JPH1015324A

JPH1015324A - 換気扇用無機繊維質フィルター

Info

Publication number: JPH1015324A
Application number: JP8178990A
Authority: JP
Inventors: Kotsuhei Ou; 笏平王
Original assignee: Isolite Insulating Products Co Ltd
Current assignee: Isolite Insulating Products Co Ltd
Priority date: 1996-07-09
Filing date: 1996-07-09
Publication date: 1998-01-20

Abstract

(57)【要約】【課題】油脂の蒸気等を効率良く捕集し且つ油の保持
機能が大きく、耐熱性に優れていて引火の危険がなく、
しかも汚れても再生して使用することが可能な、台所や
厨房の換気扇に使用するための安価なフィルターを提供
する。【解決手段】無機繊維をバインダーで結合した板状の
無機繊維成形体のほぼ全面に、多数の小さな通気穴を貫
通して設けた換気扇用無機繊維質フィルター。通気穴と
しては、直径０.５〜１０ｍｍの貫通孔か、又は幅０.５
〜６ｍｍのスリットが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、一般住宅の台所
や、レストラン等の業務用厨房で用いられる換気扇に取
り付けて、油脂の蒸気や油煙等を除去する目的で使用さ
れるフィルターに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から、台所や厨房の換気扇には、油
脂の蒸気や油煙等を除去するために各種のフィルターを
取り付けることが多い。特に、最近では冷凍食品が普及
などにより油を使う機会が増えたことから、調理時に油
脂が蒸気やミストとなって多量に発生する。この油脂の
蒸気等は排気ダクトに付着したり、屋外に排出されて建
物を汚す等の問題が起こるため、台所や厨房の換気扇に
フィルターを取り付け、発生する油脂の蒸気や油煙等を
除去することが広く行われている。

【０００３】かかる換気扇用フィルターとして、従来か
ら、濾紙や有機繊維シート又は樹脂不織布などからなる
フィルター、金属繊維やセラミックス繊維不織布などか
らなる耐熱性のフィルター、及び金属製のフィルターが
知られている。

【０００４】その中で、濾紙や有機繊維シート又は樹脂
不織布などからなるフィルターは、有機質材料からなる
ため基本的な防火性質を備えておらず、調理時の火力が
強い場合などには引火しやすい、特にフィルターが油で
汚れていると容易に引火するという欠点がある。また、
金属製のフィルターは油の捕集効率が低く、また油の保
持容量も少ないため、厨房などの油脂の蒸気等が多量に
発生する使用条件下では付着した油滴が落下するなどの
不都合が生じている。

【０００５】一方、金属繊維やセラミックス繊維不織布
などからなるフィルターは、最も一般的に使用されてい
る。例えば、特開平７−２４２３３号公報などに記載さ
れているような、金属繊維集合体又は不織布とからなる
フィルターがあるが、これらのフィルターは強度がない
ので小さな通気孔を設けた金属板を使って固定する。し
かし、金属板は油を吸収しないので、熱い油脂の蒸気や
油煙等が冷たい金属板に衝突すると油が結露し、結露し
た油が落下するという問題がある。

【０００６】また、特開平６−６３３２４号公報などに
記載されるように、乾式抄紙セラミックス繊維不織布を
用いたフィルターがある。しかし、このような不織布は
製造が複雑で、コストが高いという欠点がある。しか
も、不織布が一層のみでは強度が不足する上、薄いため
に油の保持容量が少ないという問題がある。そのため、
通常は数層重ねて使用されるが、重ねると濾過抵抗が大
きくなる。

【０００７】このように、従来の換気扇用フィルターに
はそれぞれ問題点がある上、このフィルターを取り付け
ても油脂の蒸気や油煙等の除去が十分でない場合には、
油が塵等と共に換気扇の羽根やフードに付着して美観を
損なう上、換気扇の可動部分が動かなくなるなど、故障
の原因となる。また、業務用厨房の場合には使用する火
力が強いので、油や塵等がダクトの内面に付着すると、
ダクトに付着した油に引火して火災を起こす危険もあ
る。

【０００８】また、これら従来のフィルターは、上記金
属製のフィルターを除いて、ある程度の期間使用すると
油等の付着により汚れるので、その度に又は定期的に新
しいフィルターと交換する。しかし、油等が付着して汚
れたフィルターは再生することが出来ないので、そのま
ま廃棄されている現状である。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
従来の各種類のフィルターの問題点を解決し、油脂の蒸
気や油煙等を効率良く捕集し且つ油などの保持機能が大
きく、耐熱性に優れていて引火の危険がなく、しかも汚
れても再生して使用することが可能な、台所や厨房の換
気扇に使用する安価なフィルターを提供することを目的
とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明が提供する換気扇用フィルターは、無機繊維
をバインダーで結合した板状の無機繊維成形体からな
り、そのほぼ全面に多数の小さな通気穴が貫通して設け
られていることを特徴とする。この通気穴としては、直
径０.５〜１０ｍｍの貫通孔か、又は幅０.５〜６ｍｍの
貫通したスリットが好ましい。

【００１１】この換気扇用無機繊維質フィルターを構成
する板状の無機繊維成形体は、厚さが１.５ｍｍ〜１ｃ
ｍ、かさ密度が０.１〜１.０ｇ／ｃｍ³、気孔率が６０
〜９５％であることが好ましい。また、この板状の無機
繊維成形体に設けた多数の貫通孔又はスリットの開口率
は０.０１〜０.８％の範囲であることが好ましい。

【００１２】

【発明の実施の形態】まず、本発明の換気扇用無機繊維
質フィルターの製造方法を説明する。無機繊維を水に撹
拌分散し、更にバインダーを添加して分散させた後、撹
拌しながら凝集剤を添加して凝集させ、真空成形等の公
知の成形方法により板状に成形する。この成形体を１２
０℃程度で乾燥後、例えば５００〜１３００℃程度の温
度で焼成して板状の無機繊維成形体を得る。得られた無
機繊維成形体が厚ければ一定な厚さの板状に加工し、更
に多数の通気穴として例えば貫通孔又はスリットを穴開
け加工し、本発明の無機繊維質フィルターを完成する。

【００１３】無機繊維としては、公知の全ての無機質繊
維を用いることができ、例えばアルミナ繊維、ムライト
繊維、シリカ繊維、アルミノシリケート繊維、炭化ケイ
素繊維、窒化ケイ素繊維、ガラス繊維、ロックウールな
どを使用することができる。尚、これらの繊維は、一種
類のみでも良いし、或は数種類を同時に使用することも
できる。

【００１４】バインダーは、焼成により無機繊維同士を
結合するものであるが、例えばシリカゾル、アルミナゾ
ルのような酸化物ゾル、乳酸アルミニウム、オキシ塩化
アルミニウムなどの無機塩類を使うことができる。ま
た、より強固な結合を得るために、窒化ホウ素粒子など
を併用することもできる。

【００１５】通気穴を穴開け加工する前の無機繊維成形
体は、かさ密度が０.１〜１.０ｇ／ｃｍ³程度であり、
約６０〜９５％の気孔率を有し、大きさ数μｍ〜数百μ
ｍの空孔が充満している。従って、この状態でも通気性
があるが、普通の換気扇に対しては通気抵抗が大き過ぎ
るため良好な排気ができない。そこで本発明では、この
板状の無機繊維成形体に多数の通気穴を積極的に穿設す
ることにより、通気抵抗を改善すると共に、そのサイズ
の大きさや開口率を選択することにより通気性を自由に
制御できる。

【００１６】特に、上記のごとく多数の通気穴が穿設し
てあっても、本発明の無機繊維質フィルターは十分に油
脂の蒸気や油煙等を濾過し得ることが判明した。その理
由は次のように考えられる。まず、換気扇により吸引さ
れた油脂の蒸気等の流速が、小さな通気穴に到達する前
とその内部を流れる時とでは大きく変化するため、油脂
の蒸気等の流れが乱れ、フィルターと衝突する機会が多
くなる。また、油脂の蒸気等が換気扇の吸引によりフィ
ルターを通るとき、通気穴内を一気にスムーズに通過す
ることはなく、油脂の蒸気等もそれ自体がブラウン運動
を起こしながら流れているので、このブラウン運動によ
りフィルターと衝突する。このようにして油脂の蒸気等
がフィルターと衝突すると、瞬間的に油が結露され、フ
ィルターに捕集されるものと考えられる。

【００１７】通気穴は適度な通気性と同時に上記の作用
により油脂の蒸気等を濾過できれば良く、従って無機繊
維成形体を表面から裏面に貫通している限りいかなる形
状であっても良いが、加工性と実用性の点から円形や矩
形の孔あるいは細長いスリットが好ましい。また、通気
穴のサイズは、小さ過ぎると通気抵抗が大きくなると共
に通気穴の加工も困難になり、逆に大き過ぎると油煙の
捕集能力が低下する。従って、具体的には、直径が０.
５〜１０ｍｍ程度の貫通孔か、又は幅が０.５〜６ｍｍ
程度のスリットが好ましい。

【００１８】また、無機繊維成形体に設ける貫通孔やス
リット等の多数の通気穴の開口率は０.０１〜０.８％の
範囲が好ましく、０.１〜０.４％の範囲が更に好まし
い。開口率が０.０１％未満では通気抵抗が大きく、０.
８％を越えると油煙の濾過が不十分となるからである。
尚、通気穴を穿設する板状の無機繊維成形体は、厚さが
１.５ｍｍ未満では強度が小さくフィルターとして不適
であり、逆に１ｃｍを越えると厚すぎて通気抵抗が大き
くなるため好ましくない。また、通気穴を穿設する前の
無機繊維成形体は、形状保持や取り扱いのため、１ｋｇ
／ｃｍ²以上の曲げ強度であることが好ましい。

【００１９】本発明の多数の通気穴を設けた無機繊維質
フィルターは、少なくともその周囲を支持枠等で支持し
て、通常のごとく換気扇の前に取り付けて使用する。こ
のフィルターは通常は１枚だけで使用することができる
が、２枚以上を相互に間を隔てて重ね合わせた状態で使
用することも可能である。その場合、各フィルターの通
気穴の位置が直線上に並ばないように配置することが好
ましい。また、各フィルターの間隔は、間に挟むスペー
サ等により適宜調節することができる。

【００２０】更に、本発明の無機繊維質フィルターは、
使用により油脂の蒸気や塵等が付着して汚れても、再生
して再度使用することが可能である。即ち、汚れたフィ
ルターを換気扇から取り外し、油等の付着物が燃焼する
温度、例えば８００℃以上の温度で焼成することができ
る。これにより、油や塵はほぼ完全に消失するので、フ
ィルターは殆ど元の状態に戻り、繰り返して使用するこ
とが可能となる。

【００２１】

【実施例】実施例１アルミノシリケート繊維（イソライト工業（株）製、Ａ
ｌ₂Ｏ₃：ＳｉＯ₂重量比＝４７：５３、平均繊維径２.８
μｍ）７８０ｇ、ＢＮ粒子（昭和電工（株）製、平均粒
径８μｍ）２７ｇ、シリカゾル（日産化学（株）製、Ｓ
ｉＯ₂含有率４０重量％）９０ｇを４５リットルの水に
加え、数分間撹拌してスラリーを形成した。このスラリ
ーに凝集剤として固形分２％の澱粉水溶液を加え、吸引
成形して板状にした後、１３００℃で２時間焼成して無
機繊維成形体を製造した。

【００２２】この無機繊維成形体は、かさ密度が０.２
４ｇ／ｃｍ³、気孔率が９０％であった。次に、この無
機繊維成形体を長さ３００ｍｍ×幅３００ｍｍ×厚さ５
ｍｍに加工し、全体に直径５ｍｍの多数の貫通孔を規則
的に穿設して開孔率を０.２％とした。

【００２３】かくして得られたフィルターを用いて油脂
の蒸気の濾過試験を行ったところ、換気扇による排気に
対する通気抵抗は小さく、支障なく排気することができ
ると共に、油脂の蒸気を確実に除去できることが確認で
きた。このフィルターによる油の捕集率は７０重量％、
油の保持率は最大１.５重量％であった。尚、油の捕集
率は、蒸発気化させた油の重量に対するフィルターで捕
集された油の重量の割合として求めた。また、油の保持
率は、フィルターから油が垂れ落ちる直前の飽和状態ま
で油を吸収したフィルターの重量を測定し、この重量の
使用前のフィルターの重量に対する割合として求めた。

【００２４】実施例２アルミノシリケート繊維（イソライト工業（株）製、Ａ
ｌ₂Ｏ₃：ＳｉＯ₂重量比＝４７：５３、平均繊維径２.８
μｍ）４５０ｇ、ガラスウール（日本マイクロジーウー
ル（株）製、平均繊維径８μｍ）３３０ｇ、シリカゾル
（日産化学（株）製、ＳｉＯ₂含有率４０重量％）９０
ｇを、４５リットルの水に加え、数分間撹拌してスラリ
ーを形成した。このスラリーに凝集剤として固形分２％
の澱粉水溶液を加えて凝集させ、板状に吸引成形した
後、１１００℃で２時間焼成して無機繊維成形体を製造
した。

【００２５】この無機繊維成形体は、かさ密度が０.０
３ｇ／ｃｍ³、気孔率が８７％であった。次に、この無
機繊維成形体を長さ３００ｍｍ×幅３００ｍｍ×厚さ５
ｍｍに加工し、全体に直径２ｍｍの多数の貫通孔を規則
的に穿設して開孔率を０.２％とした。

【００２６】かくして得られたフィルターを用いて油脂
の蒸気の濾過試験を行ったところ、換気扇による排気に
対する通気抵抗は小さく、支障なく排気することができ
ると共に、油脂の蒸気を確実に除去できることが確認で
きた。このフィルターによる油の捕集率と保持率を実施
例１と同様に求めたところ、油の捕集率は８０重量％及
び油の保持率は最大１.９重量％であり、フィルターと
して十分な機能が確認された。

【００２７】

【発明の効果】本発明によれば、油脂の蒸気や油煙等を
効率良く捕集して多量の油を確実に保持でき、耐熱性に
優れていて引火の危険がなく、しかも油等で汚れても再
生して使用することが可能な、台所や厨房の換気扇に使
用するための安価なフィルターを提供することができ
る。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】無機繊維をバインダーで結合した板状の
無機繊維成形体からなり、そのほぼ全面に多数の小さな
通気穴が貫通して設けられていることを特徴とする換気
扇用無機繊維質フィルター。
【請求項２】通気穴が、直径０.５〜１０ｍｍの貫通
孔か、又は幅０.５〜６ｍｍのスリットであることを特
徴とする換気扇用無機繊維質フィルター。
【請求項３】板状の無機繊維成形体は、厚さが１.５
ｍｍ〜１ｃｍ、かさ密度が０.１〜１.０ｇ／ｃｍ³、気
孔率が６０〜９５％であることを特徴とする、請求項１
に記載の換気扇用無機繊維質フィルター。
【請求項４】板状の無機繊維成形体に設けた多数の貫
通孔又はスリットの開口率が０.０１〜０.８％であるこ
とを特徴とする、請求項１又は２に記載の換気扇用無機
繊維質フィルター。