JPH10141257A - 密閉型スクロール圧縮機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 滑り軸受への十分な給油量を確保して、作動
の信頼性を損なうことがない密閉型スクロール圧縮機を
提供する。 【解決手段】 スクロール圧縮機において、密閉ハウジ
ング１０１内に主軸受部材１を設置して主軸５１を回転
自在に支持し、同主軸の一端を旋回スクロール２１に連
結して、同旋回スクロールを固定スクロール１１に対し
自転を阻止しつつ公転旋回運動させる。同旋回スクロー
ルに作用する軸方向のスラスト力は主軸受部材１に設け
た滑り軸受５で支持する。密閉ハウジング１０１内に充
填された潤滑油は主軸５１に設けた給油ポンプにより、
主軸内の給油孔を経て滑り軸受５を含む所要潤滑箇所に
給油される。該給油孔を経て供給される油は、油溜まり
７に溜められ、給油圧力を維持したままで、主軸受部材
１内に設けられた導油路８を経由して滑り軸受５に供給
される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、密閉型のスクロー
ル圧縮機やスクロール膨張機のようなスクロール流体機
械に関し、特にそのスラストプレート即ち滑り軸受の給
油構造に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】図５に代表的に示した従来のスクロール
圧縮機では、主軸５１の回転を利用して、ポンプ３０に
より密閉ハウジング１０１内の油２０１を汲み上げ、主
軸受部１及びドライブ軸受部２に吐出する。吐出された
油２０１は、主軸受部１に吐出された部分については主
軸５１を潤滑後ハウジング１０１内へ戻る。一方、ドラ
イブ軸受部２に吐出された油は、ドライブ軸受部２を潤
滑してから、該ドライブ軸受部２を収納する空間４に溜
まった後、スラストプレートもしくはスラスト軸受５に
設けられた給油溝６を通り、同スラスト軸受５を潤滑し
てハウジング１０１内に戻る。

【０００３】ハウジングへの油の流れ方については、例
えば、特開平６−６６２６９号公報及び実開平１−１１
５８８５号公報に開示されている。しかし、これらの公
報はスラスト軸受に供給された後の油をハウジングに戻
す方法について記載するものであり、スラスト軸受の潤
滑方法については図５に関連して上述した従来の技術と
実質的に変わるところはない。

【０００４】また、実開平１−１０５７８５号公報は、
スラスト軸受上の給油溝形状に関して、円環状、放射状
等各種の形状を開示しているが、潤滑油をスラスト軸受
の内周側から給油する構造であるため、潤滑油がスラス
ト外周に達するのを許容する給油溝が必要となってい
る。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかし、図５に示した
従来の給油構造では、特に低速回転時にポンプ３０の給
油量が低下した場合、ドライブ軸受部２を潤滑した油
は、ドライブ軸受部２を収納する空間４に溜まるが、そ
の空間４からハウジング１０１に油を戻す給油溝６を通
りハウジング１０１の底部に戻ってしまうため、スラス
ト軸受５への給油が不完全となり、スラスト軸受５の焼
き付き摩耗、スラスト損失の増大を招くことがあった。

【０００６】また、スラスト軸受５への給油を確保する
ため、太い給油溝を内周から外周まで放射状に形成する
と、油が、スクロール吸入口より圧縮室に吸い込まれ熱
交換器へ放出される、いわゆる油上がり現象が発生し、
圧縮機の信頼性を損なうことになる。従って、本発明の
目的は、スラスト軸受、即ち滑り軸受への十分な給油量
を確保して、作動の信頼性を損なうことがない密閉型ス
クロール圧縮機を提供することである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】この目的を達成するた
め、請求項１記載の本発明は、密閉ハウジング内に主軸
受部材を設置して主軸を回転自在に支持し、同主軸の一
端をスクロール圧縮機構の旋回スクロールに連結して、
同旋回スクロールを固定スクロールに対し自転を阻止し
つつ公転旋回運動させ、同旋回スクロールに作用する軸
方向のスラスト力を前記主軸受部材に設けた滑り軸受で
支持すると共に、前記主軸にモータを装着し、前記密閉
ハウジング内に充填された潤滑油を前記主軸の他端部に
設けた給油ポンプ及び前記主軸内に設けた給油孔を経て
前記滑り軸受を含む所要潤滑箇所に給油する密閉型スク
ロール圧縮機において、前記給油孔を経て供給される油
の一部を給油圧力を維持したままで溜める油溜まりが前
記主軸受部材内に形成されると共に、前記油溜まりから
前記滑り軸受に給油する導油路が前記主軸受部材内に設
けられていることを特徴とするものである。この場合、
油溜まりは、請求項２及び請求項３に記載のように、主
軸が貫通する主軸受部材の貫通孔を拡張して環状空間を
設けることにより形成してよいし、主軸が貫通する主軸
受部材の貫通孔に２つの軸受メタルを軸方向に離間して
設置して該軸受メタル間に環状空間を設けることにより
形成してもよい。

【０００８】また、請求項４記載の本発明のように、滑
り軸受に、その外周近くに円環状給油溝を設けると共
に、該円環状給油溝から放射状に滑り軸受の内周端に達
する放射状給油溝を設け、前記導油路を前記円環状給油
溝に連通するように形成するのが有利である。このよう
な構成をとることにより、給油ポンプで汲み上げられた
油は主軸受部材内の油溜まりに溜まり、その後、滑り軸
受につながる導油路を通り円環状給油溝及び放射状給油
溝を介して該滑り軸受上に潤滑される。更に詳しく述べ
ると、実施形態では、油溜まり内の油は、主軸潤滑溝と
滑り軸受への導油路とを介してハウジング内部に連通し
ているが、それらの溝及び経路は小断面積のため、油
は、実質的に昇圧状態に保持されたまま、所要潤滑箇所
へ流れることとなる。滑り軸受への給油は、外周に近い
円環状給油溝に供給され、そこを起点として放射状給油
溝により内周部に全て戻される。これにより、油はスク
ロールの吸入部へは流れ込まず、油上がり現象は発生し
なくなる。

【０００９】

【発明の実施の形態】次に、添付図面を参照して本発明
の好適な実施の形態即ち実施形態について説明するが、
図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。
図１は、本発明の一実施形態に係るスクロール圧縮機の
概要を示す縦断面図であり、円筒形でよい密閉ハウジン
グ１０１の内部には、図示のように、上方部位にスクロ
ール型圧縮機構が、下方もしくは中間部位にモータが収
納されて設置され、該圧縮機構及びモータは、主軸５１
を介して互いに連動するように結合されている。スクロ
ール型圧縮機構は、固定スクロール１１と、旋回スクロ
ール２１と、該旋回スクロール２１の公転旋回運動を許
容するが、その自転は阻止するオルダムリング等の自転
阻止機構（図示せず）と、旋回スクロール２１を支承す
るスラストプレート（滑り軸受）５と、主軸５１を軸支
する主軸受部材１とを含んでいる。この実施形態では、
主軸受部材１とスラストプレート５とが一体構造のもの
として図示されているが、主軸５１を軸支する部分は、
該主軸に嵌合する別体の軸受スリーブ（図示せず）とす
ることができる。尚、オルダムリングの一例は、例えば
特開平８ー３５４９５号公報に示されている。

【００１０】固定スクロール１１は、周知のように、端
板と、その内面もしくは下面から下方に延びる渦巻き状
のラップとを備え、この端板には、図示しない吐出ポー
トが貫通形成されると共に、同吐出ポートを開閉する吐
出弁（図示せず）が設けられている。旋回スクロール２
１は、端板と、その上面から上方に延びる渦巻き状のラ
ップとを備え、固定スクロール及び旋回スクロールのラ
ップは互いに噛み合っている。旋回スクロール２１の端
板下面から下方に延びるように立設された円筒形のボス
部内には、偏心ブッシュ（図示せず）がドライブ軸受２
を介して回転自在に嵌挿され、主軸５１の上端からその
軸心に対して偏心して突出する偏心ピンが回転自在に嵌
合している。固定スクロール１１と旋回スクロール２１
とを相互に所定距離だけ偏心させ、かつ１８０°だけ角
度をずらせてそれらのラップを噛み合わせることによっ
て、複数個の密閉空間が形成される。かかる密閉空間を
画成するラップは、例えば前述した特開平７ー６３１７
４号公報の図７に示されている。

【００１１】スラストプレート５は密閉ハウジング１０
１内に固定されており、このスラストプレート５の上面
に形成されたスラスト面と、旋回スクロール２の端板背
面とが摺接して、スラストプレート５による旋回スクロ
ール２１の支持を行っている。スラスト面には、後述す
る導油路８が符号９で示す部分で開口している。また、
スラストプレート５の上面中心部に図示のように穿設さ
れた円形横断面の穴の頂部開口は、旋回スクロール２１
の端板背面により塞がれ、ドライブ軸受２を収納するた
めの空間４を画成している。この空間４を画成するスラ
ストプレート５の内壁面の下部に臨むように、油戻し穴
６が半径方向外側に下向きに傾斜して穿設されている。

【００１２】主軸５１の下端部には容積型の給油ポンプ
３０が備えられている。そして、この給油ポンプ３０の
吸入口（図示せず）には吸入管が図示のように接続され
ており、その先端は密閉ハウジング１０１の底部の油溜
まりに開口している。また、同給油ポンプ３０の吐出口
（図示せず）は主軸５１内に軸方向に穿設された図示の
給油孔に連通している。この給油孔は主軸５１の内部を
貫いて上方に延びている。

【００１３】スクロール圧縮機の運転時、モータを駆動
することによって主軸５１、偏心ピン、偏心ブッシュ、
ボス部等からなる公転旋回機構を介して、旋回スクロー
ル２１が駆動され、同旋回スクロール２１は、自転阻止
機構によって自転を阻止されながら、公転旋回半径の円
軌道上を公転旋回運動する。このような運動もスクロー
ル型圧縮機では公知である。

【００１４】この運動により、吸入ガスは、図１におい
て密閉ハウジングの左側周面から突設して示された吸入
管を経て密閉ハウジング１０１内に入り、スラストプレ
ート５に貫通形成された軸方向のガス通路を通って、旋
回スクロール２１の吸入通路を経て、前述したラップ間
の密閉空間内に吸入される。そして、この吸入ガスは、
旋回スクロール２１の公転旋回運動により、密閉空間の
容積が周知のように減少するのに伴って圧縮されながら
中央部に至り、固定スクロールの端板に貫通形成された
図示しない吐出ポートから出て吐出弁を押し開き、スク
ロール圧縮機構内に画成された吐出キャビティに入り、
同吐出キャビティに連通するようにスクロール型圧縮機
構に接続された吐出管（図１においてハウジングの頂部
から突出する管）を経て外部に吐き出される。

【００１５】一方、モータの駆動と同時に油ポンプ３０
も駆動されるため、密閉ハウジング１０１の底部の油溜
まりに貯留されていた潤滑油２０１は、吸入管を介して
吸い上げられ、主軸５１内を延びる給油孔に送られる。
次いで、この潤滑油は給油孔内を上方に流れ、油溜まり
７に溜まった後、スラストプレート５の上面に通じる導
油路８を通り同スラストプレート５の外周に近い円環状
給油溝５２（図４）に符号９で示す給油ポイントで給油
された後、図４から了解されるように、放射状給油溝５
３を半径方向の内方に通り、滑り軸受内周側のドライブ
軸受を収納する空間４に流れ込む。その後、空間４に入
った潤滑油の一部は、油戻し穴６から滴下し、モータの
ステータ外周と密閉ハウジング２０１との間に形成され
た通路を通って最終的に密閉ハウジング１０１の底部に
戻り貯留される。

【００１６】図２は、主軸内の給油路に連通する油溜ま
り７の詳細構造を示すもので、主軸５１の側壁には横穴
が図示のように形成されており、該横穴を油溜まり７が
囲んでいる。この油溜まり７には導油路８が連通すると
共に、小断面積の主軸潤滑溝５４が連通している。図３
は主軸の油溜まりの変形実施形態を示しており、主軸５
１の外周に嵌合する軸受メタル５５を上下に離間して２
分割することで油溜まりとなる円環溝を構成する。

【００１７】

【発明の効果】請求項１〜３に記載の本発明によれば、
主軸内の給油孔からの潤滑油を、主軸受部材内に設けら
れた油溜まりに溜め、そこから滑り軸受に供給するた
め、給油ポンプから滑り軸受まで給油圧力を維持したま
ま油を圧送する給油経路を形成できるため、給油ポンプ
の給油圧力が低い場合でも滑り軸受への確実な給油が可
能となる。また、請求項４に記載の本発明によれば、導
油路から滑り軸受の給油ポイント、即ち導油路の開口部
位を滑り軸受の外周に近い円環状給油溝とし、油をこの
円環状給油溝から放射状給油溝に流入させて半径方向の
内方に流しているので、スクロール吸入部から油が圧縮
室に混入し、その後熱交換器へ吐出されるいわゆる油上
がりを防止し、各軸受への給油量を確保できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の一実施形態による滑り軸受への給油
構造を備えた密閉型スクロール圧縮機の概要を示す断面
図である。

【図２】 図１の給油構造の油溜まりを示す部分拡大図
である。

【図３】 本発明の別の実施形態による給油構造の図２
に相当する図である。

【図４】 滑り軸受の平面図である。

【図５】 従来の給油構造を備えた密閉型スクロール圧
縮機の概要を示す断面図である。

【符号の説明】

１…主軸受部材、２…ドライブ軸受、４…ドライブ軸受
を収納する空間、５…スラストプレート（滑り軸受）、
７…油溜まり、８…導油路、９…給油ポイント、１１…
固定スクロール、２１…旋回スクロール、３０…給油ポ
ンプ、５１…主軸、５２…円環状給油溝、５３…放射状
給油溝、５５…軸受メタル、１０１…密閉ハウジング。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鹿内 敏幸 愛知県西春日井郡西枇杷島町字旭町３丁目 １番地 三菱重工業株式会社エアコン製作 所内

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 密閉ハウジング内に主軸受部材を設置し
   て主軸を回転自在に支持し、同主軸の一端をスクロール
   圧縮機構の旋回スクロールに連結して、同旋回スクロー
   ルを固定スクロールに対し自転を阻止しつつ公転旋回運
   動させ、同旋回スクロールに作用する軸方向のスラスト
   力を前記主軸受部材に設けた滑り軸受で支持すると共
   に、前記主軸にモータを装着し、前記密閉ハウジング内
   に充填された潤滑油を前記主軸の他端部に設けた給油ポ
   ンプ及び前記主軸内に設けた給油孔を経て前記滑り軸受
   を含む所要潤滑箇所に給油する密閉型スクロール圧縮機
   において、 前記給油孔を経て供給される油の一部を給油圧力を維持
   したままで溜める油溜まりが前記主軸受部材内に形成さ
   れると共に、前記油溜まりから前記滑り軸受に給油する
   導油路が前記主軸受部材内に設けられていることを特徴
   とする密閉型スクロール圧縮機。
2. 【請求項２】 前記主軸が貫通する前記主軸受部材の貫
   通孔を拡張して環状空間を設けることにより前記油溜ま
   りを形成してなることを特徴とする請求項１記載の密閉
   型スクロール圧縮機。
3. 【請求項３】 前記主軸が貫通する前記主軸受部材の貫
   通孔に２つの軸受メタルを軸方向に離間して設置して該
   軸受メタル間に環状空間を設けることにより前記油溜ま
   りを形成してなることを特徴とる請求項１記載の密閉型
   スクロール圧縮機。
4. 【請求項４】 前記滑り軸受に、その外周近くで円環状
   給油溝を設けると共に、該円環状給油溝から放射状に同
   滑り軸受の内周端に達する放射状給油溝を設け、前記導
   油路を前記円環状給油溝に連通するように形成してなる
   ことを特徴とする請求項１記載の密閉型スクロール圧縮
   機。