JPH09106757A - 電子放出素子、電子源、表示素子および画像形成装置の製造方法並びに電子放出部形成用材料 - Google Patents

電子放出素子、電子源、表示素子および画像形成装置の製造方法並びに電子放出部形成用材料

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JPH09106757A
JPH09106757A JP28634395A JP28634395A JPH09106757A JP H09106757 A JPH09106757 A JP H09106757A JP 28634395 A JP28634395 A JP 28634395A JP 28634395 A JP28634395 A JP 28634395A JP H09106757 A JPH09106757 A JP H09106757A
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electron
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Yoshinori Tomita
佳紀 富田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明の目的は、電子放出部形成用薄膜の作
製工程を半導体プロセスのみで行なうことは大面積ディ
スプレーには向かず、製造コストも高いという問題点を
改善するものであり、電子放出特性の優れた電子放出素
子、電子源、表示素子及び画像形成装置の製造方法を提
供することにある。更に、電子放出素子として、膜厚が
均一で良好な電子放出特性が得られる、電子放出部形成
用材料を提供することにある。 【解決手段】 対向する電極間に電子放出部形成用の材
料液滴を付与し、加熱焼成する工程を経て電子放出部を
形成する電子放出素子の製造方法において、前記電子放
出部形成工程を、陽イオン交換能を有する高分子を含む
担体形成用の材料液滴を前記電極間に付与して担体を形
成後、該担体上に有機金属化合物溶液を含む電子放出部
形成用の材料液滴を付与して該担体に吸着させ、イオン
交換することを特徴とする電子放出素子、電子源、表示
素子および画像形成装置の製造方法並びに電子放出部形
成用材料。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子放出素子の製
造方法に関し、更に詳しくは、該電子放出素子を用いた
電子源、表示素子及び画像形成装置の製造方法並びに電
子放出部形成用材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、電子放出素子として熱電子源
と冷陰極電子源を用いた2種類が知られている。冷陰極
電子源には電界放出型(以下、FEと略す)、金属/絶
縁層/金属型(以下MIMと略す)や、表面伝導型電子
放出素子等がある。FE型の例としてはW.P.Dyk
e&W.W.Dolan、“Field emissi
on”、Advance in Electron P
hysics、8、89(1956)やC.A.Spi
ndt、“Physical Properties
of thin−film field emissi
on cathodes with molybden
ium cones”、J.Appl.Phys.、4
7、5248(1976)等が知られている。
【0003】MIM型の例としてはC.A.Mea
d、”Operation of Tunnel−Em
ission Devices”、J.Apply.P
hys.、32、646(1961)等が知られてい
る。
【0004】表面伝導型電子放出素子の例としては、
M.I.Elinson、RadioEng.Elec
tron Phys.、10、1290(1965)等
がある。
【0005】表面伝導型電子放出素子は、基板上に形成
された小面積の薄膜に、膜面に平行に電流を流すことに
より、電子放出が生ずる現象を利用するものである。こ
の表面伝導型電子放出素子としては、前記エリンソン等
によるSnO2 薄膜を用いたもの、Au薄膜によるもの
[G.Dittmer:“Thin Solid Fi
lms”、9、317(1972)]、In23 /S
nO2 薄膜によるもの[M.Hartwell and
C.G.Fonstad:”IEEE Trans.
ED Conf.”、519(1975)]、カーボン
薄膜によるもの[荒木久 他:真空、第26巻、第1
号、22頁(1983)]等が報告されている。
【0006】これらの表面伝導型電子放出素子の典型的
な例として前述のM.ハートウェルの素子構成を図18
に模式的に示す。同図において1は基板である。4は電
子放出部を含む薄膜で、H型形状のパターンに、スパッ
タで形成された金属酸化物薄膜等からなり、後述の通電
フォーミングと呼ばれる通電処理により電子放出部5が
形成される。4は電子放出部を含む薄膜と呼ぶ。また図
中の素子の長さL1は、0.5mm〜1mm、素子の幅
W1は、0.1mmである。
【0007】従来、これらの表面伝導型電子放出素子に
おいては、電子放出を行う前に電子放出部形成用薄膜6
を予め通電フォーミングと呼ばれる通電処理によって電
子放出部5を形成するのが一般的であった。
【0008】即ち、フォーミングとは前記電子放出部形
成用薄膜6の両端に電圧を印加通電し、電子放出部形成
用薄膜を局所的に破壊、変形もしくは変質せしめ、電気
的に高抵抗な状態にした電子放出部5を形成することで
ある。
【0009】尚、電子放出部5は電子放出部形成用薄膜
6の一部に亀裂が発生しその亀裂付近から電子放出が行
われる場合もある。
【0010】以下フォーミングにより発生した電子放出
部を含む電子放出部形成用薄膜を電子放出部を含む薄膜
4と呼ぶ。
【0011】前記フォーミング処理をした表面伝導型電
子放出素子は、上述の電子放出部を含む薄膜4に電圧を
印加し、素子に電流を流すことにより、上述の電子放出
部5より電子を放出せしめるものである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】上述したように電子放
出部形成用薄膜6は、有機金属化合物を有機溶媒に溶解
した溶液を基板に塗布乾燥後、加熱焼成により有機成分
を熱分解除去して金属もしくは金属酸化物としていた。
電子放出部形成用薄膜6の作製工程を半導体プロセスの
みで行なうことは大面積ディスプレーには向かず、製造
コストも高いという問題点があった。
【0013】本発明の目的は、この様な従来技術の表面
伝導型電子放出素子の製造方法の欠点を改善するもので
あり、電子放出特性の優れた電子放出素子、電子源、表
示素子及び画像形成装置の製造方法を提供することにあ
る。更に、電子放出素子として、膜厚が均一で良好な電
子放出特性が得られる、電子放出部形成用材料を提供す
ることにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
達成するために鋭意検討した結果、電子放出部形成工程
を陽イオン交換能を有する高分子を含む担体形成用の材
料液滴を前記電極間に付与して担体を形成後、該担体上
に有機金属化合物溶液を含む電子放出部形成用の材料液
滴を付与して該担体に吸着させ、イオン交換することに
よって、上記の問題を解決することができる本発明を完
成するに至った。
【0015】すなわち本発明の電子放出素子の製造方法
は、対向する電極間に電子放出部形成用の材料液滴を付
与し、加熱焼成する工程を経て電子放出部を形成する電
子放出素子の製造方法において、前記電子放出部形成工
程を、陽イオン交換能を有する高分子を含む担体形成用
の材料液滴を前記電極間に付与して担体を形成後、該担
体上に有機金属化合物溶液を含む電子放出部形成用の材
料液滴を付与して該担体に吸着させて、イオン交換する
ことを特徴とするものである。
【0016】本発明は、電子放出素子を用いた電子源、
表示素子及び画像形成装置の製造方法並びに電子放出部
形成用材料も包含する。
【0017】本発明の電子源の製造方法は、電子放出素
子と該素子への電圧印加手段を具備する電子源の製造方
法であって、該電子放出素子を本発明の前記電子放出素
子の製造方法で製造したことを特徴とするものである。
【0018】本発明の表示素子の製造方法は、電子放出
素子と該素子への電圧印加手段を具備する電子源と、該
素子から放出される電子を受けて発光する発光体とを具
備する表示素子の製造方法であって、該電子放出素子を
本発明の前記電子放出素子の製造方法で製造したことを
特徴とするものである。
【0019】本発明の画像形成装置の製造方法は、電子
放出素子と該素子への電圧印加手段を具備する電子源
と、該素子から放出される電子を受けて発光する発光体
と、外部信号に基づいてを該素子へ印加する電圧を制御
する駆動回路とを具備する画像形成装置の製造方法であ
って、該電子放出素子を本発明の前記電子放出素子の製
造方法で製造したことを特徴とするものである。
【0020】本発明の電子放出部形成用材料は、対向す
る電極間に電子放出部を有する電子放出素子で、金属化
合物を加熱焼成する過程を経て電子放出部を形成する電
子放出素子の電子放出部形成用材料が下記式
【0021】
【化3】 (但し、R1、R2は炭素数1〜4のアルキル基、lは
2〜4の整数、mは1〜4の整数、nは0〜2の整数、
Mは金属を示す)で表わされる有機金属錯体であること
を特徴とするものである。
【0022】以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0023】本発明の電子放出素子の製造方法では、電
子放出部形成工程において、まず陽イオン交換能を有す
る高分子を含む担体形成用の材料液滴を基板上の電極間
に付与して担体を形成する。また、必要に応じて乾燥、
加熱硬化などの処理をして電極間に所望形状の担体を形
成する。この付与形態として材料液滴を連続的に付与す
ることによって、線状または面状の高分子膜を形成する
ことが望ましい。
【0024】しかる後に、分子内にアミノ基および水酸
基を有するアミノアルコールを有機金属化合物分子に配
位させて容易に水に溶解する有機金属錯体などの金属塩
溶液を主成分とする電子放出部形成用の材料液滴をイン
クジェットおよびバブルジェット方式(以下BJ方式と
略す)などで吐出し、あるいは金属塩溶液中に浸漬し上
記担体に金属を固定する。担体に金属を固定後、適当な
雰囲気下でこれを加熱焼成して電子放出部形成用薄膜6
を作製する。この加熱焼成工程を酸素雰囲気または窒素
雰囲気として焼成しても良い。
【0025】この電子放出部形成用薄膜6の作製方法で
は、材料液滴の付与手段がインクジェットまたはBJ方
式による作製方法が好ましい。
【0026】これらの担体形成と金属塩溶液吐出、浸漬
とを独立に行なう方法はヘッド部分の耐久性、液滴の安
定発生、電子放出部形成用薄膜6の形状、特性などの点
から好ましい。
【0027】また、電子放出部形成用の材料に用いる金
属塩としては、下記式
【0028】
【化4】 (但し、R1、R2は炭素数1〜4のアルキル基、lは
2〜4の整数、mは1〜4の整数、nは0〜2の整数、
Mは金属を示す)で表わされる有機金属錯体を含有する
ことで、比較的低温の加熱焼成によりフォーミングに適
当な無機金属化合物とすることができる。
【0029】また、上記の陽イオン交換能を有する高分
子が主にH(プロトン)型であることが好ましい。H型
とすることで目的外の金属の汚染を防ぎ、目的とする金
属塩とのイオン交換能を高くすることができる。また、
イオン交換・吸着後は高分子に吸着させた金属イオン以
外の余剰な金属塩、金属イオンは洗浄して除去すること
で、電子放出部形成用薄膜6の抵抗などの特性を一定に
することができる。
【0030】
【作用】本発明によれば、陽イオン交換能もしくは吸着
能のある高分子を主成分とする担体形成用の材料液滴を
吐出し、必要に応じて乾燥、加熱硬化などの処理をして
電極間に所望形状の担体を形成する。電子放出部形成用
の材料液滴には金属塩などのイオン性物質が含まれてい
ないので、製造時の温度、湿度などの環境条件に影響さ
れにくく、基板や電極上で一定の形状を形成し得る。ま
た、つぎの工程においてもこの形状を保持するために必
要に応じて乾燥や加熱硬化を行なうこともできる。
【0031】つぎに金属塩溶液を主成分とする電子放出
部形成用の材料液滴を吐出もしくは電子放出部形成用材
料溶液に浸漬処理する。上記担体中に金属イオンもしく
は金属、金属錯体を拡散、担持させる。
【0032】このような2段階の形成方法をとることに
より、適当な雰囲気下でこれを加熱焼成して形成した電
子放出部形成用薄膜6の形状、特性などの再現性を改善
することができる。
【0033】加熱焼成は、高分子膜などの有機物が分解
する温度と時間および必要に応じて酸素、窒素などのガ
スを与えて該材料を金属無機酸化物または金属無機窒化
物などの金属無機化合物からなる電子放出部形成用薄膜
6とする。
【0034】つづいて通電フォーミング処理して電子放
出部形成用薄膜6に電子放出部を形成して電子放出素子
とする。
【0035】
【好ましい実施態様】次に好ましい実施態様を挙げて本
発明を更に詳細に説明する。
【0036】本発明に用いられる電子放出部形成用の材
料は、陽イオン交換能を有する高分子を主成分とする担
体形成用材料と、有機金属錯体などの金属塩溶液を主成
分とする電子放出部形成用材料を用いる。
【0037】陽イオン交換能、吸着能のある高分子を主
成分とする担体形成用材料としては市販のイオン交換樹
脂(例えばダウエックスなど)、酢酸ビニル、ポリビニ
ルアルコール(鹸化度が適当なもの)、アクリル酸共重
合アクリルアミドゲルなどが好ましく用いることができ
る。これを適当な溶媒、一般には水系溶媒が好適に用い
られるが酢酸ビニル等の場合には有機溶媒を添加した溶
液とする。また溶液系ではなく分散系で用いても良い。
【0038】上記の担体形成用材料を基板に付与する手
段は、液滴を形成し付与することが可能ならば任意の方
法でよいが、特に微小な液滴を効率良く適度な精度で発
生付与でき制御性も良好なインクジェット方式が便利で
ある。インクジェット方式にはピエゾ素子等のメカニカ
ルな衝撃により液滴を発生付与するものや、微小ヒータ
等で液を加熱し突沸により液滴を発生付与するBJ方式
があるが、何れの方式でも十ng程度〜数十μg程度ま
での微小液滴を再現性良く発生し基板に付与することが
できる。
【0039】一方、有機金属錯体などの金属塩溶液を主
成分とする電子放出部形成用材料の主成分として、例え
ば下記式
【0040】
【化5】 (但し、R1、R2は炭素数1〜4のアルキル基、lは
2〜4の整数、mは1〜4の整数、nは0〜2の整数、
Mは金属を示す)で表わされる有機金属錯体を単独また
は複数含有した水溶液として用いる。
【0041】電子放出部形成用薄膜の主成分として有機
金属化合物を使用するのは、これらを加熱焼成して金属
あるいは金属酸化物などを得る工程において、有機成分
を含まないハロゲン化物や無機酸塩では融点、沸点、昇
華温度および分解温度が約1000℃であり、電子放出
素子の基板として一般に用いられる基板のガラスやシリ
コンウエハおよび電極材料などの耐熱温度より高い場合
があるからである。
【0042】インクジェットで液滴を吐出する場合の、
該水溶液の金属濃度範囲は、用いる金属元素の種類や金
属塩の種類によって最適な範囲が多少異なるが、一般に
は重量で0.01%以上5%以下の範囲が適当である。
金属濃度が低すぎる場合、基板に所望の量の金属を付与
するために多量の前記水溶液の液滴の付与が必要にな
り、その結果液滴付与に要する時間が長くなるのみなら
ず、基板上に無用に大きな液溜りを生じてしまい所望の
位置のみに金属を付与する目的が達成できなくなる。逆
に前記溶液の金属濃度が高すぎると、基板に付与された
液滴が後の工程で乾燥あるいは焼成される際に著しく不
均一化し、その結果として電子放出部の導電膜が不均一
になり電子放出素子の特性を悪化させる。
【0043】電子放出部形成用薄膜は、担体形成用材料
もしくは電子放出部形成用材料のどちらかで形状を規定
すればよく、本発明では担体形成用材料を一定形状に形
成する。従って、電子放出部形成用材料はディッピング
やスピンナによる塗布法でもよい。インクジェットで液
滴を吐出する以外の場合の、溶液の金属濃度などはイン
クジェットの場合に準ずる。
【0044】また有機金属化合物を加熱焼成する過程で
有機物が分解する温度と時間および必要に応じて酸素、
窒素などのガスを与え、有機金属化合物を無機金属ある
いは無機金属酸化物、無機金属窒化物などの金属無機化
合物とし電子放出部形成用薄膜6とする。
【0045】金属塩や有機金属化合物の金属としては電
圧印加により電子を放出しやすいもの、すなわち仕事関
係の比較的低いもので且つ安定なもの、例えばPt、P
d、Ru等の白金族、Au、Ag、Cu、Cr、Ta、
Fe、W、Pb、Zn、Sn、Hf、Y等の金属が挙げ
られる。
【0046】有機金属化合物において酢酸以外の有機成
分としては一般式R(COO)k で表されるカルボン酸
が一般的である。
【0047】一般式(I)においてR(COO)k のk
=1の具体的な例としてはギ酸、酢酸、プロピオン酸、
酪酸、イソ酪酸、吉草酸などである。k=2の具体的な
例としてはコハク酸、マロン酸、アジピン酸などであ
る。k=3の具体的な例としてはプロパン−1、2、3
−トリカルボン酸などである。〔文献:V.Lippm
ann、Ber、12.1650(1879)〕 k=4の具体的な例としてはブタン−1、2、3、4−
テトラカルボン酸などである。〔文献:W.Bertr
am、Ber、36、329(1903)〕〔文献:
W.Auwers、A.Jacob、Ber、27、1
126(1894)〕 有機金属化合物としてはこれらカルボン酸の金属塩であ
るが、金属イオンの価数により1つの金属にたいして結
合するカルボン酸は1から4まで変化する。
【0048】例えば銀の場合には酢酸銀は酢酸11等量
にたいして銀1等量が一般的であるし、パラジウムの場
合には酢酸パラジウムはパラジウム1等量にたいして酢
酸2等量が一般的であることはよく知られている。
【0049】またイットリウム(Y)は三酢酸塩を、鉛
(Pb)は四酢酸鉛を形成することはよく知られてい
る。
【0050】また、k=2以上のポリカルボン酸イオン
と価数が2以上の金属イオンでカルボン酸金属塩を形成
する場合には、例えばk=2のマロン酸(イオン)とパ
ラジウム(イオン)との場合、(CH2 (COO)2
Pdで表されるようにマロン酸1等量にたいしてパラジ
ウム1等量である。またこの分子式はみかけの比を示し
ているにすぎず、マロン酸の2つのカルボキシル基が同
一のパラジウム原子と結合しているとは限らない。すな
わち、1個のパラジウムに隣接する2つのマロン酸のカ
ルボキシル基が1個ずつ結合していても構わない。例え
ば、
【0051】
【化6】 で表される。
【0052】k=3のプロパン−1、2、3−トリカル
ボン酸(イオン)とパラジウム(イオン)の場合には
(OOCCH2 CH(COO)CH2 COO)2/3 Pd
となり金属1等量にたいして、mは必ずしも整数とは限
らない。
【0053】有機金属化合物として上記カルボン酸以外
ではアミン錯体、アルキルホスフィン錯体などの錯体、
キレート錯体などが挙げられる。
【0054】上記したカルボン酸金属塩以外では金属ハ
ロゲン化物や硝酸や硫酸塩などの無機塩をもちいること
ができる。どのような金属塩を用いるかは、対向する素
子電極の材質、形状、配置に金属塩の安定性などを加味
して選択する。
【0055】上記手段で基板に付与された有機金属化合
物溶液は乾燥、焼成工程を経て導電性無機微粒子膜とす
ることにより、基板上に電子放出のための無機微粒子膜
を形成する。なおここで述べる微粒子膜とは複数の微粒
子が集合した膜であり、微視的に微粒子が個々に分散配
置した状態のみならず、微粒子が互いに隣接あるいは重
なり合った状態(島状も含む)の膜をさす。また微粒子
膜の粒径とは、前記状態で粒子形状が認識可能な微粒子
についての径を意味する。
【0056】乾燥工程は通常用いられてる自然乾燥、送
風乾燥、熱乾燥等を用いればよい。焼成工程は電気炉や
赤外線加熱炉などが一般的である。乾燥工程と焼成工程
とは必ずしも区別された別工程として行う必要はなく、
連続して同時に行ってもかまわない。有機金属化合物は
一般に絶縁性であり、このままでは以下に述べるフォー
ミングという電気的処理を行なえない。よって加熱焼成
して金属もしくは金属無機化合物とするのであるが、加
熱焼成時に有機物が90%以上分解する温度と時間およ
び必要に応じて酸素、窒素などのガスを与え、有機金属
化合物の90%以上を無機金属あるいは無機金属酸化
物、無機金属窒化物などの金属無機化合物とすることが
必要である。90%以上である理由はこの範囲内であれ
ば電気抵抗が低くなり、フォーミング処理を行なえるか
らである。また残りの部分(10%以下の成分)は有機
物もしくはH2 O、CO、NOx などであるが、金属に
よってはこれらを吸着、吸蔵、配位して完全に除去する
ことは不可能な場合がある。これらの残査は存在しない
ほうが好ましいが、フォーミング処理が可能な電気抵抗
にすることが目的なので存在してもかまわない。
【0057】また加熱焼成により得られる金属もしくは
金属無機化合物は後述するように微粒子分散体からなる
薄膜であることが多い。
【0058】以下に本発明にかかわる表面伝導型電子放
出素子の基本的な構成、製造方法、およびその特徴につ
いて、説明する。
【0059】本発明を適用しうる表面伝導型電子放出素
子の基本的な構成には大別して、平面型及び垂直型の2
つの構成が上げられる。
【0060】まず、表面伝導型電子放出素子について説
明する。
【0061】図1は本発明を適用可能な表面伝導型電子
放出素子の構成を示す模式図であり、図1(a)は平面
図、図1(b)は断面図である。
【0062】図1において、1は基板、2、3は素子電
極、4は電子放出部を含む薄膜、5は電子放出部であ
る。基板1としては、石英ガラス、Na等の不純物含有
量を減少したガラス、青板ガラス、青板ガラスにスパッ
タ法等により形成したSiO2を積層したガラス基板等
及びアルミナ等のセラミックス及びSi基板等を用いる
ことができる。
【0063】対向する素子電極2、3の材料としては、
一般的な導体材料を用いることができる。これは例えば
Ni,Cr,Au,Mo,W,Pt,Ti,Al,C
u,Pd等の金属或は合金およびPd,Ag,Au,R
uO2,Pd−Ag等の金属或は金属酸化物とガラス等
から構成される印刷導体、In2O3−SnO2等の透
明電導体およびポリシリコン等の半導体材料等より適宜
選択することができる。素子電極間隔L1、素子電極長
さW、電子放出部を含む薄膜4の形状等は、応用される
形態等を考慮して設計される。素子電極間隔Lは、好ま
しくは、数千Åから数百μmの範囲とすることができ、
より好ましくは、素子電極間に印加する電圧等を考慮し
て数μmから数十μmの範囲とすることができる。
【0064】素子電極長さWは、電極の抵抗値、電子放
出特性を考慮して、数μmから数百μmの範囲とするこ
とができる。素子電極2、3の膜厚dは、数百Åから数
μmの範囲とすることができる。
【0065】尚、図1に示した構成だけでなく、基板1
上に、電子放出部を含む薄膜4、対向する素子電極2、
3の順に積層した構成とすることもできる。
【0066】電子放出部を含む薄膜4には、良好な電子
放出特性を得るために、微粒子で構成された微粒子膜を
用いるのが好ましく、その膜厚は、素子電極2、3への
ステップカバレージ、素子電極2、3間の抵抗値及び後
述する通電フォーミング条件等を考慮して、適宜設定さ
れるが、通常は数Åから数千Åの範囲とすることが好ま
しく、より好ましくは10Åより500Åの範囲とする
のが良い。その抵抗値は、RS が102 から107 Ω/
□の値である。なおRS は、厚さがt、幅がwで長さが
lの薄膜の抵抗Rを、R=RS (l/w)とおいたとき
に現れる。本願明細書において、フォーミング処理につ
いては、通電処理を例に挙げて説明するが、フォーミン
グ処理はこれに限られるものではなく、膜に亀裂を生じ
させて高抵抗状態を形成する処理を包含するものであ
る。
【0067】導電性薄膜4を構成する材料は、Pt、P
d、Ru等の白金族、Au、Ag、Cu、Cr、Ta、
Fe、W、Pb、Zn、Sn、等の金属、PdO、Sn
2、PbO、Sb23 等の金属酸化物、ZrB2
YB4 、等の金属硼素化物、TaC、WC等の金属炭化
物等の中から適宜選択される。
【0068】ここで述べる微粒子膜とは、複数の微粒子
が集合した膜であり、その微細構造は、微粒子がここに
分散配置した状態あるいは微粒子が互いに隣接、あるい
は重なり合った状態(いくつかの微粒子が集合し、全体
として島状構造を形成している場合も含む)をとってい
る。微粒子の粒径は、数Åから数千Åの範囲、好ましく
は10Åから200Åの範囲である。
【0069】なお、本明細書では頻繁に「微粒子」とい
う言葉を用いるので、その意味について説明する。
【0070】小さな粒子を「微粒子」と呼び、これより
も小さなものを「超微粒子」と呼ぶ。「超微粒子」より
もさらに小さく原子の数が数百個程度以下のものを「ク
ラスター」と呼ぶことは広く行われている。
【0071】しかしながら、それぞれの境は厳密なもの
ではなく、どの様な性質に注目して分類するかにより変
化する。また「微粒子」と「超微粒子」を一括して「微
粒子」と呼ぶ場合もあり、本明細書中での記述はこれに
沿ったものである。
【0072】「実験物理学講座14 表面・微粒子」
(木下是雄 編、共立出版 1986年9月1日発行)
において、第195頁22〜26行には次のように記載
されている。
【0073】「本稿で微粒子と言うときにはその直径が
だいたい2〜3μm程度から10nm程度までとし、特
に超微粒子と言うときは粒径が10nm程度から2〜3
nm程度までを意味することにする。両者を一括して単
に微粒子と書くこともあってけっして厳密なものではな
く、だいたいの目安である。粒子を構成する原子の数が
2個から数十〜数百個程度の場合はクラスターと呼ぶ」
付言すると、新技術開発事業団の”林・超微粒子プロ
ジェクト”での「超微粒子」の定義は、粒径の下限はさ
らに小さく、次のようなものであった。
【0074】「創造科学技術推進制度の”超微粒子プロ
ジェクト”(1981〜1986)では、粒子の大きさ
(径)がおよそ1〜100nmの範囲のものを”超微粒
子”(ultra fine particle)と呼
ぶことにした。すると1個の超微粒子はおよそ100〜
108 個くらいの原子の集合体という事になる。原子の
尺度でみれば超微粒子は大〜巨大粒子である。」(「超
微粒子−創造科学技術−」林主税、上田良二、田崎明
編;三田出版 1988年 第2頁1〜4行)「超微粒
子よりさらに小さいもの、すなわち原子が数個〜数百個
で構成される1個の粒子は、ふつうクラスターと呼ばれ
る」(同書第2頁12〜13行目)。
【0075】上記のような一般的な呼び方をふまえて、
本明細書において「微粒子」とは多数の原子・分子の集
合体で、粒径の下限は数Å〜10Å程度、上限は数μm
程度のものを指すこととする。
【0076】電子放出部5は、電子放出部を含む薄膜4
の一部に形成された高抵抗の亀裂により構成され、導電
性薄膜4の膜厚、膜質、材料及び後述する通電フォーミ
ング等の手法等に依存したものとなる。電子放出部5の
内部には、数Åから数百Åの範囲の粒径の導電性微粒子
が依存する場合もある。この導電性微粒子は、電子放出
部を含む薄膜4を構成する材料の元素の一部、あるいは
全ての元素を含有するものとなる。電子放出部5及びそ
の近傍の電子放出部を含む薄膜4には、炭素及び炭素化
合物を有することもできる。
【0077】次に、垂直型表面伝導型電子放出素子につ
いて説明する。
【0078】図6は、本発明の表面伝導型電子放出素子
を適用できる垂直型表面伝導型電子放出素子の一例を示
す模式図である。
【0079】図6においては、図1に示した部位と同じ
部位には図1に付した符号と同一の符号を付している。
61は、段差形成部である。基板1、素子電極2及び
3、電子放出部を含む薄膜4、電子放出部5は、前述し
た平面型表面伝導型電子放出素子の場合と同様の材料で
構成することができる。段差形成部61は、真空蒸着
法、印刷法、スパッタ法等で形成されたSiO2 等の絶
縁性材料で構成することができる。段差形成部61の膜
厚は、先に述べた平面型表面伝導型電子放出素子の素子
電極間隔L1に対応し、数千Åから数十μmの範囲とす
ることができる。この膜厚は、段差形成部の製法、およ
び、素子電極間に印加する電圧を考慮して設定される
が、数百Åから数μmの範囲が好ましい。
【0080】電子放出部を含む薄膜4は、素子電極2及
び3と段差形成部61作成後に、該素子電極2、3の上
に積層される。電子放出部5は、図2においては、段差
形成部61に形成されているが、作成条件、フォーミン
グ条件等に依存し、形状、位置ともこれに限られるもの
でない。
【0081】上述の表面伝導型電子放出素子の製造方法
としては様々な方法があるが、その一例を図2に模式的
に示す。
【0082】以下、図1及び図2を参照しながら製造方
法の一例について説明する。図2においても、図1に示
した部位と同じ部位には図1に付した符号と同一の符号
を付している。
【0083】1)基板1を洗剤、純水および有機溶剤等
を用いて十分に洗浄し、真空蒸着法、スパッタ法等によ
り素子電極材料を堆積後、例えばフォトリソグラフィー
技術を用いて基板1上に素子電極2、3を形成する(図
2(a))。
【0084】2)素子電極2、3を設けた基板1に、有
機金属溶液を塗布して、有機金属薄膜を形成する。有機
金属溶液には、前述の電子放出部を含む薄膜4の材料の
金属を主元素とする有機金属化合物の溶液を用いること
ができる。有機金属薄膜を加熱焼成処理し、リフトオ
フ、エッチング等によりパターニングし、電子放出部形
成用薄膜6を形成する(図2(b))。ここでは、有機
金属溶液の塗布法を挙げて説明したが、導電性薄膜4の
形成法はこれに限られるものではなく、真空蒸着法、ス
パッタ法、化学的気相堆積法、ディッピング法、スピン
ナー法等を用いることもできる。
【0085】3)つづいて、フォーミング工程を施す。
このフォーミング工程の方法の一例として通電処理によ
る方法を説明する。素子電極2、3間に不図示の電源を
用いて、通電を行うと、電子放出部を含む薄膜4の部位
に、構造の変化した電子放出部5が形成される(図2
(c))。通電フォーミングによれば電子放出部形成用
薄膜6を局所的に破壊、変形もしくは変質等の構造の変
化した部位が形成される。該部位が電子放出部5を構成
する。通電フォーミングの電圧波形の例を図4に示す。
【0086】電圧波形は、パルス波形が好ましい。これ
にはパルス波高値を定電圧としたパルスを連続的に印加
する図4に示した手法とパルス波高値を増加させながら
電圧パルスを印加する図4(b)に示した手法がある。
【0087】図4(a)におけるT1及びT2は電圧波
形のパルス幅とパルス間隔である。通常T1は1μ秒〜
10m秒、T2は、10μ秒〜100m秒の範囲で設定
される。三角波の波高値(通電フォーミング時のピーク
電圧)は、表面伝導型電子放出素形態に応じて適宜選択
される。このような条件のもと、例えば、数秒から数十
分間電圧を印加する。パルス波形は三角波に限定される
ものではなく、矩形波など所望の波形を採用することが
できる。
【0088】図4(b)におけるT1及びT2は、図4
(a)に示したのと同様とすることができる。三角波の
波高値(通電フォーミング時のピーク電圧)は、例えば
0.1Vステップ程度ずつ、増加させることができる。
【0089】通電フォーミング処理の終了は、パルス間
隔T2中に、電子放出部形成用薄膜6を局所的に破壊、
変形しない程度の電圧を印加し、電流を測定して検知す
ることができる。例えば0.1V程度の電圧印加により
流れる素子電流を測定し、抵抗値を求めて、1Mオーム
以上の抵抗を示した時、通電フォーミングを終了させ
る。
【0090】4)フォーミングを終えた素子には活性化
工程と呼ばれる処理を施すのが好ましい。活性化工程と
は、この工程により、素子電流If、放出電流Ieが、
著しく変化する工程である。
【0091】活性化工程は、例えば、有機物質のガスを
含有する雰囲気下で、通電フォーミングと同様に、パル
スの印加を繰り返すことで行うことができる。この雰囲
気は例えば油拡散ポンプやロータリーポンプなどを用い
て真空容器内を排気した場合に雰囲気内に残留する有機
ガスを利用して形成することができる他、イオンポンプ
などにより一旦十分に排気した真空中に適当な有機物質
のガスを導入することによっても得られる。このときの
好ましい有機物質のガス圧は、前述の応用の形態、真空
容器の形状や、有機物質の種類などにより異なるため場
合に応じ適宜設定される。適当な有機物質としては、ア
ルカン、アルケン、アルキンの脂肪族炭化水素類、芳香
族炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン
類、アミン類、フェノール、カルボン、スルホン酸等の
有機酸類等を挙げることができ、具体的には、メタン、
エタン、プロパンなどCn2n+2で表される飽和炭化水
素、エチレン、プロピレンなどCn2n等の組成式で表
される不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、メタノー
ル、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒ
ド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミン、エ
チルアミン、フェノール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等
が使用できる。この処理により、雰囲気中に存在する有
機物質から、炭素あるいは炭素化合物が素子上に堆積
し、素子電流If、放出電流Ieが、著しく変化するよ
うになる。
【0092】活性化工程の終了判定は素子電流Ifと放
出電流Ieを測定しながら、適宜行う。なお、パルス
幅、パルス間隔、パルス波高値などは適宜設定される。
【0093】炭素及び炭素化合物とは、グラファイト
(いわゆるHOPG,PG,GCを包含する、HOPG
はほぼ完全なグラファイトの結晶構造、PGは結晶粒が
200Å程度で結晶構造がやや乱れたもの、GCは結晶
粒が20Å程度になり結晶構造の乱れがさらに大きくな
ったものを指す。)非晶質カーボン(アモルファスカー
ボン及び、アモルファスカーボンと前記グラファイトの
微結晶の混合物を指す)であり、その膜厚は、500Å
以下の範囲とするのが好ましい。
【0094】5)このような工程を経て得られた電子放
出素子は、安定化工程を行うことが好ましい。この工程
は、真空容器内の有機物質排気する工程である。真空容
器を排気する真空排気装置は、装置から発生するオイル
が素子の特性に影響を与えないように、オイルを使用し
ないものを用いるのが好ましい。具体的には、ソープシ
ョンポンプ、イオンポンプ等の真空排気装置を挙げるこ
とが出来る。
【0095】前記活性化の工程で、排気装置として油拡
散ポンプを用い、これから発生するオイル成分に由来す
る有機ガスを用いた場合は、この成分の分圧を極力低く
抑える必要がある。真空容器内の有機成分の分圧は、上
記の炭素及び炭素化合物がほぼ新たに堆積しない分圧で
1×10-8Torr以下が好ましく、さらには1×10
-10 Torr以下が特に好ましい。さらに真空容器内を
排気するときには、真空容器全体を加熱して、真空容器
内壁や、電子放出素子に吸着した有機物質分子を排気し
やすくするのが好ましい。このときの加熱条件は80〜
200℃で5時間以上が望ましいが、特にこの条件に限
るものではなく、真空容器の大きさや形状、電子放出素
子の構成などの諸条件により適宜選ばれる条件により行
う。真空容器内の圧力は極力低くすることが必要で、1
〜3×10-7Torr以下が好ましく、さらに1×10
-8Torr以下が特に好ましい。
【0096】安定化工程を行った後の駆動時の雰囲気
は、上記安定化処理終了時の雰囲気を維持するのが好ま
しいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去
されていれば、真空度自体は多少低下しても十分安定な
特性を維持することが出来る。このような真空雰囲気を
採用することにより、新たな炭素あるいは炭素化合物の
堆積を抑制でき、結果として素子電流If、放出電流I
eが、安定する。
【0097】上述した工程を経て得られた本発明を適用
可能な電子放出素子の基本特性について図3、図5を参
照しながら説明する。
【0098】図3は、真空処理装置の一例を示す模式図
であり、この真空処理装置は測定評価装置としての機能
をも兼ね備えている。図3においても、図1に示した部
位と同じ部位には図1に付した符号と同一の符号を付し
ている。図3において、35は真空容器である。真空容
器35内には電子放出素子が配されている。即ち、1は
電子放出素子を構成する基体であり、2及び3は素子電
極、4は電子放出部を含む薄膜、5は電子放出部であ
る。30は素子電極2・3間の電子放出部を含む薄膜4
を流れる素子電流Ifを測定するための電流計、31は
電子放出素子に素子電圧Vfを印加するための電源、3
2は素子の電子放出部5より放出される放出電流Ieを
測定するための電流計である。33はアノード電極34
に電圧を印加するための高圧電源、34は素子の電子放
出部より放出される放出電流Ieを捕捉するためのアノ
ード電極である。一例として、アノード電極の電圧を1
kV〜10kVの範囲とし、アノード電極と電子放出素
子との距離Hを2mm〜8mmの範囲として測定を行う
ことができる。
【0099】真空容器35内には、不図示の真空計等の
真空雰囲気下での測定に必要な機器が設けられていて、
所望の真空雰囲気中での測定評価を行えるようになって
いる。排気ポンプは、ターボポンプ、ロータリーポンプ
からなる通常の高真空装置系と更に、イオンポンプ等か
らなる超高真空装置系とにより構成されている。ここに
示した電子源基板を配した真空処理装置の全体は、不図
示のヒーターにより200度まで加熱できる。従って、
この真空処理装置を用いると、前述の通電フォーミング
以降の工程も行うことができる。
【0100】図5は図3に示した真空処理装置を用いて
測定された放出電流Ie、素子電流Ifと素子電圧Vf
の関係を模式的に示した図である。図5においては、放
出電流Ieが素子電流Ifに比べて著しく小さいので、
任意単位で示している。尚、縦、横軸ともリニアスケー
ルである。
【0101】図5からも明らかなように、本発明を適用
可能な表面伝導型電子放出素子は、放出電流Ieに関し
て対する三つの特徴的特性を有する。
【0102】即ち、(i)本素子はある電圧(しきい値
電圧と呼ぶ、図5中のVth)以上の素子電圧を印加す
ると急激に放出電流Ieが増加し、一方しきい値電圧V
th以下では放出電流Ieがほとんど検出されない。つ
まり、放出電流Ieに対する明確なしきい値電圧Vth
を持った非線形素子である。
【0103】(ii)放出電流Ieが素子電圧Vfに単
調増加依存するため、放出電流Ieは素子電圧Vfで制
御できる。
【0104】(iii)アノード電極34に捕捉される
放出電荷は、素子電圧Vfを印加する時間に依存する。
すなわち、アノード電極34に捕捉される電荷量は、素
子電圧Vfを印加する時間により制御できる。
【0105】以上の説明により理解されるように、本発
明を適用可能な表面伝導型電子放出素子は、入力信号に
応じて、電子放出特性を容易に制御できることになる。
この性質を利用すると複数の電子放出素子を配して構成
した電子源、画像形成装置等、多方面への応用が可能と
なる。
【0106】図5においては、素子電流Ifが素子電圧
Vfに対して単調増加する(以下、「MI特性」とい
う。)例を実線に示した。素子電流Ifが素子電圧Vf
に対して電圧制御型負性抵抗特性(以下、「VCNR特
性」という。)を示す場合もある(不図示)。また、こ
れら特性は、前述の工程を制御することで制御できる。
本発明を適用可能な電子放出素子の応用例について以下
に述べる。本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子
の複数個を基板上に配列し、例えば電子源あるいは、画
像形成装置が構成できる。
【0107】電子放出素子の配列については、種々のも
のが採用できる。
【0108】一例として、並列に配置した多数の電子放
出素子の個々を両端で接続し、電子放出素子の行を多数
個配し(行方向と呼ぶ)、この配線と直行する方向(列
方向と呼ぶ)で、該電子放出素子の上方に配した制御電
極(グリッドとも呼ぶ)により、電子放出素子からの電
子を制御駆動するはしご状配置のものがある。これとは
別に、電子放出素子をX方向およびY方向に行列状に複
数配し、同じ行に配された複数の電子放出素子の電極の
一方を、X方向の配線に共通に接続し、同じ列に配され
た複数の電子放出素子の電極の他方を、Y方向の配線に
共通に接続するものが挙げられる。このようなものは所
謂単純マトリクス配置である。まず単純マトリクス配置
について以下に詳述する。
【0109】本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素
子については、前述したとおり(i)ないし(iii)
の特性がある。即ち、表面伝導型電子放出素子からの放
出電子は、しきい値電圧以上では、対向する素子電極間
に印加するパルス状電圧の波高値と巾で制御できる。一
方、しきい値電圧以下では、殆ど放出されない。この特
性によれば、多数の電子放出素子を配置した場合におい
ても、個々の素子に、パルス状電圧を適宜印加すれば、
入力信号に応じて、表面伝導型電子放出素子を選択して
電子放出量を制御できる。
【0110】以下この原理に基づき、本発明を適用可能
な電子放出素子を複数配して得られる電子源基板につい
て、図7を用いて説明する。図7において、71は電子
源基板、72はX方向配線、73はY方向配線である。
74は表面伝導型電子放出素子、75は結線である。
尚、表面伝導型電子放出素子74は、前述した平面型あ
るいは垂直型のどちらであってもよい。
【0111】m本のX方向配線72はDX1,DX2,
・・・DXmからなり、真空蒸着法、印刷法、スパッタ
法等を用いて形成された導電性金属等で構成することが
できる。配線の材料、膜厚、巾は、適宜設定される。Y
方向配線73はDY1,DY2,・・・DYnのn本の
配線よりなり、X方向配線72と同様に形成される。こ
れらm本のX方向配線72とn本のY方向配線73との
間には、不図示の層間絶縁層が設けられており、両者を
電気的に分離している(m,nは、共に正の整数)。
【0112】不図示の層間絶縁層は、真空蒸着法、印刷
法、スパッタ法等を用いて形成されたSiO2 等で構成
される。例えば、X方向配線72を形成した基板71の
全面或は一部に所望の形状で形成され、特に、X方向配
線72とY方向配線73の交差部の電位差に耐え得るよ
うに、膜厚、材料、製法が適宜設定される。X方向配線
72とY方向配線73は、それぞれ外部端子として引き
出されている。
【0113】表面伝導型放出素子74を構成する一対の
電極(不図示)は、m本のX方向配線72とn本のY方
向配線73と、導電性金属等からなる結線75によって
電気的に接続されている。
【0114】配線72と配線73を構成する材料、結線
75を構成する材料、結線75を構成する材料、及び一
対の素子電極を構成する材料はその構成元素の一部ある
いは全部が同一であっても、またそれぞれ異なってもよ
い。これら材料は、例えば前述の素子電極の材料より適
宜選択される。素子電極を構成する材料と配線材料が同
一である場合には、素子電極に接続した配線は素子電極
ということもできる。X方向配線72には、X方向に配
列した表面伝導型放出素子74の行を選択するための走
査信号を印加する不図示の走査信号印加手段が接続され
る。一方、Y方向配線73には、Y方向に配列した表面
伝導型放出素子74の各列を入力信号に応じて、変調す
るための不図示の変調信号発生手段が接続される。各電
子放出素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印加さ
れる走査信号と変調信号の差電圧として供給される。
【0115】上記構成においては、単純なマトリクス配
線を用いて、個別の素子を選択し、独立に駆動可能とす
ることができる。
【0116】このような単純マトリクス配置の電子源を
用いて構成した画像形成装置について、図8と図9及び
図10を用いて説明する。図8は、画像形成装置の表示
パネルの一例を示す模式図であり、図9は、図8の画像
形成装置に使用される蛍光膜の模式図である。図10は
NTSC方式のテレビ信号に応じて表示を行うための駆
動回路の一例を示すブロック図である。
【0117】図8において、71は電子放出素子を複数
配した電子源基板、81は電子源基板71を固定したリ
アプレート、86はガラス基板83の内面に蛍光膜84
とメタルバック85等が形成されたフェースプレートで
ある。82は支持枠であり該支持枠82には、リアプレ
ート81、フェースプレート86がフリットガラス等を
用いて接続されている。88は外囲器であり、例えば大
気中あるいは、窒素中で、400〜500度の温度範囲
で10分以上焼成することで、封着して構成される。
【0118】74、は図1における電子放出部1に相当
する。72、73は表面伝導型電子放出素子の一対の素
子電極と接続されたX方向配線及びY方向配線である。
【0119】外囲器88は上述の如く、フェースプレー
ト86、支持枠82、リアプレート81で構成される。
リアプレート81は主に基板71の強度を補強する目的
で設けられるため、基板71自体で十分な強度を持つ場
合は別体のリアプレート81は不要とすることができ
る。即ち、基板71に直接支持枠82を封着し、フェー
スプレート86、支持枠82及び基板71で外囲器88
を構成しても良い。一方、フェースプレート86、リア
プレート81間に、スペーサーとよばれる不図示の支持
体を設置することにより、大気圧に対して十分な強度を
もつ外囲器88の構成することもできる。
【0120】図9は、蛍光膜を示す模式図である。蛍光
膜84は、モノクロームの場合は蛍光体のみから構成す
ることができる。カラーの蛍光膜の場合は、蛍光体の配
列によりブラックストライプあるいはブラックマトリク
スなどと呼ばれる黒色導電材91と蛍光体92とから構
成することができる。ブラックストライプ、ブラックマ
トリクスを設ける目的は、カラー表示の場合、必要とな
る三原色蛍光体の各蛍光体92間の塗り分け部を黒くす
ることで混色等を目立たなくすることと、蛍光膜84に
おける外光反射によるコントラストの低下を抑制するこ
とにある。ブラックストライプの材料としては、通常用
いられている黒鉛を主成分とする材料の他、導電性があ
り、光の透過及び反射が少ない材料を用いることができ
る。
【0121】ガラス基板93に蛍光体を塗布する方法は
モノクローム、カラーによらず、沈殿法、印刷法等が採
用できる。蛍光膜84の内面側には、通常メタルバック
85が設けられる。メタルバックを設ける目的は、蛍光
体の発光のうち内面側への光をフェースプレート86側
へ鏡面反射することにより輝度を向上させること、電子
ビーム加速電圧を印加するための電極として作用させる
こと、外囲器内で発生した負イオンの衝突によるダメー
ジから蛍光体を保護すること等である。メタルバック
は、蛍光膜作製後、蛍光膜の内面側表面の平滑化処理
(通常、「フィルミング」と呼ばれる)を行い、その後
A1を真空蒸着等で堆積することで作製できる。
【0122】フェースプレート86には、更に蛍光膜8
4の導電性を高めるため、蛍光膜84の外面側に透明電
極(不図示)を設けてもよい。
【0123】前述の封着を行う際には、カラーの場合は
各色蛍光体と電子放出素子とを対応させる必要があり、
十分な位置合わせが不可欠となる。
【0124】図8に示した画像形成装置は、例えば以下
のようにして製造される。
【0125】外囲器88は、前述の安定化工程と同様
に、適宜加熱しながら、イオンポンプ、ソープションポ
ンプなどのオイルを使用しない排気装置により不図示の
排気管を通じて排気し、10-7Torr程度の真空度の
有機物質の十分少ない雰囲気にした後、封止が成され
る。外囲器88の封止後の真空度を維持するために、ゲ
ッター処理をおこなうこともできる。これは、外囲器8
8の封止を行う直前あるいは封止後に、抵抗加熱あるい
は高周波加熱等を用いた加熱により、外囲器88内の所
定の位置(不図示)に配置されたゲッターを加熱し、蒸
着膜を形成する処理である。ゲッターは通常Ba等が主
成分であり、該蒸着膜の吸着作用により、たとえば1×
10-5ないしは1×10-7Torrの真空度を維持する
ものである。ここで、表面伝導型電子放出素子のフォー
ミング処理以降の工程は、適宜設定できる。
【0126】次に、単純マトリクス配置の電子源を用い
て構成した表示パネルに、NTSC方式のテレビ信号に
基づいたテレビジョン表示を行う為の駆動回路の構成例
について、図10を用いて説明する。図10において、
101は画像表示パネル、102は走査回路、103は
制御回路、104はシフトレジスタである。105はラ
インメモリ、106は同期信号分離回路、107は変調
信号発生器、VxおよびVaは直流電圧源である。
【0127】表示パネル101は、端子Dox1ないし
Doxm、端子Doy1ないしDoyn、及び高圧端子
Hvを介して外部の電気回路と接続している。端子Do
x1ないしDoxmには、表示パネル内に設けられてい
る電子源、即ち、M行N列の行列状にマトリクス配線さ
れた表面伝導型電子放出素子群を一行(N素子)ずつ順
次駆動する為の走査信号が印加される。
【0128】端子Dy1ないしDynには、前記走査信
号により選択された一行の表面伝導型電子放出素子の各
素子の出力電子ビームを制御する為の変調信号が印加さ
れる。高圧端子Hvには、直流電圧源Vaより、例えば
10K[V]の直流電圧が供給されるが、これは表面伝
導型電子放出素子から放出される電子ビームに蛍光体を
励起するのに十分なエネルギーを付与する為の加速電圧
である。
【0129】走査回路102について説明する。同回路
は、内部にM個のスイッチング素子を備えたもので(図
中、S1ないしSmで模式的に示している)ある。各ス
イッチング素子は、直流電圧源Vxの出力電圧もしくは
0[V](グランドレベル)のいずれか一方を選択し、
表示パネル101の端子Dx1ないしDxmと電気的に
接続される。S1ないしSmの各スイッチング素子は、
制御回路103が出力する制御信号Tscanに基づい
て動作するものであり、例えばFETのようなスイッチ
ング素子を組み合わせる事により構成する事ができる。
【0130】直流電圧源Vxは、本例の場合には表面伝
導型電子放出素子の特性(電子放出しきい値電圧)に基
づき、走査されていない素子に印加される駆動電圧が電
子放出しきい値電圧以下となるような一定電圧を出力す
るよう設定されている。
【0131】制御回路103は、外部より入力する画像
信号に基づいて適切な表示が行われるように各部の動作
を整合させる機能を有する。制御回路103は、同期信
号分離回路106より送られる同期信号Tsyncに基
づいて、各部に対してTscanおよびTsftおよび
Tmryの各制御信号を発生する。
【0132】同期信号分離回路106は、外部から入力
されるNTSC方式のテレビ信号から、同期信号成分と
輝度信号成分とを分離する為の回路で、一般的な周波数
分離(フィルター)回路等を用いて構成できる。同期信
号分離回路106により分離された同期信号は、垂直同
期信号と水平同期信号より成るが、ここでは説明の便宜
上、Tsync信号として図示した。前記テレビ信号か
ら分離された画像の輝度信号成分を便宜上DATA信号
と表した。該DATA信号はシフトレジスタ104に入
力される。
【0133】シフトレジスタ104は、時系列的にシリ
アルに入力される前記DATA信号を、画像の1ライン
毎にシリアル/パラレル変換するためのもので、前記制
御回路103より送られる制御信号Tsftに基づいて
動作する(すなわち、制御信号Tsftは、シフトレジ
スタ104のシフトクロックであると言うこともでき
る)。シリアル/パラレル変換された画像1ライン分
(電子放出素子N素子分の駆動データに相当)のデータ
は、Id1ないしIdnのN個の並列信号として前記シ
フトレジスタ104より出力される。
【0134】ラインメモリ105は、画像1ライン分の
データを必要時間の間だけ記憶する為の記憶装置であ
り、制御回路103より送られる制御信号Tmryに従
って適宜Id1ないしIdnの内容を記憶する。記憶さ
れた内容は、I’d1ないしI’dnとして出力され、
変調信号発生器107に入力される。
【0135】変調信号発生器107は、前記画像データ
I’d1ないしI’dnの各々に応じて、表面電動型電
子放出素子の各々を適切に駆動変調する為の信号源であ
り、その出力信号は、端子Doy1ないしDoynを通
じて表示パネル101内の表面伝導型電子放出素子に印
加される。
【0136】前述したように、本発明を適用可能な電子
放出素子は放出電流Ieに対して以下の基本特性を有し
ている。即ち、電子放出には明確なしきい値電圧Vth
があり、Vth以上の電圧を印加された時のみ電子放出
が生じる。電子放出しきい値以上の電圧に対しては、素
子への印加電圧の変化に応じて放出電流も変化する。こ
のことから、本素子にパルス状の電圧を印加する場合、
例えば電子放出しきい値以下の電圧を印加しても電子放
出は生じないが、電子放出しきい値の電圧を印加する場
合には電子ビームが出力される。その際、パルスの波高
値Vmを変化させることにより出力電子ビームの強度を
制御する事が可能である。また、パルスの幅Pwを変化
させる事により出力される電子ビームの電荷の総量を制
御する事が可能である。
【0137】従って、入力信号に応じて、電子放出素子
を変調する方式としては、電圧変調方式、パルス幅変調
方式等が採用できる。電圧変調方式を実施するに際して
は、変調信号発生器107として、一定長さの電圧パル
スを発生し、入力されるデータに応じて適宜パルスの波
高値を変調するような電圧変調方式の回路を用いること
ができる。
【0138】パルス幅変調方式を実施するに際しては、
変調信号発生器107として、一定の波高値の電圧パル
スを発生し、入力されるデータに応じて適宜電圧パルス
の幅を変調するようなパルス幅変調方式の回路を用いる
ことができる。
【0139】シフトレジスタ104やラインメモリ10
5は、デジタル信号式のものでもアナログ信号式のもの
でも採用できる。画像信号のシリアル/パラレル変換や
記憶が所定の速度で行われれば良いからである。
【0140】デジタル信号式を用いる場合には、同期信
号分離回路106の出力信号DATAをデジタル信号化
する必要があるが、これは106の出力部にA/D変換
器を設ければ良い。これに関連してラインメモリ105
の出力信号がデジタル信号かアナログ信号かにより、変
調信号発生器107に用いられる回路が若干異なったも
のとなる。即ち、デジタル信号を用いた電圧変調方式の
場合、変調信号発生器107には、例えばD/A変換回
路を用い、必要に応じて増幅回路などを付加する。パル
ス幅変調方式の場合、変調信号発生器107には、例え
ば、高速の発振器および発振器の出力する波数を計数す
る計数器(カウンタ)及び計数器の出力値と前記メモリ
の出力値を比較する比較器(コンパレータ)を組み合せ
た回路を用いる。必要に応じて、比較器の出力するパル
ス幅変調された変調信号を表面電動型電子放出素子の駆
動電圧にまで電圧増幅するための増幅器を付加すること
もできる。
【0141】アナログ信号を用いた電圧変調方式の場
合、変調信号発生器107には、例えばオペアンプなど
を用いた増幅回路を採用でき、必要に応じてレベルシフ
ト回路などを付加することもできる。パルス幅変調方式
の場合には、例えば、電圧制御型発振回路(VCO)を
採用でき、必要に応じて表面伝導型電子放出素子の駆動
電圧まで電圧増幅するための増幅器を付加することもで
きる。
【0142】このような構成をとり得る本発明を適用可
能な画像表示装置においては、各電子放出素子に、容器
外端子Dox1ないしDoxm、Doy1ないしDoy
nを介して電圧を印加することにより、電子放出が生ず
る。高圧端子Hvを介して、メタルバック85、あるい
は透明電極(不図示)に高圧を印加し、電子ビームを加
速する。加速された電子は、蛍光膜84に衝突し、発光
が生じて画像が形成される。
【0143】ここで述べた画像形成装置の構成は、本発
明を適用可能な画像形成装置の一例であり、本発明の技
術思想に基づいて種々の変形が可能である。入力信号に
ついては、NTSC方式をあげたが、入力信号はこれに
限られるものではなく、PAL、SECAM方式などの
他、これよりも、多数の走査線からなるTV信号(例え
ば、MUSE方式をはじめとする高品位TV)方式をも
採用できる。
【0144】次に、はしご型配置の電子源及び画像形成
装置について図11、図12を用いて説明する。
【0145】図11は、はしご型配置の電子源の一例を
示す模式図である。図11において、110は電子源基
板、111は電子放出素子である。112、Dx1〜D
x10は、電子放出素子111を接続するための共通配
線である。電子放出素子111は、基板110上に、X
方向に並列に複数個配されている(これを素子行と呼
ぶ)。この素子行が複数個配されて、電子源を構成して
いる。各素子行の共通配線間に駆動電圧を印加すること
で、各素子行を独立に駆動させることができる。即ち、
電子ビームを放出させたい素子行には、電子放出しきい
値以上の電圧を、電子ビームを放出しない素子行には、
電子放出しきい値以下の電圧を印加する。各素子行間の
共通配線Dx2〜Dx9は、例えばDx2、Dx3を同
一配線とすることもできる。
【0146】図12は、はしご型配置の電子源を備えた
画像形成装置におけるパネル構造の一例を示す模式図で
ある。120はグリッド電極、121は電子が通過する
ための空孔、122はDox1,Dox2...Dox
mよりなる容器外端子である。123はグリッド電極1
20と接続されたG1、G2...Gnからなる容器外
端子、124は各素子行間の共通配線を同一配線とした
電子源基板である。図12においては、図8、11に示
した部位と同じ部位には、これらの図に付したのと同一
の符号を付している。ここに示した画像形成装置と図8
に示した単純マトリクス配置の画像形成装置との大きな
違いは、電子源基板110とフェースプレート86の間
にグリッド電極120を備えているか否かである。
【0147】図12においては、基板110とフェース
プレート86の間には、グリッド電極120が設けられ
ている。グリッド電極120は、表面伝導型放出素子か
ら放出された電子ビームを変調するためのものであり、
はしご型配置の素子行と直交して設けられたストライプ
状の電極に電子ビームを通過させるため、各素子に対応
して1個ずつ円形の開口121が設けられている。グリ
ッドの形状や設置位置は図12に示したものに限定され
るものではない。例えば、開口としてメッシュ状に多数
の通過口を設けることもでき、グリッドを表面伝導型放
出素子の周囲や近傍に設けることもできる。
【0148】容器外端子122およびグリッド容器外端
子123は、不図示の制御回路と電気的に接続されてい
る。
【0149】本例の画像形成装置では、素子行を1列ず
つ順次駆動(走査)していくのと同期してグリッド電極
列に画像1ライン分の変調信号を同時に印加する。これ
により、各電子ビームの蛍光体への照射を制御し、画像
を1ラインずつ表示することができる。
【0150】発明の画像形成装置は、テレビジョン放送
の表示装置、テレビ会議システムやコンピューター等の
表示装置の他、感光性ドラム等を用いて構成された光プ
リンターとしての画像形成装置等としても用いることも
できる。
【0151】
【実施例】実施例1 第1の電子放出部形成用材料としては、鹸化度80%の
ポリビニルアルコール1%水溶液とした。
【0152】本実施例で使用する酢酸パラジウム−モノ
エタノールアミン(以下PA−MEと略す)を以下のよ
うにして合成した。
【0153】10gの酢酸パラジウムを200cm3
IPAに懸濁させ、さらに16.6gのモノエタノール
アミンを加え室温で4時間撹拌させた。
【0154】反応終了後、IPAにより除き、固形物に
エタノールを加え溶解、濾過し、濾液からPA−MEを
再結晶した。
【0155】空気中でのDSC測定の結果、PA−ME
の分解温度は272℃であった。
【0156】本実施例の電子放出素子として図1
(a)、(b)に示すタイプの電子放出素子を作製し
た。図1(a)は本素子の平面図を、(b)は断面図を
示している。また、図1(a),(b)中の1は基板、
2、3は素子に電圧を印加するための素子電極、4は電
子放出部を含む薄膜、5は電子放出部を示す。なお、図
1(a)中のL1は素子電極2と素子電極3の素子電極
間隔、Wは素子電極の幅、dは素子電極の厚さ、W’は
素子の幅を表している。
【0157】図2を用いて本実施例の電子放出素子の作
成方法を述べる。ただし、図1と同じ符号を用いる場合
は、同じ意味を表すものとする。
【0158】基板1として石英基板を用い、これを有機
溶剤、純水により充分に洗浄しさらに200℃の熱風で
乾燥した。該基板1面上にAuからなる素子電極2、3
を形成した(図2(a))。この時、素子電極間隔L1
は3μmとし、素子電極の幅Wを500μm、その厚さ
dを1000Åとした。
【0159】陽イオン交換能を有する高分子を含む第1
の電子放出部形成用の材料をBJ方式のインクジェット
装置(Canon製BJ−10V)を用いて、素子電極
2、3間に付与し、乾燥し電極間に担体を形成した。
【0160】続いて0.84gのPA−MEを12gの
水に溶解し(2.0wt%)、有機金属化合物を含む第
2の電子放出部形成用材料とし、BJ方式のインクジェ
ット装置(Canon製BJ−10V)を用いて、素子
電極2、3間に付与し、担体に金属錯イオンを吸着させ
乾燥させた。
【0161】これを大気雰囲気のオーブン中で300℃
に加熱して前記PA−MEを基板上で分解堆積させ、酸
化パラジウム微粒子(平均粒径:65Å)からなる微粒
子膜を形成し、電子放出部形成用薄膜6とした(図2
(b))。酸化パラジウムであることはX線分析で確認
した。ここで電子放出部形成用薄膜6は、その幅(素子
の幅)W’を300μmとし、素子電極2、3間のほぼ
中央部に配置した。また、この電子放出部形成用薄膜6
の膜厚は100Å、シート抵抗値は5×104 Ω/□で
あった。
【0162】なお、ここで述べる微粒子膜とは、複数の
微粒子が集合した膜であり、その微細構造として、微粒
子が個々に分散配置した状態のみならず、微粒子が互い
に隣接、あるいは重なり合った状態(島状も含む)の膜
を指し、その粒径とは、前記状態で粒子形状が認識可能
な微粒子についての径をいう。
【0163】次に、図2(c)に示すように、電子放出
部5を、素子電極2、3間に電圧を印加して電子放出部
形成用薄膜6を通電処理(フォーミング処理)すること
により作製した。フォーミング処理の電圧波形を図4に
示す。
【0164】図4中、T1およびT2は電圧波形のパル
ス幅とパルス間隔であり、本実施例ではT1を1m秒、
T2を10m秒とし、三角波の波高値(フォーミング時
のピーク電圧)は5Vとし、通電フォーミング処理は約
1×10-6Torrの真空雰囲気下で60秒間行った。
【0165】このようにして作製された電子放出部5
は、パラジウム元素を主成分とする微粒子が分散配置さ
れた状態となり、その微粒子の平均粒径は28Åであっ
た。
【0166】以上のようにして作製された素子につい
て、その電子放出特性の測定を行った。図3に測定評価
装置の概略構成図を示す。
【0167】図3において、1は基板、2、3は素子電
極、4は電子放出部を含む薄膜、5は電子放出部を示
し、31は素子に電圧を印加するための電源、30は素
子電流Ifを測定するための電流計、34は素子より発
生する放出電流Ieを測定するためのアノード電極、3
3はアノード電極34に電荷を印加するため高圧電源、
32は放出電流を測定するための電流計である。電子放
出素子の上記素子電流If、放出電流Ieの測定にあた
っては、素子電極2、3間に電源31および電流計30
を接続し、該電子放出素子の上方に電源33および電流
計32を接続したアノード電極34を配置している。ま
た、本電子放出素子およびアノード電極34は真空装置
内に設置されており、その真空装置には付図示の排気ポ
ンプおよび真空計等の真空装置に必要な機器が具備され
ており、所望の真空下で本素子の測定評価を行えるよう
になっている。なお、本実施例では、アノード電極と電
子放出素子間の距離を4mm、アノード電極の電位を1
kV、電子放出特性測定時の真空装置内の真空度を1×
10-6Torrとした。
【0168】以上のような測定評価装置を用いて、上記
電子放出素子の電極2、3間に素子電圧を印加し、その
時に流れる素子電流Ifおよび放出電流Ieを測定した
ところ、図5に示したような電流−電圧特性が得られ
た。本素子では、素子電圧8V程度から急激に放出電流
Ieが増加し、素子電圧16Vでは素子電流Ifが2.
3mA、放出電流Ieが1.2μAとなり、電子放出効
率η=Ie/If(%)は0.05%であった。
【0169】以上説明した実施例中、電子放出部を形成
する際に、素子の電極間に三角波パルスを印加してフォ
ーミング処理を行っているが、素子の電極間に印加する
波形は三角波に限定することはなく、矩形波など所望の
波形を用いても良く、その波高値及びパルス幅・パルス
間隔等についても上述の値に限ることなく、電子放出部
が良好に形成されれば所望の値を選択することができ
る。
【0170】実施例2 実施例1において、第1の電子放出部形成用材料をBJ
方式のインクジェット装置にて吐出し、150℃にて3
0分脱水加熱して素子電極間に担体を形成後、実施例1
と同様の第2の電子放出部形成用材料に20℃で1時間
浸漬して金属イオンを担体に保持させた。実施例1と同
様の焼成、フォーミングなどの工程を経て、電子放出素
子を作成した。
【0171】実施例3 95%スチレン−5%ジビニルベンゼン共重合体のベン
ゼン環をスルホン化(ベンゼン環1個あたり平均1つの
スルホン酸基)した平均直径2μmのポリマーを用い
た。(重量およそ4ピコg/ポリマー粒子1個) これを塩酸洗浄と遠心分離によるポリマー回収を3回お
こなってH型とし、水に分散し第1の電子放出部形成用
材料とした。
【0172】第2の電子放出部形成用材料として1wt
%アセチルアセトンニッケル水溶液を用いた。
【0173】実施例1と同様の手段で第1と第2の電子
放出部形成用材料を順次吐出し、350℃で加熱焼成
し、電子放出部形成用薄膜6を作成した。通常アセチル
アセトンニッケルは昇華性があるのでその分解温度まで
加熱すると定量的にニッケルを得ることがむずかしかっ
たが、本発明においてはニッケルを担体に担持させたの
で昇華することがなく、再現性よく電子放出部形成用薄
膜6を作成することができた。
【0174】この薄膜は酸化しやすいのでフォーミング
が終了するまでヘリウム雰囲気中に保管した。
【0175】実施例4 上記第2の電子放出部形成用材料として1wt%塩化ニ
ッケル水溶液を用いた以外は実施例3と同様の方法に従
った。塩化ニッケルは熱分解温度が高いが、ポリマーに
担持させた状態ではスチレンなどの主骨格の熱分解に伴
ってスルホン酸ニッケル部も熱分解を起こすので350
℃の温度で加熱焼成することで目的とする電子放出部形
成用薄膜6を作成することができた。
【0176】実施例5 ポリアリールアミン水溶液を第1の電子放出部形成用材
料として用いると、遷移金属を吸着できる。本実施例で
は第2の電子放出部形成用材料として塩化白金(II)
酸ナトリウム水溶液を用いた。白金が錯体として吸着さ
れ、これを加熱焼成することで電子放出部形成用薄膜6
を作成した。
【0177】実施例6 電子源の一部の平面図を図13に、図13中のA−A’
断面図を図14に示す。ただし、以降図1〜図18にお
いて同じ記号を示したものは同じものを表す。ここで1
は基板、72は図7のDxmに対応するX方向配線(下
配線とも呼ぶ)、73は図7のDynに対応するY方向
配線(上配線とも呼ぶ)、4は電子放出部を含む薄膜、
2、3は素子電極、141は層間絶縁層、142は素子
電極2と下配線72との電気的接続のためのコンタクト
ホールである。 工程−a 清浄化した青板ガラス上に厚さ0.5μmのシリコン酸
化膜をスパッタ法で形成した基板1上に、真空蒸着によ
り厚さ50ÅのCr、厚さ6000ÅのAuを順次積層
した後、ホトレジスト(AZ1370ヘキスト社製)を
スピンナーにより回転塗布、ベークした後、ホトマスク
像を露光、現像して、下配線72のレジストパターンを
形成し、次いでAu/Cr堆積膜をウェットエッチング
して、所望の形状の下配線72を形成した。 工程−b 次に厚さ1.0μmのシリコン酸化膜からなる層間絶縁
層141をRFスパッタ法により堆積した。 工程−c 工程bで堆積したシリコン酸化膜にコンタクトホール1
42を形成するためのホトレジストパターンを作り、こ
れをマスクとして層間絶縁層141をエッチングしてコ
ンタクトホール142を形成した。エッチングはCF4
とH2 ガスを用いたRIE(Reactive Ion
Etching)法によった。 工程−d その後、素子電極2、3と素子電極間ギャップL1とな
るべきパターンをホトレジスト(RD−2000N−4
1日立化成社製)形成し、真空蒸着法により厚さ50Å
のTi、厚さ1000ÅのNiを順次堆積した。ホトレ
ジストパターンを有機溶剤で溶解し、Ni/Ti堆積膜
をリフトオフし、素子電極間隔L1は3μmとし、素子
電極の幅Wを300μmとする、素子電極2、3を形成
した。 工程−e 素子電極2、3の上に上配線73のホトレジストパター
ンを形成した後、厚さ50オングストロームのTi、厚
さ5000オングストロームのAuを順次真空蒸着によ
り堆積し、リフトオフにより不要の部分を除去して、所
望の形状の上配線73を形成した。 工程−f 図17に本工程に関わる電子放出素子の電子放出部形成
用薄膜6のマスクの平面図の一部を示す。素子電極間ギ
ャップGおよびこの近傍に開口を有するマスクであり、
このマスクにより膜厚1000ÅのCr膜161を真空
蒸着により堆積・パターニングし、そのうえに実施例4
で用いた有機金属錯体(PA−ME水溶液)をBJ方式
のインクジェット装置(Canon製 BJ−10)を
用いて素子電極2、3間に付与し、300℃で10分間
の加熱焼成処理をした。また、こうして形成された主元
素としてPdよりなる微粒子からなる電子放出部形成用
薄膜6の膜厚は100Å、シート抵抗値は5×104 Ω
/□であった。なおここで述べる微粒子膜とは、上述し
たように、複数の微粒子が集合した膜であり、その微細
構造として、微粒子が個々に分散配置した状態のみなら
ず、微粒子が互いに隣接、あるいは、重なり合った状態
(島状も含む)の膜をさし、その粒径とは、前記状態で
粒子形状が認識可能な微粒子についての径をいう。 工程−g Cr膜161および焼成後の電子放出部形成用薄膜6を
酸エッチャントによりエッチングして所望のパターンを
形成した。 工程−h コンタクトホール142部分以外にレジストを塗布する
ようなパターンを形成し、真空蒸着により厚さ50Åの
Ti、厚さ5000ÅのAuを順次堆積した。リフトオ
フにより不要の部分を除去することにより、コンタクト
ホール142を埋め込んだ。
【0178】以上の工程により基板1上に下配線72、
層間絶縁層141、上配線73、素子電極2、3、電子
放出部形成用薄膜6等を形成した。
【0179】次に、以上のようにして作製した電子源を
用いて表示装置を構成した例を図8と図9を用いて説明
する。
【0180】以上のようにして多数の平面型表面伝導電
子放出素子を作製した基板71をリアプレート81上に
固定した後、基板71の5mm上方に、フェースプレー
ト86(ガラス基板83の内面に蛍光膜84とメタルバ
ック85が形成されて構成される)を支持枠82を介し
て配置し、フェースプレート86、支持枠82、リアプ
レート81の接合部にフリットガラスを塗布し、大気中
あるいは窒素雰囲気中で400℃〜500℃で10分以
上焼成することで封着した(図8)。またリアプレート
81への基板71の固定もフリットガラスで行った。図
8において、74は電子放出素子、72、73はそれぞ
れX方向およびY方向の配線である。蛍光膜84は、モ
ノクロームの場合は蛍光体のみから成るが、本実施例で
は蛍光体は図9(a)に示すような、ストライプ形状を
採用し、先にブラックストライプを形成し、その間隙部
に各色蛍光体を塗布し、蛍光膜84を作製した。ブラッ
クストライプの材料として通常良く用いられている黒鉛
を主成分とする材料を用い、ガラス基板83に蛍光体を
塗布する方法としてはスラリー法を用いた。
【0181】また、蛍光膜84の内面側には通常メタル
バック85が設けられる。メタルバックは、蛍光膜作製
後、蛍光膜84の内面側表面の平滑化処理(通常フィル
ミングと呼ばれる)を行い、その後、Alを真空蒸着す
ることで作製した。
【0182】フェースプレート86には、更に蛍光膜8
4の導電性を高めるため、蛍光膜84の外面側に透明電
極(不図示)が設けられる場合もあるが、本実施例では
メタルバックのみで十分な導電性が得られたので省略し
た。
【0183】前述の封着を行う際、カラーの場合は各色
蛍光体と電子放出素子とを対応させなくてはいけないた
め、十分な位置合わせを行った。
【0184】以上のようにして完成したガラス容器(外
囲器)内の雰囲気を排気管(不図示)を通じて真空ポン
プにて排気し、十分な真空度に達した後、容器外端子D
ox1〜DoxmとDoy1〜Doynを通じて電子放
出素子の電極2、3間に電圧を印加し、導電性膜6に通
電処理(フォーミング処理)を施すことにより電子放出
部5を作製した。フォーミング処理の電圧波形を図4に
示す。
【0185】図4中、T1およびT2は電圧波形のパル
ス幅とパルス間隔であり、本実施例ではT1を1m秒、
T2を10m秒とし、三角波の波高値(フォーミング時
のピーク電圧)は5Vとし、フォーミング処理は約1×
10-6torrの真空雰囲気下で60秒間行った。
【0186】このように作製された電子放出部5はパラ
ジウム元素を主成分とする微粒子が分散配置された状態
となり、その微粒子の平均粒径は30Åであった。
【0187】次に、10-6torr程度の真空度で、不
図示の排気管をガスバーナーで熱することで溶着し、外
囲器の封止を行った。
【0188】最後に封止後の真空度を維持するためにゲ
ッター処理を行った。これは、封止を行う直前に、高周
波加熱等の加熱法により、画像形成装置内の所定の位置
(不図示)に配置されたゲッターを加熱し、蒸着膜を形
成処理した。ゲッターはBa等を主成分とした。
【0189】以上のように完成した本発明の画像表示装
置において、各電子放出素子に容器外端子Dox1〜D
oxm、Doy1〜Doynを通じて走査信号および変
調信号を不図示の信号発生手段よりそれぞれ印加するこ
とによって電子放出させ、高圧端子Hvを通じ、メタル
バック85に数kV以上の高圧を印加して電子ビームを
加速し、蛍光膜84に衝突させて蛍光膜84を励起・発
光させることによって画像を表示した。
【0190】また、上述の工程で作製した平面型電子放
出素子の特性を把握するために、同時に、図1に示した
平面型電子放出素子のL1、WおよびW’等を同様にし
た標準的な比較サンプルを作製し、その電子放出特性の
測定を前述の図3の測定評価装置を用いて行った。な
お、比較サンプルの測定条件は、アノード電極と電子放
出素子間の距離を4mm、アノード電極の電位を1k
V、電子放出特性測定時の真空装置内の真空度を1×1
-6torrとした。
【0191】電極2、3間に素子電圧を印加し、その時
に流れる素子電流Ifおよび放出電流Ieを測定したと
ころ、図5に示したような電流−電圧特性が得られた。
本実施例で得られた素子では、素子電圧8V程度から急
激に放出電流Ieが増加し、素子電圧16Vでは素子電
流Ifが2.2mA、放出電流Ieが1.1μAとな
り、電子放出効率η=Ie/If(%)は0.05%で
あった。
【0192】
【発明の効果】本発明の第1の電子放出部形成用材料液
滴には金属塩などのイオン性物質が含まれていないの
で、製造時の温度・湿度などの環境条件に影響されにく
く、基板や電極上で一定の形状を形成し得る。金属塩溶
液を主成分とする第2の電子放出部形成用材料液滴を吐
出もしくは第2の電子放出部形成用材料溶液に浸漬処理
する2段階の形成方法をとることにより、溶液の保存安
定性およびインクジェットによる吐出安定性を向上する
ことができた。
【0193】適当な雰囲気下でこれを加熱焼成して形成
した電子放出部形成用薄膜2の形状・特性などの再現性
を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の基本的な表面伝導型電子放出素子の
構成を示す模式的平面図および断面図である。
【図2】 本発明に好適な基本的な表面伝導型電子放出
素子の製造方法を示す模式的断面図である。
【図3】 電子放出特性を測定するための測定評価装置
の概略構成図である。
【図4】 本発明に好適な通電フォーミングの電圧波形
の例である。
【図5】 本発明に好適な表面伝導型電子放出素子の放
出電流Ieおよび素子電流Ifと素子電圧Vfの関係の
典型的な例である。
【図6】 本発明に好適な基本的な表面伝導型電子放出
素子の構成を示す模式的図である。
【図7】 単純マトリクス配置の電子源の模式図であ
る。
【図8】 画像形成装置の表示パネルの概略構成図であ
る。
【図9】 蛍光膜の一例である。
【図10】 画像形成装置をNTSC方式のテレビ信号
に応じて表示を行なう例の駆動回路のブロック図であ
る。
【図11】 梯子配置の電子源の一例である。
【図12】 画像形成装置の表示パネルの概略構成図で
ある。
【図13】 画像形成装置の電子源の一部を示す平面図
である。
【図14】 図13のAA′線断面図である。
【図15】 画像形成装置の電子源の、製造工程の前半
部を示す工程図である。
【図16】 画像形成装置の電子源の、製造工程の後半
部を示す工程図である。
【図17】 電子放出素子の電子放出部形成用薄膜6の
マスクの一部を示す平面図である。
【図18】 従来の表面伝導型電子放出素子の素子構成
を示す説明図である。
【符号の説明】
1:基板、6:電子放出部形成用薄膜、5:電子放出
部、4:導電性薄膜、2,3:素子電極、30:素子電
極2,3間の導電性薄膜4を流れる素子電流Ifを測定
するための電流計、31:電子放出素子に素子電圧Vf
を印加するための電源、33:アノード電極34に電圧
を印加するための高圧電源、34:素子の電子放出部よ
り放出される放出電流Ieを捕捉するためのアノード電
極、32:素子の電子放出部より放出される放出電流I
eを測定するための電流計、35:真空装置、61:段
差形成部、71:電子源基板基板、72:X方向配線、
73:Y方向配線、74:表面伝導型電子放出素子、7
5:結線、81:リアプレート、82:支持枠、83:
ガラス基板、84:蛍光膜、85:メタルバック、8
6:フェースプレート、87:高圧端子、88:外囲
器、91:黒色導電材、92:蛍光体、101:表示パ
ネル、102:走査回路、103:制御回路、104:
シフトレジスタ、105:ラインメモリ、106:同期
信号分離回路、107:変調信号発生器、VxおよびV
a:直流電圧源、110:電子源基板、111:電子放
出素子、112:Dx1〜Dx10:前記電子放出素子
を配線するための共通配線、120:グリット電極、1
21:電子が通過するため空孔、122:Dox1〜D
ox2,・・・・・・Doxmよりなる容器外端子、123:
グリッド電極120と接続されたG1、G2、・・・・・・G
nからなる容器外端子、124:電子源基板、141:
層間絶縁層、142:コンタクトホール、161:Cr
膜。

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 対向する電極間に電子放出部形成用の材
    料液滴を付与し、加熱焼成する工程を経て電子放出部を
    形成する電子放出素子の製造方法において、前記電子放
    出部形成工程を、陽イオン交換能を有する高分子を含む
    担体形成用の材料液滴を前記電極間に付与して担体を形
    成後、該担体上に有機金属化合物溶液を含む電子放出部
    形成用の材料液滴を付与して該担体に吸着させ、イオン
    交換することを特徴とする電子放出素子の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記有機金属化合物が下記式 【化1】 (但し、R1、R2は炭素数1〜4のアルキル基、lは
    2〜4の整数、mは1〜4の整数、nは0〜2の整数、
    Mは金属を示す)で表わされる有機金属化合物を用いる
    ことを特徴とする請求項1に記載の電子放出素子の製造
    方法。
  3. 【請求項3】 前記加熱焼成工程を酸素雰囲気または窒
    素雰囲気とすること特徴とする請求項1に記載の電子放
    出素子の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記第1の電子放出部形成用の材料液滴
    を対向する電極間に連続的に付与して、線状または面状
    の高分子膜を形成することを特徴とする請求項1に記載
    の電子放出素子の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記液滴を基板に付与する工程におい
    て、対向する一対の電極が複数個設けられた基板を用い
    て、それぞれの電極間に液滴を付与して基板上に複数個
    の電子放出素子を形成することを特徴とする請求項1に
    記載の電子放出素子の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記複数の電子放出素子を平行する2本
    の配線に対して梯子型に配列したことを特徴とする請求
    項5に記載の電子放出素子の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記複数の電子放出素子を複数のマトリ
    ックス配線の交点に配列したことを特徴とする請求項5
    に記載の電子放出素子の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記担体形成用の材料液滴の付与方法が
    インクジェット方式であることを特徴とする請求項1に
    記載の電子放出素子の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記電子放出部形成用の材料液滴の付与
    方法がインクジェット方式であることを特徴とする請求
    項1に記載の電子放出素子の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記陽イオン交換能を有する高分子が
    主としてプロトン型を用いることを特徴とする請求項1
    に記載の電子放出素子の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記電子放出素子が、表面伝導型電子
    放出素子であることを特徴とする請求項1に記載の電子
    放出素子の製造方法。
  12. 【請求項12】 電子放出素子と該素子への電圧印加手
    段を具備する電子源の製造方法であって、該電子放出素
    子を請求項1ないし11のいずれかに記載の方法で製造
    したことを特徴とする電子源の製造方法。
  13. 【請求項13】 電子放出素子と該素子への電圧印加手
    段を具備する電子源と、該素子から放出される電子を受
    けて発光する発光体とを具備する表示素子の製造方法で
    あって、該電子放出素子を請求項1ないし11いずれか
    に記載の方法で製造したことを特徴とする画像形成部材
    の製造方法。
  14. 【請求項14】 電子放出素子と該素子への電圧印加手
    段を具備する電子源と、該素子から放出される電子を受
    けて発光する発光体と、外部信号に基づいて該素子へ印
    加する電圧を制御する駆動回路とを具備する画像形成装
    置の製造方法であって、該電子放出素子を請求項1ない
    し11のいずれかに記載の方法で製造したことを特徴と
    する画像形成装置の製造方法。
  15. 【請求項15】 対向する電極間に電子放出部を有する
    電子放出素子で、金属化合物を加熱焼成する過程を経て
    電子放出部を形成する電子放出素子の電子放出部形成用
    材料が下記式 【化2】 (但し、R1、R2は炭素数1〜4のアルキル基、lは
    2〜4の整数、mは1〜4の整数、nは0〜2の整数、
    Mは金属を示す)で表わされる有機金属錯体であること
    を特徴とする電子放出部形成用材料。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100434528B1 (ko) * 1997-11-28 2004-09-08 삼성에스디아이 주식회사 전계방출표시소자의양극판제조방법
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