JP3548972B2 - 走査型プローブ顕微鏡の探針移動方法および移動機構 - Google Patents

走査型プローブ顕微鏡の探針移動方法および移動機構 Download PDF

Info

Publication number
JP3548972B2
JP3548972B2 JP27864196A JP27864196A JP3548972B2 JP 3548972 B2 JP3548972 B2 JP 3548972B2 JP 27864196 A JP27864196 A JP 27864196A JP 27864196 A JP27864196 A JP 27864196A JP 3548972 B2 JP3548972 B2 JP 3548972B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
probe
sample
cantilever
signal
pulse signal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP27864196A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH10104246A (ja
Inventor
浩史 黒田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Construction Machinery Co Ltd
Original Assignee
Hitachi Construction Machinery Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Construction Machinery Co Ltd filed Critical Hitachi Construction Machinery Co Ltd
Priority to JP27864196A priority Critical patent/JP3548972B2/ja
Publication of JPH10104246A publication Critical patent/JPH10104246A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3548972B2 publication Critical patent/JP3548972B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Length Measuring Devices With Unspecified Measuring Means (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は走査型プローブ顕微鏡の探針移動方法および移動機構に関し、特に、大気環境で探針を試料表面に沿って粗動させるとき、カンチレバーの振動動作で作られるパルス信号を利用して粗動動作を制御し、探針・試料間を安全に保って高速に移動する方法および移動させる機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
走査型プローブ顕微鏡の代表例である原子間力顕微鏡では、試料表面の或る観察場所の測定を行うとき、当該観察場所で複数の測定点(サンプリング点)を設定し、探針は複数の測定点を順次に微小移動(微動)しながら、各測定点で測定を行う。測定点間の微小移動はXY走査回路によって行われる。
【0003】
また観察・測定を開始する前の段階では、相対的に大きな移動(粗動)を行うため粗動機構によって探針を試料表面に対して所定の微小距離になるよう接近させる。この粗動機構による接近移動の動作制御では、探針が試料に衝突することにより探針および試料が損傷することを避けることが必要である。粗動機構は、さらに、探針が試料表面から離れる退避移動、他の観察場所に移動するための試料表面にほぼ平行な移動(水平移動)を行う働きを有する。
【0004】
粗動機構(図示せず)によって探針を或る観察場所から他の観察場所へ移動させる従来の例を図5に従って説明する。この探針の移動では、観察場所71から観察場所72に移るとき、まず観察場所71でカンチレバー75の先端の探針73を試料表面74から大きく離し(退避移動M1)、次に観察場所72に移動し(水平移動M2)、さらに観察場所72で試料表面74に接近する(接近移動M3)。原子間力顕微鏡によって観察する試料表面の凹凸はサブミクロンオーダの凹凸であるが、試料表面の傾斜や異物の存在のために探針が試料表面や異物に衝突するのを避けるため、退避移動M1に示すごとく、通常、探針を数十ミクロン退避させた後に他の観察場所へ移動させるようにしていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述した従来の探針の移動方法では、試料表面の傾きが大きい場合あるいは異物が相対的に大きい場合、または水平移動の距離が大きい場合に、退避のための移動量を大きくする必要が生じる。退避のための移動量が大きくなると、それに要する時間、および次の観察場所での接近移動に要する時間が増加し、全体として測定時間が長くなるという問題が提起される。
【0006】
また試料によっては、水平移動の際に探針が試料表面などに接触するということもあり得る。このような場合、従来では、移動中の接触に起因するカンチレバー75の変位を検出し、急停止を行い、探針をさらに退避させるようにした。しかしながら、機械系の慣性のため急停止が間に合わず、探針の先端を破壊するおそれがある。従って、水平移動の速度を高めることができないという問題が提起された。
【0007】
また水平移動の速度を大きくするためには、接触が生じないであろうと考えられる距離まで探針73を退避させることが必要である。この距離は測定試料に依存して決まるが、通常、数百ミクロンである。このように退避させると、退避と接近の移動に時間を有し、全体としての測定時間のスループットは低下する。
【0008】
本発明の目的は、上記の課題を解決することにあり、試料表面上で或る観察場所から他の観察場所へ探針を移動させるとき、高速移動を行うことができ、全体の観察時間の短縮を達成できる走査型プローブ顕微鏡の探針移動方法および移動機構を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段および作用】
第1の本発明(請求項1に対応)に係る走査型プローブ顕微鏡の探針移動方法は、上記目的を達成するため、探針と試料を相対的に移動させる粗動装置を備え、探針と試料の表面との間の相互作用に基づき当該表面の微細性状を大気環境で測定する走査型プローブ顕微鏡で実施される探針移動方法であり、上記粗動装置はステッピングモータ等を含んでパルス信号で駆動制御され、探針と試料を相対的に移動させるとき、カンチレバーを発振させ、当該カンチレバーの発振動作で粗動装置を動作させるパルス信号を作るように構成される。
【0010】
第2の本発明(請求項2に対応)に係る走査型プローブ顕微鏡の探針移動方法は、第1の発明の方法において、探針を試料の表面に沿って実質的に平行に移動させることを特徴とする。
【0011】
第3の本発明(請求項3に対応)に係る走査型プローブ顕微鏡の探針移動方法は、第1または第2の発明の方法において、カンチレバーの発振動作で生じる周波信号を分周してパルス信号を作り、当該パルス信号の周波数で移動の速度を決定するようにしたことを特徴とする。
【0012】
第1の本発明(請求項4に対応)に係る走査型プローブ顕微鏡の移動機構は、上記目的を達成するため、次のように構成される。この走査型プローブ顕微鏡は、大気環境で測定動作や移動動作が行われるもので、測定時に試料の測定表面に臨むように配置される探針(プローブ)を先部に有するカンチレバーを備えており、さらに当該カンチレバーと試料とを接近移動、退避移動、水平移動させる機構部(粗動装置)を備える。大気環境にある試料の表面には吸着層が形成されている。カンチレバーと試料を接近させ探針を試料の表面に所要間隔で配置し、これにより、探針と試料の表面との間の相互作用に基づき当該表面の微細性状(凹凸形状等)を測定する。本発明に係る移動機構は、かかる走査型プローブ顕微鏡に適用され、カンチレバーと試料を相対的に粗動させる機構部の構成に関する。当該移動機構は、粗動ステージからなり、例えばスッテピングモータによって構成され、パルス信号で駆動されるにように構成される。またカンチレバーを発振(振動)させる構成を有し、そのための発振装置を備える。上記の粗動ステージを駆動するためのパルス信号として、カンチレバーの発振動作から得られる発振信号に基づいて作られるパルス信号が使用される。
【0013】
上記の構成によれば、探針と試料を相対的に水平移動させるとき、カンチレバーを発振させ、カンチレバーの発振動作で得られる交流電気信号を利用して、粗動ステージのパルス信号を生成した。従って、試料と探針が接触する直前で試料表面の吸着層が探針を引き込み、これによってカンチレバーの発振を停止させ、上記パルス信号の発生をなくし、水平移動を自動的に停止させることが可能となる。高速の移動動作を行いながら、探針と試料と衝突を防ぎ、探針や試料の破損を防止しながら、適切な距離で水平移動させることができる。
【0014】
第2の本発明(請求項5に対応)に係る走査型プローブ顕微鏡の移動機構は、上記の発明の構成において、カンチレバーの発振動作を交流電気信号に変換する変換器と、交流電気信号を方形波信号に変換する波形整形器と、方形波信号を分周する分周器を備え、この分周器で得られた分周信号を上記パルス信号として用いるように構成される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明による探針移動方法を実行する通常の接触モード(コンタクトモード)の原子間力顕微鏡(以下「AFM」という)の例を示す。このAFMは、試料表面を観察(測定)する場合に接触状態で動作する。また当該AFMは大気中の環境で観察が行われるものであることを前提としている。従って、観察を開始する前の段階で、大気中に置かれた試料の表面には吸着層が形成されている。この吸着層は、大気中の水分子が試料表面に着くことに層状に形成されるものであり、ほぼ数ナノメータ(nm)の厚みを有する層となっている。
【0017】
AFMに含まれる粗動装置すなわち下記の粗動ステージ31は、相対的に試料表面に対して探針を接近移動、退避移動、水平移動(平行移動)させるための装置である。AFMによって大気環境でかつ接触モードで試料表面の観察・測定を行うときに、粗動装置によって探針と試料の位置関係を相対的に大きく変える。例えば観察開始前に探針を試料表面に接近させるとき、または或る観察場所から他の観察場所へ探針を移動させるとき、粗動ステージ31が利用される。
【0018】
図1に従ってAFMの構成および動作を説明する。
【0019】
11はカンチレバーで、その先端に探針12が設けられている。カンチレバー11の基部は加振用圧電素子13を介してフレーム14の上部に固定される。フレーム14の下部にはXYZスキャナ15と粗動ステージ31が設けられる。XYZスキャナ15は粗動ステージ31の上に設けられ、粗動ステージ31はフレーム14の下部に固定される。XYZスキャナ15の上面には試料16が配置される。XYZスキャナ15は、直交する3軸(X軸、Y軸、Z軸)の各軸方向に微小な変位を発生するための圧電素子からなる微動駆動部(X軸方向駆動部、Y軸方向駆動部、Z軸方向駆動部)を内蔵している。これによって、試料16を任意の方向に微小距離だけ移動させることができる。XYZスキャナ15は、観察・測定時における探針・試料間の距離の調整やXY走査移動のための微動機構として働く。粗動ステージ31は、XYZスキャナ15および試料16をX,Y,Zの各軸方向に比較的に大きな距離で移動させるもので、前述の通り、相対的に探針12と試料16を接近させる場合、探針12を試料表面から退避させる場合、または試料表面に沿ってほぼ平行に探針12を移動させる場合に用いられる。粗動ステージ31は、具体的に、例えばステッピングモータなどの作動装置を内蔵し、このステッピングモータによって上記移動のための動作を行う。従って、粗動ステージ31には、外部からステッピングモータを動作させる駆動信号としてのパルス信号(Px,Py,Pz)32が入力される。
【0020】
上記構成において、試料16の表面上で設定された或る観察場所を観察する場合、当該観察場所に複数の測定点(サンプリング点)が設定され、探針12は決められた順序で試料表面の各測定点へ移動して測定を行う。測定点で、探針12は、その先端が試料表面に実質的に接触した状態で試料16に対向する。探針12と試料16の接近状態は、通常の接触モードの観察が開始される前の段階で、粗動ステージ31を動作させることにより設定される。
【0021】
カンチレバー11の上方にはレーザ光源17が配置され、レーザ光源17から出射されたレーザ光18はカンチレバー11の背面先部付近の反射面を照射する。当該反射面で反射されたレーザ光18は位置センサ(光検出器)19の受光面に入射される。レーザ光源17とカンチレバー11と位置センサ19によって光てこ方式の変位検出器(検出光学系)が構成される。カンチレバー11の先端部が、探針12と試料16の表面との間に生じる原子間力(物理的作用)に基づいて図1中Z軸方向へ変位すると、位置センサ19の受光面内で反射光のスポット位置が変位する。位置センサ19は、反射光のスポット位置の変位を電圧値の変化に変換して出力する。こうして、カンチレバー11の先端部のZ軸方向の変化すなわち探針12のZ軸方向の変化は、位置センサ19の出力電圧の変化として取り出される。
【0022】
次に、制御系(信号処理系)について説明する。位置センサ19から出力される電圧信号は、切換えスイッチ33の接続状態によって下記の2つの系統のいずれかに供給される。切換えスイッチ33の切換え動作は、自動または手動によって行われる。
【0023】
第1の系統は、図1において切換えスイッチ33が下側の端子33aに接続される場合で、信号増幅器34とサーボ装置35から構成される。この第1系統は、試料16の表面の通常測定に関連する制御系である。測定の際の位置センサ19から出力される電圧信号は、探針12のZ軸方向の位置、すなわちカンチレバー11のたわみ量を表す信号であり、当該電圧信号は、信号増幅器34とサーボ装置35を経由して、XYZスキャナ15のZ軸方向駆動部を動作させる駆動信号Vzに変換され、XYZスキャナ15に供給される。信号増幅器34は、位置センサ19の出力信号を所要のレベルまで増幅する。信号増幅器34の出力信号はサーボ装置35に入力される。このサーボ装置35は、演算制御部36aと表示部36bを備える演算処理装置36からバス37を経由して指示されるサーボ制御条件に従って、入力された信号を上記駆動信号Vzに変換する。この駆動信号VzによってXYZスキャナ15内のZ軸方向駆動部が動作し、試料16のZ軸方向の位置が調整され、探針12と試料16との距離が所定距離(実質的な接触状態)に保持され、試料16の表面の凹凸形状が測定される。
【0024】
より詳しくは、演算処理装置36はコンピュータで構成され、CPUと記憶部を備える。その記憶部(ハードディスク、フロッピーディスク等)には試料表面を測定するためAFMの移動動作(粗動と微動)を制御するプログラム(測定プログラム)と、測定データを記憶して、この測定データから試料16の観察表面の微細形状に関する画像を上記表示部36bに表示するための画像データを作成するための処理を行うプログラム(画像作成プログラム)が記憶される。
【0025】
サーボ装置35は、探針・試料の間が所定距離になるように、XYZスキャナ15に対してそのZ軸方向駆動部の駆動信号Vzを与える。XYZスキャナ15のZ軸方向駆動部によるZ軸方向の動作に関してサーボ装置35にサーボ動作を行わせた状態で、XY走査回路部を用いてXYZスキャナ15のXとYの各軸方向の駆動部を動作させ、探針12に試料16のXY平面を走査させる。このとき、観察領域における各測定点のXY平面内の座標と、各測定点のVz(サーボ装置35の出力電圧値)が、演算処理装置36の記憶部に測定データとして記憶される。記憶部に記憶された測定データは、前述の画像作成プログラムによって逐次にあるいは一括して処理され、試料16における観察場所の表面形状に関する画像データを作成し、この画像データを用いて表示部36bの画面に測定画像を表示する。こうして試料16の観察場所の表面形状が得られる。
【0026】
なお試料表面の通常の観察・測定において、上記の通り、上記探針・試料間の距離の調整のためのZ軸方向の制御に併せて、探針で試料表面を走査するための位置制御が必要となる。この走査の位置制御のための駆動信号は、演算処理装置36に内蔵されるXY走査回路部から信号Vx,VyとしてXYZスキャナ15に与えられる。
【0027】
接触モードAFMは、観察場所で測定動作を行う際、カンチレバー11は非振動状態にあり、探針12と試料16の間は実質的に接触状態に保持される。また粗動ステージ31の動作によって或る観察場所から他の観察場所へ移動するときには、以下に説明するように、カンチレバー11は圧電素子13によって加振されて発振(振動)状態にあり、当該振動状態に基づいて得られる交流信号を利用して高速移動の機能と接触時のフェイルセーフの機能が実現される。
【0028】
次に、第2の系統は、図1において切換えスイッチ33が上側の端子33bに接続される場合で、波形整形器41と分周器42から構成される。この第2系統は、高速移動モードに関連する制御系である。波形整形器41は位置センサ19から出力される後述するような交流電圧信号を入力し、これに基づいて同じ周波数の方形波形の周期信号を作る。分周器42は、波形整形器41の出力信号を分周して所定の周波数のパルス信号を作り、粗動ステージ31を駆動するための上記パルス信号32を出力する。パルス信号32は粗動ステージ31に対し駆動信号として与えられる。波形整形器41および分周器42の各々の動作、並びに高速移動モードの制御の方法は以下に説明される。
【0029】
43は、カンチレバー11を振動させるための加振用圧電素子13を駆動する信号を与える発振器である。発振器43は、駆動信号を生成するための周期信号を演算処理装置36から与えられる。
【0030】
次に、前述の高速移動モードに関連する制御系の動作と制御手順を、上記の図1、図2〜図4を参照して説明する。さらに試料表面に対する探針の動きの説明として前述の図5を利用する。
【0031】
この高速移動は、試料16の表面の或る観察場所から他の観察場所への探針移動に関するもので、粗動ステージ31によって当該移動が行われる。粗動ステージ31は実際には試料16の側を移動させるものであるが、相対的な関係であることから、探針12の移動として説明する。探針の移動を開始する前の状態では、探針12は試料16の表面に対して接近した状態にあり、探針と試料表面との間では数nN(ナノニュートン)〜数十nNの原子間力が働いている。これは、図5のA1の状態であり、或る観察場所における静止状態である。
【0032】
まず最初に試料16の表面からカンチレバー11と探針12を約10ミクロン退避させる(図5におけるA2の状態)。この退避移動は、粗動ステージ31によって行われる。図1で、演算制御部36aから出力されるパルス信号Pzは、粗動ステージ31に含まれるZ軸方向用の駆動部すなわちステッピングモータを駆動するための信号であり、これにより退避移動と接近移動が行われる。高速移動モードとして切換えスイッチ33は図1中上側端子33bに接続される。また、発振器43の出力信号によって加振用圧電素子13を駆動し、カンチレバー11をその共振周波数fで発振させる。振動状態にあるカンチレバー11に対してはレーザ光源18からレーザ光が照射され、その反射光は位置センサ19に入射する。カンチレバー11の振動動作は位置センサ19によってモニタされる。図2の(a)は、位置センサ19から出力される交流電気信号44の状態を示し、カンチレバー11の振動状態を実質的に示している。交流電気信号44の周波数はおよそ数十kHzである。交流電気信号44において、最低の値をとる時、カンチレバー11はもっとも試料側に接近した状態にある。
【0033】
高速移動モードにあるとき切換えスイッチ33は端子33bに接続されるので、位置センサ19の出力信号すなわち電気信号44は、波形整形器41によって図2の(b)のような方形波信号45に整形される。この方形波信号45は分周器42に入力され、分周器42は分周処理する。この実施形態では図2の(c)に示すように例えば1/4に分周された分周信号が生成される。この分周信号は、前述のパルス信号32に相当する。上記分周比は、演算処理装置36から指示される。
【0034】
分周器42から出力される分周信号すなわち上記パルス信号32は粗動ステージ31に供給される。粗動ステージ31はX軸用およびY軸用のステッピングモータを内蔵する。パルス信号32はこれらのステッピングモータに対して駆動信号として与えられる。ステッピングモータは、入力した分周信号を用いて例えば1パルスについて0.5μmだけ探針12を移動させる。図1で、パルス信号32のX軸成分はPx、Y軸成分はPyで示される。Px,Pyの周期で粗動ステージ31によるX軸またはY軸の各方向の速度が決まる。換言すれば、分周器42で設定された分周比によって探針12の移動速度が決定される。当該分周比は演算処理装置36によって指示され、分周比は任意に変更することができる。
【0035】
図2の交流電気信号44とパルス信号32の位相関係から明らかなように、粗動ステージ31に内蔵されるXYの各ステッピングモータを駆動するためのパルス信号の発生する時期は、発振状態にあるカンチレバー11が試料16の表面から遠ざかるように変位する時期に合わせてある。探針12と試料表面が接触する可能性を小さくするためである。
【0036】
なお、本実施形態におけるカンチレバー11は、例えば、窒化珪素で作られ、全長が100μm、バネ定数が約0.1N/m、共振周波数は約20kHzである。
【0037】
上記のパルス信号32の成分Px,Pyが粗動ステージ31に与えられることにより、探針12は試料表面に沿ってほぼ平行な状態で移動(水平移動)する。図3は、カンチレバー11が発振しながら移動する状態を示す。カンチレバー11は振幅数μmで発振している(矢印B)。分周器42における分周比を例えば1/16に設定すると、1秒間に1250パルスが与えられるので、粗動ステージ31による移動速度は625μm/秒となる。図3の移動例では、移動の途中に試料16の表面において凸部(または傾斜部)16aが形成され、探針12がこの凸部16aに接触して探針12の移動が停止する状態を示すものである。移動は、粗動ステージ31によって試料16を左側に移動すること(矢印C)によって、実質的に試料表面に対して探針12およびカンチレバー11を右方向に移動させている。試料16の凸部16aは次第に振動状態にあるカンチレバー11すなわち先部の探針12に接近し、接触状態が発生するようになる。
【0038】
図3(a)は、カンチレバー11およびその先部の探針12が振動しながら、試料16の表面に沿ってほぼ平行な移動軌跡で図中右方向に移動している状態を示す。実際の動作としては、カンチレバー11と探針12は振動するだけであり、試料16が粗動ステージ31によって図中左方向に移動している。探針12は試料16の表面から約10ミクロン離れた位置にて約数ミクロンの振幅で振動している。試料16には凸部16aが存在し、試料表面の全体には前述した吸着層16bが形成されている。
【0039】
図3(b),(c)は、探針12の先端が、凸部16aの表面の吸着層16bに接触しようとする状態を示す。より詳しくは、図3(b)では探針先端が吸着層表面に接触し、図3(c)では探針12が吸着層16bに吸着されている。探針12に対しては吸着層16bの表面張力が作用し、探針12が吸着層16bの中に引き込まれる。これによってカンチレバー11は大きく試料側に変位する。探針12が試料表面の吸着層16bに吸着されると、カンチレバー11の振動は停止する。
【0040】
一方、図2を再び参照すると、探針12が試料16から遠ざかる方向にカンチレバー11が変位したとき波形整形器41からパルスが出力され、かかるパルスが連続的に生じて方形波信号45が生成される。そして、このようにして波形整形器41から出力された方形波信号45を分周して分周信号、すなわち粗動ステージ31を動作させるためのパルス信号32を作り出す。従って、カンチレバー11の発振が停止すると、方形波信号45は生成されず、それ故にパルス信号32も発生しない。従って、吸着層16bから探針12が解放されない限り、カンチレバー11の発振は停止状態に保持される。カンチレバー11の発振が停止状態になると、分周器42からパルス信号32は出力されないので、その後、粗動ステージ31に駆動用のパルス信号32が入力されることはない。従って、試料16は停止状態に保持される。
【0041】
なお、図3(d)に示すごとく、機械系の慣性のために試料16が左方へ移動しても、カンチレバー11は吸着層16bの吸着作用によって試料表面側に余分に変位しているため(図3(b)に示す)、カンチレバー11や探針12を破損するほどの大きな力が作用することはない。
【0042】
このように試料表面に対して粗動ステージ31によって探針12(カンチレバー11)を水平移動させ、探針12が凸部16aの吸着層16bに接触すると、吸着層16bの引き込み力によってカンチレバー11の発振が停止し、試料16はそれ以上に探針12に接近せず、自動停止動作が完了する。これによって、高速の水平移動を行いながら、接触時に自動停止を行い、探針や試料の破損を防止する。
【0043】
しかしながら、探針12の停止箇所が目的とする観察場所(目的地)でない場合には、再度移動を開始しなければならない。図4に、水平移動に関する全体の制御ステップを示す。ステップS11では水平移動の処理が行われる。水平移動の処理では、パルス信号32に応じて、設定された単位距離(1ステップ)ごとの移動が行われる。判断ステップS12では、水平移動を行いながら目的地に到達したか否かが判断される。目的地すなわち他の観察場所に到達したときに、カンチレバー11の発振動作を停止する(ステップS13)。その場所で、探針12は試料16の表面に接近し、測定を開始する(ステップS14)。水平移動の最中に、試料16の表面の凸部16aに接触すると、前述のごとく、探針12とカンチレバー11の水平移動は自動的に停止する。この場合、目的地に達していないので、ステップS15,S16が実行される。探針12が凸部16aに接触して停止したか否かはカンチレバー11の発振状態で判断される(ステップS15)。カンチレバー11が発振状態を持続する限り、ステップS11に戻って水平移動を継続する。カンチレバー11が発振していない場合には、ステップS16でカンチレバー11を退避させ、再び発振させ、ステップS15の判断を経由してステップS11に戻り、水平移動を再び行う。最終的には、目的地に到達するまで水平移動のための制御が実行される。
【0044】
上記構成によれば、分周器42における分周比を設定することによって所望の水平移動速度を設定でき、また高速な移動速度を設定できる。さらに試料表面の吸着層16bと探針12との間の作用で、カンチレバー11の発振を停止させ、試料16と探針12の接触による破損を防止することができ、試料16と探針12との衝突を避けるためのフェイルセーフ機能が作用する。
【0045】
上記実施形態によれば、ステッピングモータ等のパルス駆動型の粗動ステージ31を利用することにより、試料表面に沿ってほぼ平行に探針を移動させる装置を簡単な構成にて実現することができ、かつフェイルセーフの機能によって十分な保護が図られている。例えば、レーザ光源17や位置センサ19の不良によりカンチレバー11の動作をモニタできなくなった場合にも探針・試料の相対的移動の動作は停止する。さらに、特に動作停止の判定にコンピュータ等の特別の装置を必要とせず、安価に実現することができる。
【0046】
前述の実施形態では、粗動装置である粗動ステージ31を試料側に設けたが、カンチレバー側に設けることができるのは勿論である。
【0047】
また前述の実施形態ではAFMで説明したが、同様な構成および作用を有する走査型プローブ顕微鏡に対して本発明を適用できるのは勿論である。
【0048】
さらに上記実施形態では測定時の動作を接触モードとしたが、必ずこれに限定されるというものではなく、非接触モードや周期的に接触するモードのAFMであっても、本発明の構成を適用できる。本発明は、走査型プローブ顕微鏡一般に適用できるのは勿論である。
【0049】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように本発明によれば、走査型プローブ顕微鏡で探針・試料間で水平移動を行うに当たって、試料表面に吸着層が形成される大気環境での移動動作であり、カンチレバーを発振させ、探針・試料間の水平移動をパルス駆動の粗動装置を用いて行い、かつ当該粗動装置を駆動するパルス信号をカンチレバーの発振動作に基づいて作るようにしたため、当該パルス信号を適宜に作ることによって高速に水平移動ができると共に、吸着層の探針引き込み作用とカンチレバーの停止状態の特長に基づいてカンチレバーの発振動作を探針や試料を破壊・損傷することなく安全に停止することができる。このように、応答性を高くし、高速な水平移動を達成でき、さらに、特別な構成を加えることなくそれ自体でフェイルセーフ機能を備えることができる。また従来の移動方法に比較して移動前の段階で退避距離を小さく設定でき、退避移動のための時間、水平移動後の接近移動のための時間を短縮でき、観察のための装置全体のスループットを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の代表的な実施形態を示す構成図である。
【図2】装置各部の信号の波形を示す波形図である。
【図3】探針と試料の接触状態を説明する図である。
【図4】水平移動のための制御を示すフローチャートである。
【図5】従来のAFMにおける水平移動の問題を説明する図である。
【符号の説明】
11 カンチレバー
12 探針
13 加振用圧電素子
15 XYZスキャナ
16 試料
16a 凸部
16b 吸着層
17 レーザ光源
19 位置センサ
31 粗動ステージ
32 パルス信号
34 信号増幅器
35 サーボ装置
36 演算処理装置
41 波形整形器
42 分周器
43 発振器

Claims (5)

  1. 探針と試料を相対的に移動させる粗動装置を備え、前記探針と前記試料の表面との間の相互作用に基づき当該表面の微細性状を大気環境で測定する走査型プローブ顕微鏡において、前記粗動装置はパルス信号で駆動制御され、前記探針と前記試料を相対的に移動させるとき、カンチレバーを発振させ、当該カンチレバーの発振動作で前記粗動装置を動作させる前記パルス信号を作るようにしたことを特徴とする走査型プローブ顕微鏡の探針移動方法。
  2. 前記探針を前記試料の表面に沿って実質的に平行に移動させることを特徴とする請求項1記載の走査型プローブ顕微鏡の探針移動方法。
  3. 前記カンチレバーの発振動作で生じる周波信号を分周して前記パルス信号を作り、当該パルス信号の周波数で移動の速度を決定するようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の走査型プローブ顕微鏡の探針移動方法。
  4. 探針を有するカンチレバーを備え、前記探針と試料の表面との間の相互作用に基づき当該表面の微細性状を大気環境で測定する走査型プローブ顕微鏡において、
    パルス信号で動作するように構成され、前記探針と前記試料を相対的に移動させる粗動装置と、
    前記カンチレバーを発振させる発振装置とを備え、
    前記パルス信号で前記粗動装置を駆動して前記探針と前記試料を相対的に移動させるとき、前記カンチレバーの発振動作から得られる発振信号に基づいて前記パルス信号を生成する手段を設けたことを特徴とする走査型プローブ顕微鏡の移動機構。
  5. 前記カンチレバーの発振動作を交流電気信号に変換する変換器と、前記交流電気信号を方形波信号に変換する波形整形器と、前記方形波信号を分周する分周器を備え、この分周器で得られた分周信号を前記パルス信号として用いたことを特徴とする請求項4記載の走査型プローブ顕微鏡の移動機構。
JP27864196A 1996-09-30 1996-09-30 走査型プローブ顕微鏡の探針移動方法および移動機構 Expired - Fee Related JP3548972B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP27864196A JP3548972B2 (ja) 1996-09-30 1996-09-30 走査型プローブ顕微鏡の探針移動方法および移動機構

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP27864196A JP3548972B2 (ja) 1996-09-30 1996-09-30 走査型プローブ顕微鏡の探針移動方法および移動機構

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH10104246A JPH10104246A (ja) 1998-04-24
JP3548972B2 true JP3548972B2 (ja) 2004-08-04

Family

ID=17600115

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP27864196A Expired - Fee Related JP3548972B2 (ja) 1996-09-30 1996-09-30 走査型プローブ顕微鏡の探針移動方法および移動機構

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3548972B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102735880A (zh) * 2012-06-20 2012-10-17 浙江大学 用于大幅度微纳结构的扫描探针测量系统及其方法

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6337478B1 (en) * 1998-11-06 2002-01-08 Trek, Inc. Electrostatic force detector with cantilever and shield for an electrostatic force microscope
EP1116932A3 (de) * 2000-01-14 2003-04-16 Leica Microsystems Wetzlar GmbH Messgerät und Verfahren zun Vermessen von Strukturen auf einem Substrat

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102735880A (zh) * 2012-06-20 2012-10-17 浙江大学 用于大幅度微纳结构的扫描探针测量系统及其方法
CN102735880B (zh) * 2012-06-20 2013-11-27 浙江大学 用于大幅度微纳结构的扫描探针测量系统及其方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH10104246A (ja) 1998-04-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4073847B2 (ja) 走査型プローブ顕微鏡及び走査方法
JP2534439B2 (ja) 非接触位置決め方法及び走査型プロ―ブ顕微鏡
JPH0682248A (ja) 原子間力走査顕微鏡を使用した表面プロフィル検査方法及びその装置
JPH0754249B2 (ja) サンプルの表面を検査する方法及び装置
JP2011522273A (ja) プローブ検出システム
JP4571554B2 (ja) 走査型プローブ顕微鏡の探針と試料表面との距離測定方法及び走査型プローブ顕微鏡
JP3548972B2 (ja) 走査型プローブ顕微鏡の探針移動方法および移動機構
JP4021298B2 (ja) サンプリング走査プローブ顕微鏡および走査方法
JP2000146804A (ja) 近視野ゾンデと検査対象試料表面の間の距離を決定する方法および近視野顕微鏡
US6745617B2 (en) Scanning probe microscope
JP2003014605A (ja) 走査型プローブ顕微鏡
JP2006153574A (ja) 原子間力顕微鏡
JPH09281119A (ja) 走査型プローブ顕微鏡の探針・試料接近機構
JP2006215004A (ja) 近接場光顕微鏡、近接場光による試料測定方法
JP3588701B2 (ja) 走査型プローブ顕微鏡およびその測定方法
JP2005147979A (ja) 走査形プローブ顕微鏡
JP5733724B2 (ja) 走査型プローブ顕微鏡及びそのプローブ近接検出方法
JPH1038900A (ja) 走査型プローブ顕微鏡の探針・試料接近機構
JP3497913B2 (ja) 走査型プローブ顕微鏡およびその測定方法
JP2000036139A (ja) 表面観察方法及び記録再生方法、並びに、走査型プローブ顕微鏡及び記録再生装置
JPH09264897A (ja) 走査型プローブ顕微鏡
JPH10267950A (ja) 横励振摩擦力顕微鏡
JP3274087B2 (ja) 走査型プローブ顕微鏡
JPH1138021A (ja) 走査型プローブ顕微鏡とその接近機構
JP3809893B2 (ja) 走査プローブ顕微鏡

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20040406

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20040409

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees