JPH10119615A - 車両の正面衝突対策用シート - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は車両の正面衝突対策用シートに関
し、車両の正面衝突によってステアリングやインパネと
シートバックとの間に挟まれた乗員が速やかに車両から
脱出し、又、乗員を速やかに救出することができる車両
の正面衝突対策用シートを提供することを目的とする。 【解決手段】 請求項１に係る車両の正面衝突対策用シ
ートは、シートバックの傾斜を調整するリクライニング
装置と、当該リクライニング装置によるシートバックの
ロック状態を解除するロック解除装置とを備え、ロック
解除装置は、正面衝突時の車両変形によるシートクッシ
ョンの取付角度の変化で作動することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、車両衝突時に於け
る乗員の安全と救出性の向上を図った車両の正面衝突対
策用シートに関する。

【０００２】

【従来の技術】車両衝突時の乗員の安全を図るため、従
来、車両用シートにはシートベルトが標準装備され、
又、昨今では、前席乗員の頭や胸の傷害を軽減する目的
でエアバックが広く普及し、多くの車両に装備されてい
る。ところで、従来、車両用シートは居住性を高め、
又、最適なドライビングポジションが得られるようにシ
ートクッションが前後方向へ移動調節可能となってお
り、又、シートバックの傾斜も調節することができるよ
うになっている。

【０００３】図８は従来周知のリクライニング装置の概
略を示し、このリクライニング装置１は、シートアッパ
フレーム３に取付ブラケット５を介して軸着したリクラ
イニングレバー７の操作でシートバック９の傾斜を調節
するもので、リクライニングレバー７の後部には、シー
トアッパフレーム３に装着したセクタギヤ１１に噛合す
るロックギヤ１３が設けられている。

【０００４】そして、シートアッパフレーム３とリクラ
イニングレバー７との間には、図示しないリターンスプ
リングが張架されており、当該リターンスプリングは、
セクタギヤ１１にロックギヤ１３が噛合する方向にリク
ライニングレバー７を常時付勢している。そして、乗員
が斯かるリターンスプリングのバネ力に抗してリクライ
ニングレバー７を矢印方向へ操作すると、セクタギヤ１
１とロックギヤ１３との噛合が解除されてシートバック
９のロックが解除されるようになっている。

【０００５】又、シートバック９と取付ブラケット５と
の間には、シートバック９を常時矢印Ａ方向に付勢する
スパイルスプリング（シートバックスプリング）１５が
取り付けられており、シートバック９のロックを解除す
ると、シートバック９は当該スパイルスプリング１５の
バネ力によって同方向へ倒れるようになっている。

【０００６】従って、乗員は斯様にスパイルスプリング
１５によって付勢されたシートバック９で身体を保持し
乍ら、シートバック９を後方（図中、矢印Ｂ方向）へ傾
けて任意の位置でリクライニングレバー７を離せば、リ
ターンスプリングの復元力でセクタギヤ１１とロックギ
ヤ１３が噛合してシートバック９が所定の角度でロック
されるようになっている。

【０００７】尚、図中、１７はシートアッパフレーム３
に取り付けられたシートクッションである。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】然し乍ら、従来、特に
キャブオーバー型トラックにあっては、他の車両や電柱
等に正面衝突してキャブフロアやメンバーが変形する
と、キャブ内に取り付けられたシート全体が前傾して、
乗員がステアリングやインストルメントパネルとシート
バックとの間に身体を挟まれてしまう虞があった。

【０００９】そして、この場合、シートバックのロック
状態を解除しないと乗員は車両から速やかに脱出でき
ず、又、乗員を速やかに救出することができないが、ス
テアリングやシート部分等の破損の程度により、或いは
又、乗員が意識を失っているような場合にはリクライニ
ング装置のロック解除が困難になる虞がある。本発明は
斯かる実情に鑑み案出されたもので、車両の正面衝突に
よってステアリングやインパネとシートバックとの間に
挟まれた乗員が速やかに車両から脱出し、又、乗員を速
やかに救出することができる車両の正面衝突対策用シー
トを提供することを目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】斯かる目的を達成するた
め、請求項１に係る車両の正面衝突対策用シートは、シ
ートバックの傾斜を調整するリクライニング装置と、当
該リクライニング装置によるシートバックのロック状態
を解除するロック解除装置とを備え、ロック解除装置
は、正面衝突時の車両変形によるシートクッションの取
付角度の変化で作動することを特徴とする そして、請求項２に係る発明は、請求項１記載の車両の
正面衝突対策用シートに於て、リクライニング装置は、
シートクッションが取り付くシートアッパフレームに装
着されたセクタギヤと、シートアッパフレームに取付ブ
ラケットを介して軸着され、上記セクタギヤに噛合する
ロックギヤが設けられたリクライニングレバーと、リク
ライニングレバーに軸着され、当該リクライニングレバ
ーに係止可能な突片が設けられた方向転換ブラケット
と、当該方向転換ブラケットとシートアッパフレームと
の間に張架され、上記突片を介してロックギヤをセクタ
ギヤに噛合させる方向にリクライニングレバーを常時付
勢するリターンスプリングと、シートバックと取付ブラ
ケットとの間に装着され、当該シートバックを常時前傾
方向に付勢するスパイルスプリングとで構成され、ロッ
ク解除装置は、上記方向転換ブラケットと車両の所定箇
所との間に接続されたワイヤからなり、当該ワイヤは、
シートクッションの取付角度の変化で上記方向転換ブラ
ケットをシートバックのロック方向と逆方向に回転させ
て、ロックギヤとセクタギヤとの噛合を解除させる方向
にリターンスプリングを作用させることを特徴とする。

【００１１】又、請求項３に係る発明は、請求項１記載
の車両の正面衝突対策用シートに於て、リクライニング
装置は、シートクッションが取り付くシートアッパフレ
ームに装着されたセクタギヤと、シートアッパフレーム
に取付ブラケットを介して軸着され、上記セクタギヤに
噛合するロックギヤが設けられたリクライニングレバー
と、リクライニングレバーの上縁部から上方へ突設さ
れ、先端にワイヤ係止片が設けられたワイヤレバーと、
当該ワイヤレバーとシートアッパフレームとの間に張架
され、ロックギヤをセクタギヤに噛合させる方向にリク
ライニングレバーを常時付勢するリターンスプリング
と、シートバックと取付ブラケットとの間に装着され、
当該シートバックを常時前傾方向に付勢するスパイルス
プリングとで構成され、ロック解除装置は、上記ワイヤ
レバーと車両の所定箇所との間に接続されたワイヤから
なり、当該ワイヤは、シートクッションの取付角度の変
化で上記リクライニングレバーをシートバックのロック
解除方向に移動させて、ワイヤレバーとリターンスプリ
ングの一端側との係止状態を解除し、上記ワイヤ係止片
に係止可能となっていることを特徴とする。

【００１２】更に又、請求項４に係る発明は、請求項１
記載の車両の正面衝突対策用シートに於て、リクライニ
ング装置は、シートクッションが取り付くシートアッパ
フレームに装着されたセクタギヤと、シートアッパフレ
ームに取付ブラケットを介して軸着され、上記セクタギ
ヤに噛合するロックギヤが設けられたリクライニングレ
バーと、リクライニングレバーに軸着され、当該リクラ
イニングレバーに係止可能な突片が設けられた方向転換
ブラケットと、当該方向転換ブラケットとシートアッパ
フレームとの間に張架され、上記突片を介してロックギ
ヤをセクタギヤに噛合させる方向にリクライニングレバ
ーを常時付勢するリターンスプリングと、シートバック
と取付ブラケットとの間に装着され、当該シートバック
を常時前傾方向に付勢するスパイルスプリングとで構成
され、ロック解除装置は、シートクッションの取付角度
の変化を検知する角度検出手段と、ワイヤを介して上記
方向転換ブラケットをシートバックのロック方向と逆方
向に回転させてロックギヤとセクタギヤとの噛合を解除
させる方向にリターンスプリングを作用させるモータ
と、角度検出手段による信号を入力して上記モータを作
動させるタイムリレーとからなることを特徴としてい
る。

【００１３】そして、請求項５に係る発明は、請求項１
記載の車両の正面衝突対策用シートに於て、リクライニ
ング装置は、シートクッションが取り付くシートアッパ
フレームに装着されたセクタギヤと、シートアッパフレ
ームに取付ブラケットを介して軸着され、上記セクタギ
ヤに噛合するロックギヤが設けられたリクライニングレ
バーと、リクライニングレバーの上縁部から上方へ突設
され、先端にワイヤ係止片が設けられたワイヤレバー
と、ワイヤレバーとシートアッパフレームとの間に張架
され、ロックギヤをセクタギヤに噛合させる方向にリク
ライニングレバーを常時付勢するリターンスプリング
と、シートバックと取付ブラケットとの間に装着され、
当該シートバックを常時前傾方向に付勢するスパイルス
プリングとで構成され、ロック解除装置は、シートクッ
ションの取付角度の変化を検知する角度検出手段と、上
記リクライニングレバーをワイヤを介してシートバック
のロック解除方向に移動させてワイヤレバーとリターン
スプリングの一端側との係止状態を解除させるモータ
と、角度検出手段による信号を入力して上記モータを作
動させるタイムリレーとからなり、ワイヤは、ワイヤ係
止片に係止可能であることを特徴とする。

【００１４】又、請求項６に係る発明は、請求項１記載
の車両の正面衝突対策用シートに於て、リクライニング
装置は、車室内のスイッチ操作によるモータの作動でシ
ートバックの傾斜を調整するパワーシートからなり、ロ
ック解除装置は、シートクッションの取付角度の変化を
検知する角度検出手段と、当該角度検出手段による信号
を入力し、上記モータを作動させてシートバックを後方
に傾斜させるタイムリレーとからなることを特徴として
いる。

【００１５】（作用）請求項１に係る発明によれば、車
両が正面衝突してシートクッションの取付角度が変化す
ると、ロック解除装置がシートバックのロック状態を解
除する。そして、請求項２に係る発明では、車両が正面
衝突してシートクッションの取付角度が変化すると、ワ
イヤが方向転換ブラケットをシートバックのロック方向
と逆方向に回転させて、ロックギヤとセクタギヤとの噛
合を解除させる方向にリターンスプリングを作用させる
ので、シートバックのロック状態が解除される。そし
て、リターンスプリングがシートバックのロック解除状
態を保持することとなる。

【００１６】又、請求項３に係る発明では、車両が正面
衝突してシートクッションの取付角度が変化すると、ワ
イヤがリクライニングレバーをシートバックのロック解
除方向に移動させ、ワイヤレバーとリターンスプリング
との係止状態を解除してリターンスプリングを失効させ
る。そして、請求項４に係る発明では、シートクッショ
ンの取付角度の変化を検知した角度検出手段がタイムリ
レーに信号を送ると、当該タイムリレーがモータを作動
させ、当該モータがワイヤを介して方向転換ブラケット
をシートバックのロック方向と逆方向に回転させて、ロ
ックギヤとセクタギヤとの噛合を解除させる方向にリタ
ーンスプリングを作用させることとなる。

【００１７】又、請求項５に係る発明にあっては、シー
トクッションの取付角度の変化を検知した角度検出手段
がタイムリレーに信号を送ると、当該タイムリレーがモ
ータを作動させる。そして、モータは、ワイヤを介して
リクライニングレバーをシートバックのロック解除方向
に移動させてワイヤレバーとリターンスプリングの一端
側との係止状態を解除させることとなる。

【００１８】更に又、請求項６に係る発明では、シート
クッションの取付角度の変化を検知した角度検出手段が
タイムリレーに信号を送ると、当該タイムリレーがモー
タを作動させてシートバックのロックを解除してこれを
後方に傾斜させることとなる。

【００１９】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に
基づき詳細に説明する。尚、図８に示す従来例と同一の
ものは同一符号を付してそれらの説明は省略する。

【００２０】図１乃至図３は請求項１及び請求項２に係
る正面衝突対策用シートの一実施形態を示し、図１中、
１９はキャブオーバー型トラックのキャブ内に装備され
た正面衝突対策用シート（以下、「シート」という）
で、当該シート１９は、従来と同様、シートライザ（図
示せず）を介してキャブフロアに取り付けられている。
そして、シート１９には、既述したリクライニング装置
１と略同一構造のリクライニング装置２１が装着されて
おり、乗員がリクライニングレバー７を矢印Ｃ方向へ操
作すると、セクタギヤ１１とロックギヤ１３との噛合が
解除されてシートバック９のロックが解除されるように
なっている。

【００２１】従って、乗員はロック解除後、スパイルス
プリング１５で付勢されたシートバック９で身体を保持
し乍ら、シートバック９を後方（図中、矢印Ｂ方向）へ
傾けて任意の位置でリクライニングレバー７を離せば、
図２に示すようにリクライニングレバー７がリターンス
プリングの復元力で矢印Ｄ方向へ復帰するので、セクタ
ギヤ１１とロックギヤ１３が噛合してシートバック９が
所定の角度でロックされるようになっている。

【００２２】ところで、図２及び図３に示すように本実
施形態は、リクライニングレバー７の外側に取付軸２３
を介してステー状の方向転換ブラケット２５を軸着し、
当該方向転換ブラケット２５の先端側とシートアッパフ
レーム３との間に、コイルスプリングからなるリターン
スプリング２７を架け渡している。そして、方向転換ブ
ラケット２５には、リクライニングレバー７の下側縁部
に係止可能な突片２９が内方へ突設されており、図２で
示す位置に方向転換ブラケット２５があるとき、リクラ
イニングレバー７はその下側縁部に係止した方向転換ブ
ラケット２５の突片２９を介して、リターンスプリング
２７のバネ力でシートバック９のロック方向（図中、矢
印Ｄ方向）に常時付勢された構造となっている。

【００２３】そして、本実施例に係るシート１９は、ト
ラックの正面衝突で図３に示すようにシート１９全体が
前傾してシートクッション１７の取付角度が変化したと
き、シートバック９のロック状態を解除するロック解除
装置３１を設けたことを特徴としている。ロック解除装
置３１は、図２に示すように方向転換ブラケット２５の
先端と図示しないシートライザ下部のフロアパネルとの
間に所定の寸法を以って接続された接続された１本のワ
イヤ３３からなり、正面衝突時のキャブフロアやメンバ
ーの変形でシート１９全体が図３の如く前傾して、シー
トクッション１７の取付角度が通常の走行状態から変化
すると、ワイヤ３３が矢印Ｅ方向へ引っ張られ、そし
て、これに連動して方向転換ブラケット２５が矢印Ｆ方
向に回転するようになっている。

【００２４】そして、図３に示すように方向転換ブラケ
ット２５が、リターンスプリング２７の一方の取付端
（図中、Ｇ点）と取付軸２７（図中、Ｈ点）とを結ぶ分
岐線Ｉを越えて二点鎖線で示す位置から実線で示す位置
へと回転すると、方向転換ブラケット２５の突片２９が
リクライニングレバー７に係止し、そして、リターンス
プリング２７はリクライニングレバー７をロックギヤ１
３とセクタギヤ１１との噛合が解除される方向、即ち、
シートバック９のロックを解除する方向に付勢するよう
になっている。

【００２５】本実施形態はこのように構成されているか
ら、従来と同様、乗員が図１の如くリクライニングレバ
ー７を矢印Ｃ方向へ操作してセクタギヤ１１とロックギ
ヤ１３との噛合を解除すれば、シートバック９のロック
状態が解除される。そして、乗員はロック解除後、スパ
イルスプリング１５で付勢されたシートバック９で身体
を保持し乍ら、シートバック９を後方へ傾けて任意の位
置でリクライニングレバー７を離せば、リターンスプリ
ング２７の復元力でリクライニングレバー７が矢印Ｄ方
向へ復帰するので、セクタギヤ１１とロックギヤ１３が
噛合してシートバック９が所定の角度でロックされるこ
ととなる。

【００２６】そして、トラックの正面衝突でキャブフロ
アやメンバーが変形してシート１９全体が前方へ傾く
と、図３に示すようにワイヤ３３が矢印Ｅ方向へ引っ張
られて方向転換ブラケット２５が矢印Ｆ方向へ回転す
る。そして、当該方向転換ブラケット２５が、上記分岐
線Ｉを越えて実線で示すように回転すると、当該方向転
換ブラケット２５の突片２９がリクライニングレバー７
に係止して、リターンスプリング２７がリクライニング
レバー７をロックギヤ１３とセクタギヤ１１との噛合を
解除する。そして、リターンスプリング２７は、常時、
シートバック９のロック解除方向にリクライニングレバ
ー７を付勢するため、シートバック９の再ロックが防止
される。

【００２７】従って、乗員はロック解除されたシートバ
ック９を後方に倒してキャブから脱出し、又、乗員を救
助する者は、シートバック９を後方に倒すことで生存空
間を確保することができる。このように、本実施形態
は、トラックの正面衝突によるシートクッション１７の
取付角度の変化を利用してシートバック９のロック状態
を解除し、且つ再ロックを防止するように構成したの
で、シートバック９とステアリングやインパネとの間に
挟まれた乗員の安全と救出性が図られることとなった。

【００２８】そして、本実施形態によれば、トラックの
衝突とシートバック９のロック解除との間に機械反応に
よる時間差があるため、シートバック９のロック解除に
よって乗員が首等を痛める虞もない。尚、上記実施形態
では、ワイヤ３３を方向転換ブラケット２５の先端とキ
ャブフロアとの間に架け渡したが、例えば従来周知の角
度センサをシート１９（シートクッション１７）に装着
し、そして、この信号を入力した制御手段の指令でアク
チュエータがワイヤ３３を矢印Ｅ方向へ引っ張って、シ
ートバック９のロック状態を解除するようにしてもよ
く、斯かる構成によっても、上記実施形態と同様、所期
の目的を達成することが可能である。

【００２９】図４乃至図６は請求項１及び請求項３に係
るシートの一実施形態を示し、以下、本実施形態を図面
に基づき説明するが、上記実施形態と同一のものには同
一符号を付してそれらの説明は省略する。図中、３５は
取付ブラケット５を介してシートアッパフレーム３に軸
着されたリクライニングレバーで、既述したリクライニ
ングレバー７と同様、その後部にはセクタギヤ１１に噛
合するロックギヤ１３が設けられている。

【００３０】又、図５に示すようにリクライニングレバ
ー３５の上縁部には、先端にワイヤ係止片３７が前方へ
突出するワイヤレバー３９が上方へ突設されており、当
該ワイヤレバー３９とシートアッパフレーム３との間に
リターンスプリング２７が取り付けられている。そし
て、上記リターンスプリング２７も、セクタギヤ１１に
ロックギヤ１３が噛合する方向にリクライニングレバー
３５を常時付勢しており、斯かるリターンスプリング３
５のバネ力に抗してリクライニングレバー７を、矢印Ｃ
方向へ操作すると、セクタギヤ１１とロックギヤ１３と
の噛合が解除されてシートバック９のロックが解除され
るようになっている。

【００３１】尚、上記リターンスプリング２７は、一端
がワイヤレバー３９の後部３９ａ側に係止されている。
本実施形態に係るシート４１に装着したリクライニング
装置４３はこのように構成されているが、本実施形態に
あっても、トラックの正面衝突でシート４１全体が前傾
してシートクッション１７の取付角度が変化したとき、
シートバック９のロック状態を解除するロック解除装置
４５を設けたことを特徴とする。

【００３２】本実施形態に於けるロック解除装置４５
も、図５に示すように上記ワイヤレバー３９の前部３９
ｂ側と図示しないキャブのバックパネルとの間に所定の
寸法を以って接続された１本のワイヤ３３で構成されて
いるが、当該ワイヤ３３はリターンスプリング２７とワ
イヤレバー２９の係止位置よりもワイヤレバー２９の基
部側に掛け渡されている。

【００３３】そして、図６に示すようにトラックの正面
衝突時の車両変形でシート４１全体が前傾してシートク
ッション１７の取付角度が変化すると、一定の寸法に設
定されているワイヤ３３が矢印Ｊ方向へ引っ張られてリ
クライニングレバー３５を図６の二点鎖線で示す位置か
ら実線で示す位置へ回転させつつ、ワイヤレバー３９の
前部３９ｂを上方へ摺動し乍らターンスプリング２７を
上方に押し上げて、ワイヤレバー３９との係止状態を解
除するようになっている。

【００３４】そのため、リターンスプリング２７の一端
側はフリーとなるため、リターンスプリング２７のバネ
力が失効してシートバック９の再ロックが防止されるよ
うになっている。尚、ワイヤ３３はリターンスプリング
２７を失効させた後、ワイヤレバー３９先端のワイヤ係
止片３７に係止して、ワイヤレバー３９へのリターンス
プリング２７の再係止を防止する。

【００３５】而して、本実施形態によっても、トラック
の正面衝突事故でシートクッション１７が前方へ傾く
と、ロック解除装置４５がシートバック９のロック状態
を解除し、且つ再ロックを防止するので、乗員の安全と
救出が図れることとなった。そして、本実施形態にあっ
ても、トラックの衝突とシートバック９のロック解除と
の間に機械反応による時間差があるため、シートバック
９のロック解除によって乗員が首等を痛める虞もない。

【００３６】尚、本実施形態にあっても、従来周知の角
度センサをシート４１（シートクッション１７）に装着
し、この信号を入力した制御手段の指令でアクチュエー
タがワイヤ３３を矢印Ｊ方向に引っ張って、シートバッ
ク９のロック状態を解除するようにしてもよく、斯かる
構成によっても上記実施形態と同様、所期の目的を達成
することが可能である。

【００３７】ところで、図示しないが、従来、車両用シ
ートのリクライニング装置として、上述した各実施形態
や従来例のリクライニング装置１，２１，４３の他に、
車室内のスイッチ操作によるモータの作動でシートバッ
クの傾斜を調整するパワーシートが知られているが、斯
かるパワーシートを用いたものにあっては、請求項１及
び請求項６に係る発明の一実施形態のように、例えばシ
ートにシートクッションの取付角度の変化を検知する角
度検出手段として角度センサを装着し、当該角度センサ
による信号を入力して、モータを作動させてシートバッ
クを後方に傾斜させるタイムリレーとでロック解除装置
を形成してもよい。

【００３８】更に又、従来、車両用シートのシートスラ
イド調整装置として、車室内のスイッチ操作によるモー
タの作動でシートクッションを前後方向にスライド調整
するパワーシートが知られているが、斯かるパワーシー
トを用いたものにあっては、シートバックと共に、シー
トクッションをモータの作動で同時に後方へスライドさ
せてもよい。

【００３９】そして、図１乃至図６の各実施形態では、
トラックの衝突とシートバック９のロック解除との間に
機械反応による時間差があるため、シートバック９のロ
ック解除によって乗員が首を痛める虞は虞はないが、請
求項１及び請求項６の一実施形態の如く電気的にシート
バックのロック解除を行う場合には、上記各実施形態の
如きトラックの衝突とシートバックのロック解除との間
に時間差が殆どないため、タイムリレーを用いて積極的
にトラックの衝突とシートバックのロック解除との間に
時間差を設けることが必要となる。

【００４０】又、図７に示す請求項１及び請求項４又は
請求項１及び請求項５の実施形態のように、図１及び図
５の両実施形態に於て方向転換ブラケット２５やワイヤ
レバー３９に接続したワイヤ３３と、角度センサ４７及
び上述したタイムリレー４９やモータ５１とでロック解
除装置５３を構成し、トラックの正面衝突による車両変
形でシート全体が前傾してシートクッションの取付角度
が変化したとき、当該角度センサ４９がタイムリレー４
９に信号を送ってモータ５１を作動させて、方向転換ブ
ラケット２５やワイヤレバー３９をワイヤ３３を介して
ロック解除方向へ操作するようにしてもよい。

【００４１】尚、図７中、５５はモータ５１のモータ軸
５１ａに取り付くウォームホイール、５７は当該ウォー
ムホイール５５に噛合するウォームで、ウォーム５７が
取り付く回転軸５９に上記ワイヤ３３が接続，巻回され
ている。而して、本実施形態によっても、上述した各実
施形態と同様、所期の目的を達成することが可能であ
る。

【００４２】そして、上記各実施形態は、キャブオーバ
ー型トラックの車両用シートに各請求項に係る発明を適
用したが、これらの発明はワンボックスカーや乗用車を
始めとしてあらゆる車両用シートに適用することが可能
である。

【００４３】

【発明の効果】以上述べたように、各請求項に係る発明
によれば、車両の正面衝突でシート全体が前方へ傾いて
乗員がステアリングやインパネとシートバックとの間に
身体が挟まれても、ロック解除装置がシートバックのロ
ック状態を解除するので、乗員の安全と救出が図られる
こととなった。

【００４４】然も、これらの発明によれば、車両の衝突
とシートバックのロック解除との間に時間差があるた
め、シートバックのロック解除によって乗員が首を痛め
る等の虞もない。

【図面の簡単な説明】

【図１】請求項１及び請求項２の一実施形態に係るシー
トの斜視図である。

【図２】図１のシートに装着したリクライニング装置の
動作説明図である。

【図３】図１のシートに装着したロック解除装置の動作
説明図である。

【図４】請求項１及び請求項３の一実施形態に係るシー
トの斜視図である。

【図５】図４のシートに装着したリクライニング装置の
説明図である。

【図６】図４のシートに装着したロック解除装置の動作
説明図である。

【図７】請求項１及び請求項４又は請求項１及び請求項
５の一実施形態に於けるロック解除装置の概略図であ
る。

【図８】従来のリクライニング装置を装着した車両用シ
ートの斜視図である。

【符号の説明】

３ シートアッパフレーム ５ 取付ブラケット ７，３５ リクライニングレバー ９ シートバック １１ セクタギヤ １３ ロックギヤ １５ スパイルスプリング １７ シートクッション １９，４１ シート ２１，４３ リクライニング装置 ２５ 方向転換ブラケット ２７ リターンスプリング ２９ 突片 ３１，４５，５３ ロック解除装置 ３３ ワイヤ ３７ ワイヤ係止片 ３９ ワイヤレバー ４７ 角度センサ ４９ タイムリレー ５１ モータ

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シートバックの傾斜を調整するリクライ
   ニング装置と、当該リクライニング装置によるシートバ
   ックのロック状態を解除するロック解除装置とを備え、
   ロック解除装置は、正面衝突時の車両変形によるシート
   クッションの取付角度の変化で作動することを特徴とす
   る車両の正面衝突対策用シート。
2. 【請求項２】 リクライニング装置は、シートクッショ
   ンが取り付くシートアッパフレームに装着されたセクタ
   ギヤと、 シートアッパフレームに取付ブラケットを介して軸着さ
   れ、上記セクタギヤに噛合するロックギヤが設けられた
   リクライニングレバーと、 リクライニングレバーに軸着され、当該リクライニング
   レバーに係止可能な突片が設けられた方向転換ブラケッ
   トと、 当該方向転換ブラケットとシートアッパフレームとの間
   に張架され、上記突片を介してロックギヤをセクタギヤ
   に噛合させる方向にリクライニングレバーを常時付勢す
   るリターンスプリングと、 シートバックと取付ブラケットとの間に装着され、当該
   シートバックを常時前傾方向に付勢するスパイルスプリ
   ングとで構成され、 ロック解除装置は、上記方向転換ブラケットと車両の所
   定箇所との間に接続されたワイヤからなり、 当該ワイヤは、シートクッションの取付角度の変化で上
   記方向転換ブラケットをシートバックのロック方向と逆
   方向に回転させて、ロックギヤとセクタギヤとの噛合を
   解除させる方向にリターンスプリングを作用させること
   を特徴とする請求項１記載の車両の正面衝突対策用シー
   ト。
3. 【請求項３】 リクライニング装置は、シートクッショ
   ンが取り付くシートアッパフレームに装着されたセクタ
   ギヤと、 シートアッパフレームに取付ブラケットを介して軸着さ
   れ、上記セクタギヤに噛合するロックギヤが設けられた
   リクライニングレバーと、 リクライニングレバーの上縁部から上方へ突設され、先
   端にワイヤ係止片が設けられたワイヤレバーと、 当該ワイヤレバーとシートアッパフレームとの間に張架
   され、ロックギヤをセクタギヤに噛合させる方向にリク
   ライニングレバーを常時付勢するリターンスプリング
   と、 シートバックと取付ブラケットとの間に装着され、当該
   シートバックを常時前傾方向に付勢するスパイルスプリ
   ングとで構成され、 ロック解除装置は、上記ワイヤレバーと車両の所定箇所
   との間に接続されたワイヤからなり、 当該ワイヤは、シートクッションの取付角度の変化で上
   記リクライニングレバーをシートバックのロック解除方
   向に移動させて、ワイヤレバーとリターンスプリングの
   一端側との係止状態を解除し、上記ワイヤ係止片に係止
   可能となっていることを特徴とする請求項１記載の車両
   の正面衝突対策用シート。
4. 【請求項４】 リクライニング装置は、シートクッショ
   ンが取り付くシートアッパフレームに装着されたセクタ
   ギヤと、 シートアッパフレームに取付ブラケットを介して軸着さ
   れ、上記セクタギヤに噛合するロックギヤが設けられた
   リクライニングレバーと、 リクライニングレバーに軸着され、当該リクライニング
   レバーに係止可能な突片が設けられた方向転換ブラケッ
   トと、 当該方向転換ブラケットとシートアッパフレームとの間
   に張架され、上記突片を介してロックギヤをセクタギヤ
   に噛合させる方向にリクライニングレバーを常時付勢す
   るリターンスプリングと、 シートバックと取付ブラケットとの間に装着され、当該
   シートバックを常時前傾方向に付勢するスパイルスプリ
   ングとで構成され、 ロック解除装置は、シートクッションの取付角度の変化
   を検知する角度検出手段と、 ワイヤを介して上記方向転換ブラケットをシートバック
   のロック方向と逆方向に回転させてロックギヤとセクタ
   ギヤとの噛合を解除させる方向にリターンスプリングを
   作用させるモータと、 角度検出手段による信号を入力して上記モータを作動さ
   せるタイムリレーとからなることを特徴とする請求項１
   記載の車両の正面衝突対策用シート。
5. 【請求項５】 リクライニング装置は、シートクッショ
   ンが取り付くシートアッパフレームに装着されたセクタ
   ギヤと、 シートアッパフレームに取付ブラケットを介して軸着さ
   れ、上記セクタギヤに噛合するロックギヤが設けられた
   リクライニングレバーと、 リクライニングレバーの上縁部から上方へ突設され、先
   端にワイヤ係止片が設けられたワイヤレバーと、 ワイヤレバーとシートアッパフレームとの間に張架さ
   れ、ロックギヤをセクタギヤに噛合させる方向にリクラ
   イニングレバーを常時付勢するリターンスプリングと、 シートバックと取付ブラケットとの間に装着され、当該
   シートバックを常時前傾方向に付勢するスパイルスプリ
   ングとで構成され、 ロック解除装置は、シートクッションの取付角度の変化
   を検知する角度検出手段と、 上記リクライニングレバーをワイヤを介してシートバッ
   クのロック解除方向に移動させてワイヤレバーとリター
   ンスプリングの一端側との係止状態を解除させるモータ
   と、 角度検出手段による信号を入力して上記モータを作動さ
   せるタイムリレーとからなり、 ワイヤは、ワイヤ係止片に係止可能であることを特徴と
   する請求項１記載の車両の正面衝突対策用シート。
6. 【請求項６】 リクライニング装置は、車室内のスイッ
   チ操作によるモータの作動でシートバックの傾斜を調整
   するパワーシートからなり、 ロック解除装置は、シートクッションの取付角度の変化
   を検知する角度検出手段と、 当該角度検出手段による信号を入力し、上記モータを作
   動させてシートバックを後方に傾斜させるタイムリレー
   とからなることを特徴とする請求項１記載の車両の正面
   衝突対策用シート。