JPH10113169A - 細菌の生産する青紫色素とその染色剤及び着色添加剤としての利用法 - Google Patents

細菌の生産する青紫色素とその染色剤及び着色添加剤としての利用法

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JPH10113169A
JPH10113169A JP8268452A JP26845296A JPH10113169A JP H10113169 A JPH10113169 A JP H10113169A JP 8268452 A JP8268452 A JP 8268452A JP 26845296 A JP26845296 A JP 26845296A JP H10113169 A JPH10113169 A JP H10113169A
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bioracein
dyeing
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dye
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Akira Shirata
昭 白田
Yoshitaka Tsukamoto
貴敬 塚本
Hiroshi Kato
弘 加藤
Tamako Hata
珠子 秦
Hiroe Yasui
拓恵 安居
Atsushi Kojima
篤 小島
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NORIN SUISANSYO SANSHI KONCHU
NORIN SUISANSYO SANSHI KONCHU NOGYO GIJUTSU KENKYUSHO
Original Assignee
NORIN SUISANSYO SANSHI KONCHU
NORIN SUISANSYO SANSHI KONCHU NOGYO GIJUTSU KENKYUSHO
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 本発明は、バイオラセインもしくはその
誘導体を効率よく生産する微生物、並びに、バイオラセ
インもしくはその誘導体を利用した染色剤、食品着色
剤、化粧品着色剤、及び染色方法。 【効果】 絹や綿を穏やかな青紫の色調で染色できる新
規な染色手段、並びに食品及び化粧品を青紫色に着色す
る新規な手段を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、バイオラセインも
しくはその誘導体を効率よく生産する微生物、並びに、
バイオラセインもしくはその誘導体を利用した染色剤、
食品着色剤、化粧品着色剤、及び染色方法に関する。
【0002】
【従来の技術】衣料の染色には化学的に合成された色素
が多く使用されている。しかし、最近は健康指向が強ま
り、穏やかな風合いで染色される天然色素に人気が集ま
っている。特に草木染めはブームになっており、植物の
色素を組織培養によって大量生産する技術も確立されて
いる。しかし、細菌(微生物)が生産する青紫系統の実
用的色素については見出されていない。紫系統の天然色
素としてはアクアガイから採取されるカイムラサキが知
られているが、高価であり大量生産も困難であるため、
極めて小規模の染色しか行なわれていないのが現状であ
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
な現状に鑑み、細菌の生産する天然色素を利用して穏や
かな風合いをもった青紫色に染色する手段を提供すると
ともに、該天然色素を利用した染色剤、食品着色剤及び
化粧品着色剤を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく鋭意研究の結果、青色に変色した屑繭から
単離した細菌株の生産する青紫色素が、色調、染色性及
び熱湯や摩擦等の堅牢性に優れ、染色成分として非常に
優れた性質を有すること、並びに当該色素が生物に対し
て毒性を示さないことを見出し、これらの知見により本
発明を完成した。
【0005】即ち、本発明の第一は、バイオラセインも
しくはその誘導体を効率よく生産するジャンシノバクテ
リウム・リビダムS9601 株である。本発明の第二は、バ
イオラセインもしくはその誘導体を有効成分として含有
することを特徴とする染色剤である。
【0006】本発明の第三は、バイオラセインもしくは
その誘導体を有効成分として含有することを特徴とする
食品着色剤である。本発明の第四は、バイオラセインも
しくはその誘導体を有効成分として含有することを特徴
とする化粧品着色剤である。本発明の第五は、バイオラ
セインもしくはその誘導体により染色することを特徴と
する染色方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、上記発明を各発明ごとに説
明する。 (1)ジャンシノバクテリウム・リビダムS9601 株 S9601 株は、屑繭および汚染絹糸から単離した細菌の中
から色素生産性の優れた菌株の代表として選抜されたも
のであり、細菌学的性質は以下の通りである。
【0008】グラム陰性の好気性桿菌で、鞭毛を有し運
動性がある。ジャガイモ半合成寒天培地上では、平滑で
全縁のコロニーを形成し、数日後に青紫色を呈する。硝
酸塩の還元能、β−グルコシダーゼ活性およびオキシダ
ーゼ活性は陽性だが、アルギニンジヒドロラーゼ活性、
ウレアーゼ活性、β−ガラクトシダーゼ活性、ゼラチナ
ーゼ活性、インドール産生およびVP反応は陰性であ
る。グルコース、L−アラビノース、マルトース、D−
マンノース、D−マンニトール、dl−リンゴ酸を好気的
に利用する。以上の性質をバーゲーズマニュアルに基づ
き検索を行った結果、当該菌株をジャンシノバクテリウ
ム・リビダム(Janthinobacterium lividum) に属する
ものと同定した。この菌株は、工業技術院生命工学技術
研究所に寄託番号 FERM P-15894 (寄託日平成8年10月
4日)として寄託されている。
【0009】S9601 株の培養には、特別の方法を用いる
必要はなく、公知の好気性細菌と同様の方法を用いるこ
とができる。培地としては、資化可能な炭素源、窒素
源、無機物及び必要な生育促進物質を適当に含む培地で
あれば、合成培地、天然培地いずれも使用できる。具体
的な培地を例示すると、ジャガイモ半合成培地、キング
B培地、ペプトン培地、ジャガイモ蔗糖培地、繭糸煮汁
培地などを挙げることができる。ただし、色素の生産性
は培地によって著しく異なり、ジャガイモ半合成培地が
最適であり、次いで繭糸煮汁培地が良好である。培養に
際しては、温度を5〜30℃、好ましくは20〜25℃、pHを
6.0〜8.0、好ましくは7.0〜7.5に維持することが望
ましい。なお、色素生産は30℃以上では行なわれず、15
℃以下では劣り、最適温度は20〜25℃である。ジャガイ
モ半合成培地で培養すると、1〜2日で白色のコロニー
を形成し、2〜3日後にコロニー内に青紫色の色素が蓄
積され始め、5〜6日で濃い青紫色に変化する。S9601
株は、染色剤等として有用なバイオラセインもしくはそ
の誘導体を製造するために使用することができる。
【0010】(2)染色剤 本発明の染色剤は、バイオラセインもしくはその誘導体
(以下、単に「バイオラセイン等」という)を有効成分
として含有する。ここで用いられるバイオラセインの誘
導体は、バイオラセインと類似した分子構造を持ち、青
紫色を呈するものであれば特に限定されないが、アルテ
ロモナス・ルテオバイオラセア(Alteromonas luteovio
lacea) 、クロモバクテリウム・バイオラセイウム(Chr
omobacterium violaceum)、又はジャンシノバクテリウ
ム・リビダムに属する微生物によって生産されるものが
好ましく、ジャンシノバクテリウム・リビダム S9601株
によって生産されるものが特に好ましい。また、バイオ
ラセイン等は、微生物によって生産されるものが好まし
いが、これに限定されず、化学的に合成されたものであ
ってもよい。
【0011】本発明の染色剤は、バイオラセイン等を生
産し得る微生物を培養し、その菌体から有機溶媒を用い
てバイオラセイン等を含む成分を抽出後、有機溶媒を除
去することにより製造される。バイオラセイン等を生産
し得る微生物としては、アルテロモナス・ルテオバイオ
ラセア、クロモバクテリウム・バイオラセイウム、ジャ
ンシノバクテリウム・リビダムに属する微生物を挙げる
ことができる。これらの微生物のうち、ジャンシノバク
テリウム・リビダム S9601株は、前記の工業技術院生命
工学技術研究所から入手することができ、これ以外の菌
株は、所定の保存機関、例えば、アメリカン・タイプ・
カルチャー・コレクション(ATCC)などから入手で
きる。また、 S9601株類似細菌は、以下のような方法に
より取得できる。まず、屑繭および汚染絹糸を湿らせ15
〜25℃に保つ。1週間後、青紫色に変化してきた部分に
は目的の細菌が増殖したと判断し、そこから常法により
単コロニー分離を行なう。ただし、培地の種類によって
青紫色の生産性は著しく異なるので、平板培地には色素
生産性の良いジャガイモ半合成培地(ジャガイモ塊茎 3
00g の煎汁1L 、Ca(NO3)2・4H2O 0.5g, Na2HPO4 ・12H2O
2g,ペプトン 5g,スクロース 15g, 寒天 15g) を用い
る。得られた細菌コロニーの中から、濃い青紫色を呈す
るコロニーを色素生産細菌株として選抜する。これによ
り、 S9601株と同等のバイオラセイン等生産性を有する
菌株を得ることができる。分離細菌の培養は、「(1)
ジャンシノバクテリウム・リビダムS9601 株」の欄で述
べたS9601 株の培養法に準じて行うことができる。抽出
に用いる有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、メタ
ノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、ジエチル
エーテル、ブタノール等を例示することができ、これら
の中でもテトラヒドロフランが好ましい。バイオラセイ
ン等の抽出は、培養が完了した培地から菌体をかきと
り、シャーレ等の容器に広げ、前記した有機溶媒で2〜
3度抽出することにより行う。
【0012】本発明の染色剤は、有機溶媒に溶解させて
使用する。ここで用いる有機溶媒としては、メタノー
ル、エタノール、アセトン、酢酸エチル等を例示するこ
とができ、これらの中でもメタノール、又はエタノール
が好ましい。有機溶媒中に溶解させるバイオラセイン等
の量は、染めようとする色の濃さ、染色しようとする繊
維の種類、染色時間、染色補助剤の有無などに応じて決
めればよいが、有機溶媒中のバイオラセイン等の濃度が
0.1〜0.5%程度になるようにするのが好ましい。
また、染色に際しては、染色補助剤を併用することもで
きる。本発明の染色剤は、例えば、絹、木綿など動物・
植物由来の繊維の染色に使用することができる。染色時
間は、染めようとする色の濃さ、染めようとする繊維の
種類、染色剤中のバイオラセイン等の濃度、染色補助剤
の有無などに応じて決めればよいが、通常は、12〜2
4時間程度とするのが好ましい。
【0013】(3)食品着色剤 本発明の食品着色剤は、バイオラセイン等を有効成分と
して含有する。ここで用いられるバイオラセイン等は、
「(2)染色剤」の欄で述べたものと同様のものが使用
できる。
【0014】本発明の食品着色剤は、バイオラセイン等
を生産し得る微生物を培養し、その菌体から有機溶媒を
用いてバイオラセイン等を含む成分を抽出した後、有機
溶媒を除去することにより製造される。微生物及び有機
溶媒は、「(2)染色剤」の欄で述べたものと同様のも
のが使用できる。
【0015】本発明の食品着色剤は、例えば、菓子類、
ソフトクリーム、パン、麺など各種食品に使用すること
ができる。食品中への添加量は、着色すべき食品の種類
に応じて決めればよいが、食品中の含量が0.005〜
0.05%程度にするのが好ましい。なお、バイオラセ
イン等は、実施例で示すように植物病原細菌、植物病原
糸状菌及び昆虫組織由来の培養細胞に対し全く毒性を示
さないので、本発明の食品着色剤は、非常に安全性が高
いと考えられる。
【0016】(4)化粧品着色剤 本発明の化粧品着色剤は、バイオラセイン等を有効成分
として含有する。ここで用いられるバイオラセイン等
は、「(2)染色剤」の欄で述べたものと同様のものが
使用できる。
【0017】本発明の化粧品着色剤は、バイオラセイン
等を生産し得る微生物を培養し、その菌体から有機溶媒
を用いてバイオラセイン等を含む成分を抽出した後、有
機溶媒を除去することにより製造される。微生物及び有
機溶媒は、「(2)染色剤」の欄で述べたものと同様の
ものが使用できる。
【0018】本発明の化粧品着色剤は、例えば、アイシ
ャドウ、紫外線防止クリーム、口紅などの各種化粧品に
使用することができる。化粧品中への添加量は、着色す
べき化粧品の種類に応じて決めればよいが、化粧品中の
含量が0.01〜0.5%程度にするのが好ましい。な
お、バイオラセイン等は、実施例で示すように植物病原
細菌、植物病原糸状菌及び昆虫組織由来の培養細胞に対
し全く毒性を示さないので、本発明の化粧品着色剤は、
非常に安全性が高いと考えられる。
【0019】(5)染色方法 本発明の染色方法は、バイオラセイン等を用いて染色す
る。ここで用いられるバイオラセイン等は、「(2)染
色剤」の欄で述べたものと同様のものが使用できる。具
体的な染色方法としては、菌液染色法と有機溶媒染色法
の2通りの方法を例示することができる。
【0020】菌液染色法は、アルテロモナス・ルテオバ
イオラセア、クロモバクテリウム・バイオラセイウム、
又はジャンシノバクテリウム・リビダムに属する微生物
の菌体を液体中に懸濁し、その懸濁液に繊維を浸漬する
ことにより染色を行う方法である。ここで、染色するこ
とのできる繊維としては、例えば、絹、木綿、羊毛など
を例示することができる。菌体を懸濁する液体として
は、水を使用することができるが、液体培地を用いても
よい。液体培地を用いた場合には、染色中に微生物が増
殖するので、濃い色に染めることができる。液体培地と
しては、微生物を増殖させ得るものであればどのような
ものでもよく、例えば、ジャガイモ半合成培地、繭糸煮
汁培地等を用いることができる。浸漬時間は、染めよう
とする色の濃さ、懸濁液中の菌体の濃度等に応じて決め
ればよいが、12〜24時間程度が適当である。また、
寒天培地で培養した菌体を培地ごと鍋に移し、約10倍
量の水を加えて煮沸し、80℃前後の温度になった時に
染色を行うと3〜5分間で染色が可能である。
【0021】有機溶媒染色法は、アルテロモナス・ルテ
オバイオラセア、クロモバクテリウム・バイオラセイウ
ム、又はジャンシノバクテリウム・リビダムに属する微
生物菌体からバイオラセイン等を含む成分を有機溶媒で
抽出し、その抽出液中に繊維を浸漬することにより染色
を行う方法である。抽出及び染色に適している有機溶媒
としては、メタノール、エタノール、アセトンが挙げる
ことができるが、メタノールが最も優れている。ここ
で、染色することのできる繊維としては、菌液染色法と
同様のものを例示することができる。浸漬時間は、染め
ようとする色の濃さ、抽出液中のバイオラセイン等の濃
度等に応じて決めればよいが、12〜24時間程度が適
当である。なお、抽出液を徐々に蒸発させて濃厚な液に
しながら染色することも可能である。
【0022】
【実施例】以下、本発明を実施例、試験例を挙げて具体
的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるもの
ではない。 〔実施例1〕 細菌の分離 分離源:屑繭および汚染絹糸を湿らせ15〜25℃に保
つ。1〜2週間後、青紫色に変化してきた絹糸を分離源
として用いた。
【0023】分離培地:ジャガイモ半合成培地(ジャ
ガイモ塊茎 300g の煎汁1L 、Ca (NO3)2 ・ 4H2O 0.5g,
Na2HPO4 ・12H2O 2g, ペプトン 5g, スクロース 15g,
寒天15g) 及びキングB培地(ペプトン 20g, K2HPO4 1.
5g, MgSO4・7H2O 1.5g, グリセリン 10ml, 寒天 15g,
蒸留水1L ) をシャーレに流し込んで平板としたものを
用いた。
【0024】細菌の分離:分離源とした絹糸を少量の
殺菌水に浸し、細菌を水に浮遊懸濁後、白金耳で平板培
地に画線接種し、20℃で培養した。3〜5日後、濃青紫
色のコロニーを再び殺菌水に懸濁し、常法により単コロ
ニー分離を行い、目的の菌株を得た。
【0025】〔試験例1〕 細菌の培養的特性 生育温度:実施例1と同様な方法で少量の細菌を培地
に画線し各温度で静置培養した。その結果、本細菌は5
〜35℃で生育したが37℃では生育せず、最適生育温度は
20〜25℃であった。
【0026】色素生産温度:色素の生産性は15℃以下
では劣り、30℃以上では認められず、最適温度は20〜25
℃であった。 培地:本細菌は一般に使用されている細菌用培地で簡
単に培養できる。しかし、色素生産性は培地の種類によ
って異なった。培地を色素生産性の高い順に並べると、
ジャガイモ半合成培地、繭糸煮汁培地、ペプトン培地、
キングB培地、ジャガイモ蔗糖培地であった。
【0027】培養条件:色素生産のためには、培地の
pHは6〜8が良く、光りによる影響は比較的少ないが薄
明り程度で良い結果が得られた。 変異:本細菌を高温度下で培養すると、培養中に色素
非生産菌に変異する現象が高頻度で見られた。色素非生
産菌は4〜5日間培養しても青紫色素を生産せず、白色
あるいは淡青紫色のままなので、色素生産細菌の濃青紫
色コロニーとは容易に区別できる。色素非生産菌が増加
すると色素の生産効率が悪くなるので注意が必要であ
る。
【0028】〔試験例2〕 各種有機溶媒による色素抽
出性 ジャガイモ半合成培地で培養し色素を十分生産させた細
菌の菌体を各種有機溶媒で抽出した。その結果、色素の
抽出程度は有機溶媒の種類によって異なり(表1)、最
も良く抽出したのはテトラヒドロフランであり、次いで
メタノールであった。
【0029】
【表1】
【0030】〔試験例3〕 各種有機溶媒中における染
色性 細菌の菌体からメタノールで抽出後乾固した色素を各種
有機溶媒に溶かし、その溶液中に絹および綿の布片を1
夜浸漬し、両布の染色され具合を調査した。その結果、
メタノールおよびエタノールが優れていた。また、絹布
と綿布間で染色程度に差は認められなかった。表2に絹
布の染色結果を示す。
【0031】
【表2】
【0032】染色程度はメタノール中での浸漬時間が長
い程濃くなる傾向がみられた。染色は浸漬直後から認め
られ、経時的に染色程度は増加したが、12〜24時間で最
大に達した。
【0033】〔試験例4〕 細菌を水あるいは培養液に
懸濁した菌液染色法 細菌をジャガイモ半合成培地で20℃の条件下で5日間培
養し、青紫色を呈した細菌コロニーを培地からかき取
り、水あるいは液体培地に懸濁させた。その懸濁液に染
色する布や糸を浸漬し、一夜染色した。その結果、前述
のメタノール中での染色に比べ、菌体を水に懸濁した液
中では淡く染まり、液体培地に懸濁した液中では細菌が
増殖したため濃く染まった。
【0034】〔試験例5〕 色素の抗菌活性および細胞
への影響 メタノールで抽出した本色素の安全性及び生理活性を2
種の方法で調査した。 微生物への影響:各種微生物の懸濁液を混合した平板
培地上に、本色素の懸濁液を滴下し、微生物の増殖に対
する阻害を調べた。その結果、植物病原糸状菌であるイ
ネごま葉枯病菌、クワ芽枯病菌、多犯性の白紋羽病菌お
よび植物病原細菌である野菜軟腐病菌、クワ縮葉細菌病
菌、レタス腐敗病菌、ヒラタケ腐敗病菌に対して抗菌活
性を全く示さなかった。このことは、本色素が抗菌的な
生理活性を持たないことを示している。
【0035】培養細胞への影響:ヤママユガの卵巣由
来の培養細胞は毒性物質に極めて感受性の高い系統であ
り、一般に安全性が高いとされている草木由来の色素で
も異常をもたらす。今回、この培養細胞に本色素の懸濁
液を滴下したが、色素は細胞に全く影響を与えなかっ
た。このことは、本色素が生物細胞に対し安全性が高い
ことを示唆するものである。ただし、本色素を衣料、食
品、化粧品に使用する場合には、それぞれの分野での安
全基準をクリアーする必要がある。
【0036】〔試験例6〕 堅牢度試験 メタノール中で染色した絹布および細菌懸濁液で染色し
た絹布を供試し、染色の堅牢度を測定した。その結果、
堅牢度は表3に示した通りで、一般の植物色素による染
色の場合と比較して、同等、あるいはやや良好であっ
た。
【0037】
【表3】
【0038】注1)供試した布は、メタノール中で染色
した絹布(A)および細菌懸濁液で染色した絹布(B)
である。 注2)試験はJIS規格に基づいて行った。日光試験以
外は無色の絹布および綿布で染色布を挟んで処理し、無
色布への色の移り(汚染)と染色布の色の変化(変退
色)で調べた。染色堅牢度は高い方から順に5〜1の5
段階評価で示してある。
【0039】
【発明の効果】本発明は、バイオラセイン等の新規な利
用手段を提供する。バイオラセイン等は、色調、風合、
染色性及び摩擦等の堅牢性に優れ、また、絹や綿を穏や
かな青紫の色調で染色できることから、染色剤としての
利用価値が高い。また、培養細胞にも影響を与えないこ
とから安全性が高いと評価されるため食品着色剤、化粧
品着色剤などとして利用できる。このように、幅広く利
用できる本発明は産業上極めて有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C12R 1:01) (72)発明者 秦 珠子 茨城県つくば市並木2丁目10−1 203− 203 (72)発明者 安居 拓恵 茨城県つくば市松代3丁目301−302 (72)発明者 小島 篤 群馬県富岡市宇田49−1

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 バイオラセインもしくはその誘導体を効
    率よく生産するジャンシノバクテリウム・リビダムS960
    1 株。
  2. 【請求項2】 バイオラセインもしくはその誘導体を有
    効成分として含有することを特徴とする染色剤。
  3. 【請求項3】 バイオラセインもしくはその誘導体を有
    効成分として含有することを特徴とする食品着色剤。
  4. 【請求項4】 バイオラセインもしくはその誘導体を有
    効成分として含有することを特徴とする化粧品着色剤。
  5. 【請求項5】 バイオラセインもしくはその誘導体によ
    り染色することを特徴とする染色方法。
  6. 【請求項6】 アルテロモナス・ルテオバイオラセア、
    クロモバクテリウム・バイオラセイウム、又はジャンシ
    ノバクテリウム・リビダムに属する微生物の菌体を液体
    中に懸濁し、その懸濁液に繊維を浸漬することにより染
    色を行うことを特徴とする請求項5記載の染色方法。
  7. 【請求項7】 アルテロモナス・ルテオバイオラセア、
    クロモバクテリウム・バイオラセイウム、又はジャンシ
    ノバクテリウム・リビダムに属する微生物の菌体からバ
    イオラセインもしくはその誘導体を含む成分を抽出し、
    その抽出液中に繊維を浸漬することにより染色を行うこ
    とを特徴とする請求項5記載の染色方法。
JP8268452A 1996-10-09 1996-10-09 細菌の生産する青紫色素とその染色剤及び着色添加剤としての利用法 Pending JPH10113169A (ja)

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