JPH1012136A - 電子放出素子の製造方法、電子放出素子、該素子を用いた電子源、表示パネルおよび画像形成装置 - Google Patents

電子放出素子の製造方法、電子放出素子、該素子を用いた電子源、表示パネルおよび画像形成装置

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JPH1012136A
JPH1012136A JP17721596A JP17721596A JPH1012136A JP H1012136 A JPH1012136 A JP H1012136A JP 17721596 A JP17721596 A JP 17721596A JP 17721596 A JP17721596 A JP 17721596A JP H1012136 A JPH1012136 A JP H1012136A
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electron
emitting device
voltage
manufacturing
electron emission
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JP17721596A
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Toyoko Kobayashi
登代子 小林
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    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01JELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
    • H01J2201/00Electrodes common to discharge tubes
    • H01J2201/30Cold cathodes
    • H01J2201/316Cold cathodes having an electric field parallel to the surface thereof, e.g. thin film cathodes
    • H01J2201/3165Surface conduction emission type cathodes

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  • Cold Cathode And The Manufacture (AREA)
  • Cathode-Ray Tubes And Fluorescent Screens For Display (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 導電性膜の製造工程を簡略化し、低コストの
電子放出素子の製造方法、および電子放出特性が良好な
電子源、表示パネルおよび画像形成装置の製造方法を提
供する。 【解決手段】 基板上の対向する電極間に、導電性膜形
成用材料を含む溶液の液滴を付与し、加熱焼成工程を経
て導電性膜を形成し、さらに該導電性膜に電子放出部を
形成する電子放出素子の製造方法であって、前記液滴が
接触する面を疎水化処理することを特徴とする電子放出
素子の製造方法、該方法によって得られた電子放出素子
を用いる電子源、表示パネルおよび画像形成装置の製造
方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、基板上の対向する
電極間に設けた、電子放出部を含む導電性膜に電圧を印
加して電子を放出させる電子放出素子の製造方法、該電
子放出素子を用いた電子源、表示パネルおよび画像形成
装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、電子放出素子として熱電子源と冷
陰極電子源の2種類が知られている。冷陰極電子源には
電界放出型(以下FE型と略す)、金属/絶縁層/金属
型(以下MIM型と略す)、表面伝導型電子放出素子等
がある。
【0003】FE型電子放出素子の例としては、W.
P.Dyke&W.W.Dolan,“Field e
mission”,Advance in Elect
ronPhysics,8,89(1956)、あるい
はC.A.Spindt,“Physical Pro
perties of thin−film fiel
d emission cathodes with
molybdeniumcones”,J.Appl.
Phys.,47,5248(1976)等に記載のも
のが知られている。
【0004】また、MIM型電子放出素子の例として
は、C.A.Mead,“Operation of
Tunnel−Emission Devices”,
J.Appl.Phys.,32,646(1961)
等に記載のものが知られている。
【0005】そして、表面伝導型電子放出素子の例とし
ては、M.I.Elinson,Radio Eng.
Electron Phys.,10,1290(19
65)等に記載のものが知られている。
【0006】表面伝導型電子放出素子は、基板上に形成
された小面積の薄膜に、膜面に平行に電流を流すことに
より、電子放出が生ずる現象を利用するものである。こ
の表面伝導型電子放出素子としては、前記エリンソン等
によるSnO2 薄膜を用いたもの、Au薄膜によるもの
[G.Dittmer,“Thin Solid Fi
lms”,9,317(1972)]、In23 /S
nO2 薄膜によるもの[M.Hartwell and
C.G.Fonstad,“IEEE Trans.
ED Conf.”,519(1975)]、カーボン
薄膜によるもの[荒木久 他,真空,第26巻,第1
号,22頁(1983)]等が報告されている。
【0007】これらの表面伝導型電子放出素子の典型的
な素子構成として前述のハートウェルの素子構成を図1
5に示す。同図において1は基板である。4は導電性膜
であり、H型形状のパターンに、有機金属化合物の溶液
を塗布乾燥し加熱焼成により有機成分を分解除去して金
属もしくは金属酸化物とした電子放出部形成用薄膜に、
後述の通電フォーミングと呼ばれる通電処理により電子
放出部5が形成される。なお、同図中の素子電極間隔L
1は0.5〜1mm、W’は約0.1mmで設定されて
いる。また、電子放出部5の位置及び形状については、
模式図として表した。
【0008】従来、これらの表面伝導型電子放出素子に
おいては、電子放出を行う前に導電性膜4に予め通電フ
ォーミングと呼ばれる通電処理を施すことによって電子
放出部5を形成するのが一般的であった。すなわち、通
電フォーミングとは前記導電性膜4の両端に直流電圧あ
るいは非常にゆっくりとした昇電圧、例えば1V/分程
度を印加通電し、導電性膜4を局所的に破壊、変形もし
くは変質せしめ、電気的に高抵抗な状態にした電子放出
部5を形成することである。なお、電子放出部5におい
ては導電性膜4の一部に亀裂が発生しており、その亀裂
付近から電子放出が行われる。このように通電フォーミ
ングにより導電性膜を局所的に破壊、変形もしくは変質
せしめ、構造の変化した部位を電子放出部5と呼び、ま
た通電フォーミングにより電子放出部5が形成された導
電性膜4を電子放出部5を含む導電性膜4と呼ぶ。前記
通電フォーミング処理を施した表面伝導型電子放出素子
は、上述の電子放出部5を含む導電性膜4に電圧を印加
し、該素子に電流を流すことにより、電子放出部5より
電子を放出せしめるものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上述したような従来の
電子放出素子は半導体プロセスに準じたフォトリソグラ
フィー技術を利用して製造した場合、大面積基板に素子
を形成することが困難であるとともに、製造コストが高
いという問題があった。また、インクジェット方式によ
り、導電性膜形成用材料を含む溶液の液滴を基板に付与
する方法では、付与した液滴が所定の位置以外に拡が
り、良好な電子放出特性が得られない場合があった。
【0010】そこで本発明の目的は、上記従来技術にお
ける導電性膜の製造工程を簡略化し、低コストの電子放
出素子の製造方法、および電子放出特性が良好な電子
源、表示パネルおよび画像形成装置の製造方法を提供す
ることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段および作用】上記目的は本
発明により達成できる。すなわち本発明の表面伝導型電
子放出素子の製造方法は、基板上の対向する電極間に、
導電性膜形成用材料を含む溶液の液滴を付与し、加熱焼
成工程を経て導電性膜を形成し、さらに該導電性膜に電
子放出部を形成する電子放出素子の製造方法であって、
前記液滴が接触する面を疎水化処理することを特徴とす
る。
【0012】また本発明は、電子源、表示パネルおよび
画像形成装置の製造方法に関する。
【0013】本発明の電子源の製造方法は、電子放出素
子と、該素子への電圧印加手段とを具備した電子源の製
造方法であって、前記素子が本発明の電子放出素子の製
造方法によって製造されることを特徴とする。
【0014】本発明の表示パネルの製造方法は、電子放
出素子および該素子への電圧印加手段とを具備した電子
源と、前記素子から放出される電子を受けて発光する蛍
光膜とを具備する表示パネルの製造方法であって、前記
素子が本発明の電子放出素子の製造方法によって製造さ
れることを特徴とする。
【0015】さらに本発明の画像形成装置の製造方法
は、電子放出素子および該素子への電圧印加手段とを具
備した電子源と、前記素子から放出される電子を受けて
発光する蛍光膜と、外部信号を用いて前記素子へ印加す
る電圧を制御する駆動回路とを具備する画像形成装置の
製造方法であって、前記素子が本発明の電子放出素子の
製造方法によって製造されることを特徴とする。
【0016】本発明の疎水化処理に用いられる材料は、
加水分解基を有する溌水性のフルオロアルキルシランで
あり、ガラスに含有される元素Mと前記フルオロアルキ
ルシランにおけるケイ素Siとがガラス表面において
(M−O−Si)の形で結合することにより固着され
る。ここで元素Mはガラスの組成元素または不純物とし
て含有されていればよく、Si、Al、Pb、Mg等で
ある。
【0017】疎水性被膜をガラス表面に形成するには、
フルオロアルキルシランをアセトン等の有機溶媒で希釈
した溶液を基板の被膜形成面に均一に付着させる。付着
の方法は、吹き付けや塗布等いずれの方法でもよい。フ
ルオロアルキルシランの濃度としては、好ましくは0.
1〜10重量%、さらに好ましくは1〜10重量%、最
も好ましくは1〜5重量%とすることができる。
【0018】その後この溶液の付着したガラスを加熱処
理して、(M−O−Si)の形でガラスに含有される元
素Mとフルオロアルキルシランにおけるケイ素Siとを
結合させ、フルオロアルキルシランがガラス表面に強固
に固着して溌水性を備えた被膜が形成される。これによ
り、導電性薄い膜形成用材料を含む水溶液の液滴を基板
に部分的に付与する工程において、液滴が所定の位置以
外に拡がってしまい、また、液滴の拡がりにより焼成後
の膜厚が薄くなって安定性、再現性の良い素子特性が得
られなくなるなどの不都合を防ぐことができる。
【0019】フルオロアルキルシラン化合物としては、
【0020】
【化1】
【0021】
【化2】
【0022】
【化3】
【0023】
【化4】
【0024】
【化5】
【0025】
【化6】
【0026】
【化7】
【0027】
【化8】 等が挙げられる。
【0028】
【発明の実施の形態】次に、本発明の表面伝導型電子放
出素子を図3を参照して説明する。先ず、平面型の表面
伝導型電子放出素子について説明する。
【0029】図3(a)は、表面伝導型電子放出素子の
平面図、図3(b)はその断面図である。図3におい
て、1は基板、2と3は素子電極、4は導電性膜、5は
電子放出部である。
【0030】基板1としては、石英ガラス、Na等の不
純物含有量を減少したガラス、青板ガラス、青板ガラス
にスパッタ法等により形成したSiO2 を積層したガラ
ス基板及びアルミナ等のセラミックスおよびSi基板等
を用いることができる。
【0031】対向する素子電極2、3の材料としては、
一般的な導体材料を用いることができる。これは例えば
Ni、Cr、Au、Mo、W、Pt、Ti、Al、C
u、Pd等の金属あるいは合金およびPd、Ag、A
u、RuO2 、Pd−Ag等の金属或は金属酸化物とガ
ラス等から構成される印刷導体、In23 −SnO2
等の透明導電体およびポリシリコン等の半導体材料等よ
り適宜選択することができる。
【0032】素子電極間隔L、素子電極長さW、導電性
膜4の形状等は、応用される形態等を考慮して設計され
る。素子電極間隔Lは、好ましくは、100nmの数倍
から100μmの数倍の範囲とすることができ、より好
ましくは、1μmの数倍から10μmの数倍の範囲とす
ることができる。
【0033】素子電極長さWは、電極の抵抗値、電子放
出特性を考慮して、1μmの数倍から100μmの数倍
の範囲とすることができる。素子電極2、3の膜厚d
は、10nmの数倍から1μmの数倍の範囲とすること
ができる。
【0034】なお、図3に示したように、基板1上に、
対向する素子電極2および3、導電性膜4の順に積層し
た構成だけでなく、基板1上に、導電性膜4、対向する
素子電極2、3の順に積層した構成とすることもでき
る。
【0035】導電性膜4には、良好な電子放出特性を得
るために、微粒子で構成された微粒子膜を用いるのが好
ましい。その膜厚は、素子電極2、3へのステップカバ
レージ、素子電極2、3間の抵抗値及び後述するフォー
ミング条件等を考慮して適宜設定されるが、通常は0.
1nmの数倍から100nmの数倍の範囲とすることが
好ましく、より好ましくは1nmから50nmの範囲と
するのが良い。その抵抗値は、Rsが102 から107
Ω/□の値である。なおRsは、厚さがt、幅がwで長
さがlの薄膜の長さ方向に測定した抵抗Rを、R=Rs
(l/w)とおいたときに現れる量である。本明細書に
おいて、フォーミング処理については、通電処理を例に
挙げて説明するが、フォーミング処理はこれに限られる
ものではなく、膜に亀裂を生じさせて高抵抗状態を形成
する処理を包含するものである。
【0036】導電性膜4を構成する材料の原料となる金
属化合物の金属元素としては、Pd、Pt、Ru、A
g、Au、Ti、In、Cu、Cr、Fe、Zn、S
n、Ta、W、Pb等が挙げられる。
【0037】導電性膜形成のために付与された液体は、
上記の金属化合物を含む水溶液である。さらに金属化合
物の均一性を向上させるためにジメチルスルホキシドや
イソプロピルアルコール等の極性溶媒を前記水溶液に加
えてもよい。
【0038】本発明の電子放出素子の製造方法において
は、上記金属化合物を含む液体を液滴の状態で付与する
が、その手段は液滴を形成しかつ付与することが可能な
らば任意の方法でよく、特に微小な液滴を効率良く適度
な精度で発生付与できかつ制御性も良好な点でインクジ
ェット方式が好ましい。インクジェット方式には、ピエ
ゾ素子等のメカニカルな衝撃により液滴を発生付与する
ものや、微小ヒータ等で液を加熱して突沸させることに
より液滴を発生付与するバブルジェット方式がある。上
記何れの方式でも10ng程度〜数10μg程度までの
微小液滴を再現性良く発生して基板に付与することがで
きるが、バブルジェット方式がより好ましい。
【0039】上記手段で基板に付与された液滴は、乾燥
・焼成工程を経て導電性微粒子膜とすることにより、基
板上に電子放出のための微粒子膜を形成する。ここで述
べる微粒子膜とは、複数の微粒子が集合した膜であり、
その微細構造は、微粒子が個々に分散配置した状態ある
いは微粒子が互いに隣接、あるいは重なり合った状態
(いくつかの微粒子が集合し、全体として島状構造を形
成している場合も含む)をとっている。微粒子の粒径
は、0.1nmの数倍から100nmの数倍の範囲、好
ましくは1nmから20nmの範囲である。
【0040】なお、本明細書では頻繁に「微粒子」とい
う言葉を用いるので、その意味について説明する。小さ
な粒子を「微粒子」と呼び、これよりも小さなものを
「超微粒子」と呼ぶ。「超微粒子」よりもさらに小さく
原子の数が数百個程度以下のものを「クラスター」と呼
ぶことは広く行われている。
【0041】しかしながら、それぞれの境は厳密なもの
ではなく、どの様な性質に注目して分類するかにより変
化する。また「微粒子」と「超微粒子」を一括して「微
粒子」と呼ぶ場合もあり、本明細書中での記述はこれに
沿ったものである。「実験物理学講座14 表面・微粒
子」(木下是雄 編、共立出版 1986年9月1日発
行)では次のように記述されている。「本稿で微粒子と
言うときにはその直径がだいたい2〜3μm程度から1
0nm程度までとし、特に超微粒子と言うときは粒径が
10nm程度から2〜3nm程度までを意味することに
する。両者を一括して単に微粒子と書くこともあってけ
っして厳密なものではなく、だいたいの目安である。粒
子を構成する原子の数が2個から数十〜数百個程度の場
合はクラスターと呼ぶ」(同書195ページ 22〜2
6行目) 付言すると、新技術開発事業団の“林・超微粒子プロジ
ェクト”での「超微粒子」の定義は、粒径の下限はさら
に小さく、次のようなものであった。「創造科学技術推
進制度の“超微粒子プロジェクト”(1981〜198
6)では、粒子の大きさ(径)がおよそ1〜100nm
の範囲のものを“超微粒子”(ultra fine
particle)と呼ぶことにした。すると1個の超
微粒子はおよそ100〜108個くらいの原子の集合体
ということになる。原子の尺度でみれば超微粒子は大〜
巨大粒子である。」(「超微粒子−創造科学技術−」林
主税、上田良二、田崎明 編;三田出版 1988年
2ページ1〜4行目)「超微粒子よりさらに小さいも
の、すなわち原子が数個〜数百個で構成される1個の粒
子は、ふつうクラスターと呼ばれる」(同書2ページ1
2〜13行目) 上記のような一般的な呼び方をふまえて、本明細書にお
いて「微粒子」とは多数の原子・分子の集合体で、粒径
の下限は0.1nmの数倍〜1nmの程度、上限は数μ
m程度のものを指すこととする。
【0042】乾燥工程は通常用いられる自然乾燥、送風
乾燥、熱乾燥等を用いればよい。焼成工程は通常用いら
れる加熱手段を用いれば良い。また、乾燥工程と焼成工
程とは必ずしも区別され別工程として行う必要はなく、
連続して行ってもかまわない。
【0043】上記のような方法に従い、微粒子膜を形成
して電子放出部形成用導電性膜とするならば、液滴付与
工程において基板上の任意の部位のみに、液滴を選択的
に付与できる。従って有機金属等を含む液滴を基板全面
に塗布して焼成してから、不要部分の導電性無機微粒子
膜をフォトリソグラフィー技術を用いて除去するといっ
た従来工程を、簡略で低コストな工程に置き換えること
ができる。
【0044】さらに本発明においては、液滴が接触する
面を疎水化処理するため、付与した液滴が所定の位置以
外に拡がることがなく、また液滴の拡がりにより焼成後
に膜厚のムラができて均一性、再現性の良い電子放出特
性が得られなくなるといった不都合を防ぐことができ
る。
【0045】電子放出部5は、導電性膜4の一部に形成
された高抵抗の亀裂であり、導電性膜4の膜厚、膜質、
材料および後述する通電フォーミング等の製法に依存し
て形成される。前記電子放出部5は、0.1nmの数倍
から10nmの数倍の粒径の導電性微粒子を有すること
もある。この導電性微粒子は、導電性膜4を構成する材
料の元素の一部、あるいは全ての元素を含有するものと
なる。また、電子放出部5およびその近傍の導電性膜4
には、炭素および炭素化合物を有することもある。
【0046】次に、本発明に好適な別の構成の電子放出
素子である垂直型の電子放出素子について説明する。図
4は本発明に好適な垂直型の電子放出素子の基本的な構
成を示す模式的断面図である。なお、図4中において、
図3中と同一の符号は同一のものを指し、6は段差形成
部である。
【0047】基板1、素子電極2および3、導電性膜
4、電子放出部5は、前述した平面型電子放出素子と同
様の材料で構成されたものであり、段差形成部6は、真
空蒸着法、印刷法、スパッタ法等で形成されたSiO2
等の絶縁性材料で構成される。段差形成部6の厚みは、
先に述べた平面型電子放出素子の素子電極間隔Lに対応
し、好ましくは100nmの数倍から10μmの数倍の
範囲であり、段差形成部の製法および素子電極間に印加
する電圧等により設定され、より好ましくは数百オング
ストロームから数μmの範囲である。
【0048】上述の電子放出素子の製造方法としては、
様々な方法が考えられるが、その一例を図5に示す。以
下、順を追って製造方法の説明を、図5に基づいて説明
する。なお、図5中の符号で図3と同一の符号は、同一
のものを指す。
【0049】1)基板1を洗剤、純水および有機溶剤に
より十分に洗浄後、上記のようにフルオロアルキルシラ
ンで疎水化処理する。疎水化処理の程度は、材料および
基板への材料の付着力の違いによって適宜制御される。
次に、真空蒸着法、スパッタ法等により素子電極材料を
基板1上に堆積後、フォトリソグラフィー技術により該
基板1上に素子電極2、3を形成する(図5(a))。
【0050】2)基板1上の素子電極2、3の電極間
に、導電性膜形成用材料を含む溶液を塗布して塗膜を形
成する。塗布の手段としては、ピエゾ方式や加熱発泡
(バブルジェット)方式等のインクジェット方式に代表
される液滴付与手段21を用いて、前記溶液の液滴22
を付与する手段が挙げられる。なお23は液溜りを示す
(図5(b))。
【0051】この後、付与された液滴を加熱焼成して有
機成分を分解させ、導電性膜4を得る(図5(c))。
基板を疎水化処理しているため、液滴のドット形状を制
御でき、従来使用していたパターニング処理を省略する
ことができる。
【0052】前記の液滴付与手段21とは、液体を1μ
m以上100μm以下の大きさの小滴とし、これを一滴
もしくは複数滴用いて被付与面に付与を行う手段であ
る。また、インクジェットとは、前記の液体小滴を形成
したうえ、被付与面に向けて射出して、主に液体小滴の
慣性により該液体小滴を被付与面に移行させてなる液滴
付与手段である。通常、前記インクジェットは被付与面
上の所望の位置に液体小滴を移行させる目的で、液滴射
出部と被付与面との相対位置を変化させる手段や、前記
の慣性により移行中の液体小滴に対して、静電気等の非
接触による外力を作用させて液体小滴の飛行方向を調整
する手段を併用する場合が多い。
【0053】前記のピエゾ方式とはインクジェットの一
方式であって、圧電体に電圧を印加した時の変形力を利
用して、液体小滴の形成と射出を行う方式である。ま
た、前記のバブルジェット方式とは、同じくインクジェ
ットの一方式であって、液体を小空間で加熱した際の突
沸の力を利用して、液体小滴の形成と射出を行う方式で
ある。
【0054】通常、前記のようにして形成された導電性
膜は、微視的には金属含有液体に含まれていた金属原子
が、凝集した微粒子が多数集合した形態を有する。
【0055】3)続いて、通電フォーミングと呼ばれる
通電処理を施す。この処理は、素子電極2、3間に不図
示の電源を用いて通電し、導電性膜4に構造の変化した
部位を形成する処理である(図5(d))。この通電フ
ォーミングにより導電性膜4を局所的に破壊、変形もし
くは変質せしめ、構造の変化した部位を電子放出部5と
呼ぶ。
【0056】通電フォーミングの際の電圧波形の一例を
図6に示す。電圧波形は特にパルス波形が好ましく、パ
ルス波高値を定電圧としたパルスを連続的に印加する場
合を図6(a)に、パルス波高値を増加させながらパル
スを印加する場合を図6(b)にそれぞれ示す。先ず、
パルス波高値を定電圧とした場合について図6(a)に
基づいて説明する。
【0057】図6(a)におけるT1およびT2はそれ
ぞれ電圧波形のパルス幅とパルス間隔である。T1を1
μm・sec〜10mm・sec、T2を10μm・s
ec〜100mm・secとし、三角波の波高値(通電
フォーミング時のピーク電圧)は、表面伝導型電子放出
素子の前述した形態に応じて適宜選択し、適当な圧力、
例えば1.3×10-3Pa程度の真空雰囲気下で、数秒
から数十分印加する。なお、素子の電極間に印加する電
圧波形は三角波に限定することはなく、矩形波など所望
の波形を採用しても良い。
【0058】図6(b)におけるT1およびT2は、図
6(a)におけるものと同様であり、三角波の波高値
を、例えば0.1Vステップ程度づつ増加させながら適
当な真空雰囲気下で印加する。なお、上記の場合の通電
フォーミング処理の終了は、パルス間隔T2中に、導電
性膜4を局所的に破壊、変形しない程度の電圧、例えば
0.1V程度の電圧で素子電流を測定し、抵抗値を求
め、例えば1MΩ以上の抵抗を示した時に通電フォーミ
ングを終了する。
【0059】4)次に、通電フォーミングが終了した素
子に活性化工程と呼ばれる処理を施すのが好ましい。活
性化工程とは、この工程により素子電流If、放出電流
Ieが著しく変化する工程である。
【0060】すなわち活性化工程は、例えば、有機物質
のガスを含有する雰囲気下で、通電フォーミングと同様
に、パルスの印加を繰り返すことで行うことができる。
この雰囲気は、例えば油拡散ポンプやロータリーポンプ
などを用いて真空容器内を排気した場合に、雰囲気内に
残留する有機ガスを利用して形成することができる他、
イオンポンプなどにより一旦十分に排気した真空中に、
適当な有機物質のガスを導入することによっても得られ
る。このときの好ましい有機物質のガス圧は、前述の応
用の形態、真空容器の形状や、有機物質の種類などによ
り異なるため場合に応じ適宜設定される。適当な有機物
質としては、アルカン、アルケン、アルキンの脂肪族炭
化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、アルデヒ
ド類、ケトン類、アミン類、フェノール、カルボン、ス
ルホン酸等の有機酸類等を挙げることができる。具体的
には、メタン、エタン、プロパンなどCn2n+2で表さ
れる飽和炭化水素、エチレン、プロピレンなどCn2n
等の組成式で表される不飽和炭化水素、ベンゼン、トル
エン、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、ア
セトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、メチ
ルアミン、エチルアミン、フェノール、蟻酸、酢酸、プ
ロピオン酸等が使用できる。この処理により、雰囲気中
に存在する有機物質から、炭素あるいは炭素化合物が素
子上に堆積し、素子電流If、放出電流Ieが、著しく
変化する工程である。
【0061】活性化工程の終了判定は、素子電流Ifと
放出電流Ieを測定しながら、適宜行う。なおパルス
幅、パルス間隔、パルス波高値なども適宜設定される。
上述の炭素および炭素化合物とは、例えばグラファイト
(このグラファイトはいわゆるHOPG、PG、GCを
包含しており、HOPGはほぼ完全なグラファイトの結
晶構造を有するもの、PGは結晶粒が20nm程度で結
晶構造がやや乱れたもの、GCは結晶粒が2nm程度に
なり、結晶構造の乱れがさらに大きくなったものを指
す。)、非晶質カーボン(アモルファスカーボンおよ
び、アモルファスカーボンと前記グラファイトの微結晶
の混合物を指す。)であり、その膜厚は、50nm以下
とするのが好ましく、30nm以下とするのがより好ま
しい。
【0062】5)このような工程を経て得られた電子放
出素子は、安定化工程を行うことが好ましい。この工程
は、真空容器内の有機物質を排気する工程である。真空
容器を排気する真空排気装置は、装置から発生するオイ
ルが素子の特性に影響を与えないように、オイルを使用
しないものを用いるのが好ましい。具体的には、ソープ
ションポンプ、イオンポンプ等の真空排気装置を挙げる
ことができる。
【0063】前記活性化工程で、排気装置として油拡散
ポンプやロータリーポンプを用い、これから発生するオ
イル成分に由来する有機ガスを用いた場合は、この成分
の分圧を極力低く抑える必要がある。真空容器内の有機
成分の分圧は、上記の炭素および炭素化合物がほぼ新た
に堆積しない分圧が好ましく、具体的には1.3×10
-6Pa以下が好ましく、さらには1.3×10-8Pa以
下が特に好ましい。
【0064】さらに真空容器内を排気するときには、真
空容器全体を加熱して、真空容器内壁や、電子放出素子
に吸着した有機物質分子を排気しやすくするのが好まし
い。このときの加熱条件は、80〜200℃で5時間以
上という条件が望ましいが、特にこの条件に限るもので
はなく、真空容器の大きさや形状、電子放出素子の構成
などの諸条件により適宜選ばれる条件により行う。真空
容器内の圧力は極力低くすることが必要で、1.3〜
3.9×10-5Pa以下が好ましく、さらに1.3×1
-6Pa以下が特に好ましい。
【0065】安定化工程を行った後の、駆動時の雰囲気
は、上記安定化処理終了時の雰囲気を維持するのが好ま
しいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去
されていれば、真空度自体は多少低下しても十分安定な
特性を維持することができる。
【0066】従って、このような真空雰囲気を採用する
ことにより、新たな炭素および炭素化合物の堆積を抑制
する事が可能となり、結果として素子電流If、放出電
流Ieが安定する。
【0067】上述のような素子構成を有しており、上記
本発明の製造方法によって作製された電子放出素子の基
本特性について図7および図8を用いて説明する。
【0068】図7は、図3で示した構成を有する素子の
電子放出特性を測定するための測定評価装置の概略構成
図である。図7において、図3中の符号と同一の符号は
図3と同一のものを示す。また、70は素子電極2、3
間の導電性膜4を流れる素子電流Ifを測定するための
電流計、71は電子放出素子に素子電圧Vfを印加する
ための電源、72は素子の電子放出部3より放出される
放出電流Ieを測定するための電流計、73はアノード
電極74に電圧を印加するための高圧電源、74は素子
の電子放出部5より放出される放出電流Ieを捕捉する
ためのアノード電極、75は真空装置、76は排気ポン
プである。
【0069】また、電子放出素子およびアノード電極7
4等は真空装置75内に設置され、その真空装置75に
は、不図示の真空計等の真空装置に必要な機器が具備さ
れており、所望の真空下で電子放出素子の測定評価を行
えるようになっている。なお、排気ポンプ76は、ター
ボポンプ、ロータリーポンプからなる通常の高真空装置
系と、更にイオンポンプ等からなる超高真空装置系とか
らなる。また、真空装置全体、および電子放出素子は、
不図示のヒーターにより200℃まで加熱できる。従っ
て、本測定評価装置では、前述の通電フォーミング以降
の工程も行うことができる。
【0070】一例として、アノード電極の電圧は1kV
〜10kV、アノード電極と電子放出素子との距離Hは
2mm〜8mmの範囲で測定することができる。
【0071】図7に示した測定評価装置により測定され
た放出電流Ieおよび素子電流Ifと素子電圧Vfとの
関係の典型的な例を図8に示す。なお、放出電流Ieは
素子電流Ifに比べて著しく小さいので、図8は任意単
位で示されている。なお、縦横軸はリニアスケールであ
る。
【0072】図8からも明らかなように、本発明の製造
方法によって作製された電子放出素子は、放出電流Ie
に対する以下の三つの特徴的特性を有する。
【0073】先ず第一に、上記電気放出素子はある電圧
(しきい値電圧と呼ばれ、図8中のVthである)以上
の素子電圧を印加すると急激に放出電流Ieが増加し、
一方しきい値電圧Vth未満では放出電流Ieがほとん
ど検出されない。すなわち、上記電気放出素子は、放出
電流Ieに対する明確なしきい値電圧Vthを持った非
線形素子である。
【0074】第二に、放出電流Ieが素子電圧Vfに単
調増加依存するため、放出電流Ieは素子電圧Vfで制
御できる。
【0075】第三にアノード電極74に捕捉される放出
電荷は、素子電圧Vfを印加する時間に依存する。すな
わち、アノード電極74に捕捉される電荷量は、素子電
圧Vfを印加する時間により制御できる。
【0076】本発明の製造方法によって製造される電子
放出素子は以上のような特性を有するため、複数の電子
放出素子を配置した電子源、画像形成装置等においても
入力信号に応じて電子放出特性を容易に制御できること
となり、多方面への応用が可能である。
【0077】また、素子電流Ifは素子電圧Vfに対し
て単調増加する(MI特性と呼ぶ)好ましい特性の例を
図8中に実線で示したが、この他にも、素子電流Ifが
素子電圧Vfに対して電圧制御型負性抵抗(VCNR特
性と呼ぶ)特性を示す場合もある(不図示)。また、こ
れら素子電流の特性は、その製法および測定時の測定条
件等に依存する。なお、この場合も、電子放出素子は上
述した三つの特性上の特徴を有する。
【0078】次に、本発明の電子源の製造方法と、該方
法によって製造される電子源について説明する。
【0079】本発明の電子源の製造方法においては、電
子放出素子を前述の本発明の電子放出素子の製造方法で
作製すること以外は特に制限されず、電子源の電圧印加
手段等の具体的な構成も特に制限されない。
【0080】以下に、本発明の電子源の製造方法および
その方法によって製造される電子源の好適な態様につい
て説明する。
【0081】基板上の電子放出素子の配列の方式には、
例えば、従来例で述べたように多数の電子放出素子を並
列に配置し、個々の素子の両端を配線で接続した電子放
出素子の行を多数配列し(行方向と呼ぶ)、この配線と
直交する方向に(列方向と呼ぶ)該電子源の上方の空間
に設置された制御電極(グリッドとも呼ぶ)によって電
子放出素子からの放出電子を制御駆動するはしご状配置
や、次に述べるm本のX方向配線の上にn本のY方向配
線を層間絶縁層を介して設置し、電子放出素子の一対の
素子電極にそれぞれX方向配線、Y方向配線を接続した
配置があげられる。以下、後者の配置を単純マトリクス
配置と呼ぶ。まず、単純マトリクス配置について詳述す
る。
【0082】前述した本発明の製造方法で作製される電
子放出素子の3つの基本的特性の特徴によれば、単純マ
トリクス配置された電子放出素子においても、該素子か
らの放出電子は、しきい値電圧以上では対抗する素子電
極間に印加するパルス状電圧の波高値と巾によって制御
される。一方、しきい値電圧以下では、放出電子はほと
んど放出されない。この特性によれば、多数の電子放出
素子を配置した場合においても、個々の素子に上記パル
ス状電圧を適宜印加すれば、入力信号に応じて電子放出
素子を選択し、その電子放出量を制御することが可能で
ある。
【0083】以下、この原理に基づいて構成した電子源
の構成について、図9を用いて説明する。91は電子源
基板、92はX方向配線、93はY方向配線、94は電
子放出素子、95は結線である。なお、電子放出素子9
4は前述の本発明の製造方法で作製されたものであれば
よく、平面型あるいは垂直型のどちらであってもよい。
【0084】図9において、電子源基板91は前述した
ガラス基板等であり、用途に応じて、設置される電子放
出素子の個数および個々の素子の設計上の形状が適宜設
定される。
【0085】X方向配線92はDx1、Dx2、・・
・、Dxmのm本(mは正の整数)の配線からなり、電
子源基板91上に真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等で
形成した導電性金属等である。また、多数の電子放出素
子にほぼ均等な電圧が供給されるようにその材料、膜
厚、配線巾が適宜設定される。Y方向配線93はDy
1、Dy2、・・・、Dynのn本(nは正の整数)の
配線からなり、X方向配線92と同様に作製される。こ
れらm本のX方向配線92とn本のY方向配線93間に
は、不図示の層間絶縁層が設置され、電気的に分離され
てマトリックス配線を構成する。
【0086】不図示の層間絶縁層は、真空蒸着法、印刷
法、スパッタ法等で形成されたSiO2 等であり、X方
向配線92を形成した基板91の全面または一部に所望
の形状で形成され、特にX方向配線92とY方向配線9
3の交差部の電位差に耐え得るように、膜厚、材料、製
法が適宜設定される。また、X方向配線92とY方向配
線93は、それぞれ外部端子として引き出されている。
【0087】更に、電子放出素子94の対向する素子電
極(不図示)が、m本のX方向配線92およびn本のY
方向配線93と、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等で
形成された導電性金属等からなる結線95によってそれ
ぞれ電気的に接続されているものである。
【0088】ここで、m本のX方向配線92、n本のY
方向配線93、結線95および対向する素子電極の導電
性金属は、その構成元素の一部あるいは全部が同一であ
っても、またそれぞれ異なっていてもよく、前述の素子
電極の材料等から適宜選択される。なお、これら素子電
極への配線は、素子電極と配線材料が同一である場合
は、素子電極と総称する場合もある。また電子放出素子
は、基板91上、あるいは不図示の層間絶縁層上のどち
らに形成してもよい。
【0089】また、詳しくは後述するが、前記X方向配
線92には、X方向に配列する電子放出素子94の行を
入力信号に応じて走査するための走査信号を印加するた
めの不図示の走査信号発生手段が電気的に接続されてい
る。一方、Y方向配線93には、Y方向に配列する電子
放出素子94の列の各列を入力信号に応じて変調するた
めの変調信号を印加するための不図示の変調信号発生手
段が電気的に接続されている。更に、電子放出素子の各
素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印加される走
査信号と変調信号の差電圧として供給されるものであ
る。
【0090】上記構成において、単純なマトリクス配線
だけで個別の素子を選択して独立に駆動可能となる。
【0091】次に、本発明の表示パネルの製造方法と、
該方法によって製造される表示パネルについて説明す
る。
【0092】本発明の表示パネルの製造方法において
は、電子放出素子を前述の本発明の電子放出素子の製造
方法で作製すること以外は特に制限されず、また表示パ
ネルの電子源、蛍光膜等の具体的な構成も特に制限され
ない。
【0093】以下に、本発明の表示パネルの製造方法お
よびその方法によって製造される表示パネルの好適な態
様として、以上のようにして作製した単純マトリクス配
置の電子源による表示等に用いる表示パネルについて、
図10および図11を用いて説明する。図10は表示パ
ネルの基本構成図であり、図11は蛍光膜のパターン図
である。
【0094】図10において、91は上述のようにして
電子放出素子を配置した電子源基板、101は電子源を
固定したリアプレート、106はガラス基板103の内
面に蛍光膜104とメタルバック105等が形成された
フェースプレート、102は支持枠であり、リアプレー
ト101、支持枠102およびフェースプレート106
を、フリットガラス等を塗布した後に大気中あるいは窒
素雰囲気中で400〜500度で10分以上焼成するこ
とによって封着して、外囲器108を構成する。
【0095】図10において、94は図3における電子
放出部に相当する。92および93は、それぞれ電子放
出素子の一対の素子電極と接続されたX方向配線および
Y方向配線である。
【0096】外囲器108は、上述の如く、フェースプ
レート106、支持枠102およびリアプレート101
で構成されるが、リアプレート101は主に基板91の
強度を補強する目的で設けられるため、基板91自体で
十分な強度を持つ場合は別体のリアプレート101は不
要であり、基板91に直接支持枠102を封着し、フェ
ースプレート106、支持枠102および基板91にて
外囲器108を構成しても良い。また、更には、フェー
スプレート106とリアプレート101との間に、スペ
ーサーとよばれる不図示の支持体を設置することで、大
気圧に対して十分な強度をもつ外囲器108の構成にす
ることもできる。
【0097】図11は蛍光膜を示す。蛍光膜104は、
モノクローム用の場合は蛍光体のみから成るが、カラー
用の蛍光膜の場合は蛍光体の配列によりブラックストラ
イプあるいはブラックマトリクスなどと呼ばれる黒色導
電材111と蛍光体112とで構成される。ブラックス
トライプ、ブラックマトリクスが設けられる目的は、カ
ラー表示の際に必要となる三原色蛍光体の各蛍光体11
2間の塗り分け部を黒くすることで混色等を目立たなく
することと、蛍光膜104における外光反射によるコン
トラストの低下を抑制することである。ブラックストラ
イプの材料としては、通常よく用いられている黒鉛を主
成分とする材料だけでなく、導電性があり光の透過およ
び反射が少ない材料であればこれに限るものではない。
【0098】ガラス基板に蛍光体を塗布する方法は、モ
ノクローム、カラーによらず、沈澱法や印刷法が用いら
れる。
【0099】また、蛍光膜104の内面側には通常、メ
タルバック105が設けられる。メタルバックの目的
は、蛍光体の発光のうち内面側への光をフェースプレー
ト106側へ鏡面反射することにより輝度を向上するこ
と、電子ビーム加速電圧を印加するための電極として作
用すること、外囲器内で発生した負イオンの衝突による
ダメージからの蛍光体の保護をすること等である。メタ
ルバックは、蛍光膜作製後、蛍光膜の内面側表面の平滑
化処理(通常、「フィルミング」と呼ばれる)を行い、
その後Alを真空蒸着等で堆積することで作製できる。
【0100】フェースプレート106には、更に蛍光膜
104の導電性を高めるため、蛍光膜104の外面側に
透明電極(不図示)を設けてもよい。
【0101】前述の封着を行う際、カラーの場合は各色
蛍光体と電子放出素子とを対応させなくてはいけないた
め、十分な位置合わせを行う必要がある。
【0102】外囲器108は、不図示の排気管を通じ、
1.3×10-5Pa程度の圧力にされ、封止が行われ
る。また、外囲器108の封止後の真空度を維持するた
めに、ゲッター処理を行う場合もある。これは、外囲器
108の封止を行う直前あるいは封止後に、抵抗加熱あ
るいは高周波加熱等の加熱法により、外囲器108内の
所定の位置(不図示)に配置されたゲッターを加熱し、
蒸着膜を形成する処理である。ゲッターは通常Ba等が
主成分であり、該蒸着膜の吸着作用により、例えば1.
3×10-3ないしは1.3×10-5Paの圧力を維持す
るものである。なお、電子放出素子のフォーミング以降
の工程は、適宜設定される。
【0103】次に、本発明の画像形成装置の製造方法
と、該方法によって製造される画像形成装置について説
明する。
【0104】本発明の画像形成装置の製造方法において
は、電子放出素子を前述の本発明の電子放出素子の製造
方法で作製すること以外は特に制限されず、また、画像
形成装置の電子源、蛍光膜、駆動回路等の具体的な構成
も特に制限されない。
【0105】以下に、本発明の画像形成装置の製造方法
およびその方法によって製造される画像形成装置の好適
な態様として、単純マトリクス配置の電子源を用いて構
成した表示パネルを用いてNTSC方式のテレビ信号に
基づいてテレビジョン表示を行なう為の画像形成装置を
示し、その概略構成を図12を用いて説明する。図12
は、NTSC方式のテレビ信号に応じて表示を行う例の
画像形成装置の駆動回路のブロック図である。図12に
おいて、121は前記表示パネルであり、また、122
は走査回路、123は制御回路、124はシフトレジス
タ、125はラインメモリ、126は同期信号分離回
路、127は変調信号発生器、VxおよびVaは直流電
圧源である。
【0106】以下、各部の機能を説明していく。先ず表
示パネル121は、端子Dox1ないしDoxm、およ
び端子Doy1ないしDoyn、並びに高圧端子Hvを
介して外部の電気回路と接続している。このうち、端子
Dox1ないしDoxmには、前記表示パネル内に設け
られている電子源、すなわちM行N列の行列状にマトリ
クス配線された電子放出素子群を一行(N素子)ずつ順
次駆動していく為の走査信号が印加される。一方、端子
Doy1ないしDoynには、前記走査信号により選択
された一行の電子放出素子の各素子の出力電子ビームを
制御する為の変調信号が印加される。また、高圧端子H
vには、直流電圧源Vaより、たとえば10K[V]の
直流電圧が供給されるが、これは電子放出素子より出力
される電子ビームに蛍光体を励起するのに十分なエネル
ギーを付与する為の加速電圧である。
【0107】次に、走査回路122について説明する。
同回路は、内部にM個のスイッチング素子を備えるもの
で(図中、S1ないしSmで模式的に示している)、各
スイッチング素子は、直流電圧源Vxの出力電圧もしく
は0[V](グランドレベル)のいずれか一方を選択
し、表示パネル121の端子Dox1ないしDoxmと
電気的に接続するものである。S1ないしSmの各スイ
ッチング素子は、制御回路123が出力する制御信号T
scanに基づいて動作するものであるが、実際には例
えばFETのようなスイッチング素子を組み合わせる事
により容易に構成する事が可能である。
【0108】なお、前記直流電圧源Vxは、本実施態様
の場合には前記電子放出素子の特性(電子放出しきい値
電圧)に基づき、走査されていない素子に印加される駆
動電圧が電子放出しきい値電圧以下となるような一定電
圧を出力するよう設定されている。
【0109】また、制御回路123は、外部より入力す
る画像信号に基づいて適切な表示が行なわれるように各
部の動作を整合させる働きを持つものである。次に説明
する同期信号分離回路126より送られる同期信号Ts
yncに基づいて、各部に対してTscan、Tsft
およびTmryの各制御信号を発生する。
【0110】同期信号分離回路126は、外部から入力
されるNTSC方式のテレビ信号から、同期信号成分と
輝度信号成分とを分離する為の回路で、よく知られてい
るように周波数分離(フィルター)回路を用いれば、容
易に構成できるものである。同期信号分離回路126に
より分離された同期信号は、よく知られるように垂直同
期信号と水平同期信号より成るが、ここでは説明の便宜
上、Tsync信号として図示した。一方、前記テレビ
信号から分離された画像の輝度信号成分を便宜上DAT
A信号と表すが、同信号はシフトレジスタ124に入力
される。
【0111】シフトレジスタ124は、時系列的にシリ
アルに入力される前記DATA信号を、画像の1ライン
毎にシリアル/パラレル変換するためのもので、前記制
御回路123より送られる制御信号Tsftに基づいて
動作する(すなわち、制御信号Tsftは、シフトレジ
スタ124のシフトクロックであると言い換えても良
い)。シリアル/パラレル変換された画像1ライン分
(電子放出素子N素子分の駆動データに相当する)のデ
ータは、Id1ないしIdnのN個の並列信号として前
記シフトレジスタ124より出力される。
【0112】ラインメモリ125は、画像1ライン分の
データを必要時間の間だけ記憶する為の記憶装置であ
り、制御回路123より送られる制御信号Tmryにし
たがって適宜Id1ないしIdnの内容を記憶する。記
憶された内容は、Id’1ないしId’nとして出力さ
れ、変調信号発生器127に入力される。
【0113】変調信号発生器127は、前記画像データ
Id’1ないしId’nの各々に応じて、電子放出素子
の各々を適切に駆動変調する為の信号源で、その出力信
号は、端子Doy1ないしDoynを通じて表示パネル
121内の電子放出素子に印加される。
【0114】前述したように、本発明にかかる電子放出
素子は放出電流Ieに対して以下の基本特性を有してい
る。すなわち、前述したように、電子放出には明確なし
きい値電圧Vthがあり、Vth以上の電圧を印加され
た時のみ電子放出が生じる。また、電子放出しきい値以
上の電圧に対しては、素子への印加電圧の変化に応じて
放出電流も変化していく。なお、電子放出素子の材料や
構成、製造方法を変える事により、電子放出しきい値電
圧Vthの値や、印加電圧に対する放出電流の変化の度
合いが変わる場合もあるが、いずれにしても以下のよう
な事がいえる。
【0115】すなわち、本素子にパルス状の電圧を印加
する場合、例えば電子放出しきい値以下の電圧を印加し
ても電子放出は生じないが、電子放出しきい値以上の電
圧を印加する場合には電子ビームが出力される。その
際、第一には、パルスの波高値Vmを変化させる事によ
り出力電子ビームの強度を制御する事が可能である。第
二には、パルスの幅Pwを変化させる事により出力され
る電子ビームの電荷の総量を制御する事が可能である。
【0116】したがって、入力信号に応じて、電子放出
素子を変調する方式としては、電圧変調方式、パルス幅
変調方式等が挙げられる。電圧変調方式を実施するに
は、変調信号発生器127としては、一定の長さの電圧
パルスを発生するが入力されるデータに応じて適宜パル
スの波高値を変調するような電圧変調方式の回路を用い
る。また、パルス幅変調方式を実施するには、変調信号
発生器127としては、一定の波高値の電圧パルスを発
生するが入力されるデータに応じて適宜電圧パルスの幅
を変調するようなパルス幅変調方式の回路を用いるもの
である。
【0117】以上説明した一連の動作により、表示パネ
ル121を用いてテレビジョンの表示を行える。なお、
上記説明中、特に記載しなかったが、シフトレジスタ1
24やラインメモリ125は、デジタル信号式のもので
もアナログ信号式のものでも差し支えなく、要は画像信
号のシリアル/パラレル変換や記憶が所定の速度で行な
われればよい。
【0118】デジタル信号式を用いる場合には、同期信
号分離回路126の出力信号DATAをデジタル信号化
する必要があるが、これは回路126の出力部にA/D
変換器を備えれば容易に可能であることは言うまでもな
い。また、これと関連してラインメモリ125の出力信
号がデジタル信号かアナログ信号かにより、変調信号発
生器127に用いられる回路が若干異なったものとなる
のは言うまでもない。すなわち、デジタル信号の場合に
は、電圧変調方式の場合、変調信号発生器127には、
例えばよく知られるD/A変換回路を用い、必要に応じ
て増幅回路等を付け加えればよい。またパルス幅変調方
式の場合、変調信号発生器127は、例えば、高速の発
振器および発振器の出力する波数を計数する計数器(カ
ウンタ)および計数器の出力値と前記メモリの出力値を
比較する比較器(コンパレータ)を組み合せた回路を用
いれば当業者であれば容易に構成できる。必要に応じ
て、比較器の出力するパルス幅変調された変調信号を電
子放出素子の駆動電圧にまで電圧増幅するための増幅器
を付け加えてもよい。
【0119】一方、アナログ信号の場合には、電圧変調
方式の場合、変調信号発生器127には、例えばよく知
られるオペアンプ等を用いた増幅回路を用いればよく、
必要に応じてレベルシフト回路等を付け加えてもよい。
また、パルス幅変調方式の場合には、例えばよく知られ
た電圧制御型発振回路(VCO)を用いればよく、必要
に応じて電子放出素子の駆動電圧にまで電圧増幅するた
めの増幅器を付け加えてもよい。
【0120】以上のように完成した本発明に好適な画像
表示装置において、各電子放出素子に容器外端子Dox
1ないしDoxm、Doy1ないしDoynを通じて電
圧を印加することにより電子放出させ、高圧端子Hvを
通じてメタルバック105あるいは透明電極(不図示)
に高電圧を印加して電子ビームを加速し、蛍光膜104
に衝突させることによって蛍光膜104を励起・発光さ
せることで画像を表示することができる。
【0121】以上述べた構成は、表示等に用いられる好
適な画像形成装置を作製する上で必要な概略構成であ
り、例えば各部材の材料等、詳細な部分は上述内容に限
られるものではなく、画像形成装置の用途に適するよう
適宜選択する。また、入力信号例として、NTSC方式
を挙げたが、これに限るものではなく、PAL、SEC
AM方式等の諸方式でもよく、また、これよりも多数の
走査線からなるTV信号(例えば、MUSE方式をはじ
めとする高品位TV)方式でもよい。
【0122】次に、前述のはしご型配置の電子源、表示
パネル及び画像形成装置の例について図13および図1
4を用いて説明する。
【0123】図13において、130は電子源基板、1
31は電子放出素子、132は前記電子放出素子を配線
するための共通配線Dx1〜Dx10である。電子放出
素子131は、基板130上にX方向に並列に複数個配
置される(これを素子行と呼ぶ)。この素子行が複数個
配置され、電子源となる。各素子行の共通配線間に適宜
駆動電圧を印加することで、各素子行を独立に駆動する
ことが可能である。すなわち、電子ビームを放出したい
素子行には電子放出しきい値以上の電圧を、電子ビーム
を放出しない素子行には電子放出しきい値以下の電圧を
印加すればよい。また、各素子行間の共通配線Dx2〜
Dx9を、例えばDx2とDx3とを同一配線とするよ
うに構成しても良い。
【0124】図14は、上記はしご型配置の電子源を備
えた画像形成装置の表示パネルを示す。140はグリッ
ド電極、141は電子が通過するための空孔、142は
Dox1、Dox2・・・Doxmよりなる容器外端
子、143はグリッド電極110と接続されたG1、G
2・・・Gnからなる容器外端子、144は前述の様に
各素子行間の共通配線を同一配線とした電子源基板であ
る。なお、図14において図10、図13中の符号と同
一の符号は両図と同一のものを示す。前述の単純マトリ
クス配置の画像形成装置(図10に示した)との大きな
違いは、電子源基板130とフェースプレート106の
間にグリッド電極140を備えている事である。
【0125】基板130とフェースプレート106の中
間には、グリッド電極140が設けられている。グリッ
ド電極140は、電子放出素子から放出された電子ビー
ムを変調することができるもので、はしご型配置の素子
行と直交して設けられたストライプ状の電極に電子ビー
ムを通過させるため、各素子に対応して1個ずつ円形の
開口141が設けられている。グリッドの形状や設置位
置は必ずしも図14のようなものでなくてもよく、開口
としてメッシュ状に多数の通過口を設けることもあり、
また例えば電子放出素子の周囲や近傍に設けてもよい。
【0126】容器外端子142およびグリッド容器外端
子143は、不図示の制御回路と電気的に接続される。
【0127】上記画像形成装置では、素子行を1列ずつ
順次駆動(走査)していくのと同期してグリッド電極列
に画像1ライン分の変調信号を同時に印加することによ
り、各電子ビームの蛍光体への照射を制御し、画像を1
ラインずつ表示することができる。
【0128】また、本発明の思想によれば、テレビジョ
ン放送の表示装置のみならず、テレビ会議システム、コ
ンピューター等の表示装置として好適な画像形成装置が
提供される。更には、感光性ドラム等と組み合わせて構
成された光プリンターとしての画像形成装置として用い
ることも可能である。またこの際、上述のm本の行方向
配線とn本の列方向配線を適宜選択することで、ライン
状発光源だけでなく、2次元状の発光源としても応用で
きる。
【0129】
【実施例】以下に本発明の実施例について説明するが、
本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0130】実施例1 電子放出素子として図3に示すタイプの電子放出素子を
作製した。図3(a)は本素子の平面図を、図3(b)
は断面図を示している。また、図3(a)、(b)中の
記号1は絶縁性基板、2および3は素子に電圧を印加す
るための一対の素子電極、4は導電性膜、5は電子放出
部を示す。なお、図中のLは素子電極2と素子電極3の
素子電極間隔、Wは素子電極長さを表している。
【0131】図5を用いて、本実施例の電子放出素子の
作製方法を述べる。絶縁性基板1として大きさ1×1.
5cmのシリカガラス基板を用い、有機溶剤により充分
に洗浄後、この基板面上にNiからなる素子電極2、3
を形成した(図5(a))。
【0132】素子電極間隔Lは3μmとし、素子電極の
幅を500μm、その厚さを100nmとした。
【0133】次に、電極2、3を形成したシリカガラス
基板を、下記化学式で表わされるフルオロアルキルシラ
ンで疎水化処理した。
【0134】
【化9】 上記材料を、2重量%の濃度となるようにアセトンに溶
かした溶液をガラス板材の被膜形成面に塗布し、この溶
液を付着させた後、120℃、60分間の加熱処理を行
った。この加熱により、フルオロアルキルシランにおけ
るSiと、ガラス板材の被膜形成面におけるSiとが
(Si−O−Si)の形態で結合(シロキサン結合)
し、ガラス板材の被膜形成面にはフルオロアルキルシラ
ンが強固に固着して、溌水性を備えた被膜が形成され
る。
【0135】この被膜の形成過程では次のような反応が
進行していると考えられる。つまり図1に示すように、
フルオロアルキルシランにおける加水分解基であるアル
コキシ基(図1における−OMe、なおMeはメチル基
である。)が加水分解されて、フルオロアルキルシラン
側にシラノール基(−SiOH)が生成し、ガラス板材
の表面におけるケイ素に、溶液中の水酸基が配位してガ
ラス基板の被膜形成面側にもシラノール基(−SiO
H)が生成する。そしてこの両シラノール基との間で脱
水縮合が起き、図2に示すようにフルオロアルキルシラ
ンにおけるSiとガラス基板の被膜形成面におけるSi
とがシロキサン結合する。この場合、ガラスに含有され
ているAlやMgが外界に晒されていれば、これらA
l、Mgへの水酸基の配位を経て脱水縮合が起き、(A
l−O−Si)または(Mg−O−Si)の形でフルオ
ロアルキルシランにおけるケイ素が縮合していると考え
られる。
【0136】更に、図2に示すように、ガラス板材の被
膜形成面におけるSiとシロキサン結合したフルオロア
ルキルシランのシラノール基(−SiOH)どうしで脱
水縮合が起きて、ガラス基板の被膜形成面に各フルオロ
アルキルシランどうしで縮合した被膜が形成される。な
お、図2において1’はガラス基板の表面を示す。
【0137】次に本実施例では、導電性膜形成用材料と
して酢酸パラジウムを用いた。まずジメチルスルホキシ
ド40重量%の水溶液を調整し、これに酢酸パラジウム
をパラジウム重量濃度0.4%となるよう溶解して暗赤
色の溶液を得た。この液滴をバブルジェット方式のイン
クジェット装置によって、上記のように電極2、3を形
成した疎水化処理済みガラス基板の上に、電極2、3に
またがるように付与した(図5(b))。
【0138】この時、基板上での液滴の形状は、液滴が
広がることなく、安定性、再現性とも良好であった。次
に、液滴を80℃で2分乾燥させ、さらに350℃で1
2分焼成して導電性膜4を形成した(図5(c))。
【0139】この時作製した素子数は10素子であり、
それぞれの膜厚を原子間顕微鏡で測定した。結果、平均
10nmであり、また10素子間のバラツキは5%であ
った。
【0140】次に、真空容器中で素子電極2および3の
間に電圧を印加し、導電性膜4を通電処理(フォーミン
グ処理)することにより、電子放出部5を作成した(図
5(d))。フォーミング処理の電圧波形を図6に示
す。
【0141】本実施例では、電圧波形のパルス幅T1を
1mm・sec、パルス間隔T2を10mm・secと
し、三角波の波高値(フォーミング時のピーク電圧)は
4Vとし、フォーミング処理は約1.3×10-3Paの
圧力雰囲気下で60秒間行った。
【0142】次に、アセトン分圧:1×10-2Pa、矩
形波パルス幅:100μm・sec、パルス間隔:10
mm・sec、パルス波高値:0〜14Vまで5V/分
で昇圧の条件下で活性化処理を行なった。このようにし
て形成された電子放出部5は、パラジウム元素を主成分
とする微粒子が分散配置された状態となり、その微粒子
の平均粒径は5nmであった。
【0143】以上のようにして作製された素子につい
て、その電子放出特性を図7の構成の測定評価装置によ
り測定した。本電子放出素子およびアノード電極74は
真空装置内に設置されており、その真空装置には排気ポ
ンプ76および不図示の真空計等の真空装置に必要な機
器が具備されており、所望の真空下で本素子の測定評価
を行えるようになっている。なお本実施例では、アノー
ド電極と電子放出素子間の距離を4mm、アノード電極
の電位を1kV、電子放出特性測定時の真空装置内の圧
力を1.3×10-4Paとした。
【0144】以上のような測定評価装置を用いて、本電
子放出素子の電極2および3の間に素子電圧を印加し、
その時に流れる素子電流Ifおよび放出電流Ieを測定
したところ、図8に示したような電流−電圧特性が得ら
れた。本素子では、素子電圧7V程度から急激に放出電
流Ieが増加し、素子電圧12Vでは素子電流Ifが
0.8mA、放出電流Ieが0.62μAとなり、電子
放出効率η=Ie/If(%)は0.08%であった。
なお、上記フルオロアルキルシラン濃度を極端にあげる
と、液滴の形状が大きく変化し、形状制御の点からも問
題であった。このため、濃度の制御が必要であった。
【0145】実施例2 ガラス基板の疎水化処理剤として、下記化学式で表され
るフルオロアルキルシランを用いた以外は実施例1と全
く同様にして液滴を付与し、実施例1と同様にして電子
放出素子を作製した。その結果、同じく液滴のドット形
状は所望の位置以外に広がることなく安定し、再現性も
良好であり、素子間の膜厚のバラツキも小さかった。
【0146】
【化10】 実施例3 16行16列の256個の素子電極とマトリクス状配線
とを形成した基板(図9)の各対向電極に対して、それ
ぞれ実施例1と同様にして酢酸パラジウムのジメチルス
ルホキシド水溶液の液滴を、バブルジェット方式のイン
クジェット装置により、疎水化処理した基板に付与し、
焼成したのち、実施例1と同様にしてフォーミング、活
性化処理を行い電子源基板とした。
【0147】次に、上述のようにして作製した電子源基
板を用いて、前述のように図10に示す表示パネル、図
12に示す画像形成装置を作製した。
【0148】このようにして作製された画像形成装置で
は、液滴のドット形状が拡がらず、安定しているため、
電子放出特性が均一になり、輝度むら等の欠陥が少ない
良好な画像を再現性良く得ることができた。また、導電
性膜を形成するためのパターニング等が不要なため、製
造工程を簡略化でき、コストを抑えることができた。
【0149】比較例1 疎水化処理をしないガラス基板を用いる以外は実施例1
と全く同様にして液滴を基板上に付与して10素子作製
した。この時、所望の位置以外にも液滴の拡がりが見ら
れ、また焼成後の膜厚を原子間力顕微鏡で測定した結
果、10素子の膜厚を平均すると4nmであり、実施例
1の約1/2であった。また、10素子の膜厚のバラツ
キは9%で実施例1の約2倍であった。これらの結果を
実施例1の結果と併せて表1に示す。
【0150】
【表1】 (注)膜厚のバラツキは、10素子間でのバラツキを示
す。
【0151】このように、基板を疎水化処理することに
より、液滴の拡がりを抑制して膜厚のバラツキの小さい
安定性、再現性の良い導電性膜を作製することができ
る。
【0152】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のように液
滴が接触する面を疎水化処理すれば、導電性膜形成用材
料を含む水溶液の液滴の拡がりを抑制することができ、
膜厚のバラツキも小さく、所定の位置に安定性・再現性
良く導電性膜を作製できる。また、パターニング等の処
理の必要がなく、電子放出素子製造工程を簡略化・低コ
スト化できる。その結果、大面積にわたって多数の電子
放出素子を作製する場合でも均一な電子放出特性を得る
ことができ、良好な電子放出素子、電子源、表示パネル
ならびに画像形成装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 フルオロアルキルシランの加水分解反応を示
す図である。
【図2】 フルオロアルキルシランがガラス表面上に固
着している様子を示す図である。
【図3】 本発明に好適な基本的な平面型の表面伝導型
電子放出素子の構成を示す模式的平面図およびその断面
図である。
【図4】 本発明に好適な基本的な垂直型の表面伝導型
電子放出素子の構成を示す模式的断面図である。
【図5】 本発明の表面伝導型電子放出素子の製造方法
の1例を示す模式図である。
【図6】 本発明に好適な通電フォーミング処理の際の
電圧波形の例を示すグラフである。
【図7】 電子放出特性を測定するための測定評価装置
の概略構成図である。
【図8】 本発明の製造方法により作製した電子放出素
子の放出電流Ieおよび素子電流Ifと素子電圧Vfと
の関係の典型例を示すグラフである。
【図9】 本発明に好適な単純マトリクス配置の電子源
の概略構成図である。
【図10】 単純マトリクス配置の電子源を用いた本発
明に好適な表示パネルの概略構成図である。
【図11】 蛍光膜の例を示すパターン図である。
【図12】 本発明に好適な画像形成装置をNTSC方
式のテレビ信号に応じて表示を行う例の駆動回路のブロ
ック図である。
【図13】 本発明に好適な梯子配置の電子源の概略構
成図である。
【図14】 梯子配置の電子源を用いた本発明に好適な
表示パネルの概略構成図である。
【図15】 従来の表面伝導型電子放出素子の典型的な
構成を示す模式的平面図である。
【符号の説明】
1:基板、1’:ガラス基板表面、2、3:素子電極、
4:導電性膜、5:電子放出部、6:段差形成部、2
1:液滴付与手段、22:液滴、23:液溜り、70:
素子電極2、3間の導電性膜4を流れる素子電流Ifを
測定するための電流計、71:電子放出素子に素子電圧
Vfを印加するための電源、72:素子の電子放出部5
より放出される放出電流Ieを測定するための電流計、
73:アノード電極74に電圧を印加するための高圧電
源、74:素子の電子放出部5より放出される放出電流
Ieを捕捉するためのアノード電極、75:真空装置、
76:排気ポンプ、91:電子源基板、92:X方向配
線、93:Y方向配線、94:電子放出素子、95:結
線、101:リアプレート、102:支持枠、103:
ガラス基板、104:蛍光膜、105:メタルバック、
106:フェースプレート、Hv:高圧端子、108:
外囲器、111:黒色導電材、112:蛍光体、12
1:表示パネル、122:走査回路、123:制御回
路、124:シフトレジスタ、125:ラインメモリ、
126:同期信号分離回路、127:変調信号発生器、
VxおよびVa:直流電圧源、130:電子源基板、1
31:電子放出素子、132:Dx1〜Dx10よりな
る電子放出素子131を配線するための共通配線、14
0:グリッド電極、141:電子が通過するための空
孔、142:Dox1,Dox2・・・Doxmよりな
る容器外端子、143:グリッド電極140と接続され
たG1、G2・・・Gnからなる容器外端子、144:
電子源基板。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上の対向する電極間に、導電性膜形
    成用材料を含む溶液の液滴を付与し、加熱焼成工程を経
    て導電性膜を形成し、さらに該導電性膜に電子放出部を
    形成する電子放出素子の製造方法であって、前記液滴が
    接触する面を疎水化処理することを特徴とする電子放出
    素子の製造方法。
  2. 【請求項2】 液滴付与手段がインクジェット方式であ
    ることを特徴とする請求項1に記載の電子放出素子の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 前記インクジェット方式がバブルジェッ
    ト方式であることを特徴とする請求項2に記載の電子放
    出素子の製造方法。
  4. 【請求項4】 疎水化処理剤として、加水分解基を有す
    る溌水性のフルオロアルキルシランを用いることを特徴
    とする請求項1〜3いずれかに記載の電子放出素子の製
    造方法。
  5. 【請求項5】 電子放出素子と、該素子への電圧印加手
    段とを具備した電子源の製造方法であって、前記電子放
    出素子が請求項1〜4いずれかに記載の方法にて製造さ
    れることを特徴とする電子源の製造方法。
  6. 【請求項6】 電子放出素子および該素子への電圧印加
    手段とを具備した電子源と、前記素子から放出される電
    子を受けて発光する蛍光膜とを具備する表示パネルの製
    造方法であって、前記電子放出素子が請求項1〜4いず
    れかに記載の方法にて製造されることを特徴とする表示
    パネルの製造方法。
  7. 【請求項7】 電子放出素子および該素子への電圧印加
    手段とを具備した電子源と、前記素子から放出される電
    子を受けて発光する蛍光膜と、外部信号を用いて前記素
    子へ印加する電圧を制御する駆動回路とを具備する画像
    形成装置の製造方法であって、前記電子放出素子が請求
    項1〜4いずれかに記載の方法にて製造されることを特
    徴とする画像形成装置の製造方法。
JP17721596A 1996-06-19 1996-06-19 電子放出素子の製造方法、電子放出素子、該素子を用いた電子源、表示パネルおよび画像形成装置 Pending JPH1012136A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6737287B1 (en) 1999-02-17 2004-05-18 Canon Kabushiki Kaisha Ink used for ink jet, and methods for manufacturing conductive film, electron-emitting device, electron source and image-forming apparatus
KR100739149B1 (ko) * 2005-11-22 2007-07-13 엘지전자 주식회사 표면 전도형 전자방출 표시소자 및 그 제조 방법

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