JPH1017308A - 窒化珪素と炭化珪素との複合粉末及びこの複合粉末を用いた複合焼結体の製造方法 - Google Patents

窒化珪素と炭化珪素との複合粉末及びこの複合粉末を用いた複合焼結体の製造方法

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JPH1017308A
JPH1017308A JP8168092A JP16809296A JPH1017308A JP H1017308 A JPH1017308 A JP H1017308A JP 8168092 A JP8168092 A JP 8168092A JP 16809296 A JP16809296 A JP 16809296A JP H1017308 A JPH1017308 A JP H1017308A
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silicon
silicon nitride
silicon carbide
composite
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Kazumi Miyake
一實 三宅
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Honda Motor Co Ltd
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Honda Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 成分の偏析、不均一な分散がなく、良好な焼
結性を示す窒化珪素と炭化珪素との複合粉末を提供す
る。 【解決手段】 珪素粉末に炭素質粉末と焼結助剤とを混
合し、得られた混合粉末を窒素ガス含有雰囲気下で熱処
理し、珪素の窒化反応と珪素の炭化反応とを起こして得
られる窒化珪素と炭化珪素とを含む結晶質複合粉末であ
って、この複合粉末の比表面積を7m2/g以上とし
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は窒化珪素(Si
34)と炭化珪素(SiC)との複合粉末及びこの複合
粉末を用いた複合焼結体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】窒化珪素
の焼結体は、強度、耐熱性、耐熱衝撃性、耐摩耗性等に
優れているため、エンジンやタービン等の構造材として
用いることが試みられている。そして、窒化珪素焼結体
の特性を更に向上させてより苛酷な条件下での使用を可
能とするために、種々の成分を添加することが検討され
ており、中でも添加成分としての炭化珪素は、耐酸化性
及び高温強度を向上させるため、注目されており、以下
に挙げる先行技術が知られている。
【0003】(文献:Jurnal of the Ceramic Society
of Japan 101[12] 1993)この先行文献には、平均粒径
0.03μm、比表面積30m2/gの微細な炭化珪素
粉末とイットリア(Y23)とを窒化珪素粉末に混ぜ、
成形後に、1MPaのN2雰囲気、1750〜1900
℃で焼成し、更に100MPa、N2雰囲気、1750
℃でHIP処理して窒化珪素と炭化珪素との複合焼結体
を得ることが開示されている。しかしながら、この方法
による場合には、窒化珪素(Si34)粉末と炭化珪素
(SiC)粉末との粒径差が大きすぎるので、これらを
均一に混合することができず、焼結体の組成が不均一に
なりやすい。また、焼結助剤についても均一に混合する
ことが困難で、焼結前の成形体中で濃度むらが生じ、焼
結性が不充分となり、焼結体の強度低下を招く。また、
0.03μmという極めて微細な炭化珪素(SiC)粉
末を得るには、CVD法等を用いなければならず、著し
く高価になり、工業化には適さない。更に、炭化珪素粉
末の比表面積は30m2/gと大きいが、焼結性に影響
を与えるのは窒化珪素と炭化珪素との複合粉末の比表面
積であり、炭化珪素粉末単独の比表面積は直接複合粉末
の焼結性の向上に結びつかない。
【0004】(特開昭63−30366号公報)この公
報には、出発原料として金属SiとSiC粉末を用い、こ
れらを焼結助剤とともに混合し成形体を作製し、この成
形体を窒化性ガス中で一次焼結し金属SiとN2とを反応
させてSi34を生成し、このSi34によってSiC粒
子を結合させ、次いで前記一次焼結体を焼結助剤が働く
温度で二次焼結することが開示されている。特にこの先
行技術は、出発原料として窒化珪素(Si34)を使用
しないで金属Siを使用することで、焼結に伴う収縮を
小さくして寸法精度を高めている。しかしながらこの先
行技術にあっては、成形体の表面から内部までを均一に
窒化することが困難であり、特に肉厚の厚い成形体につ
いては、内部の窒化反応が進行しにくく、未反応の金属
Siが成形体内部に残ってしまう。
【0005】(特公昭60−26074号公報)この公
報には、有機珪素ポリマーと珪素粉末との混合物を非酸
化性雰囲気中(N2)で熱処理し更に粉砕して、珪素粒
子の表面が珪素と炭素とからなる非晶質物質にて被覆さ
れた調製粉末を作製し、この調製粉末から成形体を作
り、この成形体をN2ガス雰囲気中で焼成することで、
β−SiC−Si34系複合耐熱セラミックスを得ること
が開示されている。しかしながらこの先行技術にあって
も、前記した特開昭63−30366号と同様に、成形
体の表面から内部までを均一に窒化することが困難であ
り、特に肉厚の厚い成形体については、内部の窒化反応
が進行しにくいという問題がある。
【0006】(特開昭63−159204号公報)この
公報には、有機珪素ポリマーとアンモニア及び/又は不
活性ガスとの気相反応(CVD)によって生成された一
般式SiCXYZ(但し式中X,Y,Zは、0<X<1.5、0
<Y<2.0、0<Z<0.2である)で示され、かつ平均粒径
が1μm以下である非晶質球状複合粉末が開示されてい
る。この非晶質粉末は、焼成中のガス発生による気孔の
発生を防ぐために、非酸化性ガス雰囲気下の熱処理によ
り分解成分を除去している。しかしながら、この方法に
よって得られる複合粉末は非晶質のため嵩密度が高く成
形が難しく、ホットプレス以外の焼成方法では焼結体の
緻密化が困難であり、適応範囲が単純形状のものに限ら
れてしまう。
【0007】(特公平4−54609号公報及び特公平
4−54610号公報)これらの公報には、前記した非
晶質複合粉末の問題点を克服するため、非晶質の複合微
粉末を1400〜1600℃で熱処理した、窒化珪素と
炭化珪素とからなる100%結晶質の複合粉末について
開示されている。しかしながら、この100%結晶質の
窒化珪素/炭化珪素複合粉末から、ホットプレス、HI
P焼結により得られた焼結体の高温強度等の機械的特性
は、非晶質粉末を原料とした場合より劣り、更に常圧焼
結やガス圧焼結では緻密化が困難であるという問題点が
ある。
【0008】(特開平6−287007号公報及び特開
平6−287008号公報)これらの公報には、窒化珪
素及び炭化珪素からなり、且つ比表面積が10〜25m
2/g、密度が1.3g/cm3の部分結晶化複合粉末を
作製し、この部分結晶化複合粉末に焼結助剤を混合し、
乾燥成形後、1400〜1600℃で0.5〜24時間
保持した後、1600〜2300℃で液相焼結すること
が開示されている。しかしながら、ここで得られる複合
粉末は上述の特開昭63−159204号公報(以下A
と略す)と特公平4−54609号公報(以下Bと略
す)及び特公平4−54610号公報(以下Cと略す)
で開示されている粉末を特定の比率(Aの結晶質複合粉
末/B又はCの非晶質複合粉末=10/90〜80/2
0(%))で混合したものと等しく、非晶質成分の分解
による気孔の発生や機械的特性の低下或いは常圧焼結や
ガス圧焼結では緻密化が困難といった問題を有する。ま
た、部分結晶化複合粉末からの焼結体の製造方法は、部
分結晶化複合粉末に焼結助剤を混合した後、成形して焼
成すると開示されているが、焼結助剤を複合粉末合成後
に混合するため助剤成分の分散が不均一となり、焼結性
の低下或いは助剤成分の偏析を引き起こし、焼結体の特
性を低下させる。 さらに、焼結助剤の比表面積につい
ては何ら言及されていない。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すべく本
発明に係る窒化珪素と炭化珪素との複合粉末は、珪素粉
末に炭素質粉末と焼結助剤とを混合し、得られた混合粉
末を窒素ガス含有雰囲気下で熱処理し、珪素の窒化反応
と珪素の炭化反応とを起こして得られる窒化珪素と炭化
珪素とを含む結晶質複合粉末であって、この複合粉末の
比表面積を7m2/g以上とした。
【0010】また、上記の結晶質複合粉末を用いた焼結
体の製造方法は、複合粉末から成形体を作製した後、こ
の成形体を1600℃以上2200℃以下の温度で焼結
する。ここで、複合粉末の比表面積を7m2/g以上と
すれば、焼結性が高まるので、窒素ガス含有雰囲気の圧
力を10kgf/cm2未満にすることができる。
【0011】また、前記複合粉末を構成する窒化珪素に
は、α型窒化珪素とβ型窒化珪素があるが、α型窒化珪
素の方が焼結性に優れているので、熱処理条件を選定す
ることでα型窒化珪素の含有量が全窒化珪素の30%以
上となるようにすることが好ましい。
【0012】尚、α型窒化珪素の含有量が全窒化珪素の
30%以上となる好ましい熱処理条件としては、例えば
窒化炭化反応を1000℃〜1450℃で行い、且つ反
応開始前の温度から保持温度に到達するまでの昇温速度
を2℃/分未満とする。
【0013】
【発明の実施の形態】先ず〔1〕出発原料、〔2〕複合
粉末の製造方法、〔3〕複合焼結体の製造方法について
説明する。
【0014】〔1〕出発原料 (a)珪素粉末 本発明に使用する珪素粉末は、平均粒径が0.2〜20
μm、特に0.3〜10μmであるのが好ましい。平均
粒径が0.2μmより小さいと、粉末表面の酸化が大で
あり、また20μmより大きいと均一な分散が困難とな
るとともに反応性に乏しくなる。
【0015】なお、珪素粉末としては、JIS G 2
313 に規定されているような比較的低純度で安価な
ものから、半導体のシリコンウェーハの破材を粉砕した
ような高純度のものまで、広い範囲のものを使用するこ
とができる。また高純度の珪素粉末を使用した場合、F
e、Cr、Co等の化合物あるいは単体を添加し、反応を
促進することもできる。
【0016】出発原料中の珪素粉末と炭素質粉末の合計
量を100重量%としたとき、珪素粉末の含有量は、8
1.2〜97.6重量%が好ましく84.2〜93.2
重量%がより好ましい。珪素粉末が81.2重量%より
少ないと焼結体が緻密化しづらくなり、所望の複合焼結
体が得られれない。また97.6重量%より多いと炭化
珪素の複合効果が十分でなくなる。
【0017】(b)炭素質粉末 本発明に使用する炭素質粉末は、微細であれば特に限定
されないが、グラファイト粉末もしくはアセチレンブラ
ック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック粉末か
好ましい。炭素質粉末は、平均粒径が20μm以下、特
に10μm以下であるのが好ましい。平均粒径が20μ
mより大きいと均一な分散が困難となる。
【0018】出発原料中の珪素粉末と炭素質粉末の合計
量を100重量%としたとき、炭素質粉末の含有量は、
2.4〜18.8重量%が好ましく、6.8〜15.8
重量%がより好ましい。炭素質粉末が2.4重量%より
少ないと複合効果が得られず、また18.8重量%より
多いと焼結体が緻密化しない。
【0019】(c)窒化珪素粉末 混合粉末の成形性を良くするとともに、窒化珪素生成の
核とするために、0.1〜5μm、好ましくは0.1〜
3μmの平均粒径を有する窒化珪素粉末を添加してもよ
い。窒化珪素粉末の添加量は、熱処理により生成する窒
化珪素と添加する窒化珪素の合計を100重量%とし
て、0〜10重量%とするのが好ましく、より好ましく
は0〜5重量%とする。窒化珪素粉末の添加量が多すぎ
ると(珪素粉末に対する窒化珪素粉末の割合が高すぎる
と)、珪素の反応が不十分であり、複合効果が得られな
い。
【0020】(d)炭化珪素粉末 炭化珪素粉末は、窒化珪素粉末と同様の目的、つまり珪
素粉末混合粉末の成形性を良くするとともにして炭化珪
素生成の核とするために少量添加してもよい。好ましい
炭化珪素粉末の添加量は、熱処理により生成する炭化珪
素と添加する炭化珪素との合計量を100重量%とし
て、0〜10重量%であり、より好ましくは0〜5重量
%である。炭化珪素の添加量が多すぎると珪素の反応が
不十分となり、複合効果が得られない。
【0021】(e)焼結助剤粉末 複合粉末製造時の焼結助剤粉末が(a)周期率表3A族
元素及び4A族元素の酸化物からなる群より選ばれた1
種以上の化合物、又は前記(a)と、(b)窒化アルミ
ニウム又は酸化アルミニウムとからなる。中でも、
(a)Y23、Lu23、Yb23、HfO2からなる群よ
り選ばれた少なくとも1種の化合物が好ましく、Y23
単独が特に好ましい。
【0022】焼結助剤粉末の含有量は、熱処理により生
成した複合粉末の全量を100重量%として、5〜20
重量%とするのが好ましく、より好ましくは7〜15重
量%とする。焼結助剤粉末が5重量%より少ないと得ら
れる複合粉末の焼結性が不十分であり、また20重量%
より多いと焼結体の高温強度が低くなる。
【0023】焼結助剤は、珪素粉末、炭素質粉末と一緒
に混合して窒化/炭化処理を行う。最初から焼結助剤を
添加することにより、複合粉末中におけるα型窒化珪素
の含有量が大きくなるとともに、焼結助剤の分散状態が
良くなり、焼結体特性が向上する。
【0024】〔2〕複合粉末の製造方法 (1)混合粉末の作製 まず、各成分を上記配合比となるように配合し、ボール
ミル、ニーダー等で十分に混合する。混合は乾式でも湿
式でも良い。湿式混合の場合には、粉末混合物に水、エ
タノール、ブタノール等の分散媒体を加える。また、適
当な有機又は無機バインダーを添加することができる。
有機バインダーとしては、例えばエチルシリケート、ポ
リエチレングリコール、ポリビニルアルコール(PV
A)、アクリルエマルジョン、ポリウレタンエマルジョ
ン等が挙げられる。また、無機バインダーも添加するこ
とができる。
【0025】(2)窒化/炭化処理 次に、混合粉末を窒素含有雰囲気下で加熱し、混合粉末
中の珪素粉末の窒化と炭化を行う。窒化率と炭化率は出
発原料中のCの添加量により決まる。すなわち、実質的
に全てのCは珪素と結合して炭化珪素となるので、未反
応の珪素が実質的に全て窒化珪素に転化することにな
る。例えば、SiとCとが100:7のモル比で混合さ
れているとすると、窒化珪素と炭化珪素とのモル比は3
1:7となる。
【0026】窒化/炭化処理の諸条件は、複合粉末の組
成等により多少変更する必要があるが、温度は1450
℃以下とする。1450℃を超える温度に加熱すると、
珪素が溶出したり、珪素の気化が起こったりするので好
ましくない。窒化/炭化処理温度の下限は1000℃と
するのが好ましい。1000℃未満であると、窒化/炭
化反応が起こらないか、起こっても反応速度か低すぎ
る。より好ましい反応温度は1100〜1380℃であ
る。
【0027】本発明では、窒化反応の反応温度(保持温
度)に至るまでの昇温速度を小さくする。具体的には、
設定する反応温度にもよるが雰囲気温度が900〜13
00℃付近での昇温速度を2℃/分未満とし、好ましく
は0.5℃/分以下とする。昇温速度が2℃/分以上に
なると、窒化反応が激しくなり、生成される複合粉末内
におけるα型窒化珪素の含有率が減少し、複合粉末の焼
結性が低下するので好ましくない。好ましいα型窒化珪
素の含有率は、複合粉末中の全窒化珪素に対して30%
以上、特に好ましくは40%以上とする。α型窒化珪素
の含有率を高めることにより、比較的小さな比表面積の
複合粉末でも良好な焼結性が得られる。
【0028】窒素含有雰囲気の圧力は1kgf/cm2
以上とするのが好ましく、より好ましくは5〜2000
kgf/cm2とする。窒素含有雰囲気の圧力が1kg
f/cm2未満であると窒化が良好に進まない。窒化/
炭化処理の反応時間は、処理温度等により多少変化する
が、一般に1〜10時間程度とするのが好ましい。な
お、窒素含有雰囲気とは窒素含有ガスの雰囲気で、窒素
含有ガスとしては窒素ガス、窒素と水素の混合ガスある
いは窒素とアンモニアの混合ガス等が挙げられる。
【0029】(3)粉末の粉砕 得られた窒化珪素/炭化珪素/焼結助剤複合物を粉砕し
て、複合粉末とする。粉砕はボールミル、ジエットミ
ル、アトリションミル等を用いて行うことができる。粉
砕によって得られる複合粉末の比表面積はBET法によ
る比表面積で7m2/g以上40m2/g以下であるのが
好ましく、9m2/g以上であるのがより好ましい。比
表面積が7m2/g未満だと複合粉末の焼結性が低く、
比表面積が40m2/gより大きいと、複合粉末の表面
が酸化を受け易い。なお、本発明の複合粉末の比表面積
とは窒化珪素と炭化珪素及び焼結助剤がナノメーターレ
ベルで複合した状態にある粉末の比表面積を表わす値で
あって、単純に同組成となるように各成分を混合した粉
末の比表面積とは異なる。また、比表面積が7m2/g
以上であれば複合粉末の焼結性が向上し、焼結時の雰囲
気圧力が10kgf/cm2未満でも緻密な焼結体が得
られる。焼結時の雰囲気圧力が10kgf/cm2未満
であれば高圧ガス発生装置を使用する必要がないため、
焼結体を安価に製造することができる。
【0030】以上の条件で窒化/炭化処理を行うと、混
合粉末中の珪素粒子は炭素と反応して出発原料の珪素粒
子及び炭素質粒子よりも微細な炭化珪素の微細粒子を生
成するとともに、窒化されて出発原料の珪素粒子よりも
微細なα−窒化珪素を含む窒化珪素が生成される。
【0031】〔3〕複合焼結体の製造方法 (1)窒化珪素/炭化珪素複合焼結体を製造するには まず上記〔2〕の欄に記載した窒化珪素/炭化珪素複合
粉末を所望の形状に成形するが、成形方法としてはプレ
ス成形、スリップキャスティング成形、射出成形等を使
用することができる。
【0032】プレス成形の場合には、分散媒体を除去後
に所望のプレス型を用いて成形を行う。スリップキャス
ティング成形の場合には、分散媒体とともに吸湿性の型
に流し込む。射出成形の場合には適当な有機又は無機バ
インダーを添加して、型内に射出する。有機バインダー
としては、例えばエチルシリケート、ポリエチレングリ
コール、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリルエ
マルジョン、ポリウレタンエマルジョン等が挙げられ
る。また無機バインダーも添加することができる。複雑
な形状の成形体を作製するには、スリップキャスティン
グ成形や射出成形が好ましい。
【0033】次に得られた成形体を1600〜2200
℃の温度で、好ましくは1800〜2000℃の温度で
焼結する。焼結温度が1600℃末満であると、焼結体
の緻密化が不十分になり、所望の特性が得られない。ま
た焼結温度が2200℃を超えると窒化珪素の分解が始
まるので好ましくない。焼結温度保持時間は1〜5時間
程度とするのが好ましい。また、焼結は非酸化性雰囲気
下、好ましくは窒素ガス雰囲気下で行う。このとき、雰
囲気ガス圧は5〜2000kgf/cm2程度とする。
特に複合粉末の比表面積が7m2/g以上であれば、1
0kgf/cm2未満の雰囲気ガス圧でも十分に緻密な
焼結体が得られる。
【0034】(2)窒化珪素/炭化珪素複合焼結体 上記方法で得られた窒化珪素/炭化珪素複合焼結体は、
窒化珪素粒子内に微細な炭化珪素粒子が分散したいわゆ
るナノコンポジット構造を有する。炭化珪素粒子は窒化
珪素粒子より熱膨張率が大きいため、窒化珪素粒子に残
留応力が働くと考えられる。また窒化珪素の粒界に分散
した微細な炭化珪素粒子は、窒化珪素の粒界すべりを抑
制するくさびのような作用をすると考えられる。このよ
うな作用により、高温強度、耐クリープ特性が向上する
効果が得られる。
【0035】従って、炭化珪素/窒化珪素の比が小さい
場合、上記効果(いわゆる複合効果)が十分に得られな
い。一方、炭化珪素/窒化珪素の比が大きすぎると、分
散する炭化珪素粒子が多すぎて窒化珪素の粒成長が抑制
されてしまい、焼結体密度が十分に増大しない。以上の
点から炭化珪素/窒化珪素の重量比は5/95〜50/
50が好ましく、15/85〜40/60がより好まし
い。
【0036】次に、具体的な実施例を挙げるが、本発明
はこれに限定されるものではない。 (実施例1)金属珪素粉末(キンセイマテック(株)製
JIS−1号、平均粒径0.7μm)78.0重量%
に対し、カーボン粉末((株)高純度化学製 99.9
%−5μm)11.2重量%と焼結助剤としてY23
末(日本イットリウム(株)製 99.9% 平均粒径
1.5μm)10.8重量%を配合し、この粉末総量1
00重量部に対して窒化珪素製ボール80重量部とエタ
ノール100重量部を加え、樹脂製ポットにて18時間
混合し乾燥した。得られた原料粉末を9kgf/cm2
の窒素ガス雰囲気中1230℃で熱処理した後、熱処理
後の総重量100重量部に対して窒化珪素製ボール10
0重量部とエタノール100重量部を加え、64.5時
間粉砕し乾燥した。得られた粉末を精密空気分級機によ
り最大径が2μm以下となるよう分級し、実施例1の複
合粉末を得た。
【0037】(実施例2)〜(実施例4)及び(比較例
1)〜(比較例6) 実施例1と同様にして原料粉末を得て実施例1と同条件
で熱処理した後、この熱処理後の複合物を粉砕する時間
と粉砕ボール量及び分級条件を変えて異なる特性の複合
粉末を得た。(実施例1)〜(実施例4)及び(比較例
1)〜(比較例6)で得た複合粉末の特性を以下の(表
1)に示す。ここで、実施例は比表面積が7m2/g以
上のものを、比較例は比表面積が7m2/g未満のもの
である。また、実施例4と比較例2については組成分析
をしたのでその結果を(表2)に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】上記の(表1)において、比表面積は、ユ
アサアイオニクス(株)製ガス吸着式比表面積/細孔径
分布測定装置にて窒素ガスを用いて測定したBET比表
面積である。また、粒度分布はレーザ回折法(マイクロ
トラック)により測定した。更に、(表2)の組成分析
のうち、珪素はJIS R2212の凝集重量法に準拠
して定量し、イットリウムはJIS R2212に準拠
して前処理した後、ICP−AES法により定量し、酸
素及び窒素はLECO社製酸素窒素同時分析装置にて定
量し、炭素はLECO社製炭素分析装置にて定量した。
【0041】実施例1〜4、比較例1〜6で得られた各
複合粉末に、一軸加圧予備成形後CIP装置にて4トン
/cm2の等方圧を加え、およそ50mm×32mm×
7mmの成形体を得た。これらの成形体を9kgf/c
2の窒素ガス雰囲気中2000℃で4時間保持して焼
成を行った。得られた焼成体の密度をアルキメデス法で
測定した結果を図1に示す。
【0042】図1のうち、密度が3.15g/cm3
上の試料について、JIS R1601に従って室温及
び1400℃で三点曲げ強度試験を行った。1400℃
の三点曲げ強度試験は、1400℃まで2時間で昇温
後、1時間保持した後に測定を行った。得られた結果
を、焼結体密度とともに(表1)に示した。
【0043】(比較例7)窒化珪素粉末(宇部興産製S
N−E10:比表面積=10m2/g)64.4重量%
に対し、炭化珪素粉末(三井東圧製MSC−20:比表
面積=23.2m2/g)27.6重量%と焼結助剤と
してY23粉末(日本イットリウム(株)社製:比表面
積=2.5m2/g)8重量%を配合し、この粉末総量
100重量部に対して窒化珪素製ボール80重量部とエ
タノール100重量部を加え、樹脂製ポットにて18時
間混合し乾燥した。この比較例7の混合粉末は前記実施
例1〜4及び比較例1〜6の複合粉末と同組成となり、
また比表面積は13.04m2/gであった。得られた
混合粉末を、目開き355μmの篩いでパスした。この
粉末に、1軸加圧予備成形後CIP装置にて4トン/c
2の等方圧を加え、およそ50mm×32mm×7m
mの成形体を得た。この成形体を9kgf/cm2の窒
素ガス雰囲気中2000℃で4時間保持の焼成を行っ
た。得られた焼成体の密度をアルキメデス法で測定した
結果2.65g/cm3であり、焼結体密度が低く、強
度測定に供することができなかった。単に窒化珪素粉末
と炭化珪素粉末とを混合して、比表面積が7m2/g以
上の混合粉末とし、この混合粉末を成形・焼結しても高
密度の焼結体を得られないことは明らかである。珪素粉
末に炭素質粉末と焼結助剤とを混合し、得られた混合粉
末を窒素ガス含有雰囲気下で熱処理し、珪素の窒化反応
と珪素の炭化反応とを起こして得られる窒化珪素と炭化
珪素とを含む比表面積が7m2/g以上の複合粉末を用
いることによって10kgf/cm2未満の雰囲気圧力
で高密度の焼結体を得ることができる。
【0044】
【発明の効果】以上に説明したように本発明によれば、
窒化珪素と炭化珪素との複合粉末として、珪素粉末に炭
素質粉末と焼結助剤とを混合し、得られた混合粉末を窒
素ガス含有雰囲気下で熱処理し、珪素の窒化反応と珪素
の炭化反応とを起こして得るようにしたので、成分の偏
析、不均一な分散がなくなる。
【0045】また、窒化珪素粒子と炭化珪素粒子は反応
によって生成されるため、原料珪素の粒径よりも微細で
且つ両者は複合しており、更に焼結助剤も反応時均一に
分散し、且つ比表面積が7m2/g以上であるので、焼
結性に優れた原料複合粉末が得られる。
【0046】また、本発明に係る原料複合粉末は非晶質
粉末を含まず結晶質であるため、非晶質粉末が熱分解す
る際に生じるガスによって緻密化が阻害されることがな
い。
【0047】また、出発原料としての珪素粉末や炭素質
粉末として、例えばCVDによって製造されるような高
価な微細粒は必要でないため、経済的にも有利である。
【0048】また、本発明に係る複合焼結体の製造方法
にあっては、反応焼結の手法を用いているが、珪素粉末
の成形体を窒化するのではなく、予め窒化珪素と炭化珪
素との混合粉末を製造し、この混合粉末を成形するの
で、成形体の厚みに制限はなく、成形体も単純形状のも
のに限定されない。
【0049】更に、例えば原料複合粉末として、その比
表面積が7m2/g以上のものを選定すれば、焼結時の
窒素ガス雰囲気圧力を低い圧力、例えば10kgf/c
2未満にすることが可能になり、設備的にも有利にな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜4及び比較例1〜6のBET比表面
積と焼結体密度との関係を示す図

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 珪素粉末に炭素質粉末と焼結助剤とを混
    合し、得られた混合粉末を窒素ガス含有雰囲気下で熱処
    理し、珪素の窒化反応と珪素の炭化反応とを起こして得
    られる窒化珪素と炭化珪素とを含む複合粉末において、
    この複合粉末は結晶質であり且つ比表面積が7m2/g
    以上であることを特徴とする窒化珪素と炭化珪素との複
    合粉末。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の窒化珪素と炭化珪素と
    の複合粉末を用いた複合焼結体の製造方法であって、こ
    の製造方法は前記複合粉末から成形体を作製した後、こ
    の成形体を窒素ガス含有雰囲気で、雰囲気圧力を10k
    gf/cm2未満として、1600℃以上2200℃以
    下の温度で焼結することを特徴とする複合焼結体の製造
    方法。
JP8168092A 1994-03-30 1996-06-28 窒化珪素と炭化珪素との複合粉末及びこの複合粉末を用いた複合焼結体の製造方法 Pending JPH1017308A (ja)

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US08/857,463 US5912200A (en) 1994-03-30 1997-05-16 Composite powder and method of manufacturing sintered body therefrom

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114988879A (zh) * 2022-06-30 2022-09-02 中钢集团洛阳耐火材料研究院有限公司 一种大型复相反应烧结碳化硅制品及制备方法

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