JPH10104246A - 走査型プローブ顕微鏡の探針移動方法および移動機構 - Google Patents

走査型プローブ顕微鏡の探針移動方法および移動機構

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JPH10104246A
JPH10104246A JP27864196A JP27864196A JPH10104246A JP H10104246 A JPH10104246 A JP H10104246A JP 27864196 A JP27864196 A JP 27864196A JP 27864196 A JP27864196 A JP 27864196A JP H10104246 A JPH10104246 A JP H10104246A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 応答性を高め、探針・試料間の相対的な移動
動作(水平移動)で高速な移動を達成し、フェイルセー
フ機能を有し、探針や試料の破壊・損傷を防止する。 【解決手段】 この走査型プローブ顕微鏡は、大気環境
で測定が行われ、探針12の移動動作が行われる。探針12
はカンチレバー11の先部に設けられる。試料16の表面に
は吸着層16b が形成される。探針・試料の移動機構は粗
動を行う粗動ステージ31を含む。粗動ステージはスッテ
ピングモータを含み、パルス信号で駆動される。またカ
ンチレバーを発振させる圧電素子13を備える。粗動ステ
ージを駆動するパルス信号はカンチレバーの発振動作に
基づいて作られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は走査型プローブ顕微
鏡の探針移動方法および移動機構に関し、特に、大気環
境で探針を試料表面に沿って粗動させるとき、カンチレ
バーの振動動作で作られるパルス信号を利用して粗動動
作を制御し、探針・試料間を安全に保って高速に移動す
る方法および移動させる機構に関する。
【0002】
【従来の技術】走査型プローブ顕微鏡の代表例である原
子間力顕微鏡では、試料表面の或る観察場所の測定を行
うとき、当該観察場所で複数の測定点(サンプリング
点)を設定し、探針は複数の測定点を順次に微小移動
(微動)しながら、各測定点で測定を行う。測定点間の
微小移動はXY走査回路によって行われる。
【0003】また観察・測定を開始する前の段階では、
相対的に大きな移動(粗動)を行うため粗動機構によっ
て探針を試料表面に対して所定の微小距離になるよう接
近させる。この粗動機構による接近移動の動作制御で
は、探針が試料に衝突することにより探針および試料が
損傷することを避けることが必要である。粗動機構は、
さらに、探針が試料表面から離れる退避移動、他の観察
場所に移動するための試料表面にほぼ平行な移動(水平
移動)を行う働きを有する。
【0004】粗動機構(図示せず)によって探針を或る
観察場所から他の観察場所へ移動させる従来の例を図5
に従って説明する。この探針の移動では、観察場所71
から観察場所72に移るとき、まず観察場所71でカン
チレバー75の先端の探針73を試料表面74から大き
く離し(退避移動M1)、次に観察場所72に移動し
(水平移動M2)、さらに観察場所72で試料表面74
に接近する(接近移動M3)。原子間力顕微鏡によって
観察する試料表面の凹凸はサブミクロンオーダの凹凸で
あるが、試料表面の傾斜や異物の存在のために探針が試
料表面や異物に衝突するのを避けるため、退避移動M1
に示すごとく、通常、探針を数十ミクロン退避させた後
に他の観察場所へ移動させるようにしていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前述した従来の探針の
移動方法では、試料表面の傾きが大きい場合あるいは異
物が相対的に大きい場合、または水平移動の距離が大き
い場合に、退避のための移動量を大きくする必要が生じ
る。退避のための移動量が大きくなると、それに要する
時間、および次の観察場所での接近移動に要する時間が
増加し、全体として測定時間が長くなるという問題が提
起される。
【0006】また試料によっては、水平移動の際に探針
が試料表面などに接触するということもあり得る。この
ような場合、従来では、移動中の接触に起因するカンチ
レバー75の変位を検出し、急停止を行い、探針をさら
に退避させるようにした。しかしながら、機械系の慣性
のため急停止が間に合わず、探針の先端を破壊するおそ
れがある。従って、水平移動の速度を高めることができ
ないという問題が提起された。
【0007】また水平移動の速度を大きくするために
は、接触が生じないであろうと考えられる距離まで探針
73を退避させることが必要である。この距離は測定試
料に依存して決まるが、通常、数百ミクロンである。こ
のように退避させると、退避と接近の移動に時間を有
し、全体としての測定時間のスループットは低下する。
【0008】本発明の目的は、上記の課題を解決するこ
とにあり、試料表面上で或る観察場所から他の観察場所
へ探針を移動させるとき、高速移動を行うことができ、
全体の観察時間の短縮を達成できる走査型プローブ顕微
鏡の探針移動方法および移動機構を提供することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段および作用】第1の本発明
(請求項1に対応)に係る走査型プローブ顕微鏡の探針
移動方法は、上記目的を達成するため、探針と試料を相
対的に移動させる粗動装置を備え、探針と試料の表面と
の間の相互作用に基づき当該表面の微細性状を大気環境
で測定する走査型プローブ顕微鏡で実施される探針移動
方法であり、上記粗動装置はステッピングモータ等を含
んでパルス信号で駆動制御され、探針と試料を相対的に
移動させるとき、カンチレバーを発振させ、当該カンチ
レバーの発振動作で粗動装置を動作させるパルス信号を
作るように構成される。
【0010】第2の本発明(請求項2に対応)に係る走
査型プローブ顕微鏡の探針移動方法は、第1の発明の方
法において、探針を試料の表面に沿って実質的に平行に
移動させることを特徴とする。
【0011】第3の本発明(請求項3に対応)に係る走
査型プローブ顕微鏡の探針移動方法は、第1または第2
の発明の方法において、カンチレバーの発振動作で生じ
る周波信号を分周してパルス信号を作り、当該パルス信
号の周波数で移動の速度を決定するようにしたことを特
徴とする。
【0012】第1の本発明(請求項4に対応)に係る走
査型プローブ顕微鏡の移動機構は、上記目的を達成する
ため、次のように構成される。この走査型プローブ顕微
鏡は、大気環境で測定動作や移動動作が行われるもの
で、測定時に試料の測定表面に臨むように配置される探
針(プローブ)を先部に有するカンチレバーを備えてお
り、さらに当該カンチレバーと試料とを接近移動、退避
移動、水平移動させる機構部(粗動装置)を備える。大
気環境にある試料の表面には吸着層が形成されている。
カンチレバーと試料を接近させ探針を試料の表面に所要
間隔で配置し、これにより、探針と試料の表面との間の
相互作用に基づき当該表面の微細性状(凹凸形状等)を
測定する。本発明に係る移動機構は、かかる走査型プロ
ーブ顕微鏡に適用され、カンチレバーと試料を相対的に
粗動させる機構部の構成に関する。当該移動機構は、粗
動ステージからなり、例えばスッテピングモータによっ
て構成され、パルス信号で駆動されるにように構成され
る。またカンチレバーを発振(振動)させる構成を有
し、そのための発振装置を備える。上記の粗動ステージ
を駆動するためのパルス信号として、カンチレバーの発
振動作から得られる発振信号に基づいて作られるパルス
信号が使用される。
【0013】上記の構成によれば、探針と試料を相対的
に水平移動させるとき、カンチレバーを発振させ、カン
チレバーの発振動作で得られる交流電気信号を利用し
て、粗動ステージのパルス信号を生成した。従って、試
料と探針が接触する直前で試料表面の吸着層が探針を引
き込み、これによってカンチレバーの発振を停止させ、
上記パルス信号の発生をなくし、水平移動を自動的に停
止させることが可能となる。高速の移動動作を行いなが
ら、探針と試料と衝突を防ぎ、探針や試料の破損を防止
しながら、適切な距離で水平移動させることができる。
【0014】第2の本発明(請求項5に対応)に係る走
査型プローブ顕微鏡の移動機構は、上記の発明の構成に
おいて、カンチレバーの発振動作を交流電気信号に変換
する変換器と、交流電気信号を方形波信号に変換する波
形整形器と、方形波信号を分周する分周器を備え、この
分周器で得られた分周信号を上記パルス信号として用い
るように構成される。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の好適な実施形態
を添付図面に基づいて説明する。
【0016】図1は、本発明による探針移動方法を実行
する通常の接触モード(コンタクトモード)の原子間力
顕微鏡(以下「AFM」という)の例を示す。このAF
Mは、試料表面を観察(測定)する場合に接触状態で動
作する。また当該AFMは大気中の環境で観察が行われ
るものであることを前提としている。従って、観察を開
始する前の段階で、大気中に置かれた試料の表面には吸
着層が形成されている。この吸着層は、大気中の水分子
が試料表面に着くことに層状に形成されるものであり、
ほぼ数ナノメータ(nm)の厚みを有する層となってい
る。
【0017】AFMに含まれる粗動装置すなわち下記の
粗動ステージ31は、相対的に試料表面に対して探針を
接近移動、退避移動、水平移動(平行移動)させるため
の装置である。AFMによって大気環境でかつ接触モー
ドで試料表面の観察・測定を行うときに、粗動装置によ
って探針と試料の位置関係を相対的に大きく変える。例
えば観察開始前に探針を試料表面に接近させるとき、ま
たは或る観察場所から他の観察場所へ探針を移動させる
とき、粗動ステージ31が利用される。
【0018】図1に従ってAFMの構成および動作を説
明する。
【0019】11はカンチレバーで、その先端に探針1
2が設けられている。カンチレバー11の基部は加振用
圧電素子13を介してフレーム14の上部に固定され
る。フレーム14の下部にはXYZスキャナ15と粗動
ステージ31が設けられる。XYZスキャナ15は粗動
ステージ31の上に設けられ、粗動ステージ31はフレ
ーム14の下部に固定される。XYZスキャナ15の上
面には試料16が配置される。XYZスキャナ15は、
直交する3軸(X軸、Y軸、Z軸)の各軸方向に微小な
変位を発生するための圧電素子からなる微動駆動部(X
軸方向駆動部、Y軸方向駆動部、Z軸方向駆動部)を内
蔵している。これによって、試料16を任意の方向に微
小距離だけ移動させることができる。XYZスキャナ1
5は、観察・測定時における探針・試料間の距離の調整
やXY走査移動のための微動機構として働く。粗動ステ
ージ31は、XYZスキャナ15および試料16をX,
Y,Zの各軸方向に比較的に大きな距離で移動させるも
ので、前述の通り、相対的に探針12と試料16を接近
させる場合、探針12を試料表面から退避させる場合、
または試料表面に沿ってほぼ平行に探針12を移動させ
る場合に用いられる。粗動ステージ31は、具体的に、
例えばステッピングモータなどの作動装置を内蔵し、こ
のステッピングモータによって上記移動のための動作を
行う。従って、粗動ステージ31には、外部からステッ
ピングモータを動作させる駆動信号としてのパルス信号
(Px,Py,Pz)32が入力される。
【0020】上記構成において、試料16の表面上で設
定された或る観察場所を観察する場合、当該観察場所に
複数の測定点(サンプリング点)が設定され、探針12
は決められた順序で試料表面の各測定点へ移動して測定
を行う。測定点で、探針12は、その先端が試料表面に
実質的に接触した状態で試料16に対向する。探針12
と試料16の接近状態は、通常の接触モードの観察が開
始される前の段階で、粗動ステージ31を動作させるこ
とにより設定される。
【0021】カンチレバー11の上方にはレーザ光源1
7が配置され、レーザ光源17から出射されたレーザ光
18はカンチレバー11の背面先部付近の反射面を照射
する。当該反射面で反射されたレーザ光18は位置セン
サ(光検出器)19の受光面に入射される。レーザ光源
17とカンチレバー11と位置センサ19によって光て
こ方式の変位検出器(検出光学系)が構成される。カン
チレバー11の先端部が、探針12と試料16の表面と
の間に生じる原子間力(物理的作用)に基づいて図1中
Z軸方向へ変位すると、位置センサ19の受光面内で反
射光のスポット位置が変位する。位置センサ19は、反
射光のスポット位置の変位を電圧値の変化に変換して出
力する。こうして、カンチレバー11の先端部のZ軸方
向の変化すなわち探針12のZ軸方向の変化は、位置セ
ンサ19の出力電圧の変化として取り出される。
【0022】次に、制御系(信号処理系)について説明
する。位置センサ19から出力される電圧信号は、切換
えスイッチ33の接続状態によって下記の2つの系統の
いずれかに供給される。切換えスイッチ33の切換え動
作は、自動または手動によって行われる。
【0023】第1の系統は、図1において切換えスイッ
チ33が下側の端子33aに接続される場合で、信号増
幅器34とサーボ装置35から構成される。この第1系
統は、試料16の表面の通常測定に関連する制御系であ
る。測定の際の位置センサ19から出力される電圧信号
は、探針12のZ軸方向の位置、すなわちカンチレバー
11のたわみ量を表す信号であり、当該電圧信号は、信
号増幅器34とサーボ装置35を経由して、XYZスキ
ャナ15のZ軸方向駆動部を動作させる駆動信号Vzに
変換され、XYZスキャナ15に供給される。信号増幅
器34は、位置センサ19の出力信号を所要のレベルま
で増幅する。信号増幅器34の出力信号はサーボ装置3
5に入力される。このサーボ装置35は、演算制御部3
6aと表示部36bを備える演算処理装置36からバス
37を経由して指示されるサーボ制御条件に従って、入
力された信号を上記駆動信号Vzに変換する。この駆動
信号VzによってXYZスキャナ15内のZ軸方向駆動
部が動作し、試料16のZ軸方向の位置が調整され、探
針12と試料16との距離が所定距離(実質的な接触状
態)に保持され、試料16の表面の凹凸形状が測定され
る。
【0024】より詳しくは、演算処理装置36はコンピ
ュータで構成され、CPUと記憶部を備える。その記憶
部(ハードディスク、フロッピーディスク等)には試料
表面を測定するためAFMの移動動作(粗動と微動)を
制御するプログラム(測定プログラム)と、測定データ
を記憶して、この測定データから試料16の観察表面の
微細形状に関する画像を上記表示部36bに表示するた
めの画像データを作成するための処理を行うプログラム
(画像作成プログラム)が記憶される。
【0025】サーボ装置35は、探針・試料の間が所定
距離になるように、XYZスキャナ15に対してそのZ
軸方向駆動部の駆動信号Vzを与える。XYZスキャナ
15のZ軸方向駆動部によるZ軸方向の動作に関してサ
ーボ装置35にサーボ動作を行わせた状態で、XY走査
回路部を用いてXYZスキャナ15のXとYの各軸方向
の駆動部を動作させ、探針12に試料16のXY平面を
走査させる。このとき、観察領域における各測定点のX
Y平面内の座標と、各測定点のVz(サーボ装置35の
出力電圧値)が、演算処理装置36の記憶部に測定デー
タとして記憶される。記憶部に記憶された測定データ
は、前述の画像作成プログラムによって逐次にあるいは
一括して処理され、試料16における観察場所の表面形
状に関する画像データを作成し、この画像データを用い
て表示部36bの画面に測定画像を表示する。こうして
試料16の観察場所の表面形状が得られる。
【0026】なお試料表面の通常の観察・測定におい
て、上記の通り、上記探針・試料間の距離の調整のため
のZ軸方向の制御に併せて、探針で試料表面を走査する
ための位置制御が必要となる。この走査の位置制御のた
めの駆動信号は、演算処理装置36に内蔵されるXY走
査回路部から信号Vx,VyとしてXYZスキャナ15
に与えられる。
【0027】接触モードAFMは、観察場所で測定動作
を行う際、カンチレバー11は非振動状態にあり、探針
12と試料16の間は実質的に接触状態に保持される。
また粗動ステージ31の動作によって或る観察場所から
他の観察場所へ移動するときには、以下に説明するよう
に、カンチレバー11は圧電素子13によって加振され
て発振(振動)状態にあり、当該振動状態に基づいて得
られる交流信号を利用して高速移動の機能と接触時のフ
ェイルセーフの機能が実現される。
【0028】次に、第2の系統は、図1において切換え
スイッチ33が上側の端子33bに接続される場合で、
波形整形器41と分周器42から構成される。この第2
系統は、高速移動モードに関連する制御系である。波形
整形器41は位置センサ19から出力される後述するよ
うな交流電圧信号を入力し、これに基づいて同じ周波数
の方形波形の周期信号を作る。分周器42は、波形整形
器41の出力信号を分周して所定の周波数のパルス信号
を作り、粗動ステージ31を駆動するための上記パルス
信号32を出力する。パルス信号32は粗動ステージ3
1に対し駆動信号として与えられる。波形整形器41お
よび分周器42の各々の動作、並びに高速移動モードの
制御の方法は以下に説明される。
【0029】43は、カンチレバー11を振動させるた
めの加振用圧電素子13を駆動する信号を与える発振器
である。発振器43は、駆動信号を生成するための周期
信号を演算処理装置36から与えられる。
【0030】次に、前述の高速移動モードに関連する制
御系の動作と制御手順を、上記の図1、図2〜図4を参
照して説明する。さらに試料表面に対する探針の動きの
説明として前述の図5を利用する。
【0031】この高速移動は、試料16の表面の或る観
察場所から他の観察場所への探針移動に関するもので、
粗動ステージ31によって当該移動が行われる。粗動ス
テージ31は実際には試料16の側を移動させるもので
あるが、相対的な関係であることから、探針12の移動
として説明する。探針の移動を開始する前の状態では、
探針12は試料16の表面に対して接近した状態にあ
り、探針と試料表面との間では数nN(ナノニュート
ン)〜数十nNの原子間力が働いている。これは、図5
のA1の状態であり、或る観察場所における静止状態で
ある。
【0032】まず最初に試料16の表面からカンチレバ
ー11と探針12を約10ミクロン退避させる(図5に
おけるA2の状態)。この退避移動は、粗動ステージ3
1によって行われる。図1で、演算制御部36aから出
力されるパルス信号Pzは、粗動ステージ31に含まれ
るZ軸方向用の駆動部すなわちステッピングモータを駆
動するための信号であり、これにより退避移動と接近移
動が行われる。高速移動モードとして切換えスイッチ3
3は図1中上側端子33bに接続される。また、発振器
43の出力信号によって加振用圧電素子13を駆動し、
カンチレバー11をその共振周波数f0 で発振させる。
振動状態にあるカンチレバー11に対してはレーザ光源
18からレーザ光が照射され、その反射光は位置センサ
19に入射する。カンチレバー11の振動動作は位置セ
ンサ19によってモニタされる。図2の(a)は、位置
センサ19から出力される交流電気信号44の状態を示
し、カンチレバー11の振動状態を実質的に示してい
る。交流電気信号44の周波数はおよそ数十kHzであ
る。交流電気信号44において、最低の値をとる時、カ
ンチレバー11はもっとも試料側に接近した状態にあ
る。
【0033】高速移動モードにあるとき切換えスイッチ
33は端子33bに接続されるので、位置センサ19の
出力信号すなわち電気信号44は、波形整形器41によ
って図2の(b)のような方形波信号45に整形され
る。この方形波信号45は分周器42に入力され、分周
器42は分周処理する。この実施形態では図2の(c)
に示すように例えば1/4に分周された分周信号が生成
される。この分周信号は、前述のパルス信号32に相当
する。上記分周比は、演算処理装置36から指示され
る。
【0034】分周器42から出力される分周信号すなわ
ち上記パルス信号32は粗動ステージ31に供給され
る。粗動ステージ31はX軸用およびY軸用のステッピ
ングモータを内蔵する。パルス信号32はこれらのステ
ッピングモータに対して駆動信号として与えられる。ス
テッピングモータは、入力した分周信号を用いて例えば
1パルスについて0.5μmだけ探針12を移動させ
る。図1で、パルス信号32のX軸成分はPx、Y軸成
分はPyで示される。Px,Pyの周期で粗動ステージ
31によるX軸またはY軸の各方向の速度が決まる。換
言すれば、分周器42で設定された分周比によって探針
12の移動速度が決定される。当該分周比は演算処理装
置36によって指示され、分周比は任意に変更すること
ができる。
【0035】図2の交流電気信号44とパルス信号32
の位相関係から明らかなように、粗動ステージ31に内
蔵されるXYの各ステッピングモータを駆動するための
パルス信号の発生する時期は、発振状態にあるカンチレ
バー11が試料16の表面から遠ざかるように変位する
時期に合わせてある。探針12と試料表面が接触する可
能性を小さくするためである。
【0036】なお、本実施形態におけるカンチレバー1
1は、例えば、窒化珪素で作られ、全長が100μm、
バネ定数が約0.1N/m、共振周波数は約20kHz
である。
【0037】上記のパルス信号32の成分Px,Pyが
粗動ステージ31に与えられることにより、探針12は
試料表面に沿ってほぼ平行な状態で移動(水平移動)す
る。図3は、カンチレバー11が発振しながら移動する
状態を示す。カンチレバー11は振幅数μmで発振して
いる(矢印B)。分周器42における分周比を例えば1
/16に設定すると、1秒間に1250パルスが与えら
れるので、粗動ステージ31による移動速度は625μ
m/秒となる。図3の移動例では、移動の途中に試料1
6の表面において凸部(または傾斜部)16aが形成さ
れ、探針12がこの凸部16aに接触して探針12の移
動が停止する状態を示すものである。移動は、粗動ステ
ージ31によって試料16を左側に移動すること(矢印
C)によって、実質的に試料表面に対して探針12およ
びカンチレバー11を右方向に移動させている。試料1
6の凸部16aは次第に振動状態にあるカンチレバー1
1すなわち先部の探針12に接近し、接触状態が発生す
るようになる。
【0038】図3(a)は、カンチレバー11およびそ
の先部の探針12が振動しながら、試料16の表面に沿
ってほぼ平行な移動軌跡で図中右方向に移動している状
態を示す。実際の動作としては、カンチレバー11と探
針12は振動するだけであり、試料16が粗動ステージ
31によって図中左方向に移動している。探針12は試
料16の表面から約10ミクロン離れた位置にて約数ミ
クロンの振幅で振動している。試料16には凸部16a
が存在し、試料表面の全体には前述した吸着層16bが
形成されている。
【0039】図3(b),(c)は、探針12の先端
が、凸部16aの表面の吸着層16bに接触しようとす
る状態を示す。より詳しくは、図3(b)では探針先端
が吸着層表面に接触し、図3(c)では探針12が吸着
層16bに吸着されている。探針12に対しては吸着層
16bの表面張力が作用し、探針12が吸着層16bの
中に引き込まれる。これによってカンチレバー11は大
きく試料側に変位する。探針12が試料表面の吸着層1
6bに吸着されると、カンチレバー11の振動は停止す
る。
【0040】一方、図2を再び参照すると、探針12が
試料16から遠ざかる方向にカンチレバー11が変位し
たとき波形整形器41からパルスが出力され、かかるパ
ルスが連続的に生じて方形波信号45が生成される。そ
して、このようにして波形整形器41から出力された方
形波信号45を分周して分周信号、すなわち粗動ステー
ジ31を動作させるためのパルス信号32を作り出す。
従って、カンチレバー11の発振が停止すると、方形波
信号45は生成されず、それ故にパルス信号32も発生
しない。従って、吸着層16bから探針12が解放され
ない限り、カンチレバー11の発振は停止状態に保持さ
れる。カンチレバー11の発振が停止状態になると、分
周器42からパルス信号32は出力されないので、その
後、粗動ステージ31に駆動用のパルス信号32が入力
されることはない。従って、試料16は停止状態に保持
される。
【0041】なお、図3(d)に示すごとく、機械系の
慣性のために試料16が左方へ移動しても、カンチレバ
ー11は吸着層16bの吸着作用によって試料表面側に
余分に変位しているため(図3(b)に示す)、カンチ
レバー11や探針12を破損するほどの大きな力が作用
することはない。
【0042】このように試料表面に対して粗動ステージ
31によって探針12(カンチレバー11)を水平移動
させ、探針12が凸部16aの吸着層16bに接触する
と、吸着層16bの引き込み力によってカンチレバー1
1の発振が停止し、試料16はそれ以上に探針12に接
近せず、自動停止動作が完了する。これによって、高速
の水平移動を行いながら、接触時に自動停止を行い、探
針や試料の破損を防止する。
【0043】しかしながら、探針12の停止箇所が目的
とする観察場所(目的地)でない場合には、再度移動を
開始しなければならない。図4に、水平移動に関する全
体の制御ステップを示す。ステップS11では水平移動
の処理が行われる。水平移動の処理では、パルス信号3
2に応じて、設定された単位距離(1ステップ)ごとの
移動が行われる。判断ステップS12では、水平移動を
行いながら目的地に到達したか否かが判断される。目的
地すなわち他の観察場所に到達したときに、カンチレバ
ー11の発振動作を停止する(ステップS13)。その
場所で、探針12は試料16の表面に接近し、測定を開
始する(ステップS14)。水平移動の最中に、試料1
6の表面の凸部16aに接触すると、前述のごとく、探
針12とカンチレバー11の水平移動は自動的に停止す
る。この場合、目的地に達していないので、ステップS
15,S16が実行される。探針12が凸部16aに接
触して停止したか否かはカンチレバー11の発振状態で
判断される(ステップS15)。カンチレバー11が発
振状態を持続する限り、ステップS11に戻って水平移
動を継続する。カンチレバー11が発振していない場合
には、ステップS16でカンチレバー11を退避させ、
再び発振させ、ステップS15の判断を経由してステッ
プS11に戻り、水平移動を再び行う。最終的には、目
的地に到達するまで水平移動のための制御が実行され
る。
【0044】上記構成によれば、分周器42における分
周比を設定することによって所望の水平移動速度を設定
でき、また高速な移動速度を設定できる。さらに試料表
面の吸着層16bと探針12との間の作用で、カンチレ
バー11の発振を停止させ、試料16と探針12の接触
による破損を防止することができ、試料16と探針12
との衝突を避けるためのフェイルセーフ機能が作用す
る。
【0045】上記実施形態によれば、ステッピングモー
タ等のパルス駆動型の粗動ステージ31を利用すること
により、試料表面に沿ってほぼ平行に探針を移動させる
装置を簡単な構成にて実現することができ、かつフェイ
ルセーフの機能によって十分な保護が図られている。例
えば、レーザ光源17や位置センサ19の不良によりカ
ンチレバー11の動作をモニタできなくなった場合にも
探針・試料の相対的移動の動作は停止する。さらに、特
に動作停止の判定にコンピュータ等の特別の装置を必要
とせず、安価に実現することができる。
【0046】前述の実施形態では、粗動装置である粗動
ステージ31を試料側に設けたが、カンチレバー側に設
けることができるのは勿論である。
【0047】また前述の実施形態ではAFMで説明した
が、同様な構成および作用を有する走査型プローブ顕微
鏡に対して本発明を適用できるのは勿論である。
【0048】さらに上記実施形態では測定時の動作を接
触モードとしたが、必ずこれに限定されるというもので
はなく、非接触モードや周期的に接触するモードのAF
Mであっても、本発明の構成を適用できる。本発明は、
走査型プローブ顕微鏡一般に適用できるのは勿論であ
る。
【0049】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように本発明によ
れば、走査型プローブ顕微鏡で探針・試料間で水平移動
を行うに当たって、試料表面に吸着層が形成される大気
環境での移動動作であり、カンチレバーを発振させ、探
針・試料間の水平移動をパルス駆動の粗動装置を用いて
行い、かつ当該粗動装置を駆動するパルス信号をカンチ
レバーの発振動作に基づいて作るようにしたため、当該
パルス信号を適宜に作ることによって高速に水平移動が
できると共に、吸着層の探針引き込み作用とカンチレバ
ーの停止状態の特長に基づいてカンチレバーの発振動作
を探針や試料を破壊・損傷することなく安全に停止する
ことができる。このように、応答性を高くし、高速な水
平移動を達成でき、さらに、特別な構成を加えることな
くそれ自体でフェイルセーフ機能を備えることができ
る。また従来の移動方法に比較して移動前の段階で退避
距離を小さく設定でき、退避移動のための時間、水平移
動後の接近移動のための時間を短縮でき、観察のための
装置全体のスループットを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の代表的な実施形態を示す構成図であ
る。
【図2】装置各部の信号の波形を示す波形図である。
【図3】探針と試料の接触状態を説明する図である。
【図4】水平移動のための制御を示すフローチャートで
ある。
【図5】従来のAFMにおける水平移動の問題を説明す
る図である。
【符号の説明】
11 カンチレバー 12 探針 13 加振用圧電素子 15 XYZスキャナ 16 試料 16a 凸部 16b 吸着層 17 レーザ光源 19 位置センサ 31 粗動ステージ 32 パルス信号 34 信号増幅器 35 サーボ装置 36 演算処理装置 41 波形整形器 42 分周器 43 発振器

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 探針と試料を相対的に移動させる粗動装
    置を備え、前記探針と前記試料の表面との間の相互作用
    に基づき当該表面の微細性状を大気環境で測定する走査
    型プローブ顕微鏡において、前記粗動装置はパルス信号
    で駆動制御され、前記探針と前記試料を相対的に移動さ
    せるとき、カンチレバーを発振させ、当該カンチレバー
    の発振動作で前記粗動装置を動作させる前記パルス信号
    を作るようにしたことを特徴とする走査型プローブ顕微
    鏡の探針移動方法。
  2. 【請求項2】 前記探針を前記試料の表面に沿って実質
    的に平行に移動させることを特徴とする請求項1記載の
    走査型プローブ顕微鏡の探針移動方法。
  3. 【請求項3】 前記カンチレバーの発振動作で生じる周
    波信号を分周して前記パルス信号を作り、当該パルス信
    号の周波数で移動の速度を決定するようにしたことを特
    徴とする請求項1または2記載の走査型プローブ顕微鏡
    の探針移動方法。
  4. 【請求項4】 探針を有するカンチレバーを備え、前記
    探針と試料の表面との間の相互作用に基づき当該表面の
    微細性状を大気環境で測定する走査型プローブ顕微鏡に
    おいて、 パルス信号で動作するように構成され、前記探針と前記
    試料を相対的に移動させる粗動装置と、 前記カンチレバーを発振させる発振装置とを備え、 前記パルス信号で前記粗動装置を駆動して前記探針と前
    記試料を相対的に移動させるとき、前記カンチレバーの
    発振動作から得られる発振信号に基づいて前記パルス信
    号を生成する手段を設けたことを特徴とする走査型プロ
    ーブ顕微鏡の移動機構。
  5. 【請求項5】 前記カンチレバーの発振動作を交流電気
    信号に変換する変換器と、前記交流電気信号を方形波信
    号に変換する波形整形器と、前記方形波信号を分周する
    分周器を備え、この分周器で得られた分周信号を前記パ
    ルス信号として用いたことを特徴とする請求項4記載の
    走査型プローブ顕微鏡の移動機構。
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