JPH10112267A - 陰極線管 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 陰極線管の電子銃内のカソード等からの不要
放射によって出射した熱電子が電子銃構成部材に衝突し
て発生する二次電子の放出を抑制する。 【解決手段】 カソードＫ（ＫＲ，ＫＧ，ＫＢ）近傍の
電極Ｇ₂ や接続線３３等の構成部材をステンレス材料よ
り小さな２次電子増幅率材料で形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は陰極線管（以下ＣＲ
Ｔと記す）の電子銃の構成に係わり、特に二次電子放出
の少ない電子銃を構成する構成部材を選択した陰極線管
の改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来からＣＲＴに用いられている電子銃
はネック内に封止され、電子銃は少なくともカソード
Ｋ、加速、収束等の第１〜第５グリッド電極Ｇ₁ 〜Ｇ₅
等で構成され、カソードＫは図４に示す様に有底円筒状
のニッケ基体に還元剤を含んだベースメタル１、このベ
ースメタル１の底部に酸化バリウム等の酸化物が塗布さ
れた熱電子放射物質２、ベースメタル１内径内に挿入さ
れ、内部にヒータ４を有する円筒状スリーブ３とより構
成される。尚、５はヒータ線である。

【０００３】図５は、この様なＲ（赤），Ｇ（緑），Ｂ
（青）用の３個のカソードＫＲ，ＫＧ，ＫＢをセラミッ
クベース６に穿った透孔を介して配設し、熱電子放射物
質２から放射させる熱電子ビームをメインレンズを構成
する例えば、第４グリッド電極Ｇ₄ で交叉する様に成し
た後に静電用偏向板を介して色選別電極を経て、蛍光面
の所定色ストライプ上に集束させる様に成されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上述の様なＲ，Ｇ，Ｂ
カソードＫＲ，ＫＧ，ＫＢ等で熱電子放射物質２がベー
スメタル１やスリーブ３等の外周表面等の所定位置（ベ
ースメタル有底部）以外に付着体７として付着した様な
場合、この付着体７が加熱されると熱電子８が発生す
る。例えばワンガンスリビーム型のＣＲＴでは図５に示
す様に静電用偏向板に陽極電圧より４〜８％低いコンバ
ーゼンス電圧を印加するために内部抵抗分割板（Inner
Breeder Resistor以下ＩＢＲと記す）９が用いられ、こ
の抵抗体が塗布されたＩＢＲ９のセラミックス基板１０
はカソードＫ近傍まで延設され、電極端子１１Ｂには１
１４０Ｖ程度の電圧が印加されている。

【０００５】ここでカソードＫＲ，ＫＧ，ＫＢがヒータ
４で加熱されるとベースメタル１或はスリーブ３等の付
着体７から出射した熱電子８がＩＢＲ９の電極端子１１
Ｂに当たると二次電子１２が大量に放出される。即ち、
熱電子８は数百Ｖ乃至数千Ｖの電位の加えられている上
述の様なＩＢＲ９の電極端子１１Ｂや、３００Ｖ乃至８
００Ｖ程度の電圧の印加されているカソードＫ近傍のス
テンレス等より成る第２グリッド電極Ｇ₂ 等に衝突する
と、２次電子増幅率は１より大きくなり、大量の２次電
子を放出して、この２次電子によって電子銃部分で火花
放電を伴う絶縁破壊を発生し、ＣＲＴやその外部電気回
路に損傷を与えたり、ＣＲＴの使用者に不必要な不安感
を抱かせる問題があった。

【０００６】又、ベースメタル１等から放出された不要
な熱電子８はＣＲＴのネックのガラス内壁に衝突して、
２次電子を放出し、ネック内壁をチャージアップし、ネ
ック内壁の電位を上昇させる。これにより、電子銃によ
り所定の電子ビームを加速或は集束させる様に成された
電場が乱され、所定の電子ビームを蛍光ストライプ上に
集束させることが出来なくなる問題があった。

【０００７】更に、上述の不要な熱電子放射以外にもＣ
ＲＴの電子銃を構成する例えば第１グリッド電極Ｇ₁ の
様な低電圧電極と、フォーカス電圧等の高電圧が印加さ
れる第３グリッド電極Ｇ₃ 等の高電圧電極間での低電圧
電極側に微小な異物の付着、或は傷やバリ等があると、
これら部分に電界が集中し電界放出による冷電子放出が
発生することで上述したと同様な不具合が発生する問題
があった。

【０００８】本発明は叙上の問題点を解消したＣＲＴを
提供しようとするものであり、その課題とするところは
２次電子放射の発生を防止し、上述の各種不具合を回避
し得るＣＲＴを得ようとするものである。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明のＣＲＴはその例
が図１に示されている様に電子銃を構成する構成部材の
少なくとも表面をステンレス材料より小さい２次電子増
幅率材料で形成したものである。

【００１０】本発明のＣＲＴによれば不要熱電子が電極
やその他の部品に衝突することで発生する２次電子放出
を減少させることが出来て、放電現象で生ずるＣＲＴや
その外部電気部品等の構成部品の損傷を防止可能とな
る。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下、本発明のＣＲＴを１ガンス
リービーム、ストライプ蛍光面、アパーチャグリル（色
選別手段）を用いたトリニトロン管（ソニー商標）電子
銃について説明を進める。図１は内部抵抗分割板（ＩＢ
Ｒ）と電子銃を模式的に示した本発明の陰極線管の構成
図、図２は本発明のＣＲＴのネック部内の要部電子銃を
示す断面図、図３は図２の電子銃の向きを９０度変えた
断面図である。

【００１２】図１〜図３で、ＣＲＴ２０の電子銃２１は
図１の模式図に示す様に、Ｒ，Ｇ，Ｂに対応する３つの
カソードＫＲ，ＫＧ，ＫＢがインライン配列され、之等
３つのカソードＫＲ，ＫＧ及びＫＢに対して共通となる
第１グリッド電極Ｇ₁ ，第２グリッド電極Ｇ₂ ，第３グ
リッド電極Ｇ₃ ，第４グリッド電極Ｇ₄ ，第５グリッド
電極Ｇ₅ ，第６グリッド電極Ｇ₆ 及び第７グリッド電極
Ｇ₇ 並びに静電用偏向板２２が順次配列され、各第１グ
リッド電極Ｇ₁ 〜第７グリッド電極Ｇ₇ に夫々３つのカ
ソードＫＲ，ＫＧ及びＫＢからの電子ビームを透過する
３つのビーム透過孔２３_R ，２３_G ，２３_B が形成され
ている。

【００１３】そして、例えば、第１グリッド電極Ｇ₁ に
は０Ｖが印加され、第２グリッド電極Ｇ₂ と第４グリッ
ド電極Ｇ₄ は共通接続されて之に７００Ｖが印加され、
第３グリッド電極Ｇ₃ と第５グリッド電極Ｇ₅ は共通接
続されて之に６ｋＶが印加され、第６グリッド電極Ｇ₆
には６ｋＶ〜６．５ｋＶが印加され、第７グリッド電極
Ｇ₇ にはアノード電圧である例えば２５ｋＶが印加さ
れ、静電用偏向板２２にはアノード電圧と、このアノー
ド電圧より４〜８％低いコンバーゼンス電圧とが印加さ
れたパイポテンシャル電子銃が構成される。各カソード
ＫＲ，ＫＧ及びＫＢから出射された電子ビームは、各グ
リッド電極Ｇ₁ 〜Ｇ₇ の各々のビーム透過孔２３_R ，２
３_G ，２３_B を通じて蛍光面（図示せず）上でコンバー
ジェンスされる。

【００１４】この電子銃２１は、図２に示すように、各
グリッド電極Ｇ₁ 〜Ｇ₇ が１対のビードガラス２４及び
２５によって一体に支持され、陰極線管２０のネック部
２０Ｎ内に封入される。

【００１５】そして、第７グリッド電極Ｇ₇ は、之より
一体に延長する高圧供給用の接触片２６をアノードボタ
ンに接続された内装カーボン膜２７に接触することによ
ってアノード電圧である例えば２５ｋＶが印加される。

【００１６】一方、第３グリッド電極Ｇ₃ 及び第５グリ
ッド電極Ｇ₅ への６ｋＶの電圧印加は、ＩＢＲ９を通じ
て行なわれる。このＩＢＲ９は図１乃至図３に示す様に
セラミック基板１０上に内部抵抗体３１を形成し、その
両端と中間部に電極端子１１Ａ及び１１Ｂと１１Ｃを形
成し、電極端子１１Ａ，１１Ｂ，１１Ｃを除いて内部抵
抗体層３１をガラス層で絶縁被覆し、更にセラミック基
板１０の裏面にも薄いガラス層をコーティングしてい
る。

【００１７】このＩＢＲ９を一方のビートガラス２４上
に配置し、その第１の電極端子１１Ａを第７グリッド電
極Ｇ₇ に接続し、第２の電極端子１１Ｂに１１４０Ｖ程
度を印加し可変抵抗等を介してアース端子に接続し、中
間の第３の電極端子１１Ｃを共通接続体２３を通じて第
３グリッド電極Ｇ₃ 及び第５グリッド電極Ｇ₅ に接続す
る。

【００１８】この様な電子銃はネック２０Ｎ内のステム
３２に植立したステムピンと接続線３３を介して接続さ
れている。従って、カソードＫ近傍に配されたこれら接
続線３３には数百〜数千Ｖの電圧が印加されている。

【００１９】この様な構成の電子銃に於いて、図１に示
す様に例えばＲ用カソードＫＲのヒータ４近傍のベース
メタル１に付着した熱電子放射物質２の付着物７の１つ
の熱電子８がＩＢＲ９の電極端子１１Ｂに衝突した時の
熱電子８の軌道を計算で求めると、熱電子８は約１００
０Ｖの電極端子１１Ｂに衝突することになり、この熱電
子の衝突時のエネルギーは５００ｅＶに達する。

【００２０】この様にカソードＫＲ，ＫＧ，ＫＢから出
射した不要な熱電子は図１乃至図３の電子銃に於いて、
例えばＧ用のカソードＫＧのベースメタル１に付着した
熱電子放射物質２の付着物７の熱電子８が第１のグリッ
ド電極Ｇ₁ のアパーチャを通して７００Ｖの電圧の印加
された第２グリッド電極Ｇ₂ に衝突したり、Ｂ用のカソ
ードＫＢのスリーブ３に付着した付着物７からの熱電子
８が数百〜数千Ｖの電圧の印加された接続線３３に衝突
するもの等があり、これらがかなりの割合をしめてい
る。

【００２１】この様な数百Ｖ〜数千Ｖの電圧の印加され
ている金属部に衝突した時のエネルギーは数百ｅＶ〜数
千ｅＶに達することになる。一般に熱電子８が衝突する
際の相手が鉄やステンレス（略２次電子増幅率＝１）等
である場合に電子のエネルギーが１２０ｅＶ〜１４００
ｅＶの間にあると、その際の２次電子放出は１より大き
な増幅率で放出される。即ち、ＩＢＲ９の電極端子１１
Ｂや第２グリッド電極Ｇ₂ 或は接続線３３等のカソード
近傍の電子銃の構成部材に衝突する最初に放出された不
要な熱電子８或は冷電子の数よりも多くの熱電子が衝突
した点から２次電子１２として放出して、上述した種々
の弊害を発生する。

【００２２】そこで、本例では上述した熱電子８の場合
ではカソードＫＲ，ＫＧ，ＫＢ近傍の電子銃２１の電極
Ｇ₂ 、ＩＢＲ９の電極端子１１Ａ〜１１Ｃ、接続線３
３、ステムピン等の構成部材を形成する際に１２０ｅＶ
乃至１４００ｅＶでの不要熱電子がこれら構成部材に衝
突した時に、この範囲のエネルギーではより小さい２次
電子増幅率を持つ材料で構成させるか、或は、これら構
成部材の表面を、上述の様な材料でコーティングする様
に構成させればよい。

【００２３】又、冷電子の場合は低電圧が印加される電
極と、高電圧が印加される電極のうちの低電圧印加側の
電極、例えば図１乃至図３の電子銃であれば第１グリッ
ド電極Ｇ₁ 、第２グリッド電極Ｇ₂ 、第４グリッド電極
Ｇ₄ 、第６グリッド電極Ｇ₆等に上述の如き材料の選択
或はコーティングを施すを可とする。

【００２４】即ち、本例では１次電子が衝突する際の全
てのエネルギー範囲で２次電子増幅率が１を越えないよ
うな材料で上記のような対策を施せば電極に衝突した電
子よりも少ない２次電子しか放出されず、総合的な不要
電子の放出を減少させることが出来る。この様な材料に
は２次電子増幅率が最大で０．９であるチタン（Ｔ）や
同じく０．５であるベリリウム（Ｂｅ）などがあり、こ
れらを構成部材の材料として或はコーティング材料とし
て利用することで熱電子や冷電子などの不要電子放射が
電極等の構成部材に衝突することによって発生する２次
電子放出を減少させることが可能になり、総合的な不要
電子放射が減少する。その結果、電子銃での火花放電を
伴う絶縁破壊が発生してＣＲＴやその外部の電気回路に
損傷を与えたりそのＣＲＴの使用者に不必要な不安感や
不快感を抱かせたりすることを防止することが出来る。

【００２５】又、放出された不要電子がＣＲＴのガウス
バルブの一部であり、電子銃を保持しているガラス製の
ネック部に衝突しその場所において帯電を起こして、目
的の電子ビームの集束が得られるように各電極によって
構成された電場を乱して、所定の電子ビームの焦点の集
束が得られないという不具合も防止することができる。

【００２６】

【発明の効果】本発明によれば不要熱電子が電極等の構
成部材に衝突して大量の２次電子を放出して電子銃での
放電破壊の発生が防止可能なＣＲＴが得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の陰極線管の略線的電子銃の構成図であ
る。

【図２】本発明の陰極線管の電子銃の要部の断面図であ
る。

【図３】図２の陰極線管の電子銃の向きを９０°変えた
断面図である。

【図４】従来のカソードの斜視図である。

【図５】従来のインライン型カソードの組立斜視図であ
る。

【符号の説明】

Ｋ カソード、１ ベースメタル、２ 熱電子放射物
質、３ スリーブ、７付着物、８ 熱電子、９ ＩＢ
Ｒ、１１Ｂ 電極端子、１２ 二次電子、Ｇ₂ 第２グリ
ッド電極、３３ 接続線

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 電子銃を構成する構成部材の少なくとも
   表面をステンレス材料より小さい２次電子増幅率材料で
   形成したことを特徴とする陰極線管。
2. 【請求項２】 前記構成部材の２次電子増幅率が１未満
   であることを特徴とする請求項１記載の陰極線管。
3. 【請求項３】 前記構成部材は上記電子銃のカソード近
   傍に配され、数百ボルト乃至数千ボルトの電圧が印加さ
   れていることを特徴とする請求項１又は請求項２記載の
   陰極線管。