JP3561591B2 - 舶用エンジン油組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は舶用エンジン油組成物に関し、更に詳しくは、高硫黄分燃料を使用する舶用ディ−ゼルエンジンの硫酸に対する腐食防止性が要求される分野において、その能力を最大限に発揮しうる舶用エンジン油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に舶用ディ−ゼルエンジンに使用される燃料は、硫黄分を多く含有する重質油が用いられており、また経費削減のため安価ながら、粗悪で低質化した燃料油を使用する場合もある。これらの高硫黄分を含んだ燃料を用いたときの燃焼排気ガス中には、多量の硫黄酸化物(以下SOxと記す)が含まれることとなる。このSOxは、周囲に存在する水分と反応して硫酸になり、エンジンの構成材料等の部品を腐食摩耗させる恐れがある。そのため、舶用エンジン油には、硫酸による腐食摩耗を抑制する能力を有することが求められている。
従来の舶用エンジン油では、高塩基価の過塩基性金属型清浄剤を一定量添加すれば、多量の硫酸が中和でき、シリンダライナやピストンリングの腐食摩耗は抑制されると解されてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
舶用ディ−ゼルエンジンでは、将来的にも高硫黄分の低質化燃料が使用される可能性があり、そのため排気ガス中の硫酸酸化物が増加し、エンジン内で生成される硫酸も増加すると考えられる。この硫酸を中和するためには、高塩基価の過塩基性金属型清浄剤を添加することが考えられるが、従来の舶用シリンダ油に配合されている高塩基価の過塩基性金属型清浄剤を単純に増添加させただけでは、十分に硫酸が中和されない場合も生じ、シリンダライナやピストンリング等の腐食摩耗が増加する傾向が見られる場合もある。
そこで本発明は、生成される硫酸に対して優れた中和性を有し、腐食摩耗の防止性を改善する舶用エンジン油組成物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の舶用ディ−ゼルエンジン、例えばクロスヘッド型およびトランクピストン型のエンジン油において、高塩基価の過塩基性金属型清浄剤が、シリンダライナ、ピストンリングの腐食摩耗を抑制する、最大の因子であるのに着目し、この腐食摩耗現象を研究した結果、腐食摩耗を大幅に抑制するためには、高塩基価の過塩基性金属型清浄剤に、添加剤として特定の非イオン系界面活性剤を配合することにより、最適なシリンダライナ、ピストンリングの腐食摩耗防止性能を有する、エンジン油組成物が得られたことを見出し、「陸上ディ−ゼルエンジン油組成物」(特開平5−239485号)として提案している。また、過塩基性金属型清浄剤として特定のカルシウムフェネート及び特定のカルシウムサリシレートを特定量配合させることにより、耐摩耗性及び高い清浄性を有すると共に、良好な低温流動性を発揮するエンジン油組成物を見出し、「エンジン油組成物」(特願平7−115316号)として提出している。
本発明者らは、更に硫酸中和性の観点から、腐食摩耗現象を鋭意研究した結果、特定の過塩基性硫化アルカリ土類金属フェネ−トおよび塩基価が異なる2種類の過塩基性硫化アルカリ土類金属サリシレ−トを特定量配合することにより、上記発明同様、最適のシリンダライナ、ピストンリングの腐食摩耗防止性を有する、舶用エンジン油組成物が得られることを新たに見い出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明の舶用エンジン油組成物は、鉱油もしくは合成潤滑油あるいは両者の混合物の基油に、
(A)塩酸法で測定した塩基価および過塩素酸法で測定した塩基価がともに300〜400mgKOH/gであって、前者と後者との比が0.95以上である過塩基性アルカリ土類金属フェネ−トを1〜30質量%、
(B)塩基価が200mgKOH/gを越え350mgKOH/g以下の過塩基性アルカリ土類金属サリシレ−トを0.5〜15質量%、および
(C)塩基価が100〜200mgKOH/gの過塩基性アルカリ土類金属サリシレ−トを0.5〜15質量%含有させてなることを特徴とする舶用エンジン油組成物を提供するものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明におけるA成分の過塩基性アルカリ土類金属フェネ−トは、塩基価が300〜400mgKOH/g、好ましくは350〜400mgKOH/gであり、塩酸法で測定した塩基価と過塩素酸法で測定した塩基価との比が0.95以上、好ましくは0.98〜1.0である。この塩基価の比が0.95未満であると、安定した塩基性が得られない恐れがあり、また中和性も不安定になり、腐食摩耗の十分な抑制効果が得られないことがある。
過塩基性アルカリ土類金属フェネ−トは、過塩基性カルシウムフェネ−ト、過塩基性バリウムフェネ−ト、過塩基性ストロンチウムフェネ−ト、過塩基性マグネシウムフェネ−トなどの種々の過塩基性アルカリ土類金属フェネ−トを使用することができるが、過塩基性カルシウムフェネ−トが好ましい。
過塩基性カルシウムフェネ−トとしては、種々の過塩基性カルシウムフェネートを使用することができるが、特に過塩基性硫化カルシウムフェネートが好ましい。
また、A成分の過塩基性アルカリ土類金属フェネ−トの性状は、通常100℃における粘度が40〜1000mm2/s、色相(ASTM色)がL3.0〜8.0Dil、かつ脂肪酸類が全量の0.1〜50質量%であり、その製造方法は特開平7−113095号公報に詳述されている。
【0007】
過塩基性硫化アルカリ土類金属フェネートは、フェノール類、二価アルコール類、アルカリ土類金属酸化物あるいは水酸化物もしくはそれらの混合物(以下、アルカリ土類金属試薬という。)および硫黄を加えたもの、またはこれらに水を加えたものを反応させ、次いで過剰量の二価アルコールおよび少なくとも過剰量の水を留去して得られた蒸留塔底物を二酸化炭素処理することにより得られる。過塩基性硫化アルカリ土類金属フェネートの好ましい態様としては、上記過塩基性硫化カルシウムフェネートの製造法において、アルカリ土類金属試薬1モル当たり0.001〜0.7モルの脂肪酸類を遅くとも二酸化炭素処理までに存在せしめ、かつアルカリ土類金属試薬1モル当たり0.01〜0.9モルの水の存在下に二酸化炭素処理を行うことにより得られる過塩基性硫化カルシウムフェネートが挙げられる。
【0008】
過塩基性硫化アルカリ土類金属フェネートの製造に際して使用される原料は、次の通りである。フェノール類としては、炭素数4〜36個、好ましくは炭素数8〜32個の炭化水素側鎖、例えばアルキル基、アルケニル基、アラルキル基等を有するフェノール類を挙げられる。具体的にはブチル、アミル、オクチル、ノニル、ドデシル、セチル、エチルヘキシル、トリアコンチル等の炭化水素基、あるいは流動パラフィン、ワックス、オレフィン重合体(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等)の石油炭化水素から誘導される基を有するフェノール類が単独、あるいはこれらの混合物にて使用される。通常約130℃、好ましくは約120℃以下で液状になり得るものが望ましい。
【0009】
アルカリ土類金属試薬としては通常アルカリ土類金属の酸化物あるいは水酸化物もしくはそれらの混合物が用いられる。例えばカルシウム、バリウム、ストロンチウム、マグネシウム等の酸化物あるいは水酸化物が用いられる。フェノール類に対するアルカリ土類金属試薬の使用量は使用フェノール類1モル当たり0.01〜0.99モル、好ましくは0.01〜0.98モルである。フェノール類に対するアルカリ土類金属試薬の量が多すぎると中間体がゲル化してそれ以上反応が進まないため、目的とする良好な生成物が得られない。また、少なすぎると原料に対する製品の収率が低下するばかりか、フェノール類の回収に費やすユーティリティーや時間が大となる。
【0010】
次に、二価アルコールとしては比較的低沸点かつ低粘度で反応性に富むものが使用される。二価アルコールは炭素数2〜6を有することが好ましく、特にエチレングリコール、プロピレングリコール等が好ましい。二価アルコールはフェノール類とアルカリ土類金属試薬との反応による油溶性物質への転化を助け、安定化し、一部は製品フェネート中に取り込まれて多当量化フェネートを構成するものである。本発明法においては、金属付加反応は、反応促進効果のある水を添加して行っても、添加しないで行っても良く、添加して行う場合、二価アルコールの使用量はアルカリ土類金属試薬1モル当たり約0.15〜3.0モル、特に約0.3〜1.5モルが好ましい。また水を添加しないで行う場合、二価アルコールの使用量はアルカリ土類金属試薬1モル当たり、約1.0〜3.0モル、特に約1.2〜2.0モルが好ましい。二価アルコールの使用量が少なすぎると反応原料、特にアルカリ土類金属試薬の製品転化率が低下し、多すぎるとフェノール類への金属付加反応は円滑に進行するが、反応生成物から過剰の二価アルコールを蒸留留去する時間およびユーティリティーが過大にかかってしまう。
硫黄の使用量は、アルカリ土類金属試薬1モル当たり0.001〜3.0モル、好ましくは0.01〜0.5モル、さらに好ましくは0.1〜0.4モルを用いる。硫黄の使用量を低減するにつれ製品の粘度は低下するが、多すぎると製品の過塩基性が低下するため塩基価の高い製品が得にくくなるばかりでなく、製品の粘度が著しく高くなってしまうため目的である低粘度かつ高塩基価の製品が得られなくなってしまう。
【0011】
フェノール類へのアルカリ土類金属試薬の金属付加反応工程において反応を促進するために反応系中に水を添加する場合は、蒸留水はもちろん缶水や工業用水、金属付加反応で生成する水などが使用出来その品質に特に制限はなく、冷水、温水、水蒸気等どのような状態の水でも使用出来る。金属付加反応促進のために用いる水の反応器への添加は水単独で行ってもよいし、一部あるいは全部をフェノール類や二価アルコールなど他の原料との混合物として添加してもよい。反応器への水の添加時期は特に制限はなく、水以外の全反応原料が混合される前でも後でも良いが、全反応原料混合後約1時間以内に添加するのが好ましい。反応系中への金属付加反応促進のために用いる水の添加量は使用するアルカリ土類金属試薬1モル当たり約0.01〜10モル、望ましくは0.1〜2.0モルである。外部から水を反応系中に添加して金属付加反応を行うと、水を添加しない以外は同一の条件で反応を行う場合に比べて反応が円滑に進行し、反応原料特にアルカリ土類金属試薬の製品転化率が高くなる。従って反応系中へ添加する水が少なすぎるとアルカリ土類金属試薬の製品転化率が低下してしまう。また逆に多すぎれば反応後の蒸留工程が簡略化されるという利点が失なわれる。
【0012】
二酸化炭素処理の際に共存させる水の添加は、フェノール類、二価アルコール、アルカリ土類金属試薬、および硫黄を加えたもの、またはこれに水を加えたものより成る原料混合物を反応させ、硫化金属付加反応を完了した後、蒸留を行って水および過剰の二価アルコールを留去した後に行われるのが一般である。二酸化炭素処理の際に共存させる水は、上記の金属付加促進のために用いた水と同様に、その品質、状態に制限はない。反応系中の水の量は、アルカリ土類金属試薬1モル当たり0.01〜0.9モル、好ましくは0.05〜0.6モル、さらに好ましくは0.1〜0.5モルに調節する。
系中に過剰の二価アルコールが存在する場合はその留去に当たって最初に添加した水や、反応により生成した水等の系内の水はすべて前留分として留出してしまうので、二価アルコールの過剰分を留去したのち、所定量の水を添加する必要がある。一方、系中に過剰の二価アルコールが存在しない場合は、硫化金属付加反応前に反応促進のために添加した水や反応中生成した水など、反応終了後系中に存在する水から所定量の水のみを残して過剰分のみを留去しても良いが、残存量が不明確である場合は、水全量をいったん留去した後に所定量の水を添加するのがよい。
【0013】
二酸化炭素処理の際に共存させる水の量は、多くなるにしたがって製品の塩基価は向上するが、多すぎると製品が加水分解されすぎ、塩基価、油溶性の低下の原因となり、少なすぎると製品の塩基価を向上させる効果が十分に得られなくなる。
二酸化炭素処理前に存在させる脂肪酸類としては、炭素数10〜30、好ましくは16〜24の脂肪酸、またはそれらの塩で、塩の場合アルカリ土類金属塩であることが好ましい。また、アルキル基の部分が直鎖のものであればなお好ましい。具体的にはデカン酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などがあげられるが、好ましくはステアリン酸を用いる。脂肪酸類の量は、アルカリ土類金属試薬1モル当たり0.001〜0.7モル、好ましくは0.01〜0.7モルである。
添加する脂肪酸類の量が少ないとフェネートの塩基価のさらなる向上が認められず、色相および油溶性が低下する。また多すぎると塩基価が低下する。
【0014】
本発明において、反応物、反応中間体、あるいは製品等の取扱いを容易にするために適当な粘度を有する希釈剤もしくは溶剤(以下、希釈剤という。)を加えることができる。たとえば金属付加反応工程または二酸化炭素処理を終えたのちの反応生成物中から過剰の未反応フェノール類を蒸留で回収する際、高沸点で、かつ適当な粘度を有する希釈剤の存在下で行うことによって反応塔底物は液状の望ましい状態で得ることができる。なお、通常は未反応フェノール類の留出に伴って希釈剤の一部も留出する。したがって、回収フェノール類を繰り返し反応に供する場合には希釈剤としては反応に直接悪影響を与えないものが望ましい。また、希釈剤の存在下に反応を行ってもよい。好ましい希釈剤の例としてはパラフィン系、ナフテン系、芳香族系、あるいは混合系の基油などの適当な粘度の石油留分、例えば、沸点約220〜550℃で粘度が100℃で約2×10−6〜4×10−5m2/sの潤滑油留分を挙げることができる。その他の有機溶媒でも疎水性、かつ、親油性を示し、反応時や製品の用途面において無害であれば希釈剤として用いることができる。例えば炭素数8〜24の高級アルコールも使用することができる。
【0015】
本発明における過塩基性硫化アルカリ土類金属フェネートの主な製造工程および運転条件は下記のとおりである。
硫化金属付加反応工程は、フェノール類、二価アルコール類、アルカリ土類金属試薬、硫黄、またはこれに脂肪酸類および/または水を加えたものを用いて行う。温度約60〜200℃、好ましくは約90〜190℃の範囲で反応させる。圧力は特に制限されず、0.01〜21気圧・Aの範囲、好ましくは0.1〜11気圧・Aが選択される。この反応は、通常1〜9時間の範囲内でほぼ終了する。
【0016】
二酸化炭素処理工程は、金属付加反応終了後、系内の過剰の二価アルコール類および少なくとも過剰の水を留去し、最初に脂肪酸類を添加していない場合あるいは最初に添加した脂肪酸類量が少ない場合には、所定量となるように脂肪酸類を添加し、かつ所定量の水を系内に存在せしめた後、反応温度約50〜230℃、好ましくは80〜200℃の温度条件下で二酸化炭素と反応させる。この反応は減圧、常圧、加圧、いずれの条件で行っても良い。通常0.01〜51気圧・A、好ましくは0.1〜31気圧・Aの範囲が採用される。反応は一般には二酸化炭素の吸収が実質的に停止するまで行われ、20分〜10時間、通常20分〜3時間である。ここで得られた生成物を必要に応じて更に二酸化炭素雰囲気下、0〜20気圧・G、好ましくは0〜10気圧・Gの圧力で約100〜230℃において数分〜十数時間保持する。二酸化炭素処理により生成物は潤滑油添加剤、燃料油添加剤としての性能、なかでもエンジン油に添加したときのエンジン油への油溶性、安定性がさらに向上する。脂肪酸類の添加時期については、反応器への原料の添加時から二酸化炭素処理工程前であればいつでも良いが好ましくは、二酸化炭素処理時に添加する水を入れる前までが良い。
【0017】
二酸化炭素処理後の反応生成物にアルカリ土類金属試薬と二価アルコールをまたは必要に応じて脂肪酸類を添加し、再び上記のような金属付加反応を行い、次いで二酸化炭素処理の操作を1回以上繰り返すことによってさらに金属付加をすることも可能である。
二酸化炭素処理後の反応生成物中の未反応フェノール類は、これらの一部、もしくは大部分を回収することが好ましく、またこの回収フェノール類を原料として再び使用することもできる。なお、ここで未反応フェノール類の蒸留を高沸点の鉱油など、通常の希釈剤の存在下で行うと、蒸留残留物は液状の好ましい形で得ることができる。該蒸留残留物中の不溶解性物質はフェノール類の回収前、あるいは回収後にろ過または遠心分離等の操作により除去することができる。
本発明における必須成分の一つである、A成分の過塩基性硫化アルカリ土類金属フェネートの配合割合は、1〜30質量%であり、好ましくは1〜20質量%である。配合量が1質量%以下だと、十分な塩基価が得られず、効果が少なくなり、30質量%以上だと過剰の塩基価をもたらすだけで効果の向上は得られない。
【0018】
本発明における必須成分の一つであるB成分の過塩基性アルカリ土類金属サリシレ−トは、塩基価が200mgKOH/gを越え、350mgKOH/g以下であり、特に好ましくは250mgKOH/g〜350mgKOH/gである。更に、本発明における必須成分の一つであるC成分の過塩基性アルカリ土類金属サリシレ−トは、塩基価が100〜200mgKOH/gであり、好ましくは150〜200mgKOH/gである。
上記の過塩基性アルカリ土類金属サリシレ−トは、カルシウム塩、マグネシウム塩等があるが、好ましくはカルシウム塩である。
B成分は炭素数20〜30のα−オレフィン、C成分は14〜18のα−オレフィンを用い、フェノ−ルをアルキル化してアルキルフェノール金属塩とし、コルベ−シュミット反応でカルボキシル基を導入し、複分解等によりアルカリ土類金属塩とした物が使用される(特公昭61−24560号公報、特公昭61−24651号公報等参照)。なお、過塩基性型は、中性型を二酸化炭素で処理することにより製造される。
【0019】
また、上記過塩基性アルカリ土類金属サリシレ−トの配合割合は、各々0.5〜15質量%、好ましくは0.5〜10質量%である。過塩基性アルカリ土類金属サリシレ−トの配合割合が少なすぎると効果が十分でなく、逆に多すぎても添加量の割に効果の向上が得られない。
また、A成分の上記過塩基性アルカリ土類金属フェネ−ト、B成分の過塩基性アルカリ土類金属サリシレ−ト、C成分の過塩基性アルカリ土類金属サリシレ−トの配合割合は、各成分の塩基価比で、A:(B+C)=10:1〜1:1であり、好ましくは7:1〜1:1である。また、B成分、C成分の配合割合は、各成分の塩基価比で、B:C=1:4〜4:1であり、好ましくはB:C=1:2〜2:1である。
【0020】
本発明においては、上記A成分、B成分およびC成分を鉱油系潤滑油もしくは、合成系潤滑油あるいは両者の混合物からなる基油に混合する。
基油は、通常の潤滑油粘度を有するものであり、粘度指数が85〜140のものが好適である。
鉱油系潤滑油の場合は、例えば鉱油系潤滑油留分を溶剤精製、水素化精製など適宜組み合わせて精製したものを用いればよい。
合成系潤滑油としては、例えば炭素数3〜12のα−オレフィンの重合体であるα−オレフィンオリゴマー、ジオクチルセバケートを始めとするセバケート、アゼレート、アジペートなどの炭素数4〜12のジアルキルジエステル類、1−トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールと炭素数3〜12の一塩基酸から得られるエステルを始めとするポリオールエステル類、炭素数9〜40のアルキル基を有するアルキルベンゼン類などが挙げられる。
上記鉱油系潤滑油及び合成系潤滑油はそれぞれ1種単独であるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0021】
本発明の舶用エンジン油組成物においては、上記した添加物のほかに、必要に応じて各種の公知の添加剤、例えばアルケニルこはく酸イミドまたはその誘導体などの無灰型分散剤、ジアルキルジチオリン酸亜鉛などのチオリン酸亜鉛、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールなどのフェノール系化合物、N−ジメチルアニリンなどの芳香族アミン化合物などの各種酸化防止剤、ジアルキルジチオリン酸モリブデンなどの各種摩耗防止剤、ポリメタクリレート系、エチレンープロピレン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体の水素化物あるいはポリイソブチレンなどの各種粘度指数向上剤、硫化油脂、ジフェニルスルフィド、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、ヨウ素化ベンジル、フルオロアルキルポリシロキサン、ナフテン酸鉛などの各種極圧剤、ステアリン酸を始めとするカルボン酸、ジカルボン酸、金属石けん、カルボン酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールのカルボン酸部分エステル、りん酸エステルなどの各種さび止め剤、高級脂肪酸、高級アルコール、アミン、エステルなどの各種摩擦調整剤、シリコーン油などの各種消泡剤などを1種単独又は2種以上組み合わせて適宜配合することができる。また、これら以外にも各種の添加物を適宜配合することができる。
【0022】
本発明の舶用エンジン油組成物の調整方法は、基油、上記必須成分及び必要に応じて各種添加剤を適宜混合すればよく、その混合順序は特に限定されるものではなく、基油に必須成分を順次混合してもよく、必須成分を予め混合した後基油に混合してもよい。さらに、各種添加剤についても、予め基油に添加してもよく、必須成分に添加してもよい。
上記各成分を配合して得られた本発明の舶用エンジン油組成物の塩基価は、5〜100mgKOH/gであり、好ましくは10〜70mgKOH/gである。また、本発明の舶用エンジン油組成物は、高硫黄分燃料を使用する舶用ディーゼルエンジンに適するものであり、ここで言う高硫黄分燃料とは、国内規格である日本工業規格のK−2205に規定されている動粘度1種〜3種であり、硫黄分が1号〜3号のものである。詳しくは、硫黄分が0.5〜3.5%の範囲にあり、更には外地で供給される3.5%以上の重油も含まれる。
【0023】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの例によっては何ら限定されるものではない。
実施例では、基油に、必須成分及び種々の添加剤を配合してエンジン油組成物を調整し、硫酸中和性試験、ピストン清浄性、ピストンリングの腐食摩耗を評価した。
各実施例、各比較例のエンジン油組成物の調製に用いた基油、必須成分及び添加剤の種類並びに各評価試験は次の通りである。
【0024】
(1)基油
SAE40(アメリカ自動車技術者協会による自動車用潤滑剤の粘度番号が40で、100℃の動粘度が12.5〜16.3mm2/sの鉱油)で粘度指数100のものを使用した。
(2)カルシウムフェネートA(TBN(塩基価)350mgKOH/g)
攪拌器、ガス導入管および温度計を装着した1リットルオートクレーブに、純度99.75%のドデシルフェノール552.21g(2.1モル)、純度94.9%の酸化カルシウム41.38g(0.7モル)および硫黄6.74g(0.21モル)(酸化カルシウム1モル当たり0.3モル)、ステアリン酸4.98g(0.0175モル)(酸化カルシウム1モル当たり0.025モル)を封入し、攪拌した。得られた懸濁液に、エチレングリコール65.20g(1.05モル)を125℃で添加し、これを130℃でゲージ圧約3.0気圧の加圧、密閉の条件下、約3.0時間攪拌後、該反応系内を徐々に減圧しながら、生成した水、一部の未反応のエチレングリコールおよび少量のドデシルフェノールを留去することにより、液状蒸留残留物618.3gが得られた。この際の最終留出温度は140℃(3mmHg)であった。次に、該蒸留残留物618.3gに水5.04g(0.28モル)(酸化カルシウム1モル当たり0.4モル)を添加した後、温度150℃で減圧状態から30分間二酸化炭素を吸収させた。この時のオートクレーブへの二酸化炭素の供給速度は、0.315リットル/minとした。次いで、178℃に昇 温し、ゲージ圧5.0気圧になるまで再び二酸化炭素で加圧し、2.0時間保持して反応生成物648.3gを得た。この反応生成物648.3gに希釈剤として150ニュートラル油117.37gを加えた。この反応生成物を1リットルの三口梨型フラスコに698.27g移し、減圧蒸留して少量のエチレングリコールおよび未反応のドデシルフェノールの大部分を留去して、蒸留残留物182.35gを得た。その際の最終留出温度は225℃(1.5mmHg)であった。その後、この蒸留残留物を多量のヘキサンで希釈し、遠心分離により不溶解物12.59gを除去後、多量に加えたヘキサンを蒸留除去することにより得られた過塩基性硫化カルシウムフェネートを使用した。また、その性状を下に示す。
【0025】
(3)カルシウムサリシレートB(TBN300mgKOH/g)
炭素数20〜30のαーオレフィンでフェノールをアルキル化し、次いでコルベ−シュミット反応でカルボキシル基を導入した後、複分解などによりカルシウム塩としたものを使用した。
(4)カルシウムサリシレートC(TBN170mgKOH/g)
炭素数14〜18のαーオレフィンでフェノールをアルキル化し、次いでコルベ−シュミット反応でカルボキシル基を導入した後、複分解などによりカルシウム塩としたものを使用した。
(5)アルケニルこはく酸イミド
分子量が30〜3000のポリオレフィンを無水マレイン酸と反応させた後ポリアミンを用いてイミド化したもの、あるいは得られたイミドに芳香族ポリカルボン酸を作用させて残りのアミノ基を一部アミド化したもの(例えば、分子量900のポリブテンを無水マレイン酸と反応させた後に、テトラエチレンペンタミンでイミド化したもの、あるいはこれにトリメリット酸を作用させたものが挙げられる)等を使用した。
【0026】
(6)消泡剤
シリコーン系消泡剤(市販添加剤)を使用した。
【0027】
評価試験
(1)硫酸中和性試験
枝付きの300mlマイヤ−フラスコに、供試油として実施例および比較例の組成物を10.0g入れ加温する。供試油が50℃ になったら30mgKOH/g相当量の濃硫酸を0.15ml添加し攪拌すると同時に、予めフラスコにセットした微動差圧計により2分、4分、6分後のCO2発生圧力を測定し、時間当たりのCO2発生圧力が高いものほど、腐食摩耗を抑制できると評価される。
(2)ピストン清浄性及びピストンリングの腐食摩耗評価
排気量2.2リットルの、単気筒、ディーゼルエンジンで、エンジン回転数が1500rpm、試験時間が100時間の連続運転を行い、試験後、ピストンの清浄性およびシリンダライナー、ピストンリングの腐食摩耗を評価した。
この時の燃料重油は、硫黄分2.5%のJIS、3種1号相当のものを使用した。
【0028】
実施例1〜4
前記の基油にカルシウムフェネートA、カルシウムサリシレートB、カルシウムサリシレートC、を表1に示す割合(質量%)で配合し、舶用エンジン油組成物を調製した。得られた舶用エンジン油組成物の硫酸中和性試験の結果は表1下段に示す通りである。
なお、表中バランスとは、エンジン油に配合されている各成分の合計量が100質量%になるように、基油の量を選定する意味である。
【0029】
比較例1〜7
上記の基油および添加剤を配合して舶用エンジン油組成物を調製した。配合割合(質量%)を表2、3の上段に、硫酸中和試験の結果は表2、3の下段に示す。
【0030】
実施例5と比較例8,9
更に、前記の基油にカルシウムフェネートA、カルシウムサリシレートB、カルシウムサリシレートC、アルケニルこはく酸イミドおよび消泡剤を、表4に示す割合(質量%)で、配合した舶用エンジン油組成物を調製し、台上エンジンを用い、シリンダーライナー、ピストンリングの腐食摩耗評価及びピストン清浄性評価を実施した。その結果を表4に示し、比較例9を1.0とした時の比で結果を示した。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
【発明の効果】
本発明の舶用エンジン油組成物は、特定の過塩基性硫化アルカリ土類金属フェネ−トおよび塩基価が異なる2種類の過塩基性硫化アルカリ土類金属サリシレ−トとを配合することにより、硫酸に対する腐食防止性を向上させたもので、高い清浄性をも有する。
本発明の舶用エンジン油組成物は、実用上極めて有用である。
Claims (1)
- 鉱油もしくは合成潤滑油あるいは両者の混合物の基油に、
(A)塩酸法で測定した塩基価および過塩素酸法で測定した塩基価がともに300〜400mgKOH/gであって、前者と後者との比が0.95以上である過塩基性アルカリ土類金属フェネ−トを1〜30質量%、
(B)塩基価が200mgKOH/gを越え350mgKOH/g以下の過塩基性アルカリ土類金属サリシレ−トを0.5〜15質量%、および
(C)塩基価が100〜200mgKOH/gの過塩基性アルカリ土類金属サリシレ−トを0.5〜15質量%含有させてなることを特徴とする舶用エンジン油組成物。
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