JPH10105202A - 進化的制御方式 - Google Patents
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Abstract
進化的制御方式を提供すること。 【解決手段】 本発明に係る進化的制御方式は、反射
層、学習層、及び進化シュミレート層から成り、反射層
で基本制御量を決定し、学習層で補正基本量を決定する
と共に、進化シュミレート層で、ニューラル回路網から
成る制御モジュールの結合係数を用いて複数の染色体を
生成し、各染色体に対して動作シュミレートを行い、こ
のシュミレート結果に基づいて使用者の指示で前記染色
体の淘汰を行い染色体を進化させて、使用者の指示に最
も適合する最適制御モジュールを獲得し、この最適制御
モジュールに関する情報を学習層に学習させる。
Description
進化的に制御する進化的制御方式に関する。
性を制御する場合、制御対象となる製品の特性は、開発
・設計段階で、その製品を使用すると思われる使用者を
想定し、その仮想使用者の好みや使用状況を加味し、で
きるだけ広い範囲の使用者に適応するように決められ
る。
を使用する使用者は、個々に特有の個性を持っており、
その好みも千差万別であるため、前記したように、その
製品を使用すると思われる使用者の好み等を想定して製
品の開発・設計を行ったとしても、必ずしも複数の使用
者が満足する特性を提供できるとは限らないという問題
がある。上記した問題を解決するために、現在は、使用
者が製品購入前に、その製品の特性を確認し、特性が自
分の満足するものであるか否かを判断することが行われ
ているが、この購入前の製品の特性の確認は使用者にと
って煩わしいものである。また、基本的に同一製品は同
じ特性で制御されることが多いため、例えば、製品のデ
ザインは気に入っているのに特性が気に入らないため
に、その製品の購入を断念せざるえない等、特性により
製品の選択範囲が制限されるという問題も生じる。本発
明は、上記した従来の問題点を解決し、複数の使用者が
満足し得る特性を実現できる進化的制御方式を提供する
ことを目的としている。
ために、本発明に係る進化的制御方式は、制御対象の特
性を制御する制御系の制御特性に影響を及ぼす係数を用
いて複数の染色体を生成し、各染色体に対して動作シュ
ミレーションを行いながら、前記動作シュミレーション
の結果に基づく使用者の指示により染色体の淘汰を行い
遺伝的アルゴリズムにより染色体を進化させることを特
徴とするものである。
式の実施の形態を添付図面に示した一実施例を参照して
説明する。図1は本発明に係る進化的制御方式の基本概
念を示すブロック図である。図面に示すように、この進
化的制御方式は、反射層、学習層、及び進化シュミレー
ト層から成り、外部から制御すべき制御対象の作動状態
に関する情報を入力し、この入力情報に基づいて反射層
で制御基本量を決定し、かつ学習層で基本補正量を決定
し、これら出力から制御対象に対する制御出力を決定す
る。進化シュミレート層は、使用者の指示に基づいて制
御対象の動作シュミレーションを行いながら使用者の好
みに合った最適制御モジュールを生成し、その最適制御
モジュールを学習層に学習させる。以下、進化的制御方
式を実行する各手段の働きについて説明する。反射層
は、制御すべき制御対象の作動状態に関する情報(以
下、外界情報と称する)と、外界情報に対する制御基本
量との関係を数式、マップ、ファジールール、ニューラ
ルネットワーク、又はサブサンプションアーキテクチャ
等の形式の制御系で予め備えている層であり、外界情報
が入力されると、上記した制御系から入力された外界情
報に対する制御基本量を決定して出力する。尚、前記サ
ブサンプションアーキテクチャとは、並列的な処理を行
う行動型人工知能として公知である。学習層は、学習用
と実行用とに入れ替え可能な二つの制御系を備え、一方
の制御系(実行用)で制御を実行している間、他方の制
御系(学習用)で進化シュミレート層から進化した最適
制御モジュールを学習し、学習が終了すると、制御を実
行している制御系と学習後の制御系とを入れ替え、学習
後の制御系での制御を開始する。尚、この学習層におけ
る制御系は初期状態ではゼロを出力するように設定され
ており、従って、初期状態では反射層の出力のみで制御
対象の制御が行われる。進化シュミレート層は、進化演
算部、動作シュミレーション部、表示部、及び指示入力
部を備えている。進化演算部は、評価系と進化適応系か
らなり、進化適応系は、反射層で決められた制御基本量
を使用者の好み及び/又は使用環境に合わせるように補
正するための少なくとも一つの制御モジュールを備え、
この制御モジュールを評価系からの指示に基づいて遺伝
的アルゴリズムにより進化させる。遺伝的アルゴリズム
により進化した制御モジュールは、動作シュミレーショ
ン部によりシュミレートされ、その結果を表示部に表示
する。使用者はシュミレート結果の評価を行い、指示入
力部を介して、進化演算部の評価系に評価結果を入力す
る。評価系は、進化適応系の制御モジュールを評価結果
に沿ってさらに進化させる。進化シュミレート層は、上
記した処理を繰り返し、その時点で最も使用者の指示に
合った最適制御モジュールを獲得し、その結果を学習層
の学習用制御系に学習させる。尚、前記制御モジュール
とは、制御系のあるまとまった制御を行う一単位をい
う。学習層では、その学習用制御系で学習した最適制御
モジュールをICカードやフロッピーディスク等の外部
記憶手段に保存させ、必要に応じて、外部記憶手段から
過去に保存した最適制御モジュールを読み出して、好ま
しい最適制御モジュールによる制御を実行できるように
している。上記した各手段の働きにより、この進化的制
御方式からの制御出力は、制御すべき制御対象を使用す
る使用者の指示によって刻々と変化し、その結果、制御
対象は使用者の指示に適応した特性に刻々と変化してい
く。本明細書では、この進化的制御方式により制御対象
の特性が使用者の指示に適応した特性に進化していく状
態を「調教」と称する。
に示すフローチャートである。始めに使用者からの進化
開始の指示が有るか否かを判断し、使用者からの進化開
始指示が入力されると以下の進化処理を開始する(ステ
ップa)。使用者からの進化開始指示が入力されると、
進化シュミレート層は、その進化演算部で、進化適応系
の制御モジュールから幾つかの選択用制御モジュールを
生成し、各制御モジュールに対して動作シュミレート部
で動作シュミレーションを行う。動作シュミレーション
の結果は、表示部で使用者に対して視覚的、又は聴覚的
手段等により表示される。使用者は、表示部での表示結
果に基づいて、選択用制御モジュールの評価を行い、そ
の中から好みの制御モジュールを選択し指示入力部に入
力する。指示入力部に入力された使用者の評価結果は進
化演算部の評価系に送られ、評価系は、評価結果に基づ
いて進化適応系に、評価結果に沿った選択用制御モジュ
ールをさらに生成させる(ステップb)。上記した処理
を繰り返すことにより、進化シュミレーション層で、そ
の時に使用者の望む最も最適な制御モジュールを獲得す
る(ステップc)。進化シュミレート層で得られた最適
制御モジュールは、学習層の学習用制御系により学習さ
れ、学習層では、学習用制御系での学習が終了すると、
学習用の制御系と、それまで実行用であった制御系を入
れかえ(ステップd)、その後は、学習後の実行用制御
系で、外界情報に基づいて基本補正量を決定し、反射層
の制御基本量の補正を行う(ステップe)。尚、学習層
の出力は初期状態ではゼロに設定され、従って、初期状
態では反射層からの制御基本量のみで制御対象に対する
制御出力が決定されている。
により進化処理中の評価を行う制御手段と、前記進化シ
ュミレート手段とを組み合わせた制御システムの実施例
の概念図を示している。制御手段は、進化適応層、学習
層、及び反射層から成る。反射層及び学習層の機能は基
本的には、図1及び図2で説明した実施例の処理と同じ
である。進化適応層は、評価系と進化適応系を備え、使
用者の指示に基づいて処理を開始する。進化適応層は、
処理を開始すると、使用者の指示又は使用者の意志を評
価し得る情報を評価系で入力し、進化適応系は、その制
御モジュールから使用者の指示に沿って幾つかの選択用
制御モジュールを生成する。進化適応層は、これら選択
用制御モジュールに基づいて制御対象を実際に動作さ
せ、その動作結果に基づく使用者の評価を評価系で入力
し、評価結果に沿って選択用制御モジュールの淘汰を行
い、残った制御モジュールから遺伝的アルゴリズムによ
り、さらに選択用制御モジュールの生成を行う。進化適
応層は、上記した処理を繰り返すことにより、その時点
て使用者の指示に最も合った最適制御モジュールを獲得
し、進化適応系の制御モジュールを最適制御モジュール
に固定する。進化適応層は、その後、最適制御モジュー
ルに基づいて補正値(以下、この補正値を進化補正値と
称する。)を出力して、反射層から出力される制御基本
量を補正する。学習層では、進化適応層が最適制御モジ
ュールに固定された時の進化適応層の入出力関係と学習
層の実行用制御系の入出力関係を学習用制御系で合わせ
て学習する。この間、制御対象の制御は、反射層、学習
層の実行用制御系、及び進化適応層により実行される。
尚、初期状態においては、学習層からの出力はゼロに設
定されている。反射層からの制御基本量に学習層におけ
る学習用制御系の出力(以下、この出力を仮想補正量と
称する。)を加えた値と、実際の制御出力(制御基本量
+学習層の実行用制御系の補正量(以下、この補正量を
基本補正量と称する。)+進化補正量)との差がしきい
値より小さくなった時点で学習層における学習用制御系
は学習を終了し、学習用制御系と実行用制御系とが入れ
替わって、学習後の制御系が実行用として機能し、制御
を実行していた制御系が学習用として機能し、反射層と
学習層とによる制御が行われる。進化適応層は、最適な
制御モジュールに関する情報を学習層に学習させた後
は、その出力をゼロに固定し、以後は、使用者からの進
化開始指示が入力されるまで待機する。進化シュミレー
ト手段は、使用者の指示に基づいて図1及び図2で説明
した進化シュミレート層と同様の処理を行うように構成
されている。上記した構成により、使用者は、制御モジ
ュールの進化処理を実際に制御対象を動作させた結果に
基づいて行うか、又は動作シュミレーションによるシュ
ミレート結果に基づいて行うかを選択することが可能に
なり、より使用者及び使用環境に基づいた進化的制御を
実行することが可能になる。
ジンを制御する実施例に基づいて、進化的制御方式につ
いて、さらに具体的に説明する。図4は、エンジン1と
前記進化的制御方式を実行する制御システム10との関
係を示す概略図である。図面に示すように、この制御シ
ステム10は、エンジン回転数、スロットル開度、吸気
温度、大気圧、空燃比(A/F)、及び車速等の情報を
入力し、これらの入力情報に基づいてインジェクタ3の
噴射時間、点火プラグ5の点火時期、及び吸気バルブ7
のバルブタイミングを制御して、燃費性能と加速性能の
両立を図ったエンジン制御を行う。図5は、前記制御シ
ステム10の概略ブロック図である。この制御システム
10は、反射層、学習層、及び進化適応層から成る制御
装置13と、進化処理を動作シュミレーションにより行
う進化シュミレーション手段15と、外部記憶手段17
とを備え、使用者に指示に基づいて、制御装置13の進
化制御層又は進化シュミレーション手段15の何れかで
進化処理を行えるように構成されている。
13について詳細に説明する。反射層は、エンジン回転
数、スロットル開度、吸気温度、及び大気圧等を入力し
て、これらの入力信号に基づいて予め決められた数式を
モデル化した方程式からインジェクタ3の噴射時間、点
火プラグ5の点火時期、及び吸気バルブ7のバルブタイ
ミングを制御する制御基本量を決定して出力する。進化
適応層は、評価系と進化適応系とから成る。図6は、進
化適応層及び学習層の基本動作のフローチャートであ
る。以下、このフローチャートを参照して進化適応層及
び学習層の基本動作について説明する。 ・ステップ1:初期集団(第1世代)の生成 進化適応系は図7に示すように、エンジン回転数、スロ
ットル開度、吸気温度、及び大気圧を入力し、燃料噴射
補正量、点火時期補正量、及びバルブタイミング補正量
を出力する4入力3出力式の階層型ニューラル回路網か
ら成る制御モジュールを備えており、使用者からの進化
開始指示が入力されると、そのニューラル回路網の結合
係数を遺伝子として乱数を用いてコーディングし、複数
の個体(本実施例では9個の個体1〜9)、即ち複数の
染色体からなる第1世代を生成する。尚、前記個体と
は、遺伝的アルゴリズムの中の一個の染色体をいう。各
個体の遺伝子の値(即ち、ニューラル回路網の結合係数
の値)の初期値は予め決められた範囲内(ほぼ−10〜
10の間)でランダムに決定する。またこの時、全ての
遺伝子(結合係数)の値が0になる個体を一つ生成する
ことで、進化の過程で進化前の性能を下回らないように
することができる。 ・ステップ2:適応度の評価 次に、反射層及び学習層の出力に第1世代における1番
目の個体1の結合係数を用いた進化適応層の出力(以
下、この出力を仮補正量と称する。)を足し合わせた値
を用いて燃料噴射量、点火時期、吸気バルブのタイミン
グを制御する。この時の進化適応層の出力である仮補正
量Yは、前記個体1の結合係数を適用したニューラル回
路網に、その時のエンジン回転数、スロットル開度、吸
気温度、及び大気圧を実際に入力してニューラル回路網
の出力xを決定し、さらにこの出力を次式(1)を用い
て線形変換して得られる。また、エンジン回転数等の入
力情報は正規化したものを用いる。 Y = 2×Gx−G (1) ここで、Yは仮補正量力、xはニューラル回路網の出
力、Gは進化適応層出力ゲインである。このように、ニ
ューラル回路網の出力xを線形変換して用いることによ
り、進化適応層から出力される補正量の値が極端に大き
くなることがなく、全体として進化がすこしづつ進むよ
うになり、エンジンの挙動が評価や進化のために極端に
変動することがなくなる。そして、進化適応層から個体
1を用いた仮補正量Yを出力したままの状態で、しばら
く走行し評価系に評価用情報(空燃比及び車速等)を入
力する。評価系では、この評価用情報に基づいて、個体
1を用いて制御されたエンジンのトルク及び燃費を求
め、個体のトルク及び燃費に関する特性を図8に示す表
現方法を用いて、例えばメータ部等に設置されたディス
プレイ上に表示する。図8(a)〜(c)は個体の評価
の表現方法の一例を示す図であり、各図において四角形
の横幅はトルクの大きさを、色(濃淡)は燃費を示し、
また、縦幅は速度を三段に分割して示している。トルク
は横幅の大きさに比例して大きくなり、また燃費は色の
濃さに比例して良くなり、また、速度は、上段が高速、
中段が中速、そして、下段が低速を表している。上記し
た個体の評価は、集団、即ち第一世代の全ての個体に対
して行われ、各個体の評価は、図9に示すように同時に
一画面に表示される。 ・ステップ3:使用者による評価及び淘汰 9個の個体1〜9の全てに対する特性の表示が終了する
と、制御は一度評価モードに入る。この評価モードで
は、使用者がディスプレイ上に表示された9個の個体を
次々に選択し、進化適応層では、そのニューラル回路網
を使用者に選択された個体の結合係数に一時固定して、
選択された個体による制御を行う。これにより、使用者
はディスプレイ上に表示された9個の個体の特性を、実
際に走行した乗り心地等から判断し、各個体の適応度を
乗り心地から評価する。使用者は、ディスプレイ上に視
覚表現されたトルク・燃費特性と、実際に走行した時の
乗り心地とに基づく各個体の適応度の評価を終了した段
階で、制御を淘汰モードに切り替え、第1世代の個体の
淘汰を行う。この淘汰は、例えば、ディスプレイを淘汰
モードに切り替え、図9に示すように、ディスプレイを
タッチすることにより、第1世代の個体の中から使用者
に、好みの特性を持つ個体を幾つか選択させ、使用者に
選択された個体を親個体として残し、それ以外の個体を
消去することにより行われ得る。 ・ステップ4:交叉 使用者による親個体の選択が終了すると、選択された親
個体の中から乱数を用いて2個の親個体を選択し、これ
らに交叉演算を施して2個の子個体を生成する(図10
参照)。この処理を5回行うことにより、再び、9個の
子個体からなる集団、即ち、第2世代が生成される(1
0番目の子個体は捨てる)。前記個体間の交叉には、例
えば、1点交叉、2点交叉、又は正規分布交叉等の手法
が用いられる。正規分布交叉とは、実数値表現の染色体
(個体)について、両親を結ぶ軸に対して回転対称な正
規分布にしたがって子を生成する方法である。正規分布
の標準偏差は、両親を結ぶ主軸方向の成分については両
親間の距離に比例させ、その他の軸の成分については両
親を結ぶ直線と集団からサンプルした第3の親との距離
に比例させる。この交叉方法は、親の特質が子に引き継
がれやすいという利点がある。 ・ステップ5:突然変異 9個の子個体を生成した後、これらの子個体に対して、
ある確率で遺伝子に突然変異を施し、結合係数に変位を
与える(図11参照)。 ・ステップ6 ステップ2〜ステップ6までの処理を使用者が満足いく
特性を持つ個体が得られるまで繰り返し行い、使用者
は、満足いく個体が得られた時点で、その個体を最適個
体とする指示を与え進化処理を終了させる。進化適応層
は、使用者により最適個体が選択されると、そのニュー
ラル回路網の結合係数を最適個体で固定する。進化適応
層は、ニューラル回路網が最適個体で固定された後は、
そのニューラル回路網により得られる実際のエンジン回
転数等の入力情報に対する進化補正量による制御を行
う。進化適応層が進化補正量による制御を実行し始める
と、学習層の学習用ニューラル回路網は、進化適応層の
入力と出力との関係を、学習層の実行用として機能して
いるニューラル回路網の入力と出力との関係と合わせて
学習する。この間、進化適応層の出力は、それ以前の評
価関数を最大とした個体により行われ、制御則が時間的
に変化することはない。前記した学習では、進化適応層
と学習層の実行用ニューラル回路網との入出力を、ある
ステップ幅で平均化し、これを入出力データとして教師
データ集合の更新に用いる。例えば、1秒間の平均エン
ジン回転数が5000rpm、平均スロットル開度が2
0、平均吸気温度が28℃、平均大気圧が1013hP
aであった場合、これらと、その時の進化適応層及び学
習層における実行用ニューラル回路網の出力(即ち、進
化補正量及び基準補正量)を合わせたものを入出力デー
タとして用いる(図12参照)。この入出力データを、
以前の教師データに加えて新しい教師データ集合を得
る。この時、教師データ集合における新しいデータとの
ユークリッド距離が一定値以内の古い教師データは消去
する。この様子を図13に示す。また、教師データ集合
の初期値は、すべての入力データに対して出力をゼロに
しておく。学習層では、更新された教師データ集合に基
づいて、学習用ニューラル回路網の結合係数の学習を行
う。前記結合係数の学習は、学習中の学習用ニューラル
回路網の出力(即ち、仮想補正値)と反射層からの制御
基本量とから得られる仮想制御出力と、実際の制御出力
との間の誤差がしきい値以下になるまで行われ、この学
習が終わると、学習用のニューラル回路網は実行用にな
り、もとの制御用のニューラル回路網が学習用となる。
この後、学習層は新しく得られた実行用のニューラル回
路網により基本補正量を決定して実際に出力し、同時
に、進化適応層の出力はゼロになり、学習層と反射層と
による制御が行われる。また、学習層の実行用のニュー
ラル回路網の初期値は、出力が常にゼロになるように設
定しておく。こうすることで、初期状態においては、反
射層と進化適応層のみで制御をおこなうようにできる。
学習済みの実行用ニューラル回路網の結合係数は、フロ
ッピーディスクやICカード等の外部記憶媒体に記録
し、保存、読み出しを可能とし、これにより、一度進化
により得られた最適個体の特性を何時でも再現できるよ
うにする。こうすることで、走行場所や道路状況あるい
はその時の気分に合わせて、使用者の好みの特性を即座
に実現てきるようになる。
に、進化シュミレート手段15について説明する。図1
4は、進化シュミレート手段15の構造を概念的に示す
図である。図面に示すように進化シュミレート手段15
は、進化演算部、動作シュミレーション部、表示部、及
び指示入力部を備えている。進化演算部は、評価系と進
化適応系からなり、進化適応系は、エンジン回転数、ス
ロットル開度、吸気温度、及び大気圧を入力し、燃料噴
射補正量、点火時期補正量、及びバルブタイミング補正
量を出力する4入力3出力式の階層型ニューラル回路網
から成る制御モジュールを備えている(図7参照)。以
下に、図15のフローチャートを参照しながら、進化シ
ュミレート手段15の基本動作について説明する。 ・ステップ1:初期集団(第1世代)の生成 進化演算部の進化適応系は、使用者からの進化開始指示
が入力されると、そのニューラル回路網の結合係数を遺
伝子として乱数を用いてコーディングし、複数の個体
(本実施例では9個の個体1〜9)、即ち複数の染色体
からなる第1世代を生成する。各個体の遺伝子の値(即
ち、ニューラル回路網の結合係数の値)の初期値は予め
決められた範囲内(ほぼ−10〜10の間)でランダム
に決定する。またこの時、全ての遺伝子(結合係数)の
値が0になる個体を一つ生成することで、進化の過程で
進化前の性能を下回らないようにすることができる。 ・ステップ2:適応度の評価 次に、上記処理で得られた第1世代の1番目の個体の結
合係数から、進化演算部で制御出力(燃料噴射量、点火
時期、及びバルブタイミング)を演算し、その演算結果
を動作シュミレーション部の制御パラメータとして用い
て、走行シュミレーションを実行してトルク及び燃費を
求め、個体に対する評価を行う。この結果を表示部に送
り、表示部では個体のトルク及び燃費に関する特性を図
8に示す表現方法を用いてディスプレイ上に表示する。
個体の評価は、集団、即ち第一世代の全ての個体に対し
て行われ、各個体の評価は、図9に示すように同時に一
画面に表示される。 ・ステップ3:使用者による評価及び淘汰 9個の個体1〜9の全てに対する特性の表示が終了する
と、使用者による第1世代の個体の淘汰が行われる。こ
の淘汰は、例えば、ディスプレイを淘汰モードに切り替
え、図9に示すように、ディスプレイをタッチすること
により、第1世代の個体の中から使用者に、好みの特性
を持つ個体を幾つか選択させ、使用者に選択された個体
を親個体として残し、それ以外の個体を消去することに
より行われ得る。 ・ステップ4:交叉 上記した使用者による選択結果は、指示入力部を介して
進化演算部に送られ、進化演算部の評価系で、使用者に
より選択された親個体から乱数を用いて2個の個体を選
択し、これらに交叉演算を施して2個の子個体を生成す
る(図10参照)。この処理を5回行うことにより、再
び、9個の子個体からなる集団、即ち、第2世代が生成
される(10番目の子個体は捨てる)。前記個体間の交
叉には、例えば、1点交叉、2点交叉、又は正規分布交
叉等の手法が用いられる。 ・ステップ5:突然変異 9個の子個体を生成した後、これらの子個体に対して、
ある確率で遺伝子に突然変異を施し、結合係数に変位を
与える(図11参照)。 ・ステップ6 ステップ2〜ステップ6までの処理を使用者が満足いく
特性を持つ個体が得られるまで繰り返し行い、使用者
は、満足いく個体が得られた時点で、その個体を最適個
体とする指示を与え進化処理を終了させる。進化シュミ
レート手段13は、上記した処理により得られた、最適
個体を適用した最適制御モジュールを、外部記憶手段1
7に記憶させる。制御装置13の学習層では、必要に応
じて、前記進化シュミレート手段13で進化させた制御
モジュールを読み込んで、その学習用ニューラル回路網
に学習させ、学習終了後に、学習用ニューラル回路網を
実行用に切り替えて、前記、進化シュミレート手段13
により得られた制御モジュールによる制御を実行する。
ト手段15は、何れも使用者の指示に基づいて進化処理
を行う。従って、使用者が、進化処理を行う時に、実走
行による評価を行うか、動作シュミレーションの結果に
よる評価を行うかを選択して、制御装置13の進化適応
層又は進化シュミレート手段15の何れかを作動させる
ことで、制御装置13の進化適応層又は進化シュミレー
ト手段15の何れかで制御モジュールの進化処理が行わ
る。図16は、制御システム10における学習前の出力
と、上記制御装置13の進化適応層又は上記進化シュミ
レーション手段15から最適制御モジュールを学習した
後の出力との比較を燃料噴射パルスを例に挙げて示す比
較図である。この図16に示すように、上記した制御装
置13の進化適応層又は進化シュミレーション手段15
による進化処理により、エンジンは、使用者の好みに合
わせてドライバビリティ性能重視型又は燃費性能重視型
に調教されていく。
層を設け、かつ制御装置13の外部装置として進化シュ
ミレート手段15を設けることにより、使用者が、進化
処理を行う時に、実走行による評価を行うか、動作シュ
ミレーションの結果による評価を行うかを選択すること
が可能になり、より使用者及び使用環境に基づいた進化
的制御を実行することが可能になる。また、進化シュミ
レート手段15では、実走行を行わずに、進化を実行す
るので、使用者が各個体毎に実際に走行して評価を行う
等の手間を省くことができ、かつ、進化をより速く行う
ことができる。さらに、進化シュミレート手段15で
は、動作シュミレーションによる進化を行うので、使用
者が実際に走行したことのない使用環境での制御を、予
め予測して進化させておくことができる。また、進化シ
ュミレート手段15を設けることにより、例えば、他人
の進化させたエンジン等を自分の車両に適用して走行を
行うことが可能になり、制御の多様性が拡がる。さら
に、進化シュミレート手段15を例えば、図17に示す
ように、インターネット等の通信手段で他人の進化シュ
ミレート手段と結び、進化シュミレート手段における個
体の適応度の評価を、個体別に並列計算させ処理速度を
向上させることも可能になる。また、このように複数の
進化シュミレート手段を結ぶと、個体数が増えるので、
進化の多様性が向上し、よりよい進化を得ることも可能
になる。また、進化シュミレート手段15は、専用のシ
ュミレート装置で構成することもできるが、適当なシュ
ミレーションソフトを備えたパーソナルコンピュータで
も構成することができ、このように、パーソナルコンピ
ュータで進化シュミレート手段を構成すると、高価な専
用シュミレート装置を購入する必要がなくなるという効
果を奏する。
御方式の制御対象として車両用エンジンを適用している
が、この進化的制御方式の適用対象は本実施例に限定さ
れることなく任意のものでよく、例えば、車体のサスペ
ンションやシートのダンパー特性の制御又は、電気モー
タやエンジンを補助動力とする自転車或いは車イスにお
ける補助動力のアシスト特性、又はパーソナルロボット
の動作特性(きびきびした動作やのんびりした動作)の
制御に適用してもよい。また、上記第3の実施例では、
制御出力として噴射時間、点火時期、及び吸気バルブタ
イミングを用いているが、制御対象としてエンジンを適
用する場合の制御出力は上記の他、例えば、電子スロッ
トル開度、バルブリフト量、排気バルブタイミング、又
は吸排気制御用バルブタイミング等が考えられ得る(図
4参照)。ここで、吸気制御用バルブとは、タンブル及
びスワールの制御を行うために吸気管に設けられるバル
ブであり、また、排気制御バルブとは、排気脈動を制御
するために排気管に設けられるバルブである。さらに、
上記第3の実施例では、学習層を階層型ニューラル回路
網で構成しているが、学習層の制御系の構成は本実施例
に限定されることなく、例えば、CMAC(Cerebellar
Model Arithmetic Computer)を用いてもよい。CMAC
を用いる利点としては、階層型ニューラル回路網に比べ
て、追加学習の能力が優れていること、学習が高速であ
る等が挙げられる。また、上記第3の実施例では、進化
シュミレート層15を外部装置として設けているが、こ
れは本実施例に限定されることなく、例えば、反射層、
学習層、及び進化適応層等から成る制御手段に含まれて
もよい。さらにまた、上記実施例では、使用者が遺伝的
アルゴリズムによる染色体の淘汰を行うように説明して
いるが、前記染色体の淘汰、即ち、遺伝的アルゴリズム
による進化処理を行う者は使用者に限定されるものでは
なく、例えば、エンジン等の制御対象の製造業者が使用
者からの依頼に応じて行ってもよく、また、製造・販売
業者等が販売前に独自に行ってもよいことはいうまでも
ない。
式によれば、制御対象の特性を制御する制御系の制御特
性に影響を及ぼす係数を用いて複数の染色体を生成し、
各染色体に対して動作シュミレーションを行いながら、
前記動作シュミレーションの結果に基づく使用者の指示
により染色体の淘汰を行い遺伝的アルゴリズムにより染
色体を進化させているので、制御対象の特性を動作シュ
ミレーションを行いながら任意の特性に設定することが
でき、複数の使用者がそれぞれ満足する特性を実現する
ことができる。また、進化を実現する手段として遺伝的
アルゴリズムを用いているので、制御対象の進化を効果
的に行うことができる。また、遺伝的アルゴリズムの評
価を動作シュミレーションにより行うので、進化処理中
に制御対象を実際に動作させる必要がなく、制御対象の
進化を手軽にかつ、手早く行うことができる。また、本
発明の請求項2に係る進化的制御方式によれば、染色体
の淘汰を使用者が行えるので、出荷後に製品の特性を使
用者の好みに合わせて変えることができ、使用者毎にカ
スタマイズされたユーザフレンドリな製品を提供するこ
とができるという効果を奏する。また、制御対象の特性
を、使用者が自分の意志に基づいて変更することができ
るので、使用者の製品購入時の選択範囲を製品の特性が
制限することがなくなり、また、使用者に製品を自分独
自の特性をもつ製品に調教するという意識上の楽しみを
与えることができるという効果を奏する。また、請求項
3に係る進化的制御方式によれば、動作シュミレーショ
ンを外部装置で行うので、制御対象のある場所に拘束さ
れることなく、好きな場所で進化処理を行うことができ
る。また、請求項4に係る進化的制御方式によれば、外
部装置として一般家庭に広く普及されているパーソナル
コンピュータを使用するため、別途効果なシュミレート
装置を購入する必要がない。さらに、請求項5に係る進
化的制御方式によれば、使用者が、淘汰作業において製
品の特性を表すデータを参考にできるため、淘汰作業の
負荷が軽減できるという効果を奏する。さらに、請求項
6に係る進化的制御方式によれば、使用者が気に入った
特性の保存と呼び出しがいつでもできるため、その時の
気分や環境に応じて制御対象の動作特性をすばやく変更
することができる。さらにまた、請求項7に係る進化的
制御方式によれば、車両のエンジン特性を使用者の好み
に応じて自由に設定できるため、使用者毎に常に最適な
エンジン特性を得ることができる。また、請求項8に係
る進化的制御方式によれば、車両のサスペンションやシ
ートのダンパ特性を使用者の好みの応じて自由に設定で
きるため、使用者毎に常に最適な車体特性を得ることが
できる。さらに、請求項9に係る進化的制御方式によれ
ば、補助動力付き自転車や車イスのアシスト特性を使用
者の好みの応じて自由に設定できるため、使用者毎に常
に最適なアシスト特性を得ることができる。また、請求
項10に係る進化的制御方式によれば、パーソナルロボ
ットの動作特性を使用者の好みの応じて自由に設定でき
るため、使用者毎に常に最適な動作特性を得ることがで
きる。さらに、請求項11に係る進化的制御方式によれ
ば、通信により各使用者間の外部装置を接続すること
で、仮想的な並列計算機ができるため進化速度を向上さ
せることができ、また、個体数を増やすことが可能にな
るので、進化の多様性を向上させることができる。さら
に、使用者間で進化結果を手軽に共有利用することがで
きる。また、請求項12に係る進化的制御方式によれ
ば、制御対象の動作を制御する制御系の制御特性に影響
を及ぼす係数を用いて複数の染色体を生成し、各染色体
に対して動作シュミレーション又は実際に制御対象を動
作させながら使用者の指示に基づいて染色体の淘汰を行
い遺伝的アルゴリズムにより染色体を進化させるので、
使用者が、進化処理中の評価を、実際の動作結果から行
うか、又は動作シュミレート結果から行うかを任意に選
択することが可能になり、より、使用者の好みに合わせ
た制御を実行することが可能になる。
すブロック図である。
フローチャートである。
処理中の評価を行う制御手段と、進化シュミレート手段
とを組み合わせた制御システムの実施例の概念図であ
る。
システム10との関係を示す概略図である。
進化適応層の進化と学習層の学習に関するフローチャー
トである。
示す図である。
現方法を示す図である。
方法を示す図である。
する状態を概念的に示す図である。
ある。
に示す図である。
ートである。
ェクタの噴射パルスを例に挙げて示す図である。
ット等の通信手段で接続した例を示す図である。
Claims (12)
- 【請求項1】 制御対象の特性を制御する制御系の制御
特性に影響を及ぼす係数を用いて複数の染色体を生成
し、各染色体に対して動作シュミレーションを行いなが
ら、前記動作シュミレーションの結果に基づいて染色体
の淘汰を行い遺伝的アルゴリズムにより染色体を進化さ
せることを特徴とする進化的制御方式。 - 【請求項2】 染色体の淘汰を使用者の指示又は意志に
より行うことを特徴とする請求項1に記載の進化的制御
方式。 - 【請求項3】 前記動作シュミレーションを外部装置で
行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の進化的制
御方式。 - 【請求項4】 前記外部装置がパーソナルコンピュータ
であり、動作シュミレーションをシュミレーションソフ
トを用いて行うことを特徴とする請求項3に記載の進化
的制御方式。 - 【請求項5】 動作シュミレーションによる制御対象の
動作シュミレート結果を数字又は視覚表現等で表示し、
使用者がこの表示を参考にして、自分の好みに応じた染
色体をボタンや音声にて選択し、それ以外の染色体を淘
汰することを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記
載の進化的制御方式。 - 【請求項6】 進化により得られた制御系の制御特性を
保存し、必要に応じて保存した制御特性を呼び出して、
その制御特性を再現することを特徴とする請求項1〜5
の何れか一項に記載の進化的制御方式。 - 【請求項7】 制御対象が車両用エンジンであり、制御
系の制御特性が、エンジンの燃料噴射量、点火時期、電
子スロットル開度、吸排気バルブタイミング、バルブリ
フト量、吸排気制御バルブタイミング等の特性に関する
特性であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項
に記載の進化的制御方式。 - 【請求項8】 制御対象が車両であり、制御系の制御特
性が、車体のサスペンション又はシートのダンパーの特
性関する特性であることを特徴とする請求項1〜6の何
れか一項に記載の進化的制御方式。 - 【請求項9】 制御対象が電気モータ或いはエンジンを
補助動力とする自転車又は車イスであり、制御系の制御
特性が前記電気モータ或いはエンジンのアシスト特性に
関する特性であることを特徴とする請求項1〜6の何れ
か一項に記載の進化的制御方式。 - 【請求項10】 制御対象がパーソナルロボットであ
り、制御系の制御特性がパーソナルロボットの動作特性
に関する特性であることを特徴とする請求項1〜6の何
れか一項に記載の進化的制御方式。 - 【請求項11】 インターネット等の通信手段を用いて
複数の使用者の外部装置を接続し、進化を仮想的な並列
計算機により実現することを特徴とする請求項3〜10
の何れか一項に記載の進化的制御方式。 - 【請求項12】 制御対象の特性を制御する制御系の制
御特性に影響を及ぼす係数を用いて複数の染色体を生成
し、各染色体に対する動作シュミレーションと実際の制
御対象の動作とを組み合わせて、前記動作シュミレーシ
ョン又は実際の動作に基づく使用者の指示により染色体
の淘汰を行い遺伝的アルゴリズムにより染色体を進化さ
せることを特徴とする進化的制御方式。
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