JPH10170469A - 孔食深さ算出方法 - Google Patents

孔食深さ算出方法

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JPH10170469A
JPH10170469A JP33207696A JP33207696A JPH10170469A JP H10170469 A JPH10170469 A JP H10170469A JP 33207696 A JP33207696 A JP 33207696A JP 33207696 A JP33207696 A JP 33207696A JP H10170469 A JPH10170469 A JP H10170469A
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晶 飯村
Masaaki Taneno
真明 種子野
Yuuichi Ono
雄壱 小野
Shoei Hirano
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱交換器又は配管等の局部腐食による孔食
(侵食)深さを、当該設備の運転、通水を休止すること
なく、非破壊にて精度良く算出することができる孔食深
さ算出方法を提供する。 【解決手段】 熱交換器10の流入側ヘッダ11と流出
側ヘッダ12との間に32本の伝熱チューブ13が配設
されている。流入側ヘッダ11には、冷却塔14で冷却
された水がポンプ15によって供給される流出側ヘッダ
12からの水は、配管17に設けられた局部腐食モニタ
ー16を経て冷却塔14へ送られる。各局部腐食モニタ
ー16の栓体22と前記伝熱チューブ13とがリード線
25で導通され、このリード線25に電流計26が設け
られている。電流計26の検出値から腐食生成物の日々
の抵抗係数を求め、伝熱チューブ13の孔食深さを計算
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は金属部材の孔食深さ
算出方法に係り、特に、熱交換器又は配管等の局部腐食
による孔食(侵食)深さを、当該設備の運転、通水を休
止することなく、非破壊にて精度良く算出することがで
きる孔食深さ算出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】配管や熱交換器などにおいて局部腐食が
進行して孔食深さが増し、それが貫通に至るとプラント
の操業停止など不測の事態を生ずることがあるため、局
部腐食、即ち孔食の深さを推定する技術が求められてい
る。
【0003】従来、熱交換器又は配管の寿命は、当該設
備の運転、通水を休止してその一部をサンプリングし、
サンプルの孔食深さを測定することにより推定してい
た。
【0004】しかしながら、上記従来の方法では、設備
の運転を休止し、かつその一部をサンプリングするため
に破壊しなければならないことから、工場の操業に影響
を及ぼすという欠点がある。しかも、測定結果が出るま
でに多大の時間、労力、費用がかかるという欠点もあ
る。
【0005】このような欠点を解決し、金属の局部腐食
の進行速度をモニターすることにより、その孔食深さを
推定することが可能な方法として、水系媒体に接する金
属部材の局部腐食をモニターする方法であって、該水系
媒体と小孔を介して連通する液溜部と、該液溜部内の液
と接するように設けられた前記金属部材と同材質の金属
片とを備え、該金属片の前記液溜部内の液と接する面の
面積が前記小孔の開口面積よりも大きいモニター装置を
用い、該金属片と前記金属部材とを電気的に接触させ
て、両者の間に流れる電流を測定することにより金属部
材の局部腐食をモニタリングする方法がある(特開平2
−310452号)。
【0006】以下に、特開平2−310452号のモニ
タリング方法について図2を参照して説明する。
【0007】通常、金属部材の局部腐食は酸素濃淡電池
の形成により、金属の溶解部分(アノード)とその周辺
の酸素還元反応の起こる部分(カソード)との電位差が
駆動力となって進行する。
【0008】特開平2−310452号の方法では、図
2に示す如く、当該金属部材30と同一材質の例えば円
柱状の金属片32を例えば円形凹穴よりなる液溜部34
内に挿入配置して液溜部34内に模擬的に局部腐食の状
態を作る。なお、33は塩化ビニル等の非腐食性の部材
であり、該部材33の図の上面側に水系媒体が流通され
る。
【0009】この水系媒体は腐食生成物(錆)41及び
小孔状の液絡部40を介して液溜部34内の水系媒体を
徐々に更新する。
【0010】カソードとなる金属部材30とアノードと
なる金属片32とをリード線36で電気的に接続し、こ
のリード線に流れる電流を電流計38で測定し、その電
流値から局部腐食の進行速度及び侵食深さなどを推定す
る。
【0011】上記特開平2−310452号の方法によ
れば、設備の運転を休止することなく、非破壊にて孔食
をリアルタイムで推定することが可能とされる。
【0012】しかしながら、特開平2−310452号
の方法では、短いテストチューブを用いるモニター装置
により得られたアノード電流から直接に孔食深さを求め
るものであるため、得られた測定値に対して、様々な大
きさの熱交換器や長さの異なる実際の配管では、現実の
孔食深さと大幅に異なることがある。
【0013】そこで、本発明者は、任意の時点(過去、
現在及び将来)における孔食深さを特開平2−3104
52号の方法よりも正確に算出し得る孔食深さ算出方法
を特開平5−215707号公報にて提案した。同号公
報の孔食深さ算出方法は、水系媒体に接する熱交換器又
は配管等の金属部材の孔食深さを算出する方法であっ
て、該水系媒体と小孔を介して連通する液溜部と、該液
溜部内の液と接するように設けられた前記金属部材と同
材質の金属片とを備え、該金属片の前記液溜部内の液と
接する面の面積が前記小孔の開口面積よりも大きいモニ
ター装置を用い、該金属片と前記金属部材とを電気的に
接触させて、両者の間に流れる電流を測定して金属部材
の孔食深さを算出する方法において、予め前記金属部材
の腐食反応の抵抗係数を求めておくと共に、前記金属部
材に複数の前記モニター装置を設け、各モニター装置の
電流値及び前記金属部材の腐食反応の抵抗係数に基いて
前記金属部材の腐食生成物の抵抗係数を求め、該腐食反
応の抵抗係数と、腐食生成物の抵抗係数と、前記金属部
材と水系媒体との接触により生じる電位差とに基いて孔
食深さを算出することを特徴とするものである。
【0014】孔食は半球状や円錐状など種々の形態で進
行することが知られているが、以下ではもっとも一般的
な形態として半球状で進行した場合を例にとって特開平
5−215707号の方法について説明する。
【0015】この方法は、図3に示した孔食モデルに基
いて孔食の深さを算出する方法である。図3において、
半球状の孔食部50が生じており、この孔食部50を均
一厚さの腐食生成物層51が蓋をする如く覆っている。
孔食部以外の部分では金属部材が保護皮膜で被われてお
り、金属部材と水系媒体とは直接には接していない。
【0016】孔食部においては、金属部材と水系媒体と
が接することにより両者間に電位差が生じる。この電位
差を、孔食部50の表面(半球状の表面)における腐食
反応の抵抗と、前記腐食生成物層(錆)51の抵抗との
合計の抵抗で除算することにより、該孔食部の表面を流
れる電流が算出される。この電流値と時間との積に対し
さらに金属の原子量を乗ずると共に金属の反応関与価電
子数及びファラデー定数で除することにより腐食量が算
出される。このモデルの場合、孔食部を半球状と扱うこ
とにより、総腐食量(即ち孔食部の半球の体積)から孔
食部の半球の半径が算出される。
【0017】前記孔食部は時々刻々と成長するものであ
るが、特開平5−215707号の説明では、ある1日
(24時間)の間は一定の電流が流れて腐食が進行し、
次の1日(24時間)にはこの通電により拡径した孔食
部に対しその表面積(孔食部の半球の表面積)に見合っ
た定電流が流れるものとして扱っている。
【0018】そして、前記の腐食反応の抵抗係数と腐食
生成物の抵抗係数とを、後述の如くしてモニター装置に
よって実測された電流値から計算により算出する。
【0019】1.孔食進行モデル 防食被膜を有した金属部材が腐食する場合、何らかの原
因で防食被膜にピンホール状の破壊が生じ、該ピンホー
ルを中心として半球状に凹食(孔食)が図3の如く徐々
に進行する。そして図3に示す如く、錆(腐食生成物)
51が孔食部分を覆う。
【0020】金属部材52の孔食深さを予測するための
モデルにおいては、前述の通り、孔食部分50は半球で
あるとし、また、錆51は正確に円盤形状であるとす
る。この半球の半径をrとし、錆の高さをhとする。
【0021】2.孔食抵抗値Rt防食被膜の破壊によっ
て金属部材の水系媒体(液)との接液界面に電位差△E
が生じ、液と金属部材との間に電流Itが流れる。この
液と金属部材との間に流れる電流は、錆の抵抗及び液と
金属部材との接液界面の反応抵抗を受ける。
【0022】これらの抵抗の和を孔食抵抗値Rtとする
と、 Rt=(反応抵抗)+(錆抵抗) …(1) である。この反応抵抗は、接液界面の面積(孔食部分5
0の半球の表面積)2πr2 に反比例する。従って、比
例定数をK1 とすると、反応抵抗はK1 /2πr2 と表
わされる。
【0023】また、錆抵抗は、錆の高さhに比例する。
錆の高さhは、(錆の体積)/(錆の底面積)であり、
錆の体積は、孔食された金属の総体積2πr3 /3(半
球の体積)に金属の密度dと錆の密度d’との比を乗じ
て求まる。
【0024】つまり、錆の高さhは、 h=((2/3)πr3 d/d’)/πr2 …(2) であり、錆の線抵抗比例係数をK2 とすると、錆抵抗は
2 ・hとなる。(なお、このK2 値は、水質環境や温
度、流動条件によって変わるが、特開平5−21570
7号の発明ではこれらの環境条件はモニター試験期間
中、常に一定であるとしている。) 従って、前記Rtは、 Rt=(反応抵抗)+(錆抵抗) =K1 /(半球表面積)+K2・h =K1 /2πr2 +K2・((2/3)πr3 d/d')/
πr2 となる。右辺第2項におけるK2 /d’をK2 ’とおく
と、 Rt=K1 /2πr2 +K2 ’・(2/3)πr3 d/πr2 =K1 /2πr2 +K2 ’・(2/3)r・d …(3) となる。ただし K1 :比例係数すなわち、腐食反応の
抵抗係数(Ω・mm2)2 ’:比例係数すなわち錆の抵抗係数(Ω/mm・(mg/
mm3)) r :孔食の半径 d :鉄などの金属の密度(mg/mm3) なお、(3)式の意味は、 Rt=K1 /(アノード面積) +K2 ’・(腐食金属量)/(孔食間口面積) …(4) ということになる。
【0025】なお、腐食モニター(図2)においても金
属片32が金属部材52と同様に腐食して同様な錆41
を生じさせている。従って、この腐食モニターにおい
て、Rtは上記(4)式と同様に、アノード面積(即
ち、金属片32の接液面積Sa )、孔食間口面積(液絡
部40の間口面積Sb )及び金属片32のj日間の腐食
量Dj により次のように表わされる。
【0026】 Rt=K1 /Sa +K2 ’・Dj /Sb …(4.5) 3.腐食反応の抵抗及び錆の抵抗係数このK1 は直線分
極抵抗法、インピーダンス測定法、定電位分極測定法、
定電流分極測定法などにより求めることができる。
【0027】K2 ’は局部腐食モニターにより求めるこ
とができる。即ち、孔食電流をItとすると、オーム則
通りΔE=It・Rtであり、ΔE、Itは実測できる
からRtが求まる。式(4.5)において右辺の面積S
a ,Sb は既知であり、K1は上記直線分極抵抗法等の
測定法により測定される。腐食量Dj は、腐食モニター
の電流計38に流れた電流値の積算値と金属原子量及び
ファラデー定数より計算される。(この腐食量Dj の計
算は、次の(5)式のWj の計算と同じ計算方法にな
る)。従って、これらのSa ,Sb ,K1 及びDj
(4.5)式に代入することにより、該(4.5)式か
らK2 ’が求まる。
【0028】このようにして、腐食反応の抵抗係数K1
及び腐食生成物(錆)の抵抗係数K’2 が求まる。
【0029】4.孔食電圧ΔE、j日目の孔食電流Ij
から孔食量の算出 Ij なる電流が1日間流れたときの孔食量Wj は次のよ
うにして求められる。 Wj =Ij ・(3600・24)・(M/Z・F) …(5) M:金属部材32を構成する鉄などの金属の原子量 F:ファラデー定数 Z:電価数(鉄の場合は2) 孔食が発生した時点から1日目(0〜24時間の間)は
平均してI1 なる電流が流れ、2日目(24時間〜48
時間の間)は平均してI2 なる電流が流れ、3日目(4
8時間〜72時間の間)はI3 なる電流が流れ、…j日
目にはIj なる電流が流れたものとすると、孔食開始か
らn日経過後の腐食総量Gn
【0030】
【数1】
【0031】となる。
【0032】このIj 即ちI1 ,I2 ,I3 ………は前
記K1 ,K2 ’に基いて算出できる。
【0033】このI1 ,I2 ,…の算出方法を次に順次
に説明する。 孔食発生時(時間t=0)における電流I0 孔食発生時のアノード面積=Aとする。このAは極々微
小な値(例えば0.0001mm2 )とする。孔食深さ
0 =0とする。なお、このt=0の状態では(アノー
ド面積)=(孔食間口面積)=Aとなる。
【0034】I=ΔE/Rtであり、前記式(4)より Rt=K1 /(アノード面積)+K’2 ・(腐食金属
量)/(孔食間口面積) であるから、
【0035】
【数2】
【0036】である。このt=0のときには、前記の通
り(アノード面積)=(孔食間口面積)=Aであり、
(腐食金属量)=0であるから、t=0のときの電流値
0 は次の(8)式の通りとなる。
【0037】
【数3】
【0038】この(8)式においてK1 、△Eは既知で
あり、Aは所定値に設定されているから、この(8)式
からI0 が求まる。
【0039】 孔食発生1日後(24時間後)。この
24時間は、
【0040】
【数4】
【0041】が一定で流れ続け、その結果、孔食部は半
径r1 になったものとする。
【0042】電流値I0 から計算されるこの1日の間の
腐食量W1 は次の(9)式の通りである。
【0043】 W1 =I0 ・(3600・24)・(M/Z・F) …(9) (M:金属の原子量、F:ファラデー定数)なお、この
1日間の腐食金属量は(2/3)πr1 3 dである。た
だし、d:金属の密度である。
【0044】腐食総量G1 =W1 であり、孔食部は半球
であるから、(孔食深さ)は(半球の半径)に等しい。
即ち、 孔食深さr1 =(3G1 /2πd)1/3 =(3W1 /2πd)1/3 …(10) である。
【0045】この(10)式のW1 に(9)式から計算
されるW1 の値を代入することにより、第1日(最初の
24時間)経過後の孔食深さr1 が求まる。
【0046】 孔食発生2日後(48時間後) この新たな24時間において、流れる電流I1 は、その
ときの孔食部の半径がr1 になっているため、(7)式
においてr=r1 とおくことにより、次の通りとなる。
【0047】
【数5】
【0048】前記(10)式からr1 が求まり、G
1 (=W1 )は(9)式から求まるから、この(11)
式より電流I1 が計算される。
【0049】孔食発生2日目(24時間〜48時間の
間)はこのI1 が1日間(24時間)一定で流れ続け
る。この1日間の腐食量W2 はW2 =I1 ・(3600
・24)・(M/Z・F)より計算される。そして、G
2 (=W2 +W1 )もこれから求まる。
【0050】一方、2日経過後の腐食総量G2 は G2 =W2 +W1 =(2/3)πr2 3d …(11.5) であるから、孔食深さr2 は次式により求められる。
【0051】 r2 =(3G2 /2πd)1/3 …(12) 孔食発生3日目は、同様にして次の電流I2 が1日
間(24時間)一定で流れ続け、その24時間の腐食量
3 は次の通りとなる。
【0052】
【数6】
【0053】 W3 =I2 ・(3600・24)・(M/Z・F) …(13.5) 前記(12)式からr2 が求まり、(11.5)式から
2 も求まるから、(13)式よりI2 が求まる。そし
て、(13.5)式からW3 も求まる。
【0054】孔食発生3日後の腐食総量G3 =W3 +W
2 +W1 であるから、G3 が求まり、孔食深さr3 は次
式により求められる。
【0055】 r3 =(3G3 /2πd)1/3 …(14) 4日目以降においても、前日までの孔食深さからそ
の当日の電流値が求まる。そして、これにより、その当
日に生じる孔食量が計算される。
【0056】このように、r1 ,r2 ,r3 ………及び
0 ,I1 ,I2 ………を順次に計算することにより、
n日経過後の孔食深さを計算できる。
【0057】 なお、環境条件が不変でありそれ故に
2 ’が一定であるとしているから、ある日の電流Im
はその前日までに生じた孔食部の接液面積(2π
2 m-1)によって決まるものであり、わざわざIm を計
算しなくても、r1 ,r2 ,r3 ……の値だけからn日
経過後の孔食深さを計算することができる。
【0058】これについて次に説明する。
【0059】孔食発生n日後においては、(n−1)日
目にIn-1 なる電流が1日間(24時間)にわたって一
定に流れ、この1日間で新たにWn なる量だけ腐食が進
行したことによって、腐食総量はGn となる。Wn =I
n-1 ・(3600・24)・(M/Z・F)であるか
ら、Gn は次の通りである。
【0060】
【数7】
【0061】この(22)式にr1 ,r2 ,r3 …の計
算値を代入することによりGn が求まる。
【0062】 ところで、Gn =(2/3)πrn 3 ・d) …(23) であるから、 孔食深さrn =(3Gn /2πd)1/3 …(24) となる。
【0063】(22)式よりGn が計算されているか
ら、この(22)式のGn 値を(24)式に代入すれば
n が計算される。
【0064】なお、rn を一般式で表わすと、(24)
式に(22)式を代入した次の(25)式の通りとな
る。
【0065】
【数8】
【0066】このように、r1 ,r2 ,r3 …を順次に
計算し、これを式(25)に代入して計算することによ
り任意のn日経過後の孔食深さrn を計算することがで
きる。
【0067】
【発明が解決しようとする課題】この特開平5−215
707号の方法においては、腐食生成物たる錆51の抵
抗は一定値であるとして扱っている。
【0068】ところが、実際の水系では、水質が日々変
動し、錆51の抵抗も日々変動することが多い。このよ
うな場合、錆51の抵抗を常に一定値である(具体的に
は、上記の通りK2 ’が一定であると扱う。)とした
特開平5−215707号の方法では孔食深さ計算値の
実際の孔食深さからの誤差が大きくなってしまう。
【0069】本発明は、かかる問題点を解決し、特開平
5−215707号の方法よりもさらに精度の高い孔食
深さ算出方法を提供することを目的とするものである。
【0070】
【課題を解決するための手段】本発明の孔食深さ算出方
法は、特開平5−215707号の方法において、各モ
ニター装置の電流値を所定時間毎に検出し、この電流値
によって上記K2 ’を計算し、このK2 ’を用いて孔食
深さを算出するようにしたものである。
【0071】かかる本発明の孔食深さ算出方法による
と、K2 ’の値が実際の値にきわめて近いものとなるた
め、孔食深さの計算値の誤差がきわめて小さなものとな
る。
【0072】
【発明の実施の形態】前記の通り、孔食は半球状や円錐
状など種々の形態で進行することが知られているが、こ
の実施の形態においても、もっとも一般的な形態として
半球状で進行した場合を例に説明する。
【0073】本発明は、図4に示した孔食モデルに基い
て孔食の深さを算出する方法である。図4において、半
球状の孔食部50が生じており、この孔食部50を均一
厚さの腐食生成物層51が蓋をする如く覆っている。孔
食部以外の部分では金属部材が保護皮膜で被われてお
り、金属部材と水系媒体とは直接には接していない。
【0074】孔食部においては、金属部材と水系媒体と
が接することにより両者間に電位差が生じる。この電位
差を、孔食部50の表面(半球状の表面)における腐食
反応の抵抗と、前記腐食生成物層(錆)51の抵抗との
合計の抵抗で除算することにより、該孔食部の表面を流
れる電流が算出される。この電流値と時間との積に対し
さらに金属の原子量を乗ずると共に金属の反応関与価電
子数及びファラデー定数で除することにより腐食量が算
出される。このモデルの場合、孔食部を半球状と扱うこ
とにより、総腐食量(即ち孔食部の半球の体積)から孔
食部の半球の半径が算出される。
【0075】前記孔食部は時々刻々と成長するものであ
るが、以下の説明では、ある1日(24時間)の間は一
定の電流が流れて腐食が進行し、次の1日(24時間)
にはこの通電により拡径した孔食部に対しその表面積
(孔食部の半球の表面積)に見合った定電流が流れるも
のとして扱っている。
【0076】本発明では、前記の腐食反応の抵抗係数と
腐食生成物の抵抗係数とを、後述の如くしてモニター装
置によって実測された電流値から計算により算出する。
【0077】1.孔食進行モデル 防食被膜を有した金属部材が腐食する場合、何らかの原
因で防食被膜にピンホール状の破壊が生じ、該ピンホー
ルを中心として半球状に凹食(孔食)が図3,4の如く
徐々に進行する。そして図4に示す如く、錆(腐食生成
物)51が孔食部分を覆う。この錆51は、第1日目に
形成された第1層511と、第2日目に形成された第2
層512と、…………第n日目に形成された第n層51
nとからなる。
【0078】金属部材52の孔食深さを予測するための
モデルにおいては、前述の通り、孔食部分50は半球で
あるとし、また、錆51は正確に円盤形状であるとす
る。この半球の半径をrとし、錆の高さをhとする。
【0079】2.孔食抵抗値Rt 防食被膜の破壊によって金属部材の水系媒体(液)との
接液界面に電位差△Eが生じ、液と金属部材との間に電
流Itが流れる。この液と金属部材との間に流れる電流
は、錆の抵抗及び液と金属部材との接液界面の反応抵抗
を受ける。
【0080】これらの抵抗の和を孔食抵抗値Rtとする
と、前記の通り、 Rt=(反応抵抗)+(錆抵抗) …(1) である。この反応抵抗は、接液界面の面積(孔食部分5
0の半球の表面積)2πr2 に反比例する。従って、比
例定数をK1 とすると、反応抵抗はK1 /2πr2 と表
わされる。
【0081】また、錆抵抗は、錆の高さhに比例する。
錆の高さhは、(錆の体積)/(錆の底面積)であり、
錆の体積は、孔食された金属の総体積2πr3 /3(半
球の体積)に金属の密度dと錆の密度d’との比を乗じ
て求まる。
【0082】つまり、錆の高さhは、 h=((2/3)πr3 d/d’)/πr2 …(2) であり、錆の線抵抗比例係数をK2 とすると、錆抵抗は
2 ・hとなる。このK2 値は、水質環境や温度、流動
条件によって変わる。
【0083】この実施の形態ではK2 は1日毎に代わる
ものとして扱う。即ち、第1日目のK2 (第1層511
のK2 )をK21、第2日目のK2 (第1層511と第2
層512との積層物のK2 )をK22、………第n日目の
2 (第1層、第2層……及び第n層の積層物のK2
をK2nとしている。なお、錆の密度d’も実際には変化
する。そこで、第j日目の錆の線抵抗比例係数K2jをそ
の日の錆51j の全体の密度dj ’で除した値K2j/d
j ’をK2j’とおくことにする。
【0084】このK2j’を用いることにより、第j日目
における孔食抵抗値Rtj は前記(3)式の通り、 Rtj =(反応抵抗)+(錆抵抗) =K1 /(半球表面積)+K2j・ h =K1 /2πr2 +K2j・ ((2/3)πr3 d/dj ’) /πr2 =K1 /2πr2 +K2j’・(2/3)πr3 d/πr2 =K1 /2πr2 +K2j’・(2/3)r・d …(3j) となる。ただし K1 :比例係数すなわち、腐食反応の
抵抗係数(Ω・mm2)2j’:第j日目における錆51の比例係数すなわち錆
の抵抗係数(Ω/mm・(mg/mm3)) r :孔食の半径 d :鉄などの金属の密度(mg/mm3) なお、式(3j)の意味は、 Rtj =K1 /(アノード面積) +K2j’・(腐食金属量)/(孔食間口面積) …(4j) ということになる。
【0085】なお、腐食モニター(図2)においても金
属片32が金属部材52(図4)と同様に腐食して同様
な錆41を生じさせている。従って、この図2の腐食モ
ニターにおいても、Rtj は上記(4j)式と同様に、
アノード面積(即ち、金属片32の接液面積Sa )、孔
食間口面積(液絡部40の間口面積Sb )及び金属片3
2のj日間の腐食量Dj により次のように表わされる。
【0086】 Rtj =K1 /Sa +K2 ’・Dj /Sb …(4.5j) 3.腐食反応の抵抗及び錆の抵抗係数このK1 は直線分
極抵抗法、インピーダンス測定法、定電位分極測定法、
定電流分極測定法などにより求めることができる。K1
は、本試験に先立ち、本試験水と同じ水を用い、腐食モ
ニターをアノード、金属部材をカソードとして測定して
おき、この値を全本試験期間中一定として扱う。
【0087】K2j’は図2の局部腐食モニターにより求
めることができる。即ち、オーム則通りΔE=Ij ・R
tであり、ΔE、Ij は実測できるからRtj が求ま
る。式(4.5j)において右辺の面積Sa ,Sb は既
知であり、K1 は上記直線分極抵抗法等の測定法により
測定される。腐食量Dj は、腐食モニターの電流計38
に流れた電流値の積算値と金属原子量、価電数及びファ
ラデー定数より計算される。(この腐食量Dj の計算
は、次の(5)式のWj の計算と同じ計算方法にな
る)。従って、これらのSa ,Sb ,K1 及びDj
(4.5j)式に代入することにより、該(4.5j)
式からK2j’が求まる。
【0088】このようにして、腐食反応の抵抗係数K1
及び第j日目における腐食生成物(錆)の抵抗係数K2j
'が求まる。
【0089】4.孔食電圧ΔE、孔食電流Itから孔食
量の算出 Ij なる電流が1日間流れたときの孔食量Wj は次のよ
うにして求められる。 Wj =Ij ・(3600・24)・(M/Z・F) …(5) M:金属部材32を構成する鉄などの金属の原子量 F:ファラデー定数 Z:電価数(鉄の場合は2) 孔食が発生した時点から1日目(0〜24時間の間)は
平均してI1 なる電流が流れ、2日目(24時間〜48
時間の間)は平均してI2 なる電流が流れ、3日目(4
8時間〜72時間の間)はI3 なる電流が流れ、…j日
目にはIj なる電流が流れたものとすると、孔食開始か
らn日経過後の腐食総量Gn は前記の通り
【0090】
【数9】
【0091】となる。
【0092】このIj 即ちI1 ,I2 ,I3 ………は前
記K1 及びK2j’に基いて算出できる。
【0093】このI1 ,I2 ,…の算出方法を次に順次
に説明する。
【0094】 孔食発生時(時間t=0)における電
流I0 孔食発生時のアノード面積=Aとする。このAは極々微
小な値(例えば0.0001mm2 )とする。孔食深さ
0 =0とする。なお、このt=0の状態では(アノー
ド面積)=(孔食間口面積)=Aとなる。
【0095】Ij =ΔE/Rtj であり、前記式(4
j)より Rtj =K1 /(アノード面積)+K2j’・(腐食金属
量)/(孔食間口面積) であるから、
【0096】
【数10】
【0097】である。このt=0のときには、前記の通
り(アノード面積)=(孔食間口面積)=Aであり、
(腐食金属量)=0であるから、t=0のときの電流値
0 は次の(8j)式の通りとなる。
【0098】
【数11】
【0099】この(8j)式においてK1 、△Eは既知
であり、Aは所定値に設定されているから、この(8
j)式からI0 が求まる。
【0100】 孔食発生1日後(24時間後)。この
24時間は、
【0101】
【数12】
【0102】が一定で流れ続け、その結果、孔食部は半
径r1 になったものとする。
【0103】電流値I0 から計算されるこの1日の間の
腐食量W1 は次の(9)式の通りである。
【0104】 W1 =I0 ・(3600・24)・(M/Z・F) …(9) (M:金属の原子量、F:ファラデー定数)なお、この
1日間の腐食金属量は(2/3)πr1 3 dである。た
だし、d:金属の密度である。
【0105】腐食総量G1 =W1 であり、孔食部は半球
であるから、(孔食深さ)は(半球の半径)に等しい。
即ち、 孔食深さr1 =(3G1 /2πd)1/3 =(3W1 /2πd)1/3 …(10) である。
【0106】この(10)式のW1 に(9)式から計算
されるW1 の値を代入することにより、第1日(最初の
24時間)経過後の孔食深さr1 が求まる。
【0107】 孔食発生2日後(48時間後) この新たな24時間において、流れる電流I1 は、その
ときの孔食部の半径がr1 になっているため、(7)式
においてr=r1 とおくことにより、次の通りとなる。
【0108】
【数13】
【0109】前記(10)式からr1 が求まり、G
1 (=W1 )は(9)式から求まるから、この(11)
式より電流I1 が計算される。
【0110】孔食発生2日目(24時間〜48時間の
間)はこのI1 が1日間(24時間)一定で流れ続け
る。この1日間の腐食量W2 はW2 =I1 ・(3600
・24)・(M/Z・F)より計算される。そして、G
2 (=W2 +W1 )もこれから求まる。
【0111】一方、2日経過後の腐食総量G2 は G2 =W2 +W1 =(2/3)πr2 3d …(11.5) であるから、孔食深さr2 は次式により求められる。
【0112】 r2 =(3G2 /2πd)1/3 …(12) 孔食発生3日目は、同様にして次の(13j)式の
電流I2 が1日間(24時間)一定で流れ続け、その2
4時間の腐食量W3 は次の(13.5)式の通りとな
る。
【0113】
【数14】
【0114】 W3 =I2 ・(3600・24)・(M/Z・F) …(13.5) 前記(12)式からr2 が求まり、(11.5)式から
2 も求まるから、(13j)式よりI2 が求まる。そ
して、(13.5)式からW3 も求まる。
【0115】孔食発生3日後の腐食総量G3 =W3 +W
2 +W1 であるから、G3 が求まり、孔食深さr3 は次
式により求められる。
【0116】 r3 =(3G3 /2πd)1/3 …(14) 4日目以降においても、前日までの孔食深さからそ
の当日の電流値が求まる。そして、これにより、その当
日に生じる孔食量が計算される。
【0117】このように、r1 ,r2 ,r3 ………及び
0 ,I1 ,I2 ………を順次に計算することにより、
n日経過後の孔食深さを計算できる。
【0118】 なお、ある日の電流Im はその前日ま
でに生じた孔食部の接液面積(2πr2 m-1)及びその日
の錆51mの抵抗係数K2m 'によって決まるものであ
り、わざわざIm を計算しなくても、r1 ,r2 ,r3
……及びK21’,K22’,K23’………の値だけからn
日経過後の孔食深さを計算することができる。
【0119】これについて次に説明する。
【0120】孔食発生n日後においては、(n−1)日
目にIn-1 なる電流が1日間(24時間)にわたって一
定に流れ、この1日間で新たにWn なる量だけ腐食が進
行したことによって、腐食総量はGn となる。Wn =I
n-1 ・(3600・24)・(M/Z・F)であるか
ら、Gn は次の通りである。
【0121】
【数15】
【0122】この(22n)式にr1 ,r2 ,r3 …及
びK21’,K22’,K23’…の計算値を代入することに
よりGn が求まる。 ところで、Gn =(2/3)πrn 3 ・d …(23) であるから、 孔食深さrn =(3Gn /2πd)1/3 …(24) となる。(22n)式よりGn が計算されているから、
この(22n)式のGn 値を(24)式に代入すればr
n が計算される。なお、rn を一般式で表わすと、(2
4)式に(22)式を代入した次の(25n)式の通り
となる。
【0123】
【数16】
【0124】このように、r1 ,r2 ,r3 …を順次に
計算し、これを式(25)に代入して計算することによ
り任意のn日経過後の孔食深さrn を計算することがで
きる。
【0125】以上の説明では、孔食部が半球状で進行す
ると仮定した場合の計算方法を説明したが、孔食部が円
錐状やコンタクトレンズ状で進行する場合でも、同様の
考え方で計算することができる。
【0126】図5は半径Rの球の一部よりなる部分球状
に孔食部50が生成する場合を示す孔食部の断面であ
る。
【0127】孔食部50の深さをrとした場合、孔食部
50の間口の半径はarとなる。このaは、この実施の
形態ではrの変化にかかわらず一定であるとする。
【0128】この場合、 (アノード面積)=(部分球の表面積) =(a2 +1)πr2 (孔食間口面積)=(半径arの円の面積) =a2 πr2 (孔食部の体積)=(部分球の体積) =(3a2 +1)・πr3 /6 (腐食により錆となった金属(元素)の量) =(孔食部の体積)×(密度) =(3a2 +1)・πr3 ・d/6 ところで、前記式(19n)〜(25n)におけるΣの
対象式の分母の内容は (反応抵抗)+(錆抵抗) である。この(反応抵抗)はK1 /(アノード面積)す
なわちK1 /(a2 +1)πr2 である。
【0129】(錆抵抗)は、(錆の高さh)・K2 であ
り、これは、K2 を第j日目の錆の抵抗係数K2j’にお
きかえると、 [(腐食金属量)/(孔食間口面積)]・K2j’ すなわち [((3a2 +1)πr3 ・d/6)a2 πr2 ]・K
2j’=[(3a2 +1)r・d/6a2 ]・K2j’ となる。
【0130】従って、図8のように部分球型の孔食部の
場合のn日経過後の孔食深さrn は、次の(26n)式
の通りとなる。
【0131】
【数17】
【0132】なお、aについては予め腐食試験を行って
おき、生じた多数の孔について(間口半径)と(深さ)
の比を計算して平均することにより精度良く求まる。
【0133】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明
する。
【0134】実施例1 図1に示す試験装置を用いて試験を行なった。
【0135】熱交換器10の流入側ヘッダ11と流出側
ヘッダ12との間に32本の伝熱チューブ13が配設さ
れている。この伝熱チューブ13の周囲に冷却される液
が流通される。この伝熱チューブ13は、STB−35
製のものであり、長さ240mm、外径19mm、肉厚
1.6mmとなっている。
【0136】流入側ヘッダ11には、冷却塔14で冷却
された水がポンプ15によって供給される。流出側ヘッ
ダ12からの水は、配管17に設けられた局部腐食モニ
ター16を経て冷却塔14へ送られる。
【0137】局部腐食モニター16は複数個(この実施
例では5個。図1(a)には3個のみ図示されてい
る。)設置されている。
【0138】この局部腐食モニター16は、図1(b)
の通り、通水用の配管17に穿設された雌ねじ孔19に
螺着された略円筒状のボディー部20と、このボディー
部20に挿入された金属棒21と、この金属棒21を押
える金属製の栓体22とからなる。
【0139】このボディー部20の先端は直径2mmの
小孔よりなる液絡部23であり、この液絡部23にひき
つづく部分が直径2mmの液溜部24となっている。こ
の液溜部24内に直径3mm、長さ15mmの円柱状の
金属棒21が挿入されている。栓体22は、ボディー部
20に螺じ込まれており、金属棒21の抜け出しと水漏
れを防いでいる。
【0140】配管17の材質は任意であるが、ここでは
合成樹脂製とされている。ボディー部20は塩化ビニル
よりなる。金属棒21は、伝熱チューブ13と同じくS
TB−35製とされている。栓体22はSUS304製
である。栓体22は金属棒21に直に接しており、両者
は電気的に導通している。
【0141】各局部腐食モニター16の栓体22と前記
伝熱チューブ13とがリード線25で導通され、このリ
ード線25に電流計26が設けられている。この電流計
26の検出値が演算器(図示略)に入力されている。
【0142】これらの冷却塔14、熱交換器10及び局
部腐食モニター16を循環する冷却水の水質は次の間で
変動する。
【0143】 Mアルカリ度=200〜230mg・CaCO3 /1 カルシウム硬度=220〜265mg・CaCO3 /1 塩化物イオン=102〜108mg・CL- /1 FFZ=1.0〜1.7mg・Zn/1 全りん酸=4.9〜5.8mg・PO4 3- /1 SiO2 濃度=95〜97mg/1 このようにして各局部腐食モニターのリード線25を流
れるアノード電流をそれぞれ電流計26で377日間に
わたり測定した。そして、1日に1回電流計26の検出
値に基づいてK2j’を前記(4.5j)式に基づいて計
算した。このK2j’を(25n)式に代入して、孔食深
さrn を計算した。
【0144】また、上記測定結果から、前記特開平5−
215707号の方法に従って、アノード電流測定値を
孔食モデル式に代入して孔食深さを計算した。
【0145】なお、伝熱チューブ16を構成するSTB
−35のK1 は47000Ω・mm2 であった。また、
電価数Z=2,d=7.86mg/mm3 とした。な
お、A値(初期孔食のピンホールの面積)は0.000
1mm2 とした。このAの値は0.1mm2 や0.00
00001mm2 など桁を変えても孔食深さの計算値に
は殆ど影響しない。
【0146】これらの孔食深さの計算値と、伝熱チュー
ブ13を抜管して実測した孔食深さの測定値とを極値統
計することにより最大孔食深さを算出した。極値統計は
市販ソフト(腐食防食協会監修「EVAN」)を用いて
計算した。この結果を表1に示す。
【0147】
【表1】
【0148】以上の結果から次のことが明らかである。
即ち、特開平5−215707号の方法では、最大孔食
深さの実測値に対して大きな誤差があるのに対し、本発
明方法により得られた計算値は実測値に対する誤差がき
わめて小さい。
【0149】なお、この実施例では1日1回測定された
電流値によってK2j 'を求めているが、1日に2回以上
2j 'を求め、これらを平均して1日のK2j 'としても
良い。
【0150】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明の孔食深さ算
出方法によれば、熱交換器や配管の運転、通水を休止す
ることなく、非破壊にて、該熱交換器や配管の局部腐食
による任意の時点における孔食深さを、精度良く推定す
ることが可能とされる。
【0151】本発明の方法によれば、孔食深さを正確に
算出することで孔食の進行状況を当該設備の運転中にリ
アルタイムで容易かつ正確に推定することができること
から 適宜薬剤の投入量をコントロールして局部腐食の進
行を抑制できるようになる。
【0152】 局部腐食の進行状況から、余寿命の推
定が可能となる。
【0153】 運転停止時の検査が不要となる。
【0154】 局部腐食による貫通・漏えい事故を未
然に防止できるようになる。
【0155】等の効果が奏され、各種プラントの安全か
つ安定な操業、及び金属装置部材の寿命の延長を図るこ
とが可能とされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における試験装置を示す断面図であ
る。
【図2】従来のモニタリング方法を示す断面図である。
【図3】孔食モデルを示す断面図である。
【図4】孔食モデルを示す断面図である。
【図5】孔食モデルを示す断面図である。
【符号の説明】
10 熱交換器 13 伝熱チューブ 14 冷却塔 16 局部腐食モニター 21 金属棒 23,40 液絡部 24,34 液溜部 25,36 リード線 26,38 電流計 32 金属片
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 平野 昭英 東京都新宿区西新宿3丁目4番7号 栗田 工業株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水系媒体に接する熱交換器又は配管等の
    金属部材の孔食深さを算出する方法であって、 該水系媒体と小孔を介して連通する液溜部と、該液溜部
    内の液と接するように設けられた前記金属部材と同材質
    の金属片とを備え、該金属片の前記液溜部内の液と接す
    る面の面積が前記小孔の開口面積よりも大きいモニター
    装置を用い、 該金属片と前記金属部材とを電気的に接触させて、両者
    の間に流れる電流を測定して金属部材の孔食深さを算出
    する方法であって、 予め前記金属部材の腐食反応の抵抗係数を求めておくと
    共に、 前記金属部材に複数の前記モニター装置を設け、各モニ
    ター装置の電流値及び前記金属部材の腐食反応の抵抗係
    数に基いて前記金属部材の腐食生成物の抵抗係数を求
    め、 該腐食反応の抵抗係数と、腐食生成物の抵抗係数と、前
    記金属部材と水系媒体との接触により生じる電位差とに
    基いて孔食深さを算出する孔食深さ算出方法において、 各モニター装置の電流値を所定時間毎に検出し、この電
    流値によって前記腐食生成物の抵抗係数を求めるように
    したことを特徴とする孔食深さ算出方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003254931A (ja) * 2002-03-06 2003-09-10 Kurita Water Ind Ltd 局部腐食の評価方法及び抑制方法
JP2004069472A (ja) * 2002-08-06 2004-03-04 Kurita Water Ind Ltd 局部腐食の評価方法及び抑制方法
JP2010197116A (ja) * 2009-02-24 2010-09-09 Hitachi Plant Technologies Ltd ステンレス鋼の孔食診断方法、ステンレス鋼の孔食診断装置、ステンレス鋼を構造部材に用いた海水用ポンプの孔食診断方法及びステンレス鋼を構造部材に用いた海水ポンプの孔食診断装置

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