JPH10130523A - 水性顔料分散体の製造方法および顔料組成物の製造方法 - Google Patents

水性顔料分散体の製造方法および顔料組成物の製造方法

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JPH10130523A
JPH10130523A JP8285089A JP28508996A JPH10130523A JP H10130523 A JPH10130523 A JP H10130523A JP 8285089 A JP8285089 A JP 8285089A JP 28508996 A JP28508996 A JP 28508996A JP H10130523 A JPH10130523 A JP H10130523A
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pigment
dispersion
resin
surface area
specific surface
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JP8285089A
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English (en)
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Masahiko Asada
匡彦 浅田
Motokazu Ishimori
元和 石森
Nagayuki Takao
長幸 鷹尾
Naoto Saito
直人 斉藤
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DIC Corp
Original Assignee
Dainippon Ink and Chemicals Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 自己水分散性もしくは水溶性の樹脂と顔
料と水とを、直径0.05〜3mmのビーズが充填さ
れ、容量1L当たり2.6KW以上の出力密度、および
6.7m/秒以上の攪拌機外周速度で運転される流通式
湿式ビーズミルを用いて分散させる水性顔料分散体の製
造方法、レーザードップラー式粒度分布測定装置で測定
した分散後の顔料の比表面積の値が、BET法で測定し
た分散前の顔料の比表面積の値、又はTEM法で算出し
た分散前の顔料の比表面積の値に対して、60%以上と
なるまで分散させる水性顔料分散体の製造方法。 【効果】 貯蔵安定性に優れる水性顔料分散体を容易に
得ることができ、樹脂や溶剤を加えて塗料やインキなど
への加工を施した後でもなお貯蔵安定性に優れている。
この水性顔料分散体を濃縮して得られた顔料分散組成物
もまた、様々な用途向けに樹脂や溶剤を加えて加工を施
しても、貯蔵安定性に優れている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規にして有用な
る水性顔料分散体の製造方法、ならびに顔料組成物の製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年の環境問題に対応して、徐々に印刷
インキや塗料を使用する分野では水性化が進んでいる。
水性インキや水性塗料に使用される顔料は、その多くが
有機顔料であり、水中への分散においては水の大きな表
面張力の故に、非水系の分散に比べてなお一層困難をき
わめている。
【0003】顔料は、発色性や透明性を上げるためにで
きるだけ微細化し、その状態を安定に保持することが望
ましいことが多い。水中への顔料分散の手段としての湿
式分散方法としては、非水系と同様に、攪拌羽根の回転
によって細い隙間を通過させたり、速い流速によって伸
張力から顔料を分散させる回転翼式分散機などによる方
法や、ガラスビーズやセラミックビーズなどの粉砕媒介
物を用いた、物理的な衝撃によって分散する、攪拌式ビ
ーズミルや振盪式ビーズミルなどによる方法等が挙げら
れ、さまざまな手段での顔料分散が行われている。これ
らは、いずれの方法でも、その出力や回転速度、運転時
間などの条件設定によって、顔料の分散粒子径をある程
度制御することができる。
【0004】しかし、一方で、顔料を微細にすればする
ほど表面エネルギーの増加により、同時に凝集エネルギ
ーが大きくなるため、再凝集が起こりやすくなり、結局
は微細化した顔料分散体の貯蔵安定性が損なわれるとい
った弊害が生じてくる。そのため、分散系には目的の水
性樹脂の他に、往々にして微細化や安定化のための様々
な添加剤が加えられることが一般的である。
【0005】顔料の微細化や安定化のためには、界面活
性剤や水溶性樹脂を使用して粉末顔料を分散する方法が
一般的であり、現在でも広く行われている。しかしなが
ら、界面活性剤を用いて分散された顔料を含有するイン
キや塗料は、界面活性剤の分子量が小さいことから界面
活性剤が表面にブリードしやすく、得られる塗膜の耐水
性がきわめて悪くなり、限られた用途にしか使用できな
いという問題がある。また、界面活性剤の代わりに水溶
性樹脂を用いて分散させた場合、表面へのブリードは幾
分抑えられるにしても、インキや塗料に応用する際に加
える最終樹脂毎に、相溶性のいい水溶性樹脂をその都度
使い分けなければならず、汎用性がつねに問題となって
いた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように多くの検討
がなされているものの、これまでの諸技術ではその適用
範囲が広いとは言い難く、顔料分散体の設計には必ずし
も満足のいくものではなかった。
【0007】本発明が解決しようとする課題は、幅広い
顔料系において貯蔵安定性に優れ、なおかつ水性樹脂を
添加して塗料化又はインキ化した後でも貯蔵安定性が良
好であり、それを塗膜化した後の光沢も良好な水性顔料
分散体の製造方法、ならびに顔料組成物の製造方法を見
い出すことにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者らは、新
規にして有用なる水性顔料分散体の製造方法、ならびに
顔料組成物の製造方法について鋭意検討した結果、自己
水分散性あるいは水溶性の樹脂と顔料と水とを、流通式
湿式ビーズミルを用いて特定の運転条件で強力に分散し
て顔料を微粒子化すると、好ましくはレーザードップラ
ー式粒度分布測定装置で求めた分散後の顔料の表面積
が、特定の方法で測定した分散前の顔料の比表面積の値
に対して60%以上、更に好ましくは80〜500%と
なるまで顔料を分散微粒子化すると、共存する自己水分
散性あるいは水溶性の樹脂の吸着による保護作用が働
き、貯蔵安定性に優れる水性顔料分散体が容易に得られ
ること、得られた水性顔料分散体にさらに樹脂や溶剤を
加えて塗料やインキなどへの加工を施した後でもなお貯
蔵安定性に優れていること、加えてこの水性顔料分散体
を濃縮して得られた顔料組成物もまた、様々な用途向け
に樹脂や溶剤を加えて加工を施しても、貯蔵安定性に優
れていること等を見い出した。
【0009】更に、上記流通式湿式ビーズミルを用いる
分散方法でなくとも、レーザードップラー式粒度分布測
定装置で求めた分散後の顔料の表面積が、特定の方法で
測定した分散前の顔料の比表面積の値に対して60%以
上、好ましくは80〜500%となるまで顔料を分散微
粒子化すると、流通式湿式ビーズミルを用いる分散方法
で分散したのと同様の水性顔料分散体や顔料組成物が得
られることも見い出した。
【0010】即ち、本発明は、(1) 自己水分散性も
しくは水溶性の樹脂と顔料と水とを、直径0.05〜3
mmのビーズが充填され、容量1L(リットル)当たり
2.6KW以上の出力密度および6.7m/秒以上の攪
拌機外周速度で運転される流通式湿式ビーズミルを用い
て分散させることを特徴とする水性顔料分散体の製造方
法、(2) 容量1L当たり2.6〜4.2KWの出力
密度、および9〜20m/秒の攪拌機外周速度で運転さ
れる流通式湿式ビーズミルを用いて分散させる上記
(1)記載の水性顔料分散体の製造方法、(3) 直径
0.1〜1mmのビーズが充填された流通式湿式ビーズ
ミルを用いる上記(1)又は(2)記載の水性顔料分散
体の製造方法、(4) 流通式湿式ビーズミルが、縦型
流通式湿式ビーズミルである上記(1)、(2)又は
(3)記載の水性顔料分散体の製造方法、
【0011】(5) レーザードップラー式粒度分布測
定装置で測定した分散後の顔料の比表面積の値が、BE
T法で測定した分散前の顔料の比表面積の値、又は透過
式の電子顕微鏡(TEM)で観察された顔料の一次粒子
を、その形から長辺a(m)、短辺b(m)の直方体、
一辺b(m)の立方体又は直径b(m)の球体のいずれ
かに分類すると共にaとbを測定し、これらの平均値と
顔料の比重d(g/m3 )から算出した分散前の顔料の
比表面積の値(以下、「TEM法で算出した分散前の顔
料の比表面積の値」と略す)に対して、60%以上とな
るまで分散させる上記(1)〜(4)のいずれか1つに
記載の水性顔料分散体の製造方法、
【0012】(6) レーザードップラー式粒度分布測
定装置で測定した分散後の顔料の表面積の値が、BET
法で測定した分散前の顔料の比表面積の値又はTEM法
で算出した分散前の顔料の比表面積の値に対して80〜
500%となるまで顔料を分散させる上記(5)記載の
水性顔料分散体の製造方法、
【0013】(7) 自己水分散性もしくは水溶性の樹
脂と顔料と水とを、レーザードップラー式粒度分布測定
装置で測定した分散後の顔料の比表面積の値が、BET
法で測定した分散前の顔料の比表面積の値、又はTEM
法で算出した分散前の顔料の比表面積の値に対して、6
0%以上となるまで分散させることを特徴とする水性顔
料分散体の製造方法、(8) レーザードップラー式粒
度分布測定装置で測定した分散後の顔料の表面積の値
が、BET法で測定した分散前の顔料の比表面積の値又
はTEM法で算出した分散前の顔料の比表面積の値に対
して80〜500%となるまで顔料を分散させる上記
(7)記載の水性顔料分散体の製造方法、
【0014】(9) 樹脂が、数平均分子量1,000
〜200,000の樹脂である上記(1)〜(8)のい
ずれか1つに記載の水性顔料分散体の製造方法、(1
0) 数平均分子量1,000〜200,000の樹脂
が、カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基の一部乃
至全部を中和してなる樹脂である上記(9)記載の水性
顔料分散体の製造方法、(11) カルボキシル基含有
樹脂のカルボキシル基の一部乃至全部を中和してなる樹
脂が、数平均分子量5,000〜200,000のビニ
ル系共重合体である上記(10)記載の水性顔料分散体
の製造方法、
【0015】(12) 上記(1)〜(11)の製造方
法で得られた水性顔料分散体を濃縮することを特徴とす
る顔料組成物の製造方法、(13) 上記(10)又は
(11)記載の製造方法で得られた水性顔料分散体に、
酸性化合物を加えて該水性顔料分散体中の樹脂を顔料と
共に沈降させた後、濃縮することを特徴とする顔料組成
物の製造方法、を提供するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】尚、BET法による顔料の比表面
積は、乾燥顔料に対してのみ測定できるものであり、顔
料が水分散体、ウェットケーキ等のような乾燥状態にな
い顔料である場合、顔料を乾燥・粉砕する必要がある。
しかしながら、すでに水中に分散している顔料を乾燥さ
せると、往々にして強い凝集が起こり、十分な粉砕がで
きずに比表面積の値が不適当な値となってしまう。そこ
で、本発明では、分散前の顔料の比表面積の値として、
乾燥顔料を用いる場合にはBET法で測定した分散前の
顔料の比表面積の値を、また、初めから水分散体やウェ
ットケーキのように乾燥状態にない顔料を使用する場合
には、TEM法で算出した分散前の顔料の比表面積の値
を、それぞれ採用する。
【0017】以下にTEM法による分散前の顔料の比表
面積の算出方法について説明する。顔料の一次粒子は様
々な形を持つ。直方体のもの、立方体のもの、多角形の
角柱のもの、複雑な多面体のもの、球体のものなど様々
であり、表面積の値を一次粒子の形から求めるにはそれ
ぞれの粒子の形に応じた計算方法が必要である。もちろ
ん正確に求めるほど望ましいが、場合によってはこれは
極めて困難な計算となる。発明者等は、透過式の電子顕
微鏡(TEM)で観察して顔料の一次粒子粒子の形を直
方体と立方体と球体の3つに大別し、簡易的に算出した
比表面積の値も、BET法での比表面積の値と同様に採
用できることを見い出した。
【0018】電子顕微鏡(TEM)で観察した顔料の一
次粒子を、直径b(m)の球体であると判別した場合、
その体積は3.14×b3/6 、表面積は3.14×b
2 である。この顔料の比重をd(g/m3)とすると、
この顔料の比表面積(m3/g)は表面積/(体積×比
重)であり、 3.14×b2×6/(3.14×b3×d) =6/(b×d) ・・・(1) で表すことができる。
【0019】また、顔料粒子を立方体であると判別した
場合、一辺の長さをb(m)とすると、その体積はb
3 、表面積は6×b2 である。この顔料の比重をd(g
/m3)とすると、この顔料の比表面積( m3/g)は
表面積/(体積×比重)であり、 6×b2/(b3×d)=6/(b×d) ・・・(2) で表すことができる。
【0020】顔料粒子を一辺b(m)の正方形を底面と
する高さa(m)の直方体(a>b)であると判別した
場合、その体積はa×b2、表面積は4×a×b+2×
2である。この顔料の比重をd(g/m3)とすると、
この顔料の比表面積(m3/g)は表面積/(体積×比
重)であり、この顔料の比表面積は、 (4×a×b+2×b2)/(a×b2×d) =4/(b×d)+2/(a×d) ・・・(3) で表すことができる。ここでa>>bの場合、(3)式
の第2項は第1項に対して無視することができ、(3)
式は 4/(b×d) ・・・(4) で表すことができる。
【0021】顔料粒子を一辺a(m)の正方形を底面と
する高さb(m)の直方体(a>b)であると判別した
場合、その体積はa2×b、比表面積は4×a×b+2
×a2である。この顔料の比重をd(g/m3)とする
と、この顔料の比表面積(m3/g)は表面積/(体積
×比重)であり、この顔料の比表面積は、 (4×a×b+2×a2)/(a2×b×d) =4/(a×d)+2/(b×d) ・・・(5) で表すことができる。これもまたa>>bの場合、
(5)式の第1項は第2項に対して無視することがで
き、(5)式は 2/(b×d) ・・・(6) で表すことができる。
【0022】尚、これらの式において計算した値は、概
ねBETの比表面積と一致する。
【0023】本発明で使用する自己水分散性もしくは水
溶性の樹脂としては、乳化剤等の添加がなくても水に分
散することが可能な樹脂もしくは水に溶解可能な樹脂で
あればよいが、通常は、カルボキシル基、スルホン酸基
などのような種々の酸性基;第1級、第2級、第3級ア
ミノ基、第4級アンモニウムなどのような種々の塩基性
基;更に必要に応じて、水酸基、オキシアルキレン基な
どのような種々の親水性基等を有する樹脂を中和せしめ
ることによって、例えば、当該樹脂中のカルボキシル基
をトリエチルアミンのような各種の塩基性化合物を用い
て中和せしめることによって、あるいは当該樹脂中の第
3級アミノ基を酢酸のような各種の酸性化合物を用いて
中和せしめることによって、自己水分散性化もしくは水
溶性化された樹脂等を用いる。
【0024】当該自己水分散性もしくは水溶性の樹脂の
一例を示すと、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポ
リウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ロジン変性樹脂で
あって、上記のようにして自己水分散性化もしくは水溶
性化された樹脂が挙げられ、なかでも酸性基や塩基性基
の導入の容易さ、皮膜とした時の強靭性などに優れるこ
とから、自己水分散性化もしくは水溶性化されたビニ
ル系樹脂、自己水分散性化もしくは水溶性化されたポ
リエステル系樹脂、自己水分散性化もしくは水溶性化
されたポリウレタン系樹脂が好ましい。
【0025】以下に、上記〜の自己水分散性化もし
くは水溶性化された樹脂を順次説明する。
【0026】まず、自己水分散性化もしくは水溶性化
されたビニル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリ
ル酸エステル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−スチ
レン共重合体樹脂、スチレン−(無水)マレイン酸共重
合体樹脂、含フッ素ビニル系共重合体樹脂等であって、
酸性基もしくは塩基性基、例えば、カルボキシル基もし
くはアミノ基を導入せしめた樹脂を用い、この樹脂中の
酸性基もしくは塩基性基の一部ないし全部を中和したも
の等が挙げられる。また、これらの樹脂は、更に必要に
応じて、親水性基、例えば、水酸基やオキシアルキレン
基を導入せしめて樹脂の親水性を向上させても良い。
【0027】ここで用いる酸性基もしくは塩基性基を導
入せしめたビニル系樹脂は、例えば、カルボキシル基等
の酸性基を有する重合性ビニルモノマーもしくはアミノ
基等の塩基性基を有する重合性ビニルモノマーと、その
他の重合性ビニルモノマーと、更に必要に応じて、水酸
基、オキシアルキレン基等の親水性基を有する重合性ビ
ニルモノマーとを共重合する方法等によって容易に製造
することができる。
【0028】カルボキシル基等の酸性基を有する重合性
ビニルモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタク
リル酸、クロトン酸等のような不飽和モノカルボン酸;
フマル酸、イタコン酸、マレイン酸等のような不飽和ジ
カルボン酸;マレイン酸モノブチル、イタコン酸モノブ
チルのような不飽和ジカルボン酸モノアルキル類などが
挙げられ、なかでも(メタ)アクリル酸等の不飽和モノ
カルボン酸が好ましい。尚、カルボキシル基を有する重
合性ビニルモノマーとして多価カルボン酸の酸無水物を
用いても良い。
【0029】アミノ基等の塩基性基を有する重合性ビニ
ルモノマーとしては、例えば、アミノメチル(メタ)ア
クリレート、アミノエチル(メタ)アクリレートの如き
第一級アミノ基を有する重合性ビニルモノマー;モノメ
チルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノエチルア
ミノメチル(メタ)アクリレート、モノ−n−プロピル
アミノエチル(メタ)アクリレート、モノ−t−ブチル
アミノエチル(メタ)アクリレートの如き第二級アミノ
基を有する重合性ビニルモノマー;ジメチルアミノエチ
ル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メ
タ)アクリレート、ジ−n−プロピルアミノエチル(メ
タ)アクリレートの如き第三級アミノ基を有する重合性
ビニルモノマー等が挙げられ、なかでも第三級アミノ基
を有する重合性ビニルモノマー、特に第三級アミノ基を
有する(メタ)アクリル系モノマーが好ましい。
【0030】上記酸性基もしくは塩基性基を有する重合
性ビニルモノマーと共に用いるその他の重合性ビニルモ
ノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、
α−メチルスチレンの如き芳香族ビニルモノマー類;メ
チル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレー
ト、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メ
タ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレ
ート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘ
キシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アク
リレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル
(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリ
レート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、エトキ
シジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジ
ル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレー
ト、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イ
ソボルニル(メタ)アクリレートの如き(メタ)アクリ
ル酸エステル類;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサ
チック酸ビニル、プロピオン酸ビニルの如きビニルエス
テル類;(メタ)アクリロニトリルの如き重合性ニトリ
ル類;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオ
ロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン又はクロロトリ
フルオロエチレンの如きフッ素原子を有するビニルモノ
マー類などが挙げられる。
【0031】更に、必要に応じて上記の重合性ビニルモ
ノマーと共に用いる親水性基を有する重合性ビニルモノ
マーとしては、例えば、β−ヒドロキシエチル(メタ)
アクリレート、β−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリ
レート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート
類;エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポ
リエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のエ
チレングリコール(メタ)アクリレート類などが挙げら
れ、なかでもβ−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレー
トが好ましい。
【0032】これら重合性ビニルモノマーの重合方法と
しては、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、溶液重合など
公知の各種重合方法が利用できるが、溶液重合が簡便な
ので好ましい。重合開始剤としては、公知の過酸化物や
アゾ系化合物が使用できる。
【0033】尚、上記の他、酸性基を導入せしめたビニ
ル系共重合体として、水酸基を有するビニル系共重合体
に、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水
フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリッ
ト酸等の無水多塩基酸を付加反応せしめて得られる、カ
ルボキシル基含有ビニル系共重合体も使用することがで
きる。
【0034】次に、自己水分散性化もしくは水溶性化
されたポリエステル系樹脂としては、例えば、飽和ポリ
エステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂
等であって、酸性基もしくは塩基性基、例えば、カルボ
キシル基もしくはアミノ基を導入せしめた樹脂を用い、
この樹脂中の酸性基もしくは塩基性基の一部ないし全部
を中和したもの等が挙げられる。また、これらの樹脂
は、更に必要に応じて、親水性基、例えば、水酸基やオ
キシアルキレン基を導入せしめて樹脂の親水性を向上さ
せても良い。
【0035】ここで用いる酸性基を導入せしめたポリエ
ステル系樹脂は、例えば、ポリカルボン酸類とポリオー
ル類とを、好ましくはジカルボン酸類とジオール類を主
成分として、更に必要に応じて、モノカルボン酸類、モ
ノアルコール類、他のモノマー等と共に、カルボキシル
基が残存するように、溶融法、溶剤法などの公知の方法
により脱水縮合反応させる方法等により製造することが
できる。
【0036】また、塩基性基を導入せしめたポリエステ
ル系樹脂は、例えば、ポリカルボン酸類とアミノ基等の
塩基性基を有するポリオール類とを、好ましくはジカル
ボン酸類とアミノ基等の塩基性基を有するジオール類と
を主成分として、更に必要に応じて、モノカルボン酸
類、他のアルコール類、他のモノマー等と共に、溶融
法、溶剤法等の公知の方法により脱水縮合反応させる方
法等により製造することができる。
【0037】上記ポリカルボン酸類としては、酸無水物
であっても良く、例えば、アジピン酸、(無水)コハク
酸、セバシン酸、ダイマー酸、(無水)マレイン酸、
(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テト
ラヒドロ(無水)フタル酸、ヘキサヒドロ(無水)フタ
ル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、2,6−ナフタレン
ジカルボン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロ
メリット酸などが挙げられ、モノカルボン酸類として
は、例えば、安息香酸、p−ターシャリブチル安息香
酸、ロジン、水添ロジン、脂肪酸などが挙げられる。
【0038】また、塩基性基を有するポリオール類とし
ては、例えば、N,N′−ジエタノールメチルアミン、
N,N′−ジエタノールエチルアミン、N,N′−ジエ
タノールプロピルアミン、N,N′−ジエタノールブチ
ルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられ、なかで
も第三級アミノ基を有するジオール類が好ましい。
【0039】他のポリオール類としては、例えば、エチ
レングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレン
グリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリ
コール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,
2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブ
タンジオール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘ
キサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノー
ル、1,5−ペンタンジオール、ビスフェノールAのア
ルキレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールA、水
添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポ
リエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポ
リテトラメチレングリコールの如きジオール類;グリセ
リン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタ
ン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリスヒド
ロキシエチルイソシアヌレートの如きポリオール類、分
子片末端に水酸基を2個有するマクロモノマー類などが
挙げられる。尚、「カージュラ E−10」(シェル化
学工業株式会社製の合成脂肪酸のグリシジルエステル)
などのモノグリシジル化合物類も、ジオール類と同様に
使用できる。
【0040】尚、上記の他、酸性基を導入せしめたポリ
エステル樹脂として、水酸基を有するポリエステル樹脂
に、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水
フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリッ
ト酸等の無水多塩基酸を付加反応せしめて得られるカル
ボキシル基含有ポリエステル樹脂も使用することができ
る。
【0041】自己水分散性化もしくは水溶性化された
ポリウレタン系樹脂としては、前記したように、酸性基
もしくは塩基性基、例えば、カルボキシル基もしくはア
ミノ基を導入せしめたポリウレタン系樹脂を用い、この
樹脂中の酸性基もしくは塩基性基の一部ないし全部を中
和したもの等が挙げられる。
【0042】ここで用いる酸性基を有するポリウレタン
系樹脂は、例えば、酸性基を有するポリオール類とポリ
イソシアネート類とを、好ましくはジメチロールプロピ
オン酸、ジメチロールブタン酸、酒石酸のようなカルボ
キシル基を有するジオール類とジイソシアネート類とを
主成分として、更に必要に応じて、他のアルコール類、
他のモノマー等と共に反応させることにより製造するこ
とができる。
【0043】また、塩基性基を有するポリウレタン系樹
脂は、例えば、塩基性基を有するポリオール類とポリイ
ソシアネート類とを、好ましくはN,N′−ジエタノー
ルメチルアミン、N,N′−ジエタノールエチルアミン
等の第三級アミノ基を有するジオール類とジイソシアネ
ート類とを主成分として、更に必要に応じて、他のアル
コール類、他のモノマー等と共に反応させることにより
製造することができる。
【0044】ポリオール類としては、前記のポリエス
テル系樹脂の製造に用いるポリオール類を使用すること
ができる。
【0045】ポリイソシアネート類としては、例えば、
2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレン
ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソ
シアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、フェニ
レンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシア
ネート、メタキシリレンジイソシアネート、イソホロン
ジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水
添4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添
メタキシリレンジイソシアネート、粗製4,4′−ジフ
ェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート
類、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のポリ
イソシアネート類等が挙げられる。
【0046】ポリウレタン系樹脂の製造は、常法に従え
ばよい。例えば、イソシアネート基と反応しない不活性
な有機溶剤溶液中で、室温又は40〜100℃程度の温
度で付加反応を行うのが好ましい。その際、ジブチル錫
ジラウレート等の公知の触媒を使用しても良い。
【0047】ポリウレタン系樹脂を製造する際の反応系
には、ジアミン、ポリアミン、N−メチルジエタノール
アミンの如きN−アルキルジアルカノールアミン;ジヒ
ドラジド化合物などの公知の鎖伸長剤も使用できる。
【0048】自己水分散性もしくは水溶性の樹脂を得る
ために用いる酸性基を有する樹脂中の酸性基の量は、中
和した時の水への分散性もしくは溶解性と耐水性とに優
れることから、酸価が30〜200mgKOH/gとな
る範囲が好ましく、50〜150mgKOH/gとなる
範囲がより好ましい。
【0049】同様に、塩基性基を有する樹脂中の塩基性
基の量は、中和した時の水への分散性もしくは溶解性と
耐水性とに優れることから、アミン価が30〜500m
gKOH/gとなる範囲が好ましく、60〜350mg
KOH/gとなる範囲がより好ましい。
【0050】また、本発明で用いる自己水分散性もしく
は水溶性の樹脂としては、微細な水性顔料分散体を得ら
れ、しかも水性顔料分散体を被覆剤に使用した時に良好
な塗膜が形成できることから、数平均分子量が1,00
0〜200,000の範囲にあるものが好ましく、カル
ボキシル基を含有しており、その一部乃至全部を中和し
てなる樹脂が特に好ましい。なかでも、ビニル系樹脂お
よびポリウレタン系樹脂としては、数平均分子量が5,
000〜200,000の範囲にあるものが、ポリエス
テル系樹脂としては、数平均分子量が1,000〜10
0,000の範囲にあるものが望ましく、数平均分子量
が5,000〜200,000の範囲にあるビニル系樹
脂が最も望ましい。
【0051】本発明で用いる顔料としては、特に限定さ
れるものではないが、一例を示すと、キナクリドン系顔
料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、
フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、ア
ンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバン
スロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール
系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アント
ラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾ
ロン系顔料又はアゾ系顔料などの有機顔料、カーボンブ
ラック、酸化チタン、弁柄などの無機顔料等が挙げられ
る。これらは粉体として用いても、ウェットケーキとし
て用いても、あるいは水性スラリーとして用いてもかま
わない。
【0052】本発明の製造方法を実施するに際しては、
自己水分散性もしくは水溶性の樹脂と顔料と水とをあら
かじめ混合した後、流通式湿式ビーズミル等の分散装置
に投入して分散させることが好ましい。上記自己水分散
性もしくは水溶性の樹脂として、酸性基又は塩基性基を
有する樹脂を中和せしめて自己水分散性化もしくは水溶
性化した樹脂を用いる場合、分散装置に投入する前にお
ける、酸性基又は塩基性基を有する樹脂の中和の時期、
樹脂と顔料と水の混合順序等に特に限定はないが、例え
ば、酸性基又は塩基性基を有する樹脂を中和した後、こ
の樹脂と顔料と水を混合する方法や、塩基性化合物又は
酸性化合物を含有する水中に、酸性基又は塩基性基を有
する樹脂と顔料とを加えて混合する方法等が挙げられ、
なかでも均一な混合物が比較的容易に得られることから
酸性基又は塩基性基を有する樹脂を中和した後、この樹
脂と顔料と水を混合する方法が好ましい。
【0053】混合方法は、特に限定されないが、通常の
低シェアーでの撹拌、ホモジナイザーなどでの高シェア
ー撹拌、あるいは、超音波などを使用して行ってもよ
い。また、水中への分散を補助する目的でもって、界面
活性剤や保護コロイドなどを、塗膜の耐水性を著しく低
下させない範囲で併用することもできる。
【0054】ここで中和のために用いる塩基性化合物と
しては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等
の無機塩基;アンモニア、トリエチルアミン、トリブチ
ルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジイソプロパノ
ールアミン、モルホリン等の有機アミンなどが挙げられ
る。
【0055】また、酸性化合物としては、例えば、塩
酸、硫酸、燐酸、硝酸等の無機酸類;蟻酸、酢酸、乳
酸、プロピオン酸等の有機酸などが挙げられる。
【0056】ところで、ここで用いる水に自己分散又は
溶解した樹脂が、有機溶剤を含有していても差し支えな
いし、脱溶剤を行って実質的に水のみの媒体であっても
よい。顔料は、粉末顔料、水性スラリー、プレスケーキ
のいずれも使用できる。水性媒体中で分散する場合、顔
料は、製造工程を簡略化するために、顔料粒子の2次凝
集の少ない、水性スラリー又はプレスケーキを使用する
ことは好ましい。
【0057】自己水分散性もしくは水溶性の樹脂と顔料
を水中に分散する方法としては、分散能力と分散効率が
高いことから、容量1L(リットル)当たり2.6KW
以上の出力密度、および6.7m/秒以上の攪拌機外周
速度で運転される流通式湿式ビーズミルを用いる分散方
法が挙げられ、なかでも容量1L当たり2.6〜4.2
KW以上の出力密度、および9〜20m/秒の攪拌機外
周速度で運転される流通式湿式ビーズミルを用いる分散
方法が望ましい。
【0058】本発明の製造方法で自己水分散性もしくは
水溶性の樹脂と顔料とを水中に分散させる方法として
は、分散能力と分散効率が高いことから、容量(ビーズ
が充填された分散容器)1L当たり2.6KW以上の出
力密度、および6.7m/秒以上、特に容量1L当たり
2.6〜4.2KW以上の出力密度、および9〜20m
/秒の攪拌機外周速度で運転される流通式湿式ビーズミ
ルを用いて分散させる方法が望ましいが、レーザードッ
プラー式粒度分布測定装置で測定した分散後の顔料の比
表面積の値が、BET法で測定した分散前の顔料の比表
面積の値、又はTEM法で算出した分散前の顔料の比表
面積の値に対して、60%以上となるまで分散させるこ
とが可能な方法であれば、他の方法であってもよく、例
えばホモディスパーのような撹拌翼の揃断力による分散
方法、ペイントコンディショナーやサンドミルのような
ビーズの衝突による分散方法などが挙げられる。
【0059】上記流通式湿式ビーズミルは、送液ポンプ
によって試料を分散機内部に送り込み、分散機内部に充
填した分散媒体であるビーズを撹拌翼で回転しながら、
ビーズ、撹拌翼、分散機内壁等の間で生じる衝突によっ
て分散し、次いで必要に応じて循環させて更に分散させ
た後、スリットを通して試料だけを分離、回収するもの
で、このような流通式湿式ビーズミルの一例を示すと、
ダイノーミル、ボアミル、ビスコミル、モーターミルな
どが挙げられる。
【0060】また、流通式湿式ビーズミルは、従来横型
のものが主流であったが、近年縦型のものも登場し、ビ
ーズの偏りが生じない点でさらに分散効率が向上してお
り、好ましい。
【0061】流通式湿式ビーズミルで使用するビーズの
種類は、特に制約されるものではないが、一例としてガ
ラスビーズ、酸化ジルコニアビーズ、スチールビーズ、
セラミックビーズなどが挙げられる。ビーズの充填量も
また特に制約されるものではないが、一例として装置内
容積の20〜90%が望ましく、特に70〜85%が最
も望ましい。
【0062】ビーズの大きさとしては細かくなるほど分
散能力が上がる反面、フィルターでのビーズの分離のた
めに大きな圧力を必要とするため、適正な範囲、例え
ば、直径0.05〜3mm、好ましくは直径0.1〜1
mmのビーズを用いる。
【0063】流通式湿式ビーズミルの運転条件は、前記
したように容量1L当たり2.6KW以上の出力密度、
および6.7m/秒以上の攪拌機外周速度、好ましくは
容量1L当たり2.6〜4.2KW以上の出力密度、お
よび9〜20m/秒の攪拌機外周速度であることが必須
であるが、その他の条件は、装置の種類、大きさ(容
量)、分散試料(樹脂と顔料と水の混合物)の種類や
量、攪拌機外周速度、分散試料の流通速度などによって
適宜設定される。例えば、分散試料の流通速度は、分散
容器内に充填されているビーズの容量を差し引いた残り
の容量1L当たり、通常10〜1000ml/min、
好ましくは50〜500ml/minであり、分散容器
内での滞留時間は、合計で、通常10分間以上、好まし
くは30分間〜5時間である。具体例を挙げると、容量
2Lの分散容器を持つ流通式湿式ビーズミルに容量1L
のビーズを充填すると、分散容器内に充填されているビ
ーズの容量を差し引いた残りの容量は1Lであり、この
中を100ml/minの速度で分散試料を流通させる
と、分散容器内での滞留時間は10分間で、これを4回
循環させると、分散容器内での滞留時間の合計は40分
間となる。
【0064】分散試料中の顔料と樹脂と水の使用割合
は、特に制限されないが、一般的には顔料が2〜60重
量%、樹脂が1〜50重量%、水30〜90重量%の範
囲であり、顔料が有機顔料の場合、通常有機顔料2〜4
0重量%、樹脂が1〜50重量%、水40〜90重量
%、好ましくは有機顔料10〜30重量%、樹脂が10
〜40重量%、水40〜80重量%となる範囲が望まし
く、また、顔料が無機顔料の場合、無機顔料5〜60重
量%、樹脂が1〜50重量%、水30〜90重量%、好
ましくは無機顔料15〜50重量%、樹脂が10〜40
重量%、水30〜75重量%となる範囲が望ましい。
尚、有機顔料と無機顔料を併用した場合は、顔料の重量
比に応じて適宜比例配分することが望ましい。
【0065】上記流通式湿式ビーズミルを用いる分散方
法を実施するに際しての分散の程度は、特に限定される
ものではないが、なかでもレーザードップラー式粒度分
布測定装置で測定した分散後の顔料の比表面積の値が、
BET法で測定した分散前の顔料の比表面積の値、又は
TEM法で算出した分散前の顔料の比表面積の値に対し
て、60%以上となるまで分散させることが好ましく、
特に80〜500%となるまで分散させることが好まし
い。
【0066】一方で、上記流通式湿式ビーズミルを用い
た方法以外の分散方法であっても、レーザードップラー
式粒度分布測定装置で測定した分散後の顔料の比表面積
の値が、BET法で測定した分散前の顔料の比表面積の
値、又はTEM法で算出した分散前の顔料の比表面積の
値に対して、60%以上となるまで、好ましくは80〜
500%となるまで分散させれば、上記流通式湿式ビー
ズミルを用いた分散方法と同様の水性顔料分散体が得ら
れる。例えば、ホモディスパーのような撹拌翼の揃断力
による分散方法、ペイントコンディショナーやサンドミ
ルのようなビーズの衝突による分散方法などが挙げられ
る。
【0067】このようにして得られる水性顔料分散体
は、濃縮して顔料組成物としてから使用することもでき
る。水性顔料分散体の濃縮方法は、いろいろあり、特に
限定されないが、例えば水性顔料分散体を減圧蒸留し
て、水等の分散媒を除去して濃縮する方法であるとか、
水性顔料分散体中に自己分散あるいは溶解している樹脂
に、酸性化合物又は塩基性化合物を加えてpHを変える
ことによって樹脂の溶解度を著しく低下させ、樹脂を顔
料と共に沈降させた後、過剰の分散媒を除去して濃縮す
る方法等が挙げられ、なかでも後者の濃縮方法が好まし
い。この濃縮の際に除去される水等の分散媒の量は、水
性顔料分散体中に含まれている分散媒の全量に対して、
通常30〜80重量%、好ましくは40〜60重量%と
なる量である。尚、上記後者の濃縮方法でpHを変える
のに用いる酸性化合物又は塩基性化合物としては、特に
限定はないが、通常は酸性基又は塩基性基を有する樹脂
の中和用として前記した酸性化合物又は塩基性化合物か
ら適宜選択して用いる。
【0068】本発明の製造方法によれば、自己水分散性
もしくは水溶性の樹脂の共存下で十分な分散力が効率的
に顔料に与えられるので、顔料の粒子径が細かくなり、
かつ樹脂の被覆による分散安定化が同時に達成でき、か
くして得られた水性顔料分散体は貯蔵安定性に優れてい
る。また、これらの水性顔料分散体は、既に顔料が樹脂
を吸着しており、水等の分散媒を除去、濃縮することに
よって、更に顔料と樹脂の吸着が強固なものとなり、得
られた顔料組成物もまた、塗料やインキなどの様々な用
途向けに樹脂や溶剤を加えて加工を施しても、なお優れ
た貯蔵安定性を保っている。
【0069】かくして得られた、本発明の水性顔料分散
体および顔料組成物は、主として、水性樹脂とワニスと
共に分散せしめることによって、水性塗料や水性インキ
などとして調製される。
【0070】そして、かくして調製される水性塗料およ
び水性インキは、いずれも、貯蔵安定性等に優れている
ものであって、極めて良好なる塗料、インキ及び塗膜を
与える。したがって、本発明の水性顔料分散体ならびに
顔料組成物は、極めて実用性の高いものであると言え
る。
【0071】
【実施例】次に、本発明を参考例、実施例および比較例
により、具体的に説明するが、もちろん本発明は以下の
例のみに限定されるものではない。なお、以下におい
て、部は重量基準であるものとする。
【0072】また、例中における樹脂の分子量、レーザ
ードップラー式粒度分布測定装置で測定した分散後の顔
料の比表面積、BET法で測定した分散前の顔料の比表
面積、TEM法で算出した分散前の顔料の比表面積、T
EM法での計算に用いた顔料の比重は、以下のように測
定して得たものである。
【0073】(1)樹脂の分子量:GPC(ゲルパーミ
エーションクロマトグラフィー)により測定したスチレ
ン換算の分子量。
【0074】(2)レーザードップラー式粒度分布測定
装置で測定した分散後の顔料の比表面積:水性顔料分散
体を測定に適当な濃度(シグナルレベルが0.6〜0.
8となる濃度)になるまで撹拌下に水で希釈し、測定値
のバラツキが±3%となるまで更によく撹拌した後、U
PA−150(日揮装製レーザードップラー式粒度分布
測定装置)を用いて、測定時間600秒の条件で3回測
定して顔料1ml当たりの比表面積の平均値を得、これ
を顔料1g当たりの比表面積に換算して得た比表面積。
【0075】(3)BET法で測定した分散前の顔料の
比表面積:フローソーブII 2300(島津製作所製比
表面積測定装置)により測定して得た比表面積。
【0076】(4)TEM法で算出した分散前の顔料の
比表面積:JEN−200CX(日本電子製透過式電子
顕微鏡を用い、顔料の一次粒子形状が十分に認識できる
倍率(例えば、10,000〜100,000倍)で目
視し、顔料の一次粒子形状を、長辺(a)×長辺(a)
×短辺(b)の直方体、長辺(a)×短辺(b)×短辺
(b)の直方体、立方体、又は、球体のいずれかに分類
し、次いで、これを写真撮影し、写真内の短辺(b)の
寸法が3〜20mmとなるまで写真を拡大し、この写真
内の顔料の一次粒子の内、測定可能な粒子20個以上の
短辺(b)をノギスで測定し、これを3回行って平均値
を得た後、この平均値と顔料の比重(d)から算出して
得た比表面積。
【0077】(5)顔料の比重:ヘリウム比重計130
2−02(島津製作所製)を用い、粉体顔料はそのま
ま、ウェットケーキやスラリー状の顔料は凍結乾燥し、
粉砕した後に、それぞれ測定して得た比重。
【0078】参考例1(ビニル系樹脂の合成) 滴下装置、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置および還
流冷却管を備えた容量3L(リットル)の四つ口フラス
コに、メチルエチルケトン1,000部を仕込み、液温
を78℃まで昇温させた後、n−ブチルメタクリレート
700部、n−ブチルアクリレート42部、2−ヒドロ
キシエチルメタクリレート150部、メタクリル酸10
8部およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノ
エート80部からなる混合液を、4時間かけて滴下し、
更に同温度で8時間反応を続けて、ビニル系樹脂(酸価
70、数平均分子量5,000)を合成し、次いで室温
まで放冷した後、樹脂固形分が50重量%となるように
メチルエチルケトンを加えて希釈して、樹脂溶液Aを得
た。
【0079】参考例2(同上) 滴下装置、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置および還
流冷却管を備えた容量3リットルの四つ口フラスコに、
メチルエチルケトン1,000部を仕込み、液温を78
℃まで昇温させた後、スチレン146部、n−ブチルメ
タクリレート551部、2−ヒドロキシエチルメタクリ
レート150部、メタクリル酸153部およびt−ブチ
ルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート20部からな
る混合液を、4時間かけて滴下し、更に同温度で8時間
反応を続けて、ビニル系共重合体(酸価100、数平均
分子量16,000)を合成し、次いで室温まで放冷し
た後、樹脂固形分が50重量%となるようにメチルエチ
ルケトンを加えて希釈して、樹脂溶液Bを得た。
【0080】参考例3(同上) 滴下装置、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置および還
流冷却管を備えた容量3リットルの四つ口フラスコに、
メチルエチルケトン1,000部を仕込み、液温を78
℃まで昇温させた後、n−ブチルメタクリレート150
部、n−ブチルアクリレート72部、2−ヒドロキシエ
チルメタクリレート150部、ジメチルアミノエチルア
クリレート628部およびt−ブチルパーオキシ−2−
エチルヘキサノエート80部からなる混合液を、4時間
かけて滴下し、更に同温度で8時間反応を続けて、ビニ
ル系共重合体(アミン価225、数平均分子量6,00
0)を合成し、次いで室温まで放冷した後、樹脂固形分
が50重量%となるようにメチルエチルケトンを加えて
希釈して、樹脂溶液Cを得た。
【0081】実施例1 容量1,000mlのビーカーにジエチルアミノエタノ
ール16.7部およびイオン交換水883.3部を加
え、均一になったところへ樹脂溶液A300部を加え、
ホモジナイザーで30分間、1,000rpmで撹拌し
て、樹脂中のカルボキシル基を100%中和すると共
に、樹脂を水中に溶解させた。次いで、粉末状のペリレ
ン顔料(C.I.Pigment Red 179;チ
バガイギー社製ペリリンドマルーンR6436:以下単
に「ペリレン顔料」と略す)300部を撹拌しながらゆ
っくりと加え、更に30分間よく撹拌してペリレン顔料
の懸濁物を得た。
【0082】得られたペリレン顔料の懸濁物を、撹拌式
ビーズミル装置ドライスヴェルケPM−DCP−SF1
2(ドライスヴェルケ社製、容量1,130ml)を用
いて、撹拌機外周速度11.4m/秒、出力密度3.4
KW/容量1L(リットル)、直径0.35mmのミク
ロハイカZ350ジルコニアビーズ(昭和シェル石油社
製、比重6)3.7kg、懸濁物分散処理速度300m
l/minの条件下に、水流で分散機を冷却して分散温
度をつねに35℃以下に制御しながら2時間循環分散さ
せて水性顔料分散体1を得た。得られた水性顔料分散体
1は、貯蔵安定性に優れるものであった。
【0083】実施例2 実施例1と同様にして得たペリレン顔料の懸濁物を、撹
拌式ビーズミル装置ダイノーミルKDL−Specia
l(シンマルエンタープライゼス社製、容量600m
l)を用いて、撹拌機外周速度10.5m/秒、出力密
度3.7KW/容量1L、直径0.35mmのミクロハ
イカZ350ジルコニアビーズ(昭和シェル石油社製、
比重6)1.9kg、懸濁物分散処理速度100ml/
minの条件下に、水流で分散機を冷却して分散温度を
つねに35℃以下に制御しながら2時間循環分散させて
水性顔料分散体2を得た。得られた水性顔料分散体2
は、貯蔵安定性に優れるものであった。
【0084】実施例3 実施例1で得られた水性顔料分散体100部を、ホモジ
ナイザーで500rpmでゆるやかに攪拌しながら、1
規定の塩酸13ml(実施例1で樹脂溶液Aの中和に用
いたジエタノールアミンとほぼ当量)をゆっくり滴下し
ながら加え、顔料と樹脂からなる多数の塊状物として沈
降させた後、濾過して、濾過物を500部のイオン交換
水で水洗し、よく水切りをして、固形分濃度55%の顔
料組成物51部を得た。
【0085】この顔料組成物40部を500mlビーカ
ーにとり、ジエタノールアミン0.8部を溶解したイオ
ン交換水32.5部を加え、ホモジナイザーで1,00
0rpmで攪拌して顔料組成物をよく邂逅し、水性顔料
分散体3を得た。得られた水性顔料分散体3は、実施例
1で得られた水性顔料分散体1と同様、貯蔵安定性に優
れるものであった。
【0086】比較例1 樹脂溶液Aを樹脂の酸価と当量のジエタノールアミンを
用いて樹脂中のカルボキシル基を100%中和し、容量
250mlのポリビンに、この中和した樹脂溶液12部
および粉末状のペリレン顔料12部を加え、更にイオン
交換水を総量が60部になるように添加した後、平均径
が3mmのガラスビーズ150gを加えて、ペイントシ
ェーカーにより4時間分散させて水性顔料分散体1′を
得た。得られた水性顔料分散体1′は、実施例1、2お
よび3で得られた水性顔料分散体1、2および3に比べ
て貯蔵安定性の劣るものであった。
【0087】実施例4 粉末状のペリレン顔料の代わりに、粉末状のジケトピロ
ロピロール顔料(C.I.Pigment Red 2
54;チバガイギー社製DPP−BO:以下単にDPP
顔料と略す)を用いた以外は実施例1と同様にしてDP
P顔料の懸濁物を得、更に同様にして水性顔料分散体4
を得た。得られた水性顔料分散体4は、貯蔵安定性に優
れるものであった。
【0088】比較例2 粉末状のペリレン顔料の代わりに、粉末状のDPP顔料
を用いた以外は比較例1と同様にして水性顔料分散体
2′を得た。得られた水性顔料分散体2′は、実施例4
で得られた水性顔料分散体4に比べて貯蔵安定性の劣る
ものであった。
【0089】実施例5 粉末状のペリレン顔料の代わりに、粉末状のジスアゾイ
エロー顔料(C.I.Pigment Red 15
4;大日本インキ化学工業製ファストゲン・スーパー・
イエロー4192:以下単にジスアゾイエロー顔料と略
す)を用いた以外は実施例1と同様にしてジスアゾイエ
ロー顔料の懸濁物を得、更に同様にして水性顔料分散体
5を得た。得られた水性顔料分散体5は、貯蔵安定性に
優れるものであった。
【0090】比較例3 粉末状のペリレン顔料の代わりに粉末状のジスアゾイエ
ロー顔料を用いた以外は比較例1と同様にして水性顔料
分散体3′を得た。得られた水性顔料分散体3′は、実
施例5で得られた水性顔料分散体5に比べて貯蔵安定性
の劣るものであった。
【0091】実施例6 容量1,000mlのビーカーにジエチルアミノエタノ
ール16.7部およびイオン交換水516.6部を加
え、均一になったところへ樹脂溶液A300部を加え、
ホモジナイザーで30分間、1,000rpmで撹拌し
て、樹脂中のカルボキシル基を100%中和すると共
に、樹脂を水中に溶解させた。次いで、ジメチルキナク
リドン顔料(C.I.Pigment Red 12
2;大日本インキ化学工業製マゼンタRE03:以下単
に「キナクリドン顔料」と略す)のウェットケーキ(顔
料濃度45重量%)666.7部を撹拌しながらゆっく
りと加え、更に30分間よく撹拌してキナクリドン顔料
の懸濁物を得、これを用いた以外は実施例1と同様にし
て水性顔料分散体6を得た。得られた水性顔料分散体6
は、貯蔵安定性に優れるものであった。
【0092】尚、このキナクリドン顔料はウェットケー
キ状で入手したため、比表面積の測定はTEM法を用い
た。キナクリドン顔料のウェットケーキを100mgと
り、10mlのイオン交換水で希釈し、超音波分散した
後に、コロジオン膜をはったメッシュ上に垂らして乾燥
させ、TEMで観察・撮影し、100,000倍の写真
に引きのばした。
【0093】キナクリドン顔料は写真上の形状から見
て、一辺bの正方形を底面とする高さaの直方体(a>
b)と判断できた。写真からこのキナクリドン顔料の代
表的な大きさと判断した20個の顔料粒子について、
a、bを測定した。そして前記(3)式にあてはめて、
20個の平均値をキナクリドン顔料の比表面積を算出し
た。算出した比表面積は50m2/g であった。
【0094】比較例4 樹脂溶液Aを樹脂の酸価と当量のジエタノールアミンを
用いて樹脂中のカルボキシル基を100%中和し、容量
250mlのポリビンに、この中和した樹脂溶液12部
およびキナクリドン顔料のウェットケーキ(顔料濃度4
5重量%)26.7部を加え、更にイオン交換水を総量
が60部になるように添加した後、平均径が3mmのガ
ラスビーズ150gを加えて、ペイントシェーカーによ
り4時間分散させて水性顔料分散体4′を得た。得られ
た水性顔料分散体4′は、実施例6で得られた水性顔料
分散体6に比べて貯蔵安定性の劣るものであった。
【0095】実施例7 容量1,000mlのビーカーにジエチルアミノエタノ
ール23.8部およびイオン交換水876.2部を加
え、均一になったところへ樹脂溶液B300部を加え、
ホモジナイザーで30分間、1,000rpmで撹拌し
て、樹脂中のカルボキシル基を100%中和すると共
に、樹脂を水中に溶解させた。次いで、粉末状のペリレ
ン顔料300部を撹拌しながらゆっくりと加え、さらに
30分間よく撹拌してペリレン顔料の懸濁物を得、これ
を用いた以外は実施例1と同様にして水性顔料分散体7
を得た。得られた水性顔料分散体7は、貯蔵安定性に優
れるものであった。
【0096】比較例5 樹脂溶液Aの代わりに樹脂溶液Bを用いた以外は比較例
1と同様にして水性顔料分散体5′を得た。得られた水
性顔料分散体5′は、実施例7で得られた水性顔料分散
体7に比べて貯蔵安定性の劣るものであった。
【0097】実施例8 容量1,000mlのビーカーにイオン交換水300部
および1規定の塩酸を600部加え、均一になったとこ
ろへ樹脂溶液C300部を加え、ホモジナイザーで30
分間、1,000rpmで撹拌して、樹脂中のアミノ基
を100%中和すると共に、樹脂を水中に溶解させた。
次いで、粉末状のペリレン顔料300部を撹拌しながら
ゆっくりと加え、さらに30分間よく撹拌してペリレン
顔料の懸濁物を得、これを用いた以外は実施例1と同様
にして水性顔料分散体8を得た。得られた水性顔料分散
体8は、貯蔵安定性に優れるものであった。
【0098】比較例6 樹脂溶液Cを樹脂のアミン価と当量の1規定塩酸を用い
て樹脂中のアミノ基を100%中和し、容量250ml
のポリビンに、この中和した樹脂溶液12部および粉末
状のペリレン顔料12部を加え、更にイオン交換水を総
量が60部になるように添加した後、平均径が3mmの
ガラスビーズ150gを加えて、ペイントシェーカーに
より4時間分散させて水性顔料分散体6′を得た。得ら
れた水性顔料分散体6′は、実施例8で得られた水性顔
料分散体8に比べて貯蔵安定性の劣るものであった。
【0099】評価結果 上記実施例1〜8および比較例1〜6で用いた顔料と得
られた水性顔料分散体について、表1に、レーザードッ
プラー式粒度分布測定装置で測定した分散直後の顔料の
比表面積X、これと同様に測定した分散30日後の顔料
の比表面積、BET法で測定した分散前の顔料の比表面
積又はTEM法で算出した分散前の顔料の比表面積Y、
上記分散直後の顔料の比表面積の分散前の顔料の比表面
積に対する百分率〔(X/Y)×100(%)〕、およ
び水性顔料分散体の貯蔵安定性の評価結果を示す。尚、
水性顔料分散体の貯蔵安定性は、レーザードップラー式
粒度分布測定装置で測定した分散直後と分散30日後の
顔料の比表面積の値を比較して、変化の少ないものを貯
蔵安定性良好:○、変化の大きいモノを貯蔵安定性不
良:×と評価した。
【0100】
【表1】
【0101】*1)分散後の顔料の比表面積:レーザード
ップラー式粒度分布測定装置で測定した分散後の顔料の
比表面積
【0102】応用例1〜7および比較応用例1〜5 ウォーターゾールS−751(大日本インキ化学工業製
の水溶性焼き付け塗料用アクリル樹脂;樹脂固形分50
重量%)、サイメル303(三井サイアナミッド社製の
メラミン樹脂;樹脂固形分98重量%)、実施例1〜7
又は比較例1〜5で得た水性顔料分散体およびイオン交
換水を、 ウォーターゾールS−751 8部 サイメル303 1部 水性顔料分散体 5部 イオン交換水 6部 の割合となるように配合し、ホモジナイザーを用いて
1,000rpmで10分間撹拌して、水溶性焼き付け
アクリル樹脂塗料を得、1日静置後にPET(ポリエチ
レンテレフタレート)フィルム上に6milのドクター
ブレードで展色し、1時間セットした後に150℃で3
0分間焼き付けた。
【0103】次いで、作製直後の塗料の焼付け塗膜と作
製30日後の塗料の焼付け塗膜の光沢(20°光沢)を
ヘイズ・グロス・リフレクトメーター(ヘイズガードナ
ー社製光沢計)を用いて測定し、得られた焼付け塗膜の
光沢の値を比較して、変化の少ないものを貯蔵安定性良
好:○、変化の大きいものを貯蔵安定性不良:×と評価
した。結果を表2に示す。
【0104】
【表2】
【0105】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、貯蔵安定性
に優れる水性顔料分散体を容易に得ることができ、得ら
れた水性顔料分散体にさらに樹脂や溶剤を加えて塗料や
インキなどへの加工を施した後でもなお貯蔵安定性に優
れている。加えて、この水性顔料分散体を濃縮して得ら
れた顔料組成物もまた、様々な用途向けに樹脂や溶剤を
加えて加工を施しても、貯蔵安定性に優れている。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C09D 17/00 C09D 17/00

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 自己水分散性もしくは水溶性の樹脂と顔
    料と水とを、直径0.05〜3mmのビーズが充填さ
    れ、容量1L(リットル)当たり2.6KW以上の出力密
    度、および6.7m/秒以上の攪拌機外周速度で運転さ
    れる流通式湿式ビーズミルを用いて分散させることを特
    徴とする水性顔料分散体の製造方法。
  2. 【請求項2】 容量1L当たり2.6〜4.2KWの出
    力密度、および9〜20m/秒の攪拌機外周速度で運転
    される流通式湿式ビーズミルを用いて分散させる請求項
    1記載の水性顔料分散体の製造方法。
  3. 【請求項3】 直径0.1〜1mmのビーズが充填され
    た流通式湿式ビーズミルを用いる請求項1又は2記載の
    水性顔料分散体の製造方法。
  4. 【請求項4】 流通式湿式ビーズミルが、縦型流通式湿
    式ビーズミルである請求項1、2又は3記載の水性顔料
    分散体の製造方法。
  5. 【請求項5】 レーザードップラー式粒度分布測定装置
    で測定した分散後の顔料の比表面積の値が、BET法で
    測定した分散前の顔料の比表面積の値、又は透過式の電
    子顕微鏡(TEM)で観察された顔料の一次粒子を、そ
    の形から長辺a(m)、短辺b(m)の直方体、一辺b
    (m)の立方体又は直径b(m)の球体のいずれかに分
    類すると共にaとbを測定し、これらの平均値と顔料の
    比重d(g/m3 )から算出した分散前の顔料の比表面
    積の値(以下、「TEM法で算出した分散前の顔料の比
    表面積の値」と略す)に対して、60%以上となるまで
    分散させる請求項1〜4のいずれか1つに記載の水性顔
    料分散体の製造方法。
  6. 【請求項6】 レーザードップラー式粒度分布測定装置
    で測定した分散後の顔料の表面積の値が、BET法で測
    定した分散前の顔料の比表面積の値又はTEM法で算出
    した分散前の顔料の比表面積の値に対して80〜500
    %となるまで顔料を分散させる請求項5記載の水性顔料
    分散体の製造方法。
  7. 【請求項7】 自己水分散性もしくは水溶性の樹脂と顔
    料と水とを、レーザードップラー式粒度分布測定装置で
    測定した分散後の顔料の比表面積の値が、BET法で測
    定した分散前の顔料の比表面積の値、又はTEM法で算
    出した分散前の顔料の比表面積の値に対して、60%以
    上となるまで分散させることを特徴とする水性顔料分散
    体の製造方法。
  8. 【請求項8】 レーザードップラー式粒度分布測定装置
    で測定した分散後の顔料の表面積の値が、BET法で測
    定した分散前の顔料の比表面積の値又はTEM法で算出
    した分散前の顔料の比表面積の値に対して80〜500
    %となるまで顔料を分散させる請求項7記載の水性顔料
    分散体の製造方法。
  9. 【請求項9】 樹脂が、数平均分子量1,000〜20
    0,000の樹脂である請求項1〜8のいずれか1つに
    記載の水性顔料分散体の製造方法。
  10. 【請求項10】 数平均分子量1,000〜200,0
    00の樹脂が、カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル
    基の一部乃至全部を中和してなる樹脂である請求項9記
    載の水性顔料分散体の製造方法。
  11. 【請求項11】 カルボキシル基含有樹脂のカルボキシ
    ル基の一部乃至全部を中和してなる樹脂が、数平均分子
    量5,000〜200,000のビニル系共重合体であ
    る請求項10記載の水性顔料分散体の製造方法。
  12. 【請求項12】 請求項1〜11の製造方法で得られた
    水性顔料分散体を濃縮することを特徴とする顔料組成物
    の製造方法。
  13. 【請求項13】 請求項10又は11記載の製造方法で
    得られた水性顔料分散体に、酸性化合物を加えて該水性
    顔料分散体中の樹脂を顔料と共に沈降させた後、濃縮す
    ることを特徴とする顔料組成物の製造方法。
JP8285089A 1996-10-28 1996-10-28 水性顔料分散体の製造方法および顔料組成物の製造方法 Pending JPH10130523A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001271008A (ja) * 2000-03-24 2001-10-02 Dainippon Ink & Chem Inc 着色樹脂粒子水分散液の製造方法
JP2008280391A (ja) * 2007-05-08 2008-11-20 Fujifilm Corp 有機ナノ顔料粒子凝集体および有機ナノ顔料粒子非水性分散物の製造方法、その分散物を含む着色感光性樹脂組成物、ならびにそれを用いたカラーフィルタ

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JP2001271008A (ja) * 2000-03-24 2001-10-02 Dainippon Ink & Chem Inc 着色樹脂粒子水分散液の製造方法
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