JPH10121081A - 舶用エンジン油組成物 - Google Patents

舶用エンジン油組成物

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JPH10121081A
JPH10121081A JP29467396A JP29467396A JPH10121081A JP H10121081 A JPH10121081 A JP H10121081A JP 29467396 A JP29467396 A JP 29467396A JP 29467396 A JP29467396 A JP 29467396A JP H10121081 A JPH10121081 A JP H10121081A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生成される硫酸に対して優れた中和性を有
し、腐食摩耗の防止性を改善する舶用エンジン油組成物
を提供する。 【解決手段】鉱油もしくは合成潤滑油あるいは両者の混
合物の基油に、(A)塩酸法で測定した塩基価および過
塩素酸法で測定した塩基価がともに300〜400mg
KOH/gであって、前者と後者との比が0.95以上
である過塩基性アルカリ土類金属フェネ−トを1〜30
質量%、(B)塩基価が200mgKOH/gを越え3
50mgKOH/g以下の過塩基性アルカリ土類金属サ
リシレ−トを0.5〜15質量%、および(C)塩基価
が100〜200mgKOH/gの過塩基性アルカリ土
類金属サリシレ−トを0.5〜15質量%含有させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は舶用エンジン油組成
物に関し、更に詳しくは、高硫黄分燃料を使用する舶用
ディ−ゼルエンジンの硫酸に対する腐食防止性が要求さ
れる分野において、その能力を最大限に発揮しうる舶用
エンジン油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】一般的に舶用ディ−ゼルエンジンに使用
される燃料は、硫黄分を多く含有する重質油が用いられ
ており、また経費削減のため安価ながら、粗悪で低質化
した燃料油を使用する場合もある。これらの高硫黄分を
含んだ燃料を用いたときの燃焼排気ガス中には、多量の
硫黄酸化物(以下SOxと記す)が含まれることとな
る。このSOxは、周囲に存在する水分と反応して硫酸
になり、エンジンの構成材料等の部品を腐食摩耗させる
恐れがある。そのため、舶用エンジン油には、硫酸によ
る腐食摩耗を抑制する能力を有することが求められてい
る。従来の舶用エンジン油では、高塩基価の過塩基性金
属型清浄剤を一定量添加すれば、多量の硫酸が中和で
き、シリンダライナやピストンリングの腐食摩耗は抑制
されると解されてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】舶用ディ−ゼルエンジ
ンでは、将来的にも高硫黄分の低質化燃料が使用される
可能性があり、そのため排気ガス中の硫酸酸化物が増加
し、エンジン内で生成される硫酸も増加すると考えられ
る。この硫酸を中和するためには、高塩基価の過塩基性
金属型清浄剤を添加することが考えられるが、従来の舶
用シリンダ油に配合されている高塩基価の過塩基性金属
型清浄剤を単純に増添加させただけでは、十分に硫酸が
中和されない場合も生じ、シリンダライナやピストンリ
ング等の腐食摩耗が増加する傾向が見られる場合もあ
る。そこで本発明は、生成される硫酸に対して優れた中
和性を有し、腐食摩耗の防止性を改善する舶用エンジン
油組成物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述の舶
用ディ−ゼルエンジン、例えばクロスヘッド型およびト
ランクピストン型のエンジン油において、高塩基価の過
塩基性金属型清浄剤が、シリンダライナ、ピストンリン
グの腐食摩耗を抑制する、最大の因子であるのに着目
し、この腐食摩耗現象を研究した結果、腐食摩耗を大幅
に抑制するためには、高塩基価の過塩基性金属型清浄剤
に、添加剤として特定の非イオン系界面活性剤を配合す
ることにより、最適なシリンダライナ、ピストンリング
の腐食摩耗防止性能を有する、エンジン油組成物が得ら
れたことを見出し、「陸上ディ−ゼルエンジン油組成
物」(特開平5−239485号)として提案してい
る。また、過塩基性金属型清浄剤として特定のカルシウ
ムフェネート及び特定のカルシウムサリシレートを特定
量配合させることにより、耐摩耗性及び高い清浄性を有
すると共に、良好な低温流動性を発揮するエンジン油組
成物を見出し、「エンジン油組成物」(特願平7−11
5316号)として提出している。本発明者らは、更に
硫酸中和性の観点から、腐食摩耗現象を鋭意研究した結
果、特定の過塩基性硫化アルカリ土類金属フェネ−トお
よび塩基価が異なる2種類の過塩基性硫化アルカリ土類
金属サリシレ−トを特定量配合することにより、上記発
明同様、最適のシリンダライナ、ピストンリングの腐食
摩耗防止性を有する、舶用エンジン油組成物が得られる
ことを新たに見い出し、本発明を完成するに至った。
【0005】すなわち、本発明の舶用エンジン油組成物
は、鉱油もしくは合成潤滑油あるいは両者の混合物の基
油に、(A)塩酸法で測定した塩基価および過塩素酸法
で測定した塩基価がともに300〜400mgKOH/
gであって、前者と後者との比が0.95以上である過
塩基性アルカリ土類金属フェネ−トを1〜30質量%、
(B)塩基価が200mgKOH/gを越え350mg
KOH/g以下の過塩基性アルカリ土類金属サリシレ−
トを0.5〜15質量%、および(C)塩基価が100
〜200mgKOH/gの過塩基性アルカリ土類金属サ
リシレ−トを0.5〜15質量%含有させてなることを
特徴とする舶用エンジン油組成物を提供するものであ
る。以下、本発明を詳細に説明する。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明におけるA成分の過塩基性
アルカリ土類金属フェネ−トは、塩基価が300〜40
0mgKOH/g、好ましくは350〜400mgKO
H/gであり、塩酸法で測定した塩基価と過塩素酸法で
測定した塩基価との比が0.95以上、好ましくは0.
98〜1.0である。この塩基価の比が0.95未満で
あると、安定した塩基性が得られない恐れがあり、また
中和性も不安定になり、腐食摩耗の十分な抑制効果が得
られないことがある。過塩基性アルカリ土類金属フェネ
−トは、過塩基性カルシウムフェネ−ト、過塩基性バリ
ウムフェネ−ト、過塩基性ストロンチウムフェネ−ト、
過塩基性マグネシウムフェネ−トなどの種々の過塩基性
アルカリ土類金属フェネ−トを使用することができる
が、過塩基性カルシウムフェネ−トが好ましい。過塩基
性カルシウムフェネ−トとしては、種々の過塩基性カル
シウムフェネートを使用することができるが、特に過塩
基性硫化カルシウムフェネートが好ましい。また、A成
分の過塩基性アルカリ土類金属フェネ−トの性状は、通
常100℃における粘度が40〜1000mm2/s、
色相(ASTM色)がL3.0〜8.0Dil、かつ脂
肪酸類が全量の0.1〜50質量%であり、その製造方
法は特開平7−113095号公報に詳述されている。
【0007】過塩基性硫化アルカリ土類金属フェネート
は、フェノール類、二価アルコール類、アルカリ土類金
属酸化物あるいは水酸化物もしくはそれらの混合物(以
下、アルカリ土類金属試薬という。)および硫黄を加え
たもの、またはこれらに水を加えたものを反応させ、次
いで過剰量の二価アルコールおよび少なくとも過剰量の
水を留去して得られた蒸留塔底物を二酸化炭素処理する
ことにより得られる。過塩基性硫化アルカリ土類金属フ
ェネートの好ましい態様としては、上記過塩基性硫化カ
ルシウムフェネートの製造法において、アルカリ土類金
属試薬1モル当たり0.001〜0.7モルの脂肪酸類
を遅くとも二酸化炭素処理までに存在せしめ、かつアル
カリ土類金属試薬1モル当たり0.01〜0.9モルの
水の存在下に二酸化炭素処理を行うことにより得られる
過塩基性硫化カルシウムフェネートが挙げられる。
【0008】過塩基性硫化アルカリ土類金属フェネート
の製造に際して使用される原料は、次の通りである。フ
ェノール類としては、炭素数4〜36個、好ましくは炭
素数8〜32個の炭化水素側鎖、例えばアルキル基、ア
ルケニル基、アラルキル基等を有するフェノール類を挙
げられる。具体的にはブチル、アミル、オクチル、ノニ
ル、ドデシル、セチル、エチルヘキシル、トリアコンチ
ル等の炭化水素基、あるいは流動パラフィン、ワック
ス、オレフィン重合体(ポリエチレン、ポリプロピレ
ン、ポリブテン等)の石油炭化水素から誘導される基を
有するフェノール類が単独、あるいはこれらの混合物に
て使用される。通常約130℃、好ましくは約120℃
以下で液状になり得るものが望ましい。
【0009】アルカリ土類金属試薬としては通常アルカ
リ土類金属の酸化物あるいは水酸化物もしくはそれらの
混合物が用いられる。例えばカルシウム、バリウム、ス
トロンチウム、マグネシウム等の酸化物あるいは水酸化
物が用いられる。フェノール類に対するアルカリ土類金
属試薬の使用量は使用フェノール類1モル当たり0.0
1〜0.99モル、好ましくは0.01〜0.98モル
である。フェノール類に対するアルカリ土類金属試薬の
量が多すぎると中間体がゲル化してそれ以上反応が進ま
ないため、目的とする良好な生成物が得られない。ま
た、少なすぎると原料に対する製品の収率が低下するば
かりか、フェノール類の回収に費やすユーティリティー
や時間が大となる。
【0010】次に、二価アルコールとしては比較的低沸
点かつ低粘度で反応性に富むものが使用される。二価ア
ルコールは炭素数2〜6を有することが好ましく、特に
エチレングリコール、プロピレングリコール等が好まし
い。二価アルコールはフェノール類とアルカリ土類金属
試薬との反応による油溶性物質への転化を助け、安定化
し、一部は製品フェネート中に取り込まれて多当量化フ
ェネートを構成するものである。本発明法においては、
金属付加反応は、反応促進効果のある水を添加して行っ
ても、添加しないで行っても良く、添加して行う場合、
二価アルコールの使用量はアルカリ土類金属試薬1モル
当たり約0.15〜3.0モル、特に約0.3〜1.5
モルが好ましい。また水を添加しないで行う場合、二価
アルコールの使用量はアルカリ土類金属試薬1モル当た
り、約1.0〜3.0モル、特に約1.2〜2.0モル
が好ましい。二価アルコールの使用量が少なすぎると反
応原料、特にアルカリ土類金属試薬の製品転化率が低下
し、多すぎるとフェノール類への金属付加反応は円滑に
進行するが、反応生成物から過剰の二価アルコールを蒸
留留去する時間およびユーティリティーが過大にかかっ
てしまう。硫黄の使用量は、アルカリ土類金属試薬1モ
ル当たり0.001〜3.0モル、好ましくは0.01
〜0.5モル、さらに好ましくは0.1〜0.4モルを
用いる。硫黄の使用量を低減するにつれ製品の粘度は低
下するが、多すぎると製品の過塩基性が低下するため塩
基価の高い製品が得にくくなるばかりでなく、製品の粘
度が著しく高くなってしまうため目的である低粘度かつ
高塩基価の製品が得られなくなってしまう。
【0011】フェノール類へのアルカリ土類金属試薬の
金属付加反応工程において反応を促進するために反応系
中に水を添加する場合は、蒸留水はもちろん缶水や工業
用水、金属付加反応で生成する水などが使用出来その品
質に特に制限はなく、冷水、温水、水蒸気等どのような
状態の水でも使用出来る。金属付加反応促進のために用
いる水の反応器への添加は水単独で行ってもよいし、一
部あるいは全部をフェノール類や二価アルコールなど他
の原料との混合物として添加してもよい。反応器への水
の添加時期は特に制限はなく、水以外の全反応原料が混
合される前でも後でも良いが、全反応原料混合後約1時
間以内に添加するのが好ましい。反応系中への金属付加
反応促進のために用いる水の添加量は使用するアルカリ
土類金属試薬1モル当たり約0.01〜10モル、望ま
しくは0.1〜2.0モルである。外部から水を反応系
中に添加して金属付加反応を行うと、水を添加しない以
外は同一の条件で反応を行う場合に比べて反応が円滑に
進行し、反応原料特にアルカリ土類金属試薬の製品転化
率が高くなる。従って反応系中へ添加する水が少なすぎ
るとアルカリ土類金属試薬の製品転化率が低下してしま
う。また逆に多すぎれば反応後の蒸留工程が簡略化され
るという利点が失なわれる。
【0012】二酸化炭素処理の際に共存させる水の添加
は、フェノール類、二価アルコール、アルカリ土類金属
試薬、および硫黄を加えたもの、またはこれに水を加え
たものより成る原料混合物を反応させ、硫化金属付加反
応を完了した後、蒸留を行って水および過剰の二価アル
コールを留去した後に行われるのが一般である。二酸化
炭素処理の際に共存させる水は、上記の金属付加促進の
ために用いた水と同様に、その品質、状態に制限はな
い。反応系中の水の量は、アルカリ土類金属試薬1モル
当たり0.01〜0.9モル、好ましくは0.05〜
0.6モル、さらに好ましくは0.1〜0.5モルに調
節する。系中に過剰の二価アルコールが存在する場合は
その留去に当たって最初に添加した水や、反応により生
成した水等の系内の水はすべて前留分として留出してし
まうので、二価アルコールの過剰分を留去したのち、所
定量の水を添加する必要がある。一方、系中に過剰の二
価アルコールが存在しない場合は、硫化金属付加反応前
に反応促進のために添加した水や反応中生成した水な
ど、反応終了後系中に存在する水から所定量の水のみを
残して過剰分のみを留去しても良いが、残存量が不明確
である場合は、水全量をいったん留去した後に所定量の
水を添加するのがよい。
【0013】二酸化炭素処理の際に共存させる水の量
は、多くなるにしたがって製品の塩基価は向上するが、
多すぎると製品が加水分解されすぎ、塩基価、油溶性の
低下の原因となり、少なすぎると製品の塩基価を向上さ
せる効果が十分に得られなくなる。二酸化炭素処理前に
存在させる脂肪酸類としては、炭素数10〜30、好ま
しくは16〜24の脂肪酸、またはそれらの塩で、塩の
場合アルカリ土類金属塩であることが好ましい。また、
アルキル基の部分が直鎖のものであればなお好ましい。
具体的にはデカン酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミ
チン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セ
ロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などがあげられる
が、好ましくはステアリン酸を用いる。脂肪酸類の量
は、アルカリ土類金属試薬1モル当たり0.001〜
0.7モル、好ましくは0.01〜0.7モルである。
添加する脂肪酸類の量が少ないとフェネートの塩基価の
さらなる向上が認められず、色相および油溶性が低下す
る。また多すぎると塩基価が低下する。
【0014】本発明において、反応物、反応中間体、あ
るいは製品等の取扱いを容易にするために適当な粘度を
有する希釈剤もしくは溶剤(以下、希釈剤という。)を
加えることができる。たとえば金属付加反応工程または
二酸化炭素処理を終えたのちの反応生成物中から過剰の
未反応フェノール類を蒸留で回収する際、高沸点で、か
つ適当な粘度を有する希釈剤の存在下で行うことによっ
て反応塔底物は液状の望ましい状態で得ることができ
る。なお、通常は未反応フェノール類の留出に伴って希
釈剤の一部も留出する。したがって、回収フェノール類
を繰り返し反応に供する場合には希釈剤としては反応に
直接悪影響を与えないものが望ましい。また、希釈剤の
存在下に反応を行ってもよい。好ましい希釈剤の例とし
てはパラフィン系、ナフテン系、芳香族系、あるいは混
合系の基油などの適当な粘度の石油留分、例えば、沸点
約220〜550℃で粘度が100℃で約2×10-6
4×10-52/sの潤滑油留分を挙げることができ
る。その他の有機溶媒でも疎水性、かつ、親油性を示
し、反応時や製品の用途面において無害であれば希釈剤
として用いることができる。例えば炭素数8〜24の高
級アルコールも使用することができる。
【0015】本発明における過塩基性硫化アルカリ土類
金属フェネートの主な製造工程および運転条件は下記の
とおりである。硫化金属付加反応工程は、フェノール
類、二価アルコール類、アルカリ土類金属試薬、硫黄、
またはこれに脂肪酸類および/または水を加えたものを
用いて行う。温度約60〜200℃、好ましくは約90
〜190℃の範囲で反応させる。圧力は特に制限され
ず、0.01〜21気圧・Aの範囲、好ましくは0.1
〜11気圧・Aが選択される。この反応は、通常1〜9
時間の範囲内でほぼ終了する。
【0016】二酸化炭素処理工程は、金属付加反応終了
後、系内の過剰の二価アルコール類および少なくとも過
剰の水を留去し、最初に脂肪酸類を添加していない場合
あるいは最初に添加した脂肪酸類量が少ない場合には、
所定量となるように脂肪酸類を添加し、かつ所定量の水
を系内に存在せしめた後、反応温度約50〜230℃、
好ましくは80〜200℃の温度条件下で二酸化炭素と
反応させる。この反応は減圧、常圧、加圧、いずれの条
件で行っても良い。通常0.01〜51気圧・A、好ま
しくは0.1〜31気圧・Aの範囲が採用される。反応
は一般には二酸化炭素の吸収が実質的に停止するまで行
われ、20分〜10時間、通常20分〜3時間である。
ここで得られた生成物を必要に応じて更に二酸化炭素雰
囲気下、0〜20気圧・G、好ましくは0〜10気圧・
Gの圧力で約100〜230℃において数分〜十数時間
保持する。二酸化炭素処理により生成物は潤滑油添加
剤、燃料油添加剤としての性能、なかでもエンジン油に
添加したときのエンジン油への油溶性、安定性がさらに
向上する。脂肪酸類の添加時期については、反応器への
原料の添加時から二酸化炭素処理工程前であればいつで
も良いが好ましくは、二酸化炭素処理時に添加する水を
入れる前までが良い。
【0017】二酸化炭素処理後の反応生成物にアルカリ
土類金属試薬と二価アルコールをまたは必要に応じて脂
肪酸類を添加し、再び上記のような金属付加反応を行
い、次いで二酸化炭素処理の操作を1回以上繰り返すこ
とによってさらに金属付加をすることも可能である。二
酸化炭素処理後の反応生成物中の未反応フェノール類
は、これらの一部、もしくは大部分を回収することが好
ましく、またこの回収フェノール類を原料として再び使
用することもできる。なお、ここで未反応フェノール類
の蒸留を高沸点の鉱油など、通常の希釈剤の存在下で行
うと、蒸留残留物は液状の好ましい形で得ることができ
る。該蒸留残留物中の不溶解性物質はフェノール類の回
収前、あるいは回収後にろ過または遠心分離等の操作に
より除去することができる。本発明における必須成分の
一つである、A成分の過塩基性硫化アルカリ土類金属フ
ェネートの配合割合は、1〜30質量%であり、好まし
くは1〜20質量%である。配合量が1質量%以下だ
と、十分な塩基価が得られず、効果が少なくなり、30
質量%以上だと過剰の塩基価をもたらすだけで効果の向
上は得られない。
【0018】本発明における必須成分の一つであるB成
分の過塩基性アルカリ土類金属サリシレ−トは、塩基価
が200mgKOH/gを越え、350mgKOH/g
以下であり、特に好ましくは250mgKOH/g〜3
50mgKOH/gである。更に、本発明における必須
成分の一つであるC成分の過塩基性アルカリ土類金属サ
リシレ−トは、塩基価が100〜200mgKOH/g
であり、好ましくは150〜200mgKOH/gであ
る。上記の過塩基性アルカリ土類金属サリシレ−トは、
カルシウム塩、マグネシウム塩等があるが、好ましくは
カルシウム塩である。B成分は炭素数20〜30のα−
オレフィン、C成分は14〜18のα−オレフィンを用
い、フェノ−ルをアルキル化してアルキルフェノール金
属塩とし、コルベ−シュミット反応でカルボキシル基を
導入し、複分解等によりアルカリ土類金属塩とした物が
使用される(特公昭61−24560号公報、特公昭6
1−24651号公報等参照)。なお、過塩基性型は、
中性型を二酸化炭素で処理することにより製造される。
【0019】また、上記過塩基性アルカリ土類金属サリ
シレ−トの配合割合は、各々0.5〜15質量%、好ま
しくは0.5〜10質量%である。過塩基性アルカリ土
類金属サリシレ−トの配合割合が少なすぎると効果が十
分でなく、逆に多すぎても添加量の割に効果の向上が得
られない。また、A成分の上記過塩基性アルカリ土類金
属フェネ−ト、B成分の過塩基性アルカリ土類金属サリ
シレ−ト、C成分の過塩基性アルカリ土類金属サリシレ
−トの配合割合は、各成分の塩基価比で、A:(B+
C)=10:1〜1:1であり、好ましくは7:1〜
1:1である。また、B成分、C成分の配合割合は、各
成分の塩基価比で、B:C=1:4〜4:1であり、好
ましくはB:C=1:2〜2:1である。
【0020】本発明においては、上記A成分、B成分お
よびC成分を鉱油系潤滑油もしくは、合成系潤滑油ある
いは両者の混合物からなる基油に混合する。基油は、通
常の潤滑油粘度を有するものであり、粘度指数が85〜
140のものが好適である。鉱油系潤滑油の場合は、例
えば鉱油系潤滑油留分を溶剤精製、水素化精製など適宜
組み合わせて精製したものを用いればよい。合成系潤滑
油としては、例えば炭素数3〜12のα−オレフィンの
重合体であるα−オレフィンオリゴマー、ジオクチルセ
バケートを始めとするセバケート、アゼレート、アジペ
ートなどの炭素数4〜12のジアルキルジエステル類、
1−トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールと
炭素数3〜12の一塩基酸から得られるエステルを始め
とするポリオールエステル類、炭素数9〜40のアルキ
ル基を有するアルキルベンゼン類などが挙げられる。上
記鉱油系潤滑油及び合成系潤滑油はそれぞれ1種単独で
あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0021】本発明の舶用エンジン油組成物において
は、上記した添加物のほかに、必要に応じて各種の公知
の添加剤、例えばアルケニルこはく酸イミドまたはその
誘導体などの無灰型分散剤、ジアルキルジチオリン酸亜
鉛などのチオリン酸亜鉛、2,6−ジ−tert−ブチ
ル−p−クレゾールなどのフェノール系化合物、N−ジ
メチルアニリンなどの芳香族アミン化合物などの各種酸
化防止剤、ジアルキルジチオリン酸モリブデンなどの各
種摩耗防止剤、ポリメタクリレート系、エチレンープロ
ピレン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、スチ
レン・イソプレン共重合体の水素化物あるいはポリイソ
ブチレンなどの各種粘度指数向上剤、硫化油脂、ジフェ
ニルスルフィド、メチルトリクロロステアレート、塩素
化ナフタレン、ヨウ素化ベンジル、フルオロアルキルポ
リシロキサン、ナフテン酸鉛などの各種極圧剤、ステア
リン酸を始めとするカルボン酸、ジカルボン酸、金属石
けん、カルボン酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、
多価アルコールのカルボン酸部分エステル、りん酸エス
テルなどの各種さび止め剤、高級脂肪酸、高級アルコー
ル、アミン、エステルなどの各種摩擦調整剤、シリコー
ン油などの各種消泡剤などを1種単独又は2種以上組み
合わせて適宜配合することができる。また、これら以外
にも各種の添加物を適宜配合することができる。
【0022】本発明の舶用エンジン油組成物の調整方法
は、基油、上記必須成分及び必要に応じて各種添加剤を
適宜混合すればよく、その混合順序は特に限定されるも
のではなく、基油に必須成分を順次混合してもよく、必
須成分を予め混合した後基油に混合してもよい。さら
に、各種添加剤についても、予め基油に添加してもよ
く、必須成分に添加してもよい。上記各成分を配合して
得られた本発明の舶用エンジン油組成物の塩基価は、5
〜100mgKOH/gであり、好ましくは10〜70
mgKOH/gである。また、本発明の舶用エンジン油
組成物は、高硫黄分燃料を使用する舶用ディーゼルエン
ジンに適するものであり、ここで言う高硫黄分燃料と
は、国内規格である日本工業規格のK−2205に規定
されている動粘度1種〜3種であり、硫黄分が1号〜3
号のものである。詳しくは、硫黄分が0.5〜3.5%
の範囲にあり、更には外地で供給される3.5%以上の
重油も含まれる。
【0023】
【実施例】次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説
明する。ただし、本発明はこれらの例によっては何ら限
定されるものではない。実施例では、基油に、必須成分
及び種々の添加剤を配合してエンジン油組成物を調整
し、硫酸中和性試験、ピストン清浄性、ピストンリング
の腐食摩耗を評価した。各実施例、各比較例のエンジン
油組成物の調製に用いた基油、必須成分及び添加剤の種
類並びに各評価試験は次の通りである。
【0024】(1)基油 SAE40(アメリカ自動車技術者協会による自動車用
潤滑剤の粘度番号が40で、100℃の動粘度が12.
5〜16.3mm2/sの鉱油)で粘度指数100のも
のを使用した。 (2)カルシウムフェネートA(TBN(塩基価)35
0mgKOH/g) 攪拌器、ガス導入管および温度計を装着した1リットル
オートクレーブに、純度99.75%のドデシルフェノ
ール552.21g(2.1モル)、純度94.9%の
酸化カルシウム41.38g(0.7モル)および硫黄
6.74g(0.21モル)(酸化カルシウム1モル当
たり0.3モル)、ステアリン酸4.98g(0.01
75モル)(酸化カルシウム1モル当たり0.025モ
ル)を封入し、攪拌した。得られた懸濁液に、エチレン
グリコール65.20g(1.05モル)を125℃で
添加し、これを130℃でゲージ圧約3.0気圧の加
圧、密閉の条件下、約3.0時間攪拌後、該反応系内を
徐々に減圧しながら、生成した水、一部の未反応のエチ
レングリコールおよび少量のドデシルフェノールを留去
することにより、液状蒸留残留物618.3gが得られ
た。この際の最終留出温度は140℃(3mmHg)で
あった。次に、該蒸留残留物618.3gに水5.04
g(0.28モル)(酸化カルシウム1モル当たり0.
4モル)を添加した後、温度150℃で減圧状態から3
0分間二酸化炭素を吸収させた。この時のオートクレー
ブへの二酸化炭素の供給速度は、0.315リットル/
minとした。次いで、178℃に昇 温し、ゲージ圧
5.0気圧になるまで再び二酸化炭素で加圧し、2.0
時間保持して反応生成物648.3gを得た。この反応
生成物648.3gに希釈剤として150ニュートラル
油117.37gを加えた。この反応生成物を1リット
ルの三口梨型フラスコに698.27g移し、減圧蒸留
して少量のエチレングリコールおよび未反応のドデシル
フェノールの大部分を留去して、蒸留残留物182.3
5gを得た。その際の最終留出温度は225℃(1.5
mmHg)であった。その後、この蒸留残留物を多量の
ヘキサンで希釈し、遠心分離により不溶解物12.59
gを除去後、多量に加えたヘキサンを蒸留除去すること
により得られた過塩基性硫化カルシウムフェネートを使
用した。また、その性状を下に示す。 性状 (i)塩基価 塩酸法 352mgKOH/g 過塩素酸法 352mgKOH/g (ii)塩基価の比(塩酸法/過塩素酸法) 1.0 (iii)脂肪酸量 2.8質量% (iv) 粘度(100℃) 432mm2/s (v)色相(ASTM色)* L3.0Dil *:JIS−K−2580(石油製品色試験方法)に規
定する方法で行った。
【0025】(3)カルシウムサリシレートB(TBN
300mgKOH/g) 炭素数20〜30のαーオレフィンでフェノールをアル
キル化し、次いでコルベ−シュミット反応でカルボキシ
ル基を導入した後、複分解などによりカルシウム塩とし
たものを使用した。 (4)カルシウムサリシレートC(TBN170mgK
OH/g) 炭素数14〜18のαーオレフィンでフェノールをアル
キル化し、次いでコルベ−シュミット反応でカルボキシ
ル基を導入した後、複分解などによりカルシウム塩とし
たものを使用した。 (5)アルケニルこはく酸イミド 分子量が30〜3000のポリオレフィンを無水マレイ
ン酸と反応させた後ポリアミンを用いてイミド化したも
の、あるいは得られたイミドに芳香族ポリカルボン酸を
作用させて残りのアミノ基を一部アミド化したもの(例
えば、分子量900のポリブテンを無水マレイン酸と反
応させた後に、テトラエチレンペンタミンでイミド化し
たもの、あるいはこれにトリメリット酸を作用させたも
のが挙げられる)等を使用した。
【0026】(6)消泡剤 シリコーン系消泡剤(市販添加剤)を使用した。 (7)市販カルシウムフェネート (i) 塩基価 塩酸法 175mgKOH/g 過塩素酸法 250mgKOH/g (ii)塩基価の比(塩酸法/過塩素酸法) 0.7
【0027】評価試験 (1)硫酸中和性試験 枝付きの300mlマイヤ−フラスコに、供試油として
実施例および比較例の組成物を10.0g入れ加温す
る。供試油が50℃ になったら30mgKOH/g相
当量の濃硫酸を0.15ml添加し攪拌すると同時に、
予めフラスコにセットした微動差圧計により2分、4
分、6分後のCO2発生圧力を測定し、時間当たりのC
2発生圧力が高いものほど、腐食摩耗を抑制できると
評価される。 (2)ピストン清浄性及びピストンリングの腐食摩耗評
価 排気量2.2リットルの、単気筒、ディーゼルエンジン
で、エンジン回転数が1500rpm、試験時間が10
0時間の連続運転を行い、試験後、ピストンの清浄性お
よびシリンダライナー、ピストンリングの腐食摩耗を評
価した。この時の燃料重油は、硫黄分2.5%のJI
S、3種1号相当のものを使用した。
【0028】実施例1〜4 前記の基油にカルシウムフェネートA、カルシウムサリ
シレートB、カルシウムサリシレートC、を表1に示す
割合(質量%)で配合し、舶用エンジン油組成物を調製
した。得られた舶用エンジン油組成物の硫酸中和性試験
の結果は表1下段に示す通りである。なお、表中バラン
スとは、エンジン油に配合されている各成分の合計量が
100質量%になるように、基油の量を選定する意味で
ある。
【0029】比較例1〜7 上記の基油および添加剤を配合して舶用エンジン油組成
物を調製した。配合割合(質量%)を表2、3の上段
に、硫酸中和試験の結果は表2、3の下段に示す。
【0030】実施例5と比較例8,9 更に、前記の基油にカルシウムフェネートA、カルシウ
ムサリシレートB、カルシウムサリシレートC、アルケ
ニルこはく酸イミドおよび消泡剤を、表4に示す割合
(質量%)で、配合した舶用エンジン油組成物を調製
し、台上エンジンを用い、シリンダーライナー、ピスト
ンリングの腐食摩耗評価及びピストン清浄性評価を実施
した。その結果を表4に示し、比較例9を1.0とした
時の比で結果を示した。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】 W.T.D:ト−タルデメリット評点 、T.G.F:トップリング溝詰まり
【0035】
【発明の効果】本発明の舶用エンジン油組成物は、特定
の過塩基性硫化アルカリ土類金属フェネ−トおよび塩基
価が異なる2種類の過塩基性硫化アルカリ土類金属サリ
シレ−トとを配合することにより、硫酸に対する腐食防
止性を向上させたもので、高い清浄性をも有する。本発
明の舶用エンジン油組成物は、実用上極めて有用であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鈴木 健 埼玉県幸手市権現堂1134−2 株式会社コ スモ総合研究所研究開発センター内 (72)発明者 木村 林 埼玉県幸手市権現堂1134−2 株式会社コ スモ総合研究所研究開発センター内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鉱油もしくは合成潤滑油あるいは両者の混
    合物の基油に、(A)塩酸法で測定した塩基価および過
    塩素酸法で測定した塩基価がともに300〜400mg
    KOH/gであって、前者と後者との比が0.95以上
    である過塩基性アルカリ土類金属フェネ−トを1〜30
    質量%、(B)塩基価が200mgKOH/gを越え3
    50mgKOH/g以下の過塩基性アルカリ土類金属サ
    リシレ−トを0.5〜15質量%、および(C)塩基価
    が100〜200mgKOH/gの過塩基性アルカリ土
    類金属サリシレ−トを0.5〜15質量%含有させてな
    ることを特徴とする舶用エンジン油組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012057166A (ja) * 2011-10-25 2012-03-22 Chevron Japan Ltd 潤滑油組成物

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