド合成システム、RaMPS(米国、NEN Rese
archProducts社製)を用いて取扱説明書に
従い、末端にアミノ基を有するポリエチレングリコール
鎖が結合したポリスチレン樹脂(TGレジン;米国、ノ
ヴァバイオケミカル社製)を使用し、アミノ基をFmo
c基で保護したモノマーの縮合による固相合成を行う。
実施例3においては、NhwNaNhwNhrNhr、
NlNfNhyNnkG、NfNfNnkNnkPGG
GGG、NiNfNiNhrTGGGGGの配列を持つ
化合物を、それぞれ樹脂上に固相合成する。
【0057】比較例3においては、電荷(E)が0以下
であるNhwNaNhwNeNeGGGGGとNfNf
NfNfNfGGGGGの配列を持つ化合物を、この樹
脂上に固相合成する。得られる化合物結合樹脂に関し、
樹脂上に固定化される化合物のLDL吸着率を、以下の
方法で測定する。
【0058】乾燥重量85mgの化合物結合樹脂を、リ
ン酸緩衝生理食塩水(以下、しばしばPBSと称す)で
膨潤させた後、PBSで希釈したLDL溶液(50μg
/ml)(米国、シグマ社製)を1ml添加する。添加
前後でのLDLの減少率を、コレステロールを定量して
求め、得られる値を化合物のLDL吸着率とする。コレ
ステロールの定量は、コレステロールE−テストワコー
(日本国、和光純薬製)を用い、添付の取扱説明書に従
って行う。結果を表3に示す。表3から、比較例3で得
られる樹脂上に固定化される化合物は、LDLを充分吸
着していないが、実施例3で作成する樹脂上に固定化さ
れる化合物は、LDLを充分吸着することがわかる。
【0059】
【表3】
【0060】(実施例4)マルチペプチド合成システ
ム、RaMPS(米国、NEN ResearchPr
oducts社製)を用いて取扱説明書に従い、末端に
アミノ基を有するポリエチレングリコール鎖が結合した
ポリスチレン樹脂(TGレジン;米国、ノヴァバイオケ
ミカル社製)を使用し、アミノ基をFmoc基で保護し
たモノマーを用いて、表4に示す化合物を固相合成し、
実施例3と同様な方法で測定する。結果を表4に示す。
表4から、得られる樹脂上に固定化される化合物は、い
ずれもLDLを充分吸着することがわかる。
【0061】
【表4】
【0062】(実施例5および比較例4)ペプチド自動
合成機(9050 plusペプチドシンセサイザー、
日本国、日本パーセプティブリミテッド社製)を用い
て、固相合成法により化合物を合成する。すなわち、4
−アミノメチル−3,5−ジメトキシフェノキシメチル
基を0.18mmol/g(樹脂)の割合で有するスチ
レン−ジビニルベンゼン共重合体からなる粒状樹脂(F
moc−PAL−PEG−PS:日本国、日本パーセプ
ティブリミテッド社製)を用い、アミノ基をFmoc基
で保護したモノマーを用いて、定法に従って固相合成を
行う。
【0063】実施例5においては、カルボキシル基末端
がアミド化されたNfNfNnkNhrNd−CONH
2 の配列をもつ化合物を得る。得られる化合物を分析用
高速液体クロマトグラフィーにて、逆相系カラム(TS
Kgel ODS−80TM:日本国、東ソー(株)社
製 )を用いて、220nmの波長で分析し、単一のピ
ークであることを確認する。
【0064】同様にして、アミノ基をFmoc基で保護
したモノマーを用いて、カルボキシル基末端がアミド化
されたNiNfNfNnkP−CONH2 配列を持つ化
合物を得る。比較例4においては、アミノ基をFmoc
基で保護したモノマーを用いて、カルボキシル基末端が
アミド化されたNqNdGNhsNdNeNvNhyN
nk−CONH2 の配列を持つ化合物とNqGNdNd
NhsNeNvNhyNnk−CONH2 の配列を持つ
化合物を合成する。
【0065】実施例5で合成する化合物NfNfNnk
NhrNd−CONH2 とNiNfNfNnkP−CO
NH2 、および比較例4で合成するNqNdGNhsN
dNeNvNhyNnk−CONH2 とNqGNdNd
NhsNeNvNhyNnk−CONH2 を用いて、こ
れらのペプチドとLDLとの結合性を、以下の方法で測
定する。ペプチド溶液(1mmol/l)10μlをL
DL溶液(5mg/ml)(米国、シグマ社製)90μ
lに添加し、室温で1時間インキュベーションさせた
後、限外濾過膜(ウルトラフリーC3LGC:米国、ミ
リポア社製)を用いて、遠心濾過する。遊離化合物を含
む濾液画分を高速液体クロマトグラフィーにて逆相系カ
ラム(ODS コスモシール 5C18:日本国、na
calaitesque社製)を用いて、ペプチドを分
離し、275nmの波長で分析する。化合物のLDL結
合率は、化合物ピークの高さの変化から算出する。結果
を表5に示す。表5から、比較例4の化合物と比べて、
実施例5の化合物はLDLと強く結合することがわか
る。
【0066】
【表5】
【0067】(実施例6および比較例5)実施例6にお
いては、実施例5で得られるNfNfNnkNhrNd
−CONH2 およびNiNfNfNnkP−CONH2
の配列を持つ化合物を、比較例5においては、比較例4
で得られるNqNdGNhsNdNeNvNhyNnk
−CONH2 の配列を持つ化合物を、それぞれ臭化シア
ン活性化セファロース(スウェーデン国、ファルマシア
社製)に、定法に従い固定化する。すなわち、上記の樹
脂を秤り取り、1mMの塩酸溶液で洗浄後、精製した化
合物10mgを0.5Mの食塩を含む0.1M、pH
8.4の炭酸水素ナトリウム緩衝溶液に溶解し、膨潤し
たゲル8mlに加えて、室温で2時間反応させる。反応終
了後、ゲルをpH=8に調整した1Mのエタノールアミ
ン溶液に移し、反応を終了させる。得られる化合物結合
樹脂に関し、樹脂上に固定化される化合物のLDL吸着
率を以下の方法で測定する。
【0068】化合物結合樹脂をPBSで洗浄後、得られ
る膨潤状態の樹脂250μlに、PBSで希釈したLD
L(200μg/ml)(米国、シグマ社製)溶液50
0μlを添加する。添加前後でのLDLの含有量を、コ
レステロールを定量して求め、得られる値をLDL吸着
率とする。コレステロールの定量は、コレステロールE
−テストワコー(日本国、和光純薬製)を用い、添付の
取扱説明書に従って行う。結果を表6に示す。表6か
ら、比較例5で得られる樹脂上に固定化される化合物と
比べて、実施例6で得られる樹脂の固定化される化合物
は、いずれもLDLを非常によく吸着することがわか
る。
【0069】
【表6】
【0070】(実施例7および比較例6)実施例7にお
いては、実施例5で合成するNfNfNnkNhrNd
−CONH2 およびNiNfNfNnkP−CONH2
を、実施例6と同様の方法で臭化シアン活性化セファロ
ース(スウェーデン国、ファルマシア社)に結合させる
ものを用い、比較例6においては、市販のデキストラン
硫酸固定化セルロースを用いて、ブラジキニン産生量の
測定を以下の方法で行う。
【0071】ヘパリン(10IU/ml)を添加した健
常人の血液を遠心分離器で分離し、得られた血漿にカプ
トプリル(50ng/ml)(米国、シグマ社製)を添
加した血漿成分5mlを、膨潤状態の樹脂1mlの入っ
たポリカーボネート製三角フラスコに加え、37℃で5
分間放置する。その後、直ちに血漿成分を分離し、その
血漿成分にトラジロール、大豆トリプシンインヒビタ
ー、硫酸プロタミンおよびEDTA−2Naの入ったイ
ンヒビター溶液2mlを加え反応を停止させ、血漿中に
産生されたブラジキニン量をRIA法にて測定する。な
お、対照として、ブラジキニン産生を顕著に促進させる
と考えられるガラス製三角フラスコを用い、樹脂を入れ
ずにこの操作を行う。結果を表7に示す。表7から、N
fNfNnkNhrNd−CONH2 固定化セファロー
スおよびNiNfNfNnkP−CONH2 固定化セフ
ァロースは、対照として用いる空容器試験以上のブラジ
キニンを産生しないことがわかる。
【0072】
【表7】
【0073】(実施例8および比較例7)実施例8にお
いては、固相合成用担体(樹脂)としてスチレン−ジビ
ニルベンゼン共重合体からなる粒状樹脂(PAC−PE
G−PS:日本国、日本パーセプティブリミテッド社
製)を用いる以外は、実施例5と同様にして、NfNf
NnkNhrNdおよびNiNfNfNnkPの配列を
持つ化合物を固相合成し、得られる樹脂に固定化される
化合物の血液細胞に対する吸着性を評価する。
【0074】比較例7においては、固相合成用担体(樹
脂)としてスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からな
る粒状樹脂(PAC−PEG−PS:日本国、日本パー
セプティブリミテッド社製)を用いる以外は、実施例5
と同様にして、アミノ基をFmoc基で保護したL−体
のアミノ酸を用いて、VVWRLTRKRGLKVVV
の配列を持つペプチドを固相合成し、得られた樹脂に固
定化される化合物およびポリリジン(平均分子量539
00、米国、シグマ社製)を、それぞれ実施例6と同様
の方法で、臭化シアン活性化セファロース(ファルマシ
ア社)に結合させるものの血液細胞に対する吸着性を評
価する。評価は以下の方法で行う。
【0075】終濃度が1IU/mlになるようにヘパリ
ンを添加して得る健常人の血液を、生理食塩水にて膨潤
させた状態の樹脂0.5mlに添加し、37℃で30分
間放置する。その後、樹脂を分離し、生理食塩水で洗浄
後、肉眼観察を行う。結果を表8に示す。化合物の電荷
が+5以上の比較例7のサンプル1、サンプル2に関し
ては、明らかに血球細胞の付着もしくは血液凝固を認め
るが、NfNfNnkNhrNd固定化セファロースお
よびNiNfNfNnkP固定化セファロースについて
は、血球の付着はほとんど認められない。
【0076】
【表8】
【0077】
【発明の効果】本発明のLDL結合用化合物は、LDL
に対して特異的に優れた結合性を有し、それでいて、ブ
ラジキニンの産生、血液細胞の活性化や化合物への吸
着、血液凝固系の活性化等を惹起しないために安全性に
優れるので、全血や血漿等の体液からLDLを除去する
ための吸着材用の試薬、さらには、LDLが関与してい
る疾患に対する医薬品および医薬品のキャリヤーとして
有利に用いることができる。さらに、本発明のLDL結
合用化合物は、10個以下のモノマーユニットからなる
ため、比較的容易に、しかも、低コストで調製すること
ができるだけでなく、滅菌操作等に対する安全性や、保
存性に優れている。また、水不溶性担体に本発明の化合
物を結合させてなる吸着材を、血液中のLDLが病的な
原因により、健常人よりも多くなる疾患において、その
LDLを血液中から除去する場合に必要な血液浄化処理
装置等に用いると、有利なことに、効率よく、しかも、
安全にLDLの除去を行うことができる。また、上記の
水不溶性担体として、アガロース等のソフトゲル、また
は架橋されたポリビニルアルコールゲル等のハードゲル
を用いた場合には、体液クロマトグラフィー等におい
て、LDLの分離、精製用ゲルとして用いることもでき
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C07K 5/10 C07K 5/10 7/06 7/06 Z // A61K 35/14 A61K 35/14 Z

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(1)で表されるN−置換グリシ
    ンあるいはN−置換グリシンおよびアミノ酸からなる化
    合物であり、それぞれN−置換グリシンにおいてはR’
    を有するアミノ基、アミノ酸においてはα炭素に最も近
    い位置に存在するアミノ基が他のN−置換グリシンまた
    はアミノ酸のカルボキシル基との間で置換あるいは無置
    換の酸アミド結合を形成している、式(2)または式
    (3)で表される化合物であり、該化合物が有する電荷
    (E)が+1≦E≦+4であることを特徴とする低比重
    リポ蛋白質結合用化合物。 【化1】 〔ただし、式(1)中のR’は水素、フッ素、塩素、臭
    素、ヨウ素、置換あるいは置換されていない(C1−C
    6)アルキル、置換あるいは置換されていない(C2−
    C6)アルケニル、置換あるいは置換されていない(C
    2−C6)アルキニル、置換あるいは置換されていない
    (C3−C8)シクロアルキル、(C2−C8)アルコ
    キシアルキル、置換あるいは置換されていないアレー
    ン、置換あるいは置換されていないアレーン(C1−C
    6)アルキル、置換あるいは置換されていないヘテロア
    レーン、置換あるいは置換されていないヘテロアレーン
    (C1−C6)アルキル、カルボキシ、(C2−C6)
    カルボキシアルキル、(C3−C10)カルボアルコキ
    シアルキル、カルバモイル、置換あるいは置換されてい
    ない(C2−C6)カルバモイルアルキル、ヒドロキ
    シ、アミノ、イミノ、アンモニオ、ヒドラジノ、アミジ
    ノ、グアニジノ、メルカプト、(C1−C6)メルカプ
    トアルキル、(C1−C6)アルキルチオ、(C2−C
    10)アルキルチオアルキル、イミダゾリル、(C7−
    C20)アルコキシアレーン、カルボキシアレーン、
    (C8−C22)カルボアルコキシアレーン、カルバモ
    イルアレーン、メルカプトアレーン、アレーンチオ、あ
    るいは(C7−C20)アルキルチオアレーン基を表
    す。式(2)および式(3)の左端および右端は、それ
    ぞれN末端およびC末端であり、各αは、それぞれ独立
    して、R’がアレーン基を含み、式(1)で表されるN
    −置換グリシンあるいは側鎖にアレーン基を有するアミ
    ノ酸であり、各βは、それぞれ独立して、R’が全体と
    して正電荷を持ち、式(1)で表されるN−置換グリシ
    ンあるいは側鎖が全体として正電荷を持つアミノ酸であ
    り、各X1 、各X2 および各X3 は、それぞれ独立し
    て、式(1)で表されるN−置換グリシンあるいはN−
    置換グリシンおよびアミノ酸からなる化合物であり、m
    およびnは、それぞれαおよびβの数であり、p、qお
    よびrは、それぞれX1 、X2 およびX3 の化合物を構
    成するN−置換グリシンまたはアミノ酸の数であり(た
    だし、p、qおよびrは同じでも異なってもよい)、さ
    らに、m、n、p、qおよびrは次の関係を満足する。 2≦m+n+p+q+r≦10 (ただし、mおよびnは次式: 2≦m+n≦10および1≦m、n≦9 の条件を満足し、 p、qおよびrは次式: 0≦p+q+r≦8、0≦p、r≦8および0≦q≦5 の条件を満足する。)〕
  2. 【請求項2】 αがフェニルアラニンまたはトリプトフ
    ァン、あるいはR’がベンジルまたは2−インドリルエ
    チル基である式(1)で表されるN−置換グリシンであ
    り、βがリジンまたはアルギニン、あるいはR’が2−
    アミノエチルまたは4−グアニジノブチル基である式
    (1)で表されるN−置換グリシンであることを特徴と
    する請求項1に記載の化合物。
  3. 【請求項3】 qが0≦q≦3の関係を満足することを
    特徴とする請求項1または2に記載の化合物。
  4. 【請求項4】 m、n、p、qおよびrが2≦m+n+
    p+q+r≦5の関係を満足することを特徴とする請求
    項1ないし3のいずれかに記載の化合物。
  5. 【請求項5】 電荷(E)が+1または+2であること
    を特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の化合
    物。
  6. 【請求項6】 体液より低比重リポ蛋白質を除去するた
    めの吸着材であって、請求項1ないし5のいずれかに記
    載の化合物を水不溶性担体に結合させてなることを特徴
    とする吸着材。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし5のいずれかに記載の化
    合物が水不溶性担体に直接結合していることを特徴とす
    る請求項6に記載の吸着材。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし5のいずれかに記載の化
    合物が水不溶性担体にスペーサーを介して結合している
    ことを特徴とする請求項6に記載の吸着材。
  9. 【請求項9】 体液から低比重リポ蛋白質を除去するに
    当り、請求項1ないし5のいずれかに記載の化合物に体
    液を接触させることを特徴とする低比重リポ蛋白質の除
    去方法。
  10. 【請求項10】 請求項1ないし5のいずれかに記載の
    化合物からなることを特徴とする低比重リポ蛋白質結合
    用試薬。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6582386B2 (en) 2001-03-06 2003-06-24 Baxter International Inc. Multi-purpose, automated blood and fluid processing systems and methods
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JP2011139805A (ja) * 2010-01-07 2011-07-21 Pharmit Co Ltd 生体内塩基性物質を利用した体液浄化装置

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