JPH10163566A - 自励発振型半導体レーザ素子 - Google Patents

自励発振型半導体レーザ素子

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JPH10163566A
JPH10163566A JP32163796A JP32163796A JPH10163566A JP H10163566 A JPH10163566 A JP H10163566A JP 32163796 A JP32163796 A JP 32163796A JP 32163796 A JP32163796 A JP 32163796A JP H10163566 A JPH10163566 A JP H10163566A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 動作寿命が長く、閾値の小さい安定した良好
な特性を有する自励発振型半導体レーザ素子を提供す
る。また、光ディスク装置のピックアップ用光源として
用いた際、レーザーの戻り光雑音を低減させ、高性能な
光ディスク装置を低コストで実現可能とする自励発振型
半導体レーザ素子を提供する。 【解決手段】 可飽和吸収層を備えた自励発振型半導体
レーザ素子において、可飽和吸収層における可飽和吸収
層を構成する半導体層の内で最小の禁制帯幅を有する半
導体層1の格子欠陥密度が、活性層を構成する半導体層
の内で最小の禁制帯幅を有する半導体層2の格子欠陥密
度の5倍以上であることを特徴とする自励発振型半導体
レーザ素子

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自励発振型半導体
レーザ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】光ディスク装置のピックアップ用光源と
して用いられる半導体レーザの戻り光雑音を低減するた
めに自励発振型半導体レーザダイオード(LD)が研究
されている。既に、レーザのpクラッド層内部に可飽和
吸収層を導入することによって、自励発振するレーザが
実現されている。
【0003】閾値の小さい安定した自励発振型レーザを
得るためには、可飽和吸収層の吸収波長がレーザの発振
波長とほぼ等しいこと、可飽和吸収層で発生するキャリ
アの寿命が短いこと、可飽和吸収層の吸収波長が安定し
ていることが重要である。
【0004】可飽和吸収層の吸収波長の制御に関して
は、例えば、1996年春季応用物理学関係連合講演会
の講演予稿集1024ページの26a−C−10に、
「赤色半導体レーザにおける自励発振特性の可飽和吸収
層構造依存性」と題する報告がある。そこでは、レーザ
発振時のバンドギャップ縮小効果を考慮して、発振波長
に対する可飽和吸収層の吸収波長の最適化が必要である
ことが示されている。
【0005】キャリア寿命の制御に関しては、可飽和吸
収層のpドーパント濃度を高くして発光再結合確率を増
大させる方法によりキャリア寿命を小さくしている。例
えば1995年春季応用物理学関係連合講演会の講演予
稿集1058ペ−ジの26p−ZA−5に、「可飽和吸
収層を用いた自励発振型赤色半導体レーザの設計」と題
する報告がある。そこでは、自励発振を持続させるため
には可飽和吸収層のpドーパント濃度を2×1018cm
-3以上にする必要があることが示されている。
【0006】このように可飽和吸収層のドーパント濃度
を高くすると、ドーパントの拡散が生じやすくなる。特
に、AlGaInP系材料を用いた半導体LDでは、p
ドーパントにZnを用いる場合が多く、GaInP可飽
和吸収層のZnのドーパント濃度を高くすると、結晶成
長中にGaInP可飽和吸収層内や周辺のAlGaIn
P層へZnが拡散することが知られている。
【0007】GaInP層やAlGaInP層には、自
然超格子なるIII族原子配列の秩序構造が自発的に形成
されており、これらの材料のバンドギャップエネルギは
無秩序構造のものより小さくなっていることが知られて
いる。これらの秩序構造層にZnが拡散すると、この秩
序構造が無秩序化されるため、GaInP層やAlGa
InP層のエネルギバンドギャップが増大し、可飽和吸
収層の吸収波長が変化する。可飽和吸収層にGaInP
/AlGaInP量子井戸構造を用いた場合には、Zn
拡散により量子井戸構造自体が無秩序化され、吸収波長
の変化はより大きくなる。
【0008】可飽和吸収層の吸収波長の安定化に関して
は、例えば、特開平7−263794号公報に自励発振
型半導体レーザ素子の発明がある。そこでは、可飽和吸
収層のZnドーパント濃度を3×1018cm-3〜1×1
19cm-3にすることで可飽和吸収層を無秩序化するこ
とが提案されている。
【0009】特に有用な波長650nm以下のAlGa
InP系の半導体レーザでは、材料の制限からキャリア
の閉じ込め効果が弱く、電子が活性層からpクラッド層
にオーバーフローしやすい。特に動作温度が上昇する
と、電子のオーバーフローが増し、閾電流値が増大す
る。従来の自励発振型半導体レーザの可飽和吸収層はp
クラッド層中に設けられているため、可飽和吸収層が電
子のオーバーフローを助長させやすい。また、オーバー
フローした電子は可飽和吸収層に捕らえられるため、可
飽和吸収層の吸収波長は変化し、吸収量が減り、安定し
た自励発振動作が得られない。
【0010】オーバーフローが生じると、光出力を維持
するために活性層のキャリア密度が上昇する。一般に、
発光再結合によるキャリア寿命は、キャリア密度に依存
し、キャリア密度が増大するとキャリア寿命は低減す
る。特にレーザ発振が生じる時は、活性層のキャリア密
度は非常に高くなっているため、活性層のキャリア寿命
は非常に短くなり、可飽和吸収層のキャリア寿命に近づ
いている。結局、電子のオーバーフローにより活性層の
キャリア密度が増大し、活性層のキャリア寿命の方が可
飽和吸収層より短くなって、自励発振が停止してしま
う。
【0011】このような電子のオーバーフローを低減さ
せるための従来の技術として、多重量子障壁(MQB)
構造を、活性層と可飽和吸収層との間のpクラッド層中
に設けることが行われている。これは電子波の多重反射
の干渉効果によって、電子に対する実効的なヘテロ障壁
を増大させる試みである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来技
術の自励発振型半導体レーザには、閾値が高い、温度特
性が低い、動作寿命が短いといった問題がある。従来技
術では、可飽和吸収層に高濃度のpドーピングを行って
いる。これが、吸収波長の制御性や安定性を損なう原因
になっている。
【0013】上記従来の発明においても、可飽和吸収層
のドーパント濃度は3×1018cm -3以上と非常に高い
値であり、それに隣接するpクラッド層のドーパント濃
度との差が大きいため、Znが拡散する。それによって
可飽和吸収層のドーパント濃度が変化したり、可飽和吸
収層とpクラッド層からなる量子井戸構造が変化したり
する。特に、可飽和吸収層が多重量子井戸構造の場合
は、Znの拡散により多重量子井戸構造自体が無秩序化
してしまう虞がある。そのような現象は成長中だけでな
く、LD素子として動作している最中にも生じることが
報告されている。例えば素子の閾値が上昇したり、自励
発振が消滅したりする。これは、可飽和吸収層の吸収波
長が変化するためであると考えられている。また、可飽
和吸収層のドーパント濃度が高いため、発光層である活
性層にまでドーパントの拡散が生じ、発光層の結晶品質
が低下してしまい、上述の問題が生じることも考えられ
る。
【0014】一方、電子のオーバーフローを低減させる
ため、MQB構造を、活性層と可飽和吸収層との間のp
クラッド層中に設けることが行われているが、電子のコ
ヒーレンス長はMQBの量子井戸の2、3周期分しかな
く、その効果は現れにくい。また、オーバーフローした
電子がMQB構造のウエル層に蓄積し、MQBのバンド
構造が変化してしまうという問題もある。結局、pクラ
ッド層間に設けられた可飽和吸収層は、電子のオーバー
フローを助長させること、それによって可飽和吸収層の
吸収波長と吸収量が減り、安定した自励発振動作が得ら
れないという問題を引き起こす。また、可飽和吸収層は
pクラッド層間のみに設けられることが多く、この時、
活性層付近に閉じ込められる光強度分布が活性層の中心
に関して対称にならないため、光スポットが歪むという
問題を起こす。
【0015】そこで本発明の目的は、上記問題を解決
し、動作寿命が長く、閾値の小さい安定した良好な特性
を有する自励発振型半導体レーザ素子を提供することで
ある。また、光ディスク装置のピックアップ用光源とし
て用いた際、レーザーの戻り光雑音を低減させ、高性能
な光ディスク装置を低コストで実現可能とする自励発振
型半導体レーザ素子を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的を達成するために種々の検討を重ねた結果、本発明を
完成した。
【0017】第1の本発明は、可飽和吸収層を備えた自
励発振型半導体レーザ素子において、少なくとも1つの
可飽和吸収層における可飽和吸収層を構成する半導体層
の内で最小の禁制帯幅を有する少なくとも1つの半導体
層1の格子欠陥密度が、活性層を構成する半導体層の内
で最小の禁制帯幅を有する少なくとも1つの半導体層2
の格子欠陥密度の5倍以上であることを特徴とする自励
発振型半導体レーザ素子に関する。
【0018】第2の発明は、伝導帯あるいは価電子帯と
のエネルギ準位差が0.5eV以上である深いエネルギ
準位を有する格子欠陥に関して、半導体層1の格子欠陥
密度が半導体層2の格子欠陥密度の10倍以上である第
1の発明の自励発振型半導体レーザ素子に関する。
【0019】第3の発明は、半導体層1のドーパント濃
度が1×1017〜1×1018cm-3である第1又は第2
の発明の自励発振型半導体レーザ素子に関する。
【0020】第4の発明は、半導体層1が完全に無秩序
化したときの禁制帯幅Egに対して、半導体層1の禁制
帯幅Eg1が、Eg≧Eg1>Eg−10meVなる程度
に無秩序化している第1、第2又は第3の発明の自励発
振型半導体レーザ素子に関する。
【0021】第5の発明は、半導体層1のドーパント濃
度と、可飽和吸収層に接して設けられているクラッド層
のドーパント濃度とが等しい第1〜第4のいずれかの発
明の自励発振型半導体レーザ素子に関する。
【0022】第6の発明は、半導体層1にAlを含む材
料を用いる第1〜第5のいずれかの発明の自励発振型半
導体レーザ素子に関する。
【0023】第7の発明は、可飽和吸収層が単一量子井
戸構造または多重量子井戸構造を有する第1〜第6のい
ずれかの発明の自励発振型半導体レーザ素子に関する。
【0024】第8の発明は、可飽和吸収層が、そのウエ
ル層とバリア層に反対符号の格子整合歪を有する歪補償
型多重量子井戸構造を有する第1〜第6のいずれかの発
明の自励発振型半導体レーザ素子に関する。
【0025】第9の発明は、可飽和吸収層の構造が、ド
ーピングをしない時の可飽和吸収層の最低遷移エネルギ
と活性層の最低遷移エネルギとの差が10meV以内に
制御された構造である第1〜第8のいずれかの発明の自
励発振型半導体レーザ素子に関する。
【0026】第10の発明は、n型クラッド層間にのみ
可飽和吸収層が設けられている第1〜第9のいずれかの
発明の自励発振型半導体レーザ素子に関する。
【0027】第11の発明は、可飽和吸収層が片方の導
電型のクラッド層間のみに設けられている自励発振型半
導体レーザ素子であって、可飽和吸収層が設けられてい
ない他方の導電型のクラッド層間に新たに半導体層を設
け、その半導体層の層厚とバンドギャップが、層に垂直
な方向(層厚方向)の活性層付近の光分布が活性層の中
心に関してほぼ線対称になり且つその半導体層がレーザ
光を吸収しないように設定されていることを特徴とする
自励発振型半導体レーザ素子に関する。
【0028】第12の発明は、基板を任意の面方位のG
aAs基板とし、クラッド層、活性層、可飽和吸収層と
して、(AlxGa1-xyIn1-yP(0≦x≦1、0≦
y≦1)なる材料を用いる第1〜第11のいずれかの発
明の自励発振型半導体レーザ素子に関する。
【0029】第13の発明は、基板を任意の面方位のサ
ファイア基板とし、クラッド層、活性層、可飽和吸収層
として、(AlxGa1-xyIn1-yP(0≦x≦1、0
≦y≦1)なる材料を用いる第1〜第11のいずれかの
発明の自励発振型半導体レーザ素子に関する。
【0030】
【発明の実施の形態】自励発振動作を実現するために
は、活性層と可飽和吸収層の吸収係数、微分利得、キャ
リア寿命等の物性値を制御を行うことが必要である。図
20に、自励発振動作を実現するための、活性層と可飽
和吸収層の微分利得比とキャリア寿命比の満たすべき条
件図の一例を示す。τactとτsaは、それぞれ活性層と
可飽和吸収層のキャリア寿命を表し、gactとgsaは、
それぞれ活性層と可飽和吸収層の微分利得を表す。これ
は相対非飽和吸収定数(β)が−3、吸収領域体積比
(h)が0.1の典型的な場合である。
【0031】図20に示されるように、可飽和吸収層を
有する半導体レーザ素子では、微分利得比とキャリア寿
命比の値に応じて、双安定領域と安定発振領域と自励発
振領域の、発振動作の異なる3つの領域がある。自励発
振動作は、図20の自励発振領域に属する、活性層と可
飽和吸収層の微分利得とキャリア寿命のときに実現す
る。図20中の矢印は、可飽和吸収層のキャリア寿命を
減少させると、安定発振領域から自励発振領域に変化す
ることを示している。
【0032】図20で示される上記の内容を定性的に述
べると、自励発振動作を実現する上では、可飽和吸収層
の微分利得が活性層の微分利得より大きいこと、可飽和
吸収層のキャリア寿命が活性層のキャリア寿命より小さ
いことが好ましいと言える。
【0033】本発明の自励発振型半導体レーザ素子で
は、前者の条件は、活性層の遷移エネルギに対して可飽
和吸収層の遷移エネルギを最適に調整することで満たさ
れる。後者の条件は、可飽和吸収層における浅い順位の
ドーピングによるキャリアの発光再結合によるキャリア
寿命の低減に加えて、可飽和吸収層あるいはその界面に
深いエネルギ順位の不純物や格子欠陥を導入してキャリ
アの非発光再結合による捕獲確率を増大させ、キャリア
寿命を低減させることで達成される。
【0034】本発明の自励発振型半導体レーザでは、可
飽和吸収層の遷移エネルギはドーパント濃度を制御する
ことで微妙に調整することができ、それとは独立に、可
飽和吸収層に格子欠陥を導入することで可飽和吸収層の
キャリア寿命を低減させることが可能になる。
【0035】図21は、(AlXGa1-X0.5In0.5
バルクのキャリア寿命τとフォトルミネセンス(PL)
強度のAl組成X依存性を示すグラフである。図21か
ら、キャリア寿命とPL強度は、Al組成が増加すると
共に減少することがわかる。これは、Al組成の増加と
共に酸素などの深いエネルギ順位を形成する不純物の濃
度が増加し、非発光再結合確率が増加するためである。
特に、Al組成が小さい場合は、Al組成に正比例して
酸素などの不純物が取り込まれ、深いエネルギ順位を形
成する。図21から、Al組成が小さい(0.2以下)
AlGaInPバルクにおいては、キャリア寿命とPL
強度は、Al組成の増加と共に同じ割合で減少している
ことがわかる。すなわちPL強度が1桁減少する時にキ
ャリア寿命も1桁減少している。このように、深いエネ
ルギ順位を形成する場合には、PL強度とキャリア寿命
の間には強い相関がある。
【0036】図22は、(Al0.7Ga0.30.5In0.5
Pバルクの深いエネルギ準位(D1、D2、D3)の欠陥
密度とPL強度の成長温度依存性を表すグラフである。
欠陥準位の深さは0.45eV(D1)、0.50eV
(D2)、1.3eV(D3)であり、キャリアの捕獲断
面積はそれぞれ6×10-13cm2(D1)、1×10- 15
cm2(D2)、2×10-10cm2(D3)である。図2
2から、深い準位D2とD3の欠陥密度は成長温度が低く
なるに従って増加するが、D1の欠陥密度はそれほど変
わらない。欠陥密度はD1が最も高いが、D3はキャリア
の捕獲断面積は極めて大きい。従って、D3の欠陥密度
が増加すると、大半のキャリアはD3の欠陥準位に捕獲
されて非発光再結合するため、PL強度が減少すると解
釈できる。図22では、成長温度が700℃から660
℃に低下すると、D3の欠陥密度は1桁増加し、PL強
度は1桁減少している。よって、上で述べたようにPL
強度が1桁減少するとキャリア寿命は1桁減少すると考
えると、D3の欠陥密度が1桁増加するとキャリア寿命
は1桁減少することがわかる。したがって、キャリア寿
命の低減に有効なのは、伝導帯(あるいは価電子帯)と
のエネルギ準位差が0.5eV以上である深いエネルギ
準位を有する格子欠陥の密度を増大させることであるこ
とがわかる。また、このような深い格子欠陥密度の増加
量は、PL強度の低下量で評価できる。
【0037】本発明の自励発振型半導体レーザでは、可
飽和吸収層の格子欠陥密度が、活性層の格子欠陥密度の
5倍以上である特徴を有するため、可飽和吸収層の非発
光再結合によるキャリア寿命が活性層の1/5以下にな
ることが期待でき、より安定な自励発振型半導体レーザ
の実現が可能となる。
【0038】あるいは本発明の自励発振型半導体レーザ
では、特に、伝導帯あるいは価電子帯とのエネルギ準位
差が0.5eV以上である深いエネルギ準位を有する格
子欠陥に関して、可飽和吸収層の格子欠陥密度が、活性
層の格子欠陥密度の10倍以上である特徴を有するた
め、可飽和吸収層の非発光再結合によるキャリア寿命が
活性層の1/10以下になることが期待でき、さらに安
定な自励発振型半導体レーザの実現が可能になる。
【0039】あるいは本発明の自励発振型半導体レーザ
素子は、可飽和吸収層の欠陥が増大するような成長条件
で形成されるため、可飽和吸収層のドーパント濃度が1
×1017〜1×1018cm-3であっても、欠陥によるキ
ャリア捕獲量がドーピングした不純物によるキャリア捕
獲量を補うため、可飽和吸収層のキャリアの寿命は小さ
くなり、自励発振が可能である。
【0040】あるいは本発明の自励発振型半導体レーザ
素子は、その可飽和吸収層のドーパント濃度が1×10
17〜1×1018cm-3なる特徴を有するため、ドーパン
トが活性層に拡散してクラッド層や活性層の結晶品質を
劣化させる、あるいはpn接合位置が活性層から離れて
レーザ発振しなくなる、などの問題が生じない。
【0041】あるいは本発明では、上記の特徴に加えて
可飽和吸収層が無秩序化している特徴を有するため、ド
ーパントの拡散による無秩序化により可飽和吸収層の吸
収波長が変化することがない。
【0042】あるいは本発明では、上記の特徴に加えて
可飽和吸収層のドーパント濃度と、可飽和吸収層に接し
て設けられているクラッド層のドーパント濃度とが等し
いという特徴を有するため、ドーパントの拡散やそれに
伴う過剰濃度ドーピングによるクラッド層の品質の劣化
を防ぐことができる。なお、本発明で用いる欠陥数が増
大するような成長条件を、可飽和吸収層の成長時にのみ
用いれば、クラッド層の品質は良好に保てる。
【0043】あるいは本発明では、上記の特徴に加えて
可飽和吸収層にAlを含む材料を用いる特徴を有するた
め、結晶成長時にAlに伴って混入する酸素不純物が形
成する深いエネルギ準位でキャリアの再結合が促進さ
れ、キャリア寿命がさらに低減される。
【0044】あるいは本発明では、上記の特徴に加えて
可飽和吸収層が単一または多重量子井戸構造を有する特
徴を持つため、複数の量子井戸界面に形成される深い界
面エネルギ準位でキャリアの再結合が促進され、キャリ
ア寿命がさらに低減される。量子井戸構造は量子井戸幅
を精密に制御することにより、可飽和吸収層の吸収波長
を数meVの精度で制御できるので有利である。
【0045】あるいは本発明では、上記の特徴に加えて
可飽和吸収層に歪補償型多重量子井戸構造を用いる特徴
を有するため、界面欠陥によりキャリア寿命がさらに低
減される。
【0046】あるいは本発明では、上記の特徴に加えて
量子井戸構造の可飽和吸収層において、可飽和吸収層の
ドーパント濃度が1×1017〜1×1018cm-3に抑え
られている特徴、あるいは可飽和吸収層とpクラッド層
のドーパント濃度が等しい特徴を有するため、ドーパン
トの拡散が生じにくい。したがって、ドーパントの拡散
により量子井戸構造が消失または変形しにくいので、可
飽和吸収層の吸収波長を安定させる作用がある。また、
可飽和吸収層の吸収波長がレーザの発振波長とほぼ等し
くなるように容易にかつ高精度で設計できる。
【0047】あるいは本発明では、上記の特徴に加えて
可飽和吸収層の構造が、ドーピングをしない時の可飽和
吸収層の遷移エネルギと活性層の遷移エネルギとの差が
10meV以内に制御された構造である特徴を有する。
すなわち、例えば活性層が多重量子井戸構造である場
合、活性層と同じ構造で井戸数が異なる可飽和吸収層を
成長させ、可飽和吸収層のドーパント濃度を調整して、
吸収波長を自励発振に最適な値にし、それとは独立に可
飽和吸収層の欠陥密度を増やしてキャリア寿命を制御す
る。アンドープの可飽和吸収層の量子井戸構造が活性層
と同じなので、再現性よく作製できる利点がある。
【0048】実用上注目されている発振波長650nm
以下のAlGaInP系のLDでは、ポテンシャルバリ
アによるキャリアの閉じ込め効果が小さいため、活性層
に注入された電子がpクラッド層へオーバーフローしや
すい。
【0049】図23は、pクラッド層間に可飽和吸収層
がある従来の自励発振型半導体レーザ素子の活性層付近
のバンド構造の模式図である。この場合は、電子(2305)
が可飽和吸収層(2304)に引張られてpクラッド層(230
2)へオーバーフロー(2306)しやすい。オーバーフローが
生じると、光出力を維持するためには、活性層のキャリ
ア密度が上昇する。一般にキャリア寿命はキャリア密度
に依存し、キャリア密度が増大するとキャリア寿命は低
減する。特にレーザ発振が生じる時は、活性層のキャリ
ア密度は非常に高くなっているため、活性層のキャリア
寿命は非常に短くなり、可飽和吸収層のキャリア寿命に
近づいてくる。最終的には、電子のオーバーフローが大
きくなると、活性層のキャリア寿命の方が短くなって、
自励発振が停止してしまう。
【0050】さらに、pクラッド層間に可飽和吸収層が
ある場合は、オーバーフローした電子は可飽和吸収層に
注入される。可飽和吸収層のキャリア密度が増加する
と、吸収波長が変化し、吸収量も減り、安定した自励発
振動作が得られない。
【0051】図24は、本発明の自励発振型半導体レー
ザ素子の活性層付近のバンド構造の模式図である。本発
明では、前記の可飽和吸収層に欠陥を導入しキャリア寿
命を制御する特徴に加えて、nクラッド層間にのみ可飽
和吸収層が設けられている特徴を有する。nクラッド層
間に設けられた可飽和吸収層での少数キャリアは正孔
(ホール)である。正孔は電子より数十倍も質量が大き
いため、活性層からオーバーフローしにくい。したがっ
て、nクラッド層間に設けられた可飽和吸収層は、pク
ラッド層間に設けられた可飽和吸収層に比べて、キャリ
アのオーバーフローを助長させ難く、可飽和吸収層にキ
ャリアが蓄積され難い。それによって可飽和吸収層の吸
収波長は安定し、温度特性の良好な自励発振動作(例え
ば60℃以上の比較的高温における自励発振動作)が得
られる。
【0052】本発明の自励発振型半導体レーザは、上記
のnクラッド層間に可飽和吸収層が設けられた特徴に加
えて、可飽和吸収層が設けられていないpクラッド層間
に新たに半導体層(光分布調整層)を設け、その光分布
調整層の層厚とバンドギャップが、層に垂直な方向の活
性層付近の光分布が活性層の中心に関してほぼ線対称に
なり、かつその光分布調整層がレーザ光を吸収しないよ
うに設定されている特徴を有する。図15は、光分布調
整層を設けた本発明の自励発振型半導体レーザの活性層
付近の伝導帯エネルギと光強度分布を示す図である。こ
のため、本発明の半導体レーザ素子内部の光強度分布
は、可飽和吸収層が片方の導電型のクラッド層にのみ設
けられている従来の半導体レーザ素子内部の光強度分布
と比べて、歪がすくない。集光ビーム形状はレーザ内部
の光強度分布を反映するので、歪みの少ない集光ビーム
形状が得られる。このため、本発明の自励発振型半導体
レーザ素子は、温度特性の良好な自励発振動作と歪みの
少ない集光ビーム形状を両立させることができる。
【0053】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに説明する
が、本発明はこれらに限定するものではない。
【0054】実施例1 図1は、本発明の第1の実施例であるAlGaInP系
の自励発振型半導体レーザ素子の断面構成図である。こ
の素子は、630nm帯の赤色レーザ素子であり、n電
極(101)、n−GaAs基板(102)、層厚300nmのn
−GaAsバッファ層(103)、層厚100nmのn−G
aInPバッファ層(1O4)、層厚800nmの(Al0.7
Ga0.30.5In0.5Pなる組成を有するn−AlGa
InPクラッド層(105)、層厚50nmの(Al0.5Ga
0.50.5In0.5Pなる組成を有するAlGaInP光
閉じ込め層(106)、4つのウエル層を有する量子井戸構
造の多重量子井戸活性層(107)、層厚50nmの(Al
0.5GaO.50.5InO.5Pなる組成を有するAlGaI
nP光閉じ込め層(108)、層厚100nmの(Al0.7
0.3O.5In0.5Pなる組成を有するp−AlGaI
nPクラッド層(109)、可飽和吸収層(110)、層厚100
0nm(メサ脇クラッド層厚300nm)の(Al0.7
Ga0.30.5In0.5Pなる組成を有するp−AlGa
InPクラッド層(111)(メサ幅約5μm)、層厚70
0nmのn−GaAsブロック層(112)、層厚100n
mのGa0.5In0.5Pなる組成のp−GaInPコンタ
クト層(113)、層厚200nmのp−GaAsコンタク
ト層(114)及びp電極(115)から構成される。
【0055】以下に本実施例の素子の各層のドーパント
濃度について述べる。n−GaAsバッファ層(103)、
n−GaInPバッファ層(104)、n−AlGaInP
クラッド層(105)及びn−GaAsブロック層(112)のド
ーパント濃度は5×1017cm -3とした。p−AlGa
InPクラッド層(109、111)のドーパント濃度は8×
1017cm-3とした。p−GaInPコンタクト層(11
3)のドーパント濃度は2×1018cm-3、p−GaAs
コンタクト層(114)のドーパント濃度は5×101 8cm
-3とした。AlGaInP光閉じ込め層(106、108)及び
多重量子井戸活性層(107)はアンドープ層とした。
【0056】図2に、多重量子井戸活性層(107)の断面
構成図を示す。多重量子井戸活性層は、層厚10nmの
Ga0.58In0.42Pウエル層(202)と層厚4nmの(A
0.5Ga0.5O.48In0.52Pバリア層(201)から構成
され、4つのウエル層を有するGaInP/AlGaI
nP量子井戸構造を有する。また、この多重量子井戸活
性層は、GaInPウエル層(202)に0.5%の引張歪
を有し、AlGaInPバリア層(201)に0.3%の圧
縮歪を有する、アンドープの歪補償型多重量子井戸構造
を持つ。
【0057】図3に、可飽和吸収層(110)の断面構成図
を示す。可飽和吸収層(110)は、層厚11nmのp−G
0.58In0.42Pウエル層(302)と層厚4nmのp−
(Al0.7Ga0.30.48In0.52Pバリア層(301)から
構成され、2つのウエル層を有するp−GaInP/A
lGaInP量子井戸構造を有する。この可飽和吸収層
は、p−GaInPウエル層(302)に0.5%の引張歪
を有し、p−AlGaInPバリア層(301)に0.3%
の圧縮歪を有する、歪補償型多重量子井戸構造を持つ。
また、この可飽和吸収層のドーパント濃度は2×1018
cm-3とした。
【0058】本実施例の素子は、可飽和吸収層(110)の
p−GaInPウエル層(302)の格子欠陥密度が、多重
量子井戸活性層(107)のGaInPウエル層(202)の格子
欠陥密度の5倍以上であること、可飽和吸収層(110)が
二重量子井戸構造を持つこと、そのウエル層とバリア層
に反対符号の格子整合歪を有する歪補償型多重量子井戸
構造を持つこと、多重量子井戸活性層(107)の遷移エネ
ルギとアンドープの可飽和吸収層(110)の遷移エネルギ
が等しく設定されていることを特徴とする。また、p−
AlGaInPクラッド層(111)の層厚は、可飽和吸収
層の光閉じ込め係数が自励発振に必要な値を満たすよう
に設定されている。
【0059】可飽和吸収層(110)のGaInPウエル層
の格子欠陥密度を活性層(107)のGaInPウエル層の
格子欠陥密度の5倍以上とするためには、ガスソースM
BE法を用いた場合では、活性層のGaInPウエル層
(202)を成長させた時のV族/III族比と同じV族/III
族比で、活性層の成長温度より40℃以上低い温度で可
飽和吸収層のn−GaInPウエル層(302)を成長させ
ればよい。本発明の自励発振型半導体レーザ素子は、ガ
スソースMBE法だけでなくMOVPE法など他の成長
方法でも実施できる。
【0060】以下に、本実施例の自励発振型半導体レー
ザ素子の成長方法の一例として、ガスソースMBE法を
用いた場合を述べる。III族原料は固体金属、V族原料
はAsH3、PH3ガスを用いる。pドーパントはBe、
nドーパントはSiを用いる。ガスソ−スMBE法では
pドーパントに拡散の少ないBeを容易に用いることが
できる。
【0061】図4は、本実施例のAlGaInP系自励
発振型半導体レーザ素子の活性層付近の伝導帯のバンド
構造、および相対欠陥密度と成長温度のプロファイルを
示す図である。GaInP及びAlGaInPの成長
は、成長速度1μm/h、成長時のPH3流量は4sccm
の条件で行った。GaInP/AlGaInPの多重量
子井戸活性層(107)は、最大のPLピ−ク強度が得られ
る540℃の成長温度で成長させた。
【0062】可飽和吸収層(110)のp−GaInPウエ
ル層(302)は500℃の成長温度で成長させ、p−Al
GaInPバリア層(301)は540℃の成長温度で成長
させた。最初のp−GaInPウエル層(302)を成長す
る直前に、基板表面にPのみ供給し、かつGa、Inの
供給を中断した状態を3分間保ち、その間に基板温度を
40℃だけ低下させた。可飽和吸収層のGaInP/A
lGaInPの多重量子井戸のすべての界面では同様に
3分間の界面待機を行った。可飽和吸収層の最後のp−
GaInPウエル層(302)の成長直後には、3分間の界
面待機中に基板温度を40℃上げて、540℃でp−A
lGaInPクラッド層(111)を成長させた。3分間の
界面待機を行うと、界面に炭素や酸素などの不純物を吸
着するので、界面での深いエネルギ準位が形成され、キ
ャリア寿命の低減に効果的である。
【0063】反射高速電子回折(RHEED)装置を用
いた成長表面の観察において、活性層のGaInPウエ
ル層(202)の成長時には、(2×1)のRHEEDパタ
ーンが得られ、可飽和吸収層のp−GaInPウエル層
(302)の成長時には、(2×2)のRHEEDパターン
が得られ、成長時の表面再構成構造がそれぞれ異なるた
め、それを目安に再現性よく成長できた。
【0064】実施例2 第2の実施例の自励発振型半導体レーザ素子は、可飽和
吸収層(110)のp−GaInPウエル層(302)において伝
導帯あるいは価電子帯とのエネルギ準位差が0.5eV
以上である深いエネルギ準位を有する格子欠陥に関し
て、可飽和吸収層のp−GaInPウエル層(302)の格
子欠陥密度が、活性層(107)のGaInPウエル層(202)
の格子欠陥密度の10倍以上であり、かかる構成以外は
実施例1の自励発振型半導体レーザ素子と同様な構造と
した。
【0065】本実施例においては、実施例1と同じ成長
速度とV族流量で、GaInP/AlGaInPの多重
量子井戸活性層(107)を最大のPLピ−ク強度が得られ
る540℃の成長温度で成長させ、かつ可飽和吸収層(1
10)のp−GaInPウエル層を480℃の低い成長温
度で成長させた。活性層(107)のGaInPウエル層(20
2)の成長時のRHEEDパタ−ンは(2×1)、可飽和
吸収層(110)のp−GaInPウエル層(302)の成長時の
RHEEDパタ−ンは(1×1)に近い(2×2)とな
ることを目安に再現性よく成長できた。
【0066】実施例3 第3の実施例の自励発振型半導体レーザ素子は、可飽和
吸収層(110)のp−GaInPウエル層とp−AlGa
InPバリア層において伝導帯あるいは価電子帯とのエ
ネルギ準位差が0.5eV以上である深いエネルギ準位
を有する格子欠陥に関して、可飽和吸収層のp−GaI
nPウエル層とp−AlGaInPバリア層の格子欠陥
密度が、それぞれ活性層(107)のGaInPウエル層と
AlGaInPバリア層の格子欠陥密度の10倍以上で
あり、かかる構成以外は実施例2の自励発振型半導体レ
ーザ素子と同様な構造とした。
【0067】可飽和吸収層(110)のAlGaInPバリ
ア層にキャリアの波動関数がしみ出しているので、キャ
リアがAlGaInPバリア層の欠陥準位を介して非発
光再結合し、キャリア寿命の低減に効果がある。
【0068】図5は、本実施例のAlGaInP系自励
発振型半導体レーザ素子の活性層付近の伝導帯のバンド
構造、および相対欠陥密度と成長温度のプロファイルを
示す図である。本実施例においては、多重量子井戸活性
層(107)を、実施例1と同じ成長速度とV族流量で、最
大のPLピーク強度が得られる540℃の成長温度で成
長させた。
【0069】可飽和吸収層は、その全体を、量子井戸界
面では3分間の界面待機時間を設けて、480℃の低い
成長温度で成長させ、続いてp−クラッド層(111)を5
40℃で成長させた。
【0070】活性層のGaInPウエル層とAlGaI
nPバリア層の成長時のRHEEDパタ−ンは(2×
1)、可飽和吸収層のGaInPウエル層とAlGaI
nPバリア層の成長時のRHEEDパターンは(1×
1)に近い(2×2)となることを目安に再現性よく成
長できた。
【0071】実施例4 第4の実施例の自励発振型半導体レーザ素子は、可飽和
吸収層(110)のp−GaInPウエル層のドーパント濃
度が9×1017cm-3であり、1×1018cm -3以下に
抑えられていること以外は実施例3の自励発振型半導体
レーザ素子と同様な構造とした。可飽和吸収層のp−G
aInPウエル層は、ドーパント濃度が9×1017cm
-3であっても、同層に導入した格子欠陥により、キャリ
アの寿命が小さい自励発振型半導体レーザ素子が得られ
る。
【0072】実施例5 第5の実施例の自励発振型半導体レーザ素子は、可飽和
吸収層(110)とp−AlGaInPクラッド層(109、11
1)のドーパント濃度が8×1017cm-3であること以外
は実施例4の自励発振型半導体レーザ素子と同様な構造
とした。本実施例は、実施例4の構成に加えて、可飽和
吸収層のpドーパント濃度が1×1018cm-3以下に抑
えられていること、可飽和吸収層に接して設けられてい
るクラッド層のp−AlGaInPクラッド層(109、11
1)とのドーパント濃度が等しいことを特徴とする。
【0073】本実施例は、可飽和吸収層(110)内の量子
井戸構造中のドーパント濃度が一定であり、可飽和吸収
層を挟むクラッド層(109)とクラッド層(111)とのドーパ
ント濃度差がないため、pドーパントの拡散が生じにく
い。
【0074】実施例6 第6の実施例の自励発振型半導体レーザ素子は、GaI
nPウエル層が完全に無秩序化した時の禁制帯幅Egに
対して、可飽和吸収層(110)のp−GaInPウエル層
(302)のアンドープでの禁制帯幅Eg1が、Eg≧Eg1
>Eg−10meVなる程度に無秩序化していること以
外は実施例5の自励発振型半導体レーザ素子と同様な構
造とした。
【0075】ガスソースMBE法では、成長温度がMO
VPE法に比べて100℃程度低いため、秩序構造がで
きにくい傾向がある。(001)GaAs基板上にガス
ソ−スMBE法で成長したGaInP層の禁制帯幅Eg
2は、Eg2≒Eg−20meVなる程度に無秩序化して
いる。さらに、成長温度を570℃以上あるいは480
℃以下にした場合は、Eg≧Eg1>Eg−10meV
なる程度に無秩序化する。
【0076】可飽和吸収層を無秩序化することで、可飽
和吸収層の吸収波長が安定する効果が得られる。なお、
MOVPE法を用いても、成長温度とV族/III族比を
制御することで可飽和吸収層の欠陥密度を増加させ、か
つ無秩序化できる。
【0077】実施例7 図6は、本発明の第7の実施例であるAlGaInP系
の自励発振型半導体レーザ素子の断面構成図である。本
実施例の自励発振型半導体レーザ素子は、可飽和吸収層
のウエル層にAlGaInPを用いる以外は実施例6と
同様な構造とした。
【0078】図7に、本実施例の可飽和吸収層(600)の
構造を示す。この可飽和吸収層は、層厚12nmのp−
(Al0.1Ga0.90.58In0.42Pウエル層(602)と層
厚4nmの(Al0.7Ga0.30.48In0.52Pバリア層
(601)からなる多重量子井戸構造を有する。また、この
可飽和吸収層は、欠陥密度が活性層の欠陥密度より10
倍以上大きく、可飽和吸収層とp−AlGaInPクラ
ッド層(109、111)のドーパント濃度は8×1017cm
-3とした。また、ウエル層の層厚は発振波長を効率よく
吸収するように厳密に微調整した。
【0079】本実施例では、可飽和吸収層のウエル層(6
02)に、Alに伴って酸素が取り込まれ、欠陥と同様に
結晶中で深いエネルギ順位を形成するため、キャリア寿
命の低減に効果的である。
【0080】実施例8 図8は、本発明の第8の実施例であるAlGaInP系
の自励発振型半導体レーザ素子の断面構成図である。こ
の素子は、n電極(801)、n−GaAs基板(802)、層厚
300nmのn−GaAsバッファ層(803)、層厚10
0nmのn−GaInPバッファ層(804)、層厚800
nmの(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pなる組成を有す
るn−AlGaInPクラッド層(805)、量子井戸構造
を有する可飽和吸収層(806)、層厚100nmの(Al
0.7Ga0.30.5In0.5Pなる組成を有するn−AlG
aInPクラッド層(807)、層厚50nmの(Al0.5
0.50.5In0.5Pなる組成を有するAlGaInP
光閉じ込め層(808)、量子井戸構造を有する多重量子井
戸活性層(809)、層厚50nmの(Al0.5Ga0.50 .5
In0.5Pなる組成を有するAlGaInP光閉じ込め
層(810)、層厚1000nm(メサ脇クラッド層厚30
0nm)の(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pなる組成を
有するp−AlGaInPクラッド層(811)(メサ幅約
5μm)、層厚800nmのn−GaAsブロック層(8
12)、層厚100nmのGa0.5In0.5Pなる組成を有
するp−GaInPコンタクト層(813)、層厚200n
mのp−GaAsコンタクト層(814)、p電極(815)から
構成される。
【0081】本実施例の素子は、可飽和吸収層(806)が
nクラッド層間のみに設けられていること、可飽和吸収
層のn−GaInPウエル層(1002)とn−AlGaIn
Pバリア層(1001)の格子欠陥密度が、それぞれ多重量子
井戸活性層(809)のGaInPウエル層(902)とAlGa
InPバリア層(901)の格子欠陥密度の10倍以上であ
ること、可飽和吸収層が二重量子井戸構造を有するこ
と、そのウエル層とバリア層に反対符号の格子整合歪を
有する歪補償型多重量子井戸構造を持つことを特徴とす
る。
【0082】以下に本実施例の素子の各層のドーパント
濃度について述べる。n−GaAsバッファ層(803)、
n−GaInPバッファ層(804)、n−AlGaInP
クラッド層(805)及びn−GaAsブロック層(812)のド
ーパント濃度は5×1017cm -3とした。p−AlGa
InPクラッド層(811)のドーパント濃度は8×1017
cm-3とした。p−GaInPコンタクト層(813)のド
ーパント濃度は1×101 8cm-3、p−GaAsコンタ
クト層(814)のドーパント濃度は5×1018cm-3とし
た。多重量子井戸活性層(809)及びAlGaInP光閉
じ込め層(808、810)はアンドープ層とした。
【0083】図9に、多重量子井戸活性層(809)の断面
構成図を示す。多重量子井戸活性層は、層厚10nmの
Ga0.58In0.42Pウエル層(902)と層厚4nmの(A
0.5Ga0.50.48In0.52Pバリア層(901)から構成
され、4つのウエル層を有するGaInP/AlGaI
nP量子井戸構造を有する。
【0084】図10に、可飽和吸収層(806)の断面構成
図を示す。可飽和吸収層は、層厚10nmのn−Ga
0.58In0.42Pウエル層(1002)と層厚4nmのn−(A
0.7Ga0.30.48In0.52Pバリア層(1001)から構成
され、2つのウエル層を有するn−GaInP/AlG
aInP量子井戸構造を有する。この可飽和吸収層のド
ーパント濃度は2×1018cm-3とした。
【0085】本実施例の素子は、可飽和吸収層(806)が
nクラッド層間のみに設けられているため、オーバーフ
ローした電子が可飽和吸収層に注入されない。また、M
OVPE法を用いて成長する場合では、Znに比べてよ
り拡散の小さいSiを可飽和吸収層のドーパントに用い
ることができるので、可飽和吸収層がpクラッド層間に
設けられている場合より有利である。
【0086】本実施例の素子の成長は、実施例1と同じ
成長速度とV族流量で、可飽和吸収層全体を、量子井戸
界面では3分間の界面待機時間を設けて、480℃の低
い成長温度で成長させ、nクラッド層(805、807)を54
0℃で成長させ、GaInP/AlGaInPの多重量
子井戸活性層(809)を最大のPLピ−ク強度が得られる
540℃の成長温度で成長させる方法で行った。
【0087】可飽和吸収層のGaInPウエル層とAl
GaInPバリア層の成長時のRHEEDパターンは
(1×1)に近い(2×2)、活性層のGaInPウエ
ル層とAlGaInPバリア層の成長時のRHEEDパ
ターンは(2×1)となることを目安に再現性よく成長
できた。
【0088】実施例9 本発明の第9の実施例の自励発振型半導体レーザ素子
は、可飽和吸収層の構造が、ドーピングをしない時の可
飽和吸収層の最低遷移エネルギと活性層の最低遷移エネ
ルギとの差が10meV以内に制御されたこと以外は実
施例8と同様な構造とした。
【0089】活性層と可飽和吸収層の最低遷移エネルギ
が完全にー致すると、活性層の最低遷移エネルギ値では
可飽和吸収層の微分利得が正にならないので、自励発振
しない。可飽和吸収層の最低遷移エネルギは活性層の最
低遷移エネルギ値より10meV程度小さい方がよい。
それにはドーピングをしない時の可飽和吸収層の最低遷
移エネルギと活性層の最低遷移エネルギが10meV以
内で一致しているのが望ましい。
【0090】可飽和吸収層の最低遷移エネルギは、ウエ
ル層厚を変える方法で調整できる。本実施例では、ウエ
ル幅が9nmから10nmに変化すると最低遷移エネル
ギは約20meV低下する。したがって、可飽和吸収層
と活性層の最低遷移エネルギ差を10meV以内に制御
するには、両層のウエル層を1分子層以内で制御する必
要がある。ガスソースMBE法は原子層オーダの制御が
可能であり、MOVPE法に比べて急峻な界面を形成す
ることができるので、自励発振型半導体レーザの成長に
有利である。
【0091】可飽和吸収層の微分利得が大きいエネルギ
領域は10meV程度と狭いので、可飽和吸収層の吸収
エネルギを1meVオーダで微調整できる方が望まし
い。MOVPE法であっても、可飽和吸収層のドーパン
ト濃度を調整することで可飽和吸収層の吸収エネルギを
1meVオーダで微調整できる。本実施例の可飽和吸収
層のキャリア寿命は可飽和吸収層に導入した欠陥で既に
小さくなっているので、自励発振を保ちながら、可飽和
吸収層のドーパント濃度を独立に調整できる。よって本
実施例では、可飽和吸収層の吸収エネルギを1meVオ
ーダで微調整できる。
【0092】実施例10 図11は、本発明の第10の実施例であるAlGaIn
P系の自励発振型半導体レーザ素子の断面構成図ある。
この素子は、n電極(1101)、n−GaAs基板(1102)、
層厚300nmのn−GaAsバッファ層(1103)、層厚
100nmのn−GaInPバッファ層(1104)、層厚1
000nmの(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pなる組成
を有するn−AlGaInPクラッド層(1105)、量子井
戸構造を有する可飽和吸収層(1106)、層厚100nmの
(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pなる組成を有するn−
AlGaInPクラッド層(1107)、層厚50nmの(A
0.5Ga0.50.5In0.5Pなる組成を有するAlGa
InP光閉じ込め層(1108)、量子井戸構造を有する多重
量子井戸活性層(1109)、層厚50nmの(Al0. 5Ga
0.50.5In0.5Pなる組成を有するAlGaInP光
閉じ込め層(1110)、層厚100nmの(Al0.7
0.30.5In0.5Pなる組成を有するp−AlGaI
nPクラッド層(1111)、光分布調整層(1112)、層厚10
00nm(メサ脇クラッド層厚300nm)の(Al
0.7Ga0.30.5In0.5Pなる組成を有するp−AlG
aInPクラッド層(1113)(メサ幅約5μm)、n−G
aAsブロック層(1114)、層厚100nmのGa0.5
0.5Pなる組成のp−GaInPコンタクト層(111
5)、層厚200nmのp−GaAsコンタクト層(111
6)、p電極(1117)から構成される。
【0093】以下に本実施例の素子の各層のドーパント
濃度について述べる。n−GaAsバッファ層(1103)、
n−GaInPバッファ層(1104)、n−AlGaInP
クラッド層(1105、1107)のドーパント濃度は8×10
17cm-3とした。n−GaAsブロック層(1114)のドー
パント濃度は5×1017cm-3とした。p−AlGaI
nPクラッド層(1111、1113)のドーパント濃度は8×
1017cm-3とした。p−GaInPコンタクト層(111
5)のドーパント濃度は1×1018cm-3、p−GaAs
コンタクト層(1116)のドーパント濃度は5×1018cm
-3とした。多重量子井戸活性層(1109)及びAlGaIn
P光閉じ込め層(1108、1110)はアンドープ層とした。
【0094】図12に、多重量子井戸活性層(1109)の断
面構成図を示す。多重量子井戸活性層は、層厚10nm
のGa0.58In0.42Pウエル層(1202)と層厚4nmの
(Al 0.5Ga0.50.48In0.52Pバリア層(1201)から
構成され、4つのウエル層を有するGaInP/AlG
aInP量子井戸構造を持つ。
【0095】図13に、可飽和吸収層(1106)の断面構成
図を示す。可飽和吸収層は、層厚10nmのn−Ga
0.58In0.42Pウエル層(1302)と層厚4nmのn−(A
0.7Ga0.30.48In0.52Pバリア層(1301)から構成
され、2つのウエル層を有するn−GaInP/AlG
aInP量子井戸構造を有する。可飽和吸収層のドーパ
ント濃度は8×1017cm-3とした。
【0096】図14に、光分布調整層(1112)の断面構成
図を示す。光分布調整層は、層厚12nmのp−(Al
0.2Ga0.80.5In0.5Pウエル層(1402)と層厚4nm
のn−(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pバリア層(1401)
から構成され、2つのウエル層を有するp−GaInP
/AlGaInP量子井戸構造を有する。光分布調整層
のドーパント濃度は8×1017cm-3とした。
【0097】本実施例の自励発振型半導体レーザ素子
は、Pクラッド層間に新たに光分布調整層(1112)を設け
たこと以外は実施例9と同様な構造とした。
【0098】図15は、本実施例の自励発振型半導体レ
ーザ素子の活性層付近の伝導帯エネルギとレーザ発振時
の光強度分布を示す図である。光分布調整層の活性層か
らの距離と層厚とバンドギャップは、層に垂直な方向の
活性層付近の光分布が活性層の中心に関してほぼ線対称
(1500)になり、かつ光分布調整層がレーザ光を吸収しな
いように設定した。
【0099】これによって集光したビームスポットの形
状の歪みを小さくできる。また、発振動作中に、活性層
からオーバーフローする電子が光分布調整層に溜まった
としても、光分布調整層はレーザ光を吸収することがな
いので損失層にならない。また、可飽和吸収層はnクラ
ッド層間に設けられているので、活性層からオーバーフ
ローする電子は可飽和吸収層に溜まらず、可飽和吸収層
の吸収波長は変化しない。
【0100】実施例11 本発明の第11の実施例の自励発振型半導体レーザ素子
は、実施例10のAlGaInP系の自励発振型半導体
レーザ素子の特徴を有するAlGaInN系の自励発振
型半導体レーザ素子である。
【0101】図16は、本実施例のAlGaInN系の
自励発振型半導体レーザ素子の断面構成図である。本実
施例の素子は、厚さ350μmのA面サファイア基板(1
601)、層厚30nmのGaNバッファ層(1602)、層厚3
μmのn−GaNクラッド層(1603)、層厚100nmの
n−In0.1Ga0.9Nクラック防止層(1604)、層厚40
0nmのn−Al0.12Ga0.88Nクラッド層(1605)、n
型可飽和吸収層(1606)、層厚50nmのn−Al0.12
0.88Nクラッド層(1607)、層厚100nmのn−Ga
N光閉じ込め層(1608)、多重量子井戸活性層(1609)、層
厚100nmのp−GaN光閉じ込め層(1610)、層厚5
0nmのp−Al0.15Ga0.85Nクラッド層(1611)、p
型InGaN光分布調整層(1612)、層厚400nmのp
−Al0. 15Ga0.85Nクラッド層(1613)、層厚500n
mのp−GaNクラッド層(1614)、層厚15nmのp−
GaAs0.040.96コンタクト層(1615)、p電極(1616)
及びn電極(1617)から構成される。
【0102】図17に、p型光分布調整層(1612)の断面
構成図を示す。p型光分布調整層は、層厚15nmのp
−GaNバリア層(1701)と層厚3.4nmのp−In
0.1Ga0.9Nウエル層(1702)と層厚5nmのp−GaN
バリア層(1703)から構成され、2つのウエル層を有する
構造を持つ。
【0103】図18に、多重量子井戸活性層(1609)の断
面構成図を示す。多重量子井戸活性層は、層厚5nmの
p−In0.05Ga0.95Nバリア層(1801)と層厚2.5n
mのp−In0.2Ga0.8Nウエル層(1802)から構成さ
れ、8つのウエル層を有する構造を持つ。
【0104】図19に、n型可飽和吸収層(1606)の断面
構成図を示す。n型可飽和吸収層は、層厚10nmのn
−GaNバリア層(1901)と層厚5nmのn−In0.05
0. 95Nバリア層(1902)と層厚2.6nmのn−In
0.2Ga0.8Nウエル層(1903)から構成され、2つのウエ
ル層を有する構造を持つ。
【0105】本実施例は、AlGaInN系材料から成
ること、n型可飽和吸収層(1606)とp型光分布調整層(1
612)を有すること、成長温度を変えることでn型可飽和
吸収層(1606)は多重量子井戸活性層(1609)の10倍以上
の欠陥密度を有することに特徴がある。これらの特徴的
構成により、安定かつ優れた自励発振特性を有する発振
波長420nmの青色半導体レーザ素子が得られた。
【0106】上記の素子はMOVPE法やガスソースM
BE法を用いて作製できる。以下にMOVPE法による
上記LD素子の作製方法の一例を述べる。
【0107】V族原料にはNH3、AsH3、III族原料
にはトリメチルインジウム(TMIn)、トリメチルガ
リウム(TMGa)、トリメチルアルミニウム(TMA
l)を用いる。pドーパント原料にはCP2Mg、nド
ーパント原料にはSiH4を用いる。
【0108】まず、A面サファイア基板(1601)を成長室
である反応管に導入し、H2キャリアガスを反応管に流
す。その状態で基板を1150℃に昇温させ、10分間
加熱した後550℃に降温し、NH3とTMGaを導入
して層厚30nmのGaNバッファ層(1602)を成長させ
た。サファイア基板とGaNには10%以上もの格子不
整合があるが、低温成長のGaNバッファ層(1602)を最
初に成長させ、かつその層厚を制御することで結晶性の
よいGaN層が得られた。
【0109】その後、H2キャリアガスを反応管に流し
たまま基板温度を1000℃に上げてNH3とTMGa
とSiH4を導入して層厚3μmのn−GaNクラッド
層(1603)を成長させた。このn−GaNクラッド層は、
成長温度:1000℃、V族/III族比:750で成長
させた。
【0110】次に、TMInを導入して層厚100nm
のn−In0.1Ga0.9Nクラック防止層(1604)を成長さ
せた。同じV族/III族比で、続く層厚400nmのn
−Al0.15Ga0.85Nクラッド層(1605、1607)は107
0℃で成長させ、n型可飽和吸収層(1606)は成長温度8
00℃、多重量子井戸活性層(1609)は1000℃で成長
させた。これによって、本実施例のn型可飽和吸収層(1
606)は、多重量子井戸活性層(1609)の10倍以上の欠陥
密度を有することができる。各層のnドーパント濃度は
8×1017cm-3とした。
【0111】このようにしてp型の層も順次成長させ
た。p−GaAs0.040.96コンタクト層(1615)は、N
3、AsH3、TMGa及びCP2Mgを導入して成長
させた。このp−GaAs0.040.96コンタクト層の層
厚を15nmとすることで臨界膜厚以内の良好な品質の
結晶が得られた。
【0112】成長後は600℃で1時間熱アニールを行
い、結晶中に取り込まれたH原子を追い出し、Mgを活
性化させホール濃度を向上させた。pクラッド層のpド
ーパント濃度は8×1017cm-3、p−GaAs0.04
0.96コンタクト層(1615)のpドーパント濃度は5×10
18cm-3とした。
【0113】成長終了後の降温はサファイア基板が割れ
ないようにゆっくり行った。ウエハを取り出した後、n
−GaNクラッド層(1603)表面までエッチングを行い、
このn−GaNクラッド層にn電極(1617)を取り付け、
p−GaAs0.040.96コンタクト層(1615)上にp電極
(1615)を取り付けてLD素子を得た。
【0114】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明に
よれば、可飽和吸収層の吸収波長がレーザの発振波長と
ほぼ等しく、可飽和吸収層で発生するキャリアの寿命が
短く、可飽和吸収層の吸収波長が安定するため、動作寿
命が長く、閾値の小さい安定した良好な特性の自励発振
型レーザ素子を得ることができる。
【0115】また、本発明の自励発振型半導体レーザ素
子は光分布調整層を有するので光スポット形状の歪が少
ない。
【0116】本発明の半導体レーザ素子を光ディスク装
置のピックアップ用光源として用いることにより、レー
ザの戻り光雑音が低減した高性能の光ディスク装置が低
コストで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例であるAlGaInP系
の自励発振型半導体レーザ素子の断面構成図である。
【図2】本発明の第1の実施例である自励発振型半導体
レーザ素子の多重量子井戸活性層の断面構成図である。
【図3】本発明の第1の実施例である自励発振型半導体
レーザ素子の可飽和吸収層の断面構成図である。
【図4】実施例1のAlGaInP系自励発振型半導体
レーザ素子の活性層付近の伝導帯のバンド構造、および
相対欠陥密度と成長温度のプロファイルを示す図であ
る。
【図5】実施例3のAlGaInP系自励発振型半導体
レーザ素子の活性層付近の伝導帯のバンド構造、および
相対欠陥密度と成長温度のプロファイルを示す図であ
る。
【図6】実施例7のAlGaInP系自励発振型半導体
レーザ素子の断面構成図である。
【図7】実施例7の素子の可飽和吸収層の断面構造図で
ある。
【図8】実施例8のAlGaInP系自励発振型半導体
レーザ素子の断面構成図である。
【図9】実施例8の素子の多重量子井戸活性層の断面構
成図である。
【図10】実施例8の素子の可飽和吸収層の断面構成図
である。
【図11】実施例10のAlGaInP系自励発振型半
導体レーザ素子の断面構成図である。
【図12】実施例10の素子の多重量子井戸活性層の断
面構成図である。
【図13】実施例10の素子の可飽和吸収層の断面構成
図である。
【図14】実施例10の光分布調整層の断面構成図であ
る。
【図15】実施例10の自励発振型半導体レーザ素子の
活性層付近の伝導帯エネルギとレーザ発振時の光強度分
布を示す図である。
【図16】実施例11のAlGaInN系自励発振型半
導体レーザ素子の断面構成図である。
【図17】実施例11の素子のp型光分布調整層の断面
構成図である。
【図18】実施例11の素子の多重量子井戸活性層の断
面構成図である。
【図19】実施例11の素子のn型可飽和吸収層の断面
構成図である。
【図20】半導体レーザ素子の自励発振動作を実現する
ための、活性層と可飽和吸収層の微分利得比とキャリア
寿命比の満たすべき条件図である。
【図21】(AlXGa1-X0.5In0.5Pバルクのキャ
リア寿命とフォトルミネセンス(PL)強度のAl組成
依存性を示すグラフである。
【図22】(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pバルクの深
いエネルギ準位(D1、D2、D3)の欠陥密度とPL強
度の成長温度依存性を表すグラフである。
【図23】従来の自励発振型半導体レーザ素子の活性層
付近のバンド構造の模式図である。
【図24】本発明の自励発振型半導体レーザ素子の活性
層付近のバンド構造の模式図である。
【符号の説明】
101、801、1101、1617 n電極 102、802、1102 n−GaAs基板 103、803、1103 n−GaAsバッファ層 104、804、1104 n−GaInPバッファ
層 105、805、807、1105、1107 n−
AlGaInPクラッド層 106、108、808、810、1108、1110
AlGaInP光閉じ込め層 107、809、1109、1609 多重量子井戸
活性層 109、811、1111、1113 p−AlGa
InPクラッド層 110、600、806、1106 可飽和吸収層 111 p−AlGaInPクラッド層 112、812、1114 n−GaAsブロック層 113、813、1115 p−GaInPコンタク
ト層 114、814、1116 p−GaAsコンタクト
層 115、815、1117、1616 p電極 201、901、1201 AlGaInPバリア層 202、902、1202 GaInPウエル層 301、601、1401 p−AlGaInPバリ
ア層 302 p−GaInPウエル層 602、1402 p−AlGaInPウエル層 1001、1301 n−AlGaInPバリア層 1002、1302 n−GaInPウエル層 1112 光分布調整層 1601 A面サファイア基板 1602 GaNバッファ層 1603 n−GaNクラッド層 1604 n−InGaNクラック防止層 1605 n−AlGaNクラッド層 1606 n型可飽和吸収層 1607 n−AlGaNクラッド層 1608 n−GaN光閉じ込め層 1610 p−GaN光閉じ込め層 1611、1613 p−AlGaNクラッド層 1612 p型光分布調整層 1614 p−GaNクラッド層 1615 p−GaAsNコンタクト層 1701 p−GaNバリア層 1702 p−InGaNウエル層 1703 p−GaNバリア層 1801 InGaNバリア層 1802 InGaNウエル層 1901 n−GaNバリア層 1902 n−InGaNバリア層 1903 n−InGaNウエル層 2301、2401 nクラッド層 2302 pクラッド層 2303、2403 多重量子井戸活性層 2304 p型可飽和吸収層 2305 電子 2306 オーバーフロー 2402 n型可飽和吸収層 2405 ホール(正孔)

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 可飽和吸収層を備えた自励発振型半導体
    レーザ素子において、少なくとも1つの可飽和吸収層に
    おける可飽和吸収層を構成する半導体層の内で最小の禁
    制帯幅を有する少なくとも1つの半導体層1の格子欠陥
    密度が、活性層を構成する半導体層の内で最小の禁制帯
    幅を有する少なくとも1つの半導体層2の格子欠陥密度
    の5倍以上であることを特徴とする自励発振型半導体レ
    ーザ素子。
  2. 【請求項2】 伝導帯あるいは価電子帯とのエネルギ準
    位差が0.5eV以上である深いエネルギ準位を有する
    格子欠陥に関して、半導体層1の格子欠陥密度が半導体
    層2の格子欠陥密度の10倍以上である請求項1記載の
    自励発振型半導体レーザ素子。
  3. 【請求項3】 半導体層1のドーパント濃度が1×10
    17〜1×1018cm -3である請求項1又は2記載の自励
    発振型半導体レーザ素子。
  4. 【請求項4】 半導体層1が完全に無秩序化したときの
    禁制帯幅Egに対して、半導体層1の禁制帯幅Eg1
    が、Eg≧Eg1>Eg−10meVなる程度に無秩序
    化している請求項1、2又は3記載の自励発振型半導体
    レーザ素子。
  5. 【請求項5】 半導体層1のドーパント濃度と、可飽和
    吸収層に接して設けられているクラッド層のドーパント
    濃度とが等しい請求項1〜4のいずれか1項に記載の自
    励発振型半導体レーザ素子。
  6. 【請求項6】 半導体層1にAlを含む材料を用いる請
    求項1〜5のいずれか1項に記載の自励発振型半導体レ
    ーザ素子。
  7. 【請求項7】 可飽和吸収層が単一量子井戸構造または
    多重量子井戸構造を有する請求項1〜6のいずれか1項
    に記載の自励発振型半導体レーザ素子。
  8. 【請求項8】 可飽和吸収層が、そのウエル層とバリア
    層に反対符号の格子整合歪を有する歪補償型多重量子井
    戸構造を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の自
    励発振型半導体レーザ素子。
  9. 【請求項9】 可飽和吸収層の構造が、ドーピングをし
    ない時の可飽和吸収層の最低遷移エネルギと活性層の最
    低遷移エネルギとの差が10meV以内に制御された構
    造である請求項1〜8のいずれか1項に記載の自励発振
    型半導体レーザ素子。
  10. 【請求項10】 n型クラッド層間にのみ可飽和吸収層
    が設けられている請求項1〜9のいずれか1項に記載の
    自励発振型半導体レーザ素子。
  11. 【請求項11】 可飽和吸収層が片方の導電型のクラッ
    ド層間のみに設けられている自励発振型半導体レーザ素
    子であって、可飽和吸収層が設けられていない他方の導
    電型のクラッド層間に新たに半導体層を設け、その半導
    体層の層厚とバンドギャップが、層に垂直な方向の活性
    層付近の光分布が活性層の中心に関してほぼ線対称にな
    り且つその半導体層がレーザ光を吸収しないように設定
    されていることを特徴とする自励発振型半導体レーザ素
    子。
  12. 【請求項12】 基板を任意の面方位のGaAs基板と
    し、クラッド層、活性層、可飽和吸収層として、(Al
    xGa1-xyIn1-yP(0≦x≦1、0≦y≦1)なる
    材料を用いる請求項1〜11のいずれか1項に記載の自
    励発振型半導体レーザ素子。
  13. 【請求項13】 基板を任意の面方位のサファイア基板
    とし、クラッド層、活性層、可飽和吸収層として、(A
    xGa1-xyIn1-yP(0≦x≦1、0≦y≦1)な
    る材料を用いる請求項1〜11のいずれか1項に記載の
    自励発振型半導体レーザ素子。
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