JPH10128906A - 耐食性と加工性に優れた溶接可能な自動車用プレプライムド鋼板 - Google Patents

耐食性と加工性に優れた溶接可能な自動車用プレプライムド鋼板

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JPH10128906A
JPH10128906A JP30356996A JP30356996A JPH10128906A JP H10128906 A JPH10128906 A JP H10128906A JP 30356996 A JP30356996 A JP 30356996A JP 30356996 A JP30356996 A JP 30356996A JP H10128906 A JPH10128906 A JP H10128906A
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film
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶接性、プレス成形性、内面適性(未塗装で
の耐孔あき腐食性)、外面側の塗装後適性(耐食性、鮮
映性、塗料密着性)に優れた自動車用プレプライム鋼板
を得ること 【解決手段】 自動車用として内面側と外面側で異なる
機能を付与したプレプライム鋼板であり、亜鉛系めっき
鋼板の両面に、金属クロム換算での付着量が1〜500
mg/m2のクロメート皮膜を有し、鋼板片面側の前記
クロメート皮膜の上層に、体積固有抵抗値が1Ω・cm
以下、無塗油条件下での動摩擦係数が0.03〜0.3
0、鉛筆硬度が3B〜5H、膜厚が2.0〜30μmの
導電性有機樹脂皮膜を有し、鋼板他面側の前記クロメー
ト皮膜の上層に体積固有抵抗値が1Ω・cm超で膜厚が
0.1〜3.0μmの有機樹脂皮膜を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、自動車車体や部品
(交換用補修部品等も含む)に用いられるプレプライム
ド鋼板、詳細には電着塗装を施すことなく、必要に応じ
てチッピングプライマーを施した後、中塗り及び上塗り
塗装または上塗り塗装のみを施して使用され、若しくは
その上塗り塗装の表面にクリヤー塗装を施して使用され
る自動車用プレプライムド鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、建材の分野では屋根材や壁材等に
着色亜鉛鉄板やカーラー鋼板等の塗装鋼板が使用されて
きた。また、商品の意匠性に対して厳しい性能が要求さ
れる家電業界では、米国家電メーカーが冷蔵庫にプレコ
ート鋼板(PCM)を採用したのが契機となり、国内で
もプレコート鋼板を採用する動きが益々高まっている。
プレコートとは、あらかじめ鋼板(ストリップ)の表面
にロールコーティングや粉体塗装などによって塗装を施
し、加工・組み立てを行う方法であり、従来のポストコ
ート、すなわち鋼板を加工した後塗装する方法に対し
て、ユーザーでの前処理・塗装工程の省略によるコスト
ダウンや塗装による公害発生の防止等を狙いとして、家
電製品や内装機器などの外板材に採用されている。
【0003】一方、自動車の分野では、北米や北欧など
の寒冷地において冬期に散布される道路凍結防止用の塩
類による自動車車体の腐食が大きな社会問題となってお
り、国内外での車体の防錆対策が強化されてきた。この
ような背景の下、自動車車体の防錆対策の一つとして自
動車用表面処理鋼板の開発が盛んに行なわれている。従
来、自動車用表面処理鋼板としては、特公昭45−24
230号公報や特公昭47−6882号公報にみられる
ような亜鉛粉末含有塗膜を10〜20μmの厚膜で形成
させた防錆塗装鋼板(ジンクロメタル)が使用されてい
た。しかしながら、この亜鉛粉末含有塗膜はプレス成形
時に著しい皮膜剥離が生じ、これが金型に堆積して星目
傷などの欠陥やプレス割れの原因となるばかりでなく、
防錆皮膜が剥離した部分の耐食性が劣化してしまうとい
う問題があった。
【0004】このような防錆塗装鋼板に対して、特公平
4−48348号公報や特開平2−15177号公報に
示されるような有機複合被覆鋼板が知られている。これ
らの表面処理鋼板は、亜鉛系めっき鋼板をベースとして
第1層にクロメート皮膜を有し、その上層に第2層とし
て薄膜の樹脂皮膜を有するものである。以上述べたジン
クロメタルや有機複合被覆鋼板は、何れも自動車メーカ
ーでプレス加工されて組立てられた後、電着塗装が施さ
れ、中塗り・上塗り塗装が施される。
【0005】ところで最近、欧米を中心として、自動車
メーカーにおける化成処理及び電着塗装工程を省略する
ことを狙いとした自動車用塗装鋼板の検討が進められて
いる。例えば、米国では1988年にNCCAによって
自動車用プレプライムド鋼板の車体への適用の検討が開
始された( “ A Manufacturing Engineering Studyfor
Fabrication with Coated Coil ",NCCA(1988))。この
プレプライムド鋼板とは、自動車メーカーでの化成処理
と電着塗装の省略を狙いとして、鋼板の表面にあらかじ
めプライマーを形成した鋼板である。
【0006】従来の自動車用鋼板(冷延鋼板、表面処理
鋼板)を素材として自動車車体を製造する場合、自動車
メーカーでは「ブランキング→プレス成形→組立て・接
合→化成処理→電着塗装→中・上塗り塗装」の工程が必
要である。これに対して、プレプライムド鋼板の場合に
は化成処理及び電着塗装工程が省略でき、「ブランキン
グ→プレス成形→組立て・接合→中・上塗り塗装(又は
上塗り塗装のみ)」という工程で車体構造が可能となる
ため、塗装コストの削減が可能となる。また、従来行わ
れている電着塗装では塗料のつき回りの悪いドアのヘム
部等の閉構造部についても、プレプライムド鋼板では優
れた耐食性を付与することができるため、品質性能上の
メリットも期待できる。したがって、自動車用プレプラ
イムド鋼板に対する期待は高いものがある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、自動車用のプ
レプライムド鋼板は、上記のようなメリットはあるもの
の、種々の問題から未だ実用化には至っていないのが現
状である。そこで本発明者らは、自動車用プレプライム
ド鋼板の実用化を目指してその技術的な問題点について
詳細な検討を行ない、その結果、プレプライムド鋼板を
実用化するためには以下のような解決すべき課題がある
ことが判った。
【0008】すなわち、プレプライムド鋼板は従来行わ
れている20〜25μm程度の膜厚の電着塗装を省略し
て使用されることから、これを車体外面に適用するため
には、塗装後耐食性や塗装後鮮映性を十分に確保するた
めにプライマー皮膜(有機樹脂皮膜)の膜厚を厚くする
必要がある。しかしながら、有機樹脂皮膜が厚膜化(例
えば、20〜25μm)した場合、プレス成形時に皮膜
剥離(パウダリングまたはフレーキング)が生じるとい
う問題がある。特に、従来の車体プレス成形では潤滑
油、防錆油、洗浄油等の塗油条件下でのプレス成形が前
提であったが、自動車用プレプライムド鋼板を適用する
場合、従来の自動車用塗装ラインの「アルカリ脱脂→化
成処理→電着塗装」工程が省略されるので、このような
脱脂工程の省略を想定した場合、無塗油条件でプレス成
形を行う際の耐パウダリング性の向上が重要な課題とな
る。
【0009】また、自動車用鋼板の組立て・接合工程で
は大部分の接合が抵抗溶接によってなされるが、プレプ
ライムド鋼板の有機樹脂皮膜が厚膜の場合、電気的な絶
縁性が高くなるため抵抗溶接が不可能となり、このため
鋼板の用途が溶接を必要としない極く一部の部品に限定
され、汎用性がなくなってしまう。また、ジンクロメタ
ルのようにZn粉末含有量を内面側に塗装した鋼板は、
プレス加工後のパウダリングや裸耐食性が劣るために、
プレプライムド鋼板には適用できない。このように、自
動車用プレプライムド鋼板を実用化するためには解決す
べき種々の課題がある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、特に自動
車用プレプライムド鋼板に関する上記課題を解決するた
め検討を重ね、その結果、溶接性、プレス成形性、内面
適性(未塗装での耐孔あき腐食性)、外面側の塗装後適
性(耐食性、鮮映性、塗料密着性)に優れた、以下に示
すような内面側と外面側で機能の異なる自動車用プレプ
ライム鋼板を創案した。すなわち、本発明の自動車用プ
レプライム鋼板の特徴は以下の通りである。
【0011】(1) 亜鉛系めっき鋼板の両面に、金属クロ
ム換算での付着量が1〜500mg/m2のクロメート
皮膜を有し、鋼板片面側の前記クロメート皮膜の上層
に、体積固有抵抗値が1Ω・cm以下、無塗油条件下で
の動摩擦係数が0.03〜0.30、鉛筆硬度が3B〜
5H、膜厚が2.0〜30μmの導電性有機樹脂皮膜を
有し、鋼板他面側の前記クロメート皮膜の上層に体積固
有抵抗値が1Ω・cm超で膜厚が0.1〜3.0μmの
有機樹脂皮膜を有することを特徴とする耐食性と加工性
に優れた溶接可能な自動車用プレプライムド鋼板。 (2) 上記(1)の自動車用プレプライムド鋼板において、
鋼板片面側に形成される導電性有機樹脂皮膜の体積固有
抵抗値が0.1Ω・cm以下であることを特徴とする耐
食性と加工性に優れた溶接可能な自動車用プレプライム
ド鋼板。
【0012】(3) 上記(1)の自動車用プレプライムド鋼
板において、鋼板片面側に形成される導電性有機樹脂皮
膜の体積固有抵抗値が0.001Ω・cm以下で膜厚が
3.0〜10μmであることを特徴とする耐食性と加工
性に優れた溶接可能な自動車用プレプライムド鋼板。 (4) 上記(1)〜(3)のいずれかの自動車用プレプライムド
鋼板において、鋼板片面側に形成される導電性有機樹脂
皮膜が金属または合金粉末、導電性炭素、リン化鉄、炭
化物、窒化物および半導体酸化物の中から選ばれる1種
以上の導電性微粉末を含有することを特徴とする耐食性
と加工性に優れた溶接可能な自動車用プレプライムド鋼
板。
【0013】(5) 上記(1)〜(4)のいずれかの自動車用プ
レプライムド鋼板において、鋼板他面側に形成される有
機樹脂皮膜の無塗油条件下での動摩擦係数が0.03〜
0.30であることを特徴とする耐食性と加工性の優れ
た溶接可能な自動車用プレプライムド鋼板。 (6) 上記(1)、(2)、(3)または(5)の自動車用プレプライ
ムド鋼板において、鋼板片面側に形成される導電性有機
樹脂皮膜が金属または合金粉末、導電性炭素、リン化
鉄、炭化物、窒化物および半導体酸化物の中から選ばれ
る1種以上の導電性微粉末とポリエチレンワックスとを
含有することを特徴とする耐食性と加工性に優れた溶接
可能な自動車用プレプライムド鋼板。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の自動車用プレプライムド
鋼板は、亜鉛系めっき鋼板の両面に所定の付着量のクロ
メート皮膜を形成することで耐食性及び密着性を付与す
るとともに、その片面側(車体または部品の外面側とな
るべき面であり、以下これを“外面側”という)のクロ
メート皮膜の上層に体積固有抵抗値が1Ω・cm以下で
膜厚が2.0〜30μmの導電性有機樹脂皮膜を形成す
ることにより溶接性、耐外面錆性、塗料密着性、塗装後
鮮映性を付与し、一方、鋼板の他面側(車体または部品
の内面側となるべき面であり、以下これを“内面側”と
いう)のクロメート皮膜の上層に体積固有抵抗値が1Ω
・cm超で膜厚が0.1〜3.0μmの絶縁性有機樹脂
皮膜を形成することにより耐孔あき腐食性を付与したも
のである。このような本発明のプレプライムド鋼板の模
式的な皮膜断面構造を図1に示す。
【0015】また、プレス成形性については、従来の車
体プレス成形では潤滑油、防錆油、洗浄油等の塗油条件
下でのプレス成形が前提であったが、自動車用プレプラ
イムド鋼板では従来行われているような自動車塗装ライ
ンの「アルカリ脱脂→化成処理→電着塗装」工程が省略
されるので、塗油条件下でプレス成形を行った場合には
中塗り塗装前に新たに脱脂工程が必要となり、コスト高
となる。したがって、自動車用プレプライムド鋼板では
脱脂工程を省略するために無塗油でのプレス成形を前提
とする必要があるが、この場合、無塗油条件下での耐パ
ウダリング性の向上が重要な課題となる。これまで、家
電用・建材用塗装鋼板(プレコート鋼板)の分野では、
成形加工は折曲げや軽度の張り出し・絞り加工、あるい
はロールフォーミングが主体であったために、自動車車
体の場合のような無塗油条件下での厳しいプレス加工を
前提とした耐パウダリング性の検討はほとんど行われて
いない。また、めっき鋼板や有機複合被覆鋼板等の自動
車用表面処理鋼板についてはプレス加工性について数多
くの検討がなされているが、厚膜の樹脂皮膜を施したプ
レプライムド鋼板の耐パウダリング性の検討は行われて
いない。
【0016】これに対し本発明では、自動車用プレプラ
イムド鋼板の外面側に形成される厚膜の有機樹脂皮膜
(2.0〜30μm)の無塗油条件下での動摩擦係数と
皮膜硬度の両者を特定の範囲内とすることにより優れた
耐パウダリング性が得られること、具体的には、プレプ
ライムド鋼板の外面側に形成された厚膜(2.0〜30
μm)の有機樹脂皮膜の無塗油条件下での動摩擦係数を
0.03〜0.30とし、且つ皮膜の鉛筆硬度を3B〜
5Hとすることにより優れた耐パウダリング性が得られ
ることを見い出した。また、プレプライムド鋼板の内面
側の薄膜(0.1〜3.0μm)の樹脂皮膜について
も、無塗油条件下でのプレス成形を前提とした場合、そ
の動摩擦係数を0.03〜0.30にすることにより、
鋼板外面側の厚膜の有機樹脂皮膜の耐パウダリング性を
さらに向上させ得ることが判った。
【0017】このように鋼板の外面側と内面側で異なる
構成の有機樹脂皮膜を形成することにより、溶接可能で
且つ加工性及び耐パウダリング性に優れ、しかも内面適
性(耐孔あき腐食性)と外面適性(耐外面錆性、塗料密
着性、塗装後鮮映性)が良好なプレプライムド鋼板が得
られ、自動車メーカー等でプレス成形→溶接・組立てさ
れた後、化成処理及び電着塗装(場合によっては化成処
理、電着塗装、中塗り塗装)を省略し、外面側に中塗り
・上塗り塗装若しくは上塗り塗装のみを施し、内面側は
無塗装のままで車体またはその部品に供することができ
る。
【0018】以下、本発明の詳細とその限定理由を説明
する。ベースとなる亜鉛系めっき鋼板としては、亜鉛め
っき鋼板、Zn−Ni合金めっき鋼板、Zn−Fe合金
めっき鋼板、Zn−Mn合金めっき鋼板、Zn−Al合
金めっき鋼板、Zn−Cr合金めっき鋼板、Zn−Co
−Cr合金めっき鋼板、Zn−Cr−Ni合金めっき鋼
板、Zn−Cr−Fe合金めっき鋼板、さらにはこれら
に金属酸化物、難溶性クロム酸塩、ポリマー等を分散め
っきした亜鉛系複合めっき鋼板(例えば、Zn−SiO
2分散めっき鋼板、Zn−BaCrO4分散めっき鋼板)
等を挙げることができる。また、上記のようなめっきの
うち同種または異種のものを2層以上めっきした複層め
っき鋼板であっもよい。めっき方法としては、電解法、
溶融法、気相法のうち実施可能ないずれの方法も採用す
ることができる。
【0019】なお、本発明は電着塗装を省略して用いら
れるプレプライムド鋼板であるため、端面近傍での電着
塗装による防錆効果が期待できない。自動車用途ではド
ア部品の水抜き穴やフェンダー部品の下部端面露出部に
特に厳しい端面耐食性が要求されるため、このような用
途においては、上記各種めっきのなかで端面での犠牲防
食効果が大きく且つ長期に渡ってその防錆効果が期待で
きる厚目付の純亜鉛めっき(例えば、めっき目付量が4
5〜60g/m2の溶融亜鉛めっき)や厚目付の合金化
溶融亜鉛めっき或いは薄目付で優れた端面耐食性が得ら
れるZn−Cr合金めっき等を用いることが好ましい。
【0020】上記の亜鉛系めっき鋼板の少なくとも片面
に形成されるクロメート皮膜は、6価クロムのクロム酸
イオンによる自己修復作用により亜鉛系めっき鋼板の腐
食を抑制する。このクロメート皮膜の付着量が金属クロ
ム換算で1mg/m2未満では十分な耐食性を期待する
ことができず、一方、500mg/m2を超えると密着
性が劣化する。このためクロメート皮膜の付着量は金属
クロム換算で1〜500mg/m2とする。また、さら
に高度な耐食性、密着性を満足させるためには、金属ク
ロム換算で10〜200mg/m2の範囲とすることが
好ましい。このクロメート皮膜を形成するためのクロメ
ート処理としては、反応型、電解型、塗布型のいずれの
方法も適用可能である。耐食性の観点からは、クロメー
ト皮膜中に6価クロムのクロム酸イオンを多く含有する
塗布型が好ましい。
【0021】塗布型クロメート処理は、部分的に還元さ
れたクロム酸水溶液を主成分とし、これに下記〜の
成分の中から必要に応じて1種以上を添加した処理液
を、亜鉛系めっき鋼板に塗布し、水洗することなく乾燥
させる。 水溶性または水分散性のアクリル樹脂、ポリエステル
樹脂等の有機樹脂 シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛
等の酸化物のコロイド類および/または粉末 モリブデン酸、タングステン酸、バナジン酸等の酸お
よび/またはその塩類 リン酸、ポリリン酸等のりん酸類 ジルコニウムフッ化物、ケイフッ化物、チタンフッ化
物等のフッ化物 亜鉛イオン等の金属イオン リン化鉄、アンチモンドープ型酸化錫等の導電性微粉
末 フッ化水素 シランカップリング剤
【0022】塗布型クロメート処理は、通常、ロールコ
ーター法により処理液を塗布するが、浸漬法やスプレー
法により塗布した後に、エアナイフ法やロール絞り法に
より塗布量を調整することも可能である。塗布型クロメ
ート処理では、処理液中の3価Cr:6価Crの割合を
1:1〜1:3、pHを1.5〜4.0(より好ましく
は2〜3)とすることが好ましい。3価Cr:6価Cr
の割合は、一般の有機還元剤(例えば糖類、アルコール
類等)や無機還元剤を使用して調整する。一方、電解型
クロメート処理では、無水クロム酸と、硫酸、リン酸フ
ッ化物またはハロゲン酸素酸等のアニオンの1種または
2種以上を含有する浴で陰極電解処理を施し、水洗・乾
燥して皮膜を形成させる。
【0023】クロメート皮膜の上層には有機樹脂皮膜を
形成するが、本発明の特徴は鋼板外面側と内面側に体積
固有抵抗値と膜厚範囲が異なる有機樹脂皮膜を形成する
ことにある。すなわち、自動車車体等の外面側に使用さ
れる面には、体積固有抵抗値が1Ω・cm以下で膜厚が
2.0〜30μmの導電性有機樹脂皮膜を形成し、一
方、内面側に使用される面には、体積固有抵抗値が1Ω
・cm超で膜厚が0.1〜3.0μmの絶縁性有機樹脂
皮膜を形成する。このように鋼板外面側と内面側にそれ
ぞれ体積固有抵抗値と膜厚が異なる皮膜を形成すること
により、溶接性、プレス加工時の皮膜の耐剥離性(耐パ
ウダリング性または耐フレーキング性)、内面側の未塗
装耐食性、外面側の塗装後鮮映性と塗装後耐食性等を全
て満足する自動車用プレプライムド鋼板を得ることが可
能となる。
【0024】まず、鋼板外面側の導電性有機樹脂皮膜の
構成及びその限定理由について説明する。この鋼板外面
側の有機樹脂皮膜の体積固有抵抗値が1Ω・cm超では
鋼板の抵抗溶接が困難であり、このため体積固有抵抗値
は1Ω・cm以下とする。また、より一層良好な溶接性
を得るためには、体積固有抵抗値を0.1Ω・cm以
下、より好ましくは0.01Ω・cm以下、特に好まし
くは0.001Ω・cm以下とする。図2は、導電性有
機樹脂皮膜(鋼板内面側の有機樹脂皮膜の膜厚が0.1
〜2.0μmのプレプライムド鋼板)の体積固有抵抗値
と溶接性(溶接性の評価基準は実施例に記載のものを参
照)との関係を示している。
【0025】鋼板外面側の導電性有機樹脂皮膜の体積固
有抵抗値を1Ω・cm以下にするには、樹脂皮膜中に導
電性微粉末を添加すればよい。この導電性微粉末として
は、例えば、亜鉛、ニッケル、鉄、アルミニウム、コバ
ルト、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、
銅、鉛、錫等の金属またはそれらの合金粉末;導電性カ
ーボン、黒鉛粉末等の導電性炭素粉末;炭化物粉末;窒
化物粉末;リン化鉄粉末;アルミニウムドープ酸化亜鉛
末、酸化スズ−酸化チタン、酸化スズ−硫酸バリウム、
酸化ニッケル−アルミニウム等の半導体酸化物粉末等が
挙げられる。これらの導電性微粉末は単独又は2種以上
を混合して使用することが可能である。これら導電性微
粉末の種類に応じて有機樹脂皮膜中への配合量を適宜調
整することで、皮膜の体積固有抵抗値を1Ω・cm以下
にすることができる。
【0026】また、導電性有機樹脂皮膜の膜厚が2.0
μm未満では塗装後鮮映性が不十分であり、車体外面に
適用できない。また、塗装後に傷がついた場合の傷部か
ら発生する膨れが著しく、塗装後耐食性も不十分であ
る。図3は、導電性有機樹脂皮膜の膜厚と塗装後鮮映性
(塗装後鮮映性の評価基準は実施例に記載のものを参
照)との関係を示している。一方、膜厚が30μmを超
えるとプレス成形時の皮膜の耐剥離性(耐パウダリング
性または耐フレーキング性)が低下する。図4は、有機
樹脂皮膜(鋼板外面側の有機樹脂皮膜の無塗油条件下で
の動摩擦係数が0.03〜0.14、鉛筆硬度がB〜3
H、鋼板内面側の有機樹脂皮膜の無塗油条件下での動摩
擦係数が0.03〜0.14のプレプライムド鋼板)の
膜厚とプレス成形時の皮膜剥離量(耐パウダリング性)
との関係を示している。以上の理由から、鋼板外面側の
導電性有機樹脂皮膜の膜厚は2.0〜30μm、好まし
くは3.0〜20μm、特に好ましくは4.0〜10.
0μmとする。
【0027】また、特に優れた耐パウダリング性を確保
するため、導電性有機樹脂皮膜は無塗油条件下での動摩
擦係数を0.03〜0.30、鉛筆硬度を3B〜5Hと
することが好ましい。導電性有機樹脂皮膜の無塗油条件
下での動摩擦係数が0.30を超えると耐パウダリング
性が著しく劣り、適切なプレス加工ができなくなる。図
5は導電性有機樹脂皮膜(鋼板外面側の有機樹脂皮膜の
膜厚が2.0〜10μm、鉛筆硬度がB〜3H、鋼板内
面側の有機樹脂皮膜の無塗油条件下での動摩擦係数が
0.03〜0.14のプレプライムド鋼板)の無塗油条
件下での動摩擦係数とプレス成形時の皮膜剥離量(耐パ
ウダリング性)との関係を示している。一方、動摩擦係
数が0.03未満では、耐パウダリング性は問題ない
が、鋼板を1枚ずつプレス工程に搬入する際に鋼板表面
が滑りすぎてハンドリングに支障をきたし、またプレス
成形時にもしわが発生する等の問題を生じ、好ましくな
い。以上の理由から、導電性有機樹脂皮膜の無塗油条件
下での動摩擦係数は0.03〜0.30、より好ましく
は0.03〜0.20、特に好ましくは0.03〜0.
14とすることが望ましい。
【0028】導電性有機樹脂皮膜の無塗油条件下での動
摩擦係数を0.03〜0.30とするには、例えば有機
樹脂皮膜中に固形潤滑剤を配合し、且つその種類、配合
量を選択すればよい。固形潤滑剤としては、例えば、以
下に示すようなものが使用できる。 ・炭化水素系滑剤類:例えば、天然のパラフィン、合成
パラフィン、マイクロワックス、ポリエチレンワック
ス、塩素化炭化水素等 ・フッ素樹脂微粉末:例えば、ポリフッ化ビニル樹脂、
ポリ四フッ化エチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂
等 ・脂肪酸アミド系滑剤:例えば、ステアリン酸アミド、
パルミチン酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エ
チレンビスステアロアミド、オレイン酸アミド、エシル
酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド等 ・金属石けん類:例えば、ステアリン酸カルシウム、ス
テアリン酸鉛、ラウリン酸カルシウム、パルミチン酸カ
ルシウム等 ・金属硫化物類:二硫化モリブデン、二硫化タングステ
ン これらのうち、無塗油条件下で厚膜の樹脂皮膜の耐パウ
ダリング性を向上させるためには、ポリエチレンワック
スおよび/またはフッ素樹脂微粉末(特に、四フッ化エ
チレン樹脂微粉末等)を用いることが好ましい。
【0029】導電性有機樹脂皮膜の鉛筆硬度が3B未満
でも、また5H超でも耐パウダリング性が劣る。図6は
導電性有機樹脂皮膜(鋼板外面側の有機樹脂皮膜の膜厚
が2.0〜10μm、無塗油条件下での動摩擦係数が
0.03〜0.14、鋼板内面側の有機樹脂皮膜の無塗
油条件下での動摩擦係数が0.03〜0.14のプレプ
ライムド鋼板)の鉛筆硬度とプレス成形時の皮膜剥離量
(耐パウダリング性)との関係を示しており、同図の結
果から皮膜の鉛筆硬度は3B〜5H、より好ましくはB
〜3Hとすることが望ましい。導電性有機樹脂皮膜の鉛
筆硬度は基体樹脂の種類、添加剤(例えば、導電性微粉
末、防錆顔料等)、膜厚等を適宜選択することによって
調整することができ、したがって、これらを選択するこ
とによって皮膜の鉛筆硬度を3B〜5Hに調整する。
【0030】鋼板外面側の導電性有機樹脂皮膜の有機樹
脂としては公知の塗料用樹脂、すなわちエポキシ樹脂、
ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等を用
いることができる。例えば、硬化剤成分であるアミノ樹
脂またはポリイソシアネート化合物と反応性の官能基
(例えば水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等)を有
するエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂またはアクリル樹
脂等を配合し、これを有機溶剤に溶解し、或いは樹脂骨
格中に官能基(水酸基、カルボキシル基、アミノ基等)
を導入して酸またはアルカリで中和させることで水溶化
若しくは水分散性化して使用する。
【0031】エポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリ
ン型やグリシジルエーテル型等のストレートエポキシ樹
脂、脂肪酸変性エポキシ樹脂、多塩基性酸変性エポキシ
樹脂、アクリル変性エポキシ樹脂、アルキド(またはポ
リエステル)変性エポキシ樹脂、ポリブタジエン変性エ
ポキシ樹脂、フェノール変性エポキシ樹脂、アミン若し
くはポリアミン変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキ
シ樹脂等を用ることができる。ポリエステル樹脂として
は、アルキド樹脂も包含した通常の合成方法によって得
られる公知のものを用いることができる。例えば、油変
性アルキド樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、フェノール
変性アルキド樹脂、スチレン化アルキド樹脂、シリコー
ン変性アルキド樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、オイ
ルフリーアルキド樹脂(ポリエステル樹脂)等が挙げら
れる。
【0032】また、アクリル樹脂は、通常の不飽和エチ
レン性単量体を用い、溶液重合法、エマルジョン重合法
または懸濁重合法等によって合成される樹脂類であっ
て、メタクリレート系単量体、アクリロニトリル、スチ
レン、アクリル酸、アクリルアミド、ビニルトルエン等
の硬質の単量体を必須成分とし、さらに樹脂の硬さ、柔
軟性、架橋性を付与する目的でその他の不飽和ビニル単
量体を適宜配合することによって目的とする樹脂が得ら
れる。また、アクリル樹脂はアルキド樹脂、エポキシ樹
脂、フェノール樹脂等の他の樹脂によって変性されたも
のでもよい。硬化剤としては、メラミン樹脂、尿素樹脂
等のアミノ樹脂、ブロックイソシアネート化合物、アミ
ン化合物、フェノール樹脂を使用できる。このなかでも
特に、加工性、耐食性に優れたブロックイソシアネート
化合物が最も好ましい。
【0033】鋼板外面側の導電性有機樹脂皮膜中には防
錆添加剤を添加することができ、この防錆添加剤として
はシリカと難溶性クロム酸塩が特に好適である。樹脂皮
膜中に配合されるシリカは、亜鉛系めっき鋼板の腐食生
成物のうち腐食の抑制に有効な塩基性塩化亜鉛の生成を
促進させる効果を有するほか、腐食環境中に微量に溶解
することにより、ケイ酸イオンが皮膜形成型腐食抑制剤
として機能することにより、防食効果が発揮されるもの
と推定される。
【0034】本発明で使用されるシリカとしては、乾式
シリカ(例えば、日本アエロジル(株)製のAEROS
IL 130、AEROSIL 200、AEROSIL
300、AEROSIL 380、AEROSIL R
972、AEROSIL R811、AEROSIL R
805等)、オルガノシリカゾル(例えば、日産化学工
業(株)製のMA−ST、IPA−ST、NBA−S
T、IBA−ST、EG−ST、XBA−ST、ETC
−ST、DMAC−ST等)、沈降法湿式シリカ(例え
ば、徳山曹達(株)製T−32(S)、K−41,F−
80等)、ゲル法湿式シリカ(例えば、富士デヴィソン
化学(株)製サイロイド244、サイロイド150、サ
イロイド72、サイロイド65、SHIELDEX等)
等を挙げることができる。また、上記のシリカを2種以
上を混合して使用することができる。
【0035】また、難溶性クロム酸塩としては、クロム
酸バリウム(BaCrO4)、クロム酸ストロンチウム
(SrCrO4)、クロム酸カルシウム(CaCr
4)、クロム酸亜鉛(ZnCrO4・4Zn(O
H)2)、クロム酸亜鉛カリウム(K2O・4ZnO・4
CrO3・3H2O)、クロム酸鉛(PbCrO4)等の
微粉末を使用することができる。また、上記の難溶性ク
ロム酸塩を2種以上混合して使用することも可能であ
る。これら以外のクロム化合物は、基体樹脂との相溶性
が劣ったり、或いは防食効果は認められるものの可溶性
の6価Crを多く含有しているため塗装密着性が悪い等
の問題を有しており、本発明には適さない。
【0036】また、本発明のプレプライムド鋼板は、従
来の自動車用有機複合被覆鋼板に対して行なわれるよう
な自動車メーカーでの脱脂、表面調整、リン酸塩処理等
の前処理が省略されるため、特に厳しい耐クロム溶出性
が要求されることはないが、車体として実環境下で10
〜20年ものあいだ降雨等に曝されることを考慮する
と、溶出するCr量は少ない方が好ましい。したがっ
て、基体樹脂に配合される難溶性クロム酸塩は、クロム
溶出性が小さく且つ耐食性に大きく寄与できるBaCr
4またはSrCrO4が特に好ましい。これら防錆添加
剤を添加する場合には、その配合量[B]は、基体樹脂
[A](硬化剤を含む)の配合量[A]との固形分の重
量比で、[A]/[B]=99/1〜50/50とする
ことが好ましい。この重量比が99/1を超えると耐食
性向上効果が少ない。一方、重量比が50/50未満で
は厚膜での耐パウダリング性が低下する。
【0037】本発明のプレプライムド鋼板は電着塗装を
施すことなく使用されるため、従来の電着塗装による着
色の代わりに有機樹脂皮膜自体を着色することが好まし
い。このため、有機樹脂皮膜(少なくとも鋼板外面側の
有機樹脂皮膜)に着色剤として酸化チタン等の白色顔
料、カーボンブラック等の黒色顔料、縮合多環系有機顔
料、フタロシアニン系有機顔料等の有機顔料、或いはア
ゾ系金属錯塩染料等の有彩色の染料または黒色染料を添
加することが好ましい。これらの着色剤のうち、有機樹
脂皮膜の耐食性を損なわないようにするためには、特に
酸化チタン、アゾ系金属錯塩染料、有機顔料が有効であ
る。但し、電着塗装の代替としてプレプライムド鋼板を
グレーまたは黒色系の無彩色とする場合には、酸化チタ
ン、カーボンブラック、黒色系のアゾ系金属錯塩染料を
添加することが好ましい。
【0038】また、染料の中でも有機溶剤可溶性の黒色
アゾ系金属錯塩染料を用いた場合には、樹脂皮膜は最も
優れた耐光堅牢性および耐食性を示す。この有機溶剤可
溶性の黒色アゾ系金属錯塩染料とは、「 COLOUR INDEX
」で「 C.I.Generic Name 」の中に分類される有機溶
剤可溶性の黒色染料の中でも、特にアゾ染料とクロム、
銅、コバルト等の3価の金属との錯化合物であり、「 C
OLOUR INDEX 」の「 C.I.Generic Name 」での代表的な
ものとしては、 C.I.Solvent Black 6、22、23、
25、28、29、30、34、35、36、37、3
8、39、40、41、42、43、45、47、4
8、49等があり、また、この他に登録されていないも
のもある。
【0039】この染料の特徴とするところは、染料の分
子構造上親水基をもたないため溶剤可溶性であることの
他に、アゾ染料2分子に対して金属1原子の錯化合物
(2:1型金属錯塩)と考えられる構造上の理由によっ
て、光に対する安定性(耐光堅牢性)が他の黒色染料よ
りも優れていることにある。染料と錯塩を形成し得る金
属としてはCr、Co、Cu、Fe、Al等があるが、
主としてCrとの錯塩のものが多い。市販品としては例
えば、チバガイギー社製の ORASOL BLACK RL、ORASOL B
LACKRLP(以上、 C.I Solvent Black 29)、ORASOL BLA
CK CN ( C.I Solvent Black 28)、ORASOL BLACK BA(
C.I Solvent Black 6)、BASF製の ZAPON BlackX 51
( C.I Solvent Black 27)、保土谷化学工業(株)製の
Aizen Spilon Black RLH Special ( C.I.Solvent Blac
k 42 )等がある。またこの他に、「 COLOURINDEX ( THI
RD EDITION ) 」に登録されていないもの、例えば、保
土谷化学工業(株)製の Aizen Spilon Black MH Speci
al、日本化薬(株)製の Kayaset Black K-R等があり、
いずれも優れた黒色度を有する黒色樹脂皮膜が得られ
る。
【0040】また、黒色アゾ系金属錯塩染料として、特
に黒色アゾ系クロム錯塩染料を用いることにより、その
3価Crイオンと下地クロメートとの相乗効果と推定さ
れる極めて優れた耐食性が得られる。これは、3価のC
rを含む黒色アゾ系金属錯塩染料が不働態皮膜として安
定に存在し、バリアー効果をより一層向上させるためで
あると考えられる。このような理由から、黒色アゾ系金
属錯塩染料としては、錯塩を形成する金属が3価Crイ
オンであるものが最も好ましい。また、他の有機溶剤可
溶性の黒色染料として、モノアゾ染料、ジスアゾ染料等
の金属錯塩でないアゾ染料やアジン染料等、さらには青
色のフタロシアニン染料等を使用することもできる。但
し、黒色性、耐光堅牢性、さらには耐パウダリング性、
加工後耐食性等の観点からは先に述べたアゾ系金属錯塩
染料が最も好ましい。着色剤の配合量は〔基体樹脂
[A]+防錆添加剤[B]〕100重量部に対し1〜5
0重量部とすることが好ましい。着色剤の配合量が1重
量部未満では十分な着色効果が得られず、一方、50重
量部を超えると耐パウダリング性、耐食性が劣化する。
【0041】次に、鋼板内面側の有機樹脂皮膜の構成及
びその限定理由について説明する。鋼板内面側は塗装さ
れずにそのまま車体に適用されるため、優れた未塗装耐
食性(耐孔あき腐食性)が要求され、同時に良好な溶接
性も要求される。鋼板内面側の有機樹脂皮膜の体積固有
抵抗値が1Ω・cm以下では、皮膜中の電子やイオンの
移動が容易となり、マイクロセルが形成されるため耐食
性(耐孔あき腐食性)が不十分である。このため鋼板内
面側の有機樹脂皮膜の体積固有抵抗値は1Ω・cm超、
好ましくは105Ω・cm以上、より好ましくは1010
Ω・cm以上、特に好ましくは1015Ω・cm以上とす
る。図7は鋼板内面側の有機樹脂皮膜の体積固有抵抗値
と耐孔あき腐食性(耐孔あき腐食性の評価基準は実施例
に記載のものを参照)との関係を示している。有機樹脂
皮膜の体積固有抵抗値は基体樹脂や硬化剤の種類や配合
量を選択することによっても調整可能であり、これらを
適宜選択することにより皮膜の体積固有抵抗値を1Ω・
cm超とすることができる。また、皮膜に潤滑性を付与
する目的で導電性を有する添加剤(例えば、グラファイ
ト等の固形潤滑剤)を添加してもよいが、この場合でも
皮膜の体積固有抵抗値が1Ω・cm超となるように管理
する必要がある。
【0042】また、鋼板内面側の有機樹脂皮膜の膜厚が
0.1μm未満では未塗装耐食性が不十分である。一
方、鋼板内面側の有機樹脂皮膜は絶縁性であるため、抵
抗溶接時に電極が皮膜を加圧する際の皮膜破壊により通
電性を確保する必要があり、膜厚が3.0μm超では通
電性が十分に確保されないため溶接性が劣る。図8は鋼
板内面側の有機樹脂皮膜(鋼板外面側の有機樹脂皮膜の
体積固有抵抗値が0.001Ω・cm以下であるプレプ
ライムド鋼板)の膜厚と溶接性(溶接性の評価基準は実
施例に記載のものを参照)との関係を示している。以上
の理由から、鋼板内面側の有機樹脂皮膜の膜厚は0.1
〜3.0μm、好ましくは0.3〜2.5μm、特に好
ましくは0.3〜2.0μmとする。
【0043】また、無塗油成形が前提となる場合には、
鋼板内面側の有機樹脂皮膜の無塗油条件下での動摩擦係
数を0.03〜0.30にすることにより、鋼板外面側
の厚膜の有機樹脂皮膜(2.0〜30μm)の耐パウダ
リング性をさらに向上させることができる。動摩擦係数
が0.30超では鋼板外面側の耐パウダリング性が不十
分であり、一方、0.03未満では耐パウダリング性に
は支障はないが、鋼板が滑り過ぎてハンドリング性が劣
るため、不適である。図9は鋼板内面側の有機樹脂皮膜
(鋼板外面側の有機樹脂皮膜の膜厚が2.0〜10μ
m、無塗油条件下での動摩擦係数が0.03〜0.1
4、鉛筆硬度がB〜3Hであるプレプライムド鋼板)の
無塗油条件下での動摩擦係数とプレス成形時の皮膜剥離
量との関係を示している。以上の理由から、鋼板内面側
の無塗油条件下での動摩擦係数は0.03〜0.30、
より好ましくは0.03〜0.20、特に好ましくは
0.03〜0.14とすることが望ましい。
【0044】鋼板内面側の有機樹脂皮膜の無塗油条件下
での動摩擦係数を0.03〜0.30とするには、例え
ば有機樹脂皮膜中に固形潤滑剤を配合し、且つその種
類、配合量を選択すればよい。固形潤滑剤としては、先
に鋼板外面側の有機樹脂皮膜に関して挙げたものを使用
できるが、特に耐パウダリング性向上のためには、ポリ
エチレンワックス、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微
粉末を用いることが好ましく、また両者を併用すること
も効果的である。鋼板内面側の絶縁性有機皮膜に用いら
れる有機樹脂についても公知の塗料用樹脂、すなわちエ
ポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリ
ル樹脂等を用いることができるが、特に厳しい未塗装耐
食性(耐孔あき腐食性)が要求される場合には、アミン
変性エポキシ樹脂と硬化剤であるブロックイソシアネー
トからなる樹脂皮膜が最も好ましい。
【0045】鋼板内面側の有機樹脂皮膜には未塗装耐食
性を確保するため防錆添加剤を添加することが好まし
く、この防錆添加剤としてはシリカ、難溶性クロム酸塩
が好適である。特に、シリカと難溶性クロム酸塩を併用
することにより、優れた耐食性が期待できる。シリカ、
難溶性クロム酸塩としては、先に鋼板外面側の有機樹脂
皮膜に関して挙げたものを使用できる。通常、上述した
有機樹脂皮膜を形成するための塗料組成物は、ロールコ
ーター法により鋼板面(クロメート皮膜の上層)にを塗
布するが、浸漬法やスプレー法により塗布した後に、エ
アナイフ法やロール絞り法により塗布量を調整すること
も可能である。また、塗料組成物を塗布した後の加熱処
理には熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉等を用いる
ことができる。加熱処理は、到達板温で80〜300
℃、好ましくは150〜250℃の範囲で行うことが望
ましい。
【0046】
【実施例】自動車車体用のプレプライムド鋼板として、
表1に示す各種亜鉛系めっき鋼板をアルカリ脱脂後、水
洗・乾燥し、クロメート処理を施し、次いで、鋼板外面
用の導電性塗料組成物と鋼板内面用の絶縁性塗料組成物
をそれぞれロールコーターにより亜鉛系めっき鋼板の表
裏面に塗布し、焼き付けた。得られたプレプライムド鋼
板について、耐パウダリング性、溶接性、外面適性(耐
外面錆性、塗料密着性、塗装後鮮映性)、内面適性(耐
孔あき腐食性)の各評価試験を行った。その結果を表2
〜表13に示す。なお、本実施例の製造条件は、以下の
通りである。 (1)亜鉛系めっき鋼板 厚さ0.8mm、表面粗さ(Ra)0.5〜2.0μm
の冷延鋼板に各種亜鉛系めっきを施し、処理原板として
用いた。(表1参照)
【0047】(2)クロメート処理 塗布型クロメート処理 下記に示す液組成のクロメート処理液をロールコーター
により塗布し、水洗することなく乾燥させた。クロメー
ト層の付着量は、処理液の固形分濃度とロールコーター
の周速を変化させて調整した。 無水クロム酸:20g/l リン酸イオン:4g/l ジルコニウムフッ化物イオン:1g/l 亜鉛イオン:1g/l 6価クロム酸/ジルコニウムフッ化物イオン:20/1
(重量比)
【0048】 電解クロメート処理 無水クロム酸30g/l、硫酸0.2g/l、浴温40
℃の処理液を用いて、電流密度10A/dm2で亜鉛系
めっき鋼板に陰極電解処理を行い、水洗・乾燥した。ク
ロメート皮膜の付着量は、陰極電解処理の通電量を制御
することにより調整した。 反応型クロメート処理 無水クロム酸30g/l、リン酸10g/l、NaF
0.5g/l、K2TiF64g/l、浴温60℃の処理
液を用いて、亜鉛系めっき鋼板にスプレー処理し、水洗
・乾燥した。クロメート皮膜の付着量は、処理時間を変
化させることにより調整した。
【0049】(3)鋼板外面側に適用する導電性有機樹
脂皮膜用塗料組成物の作成例 鋼板外面側樹脂皮膜用塗料組成物(1) アミン変性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート(旭
化成(株)製「デュラネートMF−B」)からなる基体
樹脂100重量部(固形分)とクロム酸ストロンチウム
40重量部を含む塗料組成物に、金属Ni粉末(平均粒
径1μm)とポリエチレンワックス(ヘキスト社製「セ
リダスト3620」)を配合し、必要に応じて溶剤によ
り固形分を調整した。乾燥後の有機樹脂皮膜の体積固有
抵抗値は塗料組成物中の金属Ni粉末の添加量により調
整し、また、乾燥後の有機樹脂皮膜の動摩擦係数は塗料
組成物中のポリエチレンワックスの添加量により調整し
た。
【0050】 鋼板外面側樹脂皮膜用塗料組成物(2) ブロックウレタン変性エポキシ樹脂(三井東圧化学
(株)製「エポキー834」)からなる基体樹脂100
重量部(固形分)、クロム酸ストロンチウム40重量部
及びカーボンブラック1重量部を含む塗料組成物に、リ
ン化鉄粉末(平均粒径3μm)とポリエチレンワックス
(ヘキスト社製「セリダスト3620」)を配合し、必
要に応じて溶剤により固形分を調整した。乾燥後の有機
樹脂皮膜の体積固有抵抗値は塗料組成物中のリン化鉄粉
末の添加量により調整し、また乾燥後の有機樹脂皮膜の
動摩擦係数は塗料組成物中のポリエチレンワックスの添
加量により調整した。
【0051】 鋼板外面側樹脂皮膜用塗料組成物(3) エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製「エピコー
ト1007」をキシレン/メチルエチルケトンに予め溶
解したもの)とブロックイソシアネート(大日本インキ
化学工業(株)製「バーノックB7−887−60」)
からなる基体樹脂100重量部(固形分)、クロム酸ス
トロンチウム40重量部及び黒色アゾ系金属錯塩染料1
0重量部を含む塗料組成物に、金属ステンレス粉末(平
均粒径5μm)とポリテトラフルオロエチレン樹脂微粉
末(旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製「フルオ
ンルブリカントL155J」)を配合し、必要に応じて
溶剤により固形分を調整した。乾燥後の有機樹脂皮膜の
体積固有抵抗値は塗料組成物中の金属ステンレス粉末の
添加量により調整し、また、乾燥後の有機樹脂皮膜の動
摩擦係数は塗料組成物中のポリテトラフルオロエチレン
樹脂微粉末の添加量により調整した。
【0052】 鋼板外面側樹脂皮膜用塗料組成物(4) ポリエステル樹脂(大日本インキ化学工業(株)製「ス
ーパーベッコライトM−6803−30」)とメラミン
樹脂(大日本インキ化学工業(株)製「スーパーベッカ
ミンL−110」)からなる基体樹脂100重量部(固
形分)とクロム酸ストロンチウム40重量部を含む塗料
用組成物に、窒化チタン(平均粒径1μm)とポリエチ
レンワックス(ヘキスト社製「セリダスト3620」)
を配合し、必要に応じて溶剤により固形分を調整した。
乾燥後の有機樹脂皮膜の体積固有抵抗値は塗料組成物中
の窒化チタンの配合量により調整し、また、乾燥後の有
機樹脂皮膜の動摩擦係数は塗料組成物中のポリエチレン
ワックスの添加量により調整した。
【0053】(4)鋼板内面側に適用する絶縁性有機樹
脂皮膜用塗料組成物の作成例 鋼板内面側樹脂皮膜用塗料組成物(1) アミン変性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート(旭
化成(株)製「デュラネートMF−B」)からなる基体
樹脂100重量部(固形分)、乾式シリカ(日本アエロ
ジル(株)製「R811」)30重量部、クロム酸バリ
ウム30重量部及び黒色アゾ系金属錯塩染料30重量部
を含む塗料組成物に、ポリエチレンワックス(ヘキスト
社製「セリダスト3620」)を配合し、必要に応じて
溶剤により固形分を調整した。乾燥後の有機樹脂皮膜の
体積固有抵抗値は塗料組成物中のブロックイソシアネー
トの添加量により調整し、また、乾燥後の有機樹脂皮膜
の動摩擦係数は塗料組成物中のポリエチレンワックスの
添加量により調整した。
【0054】 鋼板内面側樹脂皮膜用塗料組成物(2) ブロックウレタン変性エポキシ樹脂(三井東圧化学
(株)製「エポキー834」)からなる基体樹脂100
重量部(固形分)、乾式シリカ(日本アエロジル(株)
製「R811」)30重量部、クロム酸バリウム30重
量部を含む塗料組成物に、ポリテトラフルオロエチレン
樹脂微粉末(旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製
「フルオンルブリカントL155J」)を配合し、必要
に応じて溶剤により固形分を調整した。乾燥後の有機樹
脂皮膜の体積固有抵抗値は塗料組成物中のブロックイソ
シアネートの添加量により調整し、また、乾燥後の有機
樹脂皮膜の動摩擦係数は塗料組成物中のポリテトラフル
オロエチレン樹脂微粉末の添加量により調整した。
【0055】 鋼板内面側樹脂皮膜用塗料組成物(3) エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製「エピコー
ト1007」をキシレン/メチルエチルケトンに予め溶
解したもの)とブロックイソシアネート(武田薬品工業
(株)製「タケネートB−870N」)からなる基体樹
脂100重量部(固形分)、シリカゾル(日産化学工業
(株)製「オルガノシリカゾルNPC−ST」)10重
量部(固形分)及びクロム酸ストロンチウム20重量部
を含む塗料組成物に、ポリテトラフルオロエチレン樹脂
微粉末(旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製「フ
ルオンルブリカントL155J」)を配合し、必要に応
じて溶剤により固形分を調整した。乾燥後の有機樹脂皮
膜の体積固有抵抗値は塗料組成物中のブロックイソシア
ネート添加量により調整し、また、乾燥後の皮膜の動摩
擦係数は塗料組成物中のポリテトラフルオロエチレン樹
脂微粉末の添加量により調整した。
【0056】 鋼板内面側樹脂皮膜用塗料組成物(4) アクリル樹脂(大日本インキ化学工業(株)製「アクリ
ディックA−405」)とグラファイト(日本黒鉛工業
(株)製「コートハイト」)からなる塗料組成物を作成
した。 鋼板内面側樹脂皮膜用塗料組成物(5) ポリエステル樹脂(大日本インキ化学工業(株)製「ス
ーパーベッコライトM−6803−30」)とメラミン
樹脂(大日本インキ化学工業(株)製「スーパーベッカ
ミンL−110」)からなる基体樹脂100重量部(固
形分)とクロム酸ストロンチウム40重量部を含む塗料
用組成物に、窒化チタン(平均粒径1μm)とポリエチ
レンワックス(ヘキスト社製「セリダスト3620」)
を配合し、必要に応じて溶剤により固形分を調整した。
乾燥後の有機樹脂皮膜の体積固有抵抗値は塗料組成物中
の窒化チタンの配合量により調整し、また、乾燥後の有
機樹脂皮膜の動摩擦係数は塗料組成物中のポリエチレン
ワックスの添加量により調整した。
【0057】(5)有機樹脂皮膜の形成 上述した鋼板外面側用及び内面側用の各塗料組成物を鋼
板のそれぞれの対象面にロールコーターによりコーティ
ングし、140〜250℃の到達温度で焼き付け、所定
膜厚の皮膜を得た。得られた有機樹脂皮膜の動摩擦係数
は、以下の条件で測定した。 工具形状:3×10mm 加圧力:400kgf(面圧:13.3kg/mm2) 無塗油 また、鉛筆硬度はJIS K5400に従って測定し
た。
【0058】(6)各特性の評価方法 本実施例における各特性の評価方法は以下の通りであ
る。 (a)耐パウダリング性 ビード先端径0.5mmR、ビード高さ4mm、引き抜
き速度200mm/min、加圧力500kgfの条件
下で試験片にドロービード試験を施し、摺動部に接着テ
ープを貼着・剥離して試験前後の試験片の重量差を測定
し、これを単位面積当りに換算して皮膜剥離量とし、下
記により評価した。 ◎ :皮膜剥離量5g/m2以下 ○+:皮膜剥離量5g/m2超〜10g/m2 ○ :皮膜剥離量10g/m2超〜15g/m2 × :皮膜剥離量15g/m2
【0059】(b)溶接性 CF型電極、加圧力:200kgf、通電時間:10サ
イクル/50Hz、溶接電流10kAで連続打点性の試
験を行い、ナゲット径が3.5mm以上を合格とした場
合の連続打点数で評価した。その評価基準は以下の通り
である。 ◎ :2000点以上 ○+:1500点以上、2000点未満 ○ :1000点以上、1500点未満 ○−:500点以上、1000点未満 × :500点未満若しくは無通電発生
【0060】(c)外面適性 (c-1)耐外面錆性 試験片の外面側に関西ペイント(株)製の中塗り塗料K
PX−36で直に中塗り塗装(膜厚40μm)を施し、
次いで関西ペイント(株)製のルーガベークB−531
で上塗り塗装(膜厚40μm)を行った。この試験片に
カッターナイフでクロスカットを入れた後、[塩水噴霧
試験・10分→乾燥・155分→湿潤試験・75分→乾
燥・160分→湿潤試験80分]を1サイクルとする複
合腐食試験を300サイクル行い、クロスカット部から
の腐食の膨れ幅で耐外面錆性を評価した。評価基準は以
下の通りである。 ◎:2mm未満 ○:2mm以上、4mm未満 △:4mm以上、6mm未満 ×:6mm以上
【0061】(c-2)塗料密着性 試験片の外面側に上記(c-1)と同様の中塗り塗装・上
塗り塗装を行い、この試験片を40℃のイオン交換水に
240時間浸漬した後、試験片を取り出し、24時間・
室温で放置した。この試験片の塗膜に2mm間隔の碁盤
目を100個刻み、接着テープを貼着・剥離して塗膜の
剥離率で評価した。その評価基準は以下の通りである。 ◎:剥離なし ○:剥離率3%未満 △:剥離率3%以上、10%未満 ×:剥離率10%以上
【0062】(c-3)塗装後鮮映性 試験片の外面側に上記(c-1)と同様の中塗り塗装・上
塗り塗装を行い、スガ試験機(株)製の写像性測定機
(ICM−2DP)を用い、0.5mmのスリットを使
用した場合の像鮮明度Cにより評価した。その評価基準
は以下の通りである。 ◎ :75以上 ○+:70以上、75未満 ○ :65以上、70未満 △ :60以上、65未満 × :60未満
【0063】(d)耐孔あき腐食性(内面適性) 試験片の内面側に中塗り・上塗り塗装をすることなく、
エッジ部と外面側をテープシールした後、[塩水噴霧4
時間→乾燥2時間→湿潤試験4時間]を1サイクルとす
る複合腐食試験を200サイクル行い、腐食の進行程度
で評価した。その評価基準は以下の通りである。 ◎ :赤錆発生なし ○+:赤錆面積率5%未満 ○ :赤錆面積率5%以上、10%未満 ○−:赤錆面積率10%以上、20%未満 × :赤錆面積率20%以上
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】
【表7】
【0071】
【表8】
【0072】
【表9】
【0073】
【表10】
【0074】
【表11】
【0075】
【表12】
【0076】
【表13】
【0077】
【発明の効果】以上述べた本発明のプレプライムド鋼板
は、耐パウダリング性及び溶接性に優れるとともに、電
着塗装を施すことなく直に中塗り・上塗り塗装若しくは
上塗り塗装した際の鋼板外面側の塗料密着性、耐外面錆
性及び塗装後鮮映性が優れ、しかも、鋼板内面側の耐孔
あき腐食性にも優れていることから、特に厳しい特性が
要求される自動車車体用プレプライムド鋼板として極め
て有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプレプライムド鋼板の模式的な皮膜断
面構造を示す説明図
【図2】鋼板外面側の導電性有機樹脂皮膜の体積固有抵
抗値と溶接性との関係を示すグラフ
【図3】鋼板外面側の導電性有機樹脂皮膜の膜厚と塗装
後鮮映性との関係を示すグラフ
【図4】鋼板外面側の導電性有機樹脂皮膜の膜厚とプレ
ス成形時の皮膜剥離量(耐パウダリング性)との関係で
示すグラフ
【図5】鋼板外面側の導電性有機樹脂皮膜の無塗油条件
下での動摩擦係数とプレス成形時の皮膜剥離量(耐パウ
ダリング性)との関係を示すグラフ
【図6】鋼板外面側の導電性有機樹脂皮膜の鉛筆硬度と
プレス成形時の皮膜剥離量(耐パウダリング性)との関
係を示すグラフ
【図7】鋼板内面側の有機樹脂皮膜の体積固有抵抗値と
耐孔あき腐食性との関係を示すグラフ
【図8】鋼板内面側の有機樹脂皮膜の膜厚と溶接性との
関係を示すグラフ
【図9】鋼板内面側の有機樹脂皮膜の無塗油条件下での
動摩擦係数とプレス成形時の皮膜剥離量(耐パウダリン
グ性)との関係を示すグラフ

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 亜鉛系めっき鋼板の両面に、金属クロム
    換算での付着量が1〜500mg/m2のクロメート皮
    膜を有し、鋼板片面側の前記クロメート皮膜の上層に、
    体積固有抵抗値が1Ω・cm以下、無塗油条件下での動
    摩擦係数が0.03〜0.30、鉛筆硬度が3B〜5
    H、膜厚が2.0〜30μmの導電性有機樹脂皮膜を有
    し、鋼板他面側の前記クロメート皮膜の上層に体積固有
    抵抗値が1Ω・cm超で膜厚が0.1〜3.0μmの有
    機樹脂皮膜を有することを特徴とする耐食性と加工性に
    優れた溶接可能な自動車用プレプライムド鋼板。
  2. 【請求項2】 鋼板片面側に形成される導電性有機樹脂
    皮膜の体積固有抵抗値が0.1Ω・cm以下であること
    を特徴とする請求項1に記載の耐食性と加工性に優れた
    溶接可能な自動車用プレプライムド鋼板。
  3. 【請求項3】 鋼板片面側に形成される導電性有機樹脂
    皮膜の体積固有抵抗値が0.001Ω・cm以下で膜厚
    が3.0〜10μmであることを特徴とする請求項1に
    記載の耐食性と加工性に優れた溶接可能な自動車用プレ
    プライムド鋼板。
  4. 【請求項4】 鋼板片面側に形成される導電性有機樹脂
    皮膜が金属または合金粉末、導電性炭素、リン化鉄、炭
    化物、窒化物および半導体酸化物の中から選ばれる1種
    以上の導電性微粉末を含有することを特徴とする請求項
    1、2または3に記載の耐食性と加工性に優れた溶接可
    能な自動車用プレプライムド鋼板。
  5. 【請求項5】 鋼板他面側に形成される有機樹脂皮膜の
    無塗油条件下での動摩擦係数が0.03〜0.30であ
    ることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の
    耐食性と加工性の優れた溶接可能な自動車用プレプライ
    ムド鋼板。
  6. 【請求項6】 鋼板片面側に形成される導電性有機樹脂
    皮膜が金属または合金粉末、導電性炭素、リン化鉄、炭
    化物、窒化物および半導体酸化物の中から選ばれる1種
    以上の導電性微粉末とポリエチレンワックスとを含有す
    ることを特徴とする請求項1、2、3または5に記載の
    耐食性と加工性に優れた溶接可能な自動車用プレプライ
    ムド鋼板。
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